「ブルックナーの交響曲で最高なのはどれだ?」 の問いには5番! 8番! 9番! と色々な意見が出ると思いますが、今回は聞きやすさ、盤の多さ等を考慮して7番をチョイスしてみました。
朝比奈隆に関しては朝比奈一本勝負の方に詳細なのがありますので、よろしければそちらもお願いします。
行 | 指揮者 | 管弦楽 | 録音日 | ★ | 登録日 | 備考 |
あ | アイヒホルン | リンツ・ブルックナー管弦楽団 | 1990年 | 5 | 02/7/7 | |
朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1975年 | 5 | 02/8/18 | ||
朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1976年 | 3 | 02/8/25 | ||
朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1983年 | 2 | 02/8/25 | ||
朝比奈隆 | 新日本フィルハーモニー交響楽団 | 1992年9月8日 | 5 | 02/8/18 | ||
朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1992年9月27〜29日 | 4 | 02/8/18 | ||
朝比奈隆 | 東京交響楽団 | 1994年 | 3 | 02/8/25 | ||
朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1997年7月 | 4 | 02/8/25 | ||
朝比奈隆 | 東京都交響楽団 | 1997年10月 | 2 | 02/8/25 | ||
朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 2001年5月10日 | 5 | 02/8/18 | ||
朝比奈隆 | 東京都交響楽団 | 2001年5月25日 | 3 | 02/8/25 | ||
い | 飯守泰次郎 | 東京シティフィルハーモニック管弦楽団 | 1999年 | 4 | 02/7/7 | |
井上道義 | 新日本フィルハーモニー交響楽団 | 2002年 | 3 | 03/02/16 | ||
う | ヴァント | ケルン放送交響楽団 | 1980年 | 4 | 02/7/7 | |
ヴァント | 北ドイツ放送交響楽団 | 1992年3月 | 4 | 02/7/7 | ||
ヴァント | 北ドイツ放送交響楽団 | 1992年6月 | 4 | 02/7/7 | ||
ヴァント | 北ドイツ放送交響楽団 | 1999年8月 | 4 | 02/7/7 | ||
ヴァント | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 99年11月 | 5 | 02/7/7 | ||
か | カラヤン | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 | 1989年4月 | 4 | 02/7/7 | |
カラヤン | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 | 1989年4月23日 | 3 | 02/7/7 | ||
く | クナッパーツブッシュ | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 | 1949年 | 4 | 02/7/7 | |
クナッパーツブッシュ | ケルン放送交響楽団 | 1963年 | 4 | 02/7/7 | ||
クレンペラー | フィルハーモニア管弦楽団 | 1960年 | 3 | 02/7/14 | ||
クレンペラー | 北ドイツ放送交響楽団 | 1966年 | 3 | 02/7/14 | ||
こ | 小林研一郎 | チェコフィルハーモニー管弦楽団 | 2003年 | 3 | 03/8/17 | New!! |
さ | ザンデルリンク | バイエルン放送交響楽団 | 1999年 | 4 | 03/8/17 | New!! |
ザンデルリンク | シュトゥットガルト放送交響楽団 | 1999年 | 5 | 02/7/14 | ||
し | シューリヒト | シュトゥットガルト放送交響楽団 | 1953年 | 3 | 02/7/21 | |
シューリヒト | デンマーク国立放送交響楽団 | 1954年 | 2 | 02/7/21 | ||
シューリヒト | 北ドイツ放送交響楽団 | 1954年 | 2 | 03/8/17 | New!! | |
シューリヒト | フランス国立管弦楽団 | 1963年 | 3 | 02/7/21 | ||
シューリヒト | ハーグフィルハーモニー管弦楽団 | 1964年 | 4 | 02/7/21 | ||
ジュリーニ | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 | 1986年 | 4 | 02/7/14 | ||
す | スクロヴァチェフスキ | ザールブリュッケン放送交響楽団 | 1991年 | 5 | 02/7/28 | |
スクロヴァチェフスキ | NHK放送交響楽団 | 1999年 | 4 | 02/7/28 | ||
ち | チェリビダッケ | シュトゥットガルト放送交響楽団 | 1971年 | 5 | 02/7/28 | |
チェリビダッケ | ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 | 1989年 | 5 | 02/7/28 | ||
チェリビダッケ | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1992年 | 3 | 03/1/5 | ||
チェリビダッケ | ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 | 1994年 | 3 | 02/7/28 | ||
て | ティントナー | ロイヤルスコットランド国立管弦楽団 | 1997年 | 5 | 02/8/4 | |
テンシュテット | フィアデルフィア管弦楽団 | 1985年 | 3 | 02/8/4 | ||
ふ | フルトヴェングラー | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1942年 | 5 | 02/10/13 | |
フルトヴェングラー | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1949年 | 4 | 02/8/11 | ||
フルトヴェングラー | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1951年 | 5 | 02/8/11 | ||
へ | ベーム | バイエルン放送交響楽団 | 1977年 | 4 | 02/8/4 | |
ほ | ホーネック | フランクフルト放送交響楽団 | 2001年 | 3 | 02/8/18 | |
ま | マタチッチ | チェコフィルハーモニー管弦楽団 | 1967年 | 5 | 02/8/18 | |
マタチッチ | ウィーン交響楽団 | 1980年 | 3 | 02/8/11 | ||
マタチッチ | スロヴェニアフィルハーモニー管弦楽団 | 1984年 | 5 | 03/8/17 | New!! | |
よ | ヨッフム | フランス国立管弦楽団 | 1980年 | 5 | 02/8/14 | |
ヨッフム | アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団 | 1986年 | 5 | 02/8/14 | ||
わ | 若杉弘 | NHK交響楽団 | 1996年 | 2 | 02/8/14 |
アイヒホルン | リンツ・ブルックナー管弦楽団 | 1990.4.9-12 | |
カメラータ東京 | 25CM-165 | ||
演奏について
道半ばでアイヒホルンが天に召されたため、ついに完成することが出来なかった全集録音の第1弾として収録された演奏。 晴朗な響きで目一杯の心を込めた演奏で、とろけるような柔らかい響きは非常に陶酔感に満ちていて、知らず知らずのうちに音楽の流れの中へその身をゆだねてしまうものだ。けっこう金管などはパリッと鳴っているのだが、全体としては当たりの柔らかい響きがする。しかし軟弱な感じはなく、音にはしなやかさも十分あり、ブルックナーを演奏するには何の問題もない。 何より音楽に小細工を施した跡が感じられず、作曲家の書いた音符自身に音楽を語らせるように演奏し、胸一杯の幸福感を与えてくれるのが素晴らしい。 マイナーなレーベルなため、なかなかお目に掛かれないが、演奏も録音も良くできたCDなので、ぜひとも聞いて欲しいCDだ。 お薦め度 ★★★★★
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朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1975.10.12 L | |
Victor | VDC-1214 | ||
演奏について
朝比奈が初めて大フィルを連れてヨーロッパを周った際にブルックナーが眠る聖フローリアンで行った演奏会の模様。 あまり上手いとは言えない演奏だが、聖フローリアンの長大な残響がアラをうまく包み込んでしまっていて、それほど気にはならない。野太くたくましい(少し荒々しくもある)響きの中、精一杯心を込めた演奏で、その陶酔感がこちらにも伝わってくる。しかし本当に素晴らしいのは第2楽章が終了後に寺院の鐘が鳴り響いたあとで、全体の気の張り方と集中力がまさしく奇跡のレベルに達してしまっている。終楽章の盛り上がり方は古今東西でも最高のものと言える演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1976.4.14 | |
ジャン・ジャン | JJGD-2008 | ||
演奏について
日本人初のブルックナー全集の一環として、神戸文化ホールで収録された演奏。 太くたくましい音で、速いテンポを保ったままグイグイと曲を進めていく。楽想の変化によるリタルダントなどがほとんどないので、曲の最後まで息を入れることなく定速で走りつめている印象がある。ゴリゴリとした響きをもって旋律を元気良く歌っているので哀愁感などはないが、曲の最後でパワーが炸裂するのが鮮烈で、スカッとした気持ちを胸に残す演奏だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1983.9.13 L | |
Victor | VDC-1067 | 分売 | |
Victor | VICC-60285/88 | 全集 | |
演奏について
後に朝比奈2回目のブルックナー全集としてまとめられた東京カテドラル教会における演奏会を収録したもの。 残響の多い教会での演奏のせいか、金管をあまり強奏させずに楽に吹かせている。そのためか音の立ち上がりがなだらかで、フォルテで音がそそり立つ印象がない。 全体的に表情が乏しく一本調子の感じを受け、悪く言うと退屈な演奏だ。 お薦め度 ★★☆☆☆
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朝比奈隆 | 新日本フィルハーモニー交響楽団 | 1992.9.8 L | |
fontec | FOCD9063 | ||
演奏について
東京のサントリーホールで行った演奏会の模様。 重心が低く踏みしめるようなテンポでじっくり進んでいくが、引きずるようなことはなく、響きも重厚でありながら、広々としており、ある種の美しさを放っている。そしてキメ所での力強さは息を呑むほどだ。また旋律の隅々にまで情感(ただし甘くない)がこもっていて、安定しきった構成感と合わせて大変素晴らしい。 一方オケも確かで緻密なアンサンブルを聞かせ荒馬のような大フィルとはまた違った魅力に溢れており申し分ない。 お薦め度 ★★★★★
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朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1992.9.27-29 L | |
Pony Canyon | PCCL-00178 | ||
Pony Canyon | PCCL-00475 | HDCD | |
演奏について
朝比奈3回目のブルックナー全集の1枚で、大阪のフェスティバルホールでライブ録音されたもの。 重心が低いがもたれることがなく、粘度の低い響きを聞かせる。また中庸的なテンポでありながら、キビキビとした音の運びをしていて、重い響きと相反するように思えるが、これが上手い具合に同居している。fffの爆発力は息を呑むような豪放たるものであるが、同時に旋律の歌い口には切なさが漂い、それが胸に沁みてくる。 スケルツォの速いテンポと荒れ狂ったように吼えるオケは大変魅力的だが、少し荒っぽすぎるように感じ、それが玉に瑕となっている。 お薦め度 ★★★★☆
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朝比奈隆 | 東京交響楽団 | 1994.4.23 L | |
Pony Canyon | PCCL-00517 | HDCD | |
演奏について
東京のサントリーホールで収録された演奏会の模様。 すっきりとしたテンポで進められるが、内声部のしっかり鳴った安定感ある響きが大変美しい演奏となっている。全体の構成感にはまったく揺るぎないものがあり、なにより若々しさを感じさせる曲運びが大変素晴らしく、これが85歳の生み出す音楽ということがにわかには信じられない演奏となっている。 お薦め度 ★★★☆☆
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朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 1997.7.31 L | |
大阪フィル | LMCD-1549 | 自主制作 | |
演奏について
大阪フィルの自主制作という形で発売された大阪フェスティバルホールにおける演奏会の模様。 ゆったりとしたテンポで進められるが、響きが薄くなったり、間延びしたりすることはなく、全声部がしっかりと鳴り響いている充実した音がしている。ホールの特性からか残響の少ないデッドな響きをしているのだが、音色にはある種の切なさが漂い、その魅力に引き込まれてしまう。その一方、ブルックナー特有の分厚いながら透明な響きに包まれる心地よさもたっぷりと味わうこともできる。そしてfffでの迫力も充分にあり、聞き終わったあと良い気分で胸が一杯になる演奏だ。 お薦め度 ★★★★☆
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朝比奈隆 | 東京都交響楽団 | 1997.10.24 L | |
fontec | FOCD9132 | ||
演奏について
東京のサントリーホールにおける演奏会の模様を収録したもの。 優しく柔らかな手触りを持った演奏だが、音色は決して甘くなく、ブルックナーらしい厳しさも持ち合わせている。全体に力みがなく、リラックスした曲運びは言い方を変えると熱のない演奏だとも言える。それでもゆったりとしたテンポでとうとうと流れる音楽は一旦その身を浸らせてしまうと非常に心地よいものへと変化する。そんな演奏だ。 お薦め度 ★★☆☆☆
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朝比奈隆 | 大阪フィルハーモニー交響楽団 | 2001.5.10 L | |
EXTON | OVCL-00068 | HDCD | |
演奏について
朝比奈死の半年前の演奏であり、最後の大フィル定期公演となった演奏会の模様。大阪フェスティバルホールでの演奏。 音楽に力みがなく、まったく人間臭さを感じさせない演奏は非常に音が澄んでおり、まるで仙人が指揮しているようだ。音楽が結晶化するかのように夾雑物が極めて少なく、また四つの楽章が完璧なバランスで並んでおり、突出した部分がまったくない様子はこれが死を半年後に控えた人間の演奏なのかと不思議に感じてしまう。 純粋な響きは大変美しく、クライマックスのfffでも壮大な音が鳴っているのに少しも響きに曇りがない様は従来の朝比奈像とは大きく違うが、ここまでのものは他に並ぶものはなく、大変素晴らしいものと言える。 お薦め度 ★★★★★
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朝比奈隆 | 東京都交響楽団 | 2001.5.25 L | |
fontec | FOCD9158 | ||
演奏について
朝比奈生涯最後の7番となった演奏で、東京のサントリーホールにおける演奏会の模様。 大フィルのゴツゴツした手触りと違い、なだらかで滑らかな感触を持つ演奏で、儚げに漂うような美しさが何か哀しみのようなものをこちらの胸に掻き立たさせる。 まったく隙のない構成と合わせ、大胆なテンポ変化を行う演奏は死の半年前であっても可能性の追求を怠らなかった姿が見え、頭が下がる思いを起こさせる。 穏やかで静々と進められる音楽はこちらを陶酔させるもので、聞いているうちに時間の感覚を失ってしまう。演奏が終わったとき、なにやら夢から覚めたような錯覚に陥らせる演奏だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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飯守泰次郎 | 東京シティフィルハーモニック管弦楽団 | 1999.2.25 L | |
fontec | FOCD9133 | ||
演奏について
まず最初に気がつくのは、意外にじっくりと進められるゆっくりとしたテンポで、最近の演奏ではあまり聞かれなくなったテンポ設定だ。 しかしその遅いテンポの中で、粘り込むように腰をすえて旋律を歌い込んでいき、その基本的な表情はロマンティックに依っている。またクライマックスではきちんと山場を築いていることに加え、音楽的に緩むところがなく、最後まで実に濃厚な時間を提供してくれる。 この盤が世間において高い評価を聞かれないのは、上に挙げた粘っこい歌い口と厳格さとは別次元の弾力ある響きだろうと思われるが、それが他にない魅力となっているので、聞く人それぞれの受け取り方だと言えるだろう。ただ音色の奥深さが不足気味なのと、スケルツォが軽いことが少しだけマイナスとなっている。 お薦め度 ★★★★☆
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井上道義 | 新日本フィルハーモニー交響楽団 | 2002.1.25 L | |
EXTON | OVCL-00092 | HDCD | |
演奏について
井上初となるブルックナー録音で、東京のオーチャードホールで行われた演奏会の録音。 チェリビダッケの門下生だった井上らしく、遅めのテンポで音楽をゆったりと進めていく。曲の冒頭こそオケが乗り切らないのか、乱れ気味のアンサンブルだが、第1楽章の主題提示部を過ぎる頃には音楽に大きな流れが生じるようになる。 前半2楽章では全体的に緊張感が希薄で、弛緩したイメージがあるが、スケルツォからリズムの刻みが明確になり、音楽にメリハリが現れるようになる。終楽章では重いテンポながら音楽がノヴァーク版らしく動き回り、力のこもったコーダではぐっとテンポを落として第1楽章のテーマを再現し、幕が降ろされる。 意外にストイックでエグイ所もなく立派な演奏だが、爆発するような何か突き抜けたものに欠けているのが非常に惜しい演奏だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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ヴァント | ケルン放送交響楽団 | 1980.1.18 | |
RCA | BVCC-38178~79 | ||
演奏について
ケルンとの全集録音からの分売だが、これは90歳を記念して新たにリマスターされたもの。(同時にヴァント追悼盤にもなってしまった) 無駄というものが一切なく、情に溺れる素振りをまったく見せない硬派なものだが、この曲にある歌謡性を削ぐものではなく、ガチガチに凝り固まったものではないのが素晴らしい。第2楽章の広々とした響きは特筆すべきものだ。 テンポ標示がほとんどないハース版の信奉者らしく、テンポ変化が必要最小限しかない遊びのない演奏だが、きっちりと固められた構成と一切の澱みなく流れる推進力は数多いヴァントの録音でも最も徹底されている。 一部の評論家のようにこの演奏を大きなスケール感に乏しいものと言ってしまうのは簡単だが、この演奏が持つ凝縮力の前では虚しい戯言に聞こえる。 ただ終楽章が持つ構成の弱さが、そのまま出てしまっている分がややマイナスとなってしまっている。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
90歳を記念して発売された2枚組み(もう1曲は9番)の録音は、音は曇りがなくすっきりとしていて、すこぶる良い。 |
ヴァント | 北ドイツ放送交響楽団 | 1992.3.15-17 L | |
RCA | BVCC-629 | ||
RCA | BVCC-37249 | ||
演奏について
先のケルン盤と比べてハーモニーが厚く、重く、そして大きな広がりを持っている。一方ケルン盤での強靭な意志の力で凝縮したような固唾さは幾分緩くなっており、この曲の曲想を生かしたなだらかな歌い口はこれまでのヴァントにはあまり聞かれなかった特徴だ。特に第2楽章は何の小細工もしていないのに、その響きの純粋さで切なくなるくらいだ。続く第3楽章もゆったりとしたテンポで堂々としており、とても良い。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
ちなみにBVCC-629が初版で、BVCC-37249はBEST100として再販されたもの。音としては大差ないが、後者のほうが、左右に音が良く広がっている。ただ弦の響きがやや軽くなった気がする。 |
ヴァント | 北ドイツ放送交響楽団 | 1992.6.28 L | |
sardana | sacd-131 | 海賊盤 | |
演奏について
RCA盤とほぼ同じ解釈と言えるが、こちらの方が対位法の処理が優れており、どんな局面でも必ず複数の旋律が明確に刻まれていて、その表現に曇りがない。それに加えて、各楽想がなだらかに連続し、ロマンティックに溺れることはないもの、それを素朴に歌い上げていく。 また演奏会が行われたホールの残響が物凄いせいか、テンポはやや遅く、時折大胆な総休止や強弱の変化が見られ、頑固一徹の楽譜至上主義と思われるヴァントにしては幾分即興的な部分が聞かれる。それでも雰囲気を損なうことはなく、堅固なフォルムを崩さないのはさすがである。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
録音はブートらしく、楽章間のざわめきも残さずノンストップで収録されている。 |
ヴァント | 北ドイツ放送交響楽団 | 1999.8.27 L | |
GNP | GNP 12 | 海賊盤 | |
演奏について
ケルン時代に戻ったようなテンポ設定で流れるように進行していく。しかし当時とは違って、硬質でクリアーな音色に加え、堂々とした歩みと濃厚な響きがあり、スケールの大きさがグッと増している。そしてブルックナー特有の形式を完全に手中に収めた自信のもと、音楽に自発的な自由さが生まれているのに格式を崩すことがまったくないのが、非常に素晴らしい。 しかしヴァントの特徴とも言える生真面目なまでの構造解析主義が薄れ、ある種の緩みが生じていることはどうしても否めない。だがここにも健在であるシリアスな厳格さは間違いなくヴァントでしか表現できないものであり、かけがいのないものと言える。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
ちなみにこの録音も無編集のノンストップで、楽章間でおっさんがすぐ近くで「エヘン、エヘン」とやっているのが聞こえる。おそらく客席録り。しかし音質はなかなか良好だ。 |
ヴァント | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1999.11.19-21 L | |
RCA | BVCC-34030 | ||
演奏について
同年のNDRと大きく違って、ゆったりと包み込むような懐の大きさで音楽が流れていく。ここには以前のようなやや神経質な固唾さがなく、自由さに満ちた重みあるスケールで大きな歌を歌いこんでいく。とは言ってもヴァントの肝である硬質で透明な音色とガッチリとした構成感は十二分で、ベルリンフィルの機能が炸裂したような(暴れ馬の手綱が外れちゃった的な)大音響すらも自らの掌上で転がすような余裕がある。 これまでの演奏の中で、この盤が最も終楽章が充実しており、次々と訪れる変化がこの楽章の構造を解き明かすように連続し、グイグイと曲に引き込まれるものとなっている。 お薦め度 ★★★★★
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録音について
録音はどの楽器がどこから鳴っているのかが分かりにくく、どこかくぐもった音がしており、お世辞にも褒められたものではない。 |
カラヤン | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 | 1989.4 | |
GRAMMOPHON | POCG-50013 | ||
演奏について
ベルリンフィルの音楽監督を突然解任された(憶測だが、たぶん癌が周囲にばれたのだろう)後にウィーンフィルと行われた録音で、カラヤン死の年の演奏。この後に収録した8番が彼最期の録音となる。 カラヤンというと、妙に音がボテッとしているくせにやたら力任せで押しまくる、彼独特の音響美があるが、この演奏ではそのカラヤンらしいエグミがなくなり、速いテンポながらブルックナーの旋律をとても自然な呼吸で朗々と歌い上げていくので、一瞬この演奏がカラヤンのものであることを忘れ、演奏に聴き入ってしまう。 ひょっとすると、死を目前にして“ドイツ・クラシックの盟主”ではなくなった時に、彼本来のギリシャ系としてのアイデンティティーが静かに現れてきたのかもしれない。 とは言っても、アタックをはっきりとさせたり、フォルテッシモの凄まじさ、そして時々顔を覗かせるカラヤンサウンドが彼でしか表現できない音楽であることを思い浮かばせる。 お薦め度 ★★★★☆
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カラヤン | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 | 1989.4.23 L | |
RARE MOTH | RM 413-S | 海賊盤 | |
演奏について
カラヤンのラストレコーディングのひとつとなったグラモフォンの7番と同時期に行った演奏会の模様。 まずは録音のことから書くと、響きは鮮明だが、音が非常に遠く、オケがすごい迫力で鳴っているのにこちらへそれが伝わってこない。 曲に対するアプローチはグラモフォン盤と全く同じと言える。音自体が自ら語り出すのに任せたような演奏で、自然な音楽の流れが伸びやかに生み出されていく。それはスタジオ録音のものより更に徹底されていて、グラモフォン盤に少しあったぎこちなさが見事払拭されている。それでいながらfffの爆発力はかなりのもので(とは言っても録音のせいでこちらには伝わりにくい)、弛緩したものでは決してない。その一方、別の言い方をすれば流れ重視で、音楽への切れ込み方が物足りない所もあり、その辺りはグラモフォン盤と一長一短だ。 演奏は良いが、音が良くないので、マニア以外にはお薦めしにくいCDだ。 お薦め度 ★★★☆☆
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クナッパーツブッシュ | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 | 1949.8.30 L | |
GOLDEN Melodram | GM 4.0008 | 輸入盤 | |
ARCHIPEL | ARPCD 0046 | 輸入盤 | |
演奏について
この曲が始まってすぐホルンが第1主題を1拍早く吹く所から、これは改訂版を使った演奏だと判る。そのためか、テンポの設定が時代を感じさせてしまうのは仕方ないことと言える。(実際古いし) それでも他の指揮者による同時代の演奏と比べると、この曲にやたらロマンティックな表情を付けることは少なく、堂々とした風格を持っている。また低音から音を積み上げていくどっしりとしたサウンドや録音レベルが振り切れるほどの宇宙が轟くような物凄い轟音はこの指揮者でしか味わえない。 しかし音楽を力ずくで我が物にしようとしてる気がして、自然さ(自然な姿であろうとする狂気?)が不足しているのがブルックナーという作曲家を考えた時、ほんの少し物足りない。 それでも最後の爆発力はやっぱり凄まじく、思わず演奏に引きずり込まされてしまう。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
ゴールデン・メロドラムはノイズが乗っているが、音が生々しく、力がある。一方アルヒペルはノイズがほとんどなく、音の抜けが良い。どちらも一長一短だ。 さすがに両方ともモノラル。 |
クナッパーツブッシュ | ケルン放送交響楽団 | 1963.5.10 L | |
RE! DISCOVER | RED69 | 海賊盤 | |
GOLDEN Melodram | GM4.0064 | 輸入盤 | |
演奏について
相変わらずこれも改訂版を使った演奏だが、音楽の流れがゆったりとなっており、せかせかとテンポが変わることも少なくなっている。 やはりクナも晩年のせいか、音楽に若干の緩みが生じているもの、ゴツゴツとした手触りやキメ所で爆発する轟音は健在で、小細工なしの真っ向勝負みたいなシリアスさがここにはある。 特にスケルツォの超スローテンポは凄まじく、ただ遅いだけではない切迫した緊張感が素晴らしい。そしてこの重量感はフィナーレに入っても見事持続し、噛んで含ませるようにジリジリと進む音楽は気の緩む暇を与えず、終結におけるエネルギーの解放まで演奏に引きずり込まれてしまう素晴らしいものだ。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
録音はモノラルでヒスノイズがあるが、海賊盤としては標準的なもの。 GOLDEN盤の方がノイズが少ないが、音像がやや遠く、RE! DISCOVER盤にあった生々しさが後退している。 |
クレンペラー | フィルハーモニア管弦楽団 | 1960.11 | |
EMI | 7243 5 67330 2 2 | 輸入盤 | |
演奏について
これはクレンペラー・レガシーとして発売されたシリーズの中の1枚。 某UNO氏が誉めないため一向に評価されないクレンペラーのブルックナーだが、現在改めて聞いてみると、注目すべき所がいくつかある。まずはきちんと曲の構造を把握し、それを見事まとめ上げていること。そしてブルックナーの音楽の根底に流れているものがバロックであることを理解し、きちんとバロック的な響きを実践していること、などがそれだ。このスタイルは後続の朝比奈とヴァントにより完成されたが、クレンペラーはこのスタイルを発見し、率先することで2人の先鞭をつける形となった。もっと彼のブルックナーに注目しても良いと思う。 演奏の方は以上のことに加え、素っ気ないほどの無表情ながら、清潔感ある響きが大きな広がりを持っている。特に前半2楽章には音楽自らが語るのに任せた自然さがあり素晴らしい。しかし後半2楽章は彼らしいフレージングがやや耳に付き始め、それが少し毒味を生じてしまっているのが残念だ。ただ対位法のえぐり出しは後半の方が優れているため、一概に後半がダメだとは言いにくい。 お薦め度 ★★★☆☆
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クレンペラー | 北ドイツ放送交響楽団 | 1966.3.3 | |
MUSIC&ARTS | CD-1088(3) | 輸入盤 | |
演奏について
基本的印象は60年と同じだが、楽想間の繋がりが良くなっており、構造の把握がさらに進んでいる。しかしそれだけにブルックナーに相応しくない表現(改訂版に基づいていると思われる)が出るたびにそれが耳に付き、気になってしまうのが非常に残念だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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録音について
権利が怪しい音源を使用することで有名なMUSIC&ARTS社がなんと、真っ当にライセンスを取得して発売したCD。 録音はモノラルで、音質はなんとか並のレベル。 |
小林研一郎 | チェコフィルハーモニー管弦楽団 | 2003.4.24-26 | |
EXTON | OVCL-00128 | ハイブリッド盤 | |
演奏について
コバケンのブルックナー第2弾。CDとSACDそしてSACDマルチチャンネルのハイブリッド盤。 奇をてらわない正統派の演奏で、楽想を流線型につなげ、滑らかに曲が進んでいく。また音色はこの指揮者特有の美しさを持ち、大きなスケールでとうとうとした流れはどこにも引っかかる所はない。しかしその分、口当たりがまろやか過ぎて、聴いていると物足りなさを感じることも事実としてある。 終楽章のコーダではさすがに山場が築かれるが、最後の最後で音をぶつ切りにするクライマックスは中途半端なオリジナリティを出そうとしていて、かなり奇異に聴こえる。 お薦め度 ★★★☆☆
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ザンデルリンク | バイエルン放送交響楽団 | 1999 L | |
En Larmes | ELS02-288 | 海賊盤 | |
演奏について
カンタービレを効かせている訳ではないのだが、懐の大きな歌心がひたひたと心に沁みこんで来る演奏だ。 ドラマチックにあおったりせず、淡々と曲を進めていくのだが、甘くはないが優しさを感じさせる音色と合わせて、ゆったりとしたリズムで流れる音楽が包み込むように安心させてくれる。 コーダでのカタルシスは弱いと言えるが、全体的な雰囲気の良さで聴かせる演奏だ。 お薦め度 ★★★★☆
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ザンデルリンク | シュトゥットガルト放送交響楽団 | 1999.12 | |
haenssler classic | CD 93.027 | 輸入盤 | |
演奏について
朝比奈、ヴァント亡き後、現役最高齢だったザンデルリンクだが、その彼も90才を迎えると引退を表明してしまった。この盤は2002年の時点で、正規盤としては最期の録音となっている。一応ハース版。 演奏は穏やかなテンポでどこにも力みがなく、無理をまったく感じさせずに進められていく。淡々とした表情ながら、どの旋律にも歌の心があり、慈しむように音楽が流れていく様は、一聴して解るインパクトには欠けているもの、その味の奥深さには類比がない。 これほど聞き終えたあと、心が穏やかになり、静かな感動が心の底に染み込んでくる演奏はない。人によっては「これはブルックナーを聞くCDではなく、ザンデルリンクを聞くCDだ」と言うかもしれないが、それでもこれ程までのものを聞かせてくれるのだから、むしろ歓迎するべきことだろう。 お薦め度 ★★★★★
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録音について
このCDはドイツの弱小レーベルから出ているため入手が困難だが、90年代後半のザンデルリンクは(ブートを入れても)録音が極めて少ないため、ぜひとも手に入れて欲しいディスクだ。 |
シューリヒト | シュトゥットガルト放送交響楽団 | 1953.3.6 L | |
DISQUES REFRAIN | DR920017 | 輸入盤 | |
演奏について
モノラルのライブ録音。使用楽譜は改訂版だと思われるが、第2楽章の頂点で打ち鳴らされる打楽器がティンパニだけなので、一部ハース版を取り入れているのかもしれない。 まず驚かされるのは、テンポの変化の激しさだ。基本的にシューリヒトにしてはゆっくり目の設定と言えるが、ある所ではテンポを大きく落とし、じっくりと奏でられるのに、ある所では狂ったかのような突進を聞かせる。その落差の凄まじさには度肝を抜かされる。 金管をパリッと鳴らす響きは彼のものだが、音を短く切って音楽を引きずらないスタイルが、完全には徹底されていない所があり、その分音楽の純度が少し鈍っている感じがある。 しかし調子が悪いのは第1楽章だけで、楽章を追うに従って音楽の純度が上がっていく。特に第2・3楽章が速いテンポのなかでグッと胸に迫る見事なものとなっている。 お薦め度 ★★★☆☆
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シューリヒト | デンマーク国立放送交響楽団 | 1954 L | |
SEVEN SEAS | KICC 2405 | ||
演奏について
基本的には53年の録音と演奏方法・使用楽譜は同じで、印象はほとんど変わらない。(改訂版にハース版を少し混ぜたもの) しかし音楽からはいつものシューリヒトから聞ける生命力を感じられず、まったく楽しくないものとなっている。 シューリヒトの特徴が53年よりもよく出ているのにこの感想というのは、ひょっとすると録音のせいかもしれないが、どちらにせよお薦めはできない。 お薦め度 ★★☆☆☆
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シューリヒト | 北ドイツ放送交響楽団 | 1954 L | |
RARE MOTH | RM503-M | 海賊盤 | |
演奏について
晩年の駆け抜けるような疾走感はなく、やや遅めととれるテンポが基本となるが、テンポの変化は頻繁に行われ、盛り上げる所では凄まじいアッチェレランドを掛けているのがこの人らしい。 しかし音楽に不純物はなく、引き締まった硬質のフォルムは人間臭さをあまり感じさせない。 一方、この盤は録音状態が悪く、オケのミスも多い、またこの演奏に似たものが他にもあるため、シューリヒト好き以外には余り意味がないものと言える。 お薦め度 ★★☆☆☆
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録音について
所々、音が萎んでしまう所や高周波のノイズが含まれる所があり、元テープの録音状態は良くない。 |
シューリヒト | フランス国立管弦楽団 | 1963.9.11 L | |
RARE MOTH | RM 443-M | 海賊盤 | |
演奏について
この演奏も改訂版を用いて行われている。 10年前の録音と比べるとテンポが速くすっきりとしたフォルムとなっている。速めのテンポはちょくちょくそのスピードを変えて行くが、いびつな感じは受けず、終局に向かって流れるような勢いが生じている。また響きや曲の進行に夾雑物が極めて少なくなり、純粋な響きが心に沁みてくる。特に第2楽章はひたひたと切なさが胸に迫ってきて素晴らしい。 それにしても第2楽章の冒頭、弦と管がカノンのように思いっきりずれているのは笑ってしまうが、それもご愛敬だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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録音について
モノラルのライブ録音で、音質はまあ普通。所々シューリヒトのリズムを取る足音が聞こえるのがブートらしい。 |
シューリヒト | ハーグフィルハーモニー管弦楽団 | 1964.9 | |
DENON | COCO-6591 | ||
演奏について
この盤はあの宇野功芳氏が自書で繰り返し推薦しているため有名なディスクである。(そのため毛嫌いする人もいるが) このCDでも相変わらず改訂版を基に演奏されているが、当時既に確固たる地位を得ていたハース版を充分に意識した音作りとなっている。 年代順に彼の演奏を聞いてきて驚いたことは、この演奏だけが他の3種と比べてまったく印象が違うことだ。なによりテンポ変化を極力抑えたもので、ストイックさが抜きん出て顕著となっている。それはこれがスタジオ録音のためディレクターに編集しやすいようインテンポを強要されたせい(シューリヒトは振るたびにテンポが違うことで有名だった)だと思われるが、結果的にこの人が持つ夾雑物のない純粋で切れ味の鋭い響きが前面に出てくる形となったので、歓迎すべきことなのだろう。 これまで何度も書いてきたが、第2楽章の切実さは淡々と何の手も講じてはいないのに胸に深く染み込んでくる。なお宇野氏激賞の第3楽章だが、結晶化するような音楽の純度は素晴らしいものを感じるが、オケが下手すぎてそれほど良いとは思われなかった。また終楽章もこじんまりとしたものだったが、コーダではオケの集中力も最高潮となり、輝くような音楽の結晶を感じさせてくれるのが大変良い。 ただこの演奏、オケの技量が低いのか、録音が悪いのか、音色がとても変なのに加え、付け加えたとしか思われない奇妙なステレオ感とエコーが耳に付くので、その点は覚悟して聞いた方が良い。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
この演奏だけがかろうじてステレオで残されたが、高音部はなかなか鮮明であるもの、中〜低音部がモコモコと音がこもり、取って付けたかのようなステレオ感(左右への音の振り分け)と合わせて良い録音とは決して言えない。 |
ジュリーニ | ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 | 1986.6 | |
GRAMMOPHON | FOOG 27091 | ||
演奏について
この演奏について大きく2つのことが言える。ひとつはイタリア人らしい隅々まで気の張った歌い口をしていること。もうひとつはピラミッド型の重い重心を持つ音色をしていること。一般に言われるような“粘液質”という性質はそれほど感じさせず、確かに力強くどっしりとはしているが、切り口は大変シャープで、粘ったり引きずったりするようなことは非常に少ない。またテンポの変化は微細な変動はあるもの一定であることを努めている。ただここぞという時は大胆な揺らし方をするのがジュリーニらしい。しかしそれが全体的な構成を破綻させるようなことはなく、ガッチリとした安定感を有しているのが大変良い。 お薦め度 ★★★★☆
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スクロヴァチェフスキ | ザールブリュッケン放送交響楽団 | 1991.9.27-29 L | |
ARTE NOVA | BVCC-6053 | ||
演奏について
彼の名を一躍有名にしたディスク。 大海原の寄っては返す波のような大きな呼吸で音楽が流れていく。その流れも大きくて力強く、終局に向かってじっくりとした歩みで進んでいく。音色もどことなく優しさを感じさせる柔らかさを持ちながら、鋭角の切れ込みを持つ深い音も聞かせ、ブルックナーの世界を余すことなく表現している。 大きくゆったりとした時間の流れが素晴らしいが、終楽章がやや小ぶりに感じてしまう。それでも最後は伸びやかに終わるので、聞き終えた後、非常に気分が良くなる演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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スクロヴァチェフスキ | NHK放送交響楽団 | 1999.1.21 L | |
Altus | ALT030 | ||
演奏について
ゆったりとしたテンポでとうとうと流れる音楽で、大きな周期で振幅する音楽の波は海のような包容力を持っている。良く聞くと細かい所で色々と手を入れているようだが、それが良い意味で隠し味となっていて表にしゃしゃり出てくることがなく、ブルックナーの世界を十分堪能させてくれる。 最初は手探りのような感じを受けるが、第1楽章の後半から音楽も興に乗りだし、(スケルツォがやや淡泊だが)終楽章のコーダでは大きなクライマックスを造りだしていて素晴らしい。 ただN響が技巧的には何の不満点もない素晴らしいもの(はっきり言ってザールブリュッケンより格段にうまい)なのだが、指揮者の創る世界に没頭せず、一歩引いたクールな演奏という印象を受けてしまうのが、このオケの限界なのかもしれない。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
録音の方は、あの手この手とヘタに手を入れない自然なもので、非常に鮮明な音をしている。低音部が拡散気味で緩くなってしまう辺りはまさにNHKホールの音で、全体の雰囲気はFM放送とまったく同じとなっている。(当たり前だが) |
チェリビダッケ | シュトゥットガルト放送交響楽団 | 1971.6.8 L | |
RGAMMOPHON | POCG-10235 | ||
演奏について
海賊盤の王者だったチェリビダッケだったが、これは彼の死後まとまって発売された正規盤の1枚。チェリと言うと“超スローテンポ”と最初に思い浮かぶが、これはそれより以前の“ピアニッシモ”のチェリと呼ばれていた頃の演奏。なおこの演奏は楽団創立25周年記念演奏会だった。 テンポはやや速めと言える速度で進んで行くが、響きに力があって厳しく、かつたくましい曲の進行をしている。また曲想の隅々まで気が張っており、音楽に緩む所がまったくない。 演奏の巨大さでは今一歩と言えるが(もっとも7番にそれが必要なのかは少々疑問だが)、造型の彫りの深さと厳しさは素晴らしいの一言に尽きる。 譜面台を指揮棒でビシビシ叩く音が聞こえるが、この激しさも後年の彼からは表面上みられない特徴だ。 お薦め度 ★★★★★
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チェリビダッケ | ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 | 1989.9.22 L | |
GNP | GNP 53 | 海賊盤 | |
演奏について
チェリとミュンヘンフィルがベルリンフィルの本拠地、フィルハーモニーホールへと初めて乗り込んで行った演奏会の模様。 このディスクではチェリの特徴である微速前進による演奏を聞くことが出来るが、これは基本テンポが遅いことに加え、楽章の途中でテンポをほとんど動かさないことがそのイメージに大きく作用していると思われる。(実際、第2楽章の第4部の冒頭でわずかにテンポが速まるが、そこで若干の違和感を覚えてしまう) また曲想にアクセントを付けることや急激なクレッシェンドなどをすることは徹底的に避けられ、非常に練り上げられた音響美のなか、時間の感覚を失うほどに溺れさせてくれる。そして曲を聴き終えた後の充実感が、その演奏時間をものともしない素晴らしいものとなっている。(終楽章のコーダに入るとさすがにテンポが上がり、普通の速度になるが、これがちょうど具合の良いカタルシスとなっている) ミュンヘンフィルもこのスローテンポのなか、一時も途切れることのない集中力、弦楽器を中心とした繊細ながらしなやかな美音、そしてミスが皆無の技術力、どれも凄まじく(ベルリンフィルだってライブではこうは行かない)素晴らしい限りだ。 これはもうチェリビダッケ様式と呼べる彼独自の世界で、他に類似するものは存在せず、他の指揮者と比べてどうこう言うこと自体無意味だろう。(逆も然り) よって聞き手は好きか嫌いかしか存在しないため、これに馴染めなければ最後まで感動することはないだろう。しかしこの演奏はその内容から、この指揮者を今まで聞かなかった人にまで充分お薦めできる演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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チェリビダッケ | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1992.4.1 L | |
GNP | GNP 110/1 | 海賊盤 | |
演奏について
カラヤンを音楽監督に選んだベルリンフィルから離れたチェリがついに復帰を果たした時の演奏会の模様。 指揮者の登場時から「ブラボー」の歓声が湧くコンサートだが、演奏自体はチェリの美学を徹底させたもので、超スローテンポのなか不変の音響美が緩やかに流れていく。しかしオケが彼の音楽に慣れていないのか、音の冒頭を弱く入ってしまうのに併せ、全体に楽器を抑え気味で響きが薄く、やや物腰が弱い感じを受けてしまう。その分、夢見るような浮遊感と儚さに満ちた演奏だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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チェリビダッケ | ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団 | 1994.9.10 L | |
EMI | TOCE-9806/7 | ||
演奏について
この盤もチェリの死後に発売された正規盤のうち、ミュンヘンフィルとのライブを収録したものの1枚。 ついにCD1枚に収まらなくなってしまった彼の演奏だが、全体に流れる緊張感が希薄となり、音と音の繋がりがスカスカになってしまっている。また旋律に力がなくなり、ヨレが所々散見でき、チェリビダッケの衰えを強く感じてしまうため、ある意味もの哀しさを覚えてしまう演奏だ。 チェリ形式は頑なに守られてはいるもの、彼独自の耽美の世界が幾分色褪せているため、チェリの演奏を聞く喜びは薄く、ブートが特別嫌な人以外にはお薦め出来ない演奏だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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ティントナー | ロイヤルスコットランド国立管弦楽団 | 1997.5.6-7 | |
NAXOS | 8.554269 | 輸入盤 | |
演奏について
これにより広くその名を知られるようになったが、同時に遺言ともなってしまった(すべての曲を録音した後、バルコニーより転落。死後に残りの演奏が発売された)ティントナーのブルックナー交響曲全集。これはその中の1枚。珍しくもハース版を使用。 ブルックナーの本質を見事に捕らえ、何の小細工も感じさせない自然な息づかいは大きな流れをもって音楽を進めていき、安心してその中に身を浸らせることができる。 少し線が細い印象があるが、決して神経質ではなく、その響きは繊細で美しい。もう少し毒(もしくは味)があれば最高だが、終楽章の大きな盛り上がりが大変良く、聞き終えたあと充分な満足を得られる演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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テンシュテット | フィアデルフィア管弦楽団 | 1985.6 L | |
"O""O""O"CLASSICS | TH-004 | 海賊盤 | |
演奏について
非常に評価の難しい演奏。比較的速いテンポで、低い音からがっちりと積み上げた骨太の音をしており、作品が語るのに任せた忘我の音楽と言えるのだが、妙にテンションが高く、その躁状態の力感に圧倒されてしまうため、何か違和感を感じてしまう。ひょっとするとテンシュテットらしい無骨ながらどこかモチッとした歌い口が影響しているのかもしれない。 演奏自体は非常に見事で、ブルックナーの特徴を確実に掴んだものだ。彼のブルックナーが聞きたい人には間違いなくお薦めできる演奏だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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録音について
音質は普通よりやや良い方だが、ヒスノイズがかなり多いのでそれなりの心構えが必要。 |
フルトヴェングラー | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1942.4.7 | |
仏フルトヴェングラー協会 | SWF963 | 輸入盤 | |
演奏について
第2楽章のみ。 確かヒトラーが死んだことを告げるラジオニュースのバックに流れていた演奏だと言われるもの。1942年4月7日の演奏。モノラルのスタジオ録音。 演奏は深く静かに沈み込むもので、感情の高まりを極めて抑えており、遅いテンポは厳かな雰囲気を持つ。(ただしこれは録音のレベルが低いためかもしれない) いつもなら頂点に向かってアッチェレランドかけたりするのだが、この演奏のインテンポを守りつつ、深い哀しみを湛えて粛々と進んでいく様は心の深い部分に静かに染み込んでくる。第2楽章しかないが、それでも素晴らしい演奏と言える。 お薦め度 ★★★★★
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フルトヴェングラー | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1949.10.18 L | |
URANIA | URN 22.104 | 輸入盤 | |
演奏について
改訂版を使用しているが、テンポの変化などはなるべく控えられている。その代わり、第2楽章の頂点ではものすごい手前からティンパニをトレモロで打たせて、強大なカタルシスを生み出している。(当然、どの版にもない) 8番と違って感情を爆発させるようなことはなく、グッと抑えが効いていて、叙情的な(ただし甘くはない)演奏をしている。響きのスケールが大きく、曲に推進力があり力強い。しかしフルヴェン臭は他の曲(例えばベートーベン)に比べればかなり少なく、彼にしてはストイックで自然な演奏と言える。終楽章のコーダでアッチェレランドがかかるが、それは曲全体の構成から少しも逸脱しておらず、返って演奏に引き込まれるものとなっている。 お薦め度 ★★★★☆
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録音について
第2楽章以降すこし音のレベルが下がって、小さくなっているような気がする。 |
フルトヴェングラー | ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 | 1951.5.1 L | |
ARCHIPEL | ARPCD 0022 | 輸入盤 | |
演奏について
49年の演奏と比べて非常にテンポが落ちている。何より音楽に儚(はかな)さが漂い、後ろ髪を引かれるような寂寥感を残しながら音楽が進行していく。そして息の長い旋律を大きなうねりをもって歌い上げていく所などは深く心に沁みてくる。 先の演奏のような爆発力はかなり薄くなってしまっているが、全体の質が均一で構成にいびつな感じがまったくないのが大変素晴らしい。ただ曲の最後の盛り上がりが物足りないので、カタルシスを得ることは難しいが、曲中の陶酔感が言いようのない魅力となっている演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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ベーム | バイエルン放送交響楽団 | 1977.4.5 L | |
RE! DISCOVER | RED 9 | 海賊盤 | |
演奏について
速めのテンポでメリハリの利いた響きをしており、それでいながらしなやかで、とても自然な歌い口が朴訥とした雰囲気をもつ演奏を展開する。ブルックナー様式に相応しくない派手な音は全くなく、堅実な構成感と共にケレン味のない音楽を聞かせてくれる。そして終楽章のコーダで築かれたクライマックスは力強く、胸がすく感じがして大変満足感を得られる演奏だ。 お薦め度 ★★★★☆
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ホーネック | フランクフルト放送交響楽団 | 2001.11 L | |
Sounds Supreme | 2S-088 | 海賊版 | |
演奏について
驚いた。この指揮者のことは良く知らないが(1958年オーストリア生まれ)、この演奏から指揮者の体臭はわずかしか感じられず、まさしく“我”を滅した忘我の音楽が聞けることだ。これはスクロヴァチェフスキやティントナー等のCDですら指揮者の臭いが感じられたのに比べると驚異的なことだ。 第2楽章が第1楽章より速く、ややいびつな感じを受けるのが難点だが、頂点にあたる第5部ではなかなか壮麗にオケを鳴り響かせる。また終楽章もコーダに入ると盛り上がり、引き込まれるものがある。全体に清廉な感じがし、旋律線を伸びやかに奏でているのが大変好感を持てる。将来に大きな期待を持てる指揮者と言える。 お薦め度 ★★★☆☆
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録音について
音質はやや音像が遠いもの良好。 |
マタチッチ | チェコフィルハーモニー管弦楽団 | 1967.3.27-30 | |
SUPRAPHON | COCO-78206 | ||
SUPRAPHON | COCO-70414 | 再販 | |
演奏について
改訂版を使用しているようだが、マタチッチ独自の変更も加えられているようだ。 ゆっくりとしたテンポでひとつひとつの旋律を心行くまで歌い込んで行く。懐深くゆったりと呼吸する音楽は雄大なスケールを持ちながら、優しくこちらの心を包み込んでくれ、聞かせ所での音楽の大きさは圧倒されるほどで、素晴らしい限りと言える。 この演奏、特に初めの2楽章が筆舌に及ばないほど素晴らしく、マタチッチのブルックナーとしていの一番にお薦めしたい演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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録音について
スプラフォン名盤マスター・トランスファー・コレクションの復刻は大変素晴らしく、音が大変リアルで申し分ない。 2002年に再販されたが、音はまったく同じと考えて問題ない。 |
マタチッチ | ウィーン交響楽団 | 1980 L | |
HYPNOS | HYP 257 | 海賊盤 | |
演奏について
よく“象が踊る”と形容される彼の演奏だが、この7番の演奏に限ってはそのようなことはなく、長いスパンを大きな呼吸と大きな振幅でゆっくりと登りつめてゆっくりと下っていく。そのゆらぎがこちらを包み込むような包容力を持ち、心行くまで歌い込めれたメロディが大変心地よい。 この盤は無修正のライブだけあって、オケに色々とアラがうかがえる。また音楽にも多少ヨレている箇所があり、決して万全のものとは言えない。そして録音のせいか音がこちらに迫ってこず、旋律に対する力の漲り具合が薄く、爆発力にも乏しさを感じてしまうのがマイナスとなっている。 しかし録音の少ないマタチッチのブルックナー、加えて晩年のものとなると大変貴重なので、マタチッチが好きな方は機会があれば、ぜひ押さえておいて欲しい演奏だ。 お薦め度 ★★★☆☆
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録音について
このCDには録音年月日が記載されていないが、とりあえず80年の演奏だということが判っている。 |
マタチッチ | スロヴェニアフィルハーモニー管弦楽団 | 1984.6.22 L | |
スロヴェニアフィルハーモニー管弦楽団 | SF900041/1-2 | 自主制作 | |
演奏について
マタチッチ最晩年の演奏となるもので、昔デンオンから出ていた同演奏は彼最後のスタジオ録音だった。ただこの演奏はまったく同時期に行われたライブで、スロヴェニアフィル(≠スロヴァキア)の自主制作盤として発売された。 この指揮者特有の躍動感が薄まり、チェコフィル盤にあった心震わすカンタービレも影を潜めている。しかし澄んできれいな音色を伴った懐深い広々とした響きは健在で、寄せては返す波のように大きく豊かな呼吸で淡々と曲が紡がれていく。 特に沈み込むような第2楽章が良く、特別ヤマ場があるわけではないが、全曲に亘ってブルックナーにどっぷりと浸り込める演奏だ。 お薦め度 ★★★★★
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ヨッフム | フランス国立管弦楽団 | 1980.5.8 L | |
INA,memoire vive | 247782 | 輸入盤 | |
演奏について
フランスのオケを振っているため、過剰に田舎臭くならず音にキレがあり、それでいながら音色はまさしくヨッフム独自のものと言える。その一方、86年の最晩年に比べるとリズムに力があり、テンポも生き生きと変化していく。スケルツォがやや聞き劣りするが、第1楽章コーダの気迫のこもったfffと第2楽章のしみじみとしていながら時間が止まりそうな感覚が大変素晴らしい。なにより終楽章のコーダに入ると急に音楽が輝き出し幸せな感覚が胸一杯に満ちあふれてくる。その大きな盛り上がりは感動的で、思わず胸を熱くさせるものとなっている。 お薦め度 ★★★★★
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ヨッフム | アムステルダムコンセルトヘボウ管弦楽団 | 1986.9.17 L | |
The bells of Saint Florian | AB-15 | 海賊盤 | |
Altus | ALT-015/6 | ||
演奏について
ヨッフム死の半年前に東京の昭和女子大学人見記念講堂で行われた演奏会の模様。 彼のブルックナーほど何もしていないように聞こえる演奏はない。そして泥臭いとでも言える野暮ったい響きはカッコ悪いとさえ言えるかもしれない。しかし聞き進むにつれて、こちらを無条件で受け入れてくれるような慈愛を感じてしまうと、後はもうヨッフムの創り出す世界にゆったりと浸るのみとなってしまう。 この演奏もリラックスした流れで悠々としたブルックナーの音楽を聞かせてくれる。全体的に非常に遅いテンポで、音符が浮遊するかのように漂っていく。特に第2楽章など最遅とでも言えるテンポで進んでいくが、いつまでもこの響きの中に浸っていたい気分にさせる。この楽章の頂点は非常に劇的で、雄大な山脈のように音が立ち上がる様は壮大さを感じてしまう。(会場にいた人の話によると、ずっと椅子に腰掛けていたヨッフムがこの瞬間だけ立ち上がって指揮したそうだ) そして全曲の総決算と言える終楽章コーダの至福感は何物にも代えがたいものとなっている。 この時のインタビューで「また日本に来ていただけますか」の問いに「神がお許しになれば」とにこやかに答えてくれたそうだ。残念ながら神はお許しになられなかったが、こんな演奏を日本に残してくれたことに深く感謝の念を捧げたい。 お薦め度 ★★★★★
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録音について
ブートには録音年月日および収録会場については一切記載されてはいないが、86年の来日演奏だということは判っている。 音質に関しては言うまでもなくNHKのテープを用いたAltus盤が良く、今となってはFM放送から起こされたとみられるブートは大きく聞き劣ってしまう。 |
若杉弘 | NHK交響楽団 | 1996.1.29 L | |
RCA | BVCC-750 | ||
演奏について
鳴り物入りで始められた若杉とN響のブルックナーチクルス(「50代まではマーラーで、60代からはブルックナー」と彼自身語っていたように念願の企画だった)だが、運悪く朝比奈の伝説的なブル8と時期が重なってしまったためか、なんだか尻つぼみに終わってしまった感がある。(しかしFMで聞いた限り、最後の9番などなかなかの演奏だったと思う) CDも全集になる予定だったが、この後に出た3番を最後にそれっきりになっている。 この演奏は96年に東京のサントリーホールで収録されたものだが、全体におかしい所はなく、極めて均衡が取れた演奏で、響きもブルックナーらしく立派に表現できている。しかし聞いていてどうも楽しくないのだ。速めのテンポでサクサク進んでいくのだが、ブルックナーの魅惑的な音響世界(もしくは旋律)を味わい切る前にもう次のターンへ移ってしまい、聞いているともどかしさを感じてしまう。音楽の純度はそこそこ良いと思うが、コクがまったくないのだ。 しかし日本人指揮者でちゃんとしたブルックナーを振れる人が極めて少ない現在、彼には再びチャレンジして欲しいと切に思っている。 お薦め度 ★★☆☆☆
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