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#10800 
バラージ「 2018/12/09 22:56
テニスに見る現代史

 今年、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』とテニス史映画を続けて観たんですが、現代テニスの黎明期から今現在に至るまでのテニス史を振り返ると、現代世界史の流れと奇妙に重なる部分が多いんですよね。数年前に読んだ武田薫の『サーブ&ボレーはなぜ消えたのか』(ベースボール・マガジン社新書)にはそんなテニス史が詳細に描かれていて、これがなかなか面白いのでお勧めです。

>新大型時代劇『武蔵坊弁慶』総集編
 大河ドラマ『源義経』の総集編がなかなか面白かったんで、調子に乗って新大型時代劇『武蔵坊弁慶』の総集編2巻も借りて観ました。ちなみに完全版はレンタル店になかったんですが、あったとしてもさすがに今から全話観る気は起きないなあ。とはいえやはり『源義経』と違ってダイジェスト感はぬぐえませんでしたね(いやまあ実際ダイジェストなんだから当たり前なんだけど)。そのあたりは以前に観た『新・平家物語』『炎立つ』『花の乱』なんかといっしょ。そんなわけであくまでそんな総集編のみを観た感想です。
 新大型時代劇は低予算というイメージがありましたが本作は観ていてもあまりそういう感じはなく、大河ドラマと比べても遜色ないように感じました。ただ弁慶が土牢を怪力でぶっ壊したり、牛車を頭上に持ち上げたり、五条大橋の闘いで義経が橋の欄干などをぴょんぴょん飛び回るといった、ワイヤーによる特撮を交えた演出はさすがに人間技には思えず、見てて無理がありすぎ。
 それから弁慶を主人公に物語を展開するのは難しいということも感じました。そもそも弁慶は架空の人物に近く、物語の主なネタ元になる『義経記』は源平合戦をすっ飛ばしてその前後だけを描いてるんで、源平合戦における弁慶のエピソードは皆無なんですよね。そのあたりは創作しなければならないため、本来は義経の家臣に過ぎない弁慶が平知盛や木曽義仲(演:佐藤浩市)・巴御前(演:大地真央)らと関わるという、やや無理のある展開になっちゃってます(まあ巴御前もほぼ架空の人物ですが)。その一方で奥州下りや黄瀬川の対面ではさすがに義経を話の中心にしなければならず、今度は弁慶が脇役みたいになってしまって誰が主役なんだ状態になってるのもそれはそれでドラマとしては困りもの。
 平家滅亡後の展開はそんな無理もなくなるんですが、定番通りじゃ面白くないということか、頼朝と戦うために挙兵しようとする義経に弁慶が反対し、義経の怒りを買って暇を取らされるという展開に。そのため義経の都落ちや畿内流浪に弁慶は同行せず、義経の窮状を知ってようやく駆け付けるという展開になってます。このドラマの弁慶は平和主義者で、義仲や巴にも落ち延びろと勧めたり、知盛にも降伏を呼び掛けたりしています。最後の藤原泰衡(演:津嘉山正種)による襲撃も定番とは違い、親義経派の忠衡(演:坂東正之助(現:河原崎権十郎 ))が兄泰衡に討たれたことを知った義経らが(本作でも史実と異なり忠衡が先に討たれている)北方に逃れようとする途中で追撃してきた藤原氏の兵と戦闘になり、家臣たちが血路を切り開いてたどり着いた持仏堂で義経と妻が自害を遂げ、それを見届けた弁慶が立ち往生という展開になっています。
 あと弁慶の妻の玉虫が建礼門院に仕える右京大夫(演:真野あずさ)に仕えているという設定で、娘の小玉虫(演:高橋かおり)ともども平家の都落ちに同行するというのは源平ものでやたら見かける展開。手塚治虫の『火の鳥 乱世編』や大河『草燃える』『義経』でもやはり主人公の関係者が平家の女官になるんですよねえ。平家はどんだけ敵の身内の女性を抱え込んでるんだよ(笑)。

 役者陣では、中村吉右衛門の弁慶は貫禄がありすぎる上に芝居がどうしても歌舞伎調なんで(鬼平そのまんまというか)、序盤の荒法師時代はちょっと違和感があります。義経の家臣になったあたりからはハマってるんですが、安宅の関の勧進帳のシーンは歌舞伎の十八番ということもあってか熱演ではあるものの少々力が入りすぎ。あとジョニー大倉演じる伊勢三郎がどう見てもジョニー大倉にしか見えません(笑)。好きな俳優の長塚京三の平宗盛がどんなもんか見たかったんですが、総集編では1シーンちらっと出てくるだけでした。
 女優陣についてはやはり時の流れを感じるというか、玉虫役の荻野目慶子や義経の妻・若の前役の山咲千里なんかはその後を知ってるだけに、当時はまだ清楚な役を演じてたんだなあと妙に感慨深かったりなんかして(笑)。若の前は総集編では奥州に落ち延びたところでようやく登場し(本編では都落ちのあたりで登場するようです)、手裏剣で奥州兵と戦ったりしてました。一方、静御前役の麻生祐未は今でもあまり変わりませんが、20代のこの頃は特にすげえ美人でびっくり。しかしそれ以上にびっくりしたのは小玉虫役の高橋かおり。まだ子供じゃん!と思っちゃいました。この10年後には大林宣彦監督の映画『あした』で美しいヌードを見せてくれます。

>史点
 藤原道長の大河ドラマ化は足利義満以上に難しいでしょうねえ。これまで大河ドラマの主人公になった人は近現代や琉球を除けばほぼ武士だけで、女性も近現代以外は武士の妻や娘ですし(唯一の例外は『黄金の日日』の呂宋助左衛門)。僕も道長は興味があんまり……。日本史上の重要人物で、ある程度有名人でもあるとは思うんですが、合戦やチャンバラもないし、宮廷闘争劇だけでドラマとして1年持つのかなあ?と。
 道長が出てきた映像作品だと、他に映画『源氏物語 千年の謎』では東山紀之が演じています。僕は未見ですが、これは『源氏物語』の映画化ではなく、高山由紀子の小説『源氏物語 悲しみの皇子』の映画化だそうです。また歴史映像名画座にある『大江山酒天童子』では悪役どころで登場してるようですね(これまた未見)。僕が観た中では2015年にテレビ朝日で放送された単発ドラマ『陰陽師』に若き日の道長が出てきて、和田正人が演じてました。



#10799 
バラージ 2018/12/01 22:46
そして、スポーツに歴史あり

 ようやく地元で公開されたんで『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』を観ました。テニス史に残る歴史的名勝負の1つ、1980年ウィンブルドン男子シングルス決勝のビヨン・ボルグ対ジョン・マッケンロー戦を描いたスウェーデン・デンマーク・フィンランド合作映画です。
 当時24歳のボルグはウィンブルドン4連覇中のランキングNo.1で、直前の全仏オープンでも3連覇を達成してました。一方21歳のマッケンローは前年の全米オープンで四大大会初優勝したNo.2。常に冷静で寡黙で“アイスマン”と呼ばれたボルグと、審判にも食って掛かる言動で“悪童”と呼ばれたマッケンロー。プレイスタイルもベースラインで打ち続けるストローカーと、サーブを打つとともにネットにダッシュするサーブ&ボレーヤーと対照的な2人の、それまでの半生を描きつつ今でもテニス史上最高の試合に挙げられることの多い同試合が描かれていきます。よくできた映画ではありましたが、コアなテニスファンにとっては実は結構有名な話なんで、あまり新鮮な驚きとかはなかったですね。まあ細かい部分では初耳なところもありましたが。

 先日WOWOWで、これまた史上最高の名勝負の1つに挙げられる2008年ウィンブルドン男子シングルス決勝のフェデラーvsナダル戦を題材とした『フェデラーvsナダル 史上最高のライバル』という海外のドキュメンタリー番組を放送してて、これがとても面白かった。その番組でもそれ以前のライバル関係としてボルグとマッケンローが取り上げられ、2人がインタビューに答えたりしてました。


>足利義嗣と上杉禅秀の乱
 そうなんですか。最近の研究では義持と義嗣の仲はそんなに悪くなかったという流れなんですね。ただ、どっちにしろ上杉禅秀の乱における義嗣の行動はどうにも謎が多いんだよなあ。よく言われるのが、禅秀の側に義嗣と結ぶメリットがあまりないということ。義持と持氏の仲の悪さは周知の事実で、義持が禅秀の謀反を黙認する可能性もゼロではなく、逆に禅秀が義嗣と結んで義持に反逆する理由は希薄なんですよね。その後の展開もいろいろ謎があって、それこそ真相は藪の中といった感じの事件です。

>『岳飛伝』
 僕は未見なんですが、秦檜や高宗の描かれ方を聞くと、これまた歴史研究が反映されているのかなぁと思いました。昔、陳舜臣の中国史概説本『中国の歴史』を読んだ時に既にそういう風に書かれてたんですよね。五代十国時代には軍閥による王朝簒奪が頻繁に起こったため、北宋は軍人の地位を低下させたんですが、そういうことから軍閥である岳飛は高宗からも警戒されたんでしょう。また高宗はその即位の経緯から正統性に疑義が持たれ地位が不安定だったため、兄の欽宗を帰すことを金から打診された時にはこれをやんわり断ったりしており、このあたりは日本の南北朝時代北朝の後光厳天皇とよく似ています。

>『西郷どん』
 今年前半はよく観てたんですが、7〜8月にイレギュラーな仕事に切り替わった関係であまり観れなくなってしまいました。最後にちゃんと観た時はまだ沖永良部島で、二階堂ふみさん演じる愛加那との別れのエピソードにグッときたあたり。そこからの倒幕編はほとんど観逃しちゃいましたね。9月に通常業務復帰した後も中抜けした影響か、あまり興味が戻らず観たり観なかったり。江戸城無血開城の回の北川篤姫と松田慶喜の最後の出番は観ましたが、その後の明治編はいまいち興味がわきません。明治編に入るのがずいぶん遅い気がしますが、林真理子さんもあんまり気乗りがしなかったんじゃないかなあ。もしくは幕末編で思った以上に筆がのってしまったとか(笑)。
 西郷の征韓論についてはやはり遣韓論説になってましたね。まあ西郷が主人公じゃそうするしかないもんなあ。僕は昔一時流行った時から遣韓論にはちょっと無理があるんじゃないかと思ってたんですが、やはり近年の研究では否定的な見解が主流だとか。

>最近の歴史映画
 イギリス領インド最後の総督マウントバッテンを主人公とした『英国総督 最後の家』、スターリン死後の権力闘争を描いたコメディ『スターリンの葬送狂騒曲』、1987年の韓国民主化闘争の実話を描いた『1987 ある闘いの真実』なんかが地元で公開されたんですが、いずれも1日1回で1週間とかなんで観逃しちゃいました。他にもっと観たい映画(歴史映画ではない)なんかもありまして。そういえば知らなかったんですが、司馬遼太郎の『峠』が役所広司主演で映画化されるそうで。『峠 最後のサムライ』というタイトルで2020年公開だそうです。ま、僕は『峠』未読ですけど。

>歴史映像名画座
 すいません。別にせかすつもりはなかったんですが、なんとなく流れ的にそろそろ更新の時期なのかな〜と勝手に思って、情報をまとめて書いちゃっただけでして。どうぞご自身のペースでお進めください。



#10798 
徹夜城(久々に日曜夜に自宅にいた管理人) 2018/11/18 23:38
読みでのある「列伝」

 またしばらく書き込みをお留守にしました。先ほど「史点」を日付の変わる前にと更新しました。

>最近読んでる本
 ツイッターではつぶやいているのですが、こちらでも。このたび星海社新書で「室町幕府全将軍管領列伝」という分厚い本が出まして、じわじわと最初から読んでいるところです。「室町本」謎のブームなどと言われる昨今ですが、こういう企画もこういう時でないと実現しませんね。
 これまで将軍列伝のような本は出てましたが、この本は「管領」も全部ついてるところが凄いマニアック。「管領」という名前が定着する前の「執事」の段階から扱っていて、高師直や仁木頼章、そして細川清氏なんかも列伝が載ってます。細川頼之や斯波義将らも当然ありまして、序盤は大河「太平記」および「室町太平記」で僕にはおなじみの世界です。いまその辺が過ぎて義持時代以降まで進んできました。

 将軍ではない足利一族も一部取り上げられてますね。足利義嗣とか足利義視とか。義嗣の項目を読んでみると、義満死後も意外と異母兄義持との関係は悪くない、むしろ表面的にはかなり仲がいいようにも見える(ま、内心のことはわかりませんが)というのが紹介されていてちょっと意外でした。義持も義嗣に対して一定の配慮をしていて、上杉禅秀の乱にともなう破綻に至る直前まで仲は悪くなかったみたい、ということなんですね。先日のNHKの「歴史秘話ヒストリア」で兄弟が仲良く描かれていてちと不思議に思ったんですが、どうもこういう研究動向に影響されたものみたいですね。


>Киска さん
 反応が遅れまして。今回の「史点」でも第一次大戦終結百年を話題にしてるんですが、そういやそれはポーランドにとっては「独立回復」であったわけですね。
 ポーランド映画は僕もワイダ監督の作品を何本か、くらいしか見てないんです。いろいろと興味をひかれるものはありますが、見に行けるかなぁ。

>つねさん
 おや、チャーチルのそんな映画もありましたか。なんかそっちの方がひかれる気がします。情報はよく集めてないといかんなぁ。

>バラージさん
 大河ドラマの、総集編しか残ってないもののうち「源義経」は僕は未見でして、いろいろ参考になりました。何年か前に初期大河のデジタルリマスター版をNHkのBSで放送した際もこれの総集編はやらなかったんですよね。
 映画「五条霊戦記」は公開当時なんとなく興味を惹かれて劇場で見てます。隆大介の弁慶とか浅野忠信の義経とか、話題性はあったんだけどSFというかオカルトというか、なんだか独自の世界を展開して大騒ぎのすえに結局なんだったんだ、という映画ではありました。

 「歴史映像名画座」はちょっとしたリニューアルもかねておりますので、作業はもうしばらくかかりそうです…



#10797 
バラージ 2018/11/16 23:07
源氏と平氏と優しい奴ら(特に意味はない)

 ようやく観ました源平映画。といってもレンタル店にDVDがあったのは以下の2作品だけ。

『五条霊戦記 GOJOE』
 公開された年に観た友人が『RED SHADOW 赤影』と並ぶワーストに挙げていた映画(笑)。タイトルやパッケージデザインやSFコーナーに置いてあることから、『孔雀王』みたいなド派手なオカルトホラーかと思って敬遠してたんですが、案外真っ当な伝奇時代劇でしたね。もっとも観た人の感想を散見すると僕とは逆に娯楽SFアクション時代劇を期待してた人も多いようで(そりゃそうだ・笑)、賛否両論といった感じ。そこを抜きにしても、台詞が全体的にささやくようなぼそぼそしたしゃべり方なんで聞き取りづらいところがあるし、ラストもそれで終わり?って感じで肩すかしだったことも確か。あと個人的には女っ気が少ないのもちょっと。子供を産んでた女の人(演:粟田麗)ぐらいだもんなあ。とはいえ全体的にはまあまあといったところでした。歴史とか源平とかあんまり関係ない映画ですが、実際公開当時は永瀬正敏と浅野忠信の共演というところが一番のインパクトで(次いで石井聰亙(現・石井岳龍)監督ってところ)、それ目当てで観に行った人も多かったようです。

『虎の尾を踏む男たち』
 原作が原作だから仕方ないけど判官贔屓全開の作品で、判官贔屓嫌いの僕としてはそこはやはりちょっと面白くありませんでしたね。まあ、だからこそ敗戦濃厚な時局でも製作許可が降りたんだろうけど。大河内伝次郎がところどころ何言ってるのかよくわかんないし(まあ有名な話なんで、わからなくてもたいして問題はないんだけど・笑)、エノケンの芝居が今観るとコント調でちょっと浮いている気も。それと野外ロケとセット撮影のシーンの違いがまるわかりだよなぁ。とはいえ判官贔屓の部分を除けばまあまあってところでしょうか。あと、歴史映像名画座には「コメディ&ミュージカルのノリで描いた異色作」とありますが、ミュージカルっぽいところありましたかね? 一応、登場人物が歌うシーンはあったけど、ミュージカルっていうのとはちょっと違うような……。


>大河ドラマ『源義経』総集編・追記
 書き忘れてたんですが、#10656で触れた安宅の関のシーンには稚児に扮した義経の妻子と女性たちらしき人々がちゃんといましたね。能や歌舞伎のように安宅の場面だけ切り取るならともかく、その前後も描くとなるとやっぱり妻子たちもその場にいないとおかしいもんなあ。

>ポーランド映画
 ポーランド映画というとアンジェイ・ワイダ監督の『灰とダイヤモンド』『コルチャック先生』ぐらいしか観たことがないですねえ。どっちもすごく面白かったけど。ロマン・ポランスキー監督なんかも観たのはハリウッド映画の『フランティック』だけ。



#10796 
Киска 2018/11/12 11:01
「ポーランド独立回復100周年記念名作映画から見るポーランド史」

10日から開催されているポーランド映画祭、標題のようなセクションがありまして、観にパンフも無料で配布されていました。
制作年順に「灰とダイヤモンド」(第二次大戦末期)「約束の土地」(十九世紀末ウッチ)「夜と昼」(1863年〜1914年カリシュ地方)「大理石の男」(1960年代初頭クラクフ郊外)「戦場のピアニスト」(第二次大戦ワルシャワ)「リベリオン ワルシャワ大攻防戦」(1944年ワルシャワ蜂起)「ヴォウィン」(第一次大戦終結〜第二次大戦ヴォウィン(現ウクライナ領))
未見は「夜と昼」と「ヴォウィン」ですが、なかなか期待できそうです。
大好きなのは「約束の土地」、ワイダの最高傑作という声があるのも頷けます。ポーランド、ドイツ、ユダヤ3民族の若者が草創期の資本主義ウッチで友情と野望を繰り広げてゆく話ですが、ポーランド人青年が一番冷酷…という辺りが巨匠ワイダの目が冴えているところ。
「リベリオン」は私が観たポーランド映画随一の駄作です。観ると損する。ラストシーンは美しいけど。
歴史枠ではないのですが「マリア・スクウォドフスカ=キュリー」「ピウスツキ・ブロニスワフ〜流刑囚、民族学者、英雄〜」といった未見の伝記映画もおもしろそうです。
http://www.polandfilmfes.com/



#10795 
つね 2018/11/03 21:29
「チャーチル ノルマンディーの決断」見ました。

いい映画でした。まあ私の感想はたいてい甘いのですが。最近で辛口になったのは「最後のジェダイ」くらいですかね。

こちらの原題は「CHURCHILL」。D Day含めて4日間だけの物語なので邦題は正確でしょう。ポスターなんかだと「ダンケルクから4年」なんてあるんで便乗かと思いますがどちらも2017年制作。

公式サイト
http://churchillnormandy.ayapro.ne.jp/

単館上映なのであまりネタバレ気にせずいきますが、こちらのチャーチルはダンケルク以上に迷い悩んでいます。第一次世界大戦のときにチャーチルが立案して失敗したガリポリ作戦がトラウマになっていてノルマンディー上陸作戦の直前になって国王の前で作戦に猛反対。それが無視されると最前線に自ら乗り込むと言って国王に「我々は無事でいなければならない」と諭され、若者の死に悩まされて朝食をぶちまけ、夫人に三下り半を突き付けられる直前になり、前日には作戦が中止になるよう嵐を願うという迷惑っぷりです。
パンフを見ると「知られざる真実」とありますが、回顧録では天候を気にはしてますが淡々とした記述ですし本当なのかなあという気も。もっともダンケルクの時も、揉めた閣議を回想録では隠したりしているようですが。

どうしてもゲイリー・オールドマンのと比較したくなりますが、こちらも初日に新人のタイピストがつきます。前任者はクビになったそうで。おおレイトン嬢。もっともレイトン嬢の着任は映画とは異なる時期だそうですが。さて新しいタイピストもチャーミングなお嬢さんです。ちょっと前田敦子を思わせるメイクでギャレット嬢です。実はレイトン嬢以上にキーパーソンになります。
執事のような老人が出るのですが実は元帥。最後はやっぱり演説で締めます。



#10794 
バラージ 2018/11/03 00:41
NHK大河ドラマ『源義経』総集編

 名画座感想を書いてて、源平好きと言っていながらあまり源平の映画を観ていないことに気づきました。歴史云々ではなくまず作品として面白そうかどうかで観ているのでそうなっちゃうんだと思いますが、この際だから観れるものは観ちゃおうとなんとなく思い立ち、レンタル店でDVDを借りようとしたらふと目に入ったのが大河ドラマ『源義経』の総集編DVD。そうかテレビドラマもあったかと思い直し、そちらを借りて観ることに。
 総集編が残っている大河ドラマの中で最も古い白黒時代のものだし、今となってはドラマとしての出来はどうなのかなあと思ってたんですが、これが意外と面白かったです。これまで大河ドラマの総集編は『新・平家物語』『草燃える』『炎立つ』『花の乱』を観たんですが、全5回の『草燃える』は別として他の全2回の作品はどれもダイジェスト感がぬぐえず、単独の作品として観るとやはりいまいちとしか言いようのない出来でした。なのであまり期待してなかったんですが、編集とナレーションの上手さかそれとも義経という題材がダイジェストに向いていたのかほとんどダイジェスト感を感じさせず、1本の(じゃなく2本か)の昔の映画を観てるようでしたね。
 冒頭から現代(当時)の鞍馬の空撮で始まり、義経の幼少期は神秘と伝説に彩られていることがナレーションされ、義経が史実に姿を現す黄瀬川での頼朝との対面からストーリーを始めるという構成がまず上手い。これによって序盤の京や平泉の回を全てカットして、使う尺を短縮することに成功しています(後に金売り吉次(演:加藤大介)の回想としてほんの少しだけ出てくるが)。上巻は平家滅亡までで、合戦シーンでも実写の芝居に交えてやはり現代の空撮や合戦絵巻物の絵を使ったり歴史番組のごとくイラスト図で状況を説明したりと様々な工夫が凝らされており、また悪七兵衛景清(演:加藤武)の「錣引き」のエピソードでは芝居が歌舞伎調になったりと遊び心にあふれています。海上シーンにはブルーバックなどの特撮も使われてるようですが、白黒のためもあってその稚拙さもほとんど目立ちません(そもそも昔の映画やドラマにも合成とか結構使われてたんだよな)。下巻でも、最後の高舘での戦いは合戦というよりチャンバラ時代劇のノリで、義経は敵の太刀を奪って二刀流で戦ったりしてますが、それもまた面白い演出。
 原作の村上元三が脚本も担当しており、内容的には必ずしもべたべたな判官びいきではなく、頼朝が厳しさの中に弟への愛情も合わせ持つ器量人として描かれ単純な悪人になっていないのもいい。登場人物たちについては名前がいちいち字幕で出るわけでもなく、また役者もあまりに昔の人たちで大半が顔を見ても知らない人だったりするんで、その他大勢的な人物たちは正直誰が誰やらだったりします(笑)。平家側ではお定まりの知盛(演:市村竹之丞(後・中村富十郎))と教経(演:山口崇)がクローズアップされ、清盛は吉次の回想でチラッとしか登場しません。登場しないといえば後白河法皇や木曽義仲は本編にもまったく登場しないらしく、これは義経ものとしては珍しい。後白河は中村勘三郎が演じ撮影はされたらしいんですが、編集で全てカットされたんだとか。藤原泰衡(演:片山明彦)はさすがにまったくの善人には描かれていないものの、秀衡が義経をやたら寵愛して息子たちを差し置いて跡継ぎにしようとし、臨終の際も義経ばかり気にかけているため、そりゃああれじゃ泰衡やさぐれちゃうよなあとある意味ちょっと同情できるような、僕のような泰衡びいきにも納得できる描写になっています。また、史実では泰衡は義経を討った後に弟の忠衡も殺してるんですが、ドラマではおそらくあえて順番を逆にして先に忠衡を討っており、その忠衡を演じているのが先ごろ事実上の引退表明をした若き日の田村正和。
 また、#10651で書いたヒロインたち。実はこれを確認することが観た動機の1つだったりするんですが、静御前についてはほぼ定番どおりの描かれ方。オリキャラ「うつぼ」(演:御影京子)は上巻に出てきたようなんですが、どこに出てきたかははっきりわからず。おそらくは吉次の回想で一瞬だけアップになってた女性がそうなんではないかと思われます。蝦夷の少女モイヤ(演:仲宗根美樹)は序盤の平泉が全カットされたため出番なし。河越重頼の娘「るん」(演:堀井永子(後・堀永子))は意外に出番がちゃんとあり、頼朝によって義経の妻として京に送り込まれたものの、寝耳に水の義経は会おうとはせず、誇りを傷つけられ悲しむというシーンが描かれてます。後のシーンにおいて頼朝の台詞で鎌倉に送り返されたと述べられてました。オリキャラ「しのぶ」(演:小川眞由美)は序盤の平泉がカットされたため終盤の平泉にのみ登場。泰衡の妻となっており、このままでは義経に全てを奪われると夫をけしかける役回り。序盤の平泉がカットされているため、ただの泰衡の妻です。平時忠の娘・萌子(演:波野九里子(現・波乃九里子))は総集編では出番がほとんどカットされたようで、最後の平泉で突然出てきます。秀衡が義経に「九郎殿も父となられた」みたいな台詞を言うシーンが唐突にあり、次いで泰衡の襲撃を受ける最後のシーンでだけ母娘ともども顔を見せます。本編では後半はそれこそダブルヒロイン状態だったらしく、いろいろ検索すると波乃さんが当時を振り返ったインタビュー記事がいくつかヒットします。主演の尾上菊之助(現・尾上菊五郎)さんとは従兄妹だそうで。



#10793 
徹夜城(なんとか10月中二二度目の史点がアップで来た管理人) 2018/10/31 23:25
先週の「ヒストリア」

 こちらではずいぶん遅れた反応になってしまいました。ツイッターでは直後にだいぶ書いたんですけどね。先週の「歴史秘話ヒストリア」の足利義満回の件です。

 まず僕は見ていて当サイトの「室町太平記」を思い返すばかりでした。冒頭、義満が乳母である細川頼之の妻に連れられて京を脱出(細川清氏は出さなかったなぁ)、白旗城で赤松則祐ではなく細川頼之を登場させて、夫婦で義満を囲んで…というのはまさに「室町太平記」でもやったことでして。なんだか自分の書いたことが映像化されちゃった気分でした(笑)。
 頼之の妻がこのとき義満に同行していたという史料的裏付けはなかったはずで、僕が「室町太平記」でそうしたのは、乳母ならついていくだろう、という程度の考えからの行くションでした。実のところ頼之の妻って「乳母だった」らしいというだけで特に逸話などは残ってないんですね。

 番組ではその後、義詮が死に際に義満と頼之に「父子と思え」と遺言する場面、康暦の政変で頼之が失脚、その後幕府軍(河野氏の軍ですね)を撃退した頼之、やがて義満が讃岐を訪問して頼之の復活につながり、山名一族との明徳の乱へ…と元ネタが同じだから仕方ありませんが僕的には「室町太平記」部分ドラマ化気分で楽しめました(笑)。明徳の乱の頼之、なんだか「花の乱」の山名宗全みたいでしたが。
 やや残念だったのは、明徳の乱の勝利のあとすぐ続けて南北朝合体に話をもっていったために頼之の死の場面がなく、あとで義満と頼之の妻が惜しんで語り合う、というだけの演出になったこと。頼之の「本意至極なり」って遺言、カッコいいんだけどなぁ。

 義満の公家社会への進出も描かれ、後小松天皇も登場していましたが、例の後円融天皇(上皇)および厳子のドロドロ関係の騒動はまったく触れずじまい。番組としては義満の「いいところ」ばかり集めた感があり、こうした話は飛ばすんでしょうねぇ。
 後円融の件では「皇位簒計画奪説」も引き合いに出されますが、番組では現在の学界動向をふまえて「簒奪計画説」には否定的。ま、これも義満当人しか分からない話になっちゃいますから。義満死後の義持=武家、義嗣=公家の分担による協力関係、っていうのも恐らく何らかの元ネタがあるんでしょうけど、僕にはさすがに無理を感じましたねぇ。
 最後に義満と海外のつながりを紹介、小浜に「南蛮船」が来たというあまり知られてない話を持ってきたのはよかったです。どうせなら義満の外交ブレーンに「天竺聖」(東南アジア人らしい)とか「室町太平記」で大活躍させてしまった魏天など面白い人物がいることにも触れてもらいたいところでした。

 …ついつい書いちゃいますが、今回のヒストリアの扱い、「義満大河」への布石かなと深読みしたくもなるんですよね。南北朝がらみは天皇交代時でもないと企画が実現しない?と冗談半分で言われてますし。


>「岳飛伝」
 やっと見終えました。全69話。正直なところここまで長くする話じゃない。
 岳飛については表面的な知識しかないのでドラマ自体はそこそこ楽しめました。現代中国でのドラマ化ですから、さすがに鬼のような愛国武将ってわけにもいかず(それなりにそうではあるけど)、どっちかというとよき夫・よき父という家庭人面を強調してた感じ。
 敵となる「金」の人々も、まぁ野蛮な感じはありましたが単純に侵略者的には描かず、岳飛に対して大いに敬意を抱く武将も出てきます。金といえば女真族ですけどドラマではさすがにみんな北京語話してました。まぁしょうがないのかな。

 そして岳飛とくれば秦檜。当然悪役まわりではあるのですが、まだ戦争前の若い頃、岳飛と意気投合する場面があったり、金に拉致されて過酷な目にあったがためにある種の信念をもって金・宋和睦の策謀をめぐらす、という感じに描かれてます。岳飛を無実の罪におとしいれるくだりはどうしてもひどいのですが、処刑の前夜に「二人で語り合わねば」と牢獄を訪れ、酒をすすめて語り合う(さすがに理解はしあいませんが)場面なんかは結構泣けるものがありました。「岳飛は英雄として後世まで語られ、自分はその陰で悪名を残すのだろう」と覚悟してるセリフもありましたね。あとこのドラマでは皇帝・高宗も岳飛を警戒して策謀に積極的に加担してる描写なので秦檜のワル度が若干低下してる気もします。

 さてさて「歴史映像名画座」の作業にいい加減はいりますか。



#10792 
バラージ 2018/10/26 23:42
『三国志 大いなる飛翔』の謎

 『三国志 大いなる飛翔』については、今回はかなり要約して書いちゃいましたが、以前にもうちょっとくわしく書いてました(#10661)。『関公』というタイトルにもそっちで触れてますが、うーん何なんでしょうね? 総監督の「楊吉友」で検索すると「香港電影導演大全」というサイトではタイトルが『三國志』となっており、また「香港影庫 HKMDB」というサイトでは『三國志:關公』という作品と『三國志』という作品が別々に記載されてます。さらに中国語版VCDやDVDのパッケージやポスターと思われる画像には、簡体字で『関公』(簡体字だとおそらく文字化けするのでここでは日本漢字で記述)、繁体字で『三國誌』『三國誌故事 關公』というものがそれぞれあります。
 これらのことからの推測ですが、おそらく中国本土でのタイトルは『関公』で、香港や台湾で公開された際のタイトルが『三國誌』『三國誌故事 關公』だったのかもしれません。香港映画が台湾で公開される際に全く異なるタイトルになることはよくあるようですし、中国映画の香港(または台湾)公開でも同じことが行われたと考えると納得がいくような気がします。さらに日本で公開されたバージョンは中国からの直輸入ではなく、香港公開版(もしくは国際版)が香港から輸入されたんではないでしょうか。だから日本のデータサイトでは原題が『三國志』になっていると考えれば辻褄が合います。配給が東宝東和で、東宝東和というと当時はジャッキー・チェンをはじめ香港映画の配給を一手に引き受けていたような会社ですから、その可能性は非常に高いと思います。
 YouTubeについては全く考えが及びませんでしたが、「楊吉友」の簡体字で検索してみると確かに見つけました。徹夜城さんの観たものと同じかわかりませんが簡体字で『関公』上と『三国志:関公』下というのがあります。しかしタイトルの下にはHk movies(香港映画)とあり、中身の映像で確認するとタイトルは『(中文字)三國誌 (小文字)電影故事 (大文字)關公』となっており、おそらく香港公開版ですね。うーむ、わからん。日本版DVD『三国志 武将列伝』はとっくにレンタル店から撤去されてるし、わざわざ確認するためだけに取り寄せレンタルしたりしたくないもんなあ。
 肝心の原題がなぜ『関公』なのかも全然わかりません。ただいろいろ検索したら、Twitterで関羽を演じた役者は当時中国で「生きた関羽」と呼ばれるほどの関羽俳優だったとつぶやいてる方がいたので、ひょっとしたら集客のために関羽ものに見せかけようとしたのかなあ? ちなみに『関公』(簡体字)という北京語版DVDだかVCDのパッケージはなぜか関羽と周瑜というよくわからない2ショットなんですが、周瑜役が現在でも活躍する名優の陳道明(チェン・ダオミン)なのでそれが理由なのかも。

>歴史秘話ヒストリア
 テーマが足利義満ってことで超久しぶりに歴史秘話ヒストリアを観ました。久しぶりというか僕はこの手の番組はほとんど観なくて、前観たのは確か再現ドラマに好きな女優の野波麻帆さんが出てたから。調べたらテーマは岐阜県岩村城のおんな城主・おつやという人の話で、去年の放送でした。明らかに大河の直虎絡みの企画だな。
 で、足利義満の回ですが、一般向け番組だからまぁあんなもんかなあ。康暦の政変で花の御所を囲んだのが土岐と山名だけになってて、あれ?肝心の斯波は?とか思っちゃったんですが、まぁその後の土岐・山名討伐に話をつなげるためなんでしょう。たださすがに最後の、義持・義嗣兄弟が力を合わせてがんばろう、めでたしめでたしエンドは、おい!と思っちゃいましたが(笑)。Twitterの反応を見てみたら、義満というとやはりアニメ『一休さん』と今谷明『室町の王権』の印象が強いみたい。まあ僕もそうですからね。
 番組観てて思ったんですが、やっぱり義満大河作ってくれんもんだろうか。まあ実際にはかなり厳しいでしょうが、「バサラ将軍」を紹介した時についついそのあたりの実写化配役を妄想しちゃったんですよね。まず義満役は松山ケンイチ。『平清盛』を下回る低視聴率大河になっちゃいそうで申し訳ないんですが、松ケンさんの主演ドラマってことごとく低視聴率なんだよなあ。『ど根性ガエル』も個人的には面白かったんだけど……。後円融上皇は最近ダメ男がハマり役の忍成修吾で。三条厳子は誰がいいかなあ? メインのヒロインではないだろうし個人的好みで池脇千鶴か星野真里なんてどうかな……などと妄想するだけで楽しい今日この頃(笑)。



#10791 
徹夜城(急に寒くなって冬眠状態になりそうな管理人) 2018/10/22 23:51
ミスター大河の訃報

>つねさん
 「ミスター大河」の異名すらあったドラマ演出家・大原誠さんの訃報には僕もいろいろと感慨がありました。大河ドラマ自体の発足時からスタッフにいた人で、一番バリバリで演出を手掛けたのは80年代から90年代になるでしょうか。「徳川家康」「真田太平記」(準大河ですが)「独眼竜政宗」「八代将軍吉宗」「元禄繚乱」といったところが大原作品、ということになりましょうか(大河の演出家は複数体制なので個人の作品とはしにくいですが)。世代にもよるでしょうが、僕にとっての「一番面白かった大河」の時代を担った方だと思います。

>バラージさん
 毎度いろいろ列挙どうもです。整理するのも大変で(汗)。
 南北朝小説については、いずれ「小説で南北朝!」というコーナーをやろうとは思っていて、準備くらいはしています。短編は把握が難しくて知らないのも結構ありますね。「

 「歴史映像名画座」は一年以上更新をサボってますが、検索システムも含めていろいろやってはいます。いま「岳飛伝」があと一息で見終わるところなので、それを機にやれれば…というところでしょうか。下手すると「西郷どん」が終わるのが機になったりするかも(汗)。
 「西郷どん」といえば、先日の回で、ナレーション役の西田敏行さんが老後の西郷菊次郎役として出演してしまいました。僕は今年「西郷どん」と「翔ぶが如く」を同じ回数見るという遊びをやっておりまして、そのせいで余計に父子二代を一人の俳優が演じてしまったことが面白く思えてしまいます。ま、西田さんは家康と秀忠もやってますが。

 ところで「三国志 大いなる飛翔」についてなんですが、これの中国語原題は調べだしたら謎が次々でして。僕も以前ちゃんと調べたわけでもなく(というか調べようもなかった)「三国演義」なんじゃないかと思って書いたんです。そもそも中国では、日本で「三国志」と題する作品に「三国志」と題することがまずありません。まだ「名画座」に載せてない最近作られたテレビドラマ大作「三国志」も原題は「三国」です。

 「大いなる飛翔」について調べてみたんですが、中国サイトのあれこれ当たってみても「三国志」というタイトルの映画は見つからないんですよ。ウィキペディア中国語版でも三国志関連映画にこれが入っていない始末で。
 そこでスタッフ・出演者の方から検索してみましたら、中国版ウィキペディアみたいな「百度百科」で情報がみつかりました。スタッフも出演者も製作ねンも全く同じ映画が。
 意外にも「関公」ってタイトルになってたんですよ、これが。ノーカットで3時間20分と当時のパンフレットに載ってた情報と一致しますし間違いないでしょう。というか、全編youtubeに載ってたりしまして(汗)中身も確認できました。まったくおんなじ映画ですね。
 オリジナル版は黄巾の乱・桃園結義から始まり、最後は周瑜の死まで。日本公開版はバリバリ削って赤壁の戦いで終わりにしてました。130分という情報があるならそうなんでしょう(140分は僕の記憶)。1時間以上削ってるわけですが、オリジナル版も慌ただしい名場面集という印象は変わりませんでした。
 ただ謎なのは、これだけ「三国演義」を思い切りなぞる内容でありながらタイトルが「関公」つまり関羽伝という扱いになってること。公開時には別のタイトルでソフト化の際に「関公」にしたのかも…とも考えたんですが、今のところそういう情報も見当たらず、公開時から「関公」ということになるみたい。このため主役・トップタイトルが関羽役の人になるんですが、日本ではもっぱら劉備役か曹操役をトップタイトルにしていた記憶があります。



#10790 
バラージ 2018/10/21 19:46
歴史映像名画座の掲載情報について

 連日の書き込みになって申し訳ありませんが、そろそろ歴史映像名画座を更新される時期かな〜と思いまして、掲載情報について今までいろいろ書いたものを改めてまとめて書かせていただきます。

 新大型時代劇3作品の放送年はそれぞれ、『宮本武蔵』が84〜85年、『真田太平記』が85〜86年、『武蔵坊弁慶』が86年です。
『鶴姫伝奇』……「興亡瀬戸内水軍」というサブタイトルがついています。
『千利休 本覚坊遺文』……「覚」ではなく難しい字の「覺」が正しいようです。
『龍馬伝』……真木よう子の役名は「楢崎龍」です。
『項羽と劉邦 その愛と興亡』……最初に日本で公開されたのは138分の国際編集版でVHSはこちらのバージョンのみ。後に185分のオリジナル完全版も公開され、DVDはこちらのバージョンのみ(DVDが182分なのは多分第1部のエンディングを削ったバージョンではないかと)。
『項羽と劉邦 背水の陣』……5巻組(全10話)の完全版のVHSおよびレーザーディスクあり。通販のみの販売だったようで、VHSはシネマ・ルネサンス、LDはパイオニアLDCから発売だったようです。
『三国志 大いなる飛翔』……各種映画サイトでは日本公開版の上映時間をDVDと同じ130分としており、約20年前の映画データブックでもやはり130分。ビデオも130分のようで、140分とする情報は見つからないので130分が正しいのではないでしょうか? 原題も各種映画サイト、約20年前の映画データブック共に『三國志』となっており、中国のネット情報でもやはり『三國志』なのでそちらが正しいと思われます。
『三国志 諸葛孔明』……「パーフェクト・バージョン」という7巻組(全14話)の完全版のVHSおよびレーザーディスクあり。通販のみの販売だったようで、VHSはシネマ・ルネサンス、LDはパイオニアLDCから発売だったようです。
『ザ・エンペラー 西蔵之王』……劇場公開邦題は『ザ・エンペラー』で、『〜西蔵之王』というサブタイトルが付いているのはVHS邦題。
『ウォーロード 男たちの誓い』……日本で劇場公開されたのは113分の短縮版。DVDは126分の完全版。
『ラストエンペラー』……劇場公開されたのは163分。DVDはオリジナル全長版と両バージョンともあり。
『孫文』……本国公開版は170分で、日本公開版はそれを113分に編集したもの。VHS・DVDともに日本公開版のみ。
『観相師』……厳密には『観相師 -かんそうし-』という振り仮名?を含めた邦題が正式なもののようです。
『秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男』……オリジナルは160分ぐらいで、日本公開版は40分以上カットされてるとのこと。
『アラビアのロレンス』……完全版は227分。DVDは劇場公開版と両バージョンともあり。
『La leggenda di Enea(アイネアスの伝説)』……『トロイ』という邦題でビデオ化。劇場公開やDVD化はされてないようです。
『スパルタカス』……劇場公開されたのは184分。復元版は197分。DVDは両バージョンともあり。
『アマデウス』……ディレクターズ・カット版は180分。DVDは劇場公開版と両バージョンともあり。
『ルードヴィヒ』……最初に公開された際の邦題は『ルー「ドウ」ィヒ 神々の黄昏』で184分。完全版は邦題が『ルー「トヴ」ィヒ』。DVDは両バージョンともあり。
『Abraham Lincoln(エイブラハム・リンカーン)』……『世界の英雄』という邦題で劇場公開。ソフト化はされていないようです。
『トルーマン』……VHS邦題は『プレジデント・トルーマン』。
『JFK』……劇場公開されたのは189分。DVDはディレクターズ・カット版のみ。



#10789 
つね 2018/10/21 15:19
訃報

たまたま新聞(10月19日付日経)を見ていて元NHK演出家の大原誠氏の訃報に気付きました。ドラマの演出家というのは映画で言う監督と同じ役割らしいですが、局員ということもありどうも表に出てこない。実際、顔も知らないのですが、以前、管理人さんが「ミスター大河」と呼んでいた(#9609)のが頭の片隅に残っていました。棋士の中原誠氏に名前が似ているというのも多分にありますが。



#10788 
バラージ 2018/10/20 23:05
南北朝短編小説

 南北朝マンガはほとんど読んだことがないんですが、南北朝小説なら読んだものが少々あります。それらのうちで南北朝列伝において触れられていない短編をいくつかちょこっとご紹介。

 まず、高橋直樹の短編集『鎌倉擾乱』(文春文庫)に収録されている「北条高時の最期」。題名通り鎌倉幕府を題材とした短編集で、源頼家を主人公とした「非命に斃る」、平頼綱を主人公とした「異形の寵児」とともに収められています。3編の中では最も短く、また最もひねりのないストレートな話なので、正直言って最初に読んだ時は若干物足りなさを感じました。とはいえ決してつまらない作品ではなく、むしろ他の2編の出来が良すぎると言ったほうがいいでしょう(時代順に収録されているため、最も長く完成度も高い「異形の寵児」の後に読むことになってしまう。ちなみに僕は頼家が主人公の「非命に斃る」目当てで本短編集を読みました)。
 内容は、重病から回復した高時が執権を辞して出家するあたりから幕府滅亡と高時自刃までを、終始高時の視点から描いています。血気盛んな弟の北条泰家と悪役回りの長崎高資も出番が多く、ほとんどこの三者で物語が進んでいきます。他に長崎円喜や田楽の一忠も印象的なキャラクターとして登場し、大河『太平記』には出てこなかったらしい長崎高頼もチラッと登場。このあたりの物語はどうしても大河『太平記』のイメージが強いんですが、それとはまたちょっと異なる人物像が面白い短編でした。本作も含めて3本ともが面白い短編集なんですが、残念ながら現在は絶版です。

 続いて安部龍太郎の初期の短編集『バサラ将軍』(文春文庫)。『室町花伝』のタイトルで単行本化された5編の短編集にデビュー作「師直の恋」を加えて文庫化したものです。安部氏は自身でも書いてますが心情的にやや南朝寄りで、描き方にも明らかにその傾向が見られるので、足利ファンにはやや違和感や反感を感じてしまう部分が少なからずあると思うんですが、小説としては面白いこともまた確かです。こちらも現在は絶版。以下それぞれの短編について。
 「兄の横顔」は足利直義が主人公で、建武の新政下から中先代の乱が起こるまでが舞台。この短編の直義は尊氏に対するブラコン全開で、直義ってこんな人だったかなあ?と正直首をひねる部分もあります。尊氏は腹の底で何を考えてるのかわからない男で、直義のことも道具として利用しているのではないかと思わせる描写もあり、なかなかのワル。ちょっとだけ出てくる護良親王が直義と対照的に描かれ、やはり少々南朝びいきな感があります。
 「師直の恋」は有名な高師直が塩冶高貞の妻に横恋慕する話。暴れもので傍若無人な男が初めて知った恋にはウブ、という造形は一般的にはありがちなものの、それを師直に当てはめるのは珍しい。ただ僕はこういう暴力的な奴はあまり好きじゃないんですよねえ。
 「狼藉なり」も師直が主人公。光厳上皇への狼藉で死罪の決まった土岐頼遠の助命のために師直が奔走するという話で、それなら直義が悪役回りかと思いきやこの短編でも直接的には登場しない尊氏が同じようにワル。文庫題にも明らかなように安部氏は婆娑羅にも好意的で、頼遠や師直も比較的好感を持って描かれてます。
 「智謀の淵」は新田義興を裏切って謀殺した竹沢右京亮という人物が主人公で、この短編集を代表する完成度の高い短編です。旧主義興を罠に嵌めた右京亮が味方であるはずの関東府諸将からも蔑まれ、自らも罪悪感に苛まれて転落していく悲劇を描いた、読んでて気が滅入るようなひたすら暗く陰鬱な短編ですが、小説として面白いこともまた確かでそのあたりで評価が分かれそう。やはりこの短編でもやや南朝びいきで義興が英雄的に描かれる一方、畠山国清や足利基氏の造形は足利ファンには不満かも。造形としては見事なんですけどね。
 「バサラ将軍」は足利義満が主人公で、後円融天皇が妃の三条厳子を殴打して重傷を負わせた事件の前後を描いてます。僕はこの表題作が目当てで読んだんですが、この短編における義満らの人物像と描写にはかなり違和感が強く、また単純に小説としてもあまり面白くなくて期待はずれでした。南朝ではありませんがやはり安部氏はどうも天皇家びいきのような……。この事件については、ろくでもない夫を持った三条厳子がひたすら気の毒というのが僕の印象です。
 「アーリアが来た」は室町時代の話ですが、1408年に足利義持への献上品として日本に初めて象が来たという史実を基に、その象「アーリア」を京へ運ぶ馬借を主人公とした陽気でユーモラスな短編です。実在の人物が1人も出てこないため、歴史小説というより時代小説に近いんですが、暗い作品ばかりの短編集でこの短編が最後に置かれているのは読後感を良くしており、なかなか面白い短編でした。
 全体的には前述の通り「智謀の淵」と「アーリアが来た」が小説として面白く、歴史上の有名人たちよりも史実がほとんどわかんない人や架空の人物を主人公とした作品のほうが安部さんは得意なのかもしれません。足利義教時代の後南朝を題材とする長編伝奇小説『彷徨える帝』(新潮文庫、のち角川文庫)でも、実在人物を多数配置しつつ主人公は架空の人物でした。『彷徨える帝』はとても面白い小説なんですが、やっぱり南朝びいきでそこはちょっと引っかかるんだよなあ。


>戦争映画と名画座掲載情報
 #10780さん御紹介の『シー・バトル 戦艦クイーン・エリザベスを追え!!』は僕も知りませんでしたが、レンタル店に行くと戦争映画はやたらといろんな国のものがDVD化されてるんですよね。僕は戦争映画を観ることはあまりないんですが、たまに物色してみると、こんなマイナーな国の映画も!というのがよくあります。おそらく戦争映画は歴史映画と違ってミリタリーファンや戦争アクション好きなど一部の層に需要があるんでしょうねえ。
 で、ひょっとしたら他にも名画座掲載作品で実はソフト化されてたものがあるんじゃないかと調べてみたところ、「古代ローマ史」にある『La leggenda di Enea(アイネアスの伝説)』はallcinemaやamazonによると『トロイ』という邦題でビデオ化されたようです。劇場公開やDVD化されてないようですね。また「アメリカ合衆国史」にある『Abraham Lincoln(エイブラハム・リンカーン)』はKINENOTEやallcinemaによると『世界の英雄』という邦題で劇場公開されたようです。ソフト化はされていないようです。

>三国志ドラマ
 CSの衛星劇場(僕は未契約)で、『三国志 Secret of Three Kingdoms』(原題:三国機密)という中国の連続ドラマが始まったようです。主人公は後漢最後の皇帝・献帝劉協の双子の弟である劉平。ひそかに養育されていた彼は、曹操との戦いを決意したものの病死した献帝に代わって献帝になりすまし、曹操の野望と戦うことになる……というお話。原作小説があるらしいんですが、三国志ネタは尽きませんね。主演俳優は知らん人ですが、伏寿(伏皇后)役がレジーナ・ワン、唐瑛(献帝の兄・少帝劉弁の妻)役がドン・ジエです。



#10787 
徹夜城(自分も漫画で南北朝したい管理人) 2018/10/16 13:46
「マンガで南北朝!」更新。

いやぁ、じつに6年ぶりの更新。「バンデット」完結後にやると公約はしてましたが一年ほど遅れてしまいました。
今回追加したのは「バンデット」「大楠公」「君がために」「時代ロマンシリーズ」の4作。学習漫画・伝記漫画系はこの次の機会にまわし、今回は一般漫画作品にしぼることにしました。
南北朝マンガじたいがなかなか世に出ませんから、更新がとどこおるのも無理はないわけでして、ゆっくり追加していきたいと思います。
なお、まだ作業中ですが今回の漫画情報を反映させて「南北朝列伝」も近々バージョンアップします。


>onさん
 前回の「史点」は後日談というか続報が多かったですね。EM菌議連は騒ぎになったら実質かいさんしたようですし(そもそも活動を事実上してなかったとか?)、靖国神社の宮司は宮内庁にわびをいれて辞任、済州島の観艦式では大統領の乗る艦に朝鮮王朝水軍の旗艦を示す「帥」字の旗が掲げられたっていうんで日本側が抗議、といったもので。「帥」字旗については日本の一部メディアでは「李舜臣の旗」と騒いでましたが、一応あれは単に司令官の乗る艦を示すものなんで即李舜臣ってわけでもないんですが、まぁ日本側としてはどうしても連想しちゃいますな。



#10786 
2018/10/14 05:19
on

こんばんは。
史点にあった観艦式の件ですが日本以外の参加国にも言ってたみたいで結果が…中国は前日マレーシアは当日ドタキャンフィリピンには遅刻される、参加国全部が軍艦旗掲揚、半分はメインマストに戦闘旗(通常は開催国の国旗を掲揚)、ベトナムは韓国旗を掲揚せずタイは軍艦旗が数倍の大きさシンガポールに至っては半旗…。
この反応見ると各国の思惑はともかく相当非常識な申し出だったんでしょうね…旭日旗も護衛艦が真珠湾に掲揚して入港してた事実考えると流石に韓国の主張は無理があるし。
かし事実ですかねぇ。ソースが右寄りなので…さすがに半旗は…。

on


#10785 
不詳者 2018/10/10 04:32
景気の良い好戦的な言動をする人に言いたいのですが

正直、右も左も感情的で好戦的な人達にはウンザリしています。そして彼らは偽物だと思う。
私は人を殺してしまった事がある。殺したんだよ!
アフリカの難民キャンプでボランティアした時の事でした。子供が餓えていました。可愛そうで仕方なかった。
それで隠していたチョコやキャンディーを与えてしまいました。その結果、人を死なせました。
極度の栄養失調症の人は、いきなり高カロリーの食物を与えると、体内の電解質のバランスが乱れて、その結果、心不全を起こすのですよ!
子供が痙攣した時に、必死に数おうとした国境なき医師団のスタッフが、直後に私をタコ殴りしました。
言葉は解らなかったけど、「お前が殺したんだバカ野郎!」と言ってるのは理解できました。全て私の無知のせいです。だから私は薬剤師への道を歩きました。
景気の良い喧嘩腰な思想闘争する人達に言いたい!
それが何の役に立つのですか?
喧嘩するのが好きなだけでしょ?ムダだよそれは。
差別発言かも知れないけれども、だから文科系は嫌いなんですよ!
右翼左翼と言うけれども、そんなに簡単に人を分けられるものでしょうか?
私は親戚に二人、友人に一人、フランス外人部隊で中東やアフリカで従軍した者がいます。三人ともウヨクに近い思想を持ちます。移民政策に反対してる。
それは自分達はフランス国籍を取得する為に、フランス共和国の為に血を流したと自負があるからです。
彼らは権利が欲しいならば、義務を果たせと言う。
そうまでさてフランス国籍が欲しいか?とは思う。
それで、彼らか「極右」だと思います?
実はリベラルなんですよ!差別には抗議行動に出る!
そらは「外人」部隊の出身だからです。その戦友の多くは有色人種でした。実はフランス人も少なくともないらしいのですが、戦地では人種なんか関係ないでないですか。祖国に戻ると差別を嫌悪する側にまわる元外人部隊兵士は少なくないらしいです。
私の従妹がフランスに帰化して産んだ娘が、言葉が遅くて、地域の教育委員会に、自宅で日本語を話すな!
特殊学級に入れろ!と責められた時に、元外人部隊の「ウヨク」は必死に、移民系の医師やカウンセラーを探してくれて、その人達が、
「子供の発達は人それぞれだ。別に異常という程ではない!」と証言してくれました。今では娘は普通にフランス人になっています。
そして、父親である従妹の旦那ですが、フランス人の秩父とクロアチア人の母に産まれ、両親を亡くした後に、
フランス人の叔父に育てられたボスニア難民です。
とことん戦争嫌いで、難民に同情的。
その彼らが何故か、マリーヌ・ルペン氏に投票してるんですね。それは…旦那の言い分からすると、
全て物理的に限度があると。全ての難民を引き受けたい。でも際限なく引き受けると、必ず摩擦が許容量を越える。それは必ず分断を産む。
同化政策は非難されるが、私は同じカトリック系であったから同化が容易であった。だが、同じボスニア難民でも、ムスリム系や、セルビア正教会系の同朋は、反発もあり苦労したのを観ている。だから限度はあるんだ。
私は移民とかになった事がないので解らないです。
でも、その言葉は重いと思います。
私も徹夜城さんに相談する前に、貴兄が相談に値する方なのか信じる為に、過去ログを無作為に100は読んでいます。だから、ここは品のあるブログと判断いたしまさた。でも左翼でも下品な人はいますね?
誰とは言いませんが、Amazonの書評で発言した毎に文句を言っていた人とか。すぐにウヨとかサヨとか、人を判別して、武勇伝を語る人。それ国士様と変わらない。
外人部隊出身のウヨが、ムスリム系の医師やカウンセラーを連れてきて、アジア系の少女を救った事は理解できないのでしょう。世界はそんなに広くない。そして結果として言えば、少しづつリベラルに向かっていると私は思います!
それをぶち壊すのは、左翼でも右翼でも、彼のような
敵(ウヨでもサヨでも中立な私にはどうでも良いけれども)「敵をこらしめました」と、コメントに武勇伝を語るやうな人ではありませんでしょうか?
そういう人は「いらない」んですよ!
ガソリンを焚き火にぶたまけて、問題を複雑化させるだけで、本当な困った人達を助けるのにブレーキになるだけだから。右翼にも左翼にも立派な人はいます!
私は科学者として医療技術者として、管理職として双方に接してきました。私は「敵は卑劣な奴らだ!」と称する人達こそ、現場を混乱させる、自分勝手な人であると思います。




#10784 
不詳者 2018/10/10 00:42
史点と国士様と疑似科学

管理人さま。御返事有難うございました。確かに今の時代は後世にならねば評価できず、さらに自分の生きる時代こそが大変だと考えるむきがありますね。
その大変だが面倒な事を産むのかもしれません。
その国士様問題も保守思想を自認なさる、つね様が困ったもんだと嘆息されてらっしゃいます。
今の日本は大変だ!いや大変なんでしょうが、いつの時代も大変なのであって、そこを眼を三角にして、大変なのだ!とやると、とんでもないしくじりを起こす。
旭日旗、別に悪い意匠とは思いませんが、ノンポリの私からすると、本当に禁止になってしまうかもなと思います。そこは同意見です。
旭日旗が好きなのでなく、騒ぎたいだけ?
そこで思うのが疑似科学です。似ていると思います。
それは「信じたい人」が「信じたいファンタジー」を声高に主張する点です。旭日旗問題にしても韓国にも冷静な人達がいます。それは嫌韓運動していた知人のブログで紹介されているのを見ました(笑)
信じたいファンタジーしか信じない人って意外と多いですから。最近では「粉末化された水素水」ですか。
冷却乾燥により水素水を粉末化しているとの話でしたが、液体と固体と気体の関係を理解しているのでしょうか? 小学生レベルの理科の知識で充分に疑わしく思える商品ですが。でも信じたいのですね。
この種の水商品が出回る先駆けは、オステオパシーだかホメオパシーだかから始まると思います。
要は「水には記憶力がある」という理屈で、様々な薬品を希釈して、その水で病を治すというものです。
確かに水は時間さえ掛ければ大抵の物質を溶かしてしまうのですが。記憶力があるから記憶させて、希釈する事で、その記憶した元素の地からを用いる……。
私は一応、科学者ですので、そして薬剤を扱う者ですので「勘弁してくれ!」です。
口を酸っぱくして説明しても、信じたい人は耳を貸してくれません。それと国士様問題は似ているような気がいたします。
オカルトを全て否定する訳ではないのですよ。
井上円了という妖怪学?の学者さんがいました。
怪には幾つもの段階があって、フェイクや錯覚などの段階をふるい落としてゆく。それでも説明のつかないものは「真怪」であると。後世に説明がつくかも知れないが、今は真怪である現象も存在します。
でも、信じたい人は、そうした分析をせずに、一気に結論に走ろうとします。それ沖縄に中国の秘密機関が潜入しているとかと似てませんか?
中国にもアメリカにも諜報機関は存在するでしょう。しかし、それならば厚木とか横田とか横須賀に潜入させると思うのですが……。いや、あれをファンタジーだとして
保守の方にイジメられるのは嫌なので(私は中立が好きです)ファンタジーであるとは言いませんが、そのにしても優先順位が違うような気がいたします。
ならば横田、厚木、横須賀という首都周辺を空爆能力を持つ他国の基地が囲んでいるのは、どう思うのでしょうか?旭日旗を振る方々は、それを指摘しませんね。
指摘すると日米関係が危うくなるので言えない。
でも、そもそも本当に保守思想ならば、祖国が他国の軍事的な支配下にある事を問題視すべきと思うのです。
つまり、本当の保守思想は、今の日本では危険思想なのではないでしょうか?
そしてリベラルと言われる方々も、本当に世界基準のリベラル思想なの?と疑問に思っています。リベラルにしてはグローバリズムに対する意見を言わない。
メルケルさんもヒラリーさんもタックスヘブンに口座を持ち、多国籍企業とかから恩恵を受けている人達ですね。本当の社会主義者なサンダース候補は民主党の主流派に潰されたでないでしょうか?
そういう事を言うと、団塊世代のリベラルの方は「外国の事は知らない」と話を逸らします。ならば、何故にリベラルなどとカタカナ外来語で自分を表現するのでしょう?サンダースさんのように堂々と自分は社会主義者だと主張すれば良いのに。
私は前に申したようにノンポリです。左翼でも右翼でもない。戦争も嫌い!
日より見な事なかれ主義です。でも、だからですか、
保守もリベラルも、どっちも感情的に行動する人達は、
信じたい言説ばかり頭に入れて、どちらもファンタジーに酔っているように思えます。それはノンポリの科学者の端くれとして、オカルトにハマる人に似てあるなぁと感じます。いや、こんな事を書くと左右から攻撃されるかなぁ?
でも、それは徹夜城様が仰る、Web文化と技術で、人がよく噛まずに、消化不良のまま、安易にアウトプットする時代だからの現象でしょうか?
左右の極端な方におもうのだけれども、人口の胎盤は私のような戦争なんざ真っ平で、日より見な中間の人間ですよ。そして社会を変えたいならば、結局は私のような事なかれ日より見の中間を動かさないと実現しません。
民主主義国家では票の数で政治が決まるのですから。
なんで過激な言説の人達は、その中間が眉を潜めるような行動ばかりするのでしょう?
それでは自分達の理想の実現から離れるばかりだが。
やはりファンタジーなんでしょうね。ファンタジーに殉じていられるだけ、徹夜城様が仰るように、日本はまだまだ平和なのかも知れません。





#10783 
徹夜城(最近ちょこちょこと各所の更新作業を始めた管理人) 2018/10/07 23:01
我々もまた歴史的存在で

 どうも、ちょいとばかり書き込みに間をあけてしまいました。この間、この歴史関係以外でもあちこち更新作業を進めていたりしまして、頭があっちこっちに飛んでおりました(笑)。「史点」も二週間以内に更新したのは久々ですね。


>「日本の歴史」新巻刊行
 その「史点」でもチラッと触れましたが、1982年以来のロングセラーである小学館版「学習漫画・少年少女日本の歴史」に第22巻「平成の三十年」が刊行され、ニュースでも報じられました。その影響で当サイトの「マンガで南北朝!」の同シリーズのコーナーへのアクセスが増えたりしております。
 我が家にはこの「日本の歴史」のほぼ初版の一そろいがあるんです。この時は全20巻で完結してましたが、その後平成前期に現代史を延長して第21巻を出しています。最初のバージョンでは第20巻に満州事変から1980年代までをまとめてましたが、21巻体制になった際に戦争中のところを長くなるように書き直し、阪神淡路大震災あたりまでを収録する形になってました。あと考古学的知見が変わって来たので第一巻の旧石器から弥生までも全面改訂してましたね。
 全体の細かい修正まではチェックしてないのですが、基本的には初版そのまんまで維持されているような。ただ最近は頼朝、尊氏の肖像が別人と断じられてきて、それをもとにしたキャラデザインも変更せざるをえなくなるような…小学館はこのシリーズとは別にもう少し低年齢を狙った「弟分」のシリーズも出してましたね。
 他社でも漫画「日本の歴史」は今も続々と出版されてまして…「マンガで南北朝!」もそのチェックが面倒で停まってるところもあります(汗)。ああ、実はいま「バンデット」などについてようやく作業してるんですけどね。近日公開。


>やたろうさん
 反応が遅れて吸いません。ポプラ社の歴史人物漫画シリーズの後醍醐、尊氏、正成はいずれも入手ずみでして、いずれ「マンガで南北朝!」内でとりあげます。しかしこのシリーズでも新田義貞は一冊にしてもらえないんですな。


>阿祥さん
 やはりだいぶ遅れたレスになってしまいますが…映画「セデック・バレ」でも日清戦争直後の日本占領に抵抗する漢族の団体がチラッと描かれてましたね。それとはまた別に先住民セデック族も抵抗するが鎮圧され、それから時が流れてすっかりおとなしくなったと思っていたら「露社事件」が起こるという流れで。


>不詳者さん
 レスが大変遅れて申し訳ないです。お書き込みになった直後に読んではいたのですが、お答えするのがなかなか難しい、いろいろ思うところはあったのですけどなかなかまとめられない、でも当然思うことだよなぁ、といろいろ考えてるうちにレスしそびれてしまいました。

 今の時代が、以前とは異なって余裕がないというか殺伐としているような…というのは僕も感じなくはないです。ただ過去の歴史を振り返ればもっとひどい言動が平気で横行した次代もあったと思いますし、そこからすると今の時代はまだまだ平和で人道的な状態にあるのではないかと思います。またいつの時代でも人間はいま自分が生きてる時代が「今までと違う大変な時代」と思いがちなのでは、という考えも持ってます。

 ただここ二十年ほどで世界が急激に「情報社会」になった、それによってそれまで多くの人は頭の中だけでしまっていた考えを手軽に表に出してしまい、「可視化」されるようになったことは確か。また情報だけでなく人もボーダーレスにそれまでにないほどの速さと量とで動くようになってきたために、「新しい時代」に突入していることもまた事実だと思います。
 それがどういう結果をもたらすのか、不安になればきりがないのですが、僕自身は気にかけてはいるものの割と楽観的なんです。まぁ「歴史家」とまで自負してませんが、自分の生きてる時代がどういうものなのかは、それこそ「後世」にならないと分からない、ということでもあります。


>#10780さん
 ご紹介どうもです。文字化けしちゃいましたが、トルコ映画「チャナッカレ」の話ですね。ソフト化されてたんですな。しかし、売るためではあろうけどやたら説明的な邦題だなぁ…歴史物にはよくあることですが。


>つねさん
 早速の「史点」感想ありがとうございます。「EM菌」もそうですが、国会議員の一部にはSTAP細胞についてもしつこく擁護してる著名人がいたりしますからねぇ。「江戸しぐさ」やら、それと関わる「親学」やら、とくに文教族連中にオカルト系がしのびよってるのが怖い。この辺の話は原田実さんの最近の著作などが参考になります。



#10782 
つね 2018/10/07 22:14
既視感

疑似科学について書いていて、なんか最近も似たようなことに触れていたな、と思っていたら陰謀論でした。理系と文系に分けることはできるでしょうが通じるところはあるんでしょうね。



#10781 
つね 2018/10/07 21:49
疑似科学

史点お疲れ様です。

平井卓也議員は地元選出議員なので名前は知ってますが、そんなに注目されたのかなあという気が。「EM菌」の存在も初めて知りました。もっともこういった傍流的な話題は弱いところがあって、「江戸しぐさ」なんかも史点で批判されているのを見て初めて知ったので信じる暇もありませんでした(笑)。
で、「EM菌」で検索すると面白そうなサイトが見つかったのでご報告。

「疑似科学とされるものの科学性評定サイト」で、明治大学の科学コミュニケーション研究所が開設しています。歴史や客観性など多面的に評価していますのでためになります。

http://www.sciencecomlabo.jp/index.html

何回か発言していますが、私は保守的な思想の持主ですが、それだけに「国士様」は困りものですね。日清戦争後の下関条約の交渉時に李鴻章が「国士様」に襲われて日本が譲歩せざるを得なくなった事件を思い起こさせます。高坂正堯教授も「過剰な愛国心が国を滅ぼす」とか言っていた気がします。もっともこれは別に日本だけのことではなく、今回の旭日旗の件は国際的には韓国海軍の立場を悪くしたと思います。



#10780 
  2018/10/06 13:32


第一次世界大戦のところで紹介されている"&#199;anakkale 1915"は、
『シー・バトル 戦艦クイーン・エリザベスを追え!!』という邦題でDVD化されていますよ。



#10779 
バラージ 2018/09/26 22:44
儚く美しい女たち

 個人的怒涛の日々も今月初めで一段落です。やれやれ。

 『軍中楽園』という台湾映画を観ました。
 1969年、いまだ緊張関係にあった中国と台湾。その国境最前線にある台湾の金門島にあった、軍が管理する娼館「特約茶室」(コードネーム「831部隊」、通称「軍中楽園」)に集まった人々の群像を、それを管理する部署に配属された新兵の青年を主人公に描いたドラマ映画です。『モンガに散る』のニウ・チェンザー監督作ですが、ホウ・シャオシェンが編集に協力しているそうです。
 「軍中楽園」は国共内戦に敗れて台湾に逃亡してきた国民党が1951年に金門島に設置したとのこと。軍人は結婚が禁止されたためもあって島民女性への暴行が多発したことが理由で、やがて台湾全土に広げられたそうです。軍が民間に委託した形をとったことや全体的なシステムなど、日本軍の慰安婦によく似ています。1992年に全面廃止されるまで台湾では公然の秘密だったんだとか。
 映画ではそのような背景の説明は最小限にとどめ、架空の登場人物たちの架空の物語を描いており、主人公の青年が経験するほろ苦い青春や、小悪魔のような若い娼婦に入れあげる大陸に戻れなくなった古参兵の悲劇、軍や娼館の非人間性に耐えられず泳いで大陸に渡ろうとする主人公の親友と若い娼婦の恋などが描かれていきます。ちょっと美しくノスタルジックにまとめられすぎてるような気がしましたが、映画としてはなかなか面白かったですね。
 特に主人公と友情のような仄かな恋のような関係で結ばれる、影のある娼婦を演じたレジーナ・ワンが素晴らしく美しい。『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』では主人公を尻に敷く女傑の奥さんを演じてましたが、本作ではそれとは真逆の、暗い過去を持つ大人の女性を静かに演じていてこれまた好演。いい女優だなあ。


>『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』
 Wikipediaを見ると戚継光がものすごい恐妻家だったエピソードが書いてありますね。映画よりも結構えげつない話ですが……。

>名画座掲載情報
 『千利休 本覚坊遺文』のタイトルの「覚」の字は、難しい「覺」という字が正しいようです。



#10778 
不詳者 2018/09/26 07:38
歴史家の方ならヒントを下さるか思い変な質問を許し頂きたいのですが

私は歴史に詳しくないです。最近まで鎌倉時代と南北朝と室町の区別がつきませんでした。ただ本を(一般的むけの本です。専門書ではないです)読むと、原因は様々なのでしょうが、社会やそこで生きる人達の生活と言いますか、ガラリと変わってゆくようだと実感します。
それでも変化は前の時代に起因してるとこのように考えております。そこで質問なのですが、現在の日本というか世界というかは、その曲がり角にあるのでしょうか?
このように質問をいたしますのは、私が自身に息苦しさを感じているからでして、身の上相談するつもりはありませんが、社会が激動してゆくのに自分が変化について行けないと感じるからです。
それが私自身の問題であれば、それを改善すれば良いだけですが、私が日々に心の底で感じている漠然とした恐怖感のようなものは、歴史と社会が変わりある事から発しているように思うのです。それは心療内科に行くよりも、こちらの方たちの方がヒントをくれる気がします。
例を言えば、もの凄く社会が断裂してるように見えます。価値観も変わってきている。
コンビニの店員さんで外国の方を見ない日はなく、外出して他国語を聞かない日はありません。
そして社会に非常に攻撃的で苛ついた何かが渦巻いているように肌で感じます。私は50代ですので、バブル妨害も冷戦終結も、地下鉄サリン事件も見ています。
それでも20年前にはこれほど殺伐としていなかった気がします。私は薬剤師ですが911テロ事件の時に偶然に河の向こうからビルが崩れ落ちるのを見ていました。
その時に周囲にいるアメリカの人達が、声を失って手で十字を切るのを見ています。それは、そう…うまく言えないのですが、自分達の社会が足元から崩れ落ちるのを
見たかのような。そういう声にならない悲鳴に想えました。帰国後に凄い勢いでイラク戦争へ発展して行きますし。あの時の普通のアメリカ人の人達が見せたような、
何かを感じます。主観に過ぎませんが。
私は政治的な意見を持ちませんが、こちらの管理人様が史点で書かれてらっしゃるように、トランプ氏を観ていても、流石にこれは危険なんでないのか?と、不穏な気持ちになります。
歴史というのか文明というのか、とにかく社会の根底を支えるものが、ガラガラ崩れているのでないのか?
大規模な戦争が起きるかは知りませんが、私が死ぬ前に
社会そのものが激変する、そんな不穏な予感がします。
私自身は別に経済的に困窮してる訳ではなく、仕事に不祥事があるでなく、生活も安定しております。手術で休職してはいますが、じきに復職ですし。蓄えも家も持ち
そうした事からの不安ではないと断言できます。体力も術後に水泳を初めて、今では休職前よりも体力はあるのではと思います。
休職中に新聞や雑誌を舐めるように読むようになり、色々と考えたのですが、その結果が、これは世界が歴史的に変動を迎えていて、あのビルが崩れ落ちるのを見たアメリカ人たちと同じような恐怖を感じてるからではと推察に至りました。テロの恐怖でなく、社会や世界が全く別のものに変わってしまう恐怖です。
こちらの欄を拝読しまして、近代の日本や中国の御意見を幾つか目を通させて頂きました。その時代の人達もやはり恐怖を感じたのだろうか?と。
やくたいもない質問で恐縮なのですが、歴史という大河を俯瞰して観てきた方たちならば、私の推測が当たりであれば、私よりも何かを観ているかも知れません。
そう思い筆を取らせて頂きました。
御返事いただけるならば感謝にたえません。





#10777 
阿祥 2018/09/26 05:57
八卦山抗日保台史跡館

今、また台北に来て仕事をしています。この中秋節の三連休に、鹿港と彰化に小旅行に行きました。彰化の街で八卦山抗日保台史跡館という施設があって見学して来ましたので報告します。

八卦山は一般的には大仏のある公園として紹介されていますが、日本軍が台湾を接収した際の最大の激戦が行われた場所でもあります。それなので、その地を歩いて見たいと思い山を登ってみました。中国語では山ですが、英語ではBagua hillsとあります。小高い丘という感じです。
丘の麓には、八卦山抗日保台史蹟館があり、この史実を丁寧に説明していました。清朝に見捨てられ、台湾共和国を名乗ってですが、近代化された正規軍と民間人の義勇兵との戦いだった様です。台湾の人たちにとっては、現在の民主化につながる、英雄的な戦いという位置づけなのかもしれません。

大仏像の前はちょっとした展望スペースになって、ここからは彰化の街が一望できます。これは戦略上の要衝だったことがよく分かりました。

http://tourism.chcg.gov.tw/historic/



#10776 
やたろう 2018/09/24 21:47
南北朝時代を扱った教材マンガ(?)

またもや、南北朝時代マンガの紹介です。くもんの「太平記」や集英社「日本の歴史」を描かれた森藤よしひろ先生は集英社版「日本の歴史年表」でも南北朝を描いておられました。男臭い尊氏、老けた正成、カイゼル髭の義貞、ダンディな後醍醐帝、サラサラヘアーの護良親王、ハゲ師直とお馴染みの面々が登場しています。もっとも、顕家が兜で完全武装、直義が頭巾で髭面の弁慶風だったりと差異はありましたね。

他にも、ポプラ社から室町人物伝シリーズとして足利尊氏、楠木正成、後醍醐天皇(未読ですが絵はカッコイイ)が出ていました。大河ドラマや学研マンガの影響か、イケメンかつお人好しな尊氏が主役になると正成は渋い中年のオッチャン、反対に可愛らしく端正な正成が主役(悪やんに近いフレンドリーな民達と仲が良い)だとライバル尊氏が逞しい関東武士になっていました。足利尊氏は素材が良いだけに傑作でしたが、楠木正成がマンガ化されたのは久々で嬉しいですし、まだ読んでいませんが後醍醐陛下もマンガの主役になると言う快挙(笑)を果たされた記念すべきコミックはオススメします。

http://dewa33.blog130.fc2.com/


#10775 
バラージ 2018/09/21 22:37
女相撲とアナキスト

 『菊とギロチン』という映画を観ました。1923年の大正時代を舞台に、当時盛んだった女相撲一座と実在の過激派アナキスト集団ギロチン社の面々が出会うというフィクションを描いたドラマ映画です。
 暴力的な農夫の夫から逃げてきた新人力士の花菊、朝鮮人で元遊女の力士・十勝川、ギロチン社の天性のアジテーターで奔放でいい加減な中濱鐵、繊細で思いつめたようにストイックな古田大二郎の4人がメインの登場人物。花菊と古田は惹かれ合い、十勝川と中濱もまた惹かれ合う。関東大震災直後の閉塞した社会状況の中で、強くなりたいと願う女たちと、世界を変えたいと願い革命を志しながら恐喝と強請りと強盗を繰り返す男たち。大正時代の様々な階層の様々な人々を登場させ、関東大震災と朝鮮人虐殺、甘粕事件、シベリア出兵と在郷軍人会など多彩な要素を散りばめた力作でした。実在人物はギロチン社の面々の他に、労働運動社の大杉栄(回想のみ)、和田久太郎、杉崎源次郎、警視庁警務部長時代の正力松太郎らが脇役として出てきます。
 ギロチン社のやってることははっきり言って無茶苦茶なんですが、その無茶苦茶さが映画のまさに一種アナーキーなパワーになっています。とはいえギロチン社だけでは取っ付きにくい映画になりそうなのも事実で、そこに女相撲という題材を絡めたアイデアが秀逸。女相撲は江戸時代から盛んだったそうで、1960年代まであったんだとか。女力士役の女優たちがいずれも好演で、主演の木竜麻生の初々しさそのままの新人力士・花菊、過酷な人生を生きてきた十勝川役の韓英恵の熱演も胸を打ちます。中濱役の東出昌大、古田役の寛一郎(佐藤浩市の息子とのこと)も好演。
 3時間以上ある映画で、途中で1回話が終わったような感じになり、エピローグが始まったのかと思ったらその後も結構長く物語が続いたんですが、面白くて長さはあまり感じませんでしたね。ただ料金が2000円で各種割引も不可というのはちょっと、んー、と思ったんですが、資金が足りずクラウドファンディングで完成にこぎつけたらしい。まあJAFカードの割引で1700円で観れたし、結果的に面白かったんで満足です。

>映画『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』
 僕も観るつもりなんですが、地元にはまだ来ていません。地方あるあるってやつでして。

>歴史ネタCM
 サントリーBOSSのCMのタモリは、なぜか見た瞬間にアングラ時代の(もしくは『今夜は最高』とかの大人の番組の)タモリに見えてしまいました。なぜかは自分でもよくわからないんだけど。
 歴史ネタのCMというよりアニメネタのCMでしょうが、『一休さん』のでかい顔ハリボテかぶってるDoCoMo携帯電話のCMも有名な主題歌付きでやってますね。やっぱり一休さんというとあのアニメなんだな。



#10774 
つね 2018/09/16 01:28
肖像画

レスありがとうございます。
中公文庫の「日本の歴史」シリーズはまだAmazonで見ただけなのですが、「南北朝の動乱」は冒頭のみAmazonサイトで見られます。確かに読みやすそうです。
まあ「騎馬武者像」については南北朝期の代表肖像ということで問題ないのですが、同じシリーズの「鎌倉幕府」の表紙が有名な伝源頼朝像。こちらはまだ論争中のようですが、足利直義像ならこれも「南北朝の動乱」表紙絵にふさわしい。「鎌倉幕府」と間違える人が多そう。

Wikiで上記論争に触れている「神護寺三像」を読んでいたら、「新説への反論」の節で「日本の肖像画は必ずしも外見の類似から像主を判断できない」と主張されてました。あかんやろ・・・。高校時代は私も日本の人物画と洋画の人物画を比べると洋画のほうが写実的で優れていると思ってました。年取ってくると、日本画のほうもデフォルトされている部分もありますが、よく特徴を捉えているように感じています。信長、秀吉、家康とか徳川歴代将軍とか。家重とか家慶とか多少は美化されているはずですが、特徴がよく出ています。写実的でないと感じるのは、影が描きこまれないからかなあ。



#10773 
アジアのバカ大将 2018/09/14 23:37
「一輝まんだら」讃

 ご無沙汰しました。
 手塚「神」の「一輝まんだら」の文字をみて、黙っていられなくなり、久しぶりにカキコさせていただきます。
 同漫画は、義和団を肯定的(全面的ではありませんが)に描いた
世界唯一の文芸作品ではないでしょうか。義和団は、アメリカ映画「北京の55日」はじめ世界の芸術作品の中で、これまで「迷信的神秘主義排外集団」として、おどろおどろしい悪役で登場しています。
 中国本土や香港でも、「反帝国主義運動」として一応評価はさ
れてはいますが、映画、ドラマで義和団員を主人公にした作品は
みたことがありません。ジェット・リーの黄鴻飛シリーズの1本
では「白蓮教団」として、やはり悪役で登場する始末です。
 「一輝〜」では、そもそも主人公が義和団員です。同時に義和団の男女リーダーたちは、愛国心に燃えた、死を恐れぬ戦士らです。刑場へ引かれながらも、昂然と外国軍(日本兵)に「見ててごらん、中国人はお前さんがたを、きっとまとめて追い出すから」と毒づきます。
 主人公が亡命した香港では、かくまってくれた青年学者(後の北京大学学長・蔡元培)は、清朝に利用された点などを批判しつつも、民族の誇りを表現したとほめたたえます。この主人公の黄三娘と蔡青年との会話場面は、1ページを30コマほどに小さく区切り、蔡と三娘を交互に一人づつ登場させるという、あまり見ない表現方法が使われています。
 義和団を唯一人、前向きに評価した手塚治虫は正に「神」です。
義和団の本質(精神)については、別の漫画「男組」(池上遼一
画、雁屋哲作)が熱く語ってくれています。ただし「義和団」という文字は、同作品には一度も登場しません。
 主人公の流全次郎は傷つきながらも戦い、躊躇する仲間を
叱咤します。
 「今戦うことが必要なのだ。今戦わない理由は十でも百でも
見つけることができる」
 「ライオンに襲われている少年に、『きみはまだ戦う力が
 ないから』と戦うことをやめさせることは正しいのか?」
 池上隆一が大きな影響を受けた、ブルース・リー主演映画「ドラゴン怒りの鉄拳」も帝国主義者と、徒手空拳で戦う物語で、義和団を連想させます。
 義和団が決起した山東省(当時)は、新たに進出してきたドイツがキリスト教宣教師らを、いわば「鉄砲玉」に使って、農村部
への浸透していました。彼らは、しばしば中国人キリスト教
徒たちを支援し、民事訴訟に介入し地元民間の扮装を激化さ
せて、一般農民の怒りを勝っていたのです。
 義和団蜂起は、日本が間接的ながら大きな原因でした。日清
戦争の結果、日本が得た利権(租界以外での製造業経営など)
は、列強各国も最恵国待遇によって同様に獲得しました。さらに
帝国主義列強の中国利権獲得競争に火をつけました。
 清朝は1860年代、太平天国を鎮圧後、ベトナムでフランス陸軍を撃破して当時の仏内閣を総辞職に追い込んでいました。80年代
にはドイツから当時最新鋭の戦艦二隻を輸入するなどして海軍を
充実。「眠れる獅子」と恐れられていたのです。それが新興小国
の日本に敗れ、列強から「死んでいるブタ」と侮られ、領土・利
権争奪の場になっていたのです。
 当時の中国人知識階級はしばしば、列強による中国の「瓜分」
(西瓜のように切り分けられる)」の恐怖を語っています。義和団
の蜂起、義和団戦争(清朝は列強に宣戦布告をしています)は、こうした背景で起きたものです。このため小生は、義和団にほぼ百%同情的です。
 義和’(拳)を名乗る団体が初めて決起した山東省(現在は河北省に所属)梨園屯村には1960年代、次のような碑文の石碑が建てられました。
 「拳民 義に集まり、怒りは鬼域(外国勢力)へ向く
  先駆けを讃えれば ただ涙 賛歌よ届け 遥かな英雄たちに」
 (一部、小生の意訳あり)
 梨薗屯村では、1898年までキリスト教徒村民と、非教徒村民との
間で、教会用地をめぐる十数年来の土地争いが続いていました。フ
ランス人宣教師が支援するキリスト教徒らが次第に遊里になり、非教徒たちは、近隣の村に住む老拳法師範・趙三多の団体に支援を求めました。趙師範は、弟子約二千人とともに梨薗屯で武術大会を開き気勢を上げます。この出来事に驚いた知事が駆け付け、教会用地は公費で係争地以外に求め
ることで事態を収拾しました。しかし直後、宣教師が清朝に「教会用地を
無理矢理交換させられた。そもそも趙らは謀反人だ」と訴え、弾圧の兵を
派遣させました。ことここにいたり、村民らは決起し、義和団の乱の火の
手をあげたのです。




#10772 
徹夜城(学界動向には不案内な管理人) 2018/09/12 23:36
一時の南北朝本ラッシュは止まったかな

 「応仁の乱」のヒットのあと、室町・南北朝本が次々と出て「謎の現象」と騒がれたものですが、さすがに南北朝関連はすぐにネタ切れになった感。室町時代ならまだまだイケるようで、「室町将軍管領列伝」なんて本まで出るようです。そういや、先ごろここでも話題が出たゆうきまさみさんの「新九郎、走る」も室町ブームに意図してかせざるかはわかりませんが乗った形ですね。

>つねさん
 佐藤進一「南北朝の動乱」の表紙が「ザンバラ騎馬武者」である件ですが、あれを執筆した当時は「尊氏像」と完全に思われてましたからね、佐藤先生も本文中でこの画像に言及していて、あれは建武政権への挙兵を決めた時に出家しようと「もとどり」を切っていた姿である、と説明してました。現在では「尊氏像」説は完全否定されていて高師直説あるいはその子説が有力となってますが、「南北朝時代」を代表する、かつ象徴的な騎馬武者画像であることは確かなので、これからも使用はされていくと思います。

 ところで今頃になって知ったのですが、佐藤進一先生、昨年の11月についにお亡くなりになっていたんですね。新聞などでの訃報は出なかったようです。ウィキペディアで「佐藤進一」の項目に没年月日が乗ってて「あっ」と気が付いた次第で。あとちょっとで102歳におなりになるところでした。
 レビューを書くつもりでずっと放置してるボードゲーム版「太平記」のデザイナーさんは佐藤先生のゼミに出ていたようなことを書かれていたような…


>やたろうさん
 これはご紹介どうもです。こういう人物事典系でいくつか「マンガで南北朝」に使えそうなのあるんですよね。カゴさんのは初めて知りましたが。


>バラージさん
 「関ヶ原」といえば、缶コーヒー「ボス」のCM新作、タモリ家康と萬斎三成という豪華組み合わせの本格映像で目を引きますね。メイキングがyoutubeにありましたが、タモリさん自身も「サングラスの家康に違和感がない」と(笑)。僕なんかは「風雲児たち」で家康ほか徳川一族にみんな「タヌキ」の目のクマがついていたのを思い出してしまいました。

 テニスと言えば、先日移動中の時間つぶしにちょうど合ってたという理由で「ボルグ・マッケンロー」なる映画を観ちゃいましてね。スウェーデン映画で、1980年のウィンブルドン決勝を映画化したもの。これもまぁ一つの「歴史映画」になってしまうかもしれません。ボルグの少年時代をご本人の息子さんがやってる、というのも面白いところで。



#10771 
バラージ 2018/09/10 20:11
名画座感想 日本史テレビドラマ編

 名画座作品感想、日本史テレビドラマ編。NHK大河ドラマについてはこれまでも結構書いてきたんで、今回はそれ以外のドラマで観たものの感想を書きます。大河についてはそのうち書くかもしれないし書かないかもしれませんが(笑)、ま、とりあえず今回で最終回ってことで。

『関ヶ原』
 最後のあたり(石田三成が城門の前に引き据えられてるとこらへんから)だけ観ました。泥酔した小早川秀秋が、周りの人がみんな死んだはずの三成に見えて半狂乱になるというシーンは、大河ドラマ『真田丸』でまんまパク……じゃなかった、オマージュされてましたね(笑)。

『真田太平記』
 これ以前に大河ドラマ『おんな太閤記』『徳川家康』は確か全話観たんですが、新大型時代劇は平日放送で視聴習慣や視聴環境が違っていたこともあり、ところどころしか観ませんでした。まあまあ面白かったかな。女忍者が活躍してた記憶あり。真田幸村が好きなんで大坂夏の陣が楽しみだったんですが、『徳川家康』に比べて合戦シーンがしょぼくてがっかりした記憶もあります。今考えると低予算だから仕方ないんでしょうけどね。視聴率はやはり平日放送のためか新大型時代劇3作品とも10%台のようであまり高くありませんね。

『おんな風林火山』
 初回だけ観ました。大映ドラマ(『高校聖夫婦』『スチュワーデス物語』『不良少女とよばれて』『スクールウォーズ』『少女に何が起こったか』『乳姉妹』など)でお馴染みの面々をそのままスライドさせてきたような時代劇で、ノリや作風もまんま大映ドラマ。なので観ててちょっと笑っちゃうというか、歴史ドラマとしては違和感が強すぎましたね。まあ調べたらそもそもこのドラマが大映ドラマだったんで当たり前なんですが。それにしても主演が鈴木保奈美だったんだなあ。全然覚えてないや。この数年後に『東京ラブストーリー』で大ブレイクするわけですね。

『巌流島 小次郎と武蔵』
 全編観たはずなんですが、観た記憶はあるという程度であんまり覚えていません。どっちかというと小次郎が主役だったり巌流島のあたりに武蔵の親父が出てくるなど、ちょっと変わってるなと思った覚えがあります。

『鶴姫伝奇 興亡瀬戸内水軍』
 女海賊というテーマの珍しさと、主演が後藤久美子だからという理由で観ました。やや冗長で退屈する部分もあったし、最後のファンタジー風味(?)は人によって好き嫌いが分かれるかもしれませんが、僕はまあまあ面白かったです。なんと言っても大河ドラマ『太平記』でも男装で北畠顕家を演じたゴクミの凛々しい女武者ぶりが良い。美人剣士ものに弱いんで甘い評価になっちゃうのかもしれんけど(笑)。ちなみに日テレ年末時代劇で唯一大晦日以外に放送されたとのことで、それでこれだけ観たのかな?

『鬼平犯科帳』
 1番新しい中村吉右衛門版を本当に時々だけ観ました。家族が観てたんで自分もなんとなくという感じで、あまり熱心には観ていませんでしたね。家族はもちろん、僕も歴史どうこうとは全く関係なく、あくまで時代劇として観てましたが(主人公が実在の人物であることは知ってた)、同じ頃にやってた時代劇なら歴史と関係ない渡辺謙主演『御家人斬九郎』のほうが面白かったな。

『大友宗麟 心の王国を求めて』
 原作が遠藤周作の『王の挽歌』(未読)ということで観ましたが、大友宗麟の生涯を単発ドラマにするのはやはりちょっと無理がありましたね。話の筋を追うだけで精一杯という感じでした。

『新選組!! 土方歳三最期の一日』
 大河本編は全く観てなかったにも関わらず、なぜかこの続編だけチラッと観たのは、多分年末年始という放送時期のせいでしょう。本当にチラッとしか観なかったんで、それ以上は特に言うことはないんだけど。

『風林火山』(テレビ朝日)
 好きな女優の星野真里が出てるので観たドラマ(脇役の於琴姫で出番はほとんどなかったけど)。あまりよく覚えていませんが、2時間ドラマならこんなもんだろうという程度の出来だったような。山本勘助が由布姫に密かに寄せるプラトニックな想いというのが物語の重要なポイントなんだろうけど、北大路欣也と加藤あいじゃ、おじいちゃんと孫娘ぐらい年齢差がありすぎて、老いらくの恋にしか見えません。

『坂の上の雲』
 第3部だけチラッと観ました。とにかくずーっと戦争ばっかやってんな〜という感じでしたね。あまりに戦場ばかりなんでさすがにちょっと退屈でした。3年またぎっていう放送形態はちょっとどうなのかなあ。普通のドラマファンは1年も前の話は結構忘れちゃってるだろうし、実際視聴率も1年ごとに下がってしまったようです。

『塚原卜伝』……#8954、#8988に記述。全7話のうち第2〜5話あたりを観ましたが、ストーリーがあまりにも突っ込みどころ満載だったんで、原作『塚原卜伝十二番勝負』ではどうなっているのかとパラパラ立ち読みしてみたら、12本の連作短編小説(のうち若い日々の6本をドラマ化)で一つ一つの話は短く、まともにドラマ化すると1話15分くらいで終わっちゃうような話でした。そのため大幅に水増しというか原作から骨子だけ借りたほとんどオリジナルに近いドラマですが、原作への肉付けが上手くいかず支離滅裂になっちゃったようです。

『陽だまりの樹』……#9045、#9050、#9062、#9073、#9076、#9088、#9135、#9138、#9162に記述。
『一休さん』……#9162、#9373に記述。
『火怨・北の英雄アテルイ伝』……#9299、#9320、#9324に記述。
『足尾から来た女』……#9520に記述。
『かぶき者慶次』……#9961に記述。
『徳川風雲録 八代将軍吉宗』……#10404に記述。


>名画座掲載作品情報について
・新大型時代劇3作品の放送年はそれぞれ、『宮本武蔵』が84〜85年、『真田太平記』が85〜86年、『武蔵坊弁慶』が86年です。
・『龍馬伝』の真木よう子の役名は「楢崎龍」です。

>手塚日本近現代史マンガ
 手塚治虫自身も、『陽だまりの樹』で幕末、『シュマリ』で明治、『一輝まんだら』で大正、『アドルフに告ぐ』で昭和戦前戦中、『奇子(あやこ)』で戦後すぐ、『MW(ムウ)』で沖縄返還期と、別に意図したわけではないのだが日本の近現代史を舞台としたマンガをいろいろ書いてきたと何かで言ってましたね。僕は『陽だまりの樹』『アドルフに告ぐ』『奇子(あやこ)』は読んでますが、『一輝まんだら』は未完ということもあって未読です。

>『オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム』
 CSのチャンネル銀河で放送されたものが、DVD化され、さらにBS日テレで放送されるものと思われます。オリジナルの1話あたりの放送時間が長すぎるため、日本では2話に分割して放送したとのことで、放送されたのはシーズン1全48話(オリジナルは24話)。チャンネル銀河では視聴率が予想以上に好評だったことから現在シーズン2全79話(オリジナルは39話)を放送中だそうです。

>終戦番組
 今さらですが、今年はNHKでノモンハン事件、TBSの報道特集でサハリン残留日本人、NEWS23で満州に侵攻したソ連軍による日本人女性への性暴力が取り上げられてました。どれもなかなかの力作でしたね。

>大坂なおみ、テニス全米オープン女子シングルスで優勝!
 まさか日本人選手がグランドスラム大会のシングルスで優勝する日が来ようとは……なんとも感慨深い。生きてる間に見ることはできないかと思ってました。錦織選手にもぜひ続いてほしいものです。



#10770 
やたろう 2018/09/09 18:06
カゴ先生の南北朝時代コミック

お久しぶりです。南北朝時代を扱ったマンガで、面白いと思ったのを紹介致します。

実業之日本社「まんがで攻略 日本の歴史人物事典」:尊氏が悪役で描かれたマンガでお馴染みのカゴ直利先生が描かれた作品です。イラストは可愛らしく、後醍醐天皇は端正よりかは肖像画に近いパワフルな雰囲気、正成は汚物攻撃するコミカル英雄、肝心の尊氏は正義感ある豪傑でした…が、問題は新田義貞!鎌倉幕府を倒す立役者なのですが、泣きべそかいて切腹する高時の「死ぬのはイヤじゃ&#12316;ん!」にだいぶ食われた感じでした。

マンガ自体は人物紹介に1ページ&#12316;2ページ程度割かれた、ダイジェスト的なコミックでしたが、講談風&皇国史観の影響は少なく、比較的客観性が重視された、教材としても楽しめる作品でした。それにしても「死ぬのはイヤじゃ&#12316;ん」は、カゴ先生の持ちネタなんでしょうか…(笑)

http://dewa33.blog130.fc2.com/


#10769 
つね 2018/09/08 16:09
昔は「手塚」は「てつか」と読むと思ってました。

ローマ字表記だと「tezuka」となっていて初めて気づきました。でもニュースなんかだと「てつか」と言っているように聞こえる・・・。

それはそうと、手塚治虫の歴史漫画だと遺作でやはり未完の「ルードウィヒ・B」が印象的です。主人公はもちろんベートーヴェンですが、もう一人の主人公はフランツという架空のウィーン貴族。母親の体内にいたときに、「ルードウィヒ」という名前のクジャクがトラブルを起こしたことが原因で早産で産まれ、母親はショックで急死してしまい、「ルードウィヒ」という名前に因縁を持ちます。フランス革命戦争やベートーヴェンの個人史、モーツァルトやハイドンといった実在人物も絡むのですが、本当にいいところで終わってしまいます。病床でも連載を3つ抱えていたそうですが。

>佐藤進一「南北朝の動乱」
レスありがとうございます。やはり表紙絵で敬遠しては駄目そう(当たり前だ)。でも古典文学の表紙を「ジョジョ」や「デスノート」などの漫画家が手がけると話題になって売り上げも伸びたということがあったからやっぱり見た目は大事で、デザイナーの腕の見せ所なんでしょう。
「陰謀の日本中世史」ではどういう扱いだったんだろうと読み直すと、引用されている範囲ではどうも否定的な扱いを受けてますね。まあ乗り越えるべき存在ということでしょうか。以前、ここでは後醍醐天皇の陰謀のことで話題になりましたが、尊氏については特に「陰謀家ではない」という前提が置かれているように見えます。野心家とは思いませんが、性格も含めて一筋縄ではいかない人物だと思います。



#10768 
徹夜城(今週は台風のせいでちょっとスケジュールが楽な管理人) 2018/09/06 23:26
手t塚歴史漫画

 やれやれ、台風が通り過ぎたと思ったら北海道で大地震。とかくこの国は災害のバリエーションに富んでおります。

>一輝まんだら
 先日言及した手塚治虫の「一輝まんだら」、この際だからと手塚全集版を入手して読んでみました。
 いやいや、これが面白い面白い。このところ僕が関心を寄せている分野(辛亥革命、血盟団事件、二・二六事件など)がすっぽり入ってるテーマだから、というのもありますが、それを抜きにしても手塚流歴史フィクション漫画の手法が見事に発揮されていてグイグイ読ませちゃうんですね。魅力的な架空人物が縦横に活躍して実在人物と史実に巧みに絡んでいく、というやり方はこの作品の時点で確立していたんですね。

 物語の冒頭は中国、「義和団事件」から始まります。女主人公・姫三娘は不美人ヒロインながら大変なバイタリティ、生命力の持ち主で、義和団事件の混乱を生き抜き革命運動に関わりを持って日本へ渡ります。そして日本で、まだ一学生の北輝次郎、のちの北一輝と出会う。北は社会主義思想と進化論を組み合わせた国家論を論文に書き…というところで残念ながら話は終わってしまいます。連載していた雑誌「週刊漫画サンデー」(少年サンデーとは無関係)が雑誌の編集方針を変えたため読者層と会わなくなったための中断、ということのようで、全集版の手塚本人のあとがきでも「どっかで連載させて」と続きを書く意欲を見せています。

 そんな尻切れトンボの漫画ながら、構想的にはかなりできていたと思われます。実在人物は北一輝はもちろん孫文など中国革命関係者が登場し(「宋くん」とだけ呼ばれてるキャラは北一輝と親友になった宋教仁かも)、そこへ日中の男女架空キャラが自在に絡んで話がふくらむ。物語は日露戦争直前で終わってしまいますが、そのあと辛亥革命はもちろん、その後の血盟団事件やら二・二六事件まで、日本がどんどんオカシクなっていく流れを正面から描くことになったろうなぁ、と思うとホントに未完が惜しまれます。
 北一輝という、なかなかに複雑な怪人物を主役に日中近代史を描こうというのはかなりの野心作で、手塚治虫が北一輝という男のどこに興味を抱いたのかが気になります。北と、二・二六事件の評価をどうとらえていたのかというのも気になるところで。
 それにしても、手塚治虫がこの漫画を描いたのは1973年ですから北一輝が死んでからまだ36年しか経ってないんですよね。そして執筆時点から現在までの方が時間が長くなってしまいました。考えてみりゃ手塚自身も北一輝とある程度同じ時代を生きてるんですよねぇ。

 手塚治虫は「火の鳥」「ブッダ」はもちろん「陽だまりの樹」「アドルフに告ぐ」といった歴史大河ドラマを、作家人生の後半でとくに多く手がけましたが、年代的にみると「一輝まんだら」はそれらの中でも早期のものながらその後の創作のプロトタイプになってるような気もします。


>つねさん
 佐藤進一「南北朝の動乱」ですが、発表された当時からすでにそのような「名作」との評価があったように聞いています。実際、日本の南北朝史研究はこの本で述べられた佐藤氏の見解を、いわば「定説」あるいは「たたき台」として展開していたようです。最近では「初期室町幕府研究の最前線」なんかを読むと若手研究者らによって佐藤氏の見解への批判、異論も結構出てきているようです。それでもやはり研究の出発点として絶対に抑えておかねばならない古典という評価は変わらないと思います。


>歴史映像情報
 以前ここで何度か話題にした、トルコ製大河ドラマ「オスマン帝国外伝・愛と欲望のハレム」が10月からBS日テレで放送となるようです。スレイマン大帝の一代記といっていい内容で決して「外伝」でもないんですが、宮廷ドラマ中心ではありますからね。やたら長いドラマなんですが、どこまで放送するんだろ。



#10767 
バラージ 2018/09/06 15:35
またまた、スポーツに歴史あり

 『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』という映画を観ました。
 1973年に、当時の女子テニスのトップ選手ビリー・ジーン・キング(キング夫人と呼ばれた)と、第二次世界大戦の頃に男子テニスのトップ選手だったボビー・リッグスとの間で行われた男女対抗試合“BATTLE OF THE SEXES”を描いたドラマ映画です。
 当時すでに引退していた55歳のリッグスは、「女子選手はトップであろうと俺のようなロートルにも勝てない」と突如当時の女子テニスのトップ選手に挑戦状を叩きつけ、まず当時キングとナンバー1の座を争っていたオーストラリアの“世界一強い母”マーガレット・コート(こちらはコート夫人と呼ばれた)を破ります。次いでリッグスは“ウーマンリブの旗手”キングに挑戦。ヒューストンのアストロドームで行われた試合には3万人の観客が詰めかけ、テレビ中継も行われて大変な話題になったとのこと。結果はキングの勝利で、人々を熱狂の渦に巻き込んだそうです。
 映画ではその試合に至るまでの、男女の賞金格差への不満から脱退した女子選手たちによる新組織の結成や、後に明らかになるキングの同性愛志向に対する自己葛藤、むちゃくちゃな挑戦をするに至ったリッグスの事情などを描いていきます。
 リアルタイムではもちろん知らないんですが、テニスファンとしてそういう試合があったことは知っていました。しかし映画として細かいことをいろいろ知ると、へぇーという感じで近現代文化史としても興味深い映画でした。なかなか面白かったです。ハチャメチャだけどどこか憎めないリッグスのキャラが良かったですね。



#10766 
バラージ 2018/09/02 00:04
訂正

 河合隼雄の著作で白土三平の『赤目』などが取り上げられていたのは『中空構造日本の深層』(中公文庫)ではなく、『書物との対話』(潮出版社)でした。



#10765 
つね 2018/09/01 21:58
「日本史の論点」

タイトルでEnter押しただけで書き込まれると萎える・・・。OSの設定が悪いのかなあ。

まあそれはとにかく、中公新書の「日本史の論点」を購入しました。
まだパラパラ読んだだけですが、かなりニュートラルな視点で最新の学説を紹介しているように見受けられます。最初の「邪馬台国」は「邪馬台国が倭国唯一の権力ではない」として、「ヤマト」は普通名詞として日本全国にあった。大和盆地には纒向を中心とした権力があり、北部九州には邪馬台国を盟主とする地方政権の倭国連合が併存していた、というのは言われてみればなるほどと思わされるものです。

南北朝論では「南朝はなぜすぐに滅びなかったか」がありますが、この中での「南北朝時代論」とえいば、佐藤信一氏が著した『南北朝の動乱』(1965年)がある。これは不朽の名著であって、今なおこの内乱に関する最高水準の書で、これを超えるような概説書、通史は出ていない」というのが目を引きました。お弟子さんならともかく(今谷明さんがそうなのか存じ上げないのですが)、ここまで学者が学者を持ち上げるのはなかなか見かけません。Amazonで見ると表紙絵がザンバラ髪の武将絵なのが残念ですが。



#10764 
つね 2018/09/01 21:41
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#10763 
徹夜城(今日は雷雨でPCを隔離してた管理人) 2018/08/31 23:45
皇帝のいない八月の狂詩曲

 タイトルにもちろん深い意味はございません。8月ももう終わりだなぁ、と。とにかく忙しくて暑くて、仕事以外のことに手が回らない夏でした。やっと一息つけたんで「史点」も昨日で二カ月ぶりに更新。先月の話題がどうしても多いですけどね、オウム真理教関連のは7月中に書いていたものですがボツにするのももったいなくて。
 少しは「史点」以外のところを更新しなきゃなぁ。


>辛亥革命本
 先日も紹介し巻いた譚ロ美さんの「革命いまだならず」を面白く読みました。孫文たちがあれやこれやいろいろ苦労してようやく革命が実現するけど、そこかあまたグチャグチャになってくあたり、まさに「革命いまだ成らず」で…歴史によくあることではありますが、もの悲しさを感じますね。
 孫文と手を組んで、当時「薩長同盟」とか「中国の西郷」と日本で例えられた黄興もなかなか興味深かったです。この人物、100周年映画「1911」(原題「辛亥革命」)では総監督のジャッキー・チェン本人が演じてまして、この本を読んでいてもその時の刷り込みイメージがどうしてもつきまとって(笑)。当時吹き替え版で見たもので石丸博也さんの声で「そんぶ〜ん!」と呼びかける声が耳から離れない。映画ではそこまでやりませんでしたが、第二革命をやろうとしてる最中に孫文や宮崎滔天に看取られて壮絶な病死をしたんですね。

 あと読んでいて興味をひいたのが、やはり革命運動家の一人である宋教仁。孫文とは手を組みもしましたが性格の不一致というか、下手に真面目なので孫文にいいところをもってかれちゃうというか…いろいろと反りが合わなかった人なんですね。外国の安全圏にいて武装蜂起を起こしちゃ失敗して犠牲者を出す孫文に対し、宋教仁たちのグループは武昌蜂起を成功させて辛亥革命の突破口を開くわけですが、そうなると孫文が「革命家代表」として戻って来て仕切ってしまう、という関係があって宋も孫文に辛辣な評価をしていたようで。
 この宋教仁と親友だったのが、あの北一輝です。辛亥革命からまもなく宋教仁は上海駅で何者かに暗殺され、おおかた袁世凱関係の仕業といわれてるんですが、北一輝は「孫文が暗殺した」と執拗に主張していたそうで。

 孫文に協力した宮崎滔天は中江町民ともつながる宮崎八郎の弟だし、北一輝は幸徳秋水とつながるところもあるし…そして孫文らを支援した日本の政治家が犬養毅で、彼はご存知のように五・一五事件で暗殺されます。北一輝は二・二六事件の「思想的主犯」とされて処刑されてしまうわけで、こうして見ると明治から昭和前期、中国の清朝末期から民国期ってのはそう長くない時間だったのだなあ…と思えてきます。今年は「明治維新百五十年」であるわけですが、明治初年から第二次大戦までと、敗戦から現在までがいい勝負の長さになってきてもいます。

 手塚治虫の未完作品に「一輝まんだら」というのがありまして、ずばり北一輝を主人公にこの辺の時代を描こうとした意欲作でした。といっても僕は未読でして。これを機に読んでみるかな、と。手塚自身もちゃんと完結させたい意向があったそうなんですがね。


>白土三平のことなど
 この名前が出て来ては反応せざるをえません。僕も「サスケ」が「マンガ」そのものとのファーストコンタクトだったりしまして、「カムイ伝」も愛読しました(まず両親がその世代だったんだよね)。
 白土忍者劇画、一応「科学的」な理屈をつけてるのですが「無茶な」と大人になってくると分かる忍術のタネが多かったですねぇ。まぁ横山光輝の忍者ものは説明もなくエスパー合戦で、後年の「バビル2世」とかわらんという声もあります。

 「忍者武芸帳」に比べると「カムイ伝」のほうは荒唐無稽さはだいぶ低減しているんですが話のメインが農民たちの闘争になってしまい、主役カムイを中心とする忍者ばなしは脇にまわっちゃいましたもんね(そのぶんを「外伝」がカバー^してるわけですが)。それでも「カムイ伝第二部」で、九官鳥を録音テープがわりに使うくだりを堂々とやられた時は、「白土先生、変わらんなぁ」と妙に感心したもんです。
 漫画史上屈指の壮大な構想をもつ「カムイ伝」でありますが、第一部も終盤は荒れ果てた感がありましたし(当時の社会運動との連動もあるんでしょう)、第二部も中断の末にウヤムヤな終わり方になってしまい、第三部はさすがにこちらもあきらめてる、というところですが、白土先生、なんとか形になさらないものかな。



#10762 
バラージ 2018/08/31 18:26
名画座DVD化情報

 つい先日ふと思い立って調べてみたら、映画『鉄砲伝来記』『天狗党』がDVD化されてました。だからといって買ってまでして観ようとは思わないのですが、時々気になる映画のDVD化チェックというのはしております。
 というわけで名画座掲載作品の最新DVD化情報を。

『関ヶ原(映画)』『沈黙 サイレンス』……新作ですので当然ながらすでにブルーレイ&DVD化されています。
『エジプト人』……復刻シネマライブラリーよりブルーレイ&DVD化。
『ハンニバル』……復刻シネマライブラリーよりDVD化。DVDパッケージは公開時のポスターだと思われ「アルプス征服軍」というサブタイトルが付いているのが見えますが、amazonや映画サイトなどの表記ではサブタイトルは付いていません。
『三国志(日本テレビのアニメ二部作)』『水滸伝(1983年の映画)』……いずれもDVD化はされていませんが、動画配信はされています。
『人斬り』……DVD化はされていませんが、VHSの他にレーザーディスクもあるようです。

>DVDで観た映画
『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』
 ようやく観ました。正直言いましてこちらでおすすめされてなければスルーしてたであろう映画です。中華圏映画好きではあるものの倭寇にはそれほど興味がない身としましては、チウ・マンチェク主演、ゴードン・チャン監督というのはいまいち興味をそそらない布陣でして……。ゴードン・チャン監督作はジャッキー映画『デッドヒート』『メダリオン』とファンタジー時代劇『画皮 あやかしの恋』を観てるんですが、『画皮』はわりと面白かったもののジャッキー映画2本は全くの駄作。チウ・マンチェク(ウィン・ツァオ、ヴィンセント・チャオの表記もあり)はカンフーアクションは素晴らしいんですが、演技のほうは表情が乏しくどうも今一つで、主演するには華が足りない。
 というわけでどうなのかな?と一抹の不安を抱えつつ観たんですが、どうやらそれは杞憂だったようで、なかなかに面白い映画でした。合戦にチャンバラにカンフーとアクション盛りだくさんで、途中のマンチェクとサモ・ハンの棒術訓練もさることながら、ラストのマンチェクと倉田保昭のバトルが圧巻の出来でしたね。かつて自らが企画した香港映画『忍者外伝 倭寇掃蕩作戦』が不満足な出来に終わった倉田氏も本望でしょう。史実的な部分については細かいところはよくわからないけど、おかしいと感じたところはほとんどありませんでした(唯一、倉田が「我らの目的は天下統一」みたいなことを言ってたが、松浦氏がそこまで狙わねーだろとは思いました)。
 ただ手放しで傑作とまでは言えず、いくつか欠点も見受けられます。まず惜しむらくは全体の作風がちょっと古臭いように感じました。狙ってやってるのかわかりませんが、特に音楽のセンスが非常に古めかしい。また戦争映画にありがちなことではありますが、ストーリー展開がやや単調で平板な感じ。終わり方も少々唐突で尻切れとんぼです(城を守る奥さんの戦いはどうなった?)。そして予想通りマンチェクの演技が表情に乏しく、地味で華に欠ける。ただ、それらの欠点がありつつも全体としてはなかなか面白い映画になっていて、決して観て損はない映画でした。
 個人的には戚継光を尻に敷いてる奥さんのキャラクターが魅力的。ちょっとだけ色っぽいシーンもあったりして、ストーリーの単調さを大いに救ってくれます。最後のほうでは留守を守る城で甲冑に身を固めて自ら戦っちゃったりする活躍ぶりでしたね。演じてる女優は全然知らん人ですが、映画祭ポスターでは「ワン・チェン」、映画祭予告編では「レジーナ・ウォン」、DVD予告編(映像自体は映画祭予告編と全くいっしょ)では「レジーナ・ワン」と日本語表記がいちいち違っているのがめんどくさい。また浪人たちのリーダーを演じているのは木幡竜という中国を拠点に活動している日本人俳優で、『南京!南京!』(#9625)でも好演してました。
 ちなみにDVDパッケージでは、マンチェク、サモ、倉田の3人が主役みたいなデザインになっており、裏を見たら「二大アクションスター激突!」のようなことが書いてあって、「二大?」と思ったら案の定「サモ・ハンvs倉田保昭」とありました。サモと倉田は戦ってないんだけどね(笑)。それどころかレンタル店のPOP?(棚にある宣材表示板のようなやつ)にはサモ1人しか映ってなくて誰が主役なんだ状態でしたが、まあやはりマンチェクじゃ引きにならんのだろうなあ。
 あと予告編で出演俳優の名前が1人ずつ表示されていくところで、マンチェク、サモ、レジーナときて小出恵介が映るも名前は表示されず次に倉田というあたりが、あれがなければ名前出てたんだろうけど、予告編自体を変える予算もなかったんだろうなあなんて思っちゃったりなんかして。

>お蔵入り映画
 最初に情報を知ってから書こうか迷ってるうちにすっかり忘れてたネタ。去年、藤沢周平の小説『一茶』の文庫本に、リリー・フランキー主演で映画化されるという帯情報があるのを見かけました。ところがその後公開情報がさっぱり出てこないと思ったら、なんと製作会社が破産し1億円以上の未払金が発生しており、お蔵入りの危機とのこと。監督が撮了直後に急逝し、編集も終わってないそうです。「救う会」が結成され動いているようですが、いまだに公開の話は聞こえてきません。どうなることやら……と思ってたら、なんとお金を払ってくれた奇特な人が現れたとのこと。無事公開までこぎつけられるでしょうか?

>隠れキリシタン
 用語に関する話はひとまず措くとして、臨床心理学者の河合隼雄氏が隠れキリシタンとその教義について、日本に来たキリスト教が海外との交流を絶たれ閉鎖された環境の中で日本人の心の奥深くを反映し変容していったものであって、日本人の心性を非常によく表したものだと述べていたのがとても印象に残っています。

>忍びの者
 「百地と藤林の忍者をいがみ合わせて確実に支配する」というのならまあわかるんですが、映画の中ではそういう説明が全くないんですよね。どこかで理由が説明がされるんだろうと思って観ていたら、同一人物だと知って雷蔵五右衛門びっくり!ということで終わってしまったんで、頭の中が「???」となってしまいました。

>白土三平
 白土の作品は『カムイ伝』だか『カムイ外伝』だかをちらっと読んだくらいなんですが(アニメ『サスケ』は子供の頃によく観てた)、荒唐無稽を理屈で説明するという行為が僕にはものすごく荒唐無稽というか「非リアル」に感じられちゃうんですよね。もちろん作者もわかってやってるんでしょうが、それにしても荒唐無稽は荒唐無稽のままにしておくのが実はリアルなのであって、なんでもかんでも理屈で説明しちゃうという行為はそれこそ荒唐無稽なんじゃないかと。
 そういえばふと思い出したんですが、これまた河合隼雄氏が書いた「現代青年の感性」という著述(『中空構造日本の深層』(中公文庫)収録)ではマンガについて取り上げられていて、その中に白土の『赤目』もあります。非常に優れた作品であり作者であるとしつつも、全体としてはやや厳しめの評価がされていたことを思い出しました。改めて調べると他に、長谷川町子『いじわるばあさん』、水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎』、つげ義春『ねじ式』、萩尾望都『ポーの一族』、池田理代子『ベルサイユのばら』、竹宮恵子『風と木の詩』、松本零士『銀河鉄道999』、鴨川つばめ『マカロニほうれん荘』、大島弓子『綿の国星』なんかが取り上げられています。つげ・萩尾・竹宮・大島といったあたりは高く評価されてた記憶があり、特に女性漫画家3人は「私のような男性にはほとんど理解不可能な思春期の少女の内面を見事に描写している」と絶賛されてましたね。

>追悼・さくらももこ
 若すぎますね。特にファンだったというわけではありませんが、昔妹が買ってた「りぼん」で『ちびまる子ちゃん』を時々読んで面白いなあと思ってたらアニメ化もされました。戦後昭和の一時代の庶民生活史を描いたとも言える『ちびまる子ちゃん』でしたが、平成史を代表するマンガの1つとなったと言っていいでしょう。ご冥福をお祈りします。



#10761 
サラマンサ 2018/08/27 21:19
追記

自分の前の投稿ですが読み返してみると意味が不明瞭ですね、すみません。色々整理したうえで後日投稿しなおします。



#10760 
サラマンサ 2018/08/27 20:58
キリシタンの名称について

 お久しぶりです。最近書き込む機会がなかったのですがキリシタンの名称については面白い話題なので便乗させていただきます。

今確認が仕切れないのでとりあえず簡単に結論だけ述べますと、キリシタンの名称は私の知る限り「潜伏キリシタン」の方が「隠れキリシタン」より古いものです。少なくとも大正12年には「潜伏キリシタン」は使われていました。「隠れキリシタン」はどこか発生したのか分かりませんが昭和に入ってから学術書などで一般化します。そして戦争前後で概念が混同されていきます。そもそも日本では戦国も江戸も明治も呼称はキリシタン(切支丹)であって隠れキリシタンとは呼ばれていませんでした。1911年の新聞でも隠れキリシタンとは呼ばず、自称で「クロ」という切支丹がいると書いています。

ちょっといま確認が取れない本が有るので詳しいことはまた後日書き込みます。



#10759 
ろんた 2018/08/27 18:42
ゆうきまさみ『新九郎、奔る!(1)』

何はともあれ、おおむね好評のようでめでたいことです。すぐ重版がかかったみたいだし(でも「あ〜る」の方は見つからない、なぜだ!)。まだ一巻なんで作品の評価はおくけれども、ただでさえ絵になりにくい「政治」を扱ってこれだけ読ませるのは素晴らしい。でもよく考えると、ホームドラマのフォーマットなんだよなぁ(笑)。政治の裏を知り尽くした伊勢家の面々と主人公が11歳の少年というところが生きている。そして、隙あらばギャグをぶち込んでくるのは、ストーリーマンガの血統ゆえか? 名乗りを上げたはいいけど年齢まで叫んで郎党に突っ込まれる新九郎、なぜか出てくる源氏×頭中将の薄い本、普請中の細川勝元邸の土塀に描かれた"おじぎびと"(?)などなど。あと、気になったことをいくつか……。

・「伊勢守」と書いて「さだちか」と読ませる式を、読みにくいという人もいるようだが、官職ないし仮名で呼び合っていたのを前提にしている(多分)ので許してやってください
・「武士のリアル」「ウィンウィンの関係」「ルンルン」などを興ざめと感じる人もいるみたいだけど、作者としては言い換えが効かないらしいので許してやってください
・相変わらず"元気があってよろしい!"なゆうきヒロインの異母姉・伊都。もちろん後の北川殿。
・既婚婦人がちゃんと眉を剃っている。お歯黒は誤魔化しているけど(歯を描かない)。亜々子(勝元正室)など、出産後はすっぴんで眉が生えかけてる(笑)。しかし、千代丸実母・浅茅に眉があるのはなぜ? 弟・弥次郎の子育て中だから?
・「寝所へ−−呼ぶかも知れませぬぞ」(細川勝元)って攻めてるなぁ。いや、薄い本作者へのエサ撒き? それに対する答えが「お眼鏡にかないますれば」(千代丸)って、意味分かってるのか? っつ〜か、眼鏡はあったのか?(笑)
・「新右衛門さん」(のモデル)の息子、登場! コラムで大活躍
・上杉龍若、聡明丸登場。伏線、伏線。

 ということで、この辺りの歴史をおさらいしたり、海音寺潮五郎『武将列伝』や司馬遼太郎『箱根の坂』などを読み直しているのでした。作家の勘は鋭いというか、海音寺は(多分司馬も)、今川家のお家騒動に首突っ込む前に何の事績もないのを不審がってるんですよね。


>魔界笑点
 前田武彦と三波伸介をお忘れなく。


>キリシタンと時代劇
 約40年前に死んだ細川ガラシャを生き返らせるのは忍法じゃ難しそう。やはり「エロイムエッサイム」じゃないと。山田風太郎はテーマにキリスト教を持ってくることがあり、『コリャード 懺悔録』を元ネタにした作品もあります。シバレンもそうだと思うんだけど、むしろエキゾチックなものに対する憧れと恐れといったものを感じます。


>the hidden christians
家に積んであった『日本の百年1 御一新の嵐』(鶴見俊輔・編著 ちくま学芸文庫)を眺めたら、経典写本「天地始之事」の引用元が『昭和時代の潜伏キリシタン』(田北耕也 1957年)なのを発見。書名で検索したら、どうやら

1.総称−−「隠れキリシタン」
2.江戸期に棄教を免れた人々−−「潜伏キリシタン」
3.禁教令が解かれた後もカトリックに復帰しなかった人々−−「かくれキリシタン」「カクレキリシタン」

ということのようです。

 思うに、どれも「隠れていたキリスト教徒」という意味になるのが混乱の第一。3について表記に揺らぎが出ているのが混乱の第二(選択無形民俗文化財などはあまり意識されてないみたい)。「はなれキリシタン」という表記もあり、門外漢はこれでいいと思いますが、「はなれ」が「異端」を連想させるんで好ましくないんだとか。さらに1の意味で2を使う人がいるのが混乱の第三。もう「江戸期の隠れキリシタン」「近代以降の元隠れキリシタン」でいいじゃないか!(笑)

 しかし、1950年代から使われてたのにしらなかったなぁ、潜伏キリシタン。


>忍びの者 白土三平
なぜか原作の一巻だけが見当たらず記憶で書いちゃいますが、百道と藤林の忍者をいがみ合わせて確実に支配するのが目的じゃなかったかなぁ?<一人二役 でも、これって『ワタリ』(白土三平)のプロットと同じような……(汗)。

で、白土三平は仰る通り、リアルではなく荒唐無稽です。『忍者武芸帳』には湖で泳いでいたらエラ呼吸が出来るようになった忍者、アナグマに育てられてその能力を受け継いだ忍者、デンキウナギ体質の忍者、首をすくめ続けていたら胴体にめり込むようになった忍者などが登場します(笑)。でもそれをリアリティを持って(本物らしく、本当っぽく)描くのが凄いわけです。


>影武者
戦力の逐次投入に見えるところは、悲劇性を高めるための演出だと理解しています。でも、それでも不思議なのは、武田軍は物見とかしないのか、ってこと。鉄砲は分からなかったとしても、馬防柵があるのは明らかだから、正面から突っ込む馬鹿がいるかよ、勝頼(笑)。



#10758 
バラージ 2018/08/25 23:01
名画座感想 日本史映画編C

 数日置いての連投になっちゃってすいません。名画座感想、日本史映画編の最終回です。今回はこちらにおじゃまするようになってから観た映画。当然ながらすでに感想をくわしく書いちゃった作品が多いんですが、書き足りないと感じた作品の感想を新たに書いたり追記したりしたいと思います。

『戦争と人間』三部作……栄耀映画掲示板#1249、#1257に記述。

『黒部の太陽』……栄耀映画掲示板#1311に記述。観たのはNHK-BSで放送された短縮版のみで、リバイバル上映やDVDの完全版は未見。解禁前に香取慎吾主演のテレビドラマ版(未見)が作られDVD化もされたことから、事実上の封印作品のままだとドラマ版が映像作品のスタンダードになっちゃう可能性もあり、石原プロ側がそれを恐れたことが解禁の理由の1つなんじゃないかという気も。

『天地明察』
 映画館で観ました。実は歴史に興味を持つよりずっと前から結構天文好きでして、太陽系がどうした宇宙がどうしたといった本を子供の頃はよく読んでました。この映画も天文という歴史映像作品では珍しい題材に惹かれて観た映画なんですが、映画としてはまあまあ面白かったという程度。この映画の中の暦とか日食周期みたいなのは僕が興味のある天文とはちょっと違いまして。主人公も全然知らない人でしたが脇役の数学者・関孝和は知ってたんで、出てきた時は「おお」と思いました。途中どう考えても史実じゃないだろうという場面もあり、案の定最後に「一部、史実とは異なる部分があります」みたいな字幕が。劇中で時間が十数年経ってるのに人物の外見が全然変わらない(岡田准一も宮崎あおいも若いまま!)のも突っ込みどころ。

『のぼうの城』
 映画館で観ました。もともとはあまり観る気がなかったんですが、公開間際に東日本大震災が起こって、水攻めのシーンが津波を連想させるという理由で公開が延期になったことに対する同情と、監督の1人が『ジョゼと虎と魚たち』『死に花』『ゼロの焦点』の犬童一心監督だったことから、思い直して観てみることにしたものです。
 しかし残念ながらいまいちの出来。人物描写がやや類型的だし、ストーリーもちょっとご都合主義に感じました。主演の野村萬斎はミスキャストのような……。どっからどう見ても頭が良さそうで、全然でくのぼうに見えません。映画を観てる間ずっと「でくのぼうのふりしてるだけで、ほんとは頭いいんでしょ」と思ってたし、実は今でもちょっとそう思ってます(笑)。榮倉奈々・成宮寛貴(この人もいろいろあって引退しちゃいましたね)の現代風な芝居、山口智充のほとんどコント調な芝居も違和感が強かったですね。もう1人の監督の樋口真嗣(『進撃の巨人』二部作、『シン・ゴジラ』)は役者に芝居をつけるのが下手だと感じてたんで彼のせいなんではないかと疑っておりますが、それとも犬童監督もこういう時代劇は得手ではなかったということなのかなあ(2人の監督の役割分担は不明)。
 ちなみに犬童監督は好きな監督の1人でして、上記3作の他にも『メゾン・ド・ヒミコ』『黄色い涙』『グーグーだって猫である』『MIRACLE デビクロくんの恋と魔法』『猫は抱くもの』を観ています。『グーグー〜』はテレビドラマ版も観ました。一方、樋口監督の映画で観たのは上記3作だけ。
 史実的には石田三成愚将論は江戸期の軍記物による俗説で、忍(おし)城攻防戦についても近年の研究では、現地を見た三成は水攻めは無理と判断したが秀吉の厳命でやらざるを得なかったとする説が出されています。それを推測させる書状があるうえに、三成は総大将でもなかったため独断で水攻めを行うとは考えられないとのこと。

『終戦のエンペラー』……#9426に記述。
『スパイ・ゾルゲ』……#10008に記述。
『殿、利息でござる!』……#10243に記述。
『真田十勇士』……#10443に記述。
『真田幸村の謀略』……#10507に記述。


 そして歴史映像名画座には収録されていないけど栄耀映画徒然草に収録されている歴史要素の強い映画についての感想も書きたいと思います(『ムルデカ17805』についてはすでに書きましたが)。「歴史・時代劇」と「社会派・ヒューマン」にある映画ですね。

『金環蝕』
 大学時代にビデオで観ました。懐かしいなあ。中高生の時に観た山本薩夫監督の『白い巨塔』がすごく面白かったのと、当時はちょうどリクルート事件が起こった後で、それで似たような疑獄事件をモデルとしたこの映画に興味を持ったんですよね。とにかく出てくる人がみんな悪人というドロドロした映画で面白いことは面白かったんですが、『白い巨塔』に比べるとラストの盛り上がりに欠けてたかな。山本監督の映画は他に前記『忍びの者』2作、『戦争と人間』三部作と、『座頭市牢破り』『華麗なる一族』『不毛地帯』『皇帝のいない八月』と観てますが(『あゝ野麦峠』も子供の頃にテレビでちらっと観たかも)、やっぱり最高傑作は『白い巨塔』かな。

『バグジー』
 これも公開時は大学生でしたが、観たのは数年後にビデオででした。映画としては結構面白かったけど、バグジー・シーゲルの生涯がちょっと美化されすぎてるような気もしましたね。殺人稼業に打ち込んだ前半生は描かれてないし、バージニア・ヒルだってもっとアバズレみたいな女だったはず。バグジーがムッソリーニを殺そうとしたり、ハリウッド俳優になろうとしたのは本当の話で、結構奇矯なところのある人物だったようです。
 バグジーとマイヤー・ランスキー、ラッキー・ルチアーノ(この2人はこの映画にも出てくる)、フランク・コステロという大物ギャング4人の青春を描いた『モブスターズ 青春の群像』という青春アクション・ギャング映画(?)もありますが、そちらは未見。そもそも僕はギャング映画をあまり観てなくて、他には『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』『アンタッチャブル』『グッド・フェローズ』ぐらいしか観てません。

『真昼の暗黒』
 これは歴史映画というより実話映画と言ったほうがいいのかな? 確かNHK-BSで観ました。かっこいい題名と大まかに知っていたあらすじからずっと観たいと思っていた映画だったんですが、実際に観てみたらそこまで面白くはなくて、今となってはあまり記憶に残ってません。事前の期待値が大きすぎたのか、それとも自分にとってはタイムリーな事件でなかったからなのか。今井正監督の映画は他に『青い山脈』二部作、『また逢う日まで』『ひめゆりの塔(1953年版)』をテレビで、遺作となった『戦争と青春』を唯一リアルタイムに映画館で観ましたが、やはり『青い山脈』『また逢う日まで』『ひめゆりの塔』が面白かったですね。

『日本の黒い夏 冤罪』
 これはもう明らかに歴史映画ではなく実話映画ですね。でもまあ歴史上の重大事件でしょうから、ついでに書いちゃいます。ビデオかDVDで観ましたが、なんだかいまいち突っ込み不足だったような。登場人物が全員仮名ってのも大きいかもしれません。上記『金環蝕』もそうですが、日本の実話映画は登場人物が全員仮名というパターンが非常に多い。多分訴えられたりするリスクを避けるためなんでしょうが、社会派映画としては告発力が半減してしまうように思います。また、この映画を観た時点ではもう事件については報道などで散々知っちゃってたというのも告発力が弱くなった理由の1つでしょう。そもそも河野義行さんご本人が頻繁にメディアに出てらっしゃいましたからね。今はテレビ・ジャーナリズムが発達してるので、実話を描く社会派映画の役割は難しいところがあるのかもしれません。

『武士の家計簿』……栄耀映画掲示板#1311に記述。森田芳光監督の映画もかなり観てまして、他に『の・ようなもの』『家族ゲーム』『ときめきに死す』『メイン・テーマ』『それから』『そろばんずく』『未来の想い出』『(ハル)』『間宮兄弟』『わたし出すわ』『僕達急行 A列車で行こう』を観ています。このうち映画館で観たのは『(ハル)』『わたし出すわ』『僕達急行』の3本。『武士の家計簿』も公開時に観るか迷ったんですが今一つ興味が持てず、その予感はやはり当たってました。森田映画で特に面白かったのは『の・ようなもの』『ときめきに死す』『(ハル)』『間宮兄弟』といったあたり。



#10757 
バラージ 2018/08/21 18:21
ありゃ

 文字化けしちゃいましたね。文字化けした部分は「糸肅」です。



#10756 
バラージ 2018/08/21 18:19
名画座感想 日本史映画編B

 名画座感想、日本史映画編の第3回。今回は大学卒業後からここにお邪魔するようになるまでの間にビデオ&DVDやテレビで観た映画。やはり観た順番はもう覚えてないので製作年の順番に。

『新・平家物語』
 溝口健二監督晩年の作品にして、デビュー間もない市川雷蔵主演という豪華版ながら、印象はどうもいまいちでした。溝口監督作ではどちらかというと失敗作と評する向きも多いような。溝口は女性映画を得意としていたようですし、こういう題材は得手ではなかったのかも。ちなみに溝口監督作で僕が他に観たのは最も有名な『雨月物語』だけ。
 本作のクライマックスとなっている延暦寺の神輿に矢を射た事件については以前も書きましたが、実際には清盛個人ではなく清盛軍が誤って射てしまった失態であって、若き日の清盛最大のピンチだったとされています。忠盛びいきの鳥羽法皇が強硬にかばったため賠償金だけで済みましたが、これに懲りた清盛は以後死ぬまで延暦寺と友好関係を保つという、映画とは真逆の展開でした(笑)。くわしくはWikipediaの「祗園闘乱事件」をどうぞ。

『幕末太陽傳』
 名作としての評価の高さから観ました。歴史映画ということとは関係なく、そもそも名画座に収録されるまで歴史ものと感じたことはなかったですね。独特のシニカルで虚無的な雰囲気がなかなか面白かったです。故立川談志は「こんなの落語じゃねえ」と否定的だったそうですが。日活映画らしく石原裕次郎や小林旭・二谷英明ら当時の若手スターが出てますが、現代劇のイメージが強い彼らが時代劇に出てるのは新鮮。3人ともリアルタイムで観てたおっさんになってからの印象のほうが強いんですよね(個人的には裕次郎と言えば『太陽にほえろ!』、二谷と言えば『特捜最前線』だったりする)。

『忍びの者』
 忍者ものなのに主人公が石川五右衛門という珍しさと、リアルな忍者映画という売りの言葉に惹かれて観た映画です。しかし実際に観てみると五右衛門の頭領である百地三太夫の行動が謎だらけで、リアルというよりシュールな映画。三太夫と藤林長門守という敵対する両組織のボスを密かに演じわけ続けた理由が最後まで説明されずまったくの不明だし、信長暗殺を嫌がってるわけでもない五右衛門をわざわざ罠にはめて信長暗殺を強いる展開も何度考えてもよく理解できません。なんだか不条理劇を観てるようでした。当時としては、それまで荒唐無稽な魔法使いのようだった忍者を大人の観賞に耐えるリアルなものに変えて、そこがウケて大ヒットしたんでしょうけど(あとはやはり市川雷蔵人気か)、それが普通になった今観るとちょっとどうもねえ……。白土三平なんかにしても、僕は「これが本当にリアルなの? むしろこれこそ荒唐無稽なんじゃないのか?」と思っちゃうんですよね。
 ちなみにWikipediaによると五右衛門に忍術を教えた百地三太夫は江戸時代の読本に出てくる架空の人物で、実在した伊賀の領主・百地丹波とは無関係ですが、しばしば混同されているとのこと(丹波をヒントに三太夫が創造されたのかも)。

『続・忍びの者』
 前作のようなシュールさはなくなって、わりとストレートな歴史映画になってました。面白いことは面白いんですが、光秀が初対面の一介の忍びである五右衛門にそそのかされて謀反を決断しちゃうとか、本能寺に五右衛門自らが乗り込んで信長を斬殺しちゃうとかはやりすぎ感が強いような。二条城の鶯張りの廊下がピヨピヨと鳴って五右衛門が見つかっちゃうところは面白いですね。監督が変わった続編の『新・忍びの者』も観てまして、実は3作の中で1番ストレートに楽しめた記憶があるんですが、今となってはなぜか内容をまったく覚えておりません(笑)。4作目以降は未見。
 市川雷蔵主演作は他に上記『新・平家物語』、『眠狂四郎』シリーズを半分くらい、『陸軍中野学校』の1作目(2作目以降も何本か観たかも)、『ある殺し屋』シリーズ全2作などを観てますが、1番面白かったのは現代劇映画『ある殺し屋』の1作目かな。

『竜馬暗殺』
 学生運動が挫折した70年代の空気が描かれてるのは知ってたし、結構評価が高いんで観たんですが、その頃子供だった僕はもちろん70年代の空気を経験してないし、あまりそういう部分に関心がなかったりします。そしてそこを抜きにして観ると、歴史映画としては結構トンデモで……どうも今一つノレませんでした。

『柳生一族の陰謀』
 これは一種のif映画ですね。史実から見るとめちゃくちゃなんですが、それはもちろん確信犯的にやったことであって、映画としては面白かったです。何しろ普通の歴史映画と違って先が読めないところがいい(笑)。でも歴史にくわしくない人はこれを史実と思ってしまいそうな危険性もなきにしもあらず。それを考えてか、最後に入る「歴史は書物に残っている通りとは限らない」みたいなナレーションが言い訳めいててなんだかおかしかった。

『影武者』
 武田信玄の影武者を主人公にするという発想が面白かったですね。ただ主演の仲代達矢はちょっとミスキャストに感じました。信玄役は迫力満点でいいんですが、肝心の影武者役がね〜。インテリっぽい仲代にああいう無教養なお調子者の役は似合わない。勝新がわがままさえ言わなければなあ……(笑)。あと、これは前も書いたんですが、最後の長篠の戦いで武田勝頼が風・林・火・山を1部隊ずつ投入して4部隊全滅させちゃうところは、常識的にというか感覚的にどうも変に感じちゃいますね。2番目の林がやられたあたりでダメだと気付くでしょう、普通。
 黒澤明の監督作は他に前記の『羅生門』『七人の侍』、ビデオやテレビなどで『静かなる決闘』『野良犬』『生きる』『悪い奴ほどよく眠る』『用心棒』『椿三十郎』『天国と地獄』を観て、唯一リアルタイムに映画館で『八月の狂詩曲(ラプソディー)』を観ています。どれも「まあまあ面白い」から「なかなか面白い」の範囲だけれど、ものすごくハマるというわけでもない、というのが僕の中での黒澤の位置付けです。


>DVDで観た映画
『修羅 黒衣の反逆』
 チャン・チェン主演の中国アクション時代劇『ブレイド・マスター』(#10556。原題:&#32353;春刀)の前日譚。原題は『&#32353;春刀 修羅戦場』なんですが邦題は1作目と全然違うものになりました。前作がチャン・チェンの出てた『グランド・マスター』のパクり、今回はやはりチャン・チェンの出てた『黒衣の刺客』のパクりですな。
 前作同様に明末期が舞台で、政争の陰謀に巻き込まれた錦衣衛(明朝の秘密警察みたいなもの)が主人公。前作から続けて登場してるのは主人公と悪徳宦官・魏忠賢と崇禎帝(本作ではまだ信王)だけで、前作における主人公の周辺人物が誰も出ておらず、そのため物語が前作に上手くつながっていません。そのあたりは前日譚を作る難しさなんだろうな。前作もミステリー仕立てのちょっと複雑な話でしたが、今回はそれに輪をかけて複雑で途中話についていくのにちょっと苦労します。登場人物も少々多すぎで、もうちょっとすっきりさせても良かったのでは? また前半は主人公が微妙に強くなくて、どうやって危機を乗り切るんだ?と思ったら後半急に強くなるし、何より主人公に主体性がなく、状況に流されて右往左往してるようにしか見えないのがなあ。ヒロインも前作に比べて魅力薄だし、チャン・チェン以外の俳優陣に華がありません。とはいえあくまで面白かった前作に比べればいまいちだということであって、アクション時代劇としてはまあまあ楽しめる出来ではあります。
 歴史との絡みは前作より多く、前作は即位した崇禎帝によって失脚した魏忠賢の暗殺命令が下るところから始まりましたが、本作はその前日譚ということでプロローグがサルフの戦いにおける明軍の敗北から始まります。世は魏忠賢の全盛時代で、そこに反魏忠賢派の陰謀が絡むという筋書き。崇禎帝(信王)も出番が大幅に増え、天啓帝もちらっと登場します。



#10755 
徹夜城(五年ぶりにスマホの機種変更をした管理人) 2018/08/15 22:39
「魔界笑点」

…立川談志、先代円楽、桂歌丸などなど歴代司会者があの世から復活、現役出演者たちと大喜利勝負を繰り広げる伝奇爆笑スペクタクル大作!!

 などと、おバカなネタで久々に書き込んでおります。今さらですが暑中お見舞い申し上げます。気がついたらずいぶん書き込んでおりません。
 お察しでしょうが、7月後半からずっと講習その他で大多忙、ついでに猛暑も加わって他のことをする気力が失せております。「史点」も7月中に途中まで書いていて、オウム真理教の死刑囚たちの執行に絡めてあの事件のことなど文章を空き上げたりもしてるんですが、その後ずっとアップの機械を逸しております。もったいないんで一か月以上遅れであろうとその記事は載せますけどね。あと「史点」ネタと飛びつく話題が、世界的な暑さのせいか今一つ集まってないんですよね。

 ここ数日だけお盆休みなんですが、もっぱら読書。いま譚ロ美(ロは王路)さんが書いた「日中百年の群像・革命いまだ成らず」を面白く読んでます。辛亥革命の経過を、上は清朝皇帝から下はもろもろの革命家たちまで登場させて描くノンフィクション大作、ほとんど小説なみの面白さ。当然ですが孫文が話の中心になりますけど、この人の、なんというかな、独特の魅力(とにかく会った人の大半が魅了されちゃう)、結構冷徹かつ実践的な戦略家(秘密結社を乗っ取っちゃうところとか)、棄権察知時の逃げ足の速さ、ピンチの切り抜け方などなど、なるほどこれほどの人物なのだなぁ、と思うばかりで。逃亡中の船の中で孫文が「三国志」か何かの本を読んでいた、との逸話が出てましたが当人がそういう英雄ばなしを地でいってるところがあるんだな、と。

 日本亡命時に世話になった犬養毅に「君の趣味は?」と聞かれた孫文が、「革命」と即答して犬養から「それは仕事であって趣味じゃないだろ」と言われた逸話は妙に印象に残ります(単に「趣味」の意味を誤解したのかもしれませんけど)。趣味とは何なのか説明された孫文は「ウーマ」つまり女性と答えたそうで、こういうところ、やはり「英雄色を好む」なんでしょうか。孫文、そちらの方面でも結構手が早く広いんだよなぁ。

 この本では孫文と関わった日本人も多く登場しますが、ロンドン滞在時に南方熊楠と知り合っていたというのは僕は知りませんでした。初対面時に孫文から「君の期するところは?」と聞かれた熊楠が「アジアから欧米人を追い出すこと」と言い放ち、孫文もさすがに呆れた、ということで…熊楠としては相手に一発かましたれ、って気分だったみたいですが。ああ、あとあくまで著者の想像・妄想かもしれませんけど、孫文って結構美形だったので熊楠はその面からも魅了されたんじゃなかろうか、なんて記述もありましたね。



#10754 
バラージ 2018/08/15 11:21
名画座感想 日本史映画編A

 名画座感想、日本史映画編の第2回。今回は大学時代に観た映画と、卒業後からここにお邪魔するようになるまでの間にほぼリアルタイムで観た映画です。

『羅生門』
 大学のAV(オーディオビジュアル)センターとかいうところでビデオで観ました。前にも書いた通り僕は大学入学前後から映画という趣味にハマり初めまして、読んだ映画の本に載っていた昔の名作と言われる日本映画を観てみようと思って観た作品です。ざっとあらすじを読んで面白そうだったから観たんですが、逆にあらかじめあらすじを知った状態で観てしまったために(芥川の原作『藪の中』は未読)、実際に観ても「ふーん」という感じになってしまいました。印象的だったのはストーリーよりもむしろ映像や美術造形。モノクロと相まって鮮烈な印象でしたね。
 同じ芥川の『藪の中』を原作とした映画『MISTY』も映画館で観ましたが、同じ原作とは思えないほど雰囲気が違う映画でちょっと退屈でした。

『七人の侍』
 ニュープリント版とかいうやつが上映された時に映画館で観ました。確かこの後に黒澤映画が続々とニュープリント版でビデオ化されていったんですよね。この映画も面白いことは面白かったんですが、『羅生門』同様にあらかじめあらすじを知った状態で観たんで、純粋にゼロの状態から楽しむことができませんでしたね。この辺は過去の名作と呼ばれる映画を観る時共通の問題なんだろうなあ。ちなみにこの映画も中盤に休憩が入りますが、「休憩」の文字の出方が今の感覚(観た当時も多分現在も)だとなんかギャグみたいな感じに見えちゃうんで笑っちゃうんですよね。そこは館内も笑いが起こっちゃってました。リメイク作品はいずれも観ていません。

『千利休 本覚坊遺文』
 ビデオで観ました。哲学的でちょっと難解な映画でしたね。もう今となってはあまりよく覚えていないんですが、ちょっと退屈な映画でした。
 利休の切腹については権力者・秀吉と芸術家・利休の対立という構図が好んで取り上げられがちですが(本作でどうだったかは前記の通りよく覚えてない)、むしろ権力者とその側近という関係性で見たほうがいいような気がします。あくまでなんとなくの感想で、明白な根拠があるわけではないけれど。

『写楽』
 ここからは大学卒業後。映画館で観ました。写楽、歌麿、北斎、十返舎一九、滝沢馬琴、鶴屋南北といった化政文化の巨匠たちの若い頃というのが変わった着眼点で面白かったですね。写楽の正体も謎の定番で人気がありますが、本作では写楽の正体については真面目な推理ではなく娯楽性優先で、映画としてはそれが正解だろうと思います。本作にも登場する北斎を主人公とした新藤兼人監督の『北斎漫画』という映画もありますが僕は未見。

『もののけ姫』
 映画館で観ました。もののけたちの存在やファンタジー風世界観などが『風の谷のナウシカ』に似た雰囲気の作品で、主人公の少年があまり活躍せずヒロインのほうが目立っちゃうという宮崎アニメおなじみの展開。作品としてはよくできてると思うんですが、僕はこういうのはどうもちょっと苦手でして。よくよく考えたら僕は美少女戦士ものは決して嫌いではない、むしろ好きなはずなのに宮崎アニメだと受け付けないところがあるのは多分ヒロインの造形が趣味に合わないんだと思います。『カリオストロ』や『ナウシカ』もヒロインのクラリスやナウシカがいまいち好みじゃなかったんだよなあ。まあ面白いことは面白かったんですけどね。宮崎アニメは『カリオストロ』から『トトロ』までをテレビで、『魔女の宅急便』から『もののけ姫』までと『風立ちぬ』を映画館で観てますが、『千と千尋』『ハウル』『ポニョ』はテレビでなんとなく観たような……といった程度。

『ラストサムライ』
 DVDで観ました。勘違い日本描写も全くないわけではないんですが、それまでの日本を描いた外国映画に比べればはるかに許容範囲内。とはいえ反乱軍が鉄砲を拒否して弓矢と刀で戦ってるのはさすがにどうかという気がしましたが、サムライ性を強調し政府軍と区別するためなんでしょう。ただ、それゆえに最後の合戦シーンが盛り上がるのもまた事実で、映画としては面白かったですね。それにしてもコッポラ監督の『アウトサイダー』主演7人組の中で一番のちょい役だったトム・クルーズが一番の売れっ子になるとは当時は誰も予想できなかっただろうなあ(他の6人はC・トーマス・ハウエル、マット・ディロン、ラルフ・マッチオ、パトリック・スウェイジ、ロブ・ロウ、エミリオ・エステベス)。


>『魔界転生』
 「忍法魔界転生」は石川賢のマンガには出てきてました。
 1981年の映画は、ジュリーこと沢田研二が演じる天草四郎の存在感が強すぎて、ほとんど主人公でしたからね(笑)。柳生十兵衛の千葉真一も熱演でしたが、なんだか準主人公みたいでした。森宗意軒・由井正雪・徳川頼宣・荒木又右衛門・田宮坊太郎といったあたりは尺の都合でカットされたようで(石川のマンガには出てくる)、その代わりに女性が足りないということで細川ガラシャを出したそうですが、山田風太郎もガラシャは思いつかなかったと脱帽したとか。
 ただ、この作品面白いことは面白いんですが、映画もマンガも(そして多分原作も)キリスト教をおどろおどろしい、禍禍しいものとして描いているというか捉えている感じがするのが少々引っ掛かるところでもあります。キリスト教に対するそういう描き方って市川雷蔵の『眠狂四郎』シリーズ(とおそらく柴田錬三郎の原作も)とも通ずるところがあると思うんですが、戦後の欧米的価値観に対する否定的な土着的情念が噴出したもののように感じられて、少々イヤな気持ちになるのも事実です。

>隠れ?キリシタン
 明治以後の“隠れキリシタン”は別に隠れてないんで、江戸時代の「隠れてる“隠れキリシタン”」(て変な表現だよな・笑)と区別して表現する必要があったってことなんじゃないでしょうか? しかし上手い表現が見つからなかったため、カタカナ表記の「カクレキリシタン」としたのでは? なおWikipediaによると、「文化財保護法による選択無形民俗文化財としての隠れキリシタンは「かくれキリシタン」と表記。」とあります。



#10753 
ろんた 2018/08/13 11:34
「魔界転生」

どういじろうが原作の方が面白い、という自信の表れでしょうか、山田風太郎は原作の改変に寛大だったそうです。そのせいで数多のクリエーターが原作に感じたインスピレーションを形にしていますので、結果として原作は同じでも全然違う話になったりもします。『魔界転生』の場合、天草四郎がラスボスになるのは1981年の映画から。以降、定番のように天草四郎=ラスボス作品が作られましたが、原作では事件の首謀者は森宗意軒で最後に十兵衛が戦うのは宮本武蔵(なぜラスボスという表現を使わないかは秘密)。天草四郎は転生衆の一人で、中盤で斬られてしまいます。あと"忍法魔界転生"の設定上、転生できるのは男だけですね。

原作に一番近いのは今月最終13巻が出た、せがわまさき『十(ジュウ) 忍法魔界転生』でしょうか。ここに出てくる武蔵、まさに魔神です。



#10752 
バラージ 2018/08/08 18:32
名画座感想 日本史映画編@

 何やら皆さんの書き込みがぱたりと止みましたね。かくいう僕も前記の通り先月から急に忙しくなったんでほとんど書き込みをしてませんでしたが(『アイ、トーニャ』も観たのは先月初め)、その忙しさにもちょっとだけ慣れてきたんで、中途半端になってる名画座感想を片付けちゃおうかな。

 というわけで名画座感想、最後は日本史編。個人的嗜好でまずは映画編から。数回続きますが、今回は高校以前にテレビ放送で観た映画です。全体的にテレビをつけたらたまたまやってたというパターンが多いですね。観た順番はもう覚えてないので製作年の順番に。

『激動の昭和史 軍閥』
 確か中学生のときに観たんですが、日記だったか何かの課題だったかで感想を書いたような記憶があります。変な話、反戦映画なんでしょうが戦争映画としても楽しめました。そういう意味では一筋縄では行かない映画と言えなくもないような気もする。前にも書いた通り僕はこの頃ちょいミリタリー・ファンだったんで、そういう興味もあって観たんだと思いますが、それとは全く異なる方向性の作品だったにもかかわらず非常に面白かった記憶があります。

『仁義なき戦い 完結編』
 昔に深夜テレビでやってたのをたまたま観ました。といっても最初からではなく途中からだったような気が。僕はヤクザ映画はあまり観ませんが、まあまあ面白かったです。ただ、なんか中途半端な終わり方だなぁとは思いました。これ以外のシリーズ作は未見。

『魔界転生』
 映画としては面白かったけど、どっちかっていうとファンタジー映画のノリに近い作品ですね。さすがに史実と誤解する人はいないでしょう。石川賢のマンガ版も読んだんですが、こちらは映画とはかなり違う話でした。そっちも面白かったんですが、映画ともども終わり方が中途半端というか、悪ボスの天草四郎が死なないで終わっちゃうんだよなあ。続編でも作るつもりだったんだろうか?(山田風太郎の原作は未読) 2度目の映画化は未見です。そういや史実通りの天草四郎が出てくる映画ってないな〜と思ったら、大島渚監督の『天草四郎時貞』という前衛的な映画があるようですね。

『小説吉田学校』
 なんというかストーリーも人物も全体的にちょっとかっこよすぎですね。映画としては面白いけど、実在の政治家たちがあまりにかっこよすぎてなんだかちょっと胡散臭い。見た目的にも佐藤栄作(この人はリアルタイムでは知らない)が竹脇無我とか、田中角栄(この人はぼんやり知ってる)が西郷輝彦とか、中曽根康弘(この人ははっきり知ってる)が勝野洋とか、あまりに男前過ぎて全然似てないです(笑)。

『火の鳥 鳳凰編』
 原作よりも先にアニメ映画のほうを観ました。後で原作を読んだら、アニメでは最後までわりと好青年だった茜丸が権力に溺れ堕落する人物だったり、アニメでは茜丸より先に死んでしまうブチが最後まで生きていて、焼死した茜丸の骨を拾ってたり、ストーリーやキャラクターの性格設定がかなり違ってて、あれれ?となりました。原作は人間の業を描いた手塚治虫の傑作マンガですが、アニメ映画ではそういう部分は薄められ、ただただ儚く美しい物語になっていた印象です。映画単体で見ればそこまで悪くはありませんが、原作と比べるとやはり正直言って物足りなかったですね。

『竹取物語』
 これは途中までしか観ていません。『かぐや姫』については子供の頃にNHK教育テレビの番組で観た切り絵による昔話が非常に印象に残ってます。5人の求婚者がかぐや姫に無理難題をふっかけられてひどい目に合うシーンが面白かったんですが、この映画ではかぐや姫に求婚する男が5人から3人に減らされちゃったのは百歩譲って仕方ないとしても、かぐや姫がそのうちの1人をひそかに好きだったという設定になっていて、それじゃあかぐや姫がただの俗な女になっちゃう。恋愛を超越した存在ってのは、かぐや姫のかなり本質的な部分の1つだと心理学者の河合隼雄氏も著書で指摘しています。僕はそこで観るのをやめちゃったんで、有名なラストシーンは見ていません。
 アニメ映画『かぐや姫の物語』を観た時も同じことを感じたんで、岩波文庫で原典を初めて読んでみたところ、全7章の真ん中の5章が5人の求婚者の受難話でそこに非常に大きなウェイトが置かれており、子供の頃に観た切り絵昔話はかなり原典に忠実で、それゆえに(切り絵の魅力とも相まって)心に残ったんだと再確認した次第。


>DVDで観た映画
『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』
 『八月のクリスマス』『危険な関係』の名匠ホ・ジノ監督が、日本の韓国併合後に日本に嫁いだ大韓帝国皇女・徳恵翁主の生涯をモデルに、大胆なフィクションを大幅に交えて描いたドラマ映画。徳恵翁主という人は全然知らなかったんで調べてみたら、彼女の生涯は歴史としては興味深くて面白いんだけど、そのまま映画にしたら退屈で面白くなりそうにありません。そこでいろいろフィクションを加えて娯楽映画にしちゃったようです。それだけに映画としては面白いこともまた確かで、さすがはホ・ジノ監督、質の高い映画に仕上げています。悪い日本人はモブキャラばっかりでメインキャストの李方子や宗武志はいい人(史実としてもそうなんですが)なのに対して、専ら悪役を務めるのは架空人物の売国奴的韓国高官でこの俳優がまさに怪演。主演のソン・イェジンもなかなかの好演でした。

>未見映画
『マイ・バック・ページ』……川本三郎の回想録を原作に、1971年の朝霞自衛官殺害事件を描いた2011年の日本映画。
『THE PROMISE 君への誓い』……20世紀初めのオスマン・トルコのアルメニア人大虐殺を描いた米国映画。
『バース・オブ・ネイション』……19世紀前半の米国で反乱を起こした黒人奴隷ナット・ターナーの伝記映画。



#10751 
バラージ 2018/08/01 18:21
名画座感想 第二次世界大戦のアジア・太平洋戦線編

 個人的に怒涛の日々だった7月が終わりましたが、8月もまだこれが続きそうで先の見えない日々が続いております……。


 名画座感想、第二次世界大戦のアジア・太平洋戦線編です。オセアニア史、南極史、第一次世界大戦、第二次世界大戦の欧州戦線の映画には観たものがありません。タイムスリップ歴史映画も観たものはなし。

『ミッドウェイ』
 テレビの吹替放送で観ました。といってもあまりに昔のことなんでほとんど覚えてないんだよなあ。なんか日本のだかアメリカのだかわかんないけど空母が爆撃受けてるミニチュア・シーンの記憶がちらっとあるくらいです。僕は子供の頃にちょっとミリタリー・ファンだった時期があり、プラモデルのウォーターライン・シリーズなんかをよく作ってました(ちなみにお気に入りは空母大鳳と軽巡矢矧)。多分そういう興味から観たんじゃないかと思います。

『マッカーサー』
 これもだいぶ昔にテレビの吹替放送で観ました。グレゴリー・ペックはマッカーサーに激似だったけど、ちょっとかっこよく描きすぎ。有名な「老兵は死なず。ただ消え行くのみ」という台詞もちゃんとありましたね。そこはなかなかかっこよくてペックも名演でしたが。

『連合艦隊』
 これも昔テレビで観ました。前記の通り僕は当時ちょっとミリタリー・ファンだったんで、そういう興味が大きかったんだと思います。真珠湾攻撃からミッドウェー海戦、ガダルカナル島の戦い、山本五十六の戦死、レイテ沖海戦、神風特攻隊、大和の沖縄特攻と有名どころはほとんど押さえてますが、前記の通り空母大鳳が好きだった僕はマリアナ沖海戦がカットされちゃったのがちょっと残念でした(笑)。マリアナ沖海戦って日本でも米国でも映像化されたことないんじゃないかなあ? ま、レイテ沖海戦が描かれるのも結構珍しいと思いますが。またこの手の映画のご多分に漏れず、なぜ日本が米国との戦争に突入したのかという説明がおざなりで、日中戦争とかABCD包囲網についてもちらっと触れる程度なんで、観た当時は子供だったこともあってそのあたりの経緯が今一つよくわからず、ちょっともやもやした記憶があります。
 それからこれもこの映画に限らずですし、この映画の性格上仕方がないとはいえ、日本海軍や山本五十六をやたら持ち上げる海軍善玉論っぽいところは今となってはちょっと疑問。近年では陸軍よりもむしろ海軍が日中全面戦争を引き起こしていったことが明らかにされており、その中心にいたのが山本や米内光政・井上成美らで、海軍の利権拡大や対米戦を想定した航空兵力の実戦運用が目的でした。そしてそれが結局アジア・太平洋戦争へとつながっていったわけで……(陸軍の仮想敵国はソ連であって、米国は海軍の仮想敵国)。まあ1981年の映画なんでしょうがないのかもしれないけど。
 ただ全体としては戦争の悲劇を情緒的に訴える映画としてまあまあよくできていたように思います。

『黒い雨』
 ビデオで観ました。劇場公開およびビデオ化からさほど経ってない時期だったと思います。どちらかといえば広島への原爆投下そのものよりも、戦争が終わった後の後遺症の恐怖に力点が置かれている作品でしたね。次々と被爆者が死ぬ度に葬式があげられ参列者が練り歩くシーンは、少々ブラックユーモアが込められた演出に感じました。アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した元キャンディーズのスーちゃんこと田中好子さんの熱演も印象深い作品です。

『硫黄島からの手紙』
 テレビで観ました。終わり方がちょっと唐突な感じもしましたが、なかなか面白かったです。日本描写もおかしなところは見受けられなかったですね(テレビ放送でカットされたのかもしれんけど)。まあ、それでもわずかに違和感は感じましたが許容範囲内かと。『父親たちの星条旗』のほうは未見です。

『ムルデカ17805』
 名画座ではなく栄耀映画徒然草の戦争映画のほうに掲載されてる映画ですが、歴史ネタの映画ではありますし、ついでに感想を書いちゃいます。
 これは映画館で観ました。全然観る気はなかったんですが、無料券が回ってきたんで観ることに。予想以上にどストレートな戦前日本礼賛映画で、物語の構造がこれより後に観た戦時中の戦意高揚映画『マライの虎』となんにも変わりません。イデオロギー抜きに物語として観てもこれまたひねりも何もない話で、なんだか観てて困ってしまう作品でした。どうも製作側はインドネシアでも公開しようとしてたようですが、試写を観た駐日インドネシア大使や大使館職員からも厳しく批判されたようで、実際にインドネシアで公開されたかは不明(このあたりも『マライの虎』と似てる)。


>オウム幹部死刑執行
 死刑が執行された13人のオウム幹部。その年齢が50代〜60代になっているのを見て、あの事件から20年以上という月日が経っていたんだと実感しました。あまりにも事件の衝撃が大きすぎたのか、ついこの間起きた出来事のような気がしていたんですが、確実に時間は経っていたんですね。でも、この事件については大事なことはまだ何も明らかになっていないんじゃないかという気がします。そういう意味では未だ「歴史」にはなっていないものだし、これで一区切りなどというものではないと感じます。



#10750 
バラージ 2018/07/13 21:27
スポーツに歴史あり

 『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』という映画を観ました。1994年リレハンメル冬季オリンピック直前にライバル選手のナンシー・ケリガン襲撃事件に関与したとして永久追放された米国の女子フィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングの伝記映画です。
 ハーディングの事件は考えてみればもう25年も前のことですし、すでに歴史の1ページになったってことなんでしょう。当時の全米では一般ニュースでも連日報道されるほどの大騒ぎだったらしいし、皮肉なことにそれをきっかけにフィギュアスケートの人気が沸騰しバブル的な状況になったんだとか。僕は1992年アルベールビル冬季五輪を最後に伊藤みどりさんが引退してしまったため、当時はフィギュアスケートへの興味を著しく失っておりリレハンメル五輪もほとんど観てなかったし(ハーディングが靴ヒモが切れたことを泣きながらアピールしたという話はなんとなく聞いたような気がしないでもない。ちなみに1998年長野、2002年ソルトレイクシティについてはリレハンメルよりは印象がある)、大騒ぎだったというケリガン襲撃事件についてもあまり興味を持っておらず、通りいっぺんにしか知りませんでした。ずっと後になってからノンフィクション・ライターの田村明子さんの著作でくわしい事の顛末を知った次第です。
 映画はよく出来ててなかなか面白かったし、日米ともに評論家や観客からも好評らしいんですが、当時ハーディングを取材してた米国のジャーナリストたちからは「この映画のハーディングは実像からかけ離れており、映画は彼女に甘過ぎ、同情的すぎる」という批判的な声が圧倒的なんだそうです。このあたりに実話を映画化する難しさがあるんでしょう。

 ちなみに今後、他にも70年代にあった伝説的なテニスの男女間の異性試合を描いた『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』とか、これまた1980年の伝説的なウィンブルドン決勝を描く『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』なんていうスポーツ史映画も来るようで、そちらも観たい。



#10749 
ろんた 2018/07/10 17:47
んっ!? 潜伏キリシタン?

世界遺産登録はお目出度いのですが、「潜伏キリシタン」ってなんでしょう。色んな書類を和訳したり英訳したりしているうちに「隠れ」を「潜伏」と訳してしまったのか、とか、<「潜伏」=「隠れ」の高級表現>と思ってるのか、とか愉快な妄想をしてしまいました。

wikiによると、隠れキリシタンのうち江戸期のものを"潜伏キリシタン"と呼び、明治期にカトリックに復帰しなかった(ほとんど異端化していた?)人々を"カクレキリシタン"(ママ)と呼ぶそうですが、学会的に認められた術語なんでしょうか。「隠れ」と「潜伏」「カクレ」に意味上の違いはないし、wikiにも英訳するとみんな"Hidden Christians"になる、という話が出てます。無理に術語を作って混乱を招いているのでは? 「江戸期の隠れキリシタン」「明治期の隠れキリシタン」ではダメなのかなぁ。

と、まあ、疑問はありつつも意味は理解したんですが、「世界遺産 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」というところの解説によると、"隠れキリシタン"というのは無いことになっていて、"潜伏キリシタン"と"かくれキリシタン"(ママ)しか出てきません。

「隠れキリシタン」「潜伏キリシタン」「カクレキリシタン」「かくれキリシタン」は、同じなの? 違うの? もう、なんだか分からない!(笑)

あと、ネットを回っているうち、「明治政府は禁教を撤廃していない」と主張している愉快な人を見つけました。まあ、確かに明言してないけど、はっきり言うと余計な騒ぎを起こす奴ら(平田神道とか?)がいたからじゃないかなぁ。そんなことが認められるなら、「明治政府は攘夷を続けていた」って主張も可能なんだけど。「攘夷はいつするんですか?」と問われ、「あん時はあれじゃなきゃイカンかったんじゃぁ!」って答えたの誰だったかな?


>「マルクス・エンゲルス」
ネットの紹介記事で知りました。しかし、マルクスが貧しい家庭で育ったことになってる。変な設定だなぁ、と思って映画や岩波ホールのHPに行ってみると、どうもライターの早とちりっぽい。まあ、エンゲルスの実家に比べれば、大抵の家は貧乏人ですが。しかし、イェンニーの扱いが大きいのに違和感を感じていたら、原題に気づきました。でも、ネットに上がってる予告編はマルクスとエンゲルスに焦点が当たっていて、メアリー・バーンズ(エンゲルスの内縁の妻)らしき女工も出てきますね。


>「國民の創生」
わたしが初めて見たのは深夜テレビで、サウンド版に弁士(女性講談師)が声を入れてました。その後、DVDを購入しましたが、ただのサウンド版でした。そういえばエイゼンシュテインの「全線」は、サイレント版できつかった。農業集団化のプロパガンダ映画ですが。グリフィスは、"不寛容はイカン"という超大作「イントレランス」や白人の美少女と中国人青年の恋を描いた「散りゆく花」を作ってるんでヒューマニストではあるんでしょうが、黒人はそのヒューマニズムの対象にならないみたい(笑)。


>「風と共に去りぬ」
「國民の創生」が出てきたら、こっちにも触れないわけにはいかない、ということで。でも原作を読んだ後に見直そうと思ったら、ディスクが壊れ前半が視聴不能に。パブリック・ドメインのDVD(画質最悪)で、やっと見ることが出来ました。テレビでも劇場でも見た覚えはあるのですが、原作を読んで違和感を感じた部分は、カットされていたりサラッと描かれていることに気づきました。総じて3時間半の超大作でありながら、原作がさらに膨大なんでメロドラマ的部分を中心にして換骨奪胎しているのが見てとれます。

実は原作は意外と南部の大義に批判的なんですが、その辺もさりげなく触れられるか、カットされています。また後半になると、スカーレットの八面六臂の大活躍でほとんどフェミニズム小説と化すんですが、映画は至極あっさり。その後、ヴィクトリア朝的徳目(馬車に乗る時は男性のエスコートを受ける)を守らずに襲われそうになり、レットを除くスカーレットの周辺の男性がKKKだったことが明らかになりますが、映画では、女性を守るのが南部の紳士の務め、ということになってます。

あと冒頭のウィルクス家のパーティーを日本語版では「園遊会」としてますが、原語では(原作でも)バーベキューになってます。向こうのバーベキューは、牛肉の塊を一日がかりで焼き上げる、というもので、日本の「バーベキュー(=焼き肉パーティー)」とは違うってことでしょうか(「チコちゃんに叱られる」でやってた)。でも「園遊会」って、天皇・皇后しか開けないような……(笑)。また、こうしたパーティーで主要人物を紹介するやり方は、黒澤明の「悪い奴ほどよく眠る」やコッポラの「ゴッド・ファーザー」を思わせます。本当の元ネタはこっちかも。

原作も映画も本当の問題点は、描かれていない部分にあったりするんじゃないかと思いますが、その辺はまたの機会に。



#10748 
山太娘 2018/07/03 16:49
『室町繚乱ー義満と世阿弥と吉野の姫君』

阿部暁子『室町繚乱ー義満と世阿弥と吉野の姫君』集英社文庫、2018

既出かもしれませんが、南北朝まっさかりな時代が舞台の小説です。
著者は『室町少年草子』(集英社コバルト文庫、2009)の阿部暁子。
『室町少年草子』の兄弟編ですが、ライトノベルっぽさは減ってます。まぁ気配はしっかり残ってるので、重厚な歴史小説をお求めの方には向かないと思います。

南朝の後村上天皇の姫宮が、おしのびで京の都を訪れ、偶然から足利義満や鬼夜叉と知り合って…というお話。主人公はたぶん架空。足利義満18才。左中将と名乗ったりしてます。

登場人物はサブタイトルのほか、当然ながら楠木正儀、細川頼之、斯波義将、観阿弥などお歴々。
舞台は一貫して京の都で、吉野はほぼ追想です。

http://www.geocities.jp/ochappy_l/


#10747 
バラージ 2018/06/30 00:17
名画座感想 中南米史編

 名画座感想の中南米史編です。

『戦うパンチョ・ビラ』
 ビデオで観ました。昔から「パンチョ・ビラ」という語感がなんか印象に残ってて、妙に気になってた映画です。借りたレンタル店(今はもうない)では西部劇コーナーにありましたね。肩のこらない娯楽アクション映画といった感じでまあまあ面白かったです。この映画だけ観てもメキシコ革命の顛末なんてほとんどわかんないけど(笑)。

『革命児サパタ』
 NHK-BSで観ました。これも邦題が印象的な映画。多彩な人物が登場する複雑なメキシコ革命をわかりやすく描きつつ、重要なメッセージ性もきちんと含んで、しかもそれでいて娯楽性も失わずに作られているのがすごいですね。エリア・カザン監督が赤狩りで転向した直後に作った作品ですが、とても転向した人が作った映画とは思えんな。あるいはそういう人が作ったからこそ単純な革命礼賛映画にはならず、その複雑な陰影が心に残るのかも。

『モーターサイクル・ダイアリーズ』
 DVDで観ました。有名なゲバラの原作は未読。題材が題材だけにあんまり歴史映画っぽくはないんですが、ロードムービーとしてまあまあ面白かったです。まあ個人的には同じウォルター・サレス監督がジャック・ケルアックの小説を映画化した『オン・ザ・ロード』のほうがずっと面白かったんですが。

『チェ 28歳の革命』『チェ 39歳 別れの手紙』
 DVDで観ました。スペクタクル映画かと思いきや、淡々としたドキュメンタリー・タッチの映画でちょっと肩透かしを食らわされました。知人の知人が観たらつまらなかったと言ってたらしいんですが、確かに観る前に期待させられたものとは違う内容なのでそういう人も多かったんではないかと思います。ただ、そういう売り方をしないと客が入んないだろうしなあ。難しいところです。
 その他のゲバラ映画だと名画座にも掲載されてる『ゲバラ!』やテレビドラマ『チェ・ゲバラ&カストロ』の他に、『チェ・ゲバラ 革命と戦いの日々』という2005年の米国映画のDVDがレンタル店にありました(多分DVDスルー)。しかし僕はいずれも未見。去年観たゲバラが脇役で出てくる日本映画『エルネスト もう一人のゲバラ』(#10634)はすでにDVD化されております。またミュージカル『エビータ』には狂言まわし役でゲバラ(役名はチェ)が出てくるそうですが、映画版では同名の別人という設定に変更されてました。


>未見映画
『倭寇掃蕩作戦 忍者外伝』
 以前にもちょっと紹介した1981年の香港映画。日本ではビデオスルーされ、DVD化はされていません。邦題を『忍者外伝 倭寇掃蕩作戦』と逆にしている情報もありますが、どっちにしろメインタイトルは「忍者外伝」のほう(ビデオパッケージではでかでかと「忍者外伝」とある上に小さく「倭寇掃蕩作戦」とある)。原題は「術士神傳」「忍術」「蕩寇英雄傳」と複数あるようです(理由は不明ですがおそらく香港と台湾でタイトルが違ってたり、リバイバル時にタイトルを変えたりしたんではないかと)。
 内容は明の時代、倭寇配下の忍者軍団に手を焼いた明の将軍が探し出したカンフーの達人たちと忍者軍団の戦いという、完全フィクションの香港製忍者時代劇ですが、主人公側のボスのチー将軍という人(演じているのはティ・ロン)がどうやら戚継光のようです。悪ボスの忍者の首領を演じている倉田保昭の持ち込み企画らしいんですが、映画の出来は倉田氏の満足いくものではなかったとのこと。

>私が持っているのはDVD一枚組で表面がA面、裏面がB面というものです。
 へえ〜、そんなDVDがあるんですね。かなり初期のタイプなんでしょうか。レーザーディスクを思い出すなあ。



#10746 
退官した元海上保安官 2018/06/28 04:02
管理人様へ

お世話になっております。
本日、書店で「海賊の日本史」なる講談社現代新書の新刊を購入しました。面白く拝読し、夜分を過ぎてしまいました。残念ながら、中国人のみならず西欧やアフリカ系まで存在したと言う後期倭寇についての記載はあまり見られず、残念でありました。
しかし…元寇で奮戦したが報いられないなかった武士の中から、海へと幕府の統治の圏外に出ていった武士がおり、それが後の倭寇になってゆくのでは? と妄想を拡げさせてくれる面白味を感じました。
参考になれば幸いであります。
しかしながら、私は後期の倭寇に、侵略された大陸・半島の方々には済まないとは思うものの。
多民族で構成された集団が大海原を駆けた事実には胸が踊ります。元治安官の申す事ではありませんが。
いつか管理人様に後期倭寇の大ロマンを世間に問うて頂きたく思います。唐突でありますが御報告まで。



#10744 
つね 2018/06/24 01:38
アメリカ映画

>JFK
失礼しました。完全に勘違いです。ちなみに私が持っているのはDVD一枚組で表面がA面、裏面がB面というものです。この形のは私はこれしか見たことがありません。特典映像はなしです。

ついでに私もアメリカ歴史映画の感想を。

『國民の創生』
長かったという記憶が一番。サイレンス映画でセリフがありませんし。ただKKK擁護とかリンカーン暗殺場面とかは覚えています。一次世界大戦期に公開されたというのもあるのでしょうが、黒人差別を擁護しておいて最後は世界平和を訴えていて違和感を覚えました。

『Gods and Generals』
歴史映像名画座で紹介されている「ゲティスバーグの戦い」の続編。時系列はその前で南軍の名将ストーンウォール(石壁)・ジャクソンが主人公です。南北戦争開戦前から始まっていて「國民の創生」同様に「南部の大義」主張のところがあります。黒人奴隷を使っていたのが一部富裕層ということを考えると、南部庶民にとっては国土防衛的な面はあるのでしょうが差別が批判されるのは時代の流れでしょう。個人的に興味があるマクレランが出ておらずアメリカ史上、一日で最大の戦死者を出した「アンティータムの戦い」がカットされているのが残念


『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』
陰謀論には触れることなく淡々と事実を映す映画ですが、あの一日で意図せず人生が変わった人がいることを印象づけられます。大統領警護に失敗したシークレット・サービスやFBI、単にビデオを撮っていただけのザプルーダー、ケネディとオズワルド二人の死を看取った病院関係者など。個人の無力を感じさせます。


『リンカーン』
スペクタクルシーンはあまりありませんでしたが、歴史ドラマかつ人間ドラマとして楽しめた。主演が本当にリンカーンを髣髴とさせます(本物に会ったことはありませんが)。ただ彼がユーモア好きなのは分かりますが、あまり彼のアメリカン・ジョークは笑えませんでした。

『フロスト×ニクソン』
ニクソンが失脚後、復活を企んでいるときに、ジャーナリスト、フロストのインタビューを受けるという映画です。ニクソンはフロストの攻撃を巧みに自己弁護に変えるのですが、最後の最後で「国を救うものは罪を犯しても問題ではない」(ここはかなりうろ覚え)みたいなことを口走ってしまい敗北してしまいます。ニクソンはケネディとの対決と言い、メディアと相性が悪いようです。ニクソン側近のケヴィン・コスナーも印象的です。ニクソンとフロストの対決後の再開もさわやかで後味は良かったです。

あと題名忘れましたが、レーガン暗殺未遂事件時の国務長官アレクサンダー・ヘイグを主人公にしたものとか、いけてない二代目ブッシュの『ブッシュ』とか。ブッシュ・ジュニアは本人も自覚する無能で、政治家も希望してなかったのですが、世襲政治家として父親に叱られながら政治家になってしまいます。大統領制ながら貴族性も感じさせ、適任でない人がトップになると本人も周囲も不幸になってしまうというのを思わせられます。そういえば『大統領暗殺』で勝手に葬儀までされてましたね。本人はかなり「いい人」だと思うのですが。

あまり「いい人」に思えないトランプ氏も、最近さらに暴走がかかっているような。貿易戦争なんて愚の骨頂。百年前の発想でしょうに。こういうのがえてして本物の戦争に繋がったりしまいますからね。さすがに欧米間はないでしょうけど、米中とか10年20年で見て大丈夫なのかな。困ったことにアメリカ国内ではディールとして一定の支持があったりするようです。

そろそろ911も歴史になりますかね(もう17年前)。911では『ユナイテッド93』が印象にあります。あの日、唯一、目標にあたらず、墜落した飛行機の内部を中心にしたものですが、当日の管制官が本人役で出ていたり、これも本人だったと思いますが、アメリカ軍の女性オペレーターが泣き出したり、迫真に迫っています。ラストはただの真っ黒の画面。


#10743 
バラージ 2018/06/23 22:06
名画座感想 米国史編A

 名画座感想米国史編の後編です。

『レッズ』
 ビデオで観ました。なかなか面白かったですね。ジョン・リードというとロシア革命のルポルタージュ『世界を揺るがした十日間』を書いたジャーナリストという認識でしたが、アメリカ共産党の創設者の1人でもあったんですね。途中で入る実際のリードを知る人たちのインタビューによる証言が印象的でした。監督・主演のウォーレン・ビーティも熱演でしたが、恋人役のダイアン・キートンと、ユージン・オニール役のジャック・ニコルソンも好演。

『ジェロニモ』
 住んでる地方に来なかったんでビデオで観ました。タイトル的にも内容的にも明らかにジェロニモ役のウェス・スチューディが主演なんですが、ネームバリューと集客力のためか語り部役のジェイソン・パトリックがトップクレジットになっちゃってます。ウォルター・ヒル監督らしく男くさい骨太な映画でなかなか面白かったんですが、もうちょっと女っ気が欲しいような気も(笑)。でもヒル監督には、ダイアン・レインがヒロイン歌姫を演じてた『ストリート・オブ・ファイヤー』があったよなぁと思って調べてみると、原案・脚本がジョン・ミリアスで女っ気がないのはそっちのせいかも。といってもミリアスの監督映画も『ビッグ・ウェンズデー』ぐらいしか観てないんだけど。

『ニクソン』
 映画館で観ました。これはいまいちだったなあ。退屈な映画だったし、内容的にもやや問題ありかと。オリバー・ストーン監督は『JFK』の次の『天と地』はつまらなかったものの、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』は面白かったんです。しかし次の本作がまたもつまらなくて、以後はなんとなくあまり観なくなってしまいました。
 ニクソンは映画の題材としてはケネディと並んで人気がある大統領で、有名な『大統領の陰謀』(未見。そういえば名画座にも掲載されてませんね)を皮切りに多数の映画が作られてます。その中で個人的お気に入りは、ディープ・スロートの正体は実はおバカ女子高生2人組だったというコメディ映画『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ!』(原題:Dick)。ディープ・スロートの正体については一時話題だった本『静かなるクーデター』ではアレクサンダー・ヘイグと推測されていたそうですが、近年マーク・フェルトが自分だと告白。彼を主人公とした映画『ザ・シークレットマン』が今年公開されました。僕の地方では公開はまだもうちょっと先。

『ダラスの熱い日』
 確かNHK-BSで観ました。ケネディ暗殺の映画としては『JFK』に先立つもので、当時としては告発性が高く意味のある作品だったんだろうと思いますが、ドキュメント・タッチというかあまりにも淡々とし過ぎていて娯楽性が低いので、今となってはこの問題に興味がある人にしかおすすめできない映画だと思います。ケネディ暗殺の映画としては他に近年の作品として、有名なザブルーダー・フィルムを撮影したザブルーダーらを主人公にした群像劇『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』や、ジャクリーン夫人が主人公の『ジャッキー ファーストレディ最後の使命』などがあるようです。僕はどっちも未見。

『リンカーン』……#9363。
『グローリー 明日への行進』……#9943。
 いずれも観た後の感想ではまあまあ面白かったと書いてますが、もう今となっては少々記憶が薄れてきております……。


>『JFK』
 書き方がわかりにくかったようで申し訳ありませんが、僕が書いた「特典映像」とは販売版DVDによく収録されている、本編以外のいわゆる「付録」です。『JFK』のDVD─いくつかバージョンがあるので全てにあるのかはわかりませんが、僕の持ってる二枚組バージョンでは、ディレクターズカット特別編集版にも組み込まれなかったシーンを十数シーン収録してまして、その中にジャック・ルビー(デヴィッド・フェリーではない)の死のシーンもあります。
 本編においては劇場公開版・ディレクターズカット版ともに、ルビーがウォーレン委員長らの尋問に答えてるシーンに、布で覆われたルビーの死体とおぼしきものが運ばれていく映像をダブらせている、きわめてわかりにくいものでしたが、特典映像には本編からカットされた、ルビーが病気ではないと主張してるにも関わらず医者に無理やり注射されるシーンがあって、ルビーが謀殺されたことが暗示してあります。なおデヴィッド・フェリーに関しては、つねさんのおっしゃる通り(ルビー同様に)劇場公開版・ディレクターズカット版の本編に違いはなく、特典映像にもそれ以上のシーンはありません。
 ルビーに関しては、『JFK』と同時期に彼を主人公とした『ジャック・ルビー』という映画が作られており、劇場公開&ビデオ化がされていましたがDVD化はされていないようです。僕は未見。



#10742 
つね 2018/06/23 11:25
アラモとJFK

どちらも記憶に頼っているので不正確なところがあるかもしれませんが。

>アラモ
ジョン・ウェイン主役の1960年版と2004年版がありますね。実は戦闘シーンはかなり違いがあって、1960年版はクライマックスしか見ていませんが、メキシコ軍は白昼堂々要塞への正面攻撃を仕掛けていますが、2004年版では史実重視で夜明けの奇襲となっています。でも1960年版の哀愁ただよう音楽「遥かなるアラモ」は好き。あと2004年版だと、アラモ着任前のトラヴィスに対し、ヒューストン将軍が「アラモには立てこもるな」と忠告していて、トラヴィスの戦略ミスの面を出していたり、アラモ陥落後も30分くらい延々とテキサス軍が逃げ回って逆転勝利をするサンジャシントの戦いまで続けているので間延びしている印象があります。

>JFK
映画公開時もDVDも観ていますが、公開時でもデイヴィッド・フェリーの死はジム・ギャリソンの推測という形で映像化されていて、特別編集では追加なかったような。特別編集で追加されたとはっきり分かったのは、ジム・ギャリソンのテレビ番組出演とその後の空港での騒動。でも空港のシーンは分かりにくかったし不要だったと思います。この場面、実は今回、史点でも名前が出ている落合信彦氏の「2039年の真実」で紹介されていて、ここではジム・ギャリソンがトイレに入った後、男の子が入ってきて「助けて」と叫んですぐに数人の警察官が入ってきて痴漢容疑か誘拐容疑かで逮捕されたというものでした。ジム・ギャリソンも批判派に言わせるとかなり論理展開怪しいそうですが。当時印象的だった「魔法の弾丸」も今では否定されていますし。




#10741 
バラージ 2018/06/20 23:22
名画座感想 米国史編@

 今度は大阪……。

 名画座掲載映画の感想、米国史編です。

『アラモ』
 かなり昔に民放の吹替深夜放送で観ました。といってもクライマックスの戦争シーンだけ。多分テレビをつけたらたまたまやってたのを途中から観たんでしょう。その合戦絵巻自体はわりと面白かったような記憶があります。

『グローリー』
 ここからはいずれも劇場公開時に映画館で観ました。南北戦争の北軍に黒人部隊があったというのはこの映画で初めて知ったんですが、主人公が黒人たちではなく白人の隊長というのはなんだか中途半端。まだこの頃はこれが限界だったのかな。マシュー・ブロデリックは当時は『ウォー・ゲーム』や『フェリスはある朝突然に』の高校生役のイメージでしたね(でもどっちも未見)。デンゼル・ワシントンとモーガン・フリーマンの出世作でもあります。

『ダンス・ウィズ・ウルブズ』
 ビデオで出た4時間アナザーバージョンは未見。少々冗長で若干退屈な部分もあるものの、徹底的にネイティブ・アメリカン(インディアン)側に立った映画は新鮮でした。ネイティブ・アメリカンが彼ら自身の言葉で話しているのも画期的。ただしWikiによるとネイティブ・アメリカンの言語には日本語同様に男言葉と女言葉があり、言語指導が女性だったことから登場人物全員が女言葉でしゃべることになってしまっているため、ネイティブ・アメリカンの言語のわかる人には爆笑ものなんだとか。また公開当時に雑誌(キネマ旬報だったか朝日ジャーナルだったか)で指摘されていたんですが、ネイティブ・アメリカンの言語は日本語同様に主語が省略されるため、タイトルにもなっている主人公の名前は本来「(He) dances with wolves」であり、日本語に翻訳すると「狼と踊る男」ではなく「(彼は)狼と踊る」が正しい、とする記事が載っていた記憶があります。
 とはいえ俳優ケビン・コスナーの初監督映画でありながらこれだけの完成度の3時間の大作、それもネイティブ・アメリカン側に立った映画を作ったことは十分評価されるに値するでしょう(ちなみにこれ以前にネイティブ・アメリカン側に立った西部劇映画として『折れた矢』という作品が1950年に作られているとのこと)。本作以前に『アンタッチャブル』『フィールド・オブ・ドリームス』でスターとなったコスナーは、本作以後も『JFK』『ボディガード』(後者は未見)と話題作に次々と主演。90年代は彼の絶頂期でした。

『JFK』
 189分の劇場公開版を映画館で観て、ディレクターズカット完全版もビデオで観ました。DVDはディレクターズカット完全版のみのようですね。
 これは面白かった。ケネディを理想化しすぎている部分にはちょっと疑問があるし、話が入りきらないためか少々わかりにくい部分もある(特にジャック・ルビーの死の描写。DVDの特典映像にはカットされたシーンが収録されてます)ものの、サスペンス映画としての面白さは間違いなく一級品で3時間の長さを全く感じさせません。ケネディ暗殺の真犯人がこの映画の推理通りかどうかはともかくとして、かねてより言われていたオズワルド単独犯行説に対する疑惑をこの映画が一般に大きく広めたのは間違いないでしょう。刺激的な映画でした。コスナーばかりでなく、トミー・リー・ジョーンズ、ジョー・ペシ、ゲイリー・オールドマン、ケビン・ベーコンなどいずれも好演でしたね。
 オリバー・ストーン監督の映画は、これ以前に『プラトーン』『サルバドル 遥かなる日々』『ウォール街』『トーク・レディオ』をテレビやビデオで観ていていずれも面白かったんですが、映画館で映画をよく観るようになってからの『7月4日に生まれて』『ドアーズ』も映画館では観逃してビデオで観たため、映画館で観たのは本作が初めてでした。ジム・ギャリソンの原作本も読んだなあ。

『マルコムX』
 これも面白かった。これまた3時間以上という長さを全く感じさせない作品です。主演のデンゼル・ワシントンはマルコムが乗り移ったかのような熱演でした。マルコムについてはこの映画以前にジャーナリストの本多勝一の本でキング牧師と並べて触れられていたので知りましたが、映画公開時には自伝をはじめとしたマルコムの関連本が大量に出版されてましたね。
 ただ、一ヶ所だけ気になったのは、「あなた方のために私にできることは何かないでしょうか?」と聞いた白人の若い女の子に、マルコムが「何もない」と言い放つシーン。自伝では過去の過ちとして語られるエピソードなので、後の場面でマルコムの後悔が描かれると思ったんですが、そういうシーンはありませんでした。我々日本人も含めて非黒人はあの白人少女に感情移入するので、それを拒絶したままで終わるというのは大きなマイナス。終盤には白人との融和も描かれてましたが、印象は薄かったです。
 そのような欠点はあるにしても、本作が質の高い優れた映画だったことは間違いありません。スパイク・リー監督の映画は、本作以前の『ドゥ・ザ・ライト・シング』『モ’・ベター・ブルース』は住んでた地方では公開されなかったんでビデオで観ましたが、『ドゥ・ザ〜』の冒頭ですでにキング牧師と並べてマルコムに触れてましたね。その次の『ジャングル・フィーバー』で初めて映画館で観て、その次が本作でした。またワシントンはこの後も『フィラデルフィア』『ペリカン文書』とスターの階段を上っていきます。


>未見映画
『VIKING バイキング 誇り高き戦士たち』
 キエフ大公国のウラジーミル1世の半生を描いたロシアの歴史映画。「未体験ゾーンの映画たち2018」で上映された後DVD化。

>三国志ドラマ
 WOWOWで『三国志 〜司馬懿 軍師連盟〜』という中国の連ドラが始まります。司馬懿が主人公とはまた変わった視点で面白そうなんですが、第一部42話、第二部44話という長さがちょっとなあ……。以前には『三国志 趙雲伝』という中国連ドラもやってて、趙雲でどうやって連ドラにするんだと思ったら、登場人物のほとんどが架空人物の時代劇に近いドラマだったようです。

>「所詮はアメリカの子分国の立場なのでアメリカに不利益な暴走をしようとした途端につぶされるだろうなと思ってまして」
 オリバー・ストーン監督の映画『スノーデン』で、スノーデンが横田基地駐在時に、日本が米国の同盟国でなくなった場合に日本のライフラインを全て停止できるプログラムを組み込んだ、と述べる描写がありました。ドキュメンタリー映画『シチズンフォー』のほうにはそのような言及はなかったので、スノーデンが本当にそう述べたかはわかりませんが、両作を観てるとそのようなことが実際にあったとしてもおかしくないなと思えます。



#10739 
退官した元海上保安官 2018/06/14 04:16
管理人様の御仕事はルパンやホームズなのではありませんか

いわゆる「連投」となってしまい恐縮です。ふと、元職場の者と同窓会で気になったもので一言を。
退官すると暇になるもので、私ども基本が理系の海の人間は、祖国の歴史へと老後の楽しみが向かいます。
その少なからずが古代史に耽溺します。
おそらく文字記録が少ないので、素人でもあれこれ妄想でかる自由度が高いからと思います。
確かに文字で記録された文献が少ないならば、考古学での物証や、民話や神話の研究する学問、そう民俗学と言うのでしょうか。そうした方々の奮闘で埋めるしかないのかも知れません。
私は管理人様とこちらのコメント主様の影響ではないですが中世に興味が出まして図書館通いしてます。
さて、引退した仲間ともども海に生きてきた私どもは、
基本的に理系が多いです。そのせいか、昨今の日本史であれ、世界史であれ、自然科学者の書いた歴史に影響される事が大なのです。
その良し悪しは別として、中世以後の歴史にまで、「自然科学を応用すべきだ」という元仲間の言説に納得が行かないものがあります。確かに「神の手」事件の影響は大きく、人文学でも自然科学に近接すると思われます考古学の権威を落としました。
そして「アースダイバー」なる宗教学者様の書籍がベストセラーになるように、衛星写真や古気象学などの自然科学の介入は必要かも知れません。
しかしながら、文献が複数に存在する中世以後にまで、
自然科学に任せるべきでしょうか?
私の元同僚は多いのです。理系が多いので。
私は中世以後の歴史学の方々も充分に「科学的」と思っております。
文字記録は確かに物証ではなく、文献主体でしょう。
それでも複数の文献や古文書に当たり、複眼の思考で
「薮の中(羅生門)」のように推理してゆくのは、実は
警察捜査や探偵の筋道と似ていると思います。
私は海上自衛隊さんと違い、事故や犯罪に関わる「海の警察官」でした。時に刑事さんや探偵さんでもある訳でした。現場の追跡と共に「文書」の確認も、求められる案件では大切でした。
僭越ですが、歴史学の方々と似た事をしているとも思います。そのせいか疑問に感じます。
管理人様の歴史学とは、このように多方面からの情報を吟味して、真相を追及してゆく学問なのでは?
確かに「物証」は大事です。
しかし「多数の文字記録」は、複数の証言や立場の違う人達の言葉であります。立場の違う人々の言葉を紡いで真相を探るのはルパンやホームズのような合理的で演繹的な作業であり、それは「仮説→実験→立証」の経緯を辿る「近代科学」と変わらないと思います。
私は実はルパンもホームズも好きでして、棺桶島や、
放射性物質の関与を考察した物語や、戦争時におけるルパンの推理に少年時代に感心しました。
ホームズは少し奇形的な知識人ですが、ルパンは泥棒でありながら情という点で合理だけではない知見の探偵でおると思っています。
話が逸れましたが、複数の文献や古文書に当たり、真実を追及してゆくのは、充分に「科学的」であると私は思います。文系を廃止しろ!などと言う風潮があります。
百田なんとか言う作家は、「漢文を廃止しろ」などと申しております。それが中国への憧憬を産むからと。
しかし、戦時中に歴史学者に日本を研究をさせ、戦後に「菊と刀」を出版させたアメリカと我国のどちらに軍配が上がりましたか?
歴史学が非科学的であると論じる元同僚達に疑問を感じるのです。私は対象となる事件が、時代のせいなのか、
「国防」よりは災害・犯罪などの事件捜査(もちろん予防も)に服務してきました。
銃器や麻薬などの密輸を取り締まるには、現場の物証は大切でありますが、その前に周到な「文字記録」の確認は必要であります。いきなり現場で不審船を追跡して、
現行犯逮捕で武力に及んだと思われる方がおられるのならば、それは誤解であります!
そのような地道な見識なくして、事故や犯罪を追及できません。 文献を複数の複眼で思考して、対象物を追われる歴史学問は、決して「科学」の範疇を逸脱していないと私は思いますし、文系廃止論には管理人様も抗議して欲しいと思います。
引退後、地域の貧困家庭の子女の援護活動に参加しております。先日は「スマホを持つから贅沢で、学費免除は認められない!」とした担任を殴りそうになりました。
この娘さんは家庭を助ける為に深夜まで働き、時には公衆トイレで夜明かししてまで皆勤賞です。
今の時代、アルバイトでもスマホとラインでスケジュール変更を通達されるので、スマホは貧困家庭の子女でも
働く為に必要インフラなんです!
相手は物理学の教員でした。科学ばかり発達して、
人の世界を見ようとしない理研ばかり優遇するから、ますます「優しい世界」から祖国は逸脱するのでは無いでしょうか?
文系を廃止するなど、亡国の論であります!
歴史と哲学は文系の持つ基本であります。それを棄てるならば、日本は心の無い国になってしまいます。
方程式だけで通用しない「歴史」という分野があります。管理人様は複数の文献を読みながら、推察して真実に迫ってゆく。それはルパンやホームズと同じです。
そのような文系を批判する今の日本に!私は理系ながら
反発を禁じ得ません!









#10738 
退官した元海上保安官 2018/06/10 16:57
バラージ様、管理人様へ

バラージ様。丁寧なご教示ありがとうございます。
全く御指摘の通りです。恥ずかしながら私は「三国史」と「三国志」は同一のものと勘違いしていました。
正史で三国史、大衆文芸で三国志になるものと勘違いしていたのです。いや、恥をかく前にご教示頂き幸いでした。ありがとうございます。

管理人様

一先ず貴兄の御言葉で安心いたしました。私が元治安関係者でありながら、国威高揚に否定的な事を不思議に思われる方もいらっしゃるかと思います。
実は公務員には社会主義思想に興味を持っ人は少なくありません。それは社会を国家が管理してゆく形態を持つからで、それは役人の思惑には一致する部分があるのですよ。
ただし、これも「行き過ぎる」とプーチン大統領のロシアのようになってしまい「国家主義」が台頭します。
私もサッカーに用いられる歌詞の、妙に大和言葉が羅列するのに不快感を持っています。
文化としての国威高揚と国家主義が合体した時、戻る事の出来ない道を歩んでしまうことは先の大戦が証明しております。
やはり完全に不安を払拭できないというのが本音でもあります。
では、お二人様、丁寧な回答を感謝いたします。
ありがとうございました。



#10737 
徹夜城(明日は天気が心配だが出動しなきゃいけない管理人) 2018/06/10 00:09
本やら映画やら

 どうも。いろいろ執筆が遅れてます(汗)。「史点」もネタは集まったんで5月中にもう一回くらいアップできるはずだったんですが、ズルズル遅れるうちに贋作サミットを書かなきゃいけない時期に。そしてそのサミットを中座してトランプさんは米朝首脳会談に向かうわけで。来週も何かと注目です。

>書籍
 最近いろんな本に手を出してましてまとめにくいんですが…
 このところでは中島岳志氏のノンフィクション「血盟団事件」をなかなか面白く読みました。「血盟団」は日蓮宗国家主義者たちの団体で、政界・財界要人の暗殺による国家改造を企図して昭和7年に元蔵相の井上準之助、三井財閥の団琢磨を暗殺しています。この集団の指導者が井上日召という人物なんですが、このノンフィクションではこの日召をはじめとして彼に魅入られて運動に参加していった個々人の経歴をじっくりと描いています。彼らがだんだんと集まっていく過程そのものも面白いんですが、当時の日本の抱える社会矛盾(特に農村の貧困)が浮かび上がってくる仕掛けにもなってます。

 そうした世の中をなんとかしないと…と思った連中の行き着く先が「テロ」というのが大問題なのですが、その経緯を眺めているとオウム真理教とか連合赤軍とかいろいろ似てくるなと思いながら読んでました。また日召自身ははじめはそう過激ではなく時間をかけて農村に支持者を広げて何十万人にもなったところで東京へ押しかけるという、ロシアの「ナロードニキ」を思わせる革命構想を抱いていた、というのは初めて知りました。それが「一人一殺」になっちゃったのは海軍軍人の過激派など他の国家主義者たちに影響されたということのようで。実際血盟団事件より前に浜口雄幸首相狙撃事件とか軍内部のクーデター未遂事件とか似たような発想のテロ事件が他の団体により起こされてますし、血盟団事件の人脈を見ていくと北一輝など二・二六事件に関わる名前も散見され、血盟団の暗殺予定リストは二・二六のそれともかぶるところがあります。とにかく物騒な時代だったな、と思うばかりで…
 また血盟団に連座して入獄、その後はまた方向の違う右翼の大物となり、戦後自民党政治の影のフィクサーともなった四元義隆なんて人物もおりまして(同書では先日100歳になった中曽根元首相が彼について語ってる)、なんだかんだで戦後政界にも影を落としたりしています。

 この事件についてはバラージさんが珠解されていた映画「日本暗殺秘録」でもメインいなっていて、井上準之助暗殺犯の小沼正を千葉真一が演じて話題になったと聞いてます。小沼当人も見て共感で来たとかで。僕は未見でしたが、これを機に見てみようかな、以前その序盤の大隈重信暗殺未遂事件のシーンなんかは見てたんですけどね。
 もうひとつNHKのドラマ「男子の本懐」もありますが、こちらは恐らく小沼本人が存命だったためでしょう、井上準之助暗殺犯の設定は完全に創作されてます。演じたのは勝野洋で、浜口雄幸の通う床屋の娘の恋人という設定でした。井上日召らしき人物も出てきます。


 もう一冊は、まだ買って来たばかりの読み始めなんですが、「初期室町幕府研究の最前線」。タイトルから分かるように内容的には「室町」といっても「南北朝」の段階です。この「最前線」シリーズは現在のアカデミズムの動向を一般向けに伝えるという大変意義のある姿勢をとってまして(当サイトも一応それを目指してます)、冒頭でこれまでの研究動向がまとめられ、それから現在ではどうなってるのか、が分かりやすく解説されてます。

 この冒頭部分だけざっと読みましたが、戦後、一般歴史ファンでも南北朝が敬遠されてきたこと、学界の研究もいまひとつ不活発だったことなどが書かれてました。前者の一般の人たちの南北朝や尊氏イメージについても面白いのですが、学界動向について「佐藤進一氏」という大巨人が昭和三十年代くらいに南北朝研究の枠組みを全部作っちゃって、それがある意味足かせになってしまったという指摘が興味深かったです。今はそれをポツポツと突き崩してきている、というところらしいですが…
 僕も承知してたことですが、この佐藤進一氏について「直義ファン」と評してるところでニヤニヤしてしまいました(笑)。佐藤氏が直義ファンであったために直義の高評価ができ、現在ネット上でも直義ファンを公言する人が思いのほか多い、ということも触れられてます。少女漫画で直義がカッコいい作品が複数存在するというのもそれが原因なのかな?
 この佐藤氏、大河「太平記」放送時の座談会で「あんな直義がいるわけがない」とドラマに大変な不満をもらしておられましたっけ(笑)。ま、あれはあくまでドラマの上での必要性、特にいつも煮え切らない尊氏をけしかける役回りなのでなおさらそういうキャラになったのだろうと。


>「マルクス・エンゲルス」
 さて一転して映画。岩波ホールで来週まで上映の映画「マルクス・エンゲルス」を観てきました。監督はラウル=ペックで、「ルムンバの叫び」が知られいます(歴史映像名画座のアフリカ史参照)。
 原題は「若き日のカール・マルクス」といったところで、邦題はなんで全集みたいに「マルクス・エンゲルス」なんだと思っていたんですが、実際に見てみると邦題の方が内容的に正しい。二人の青年が出会い、意気投合し、いろいろあって「共産党宣言」発表にたどりつくまでを青春映画風に描いています。
 細かいレビューはそのうち栄耀映画のほうでやろうと思うので長くは書きませんが、この映画、プルードンやバクーニンといった、世界史の教科書で覚えた人たちもチョコチョコ登場するんですよ。プルードンの演説に茶々を入れるマルクスをふりかえったバクーニンが「あいつ、カール・マルクスだぜ」とつぶやくシーンなんて、歴史映画好きとしてはゾクゾクしちゃいます(笑)。史実性はやや気になる場面も多いんですが、マルクスやエンゲルスの若い頃は案外こんな感じでは、という雰囲気はよく伝わってきました。
 若い頃だけに話をしぼったのも正解だったでしょうね。この映画ではマルクス夫妻はラブラブなんであります(ベッドシーンまであったもんな)、その後貧困の中でいろいろと起こって結構ドロドロしたことになるんですよねぇ。


>バラージさん
 そうですか、「ゴッド・オブ・ウォー」、DVDは出るんですね。公開はちと難しいかな、と思っていたので嬉しい話です。ツイッター上でもかなりほめてる人がいまして、僕も「倭寇研究者」の立場で太鼓判押しておきました。

>退官した元海上保安官さん
 お久しぶりです。ご丁寧なご挨拶、恐れ入ります。
 お話のナショナリズムの盛り上がりに対する危惧というのは僕もそこそこ共有してるともうのですが、「危険水域」とまではまだ思ってません。「血盟団事件」の話を読んだ直後のせいかもしれませんけど、昭和前期の日本をおおった狂気ぶりはこんなもんじゃありませんから…と言いつつ、部分的にスケールを小さくして似てるところも目につくのは確かで、そこは気をつけていきたいな、と。昨日も某サッカー応援歌の歌詞聞いて気味悪くなったりしましたしね。
 まぁ日本の政治が変になって、無茶な暴走するような国粋政権が誕生したとしても、所詮はアメリカの子分国の立場なのでアメリカに不利益な暴走をしようとした途端につぶされるだろうなと思ってまして、先の大戦よりはとっととつぶれて被害も小さいんじゃないかと思うところもあります。「危険水域」の話も含めて僕は楽観的に過ぎるかもしれませんけどね。
 
 中国の統一・分裂と日本の動向については、昔から議論がありまして、つい先日もそれに関係する書籍を二冊ほど読んでいたりするのですが…話がまとめにくいんで、今回は避けます。面白いっちゃあ面白い議論なんですけどね。



#10736 
バラージ 2018/06/08 23:10
これが本当に恐い話

 ドキュメンタリー映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』を観ました。
 米国政府とその情報機関が全ての米国民と世界中の要人のあらゆるインターネット利用を無断傍受し、また全ての電話の盗聴をしていると告発した元CIAおよびNSA職員エドワード・スノーデンを描いた2014年のドキュメンタリー映画です。日本公開は2016年。地元での公開当時(東京よりは遅れたと思う)、映画館に観に行こうか迷っているうちに観逃してしまいました。
 「シチズンフォー」というハンドルネームでローラ・ポイトラス監督に接触をはかり、香港で監督やジャーナリストのグレン・グリーンウォルドのインタビューに答えたスノーデン。彼の語る衝撃的な事実の数々には、戦慄させられ背筋が寒くなります。本当の恐怖とはこういうものを言うのでしょう。そして彼らの周囲に伸びてくる米国政府の見えざる手。現在進行形のサスペンスが現実に展開されていく様はまさに映画以上にスリリングで恐ろしい。しかもこれ、比較的リベラルに見えるオバマ政権下でのことなんだよなあ。スノーデンの事件はニュースでも見てましたが(史点でも2013年11月に取り上げてますね)、ドキュメンタリー映画で見ると本当にすごいことだったんだと実感します。90年代にネット社会の恐怖を描いたサンドラ・ブロック主演の『ザ・インターネット』というサスペンス映画を観たんですが、現実はあの頃よりもさらに恐ろしい状況になっているようです。
 それにしてもスノーデンという男は29歳の若さで本当に大したやつだ。俺ならあんな真似、絶対無理だな。

 そしてオリバー・ストーン監督の映画『スノーデン』も観ました。『シチズンフォー』を観ないうちにこっちを観るのもなあと思って、これまた劇場公開時には観逃しておりました。
 やはりこの映画は『シチズンフォー』を観てから観たほうが良いですね。非常に優れた映画ですが、それでも本物の持つ説得力には及びません。とはいえ映画自体は非常に面白かった。『シチズンフォー』が描かなかった─というか描けなかった─部分を描き、見事に補完しています。スノーデンの主張ばかりでなくストーン独自の見解も入っているようで、作風がちょっと『JFK』に似ている感もあり。ストーン監督作は90年代後半あたりから社会派要素が少なくなって興味を失ったんですが、本作では久々に水を得た魚のようにストーン節全開でした。
 ちなみに劇中でも描かれてるんですが、スノーデンはCIA在籍中に日本でも勤務していたとのこと。この書き込みも米国情報機関に閲覧されているのかも。いや恐ろしい。ほんとマジで。


>その他の映画
 『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』もようやく観ました。
 僕の感想も徹夜城さんとだいたい同じでして、よくできた映画だとは思うんだけど、ある意味イギリスが最終的に勝ったから成り立つ映画だよなあと。独ソが開戦せず米国も参戦しなかったらイギリスはかなり苦しい状況に追い込まれてたわけで、そういう意味ではちょっと結果オーライで成り立ってるような気も。僕が連想したのは、首相に任命された東条英機が交渉継続か開戦か迷った末に昭和天皇のアドバイスで電車に乗り込み庶民の声を聞いたら「米英討つべし!」の声一色で、それに力を得て対米開戦を決断しちゃうというもの(笑)。
 なお、ハリファックスが「ムッソリーニからドイツとの和平を仲介するという申し出がある」と言うシーンがありましたが、この時点でドイツ側に和平をするメリットがあるか? ムッソリーニがそんな仲介するか?と疑問に思ったら、どうやらこれもフィクションのようで。イギリス内部で和平論があったのは事実のようですけどね。あと、妻役のクリスティン・スコット・トーマスがずいぶん老けてたのはちょっとショック。老けメイクかもしれないけど、考えてみりゃ『イングリッシュ・ペイシェント』も20年前か。

>未見映画
 香港映画『ゴッド・オブ・ウォー(原題:蕩寇風雲)』が、『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』という邦題でDVD化されたようです。

>退官した元海上保安官さん
 大枠では同意なんですが、三国志の時代に日本が朝鮮半島の内乱に軍事介入したというのは何か誤解されておられるのではないでしょうか? 中国の三国時代は日本では邪馬台国の時代でして、日本が朝鮮半島に進出したのは200〜300年ほど後のこと(中国では南北朝時代から隋唐による統一に向かう頃)になります。朝鮮の三国時代(高句麗・百済・新羅)と勘違いされているのでは?
 個人的には、近年の世界的ナショナリズムの傾向は90年代の冷戦の終結と共産圏の崩壊がきっかけなんではないかと思ってます。実は90年代から僕はそう感じてまして、東アジアにおいては日中韓などはもちろんモンゴルやベトナムなどにもナショナリズムが台頭しているという感覚がありました。もちろんそれには悪い面ばかりではなく良い面もあるとは思うのですが、やはり負の側面が大きいように思います。



#10735 
退官した元海上保安官 2018/06/07 05:14
管理人様へ欠礼をお詫びいたします

先ずは「お久しぶりでした。先はお世話になりました」が先でありました。非礼をお詫び致します。



#10734 
退官した元海上保安官 2018/06/07 05:10
自国礼賛は為になるでしょうか?

大仙古墳をツァーで眺めてきました。あれが当時の技術水準で凄い建造物だったのは認めるのですが。だから「日本は古代から先進国だった」という解説に違和感を感じました。私は付近を当時の大和川が流れていたとの解説で、大陸や半島からの使節に「日本は後進国ではないぞ」とパフォーマンスしていたように見えるのです。
例えば中国が覇権国になろうと分裂内乱になろうと、日本が振り回される運命なのは、勤めてきた職務から、逃げられない運命だと思うのです。
管理人様の「和寇」については解らないのですが、どうも我国が半島や大陸に進撃する時は似てる気が致します。古代に中国が三國志の内乱になり、すると半島の支配が真空状態になる。すると鉄資源を輸入していた日本は、半島の内覧に軍事介入しますね。
やはり清朝が太平天国や西欧の侵略で屋台骨が崩れてくると、日本は半島に大陸に進撃します。
どちらも似てないでしゃうか?
攻め込もうと、防人を配置して守ろうとしようと、振り回されているのは変わらないと思います。
そして短期間に技術を学んで、後進国が「強力な途上国」へと変身するのは、明治維新後の日本も、ここ20年ほどの中国も同じだと思うのです。
そして、どちらも国威の為に「自国自慢」を始める。
現総理に対する政治的な発言は控えます。しかし…「日本会議」やら、妙に祖国を礼賛する流れが生じた事は「ある」と思うのです。
中国も国内むけには「俺の国は凄い!」を吹聴してますね。日本の若者が書いた「中国に日本が敗北した今、20代の私が全てのオッサンに言いたいこと」という紀行文が、人民日報アプリで全中国に翻訳発信された事でも解ります。
私は自国の文化や歴史に誇りを持っ事は良い事だと思いますが、「自分は凄い」と吹聴するのは危険な兆候であると思います。かつて祖国は、それをやって無謀な船倉に突入し、日本人「だけ」で300万人を死なせました。
中国も日本人も本質的な「自信」がなく、「怯え」があるからこそ、そのような「自国礼賛」をするように思えてなりません。それは一時的に国民を高揚させるかも知れませんが、本当の繁栄には繋がりません。
その価値観が他国に理解されない時にヒステリーを起こして道を誤る原因になると思います。
とても今は日中ともに危険な水域に達してると思うのです。私は日本を護る責務についてきました。
互いの国に国益があり、それ故に事件は起きます。
しかし国が主導して、自分の国が一番に偉いとか、優れていると主張するのは危険であると思います。
どうも日本も中国もアメリカも危険水域に来ている気がするのです。私の杞憂でありましょうか?





#10733 
バラージ 2018/05/21 22:38
映像作品における北条義時の奥さん

 今回は映像作品における北条義時の妻妾について。といっても義時の妻妾が出てくるのって『草燃える』しかないんだよな。

 実は『草燃える』で気になったのは松坂慶子さんが二役を演じてるところでして。総集編を観てもその2人の関係性が全然わかんなかったんですよね。お互い知らなかったけど母と娘だったとかなんらかの血縁関係があるんだろうとてっきり思ってたら、なんと全くの他人という設定。松坂さんの評判があまりに良かったんで1人目が退場となった後に別人の役でまた出したのかなあ?
 最初の1人の茜は義時の最初の妻という設定。原作にも登場しないドラマオリジナルの架空人物です。義時の出陣中に頼朝に手篭にされて父親がどちらかわからない子を妊娠して鎌倉を去り、京をさまよううちに平家女房として仕えることになって、平家と運命をともにするというキャラクター。西海逃亡中に子供を義時に託すんですが、これが後の泰時という設定です。史実の泰時の母は阿波局という女性で義時の妾。泰時はもともとは妾腹の庶長子だったらしいんですが、これは僕も不勉強で最近になって知りました。原作者の永井路子は作品に架空人物を出すことを好まないらしいんですが、ドラマは複数の原作の組み合わせのためかはたまた脚本家の趣味嗜好なのか、オリジナルの架空人物が物語でかなり重要なポジションを担っています。その代表が滝田栄が演じる伊東祐之。劇中ではかなり波乱万丈な人生を送っており、そのため総集編では出てくる度にまるで違うキャラクターになっちゃってます(笑)。
 史実における義時の妻は姫の前という女性ですが、『草燃える』では前記の理由で2番目の妻となっており、野萩という名前で演じているのは坂口良子。この姫の前にもいろいろ面白いエピソードがあるんですが、『草燃える』では前妻の設定もあるためか野萩は非常に影が薄いようです。少なくとも総集編にはほとんど出てなかったような。なお姫の前は比企一族の娘で、二代将軍頼家の時代に比企氏が北条氏に滅ぼされると義時は離縁してしまいました。『草燃える』では野萩は比企滅亡後なんとなく登場しなくなった模様。
 義時の継室(後妻)となったのは伊賀氏(または伊賀の方)という女性で、これまたいろいろエピソードがあるんですが、『草燃える』では全く登場しません。なぜかは不明ですが、後述の小夜菊のエピソードのためかなあ?
 松坂さんが演じているもう1人の女性が小夜菊。これまた架空の人物でして、前記の伊東祐之が流浪中に人買いから買った少女で祐之を父と慕い、鎌倉で捕らわれた祐之を救うため執権となった義時に直談判します。茜と瓜二つの少女に驚いた義時ですが、祐之を救う交換条件にベッドイン(笑)。自らの妻にしようとするも、因縁を持つ旧友祐之の目をつぶしたためこれを恨んだ小夜菊は鎌倉を去り、どういう経緯か後鳥羽上皇の寵姫となって倒幕をけしかける……という後半は史実における亀菊の役回りとなります。

 こうしてみると『草燃える』のドラマオリジナル架空人物はほとんどが義時絡みなんだなあ。頼朝は主人公といってもドラマの5分の3あたりで退場しちゃうし、あまり動かない政子だけでは間が持たないと判断したのか、義時が第三の主人公みたくなっちゃうんですよね。松平健もインタビューで、後半の脚本が上がってくる度に自分の役が当初の設定より大きくなっていくのが感じられて嬉しかった、と語ってました。


>武士の日記
 書き忘れてましたが、鎌倉時代の武士の識字率が低かったというのもあるのかもしれません。そのため武将は文書作成を担当する右筆という役職を置いてたようですし。

>観応の擾乱
 なぬ!? 『歴史秘話ヒストリア』は観てないんですが、直冬が悪者ですと!? それは黙っておれませんな。南北朝の人物で1番好きなのに!(笑) しかし直冬に対する尊氏の仕打ちは冷たいよなあ。こういうあたりが尊氏がいまいち人気がない理由の1つなんではなかろうか。この頃にDNA鑑定があったら本当に尊氏の子かどうか一発でわかったのにね。

>南京事件ドキュメンタリー
 録画しておいたものをようやく観ました。内容自体は本などで以前から指摘されていたことで、そういう意味ではそれほど新たな知見はなかったんですが、文章ではなく映像で示されたことに大きな意味があると思います。
 そういえば日本未公開の中国映画『南京!南京!』は、今では日本の複数の動画配信サイトで日本語字幕付きで配信されているようです。

>未見映画
『フューリアス 双剣の戦士』
 モンゴル帝国のロシア侵攻時を舞台とした説話「バトゥのリャザン襲撃の物語」をモチーフとしたロシア映画。「未体験ゾーンの映画たち2018」で上映された後DVD化されたとのこと。

>追悼
 ここんとこ訃報が立て続けにありましたね。歴史とはあまり関係ないんですが、その中で個人的に触れたいものにまとめて触れときたいと思います。
 まず新聞記者の岸井成格さん。最初に見たのは故・筑紫哲也さんのNEWS23に出られてた時かな。佐藤栄作首相の退陣会見で「新聞は出てけ」と言われた時に、「じゃあ出ましょう!」と言ったのが岸井さんだったとのことで、気骨のあるジャーナリストがまた1人いなくなってしまいました。
 次に一般的知名度は低いでしょうが漫画家の黒岩よしひろさん。80年代週刊少年ジャンプで打ち切り漫画家?として有名だった方。僕はわりと好きで、打ち切りになる度に「またダメだったか」とがっかりしてました。とはいえ今となっては『変幻戦忍アスカ』以外は内容をほとんど思い出せないんで、ストーリー云々よりも絵が好きだったのかも。
 そして西城秀樹さん。ものすごくファンだったというわけではないんですが、70〜80年代の歌番組やバラエティーで見ておりました。代表曲はいろいろあるでしょうがやっぱり『YOUNG MAN(Y.M.C.A.)』かなあ。金子修介監督の1993年の映画『卒業旅行 ニホンから来ました』のエンドロールでもこの曲が流れていて、当時久々に聴いた時やっぱりいい曲だったんだなあと再確認しました。この映画、未だDVD化されてないんだけど、面白いからDVD化してくれないかなあ。



#10732 
徹夜城(南北朝ネタがテレビであるとサイトのアクセスが増える管理人) 2018/05/17 13:36
「観応の擾乱」

昨日の歴史秘話ヒストリアの「観応の擾乱」、番組自体の視聴率はともかくネット上の南北朝マニアの間ではなかなかの反響でした。ツイッター上では、というべきですか。

番組はやはり例の本「観応の擾乱」に便乗…というかそれを下敷きにした内容になってました。尊氏・直義・師直の三人が「行き違い」「誤解」から運命に操られるように泥沼の戦いになってゆく…という構成で、番組の冒頭で鎌倉・浄妙寺で少年時代の三人が仲良くしてるシーンまで入りました。
以前は新興武士を背景に革新的な師直と、公家や寺社ともうまくつきあう保守的な直義、という二大派閥の対立、という構図で描かれがちだった観応の擾乱ですが、本の方ではそんな単純なもんじゃない、と異を唱えてるんですよね。昨日の番組だと直冬と南朝が悪いようにも見えましたが。

大河「太平記」では語り草となった尊氏による直義毒殺シーンですが、最近の研究者の本ではいずれも直義毒殺説には否定的で、病死とする見解が多い。昨日の番組でもそうなってて意外に感じた視聴者も多かったかもしれません。他にも師直の尊氏邸包囲も、ドラマが採用した「実は尊氏と師直が直義失脚のために打った芝居」説はとりませんでした。「陰謀の日本中世史」でもこの説はとってませんでしたね。

 「歴史秘話ヒストリア」、時間内に話をまとめなきゃいけませんから、まぁあんなものかなぁと。番組としては「悲劇」「泣かせ」に走ってたかな。この手の番組で南北朝がとりあげられること自体が少ないので貴重な回ではありました。


>南京事件番組
 バラージさんがお書きだった、日曜深夜に放送されたNNNドキュメント「南京事件2」は放送時にリアルタイムで見てました。前作もなかなか堅実な取材姿勢で感心しましたが、今回のそれを推し進めた形。兵士たちの証言からのCG再現のほか、ネット上ではびこる否定論への反論、というよりそうした言説のルーツを発生源までたどって検証というのも目を引きました。あと、ナレーションでは言わないものの画面内でばっちり稲田朋美らを映して「なかった」言説を主張する政治家などへの批判もしっかりやってたのがポイント高し。



#10731 
つね 2018/05/16 21:39
頼朝の妻と武士の日記

>頼朝の妻
「ジパング 深蒼海流」には八重姫に言及があった気がします。少なくとも八重姫の父親として伊東祐親は出ていましたし、幼い長男が滝つぼに投げ込まれて殺される話はありました(直接の描写はありませんでしたが)。北条政子は馬を乗りこなす男勝り(この表現もまずいとなってしまうのかなあ)として描写されていました。後は出てこなかったかな。

>武士の日記
戦国時代だと「家忠日記」の存在は知ってました。家康に仕えた松平家忠の日記で、信康事件の資料として「歴史群像」に載ってました。「信康と○○が喧嘩をして家康が仲裁を試みた」という記述があるらしく、○○の部分は今まで徳姫と思われていたのですが、一門衆といった見方も出ているようです。信康事件も信長が切腹を命じたという通説に疑問が出ていますが、○○の部分は破損しているというのが、何か作為的なものを感じてしまいます。
また島津氏家臣の「上井覚兼日記」も「信長の野望事典」で存在を知っており、本能寺の変直後から数か月間が破損しているということで、何らかの関りを疑う説もあると記載されていたように思います。私も本能寺の変は光秀がストレスと思いがけない好機で目がくらんだと思っていますが。
幕末になると大久保利通や勝海舟、意外なところで中村半次郎(これも「歴史群像」で紹介されてました)の日記があり、必要性というより趣味の領域になったんだなあと思います。



#10730 
バラージ 2018/05/15 23:29
映像作品における源頼朝の奥さんの話

 また久々に源平話。ずっと前に映画やテレビドラマにおける源義経の妻妾の話を書きましたが、今回は同じネタで源頼朝の妻妾について。ただし有名人である北条政子はほとんどの作品に出てくるんで除外して、それ以外のマイナーな妻妾たちについて書きたいと思います。でも政子以外にしちゃうと作品がほとんどないんだよな。義経と違って頼朝が主人公の作品が少ないってこともありますが。

 まずは頼朝が流人時代に娶った最初の妻とされる八重姫。『曽我物語』『源平闘諍録』などの物語類にしか出てこないため実在の人物ではない可能性も高いんですが、お話の題材としては絶好のネタだと思うんですよね。しかし映像作品への登場は2012年の大河ドラマ『平清盛』が今のところ唯一です(演じたのは福田沙紀)。『草燃える』あたりに出てきても良さそうなもんですが、頼朝流人時代から描いてるとはいえどっちかっていうと政子が主人公のドラマなんで、八重姫の話をやってると政子と頼朝がなかなかくっつかなくて展開上困るからかも(父親の伊東佑親は出てきていて、八重姫のエピソードも劇中で語られてはいるようです)。映画にも同様に流人時代の頼朝が主人公の『富士に立つ若武者』があるんですが、やはりヒロインは政子で八重姫は出てこないらしい。それだけに『平清盛』で取り上げられたのはうれしかったですね。
 続いて愛妾の亀の前。政子が頼家を妊娠中に頼朝が寵愛し、それがバレて嫉妬に狂った政子に屋敷をぶっ壊された気の毒な女性です。こちらは時期がちょうどいいのかエピソードが面白いのか登場作品がやや多く、大河『新・平家物語』『草燃える』『義経』に出てくるようです。一番最近の『義経』で演じたのはオセロ松嶋尚美。ちなみにこの事件は1182年の年末に起こってるんですが、『吾妻鏡』は翌1183年が欠巻となっているため、事件の最終的顛末は不明です。
 最後にやはり愛妾の大進局。頼朝の子で僧となった貞暁を1186年に産んだ女性です。やはり政子の嫉妬で鎌倉にいられなくなり、1191年に母子ともども上洛させられました。この人は残念ながら登場した映像作品がありません。厳密に言うと『草燃える』に母子ともにチラッと出てきたようなんですが、誰が演じてたかもわからないレベルらしく、ロングショットか後ろ姿だけかもしれません。噂によると義経の人気が高く出番が増えてしまったためエピソードがカットになってしまったとも……。映像ではありませんが、高橋直樹の短編小説「無明の将軍」(『霊鬼頼朝』所収、文春文庫)が貞暁を主人公とした作品で、なかなか面白かったです。

>『リベレイター』追記
 結局一番印象に残ったのは序盤で死んじゃう奥さん役とその後パリでちょろっとだけ出てくる恋人役の2人の女優の美しいヌードでした(笑)。

>南京事件ドキュメンタリー
 先日、日本テレビのNNNドキュメントで南京事件のドキュメンタリーをやってました。南京事件は過去にも1度やっていてパート2。今回のは録画したまままだ未見ですが前回のは観ておりまして、日テレだからどうなのかな〜と思いつつ観たんですが、なかなかの力作でした。

>武家の日記
 確かに鎌倉時代の武士の日記というのはありませんね。Wikipediaの「日記」によると、「鎌倉時代には武家の日記も出現し、『吾妻鏡』は近年では御家人などの日記を集成して作った記録集であったと考えられている」そうですが、日記自体は現存していないようです。室町時代あたりになると武士の日記も現存しているようで、蜷川親元(『一休さん』の「新右衛門」さんこと蜷川親当の子)の『親元日記』なんてのがあるようです。

>『ブレイブハート』
 そうですか。地元スコットランドでも批判的な意見もあるんですね。スコットランド出身のイギリスのテニス選手アンディ・マレーは一番好きな映画に挙げてたりするんですが。ま、考えてみれば日本人全てが日本史に興味を持っていたりましてやくわしかったりしないように、スコットランド人も全員がスコットランド史にくわしいわけでもないでしょうしね。

>龍馬暗殺
 実は最近、桐野作人『龍馬暗殺』(吉川弘文館 歴史文化ライブラリー)をちょっと読みまして、その中で映像作品における龍馬暗殺薩摩黒幕説についても触れられてたんですよね。フィクション作品なんで必ずしもそこまで厳格に史実に忠実である必要はないんじゃないかとも思いますが、映画やテレビドラマの現代における影響力の大きさを鑑みたようです。それによると最初に薩摩黒幕説を描いた映像作品は1955年の映画『六人の暗殺者』だそうで、その情報は以前別の本でも読んだことがあります。以下、1974年の映画『竜馬暗殺』、大河ドラマ『新選組!』『龍馬伝』などが取り上げられてました。
 その前に磯田道史『龍馬史』(文春文庫)もちょこっと読んだんですが、両書でともに触れられている点として、会津系の一部に薩摩黒幕説を唱える人が多いらしく、その点が批判されてました。幕末最大のヒーロー龍馬を会津系の見廻組が殺したんじゃ都合が悪いのと、会津びいきの一部に「会津=絶対善、薩長=絶対悪」みたいな贔屓の引き倒しがあるのが動機なんだろうなあ。そういや『八重の桜』では龍馬暗殺自体が描かれなかったようですが、それも会津を悪者にするのを回避するためだったじゃないかという気がします。

>史点
 加古里子さんは申し訳ないけど全然知らない人でした。「だるまちゃん」シリーズはもちろん見かけたことはあるんですが、読んだことはなかったんじゃないかなぁ。子供のころに読んだ絵本で面白かったのは『ごろごろにゃーん』。長新太さんが作者だと知ったのは大人になってからずっと後のことでした。
 カールの東日本販売終了は結構ショックだったなぁ。しかしスーパーで東鳩のウラキャラコーンというカールのそっくり商品があるのを見つけまして、そちらをしょっちゅう買っております。



#10729 
徹夜城(最近は史点更新ペースがやや好調の管理人) 2018/05/14 14:02
今週の「歴史秘話」は「観応の擾乱」

 今週、16日水曜日放送の「歴史秘話ヒストリア」はずばり「観応の擾乱」です。先ごろ出た書籍に便乗のような、という取り上げ方ですが、そもそもこういう歴史番組でも南北朝がとりあげられるケースはレアなので、しっかり見ておこうと思います。

>バラージさん
 「ブレイブハート」、アカデミー作品賞までとっちゃってますけど、史実の改変度はかなり高くて、舞台となったスコットランドでは評判が悪い、という話も聞きますね。ま、「グラディエーター」もそうですがアカデミー作品賞とった歴史物って結構史実改変度が高い気がします。
 「ブレイブハート」の脚本家は続いて「仮面の男」の脚本監督やって、「パ^るハーバー」の脚本もやって…と続いたので、史実重視系な方には悪い意味でマークされちゃってます。まぁ東映時代劇みたいなもんだと僕などは受け止めてますが(笑)。

 「龍馬暗殺」がらみ、阿古の大河を全部チェックはしてないですが、確かに「薩摩黒幕」な描き方はよく出てきたような。最近ようやく見た「勝海舟」はモロでしたし、最近の「新選組!」では実行犯こそ見回組・佐々木只三郎にしつつ薩摩や岩倉がそうしむける、という合わせ技になってました。「翔ぶが如く」はもちろん薩摩黒幕説はやりませんでしたが、「西郷どん」も当然そうでしょう。。


>つねさん
「陰謀の日本中世史」、ハイライトはやはり本能寺の変になってたと思うんですよ。あとは陰謀論というより世間一般に広がる「通説」に対して冷静な研究者の立場から異論を並べてる、という印象を受けました。
 南北朝だと「正中の変」は実際には後醍醐の討幕計画ではなかった、というのは一つの考え方として面白いとは思いましたが、やはりちと無理がないかなぁ。「太平記」で出てくる「中宮の安産祈祷にかこつけて討幕呪詛をした」というのはほぼ史実視されていたんですが、本当に安産祈祷だったという見解も「そういう考えもあるか」と。兵藤さんの新著「後醍醐天皇」でもその説を取り上げてました。先日もやった文観のイメージについても見直しが進められてるみたいです。

 言われてみれば「武士の日記」というのは僕も心当たりがないですね。少なくとも中世史の本で史料として提示されてるのを見たことがない。やはり公家さんが書いておくものだったんじゃないでしょうか。公家さんは日記が「家の記録」となって有職故実の根拠として何かと役に立つという事情もあって必要から書くものですし、またそのために子孫が書写して後世に伝わるから史料として残ってる、ということもあるでしょう。
 一方で武士たちは日記書く必要はないけど所領の安堵上とか軍忠状なんかは絶対に大切なので大切に保存します。これが武士側の記録史料ということになるんでしょうね。



#10728 
つね 2018/05/13 01:46
武士の日記

書こうと思って忘れていました。

一級資料として当時の日記がありますが、鎌倉時代は武士の日記というのはないのでしょうか。注意が必要な「吾妻鏡」と貴族の日記しかないのが、当時の鎌倉事件の真相を知るのに支障が出ているようですが。幕府滅亡時に焼失してしまったのか、当時の武士は日記をつける習慣がなかったのか。



#10727 
つね 2018/05/13 01:17
「陰謀の日本中世史」

遅ればせながら読了しました。
本能寺、関ヶ原以外は陰謀論否定というよりは、陰謀説比較のような感じで、要領よくまとめられていたように感じます。いろいろ目から鱗というようなところもありました。
ここでも話題になっていた実朝暗殺については各論列挙という感じで物足りなさを感じました。どこだったか御家人の総論によるものという説も見たことがあるのですが。尊氏は陰謀家ではないにしても場面場面に応じて対応できる人だったんじゃないかと思います。それが正平一統に現れているわけで。そこに「お人よし」の一面が加わるんで複雑なんじゃないかなあ。

本論から外れたところでは、私は元号に親しみを感じるほうですが、初出以外は西暦を外されると読みにくくってしょうがない。当時は和暦で生活していたわけで、例えば高師直が亡くなったのは1351年3月24日で足利直義が亡くなったのは1352年3月17日と言っても意味がなく、かといって1351年2月26日と1352年2月26日というのも誤りですが和暦と西暦併記でほしいところです。
あと観応の擾乱では、直義が桃井直常に引きずられたのが不思議ですね。大河ドラマでは、「今更見捨てられない」みたいなこと言ってましたが、尊氏も直義も直常以外の配下も紛争にうんざり感も見られるところで(実際、直義配下の転向が目立ちます)引きずられなくてもいいのになあと思います。何か弱みでも握られていたのではないかと思うほど。



#10726 
バラージ 2018/05/09 20:54
名画座感想 ヨーロッパ史編A

 名画座感想ヨーロッパ史編の後編です。

『ブレイブハート』
 映画館で観ました。昔の『ベン・ハー』や『スパルタカス』みたいなスペクタクル史劇映画をリアルタイムでも観たいなぁ、また作られないかなぁとずっと思ってたんで、グッドタイミングでしたね。
 いやぁ面白かったです。さすがに『ベン・ハー』『スパルタカス』ほどではないとはいえ、エンターテイメントとして十分に満足の出来でした。メル・ギブソンは初監督の『顔のない天使』もなかなかの佳作だったんで結構期待してたんですよ。ただ主人公のウィリアム・ウォレスをはじめとする登場人物をほとんど知らなかったんで(中世ヨーロッパ史はちょっと苦手)いろいろ調べてみたら、かなり史実から改変してたようですね。当時はインターネットなどまだなく、調べるとしたら本屋や図書館を利用するしかありませんでした。
 なお登場人物の1人のエドワード2世(王太子のほう)を主人公としたデレク・ジャーマン監督の『エドワードU』という映画があるようで、原作はシェークスピア以前に人気劇作家だったクリストファー・マーロウの戯曲だそうです。

『マイケル・コリンズ』
 映画館で観ました。僕は昔からなぜかアイルランドという国にちょっと興味がありまして、そういう意味でも観たいと思った映画です。これも面白い映画でした。独立のためのテロという武力闘争、それが路線対立によって内戦となる中で自らもまたテロに倒れるという、暴力を終わらせる難しさを描いた簡単には答えの出ない問題を投げかける映画でしたね。
 同じ時期に現在(当時)の北アイルランドにおけるテロ問題を描いた『ナッシング・パーソナル』という映画も公開されましたが、こちらもなかなかに重い映画でした。またアイルランド独立戦争と内戦を描いた映画には他に『麦の穂を揺らす風』があり、こちらは末端のメンバー(架空の人物たち)からの視点による映画で、また違った視点から独立戦争と内戦を観ることができます。

『タイタニック』
 映画館で観ました。最初にジェームズ・キャメロンがタイタニック沈没を映画化すると聞いた時は今さらなぜ?と思ったし、ラブストーリーと知ってますます「?」となったけど、実際に観てみたら非常によくできた映画で決して退屈はしませんでしたね。壮大なハーレクイン・ロマンスといった感じ(ハーレクイン・ロマンスを読んだことはないんですがイメージ的に)で個人的には好きなタイプの映画ではないんですが、でもそれが大ヒットした理由なのかな。『ギルバート・グレイプ』『クイック&デッド』『ロミオ+ジュリエット』と話題作に出続けていたレオナルド・ディカプリオはこの映画でスターの座を不動のものにしましたね。

『ニュールンベルグ裁判』
 確かNHK-BSで観ました。これもなかなか面白かったです。戦争裁判の難しさがよく描かれてました。とはいえ実を言うとそれ以上は、あまり言いたいことが出てこないと言いますか……どうもいまいち記憶に残っていません。ニュールンベルグ裁判を描いた他の映像作品には『ニュルンベルク軍事裁判』というテレビドラマがあるとのこと。

『灰とダイヤモンド』
 これも確かNHK-BSで観ました。邦題のかっこよさに惹かれてずっと観たかった映画なんですが、なんとなく長い間観ないできてしまった映画です。歴史映画と考えたことはなかったですね。
 いやぁ、これも面白かった。確かにこの時代のポーランドの状況をよく知らないとわかりにくい部分もあるかもしれませんが、多少わからなくてもたいして問題はないだろうと思います。最初にリアルタイムで観た日本人だってそういうところはよく知らない人も大勢いたでしょうし。そもそもそういうタイプの映画ではないし、だからこそ歴史的名作になったんでしょう。とにかくなんといっても主演のズビグニエフ・チブルスキーが素晴らしい。彼がゴミ捨て場でゴミのように死んでいくラストがものすごく鮮烈です。
 「灰とダイヤモンド」という邦題もすげえかっこいい。原題(というか原作小説の原題)の直訳なんでしょうがとても印象的なタイトルで、それだけに他の作品、特に音楽作品でやたらとこのタイトルが使われてます。

『英国王のスピーチ』……#9039。そこでも書きましたが、映画自体もそれなりに面白かったものの、それよりも俳優の演技のほうに目が行ってしまう映画でしたね。ハリウッドが好むハンディキャップものですし(イギリス映画ですが)。Wikipediaを見ると史実を改変した部分も一部あるようです。主人公の兄エドワード8世夫妻を描いたマドンナ監督の米国映画『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』という映画もあり、そちらでは夫妻をかなり美化してるようですが、夫妻は親ナチス的で人種偏見も強かったようです。


>前回追記
 『ベン・ハー 終わりなき伝説』という映画のDVDも出てますが、これは『ベン・ハー』のその後を勝手に描いた2016年のB級アクション映画のようです。

>最近観た歴史映画
『リベレイター 南米一の英雄 シモン・ボリバル』
 19世紀初期に南米諸国を独立に導いた革命家シモン・ボリバルの伝記映画。ベネズエラとスペインの合作で、日本では2014年の映画祭で『解放者ボリバル』の邦題で上映されましたが劇場公開はされず、今年になってDVDスルーされたようです。ボリバルというと世界史の教科書で習った程度の知識しかなかったんですが、ボリバルの青春時代から死までをたった2時間で描いているため展開がやたらと慌ただしく、3時間以上の映画にするかテレビの連続ドラマにしたほうが良かったかも。また、作風がなんか全体的に一昔前の映画を思わせます。つまらなくはないんですがちょっと演出や脚本がベタなんだよなあ。あと終盤の展開が「あれ?」となったんですが、調べてみたらやはりそこはかなり史実を改変してるようです。

>歴史マンガ
 先日たまたまグランドジャンプをぱらぱら立ち読みしたら、本宮ひろ志の『こううんりゅうすい 徐福』という歴史マンガが連載されてました。以前からたま〜に見かけて読んだりしてたんですが、徐福が不老不死になって世界史を駆け巡るという、同じ本宮の『夢幻の如く』みたいな良く言えば破天荒、悪く言うとハチャメチャなマンガです(笑)。でもまあマンガとしては奇想天外で面白いのも確か。普通ならマンガになりそうもない(日本人にとっては)マイナーな地域&時代史が出てくるのも目を引きます。とはいえ欠かさず読みたいってほどでもないんで、結局時々思い出したように読むだけになっちゃうんですが。

>大河ドラマにおける龍馬暗殺の薩摩黒幕説
 大河ドラマにおける本能寺の変黒幕説の話が出たんで、ついでにそれと並んで語られる坂本龍馬暗殺の薩摩黒幕説と大河ドラマについてもちょっと書いてみたいと思います。
 大河で龍馬が出てくるのは、『三姉妹』『竜馬がゆく』『勝海舟』『花神』『翔ぶが如く』『新選組!』『篤姫』『龍馬伝』『八重の桜』『花燃ゆ』の10作品(今年の『西郷どん』にも出てくる予定で、『花の生涯』『獅子の時代』『徳川慶喜』には出てきません)。このうち徹夜城さんご指摘の『勝海舟』『新選組!』が薩摩黒幕説(実行犯説・関与説ともに黒幕説と見なします)である他に『篤姫』が西郷黒幕説を取っているとのこと。『龍馬伝』では途中までは大久保が龍馬を敵視してるように描きながら、土壇場で見廻組を登場させ黒幕説は取らなかったようです。『八重の桜』『花燃ゆ』では龍馬暗殺そのものが描かれず。『三姉妹』『竜馬がゆく』『花神』『翔ぶが如く』はよくわかりませんが、『翔ぶが如く』は薩摩が主人公ですから黒幕説は多分取ってないでしょう(『西郷どん』も多分取らないでしょう)。
 こうしてみると本能寺の変よりも黒幕説が取られる確率がやや高いですね。そもそも最も有力な実行犯である見廻組の佐々木只三郎が出てくるのが『竜馬がゆく』『新選組!』『龍馬伝』の3作のみで、今井信郎・渡辺篤の2人にいたっては『龍馬伝』にしか出てきません。薩摩黒幕説は史実的にはあり得ないと思うんですけどね。



#10725 
徹夜城(南北朝列伝の作業もチビチビやってる管理人) 2018/05/06 23:40
もんがーん

>やたろうさん
 お久しぶりです。文観の話題に反応、ありがとうございます。しかし中公漫画の「徒然草」にそんなのがあったとは盲点でした。チェックしないと。
 小説でも文観はしばしば登場してまして(といっても南北朝小説自体が少ないけど)、登場する場合はたいてい「真言立川流」との絡みでかなりの怪僧扱いです。また読者の興味をそそりそうなネタではありますしねぇ、エロ系描写に話が流れがちです。
 そんな中で黒須紀一郎さんが書いた長編小説「婆娑羅太平記」は文観が主役という作品で…一回図書館で借りて読んでそれきりなんで詳細は忘れてますけど、あれの文観はそうおどろおどろしたキャラではなかったような。さすがに主役ですからね。

 大河ドラマ「太平記」だと演じたのがあの麿赤児さんなので、登場回数は少ないのにやたら印象に残る。第三回で初登場、その後元弘の変での逮捕の場面があり、あとは建武政権成立で流刑先から帰ってきたパーティーで勾当内侍にセクハラ(笑)。しばらく出てこないでそれっきりかと思ったら観応の擾乱段階の賀名生朝廷に再登場、「亜相どのぉ〜!」と親房を探して怒鳴りまわるという、これまた強烈な場面でした。すっかり南朝首脳陣の一角になってましたね。

 ふと思い出したことですが、再来年の大河「麒麟がくる」は「太平記」と同じ池端俊策さんが脚本を書くんですけど、考えてみると足利尊氏と明智光秀はどちらも「裏切り」をして丹波方向から京都に攻め入っているという共通点があります。



#10724 
やたろう 2018/05/06 12:57
文観について

お久しぶりです。文観の「怪僧」説については似たようなエピソードがある玄ボウや、弓削道鏡との関連性から流布した説じゃないかな…と自分は思います。密教僧でバイタリティは凄い、皇室に取り入る共通点はあるので、ごっちゃにされてもおかしくはないですしね。

石ノ森版はステレオタイプの怪僧、学研の「楠木正成」だと生臭でしたが、優秀で魅力ある文観が出てくる作品と言えば皆無ではなく、中央公論社の「徒然草」で後醍醐天皇や日野資朝よりもハンサムに描かれてましたね。はじめて見た時には、そのイケメンかつ有能な悪役ぶりから「えっ、道鏡?」と間違えてしまいました(笑)。


http://dewa33.blog130.fc2.com/


#10723 
バラージ 2018/05/02 11:25
名画座感想 ヨーロッパ史編@

 またも久々に名画座掲載映画の感想、今回はヨーロッパ史編。

『ベン・ハー』(1959年版)
 大学時代に映画館のリバイバル上映で観ました。同じ企画で『レインマン』や『告発の行方』もリバイバル上映されてましたね。うーん、懐かしい。当時はまだ映画にそんなにくわしくなくてこの映画のことはよく知らず、映画館で予告編を観て面白そうだと思って観に行った映画です。
 いや〜、面白かった。なんと言ってもスペクタクル、特に戦車競走シーンがものすごいんですが、それだけでなく主人公を中心にローマ帝国とイエス・キリストを対置した権力と人間的尊厳というテーマも印象的でした。映画の中盤に数分間のインターミッション(休憩)があったことにもびっくりした記憶があります。
 ウィリアム・ワイラー監督は赤狩りにも反対した硬骨漢で、ハリウッドを追放されていたダルトン・トランボ脚本の『ローマの休日』を監督しており、また第二次大戦終結後には早くも復員兵が直面した困難な問題を描いた『我等の生涯の最良の年』(未見)を監督しています。遺作となった『L・B・ジョーンズの解放』も黒人差別問題を扱った極めて優れた社会派映画でした。
 ちなみに最近レンタル店に新作の『ベン・ハー』が2作並んでたんですが、2010年のイギリス等合作のTVムービーと、2016年の米国映画のようです。

『スパルタカス』
 『ベン・ハー』が面白かったんで似たようなスペクタクル史劇映画が観たくなり、ビデオレンタルで観た映画。ちなみにこちらもインターミッションがあるようですが、ビデオは2巻組なんでそこでカットされてます。ずっと後に出た197分の復元版は未見。
 『ベン・ハー』と比べちゃうとさすがにちょっとだけ落ちるものの、この映画もとても面白かった。最後の合戦シーンがほんとにとんでもない大スペクタクル、そしてスパルタクス敗戦後の終盤の展開が非常に感動的でしたね。あくまで主演と製作総指揮を兼ねたカーク・ダグラスが主導の映画で、キューブリックが雇われ監督なのは間違いないでしょう。そしてこの映画は赤狩りでハリウッドを追放されていた脚本家ダルトン・トランボの実名での復帰作の1つともなりました。その顛末は映画『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』にも描かれています。
 2004年に同じ原作でリメイクされたTVムービーが日本でも2巻組でDVD化されています。一方、同様に日本でもDVD化されている2010年から第3シリーズまで作られた連続テレビドラマ『スパルタカス』は本作とは無関係。

『薔薇の名前』
 大学時代に学内で行われた上映会で観ました。記号論という講義がありまして、その講義を担当してた教授(だったか助教授だったか)が企画した上映会でした。教授陣にも映画好きが結構多く、学内でしょっちゅう映画の上映会が行われてましたね。上記2作とどっちを先に観たかはよく覚えてません。
 これまた面白い中世ミステリー映画でした。教会の権威主義と魔女狩り描写が高ポイント。それまで007のイメージしかなかったショーン・コネリーがハゲてヒゲも生やしてシブくなってるのを見てちょっとびっくりした記憶も。そしてクリスチャン・スレーター演じる若い修道士の初体験の相手となる貧農の女の子がとても印象的で、老境に差し掛かったその修道士の最後のナレーションがすごく良かった。

『ヘンリー五世』(ケネス・ブラナー監督・主演版)
 映画館で観ました。上記3作品との観た順番は今となってはよく覚えていません。
 これはまあまあってところだったかな。ケネス・ブラナーは当時“ローレンス・オリビエの再来”と呼ばれた気鋭の若手演劇人でしたが、映画に舞台的表現を持ち込むのって個人的には違和感を感じることが多く、成功している例をあまり見たことがありません。
 しかしまあ、このころの映画の話になるとどうしても懐かしくなっちゃいますね。あの頃通った映画館も今ではほとんどつぶれてしまいました。

『ブリキの太鼓』
 これはレンタルビデオで観たんだったか、テレビ録画で観たんだったか……。観た時期も上記4本よりは後だと思いますが、いつ頃だったかはっきりしません。ディレクターズカット版は未見。
 この映画はまさに真実はおとぎ話によってのみ語られ得る、という作品ですね。悪魔的というか魔術的世界観の中でナチズムの台頭と支配、そして崩壊までの時代が描かれていくのが素晴らしい。性描写やフリークス描写など、グロテスク趣味が結構強烈なところがあるので万人にはおすすめしづらいんですが、非常に優れた作品であることは間違いありません。フォルカー・シュレンドルフ監督は、60年代後半〜80年代に西ドイツで起こったニュー・ジャーマン・シネマの1人です。


>歴史映画の話
 『マルクス・エンゲルス』なんて映画が公開されてるんですね。しかし僕の地方では『ウィンストン・チャーチル』ともども来ていません。遅れ公開になるのか、そもそも来ないのか。
 それから3月に大阪アジアン映画祭で『朴烈 植民地からのアナキスト』という韓国映画が上映されたそうです。大正時代の無政府主義者・朴烈と金子文子を描いた映画とのことでこれは面白そう。一般公開かせめてDVD化されんかな。

>未見映画
『日本暗殺秘録』……血盟団事件を中心に幕末から昭和のテロ事件を描いた1969年の東映映画。

>大河ドラマにおける本能寺の変
 いろいろ検索してみたら大河ドラマにおける本能寺の変についての芸能コラムがあって、その記事において大河ドラマで本能寺の変が描かれるのは『真田丸』で14回目と書かれてました。その後に『おんな城主直虎』があったんで、今までに15回描かれたことになります。順番に挙げていくと『太閤記』『国盗り物語』『おんな太閤記』『徳川家康』『春日局』『信長』『秀吉』『利家とまつ』『功名が辻』『天地人』『江』『軍師官兵衛』『真田丸』『おんな城主直虎』。黒幕説が少ないと書きましたが野望説もまた少なく、ほとんどが怨恨説か不安説もしくは両説のミックスとなっているようです。多分ドラマ(物語)としてはそれが一番描きやすいんでしょうねえ。
 憲三郎氏の説についてはWikipediaの本能寺の変にも記述されてるようですね。それによると光秀と家康の共謀で秀吉もそれを知っていたという説のようです。それにしても憲三郎氏の本がそんなに売れていたとはびっくり。
 なお光秀の生年は明らかでなく、1516年説・1526年説・1528年説・1540年説があるようです。

>史点
 731部隊と京大の件、自衛官の暴言問題は僕も同じことを感じました。しかしこの2つの事件をつなげると、なんだか時代が一回りしてるようで怖い。



#10722 
徹夜城(GW中もちょっと仕事がある管理人) 2018/04/30 23:48
「平成」終結まであと365日…でいいのかな?

 やっと「史点」も更新っと…
 来年の4月30日に現天皇が退位、翌5月1日に新天皇践祚ということになります。新天皇即位をもって元号を変えるそうなので、「平成」もあと一年というわけ。ある元号が「あと何日」なんて数えられるという事態も異例ですね。新元号の発表は来年二月以降だそうですが、どんな感じで発表するのやら。皇太子ならぬ「皇嗣」を立てることも含めて、あれこれ異例自体が続くことになります。

>後醍醐天皇
 そんな天皇の一人である後醍醐天皇の新たな評伝が岩波新書から出ました。著者はさきごろ岩波文庫から出た「太平記」を校注を担当された兵藤裕己さん。
 まだ途中までしか読んでないのですが、最近の歴史学の研究動向の影響も受けて、かつて網野善彦が強調した「異形の天皇」像への批判的見解が目につきますね。もちろんいろいろと変わった人には違いなかったでしょうが。
 これも他の研究者が指摘してたことですが、後醍醐の腹心であった文観について、「真言立川流」などとからめて「怪僧」とやたらにはやすことについても疑問を投げかけてました。かなり学識ある立派な僧侶だったんじゃないかと。それでいて楠木正成を倒幕に誘い込むなどオルガナイザー的存在だった可能性はこの本でも指摘されてます。

>「ウインストン。チャーチル」
 この映画、見てきました。これも原題は「Darkest Hour」というんですね。伝記映画というわけでもないので、チャーチルのフルネームの題名、しかもそこに「ヒトラーから世界を救った男」なんて長々しいサブタイトルをつけるのはどうなのよ、と。「Iron Lady」という原題の映画に「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」なんて長い邦題をつけたのも連想しちゃいます。なんというか、興行側は客層の知識レベルをすごく低く見てるような気がする。

 それで、映画自体はチャーチルが首相に就任してから、ドイツ軍攻勢の前に一時和平交渉をすべきかと迷い、結局はナチスとの全面対決を決める、というおよそ一か月間の話になってます。ちょうど昨年の「ダンケルク」で全く描かれなかった政府側の動きがこちらで追えるしかけ。そしてこの映画のあとは「空軍大戦略」(バトル・オブ・ブリテン)で見ればいい、ってことになります。

 すでに感想で書かれてますが、この映画、今の僕らはその後の歴史を知ってるし、ナチスの蛮行も良く知ってるから、この映画の中のチャーチルの決断に胸がスッとする…という仕掛けになってる映画なわけですけど、僕は見ていてちと「ひっかかり」を感じちゃったんですよね。
 ややネタバレになりますが、この映画の終盤、迷うチャーチルは国王ジョージ6世のアドバイスでいきなり単身地下鉄に乗り込んで一般市民の声を聴きます。そしてこの市民たちがそろってナチスと断固戦うべしと士気旺盛で、これに力を得てチャーチルは態度を決める、という筋書きになってます。ですが、これ、完全なフィクションなわけですよ。

 歴史映画にフィクションはつきものではありますが、こうも核心部分に「作り話」が入って来ると、やはり違和感を覚えます。チャーチルの悩みや迷い、そして決断の過程を「わかりやすく」描くための方便なんですが、どうも情緒的な展開であるのが気になります。実際にはもっと冷徹な政治外交的判断から結論を出すもんじゃないのかい、と。
 見ていてついつい考えてしまったのが「日本のいちばん長い日」のパロディで…終戦工作に悩む鈴木貫太郎が同じように地下鉄に乗り込んで市民の意見聞いたら、当時の日本じゃみんな情緒的に「本土決戦!一億玉砕!」と言い出して貫太郎首相、翻意しちゃうんじゃなかろうか…などと。
 ここであんまり書くと、栄耀映画日記で書くことなくなっちゃうかな?

 歴史映画の話ですと、岩波ホールでいま「マルクス・エンゲルス」をやってたりしますね。
 



#10721 
ろんた 2018/04/29 17:37
天狗少年の本 SNSで異例増刷

歴史そのものではありませんが、ご近所の民俗学や文化人類学関係の話ということで……。

平田篤胤『仙境異聞・勝五郎再生記聞』(岩波文庫)が増刷を重ねているらしいです。天狗に攫われた少年の話を聞き書きした本。実は本箱に押し込んだままになってたりして(汗)。まあ、現代でも「宇宙人に攫われた」って大真面目に主張する人が後を絶たないわけで(「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」で見た)、それらを先入観で否定するのではなく、とにかく話を聞いてみようというのは学問的態度として感心。平田神道は敵だと思ってますけどね(笑)。

そのうち、引っ張り出して読んでみるかも。でもその前に『太平記』と『ノートルダム・ド・パリ』を片づけなきゃならないのですが。新田義貞と後醍醐がなかなか死なないんだよなぁ。

それにしても、一時、amazonの古書価が三万円だったとか。惜しいコトした。あと、岩波文庫なんで校注だけで現代語訳じゃないのに本当に読んでるんでしょうか。


>明智憲三郎
明智光秀の子孫、と名乗ってるだけで怪しさ爆発で敬遠してたんですが、第一作『本能寺の変 427年目の真実』が40万部売れたそうで、別冊ヤングチャンピオンで漫画化もされています(藤堂裕『信長を殺した男〜本能寺の変 431年目の真実〜』)。第一回しか読んでないんですが、光秀が随分年寄りに設定されているのが不思議でした。秀吉黒幕説かと思ってたけど、違うんですかね。っていうか、光秀が大河ドラマになるって、まさか……(笑)


>本能寺の変関連
大河「国盗り物語」は大野靖子脚本で、原作と同時代の『新史太閤記』『功名が辻』『梟の城』『尻啖え孫市』などを組み込んで膨らませているので、ストーリー上のアレンジはしていないはず。その分、原作だけから脚本を書いてる道三編より信長編の方が長くなってます。

あと小説ですが、山田風太郎『妖説太閤記』(講談社文庫)が、秀吉、竹中半兵衛と黒田官兵衛で光秀を型にはめて本能寺の変を起こさせるという凄まじい話。動機はお市の方。短編ではそのものズバリ、「忍者 明智十兵衛」(講談社文庫『かげろう忍法帖』所収)というのがありまして、明智十兵衛、土岐弥平次、その主筋の娘・沙羅の三角関係が本能寺の変に繋がっていくという話でした。なお、「忍法 死のうは一定」(講談社文庫『忍法関ヶ原』所収)という、果心居士の忍法で信長が本能寺から脱出する話もあります。



#10719 
つね 2018/04/29 01:20
追伸

「英国王のスピーチ」の最後の演説が感動的なのは、やや誤解を産みそうですが「平和への希求が無為に終わってしまった」という部分。政治家として責任があるとは思いますが、「映像の世紀」でチェンバレンがミュンヘン会談の後、「平和を勝ち取った」と誇らしげに演説した後、開戦後に「この結果に終わったのは痛恨の極みです」と至ったのは同情しています。

あとBGMが「チャーチル」や「ハリー・ポッター」(ジョン・ウィリアムズはアメリカ人ですが)、グラナダ版「シャーロック・ホームズ」と同じくどこかイギリス的でした。専門家ではないので「どこが」とは言えないのですが。引用されていたクラシックはモーツァルトやベートーヴェン(最後の交響曲第7番第2楽章は私も好きな場面です)とドイツ音楽ですが。



#10718 
つね 2018/04/28 19:38
「英国王のスピーチ」見ました。

(操作ミスでタイトル途中で書き込んでしまいました)

「チャーチル」繋がりで「英国王のスピーチ」を借りて見ました。前から興味はあったんだけど、きっかけがないとなかなか。
史実を背景にしながら物語的にうまくまとめていたなあという印象。最近、年取ったのか涙もろくなっているので感動はしました。まあ「チャーチル」も秘書の着任時期とか地下鉄シーンとかフィクション織り交ぜていたようですが。
そういえば「チャーチル」でもジョージ6世は時折、口をもごもごさせていたな。コリン・ファースの演技は大河ドラマ「吉宗」の家重を彷彿させました。コリン・ファースはフェルメールの絵画の背景を描いた「真珠の耳飾りの少女」でフェルメール役をしていましたが、優し気な印象はそのまま。今回は癇癪もありましたが。ヘレナ・ボナム・カーターは「フランケンシュタイン」と「アリス・イン・ワンダーランド」で覚えていましたが、どちらも色物的なところがあったのですが、今回は夫を支える賢婦人が印象的でした。
ヒトラーやチャーチル、ギレンのような絶叫調の演説も効果的なのでしょうが(チャーチルは実際の録音ではそうでもない印象ですが)、今回のような朴訥とした語りかける演説も心に残ります。シチュエーションは全く違いますが、昭和天皇の玉音放送も似たようなところを感じます。残念ながら言い回しが難解かつ音声が聞き取りにくく、聴取者には結論はとにかく詳しい内容は伝わらなかったようですが。

ところで気になったのはエドワード8世の退位理由。「離婚歴のある女性との結婚が問題」って、「あの」ヘンリー8世がそんなこと言えたものかいな、と。まあシンプソン夫人は国民からしたら歓迎されない方だったのは確かでしょうけど。
あとこの映画が8年前だったのもちょっとショック。もう少し最近だと思っていたのですが。年取ったなあ(こればっか)。



#10716 
バラージ 2018/04/22 00:56
麒麟がくる……(低い声で)「麒麟です」

 再来年の大河が明智光秀が主人公の『麒麟がくる』ってことですが、まあ予想では以前から石田三成や真田幸村とともに候補に挙がってましたからね。そういう意味じゃ意外性はなく、むしろああやっぱり来ましたかという感じ。そのうち三成もやるでしょうな。
 報道によると、『麒麟がくる』はくわしいことはまだ決まってないけど、光秀の一代記にはならず群像劇的な作品になるとのこと。光秀は1528年生まれ説をとり、光秀が10代半ばの1540年代から始まるそうです。斎藤道三・今川義元・細川藤孝・足利義昭・松永久秀、さらには信長・秀吉・家康などが次々登場し、最終的に本能寺の変まで描くそうですが、光秀の前半生は謎に包まれてるんでそのあたりの光秀個人についてはほぼ創作という感じになるんでしょうね。

>大河ドラマの本能寺の変
 僕もいちいち全部観てるわけではないんでよくはわからないんですが、昔観た『おんな太閤記』『徳川家康』では古典的な怨恨説(+不安説)でした。最近だと『真田丸』がやはり定番の怨恨説。
 『直虎』は前にもちょっと書きましたが、信長が家康を京に呼び寄せたのは家康を殺すためだと光秀が家康に伝え、そこで光秀が冷酷な信長を討つ決意を家康に語るという話でした(ただし光秀の語った話が事実かは明らかにされない)。調べてみたらどうもこの話、例の明智憲三郎氏を元ネタにしたところがあるようで、憲三郎氏こんなところに影響与えてたのか(笑)。だとしたらきちっと批判しておく必要があるのかな。ちなみに光秀は白髪の爺さんで、この辺りも新説を採用してるようですね。
 黒幕説はちょっと調べてみると大河では案外少ないようで、『秀吉』において家康と千利休が光秀に謀反をけしかけてるぐらいみたい。
 大河以外だと、タイムスリップ月9『信長協奏曲(コンチェルト)』が秀吉黒幕説。このドラマの秀吉はなかなかのワルのようです。まあこのドラマはかなり自由奔放な作りではあるようですが、最近の月9では視聴率が良かったのか完結編の劇場版まで作られたヒット作です。



#10715 
黒駒 2018/04/21 12:47
光秀など

私も正直新鮮味は感じませんでした。「また戦国!それもどまんなか!」というのも勿論あるのですが、「吉良側からの忠臣蔵」みたいなもので、明智光秀を主人公に「敗者の視点からの戦国もの」みたいな話はむかーしから聞いていたものです。でもけっきょく、そういうのはやらずにいたわけですよね。なので今更感があります。

私も戦国は正直辟易しているので、近年の戦国ものの光秀とか本能寺の描かれ方がどうだったと思い起こしても、思い当たるものがありません。けっきょく「黒幕説」は大河ドラマでは取り入れられることはなかったのでしょうかね?

「利家とまつ」の信長はまだ悪人ではなかったと思いますが、あの作品で織田家(羽柴含む)の家臣を主人公という流れができて、山内一豊、黒田官兵衛と続きますね。中でも大石静さんの「功名が辻」では山内一豊が戦場へ行くと何故かいつも女子供が歯向かってきて、彼らを斬り苦悩すると、信長の「悪行」を現場で行うという視点の話になっていきました。あのあたりから信長は徐々にダークヒーローになり、明智光秀にもスポットが当たっていくのでしょうかね。

ところで司馬原作の「国盗り物語」はドラマのほうはわかりませんが、原作では光秀は準主役でしたよね。信長と光秀が斎藤道三の後継者のような描かれ方で、最後に本能寺で激突するという筋書きであったと思います。

大河ドラマはあれをやっちゃたもので、信長がきちんと主人公になるのは意外にも90年代まで遅れることになってしまいました。





#10714 
徹夜城(今年は一週間の曜日スケジュールが変化した管理人) 2018/04/19 23:44
再来年大河は「光秀」

 今頃書き込んでは、おそらく皆さんすでにご承知でしょうが、再来年の大河は長谷川博己主演の明智光秀を描く「麒麟がくる」と正式発表されました。光秀は近いうちにありそうな、とは思ってたんですけどね。まー、僕としては戦国というより安土桃山ネタ、とくに信長・秀吉・家康出なきゃダメ路線には新鮮味を覚えません。ピカレスクにやるとも思えないし。
 ただ脚本が、「太平記」の池端俊策さんなんですよね…単発の古代史ドラマとか、人が手をつけないところで活躍されてきた方なので、その点で期待です。

>最近の歴史映画
 「ペンタゴン・ペーパーズ」は先週見てきました。いろいろと思うところありなのですが、そのうち栄耀映画の方で書きます(と書いておけば書くでしょう(笑))。とりあえずラストがそのまま映画「大統領の陰謀」に続くところにニヤリとしました。タイミングよく(?)「大統領の陰謀」は近いうちにNHKのBSシネマで放送されるようです。
 「チャーチル」は近場で時間の合うところがなくって…都内まで出かけないと。

>「西郷どん」と「翔ぶが如く」
 その後も両者の並行視聴を続けてまして、14回になりますと「翔ぶが如く」の方では「桜田門外の変」です。西郷は奄美大島に流されて新たな妻を迎えたりしてるあたり。「西郷どん」ではやっと(?)次回で斉彬死去ということで。

>「まほろば」
 「まほろば」という名前が出てきたフィクション作品としては、松本零士さんの漫画「超時空戦艦まほろば」があります。「やまとはくにのまほろば」ということで、「ヤマト」ともつながりまして、一時書かれていた「999」の第二部漫画でも宇宙戦艦ヤマトと並んで「まほろば」が書かれるカットがあったはず。



#10713 
つね 2018/04/15 17:10
「ウィンストン・チャーチル」見ました。

原題は「DARKEST HOUR」。こちらのほうも捨てがたい。ピンとこないのは確かだろうけど。そういえば「Longest day」は「史上最大の作戦」になってる。「日本の一番長い日」は「日本の」がついているから、「Longest dat」が頭にあったのかなという気もするけど。

1940年5月9日のチャーチル首相就任前日から28日の徹底抗戦演説までを描いた作品。最後の演説は圧巻の一言。考えさせられるのは、「若者の命を犠牲にすることを回避するためにヒトラーとの和平交渉をするべきた」というハリファックスやチェンバレンと「どんなに犠牲を払っても徹底抗戦すべきだ」というチャーチルの争点。理性では和平派が正しいように思えるし、安易なヒロイズムは危険ですが、歴史を見る限りチャーチルに軍配を挙げざるを得ない。いつも通用する正しい方法というのはなく、時代や相手によりけり、かつ結果責任ということがあるんでしょう。あと映画で描かれていたのが、このときの英国民の世論が徹底抗戦だったこと。これを言えば太平洋戦争前夜も日本の世論は徹底抗戦だったのですが。

日本人がアカデミー・メイクアップ賞を受賞したということも話題ですが、ゲイリー・オールドマンは全く当人の面影がありません。「JFK」のオズワルドの印象が強い私は、言われなければ分からないと確信をもって言えます。ですが、演技力は「カメレオン・アクター」そのもの。CG俳優では描写できない苦悩するチャーチルを描いていました。
私は未見ですが「ダンケルク」と同じ時期を描いているので一緒に見ると面白いかも。映像表現ではときおり、個人が頭上を見上げてそのまま上空からの視点に移ることで、個人の無力感を描いているように見えたのが印象的でした。あと英国議会ってこんなに狭いんだとか、国王の影響力の大きさとかも印象的でした。それでいてクスッと笑えるシーンも。最後の演説のシーンは周囲ですすり泣きも聞こえたほど。

私は人それぞれがモットーなので「私は面白かった」程度の感想で済ませることが多いのですが、お薦めの映画です。まあそれでも「人それぞれ」でしょうけど。



#10712 
バラージ 2018/04/12 22:19
『西郷(せご)どん』と『篤姫』

 なんか僕ばっかり連続の書き込みになっちゃってどうもすいません。
 毎年のことながら僕は早くも観たり観なかったりになってた大河ドラマ『西郷(せご)どん』。幕末だからあんまり興味ないなあと思ってたんですが、これが意外と結構面白い。たまたま観た回が女性陣にスポットが当たる回が多く、原作・脚本がともに女性のためかその描写がとてもいいんですよね。西郷への秘めた想いをあきらめ嫁入りしていく岩山糸(黒木華)、西郷の将来を慮り自ら離縁する須賀(橋本愛)、大地震の中で西郷に自分の想いを吐露する篤姫(北川景子)。女優陣の熱演も相まっていずれも素晴らしいシーンに仕上がってました。また急遽の代役となった幾島役の南野陽子も予想以上に良い。幾島というとどうしても『篤姫』の松坂慶子さんのイメージが強いんですが、それとはまた違った幾島像を作り上げてます。ナンノがこんなに演技が上手くなっているとは。見くびっててどうもすいません(笑)。
 それ以外の出演者だと、『篤姫』では徳川家茂役だった松田翔太が徳川慶喜役に。僕は彼の出演回をちょうど観てなかったんで公式サイトの5分ダイジェストで観たんですが、なかなかの好演ですね。兄貴の龍平ともども親父とはまたちょっと雰囲気の違う良い役者になってきました。しかしあの慶喜、ほとんど遊び人の金さんだよなぁ(笑)。そういや松田翔太は『平清盛』でも身分を隠して街中で遊ぶ偉い人を演じてたっけ。『篤姫』つながりで言うと瑛太の師匠が沢村一樹ってのもいっしょ。こっちはすっかり忘れてて、調べて思い出しました。徳川家定役の又吉直樹や、本寿院役の泉ピン子もなかなかのハマり役。
 というわけでこれからは毎週観ちゃおうかなあ、などと考えている今日この頃。これは『平清盛』以来だな。そういえば『篤姫』も幕末だから最初はあまり観る気がなかったんだけど、家族が観てたんでなんとなくいっしょに観てたらなかなか面白くてついつい結構観ちゃいました。やっぱり創作作品は題材や舞台やテーマよりも、まず作品自体の面白さだよなあ。
 徹夜城さんが『翔ぶが如く』とのペース比較をされてましたが、『篤姫』と比較してみるとそちらでは調所切腹が第2話、お由羅騒動&斉彬藩主が第3話、斉彬の死が第28話というペースのようです(観返してないんではっきりとはわかりませんが)。『篤姫』は明治維新でほぼ話が終わるためそれよりは早いペースで進むんでしょうが、どうも今のところはそれほど差が開いてないような。



#10711 
バラージ 2018/04/09 22:50
タイムリーな社会派映画

 スティーブン・スピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』を観ました。原題は『The Post』(=ワシントン・ポスト)。
 米国国防総省のベトナム戦争についての最高機密文書、通称「ペンタゴン・ペーパーズ」を1971年にニューヨーク・タイムズがすっぱ抜き、ワシントン・ポストも負けじと全文書を入手して抜き返そうとする。しかしニクソン政権は、過去の歴代政権(トルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン)が戦争についての悲観的見通しを国民に秘匿して楽観的見通しを語る嘘をついてきたことを隠すため、タイムズに圧力をかけて報道を阻止しようと画策。ポストでは報道の自由を通そうとする編集局と、権力の圧力による経営危機を危ぶむ経営陣が対立する。果たして報道と権力の攻防の行方は?……という社会派映画です。
 いやぁ、面白かった。邦画が洋画を凌駕するというかつてでは考えられない時代となりましたが、こういう社会派映画では今もやはり米国映画のほうが圧倒的に上ですね。そもそも日本ではこの手の社会派映画がほとんど作られない。まぁそういう映画を支持する観客が少ないからなんでしょうけど。この映画はおそらく今のトランプ政権に対するスピルバーグらの危機感が製作の動機の1つになってるんでしょうが、今の日本にとってもなんとも見事にタイムリーな映画になってしまいました。
 映画はメリル・ストリープ演じるワシントン・ポストの社主とトム・ハンクス演じる編集局長を中心に展開していきますが、2人ともさすがの名優ぶり。ウォーターゲート事件で提出された実際のニクソンの電話の録音テープも劇中で使われており、リアリティーを高めています。全国紙のニューヨーク・タイムズに対して、ワシントン・ポストはまだその頃はワシントンDCだけの地方紙だったことも初めて知りました。
 しかしまあ80年代には娯楽映画の王様だったスピルバーグがこういう映画を作るようになるとはねえ。そして娯楽の王様スピルバーグが作ったからこそ、娯楽性に欠ける映画になることもままある社会派映画でこれだけ娯楽性も優れた映画になったんでしょう。
 そういや映画にはマクナマラ国防長官も出てくるんですが、実際のマクナマラに密着したドキュメンタリー映画『フォッグ・オブ・ウォー』も昔観ていて、なかなか面白い映画でした。

>録画で観た映画
『アラビアの女王 愛と宿命の日々』
 20世紀初期のイラク王国建国に重要な役割を果たしたイギリスの女性考古学者・紀行家・諜報員のガートルード・ベルの伝記映画。60年代後半〜80年代に西ドイツで起こったニュー・ジャーマン・シネマの1人だったヴェルナー・ヘルツォーク(監督作に『アギーレ 神の怒り』『カスパー・ハウザーの謎』など)が監督した米国映画です。
 ベルの名前はなんとなく聞いたことがあったんですがどういう人かは漠然としか知らなかったし、ヘルツォークも名前は知ってましたが監督作を観るのは初めてでした。映画は悲劇に終わったベルの2度の恋愛や悠久の砂漠での異文化との出会いと交流など、どちらかというとベルの人生の個人的な側面を描いていて、歴史上の人物もアラビアのロレンスやチャーチル、サイクス(サイクス=ピコ協定の人)、ファイサル王子(後の初代イラク国王)、アブドッラー(後の初代ヨルダン国王)などちょこちょこ出てはくるんですがそちらのほうはわりとあっさりとした描写で終わっているため、その辺が好き嫌いが分かれるところかも。僕はわりと面白く観ましたが、終盤が大した盛り上がりもないままえらく唐突に終わってしまうのと、主演のニコール・キッドマンがどこまで行ってもキッドマンにしか見えないのが難点でしょうか。

>明智憲三郎氏の著作
 僕は本屋で見かけたことがあるだけですが、そんなに売れてるというか世間で評判になってるんですかね? あんまりそういう話は聞かないんですが……。昭和初期の小谷部全一郎の義経=ジンギスカン説みたいに大きな社会的影響力を持ってしまったならアカデミズムがきちんと批判する必要がありますが、そうじゃなければわざわざ相手にせんでも……という気もするんですよね。かえって相手の知名度を上げることに力を貸してしまうことにもなりかねないですし。

>永井豪『前田利家』
 ちょっと前にコンビニで永井豪の戦国武将ものの廉価版コミックが置いてあるのを見かけ、その中の『前田利家』を立ち読みしてみたらこれが思いの外面白かったです。いかにも永井豪らしい作風なんですが、荒唐無稽になりすぎない比較的正統派の娯楽漫画でした。信長の出番が案外少なくさほど天才的にも革新的にも描かれていないところや、今川義元が有能な猛将として描かれ外見も公家風ではなくごつい大男(というかほとんど化け物・笑)なところは、一般的なイメージからあえて外している感じ。特に浅井長政は爬虫類系の極悪冷酷で好色な卑劣漢に描かれていて、こういうキャラ設定は非常に珍しい(むしろ死ぬ場面でだけ出てくる親父の久政のほうが妙にかっこいい)。そういう描き方がとても新鮮だったんですが、でも長政ファンは読んだら激怒だろうなあ(笑)。



#10710 
バラージ 2018/04/05 00:31
スマホ

 僕もアンドロイドなんですが、「内容」欄に文字を打つと「内容」欄自体が上下左右に広がって(全体的に大きくなって)、すぐ下にあった「書込」アイコンを隠しちゃうんですよね。まあPCから書き込めりゃ別にいいんですが。

>史点・龍馬
 肝心の最後の一文に脱字が……。

>史点・正恩&トランプ
 世代的には入れ替わり映画というと『君の名は。』よりも大林宣彦監督の『転校生』。おデブなおっさん2人が抱き合ったままゴロゴロ階段を転げ落ちる姿が目に浮かびます。元に戻った後は、飛行機で飛び立とうとするトランプと、飛行機を追っかけて走る正恩に、「さよなら俺!」「さよなら俺!」とやっていただきたいところ。

>史点・元号
「まほろば天皇」……「まほろば」というと村上春樹の『1Q84』に出てきた新興宗教教団の名前が連想されます……って改めて確認してみたら、『1Q84』に出てきた教団は「さきがけ」と「あけぼの」という名前でした。完全に僕の勘違い。「まほろば」って名前をなんかのフィクション作品で見たような気もするんですが、何だったか全く思い出せません。
「あけぼの天皇」……大相撲で横綱までなった後、総合格闘家、さらにはプロレスラーへと転身するんでしょうか。
「ひかる天皇」……女子から「きゃー、ひかるさまー!」と黄色い声援を浴びることでしょう。ひかる一平みたいに(古っ!)。女帝だったら野郎からの「ひかるちゃーん!」という野太い声援が送られることになるんでしょうな。西田ひかるみたいに(これも古い)。
「ときめき天皇」……「ときめき」という言葉で個人的に真っ先に連想するのが森田芳光監督の映画『ときめきに死す』(原作は丸山健二の小説とのこと)だったりするんで、なんかかっこいいイメージがあるんだよな。そういや『ときめきトゥナイト』っていう少女漫画も昔ありました。



#10709 
つね 2018/04/02 00:00
元号

恒例行事お疲れ様です。

いくつか感想を。

>龍馬の伏字
○○○は「大樹公」という説を見たことがあります。まあ結局は「慶喜公」と同じわけですが、当時はまだ「忌み名」の習慣残ってたんでしたっけ? 目上の人は官位で呼びそうな感じはします。

>元号
とりあえず「まほろば」(=M=明治)、「ひかる」(=H=平成)、「ときめき」(=T=大正)はないでしょうね。ということは「あけぼの」か(笑)。「あけぼの五年」「あけぼの六年」もいい感じです。今年の1月にネットニュースで「安倍首相、新元号『生活に根ざすものに』 今年中に発表」というのがあって、ネット上では「今度の元号は長いな」「生活に根ざすものに元年とか生活に根ざすものに二年とか言うのか」と冗談がありました。ところで皇太子は水運史という印象はあったのですが、日本中世史という印象はなく、「これも嘘企画?」と一瞬思いました。Wikiで見ると「中世の交通史・流通史」なんですね。素人的にはマイナーな感じもしますが、昭和天皇や今上天皇もヒドラとかハゼの研究なんで、メジャーどころだと迷惑をかけるという気遣い(忖度とは言えない)なんでしょうか。





#10708 
徹夜城(何とか今年も恒例行事を終えた管理人) 2018/04/01 22:40
新年度ですねぇ。

 今日をもって「東京消滅!」と言ってもエイプリルフールではありません。「三菱東京UFJ銀行」から「東京」が消えましたからね(笑)。
ってなわけで、今年もどうにか四月バカ史点アップしました。あと今日が2時間を切ったという時間でのアップ。前回「史点」が30日だったということで、我ながら追いつめられるとなんとかするなぁ、と(笑)。

>陰謀の日本中世史
 いま、合間合間に読んでまして、南北朝のところをちょうど読み込んでるところ。「足利尊氏は陰謀家か」というタイトルですが、話はいろいろ多岐にわたってます。
 目を引いたのが、後醍醐天皇の最初の倒幕計画失敗とされる「正中の変」について、「実際には後醍醐は倒幕を計画してなかったのでは」との見解が示されてます。最近の研究者の方たちが提示してる説のようで、面白くは呼んだんですが、僕もこれまでの先行研究の先入観があるからなぁ、こちらのほうが「陰謀説」に見えてしまいましたが…つまり持明院統側が後醍醐をおとしいれるために策謀した、という筋書きなんですね。
 元弘の変のときにも後醍醐の計画の杜撰さが目立つのは確かなんですが、それ以前には計画すらなかったとまで言っちゃうのはどうなんだろ、と。後醍醐の陰謀を否定して別の陰謀論が持ち出されてるような…

 そのあとの護良親王失脚のてんまつが尊氏の陰謀ではなく後醍醐の判断、というのはすでに言われてたことだと思います。また尊氏がなぜ鎌倉幕府に背いたのか、という背景についても「祖父の置文」の一件を否定的に見るのはまぁ当然ではありましょう。尊氏自身実行直前まで倒幕までは考えてなかったのでは、という考え方はあるかと思います。母方の上杉氏サイドの影響、というのも初耳ではありません。とりあえずそこら辺まで読んだところ。

 ちょっと飛ばして本書の本命といえる「本能寺の変」のくだりに目を通しました。まぁ僕も事件の前後状況からみて光秀が急に思い立って実行したもので、だから成功もしたしその後すぐに破滅するはめになった、黒幕だの背後の陰謀だのは考えにくい、という立場をとってます。僕は呼んでないですが最近出版された明智憲三郎氏の著作(家康黒幕説)がかなり盛大に批判されてますね。ネット上で知ったところでは明智氏もブログで反撃、新たな書籍も出すようで。どうもブログでは呉座さんを「専門外が口を出して」と文句いってるそうですが…
 こうした非アカデミズムのトンデモ説にアカデミズム本職の人が口を出すのは…という意見もあるでしょうし、呉座さんも本書の中でそうした意見に一定の同意をしつつ、やはりアカデミズムがちゃんと否定する也相手をすることの必要性を、ニセ医療や疑似科学問題を引き合いにして説いてますね。僕も「ヘンテコ歴史本」コーナーやってて覚えがあるところで。笑って済ませられない、シャレにならんトンデモ歴史説ってのは実際にありますからね。


>iPhoneだと…
 僕はスマホはアンドロイドでして、IPhoneでこのサイトを見るとどうなるのか知らないんです。以前は全然読めなかったが、最近読めるようになった、ってな話をネット上で目にしましたが、やはり古いものをそのままにしてるので一部表示がおかしいのかな?
 正直なところスマホで見るにはきついサイトだと思いますけど…パッドで見る人もそこそこいるのでしょうか。



#10707 
バラージ 2018/03/27 16:39
名画座感想 アジア・アフリカ史編

 また久々に名画座掲載映画の感想、今回は東アジアを除くアジア史とアフリカ史編です。

『アラビアのロレンス』
 かなり昔に地上波テレビの深夜放送(吹替)で観ました。当時僕の地元には民放が2局しかなく、多分他の系列局で放送したものを深夜に放送してたんだと思います。それ以来観てないんで、ノーカットの字幕版は実は未見でして、後に出た227分の完全版も未見。ピーター・オトゥール、オマー・シャリフ、アレック・ギネスがハマり役でしたが、なんといってもこの映画は有名な音楽と美しい砂漠の映像。欧米人にとって中近東の砂漠地帯というのは強いエキゾチシズムを感じさせるものだと聞いたことがありますが、そのあたりは日本人も同じなのかも。映画としては面白かったですね。『アラブが見たアラビアのロレンス』は何しろ分厚いんで読んでないんですが、訳者の牟田口義郎氏が書いた『アラビアのロレンスを求めて』や、『100問100答世界の歴史』の一節は読んでまして、それでこの映画とは違うアラブ側から見たロレンスの実像を知りました。

『砂漠のライオン』
 これも地上波の深夜放送(吹替)で観て、それ以来観てないんでノーカットの字幕版は未見。『アラビアのロレンス』と観たのがどっちが先だったかもよく覚えてません。多分タイトルがかっこ良かったんでなんとなく観たんだと思います。リビアが舞台でリビア人が主人公というのがとても珍しかったし、敵役がファシスト・イタリアというのも珍しい(ナチス・ドイツが敵役の映画ならたくさんあるんですが)。これも面白かったです。ラストシーンがとても印象的でした。主人公のオマー・ムクターが全然知らない人で史実もほぼ知識がなかったんで、先がどうなるかわからない状態で観ることができたのが良かったのかも。歴史映画や伝記映画って下手すると物語展開をある程度わかった上で観ることになっちゃうんで(ま、このあたり原作付きの映画でもいっしょですが)、「この先どうなるんだろう?」というワクワク感には欠けることも多いんですよね。まあ仕方ないんだけど。

『遠い夜明け』
 ビデオで観ました。エンドロールに当時南アで獄中にいた人権活動家の名前が大量に流れるんですが、その中にネルソン・マンデラの名前を見つけて「おぉ」と思った記憶があるんで、多分マンデラが釈放された1990年よりちょっと後に観たんじゃないかと思います。これも面白かったなあ。今回改めて確認して驚いたんですが、158分もあったんですね。てっきり2時間くらいだと思い込んでましたが、それだけ観てて長さを感じなかったんでしょう。デンゼル・ワシントン演じる黒人活動家スティーブ・ビコではなく、ケビン・クライン演じる白人ジャーナリストのドナルド・ウッズ(原作者でもある)を主人公にしたことに批判もあったようですが、むしろそうすることによって人種を超えた2人の友情が胸を打つわけで、映画としてはこれで良かったんじゃないかと思います。ワシントンの最初の出世作で、彼はこの後『グローリー』(僕はこっちを先に観た)『モ’・ベター・ブルース』『マルコムX』とトップ俳優へと駆け上がっていきました。またリチャード・アッテンボロー監督はこの映画の公開後、南アを訪れた際にトイレで男に服の襟首をドアの荷物掛けに引っ掛けてぶら下げられ恫喝される体験をしたと映画誌の記事で読んだ記憶があります。

『ガンジー』
 ビデオで観ました。同じリチャード・アッテンボロー監督作でも後に作られた『遠い夜明け』を先に観たのは、こっちの3時間以上という長さにちょっと二の足を踏んだため。しかしそんな心配は無用でした。面白くて長さはほとんど気になりませんでしたね。ガンジーの暗殺から始まり、さかのぼって彼の生涯を描いていく構成が上手い。ガンジーの非暴力主義というものが、実は強固な意志に基づいた苛烈な闘争なのだということがよくわかりました。主演のベン・キングスレーはガンジー本人かと思うほどにそっくりで、以後はマイヤー・ランスキー(『バグジー』)やイブン・シーナー(『千年医師物語』)など様々な人種を演じる無国籍俳優みたいになっちゃいます。アッテンボロー監督は大英帝国の苛酷な植民地政策を容赦なく描いたため、この映画の後に地元イギリスの歴史ある名誉クラブから除名されてしまったんだとか。

『ルムンバの叫び』
 DVDで観ました。興味はあったんですが地元では公開されず、ビデオも吹替のみだったんで(なんでなんだろ?)気が進まなくて、なんとなく観そびれてました。面白かったです。監督がハイチ人のためか作風がハリウッド的じゃなく、どちらかというとヨーロッパ映画に近い作風。その抑えた作風が良かった。この映画で描かれたルムンバという人物と彼の置かれた状況やたどった軌跡は、上記の『ガンジー』で描かれたガンジーと非常によく似てると感じました。

『インビクタス 負けざる者たち』
 映画館で観ました。これもなかなか面白い映画だったんですが、時代が今(この映画を観た時点での)に近すぎたこともあって歴史映画というより実話映画という認識で観ましたね。ちなみにwikipediaによると実際には南アは一時期の低迷からは当時すでに脱しており、優勝候補の一角にすら挙げられてたんだとか。モーガン・フリーマンはマンデラにはあまり似てませんが、大統領役といえば過去に隕石パニック映画『ディープ・インパクト』(未見)で米国大統領役を演じていて、その時に「士官学校で同期だったパウエル国務長官(当時)より先に米国初の黒人大統領になった」などと言われてました。マンデラの映画といえば彼の自伝を映画化した『マンデラ 自由への長い道』も公開されましたが、僕は未見です。

『秘剣ウルミ バスコ・ダ・ガマに挑んだ男』……#9648。そこでも書きましたがオリジナルは160分ぐらいで、日本公開版は40分以上カットされてるとのこと。少年期に故郷を逃れてから青年期に故郷に戻ってくるまでのつながりがちょっと不自然だったんで、多分そこがカットされたんじゃないかなぁ。師匠のもとで修行してたとか言ってたし。


>未見映画
『ノン、あるいは支配の空しい栄光』
 紀元前2世紀のローマ軍の侵攻から1974年のアフリカにおける植民地戦争まで、各時代のポルトガルの戦争と敗北の歴史をオムニバス的に描いたポルトガル映画。

>『陰謀の日本中世史』
 僕は本屋でたまたま新刊コーナーで見つけて、個人的に興味のある源平〜鎌倉初期のあたりを読んでみましたが、そのあたりは呉座さんは専門外のためか先行研究の総まとめといった感じで、あまり新しい知見はありませんでしたね。ただ読みやすい文章で要領よくまとめられているので、その時代にくわしくない人の入門書としてはいいかもしれません。平治の乱については呉座さんは元木泰雄さんの説に否定的ですが、僕は元木さんの論のほうに説得力を感じます。

>「書込」アイコンが「内容」欄で隠れる
 僕もスマホに買い換えたんで、スマホから書き込みできるかな?と思って、やってみたら同様の現象が起こり書き込みできませんでした。ま、いいか、とあっさりあきらめパソコンから書き込みしてますが。



#10706 
質問者 2018/03/17 00:42
管理人様ありがとうございました

実は古事記や日本書記しかないとは知りませんでしたので。いや正史でなく、へい史というのですか、そういう
ものならあると思っました。無いのか…。
これはご指摘の通りに通史という奴から攻めてみます。
過日に多胡碑というのを見まして、胡? 羊太夫て何人だったんだろう? 日本は単一民族とか違うのでは?
そう思ったのが古代史に興味を持った由来なのです。
拝見しました時に甲子夜話という本に羊太夫がキリスト教(景教)だったという噂があると他の見学の方に教えられて不思議に思ったのです。自分なりに勉強してみて、
郷土史に強い方に聞いてみて、たぶん出てきた十字街とかはキリシタンの人が後に隠したものと思ってます。
ただ歴史って興味を無かったですが、推理小説のような楽しさがありますね。今回は有り難うございました。
「書込」アイコンが「内容」欄に入るトラブルがあり、
挨拶もせずに不躾な質問文になった事をお詫びいたします。



#10705 
徹夜城(日本中世史本を二冊買って読んでる管理人) 2018/03/16 22:17
先週くらいから書籍の出費多し

 最近は、近くに書店がない、ちょっと遠出して大型店に行っても目指す本がない、といったパターンがあって、「結局アマゾンで頼む」になってしまってます。そんななか、久々に書店で日本中世史本を二冊買いました。
 一つは先日こちらでタイトルが出た小川剛生著「兼好法師」(中公新書)。もう一つは、先ごろ「応仁の乱」の謎のヒットが今も尾を引く呉座勇一著「陰謀の日本中世史」(角川新書)です。後者はすでに話題になって売り上げもいいようですね。

「陰謀の日本中世史」というタイトルですが、趣旨は「陰謀なんかねぇ!」です(笑)。保元の乱から本能寺の変まで、「裏に陰謀があった」系俗説があれこれ出てくるのを次々とぶっ叩いていく、という内容です。
 まだほんの一部しか読んでないんですが、南北朝時代では足利尊氏が取り上げられてます。尊氏が本当に後醍醐から「寝返った」のか、とか、観応の擾乱における「実は尊氏の謀略」説(これは別に俗説ではなく専門研究者が言ったことで大河でも再現されましたが)を次々否定しています。詳細はこれから読むところですが、これはこれでいろいろ話題は呼びそうですね。


>質問者さん
 はじめまして。ご質問は「日本の成り立ちについて俯瞰できるいい本はないか」ということですね。それ自体は簡単な質問ですが、回答がなかなか難しいなぁ…と拝読して考えてしまいました。
 そもども「日本の成り立ち」と言いましても、はっきり言って謎だらけ。推測はあれこれありますが文字資料の乏しい時代ですから結局推理どまりになってしまいます。文献資料は奈良時代以降に編纂した「日本書紀」「古事記」しかありませんし、これらは前半は神話であり、その建国ばなしをそのまんま信じるわけにはいきません。何らかの史実を背景にした伝説、と扱うしかありません。あとは同時期の記録に近い中国の正史史料がありますが、これもさすがに断片的です。
 それらを補うのが考古学・民俗学なので、それを避けて通るわけにもいかないと思いますよ。古墳の形式、年代をさぐることで大和政権の成り立ちや拡大が推測できるわけですし。結局それらもろもろを総合して日本の成り立ちを推理するしかない、ということになりましょう。

 書籍については具体的に挙げるのは難しいんですが、俯瞰的、かつ一般的に読めるものとしては中公文庫の「日本の歴史」とか講談社学術文庫の「日本の歴史」とか、一般向け通史シリーズの1巻から2巻あたりを読んでみるのが一番いいんじゃないでしょうか。その上でさらに諸説に触れたくなったらそれぞれの専門書に手を出してみるということで。



#10704 
2018/03/16 01:59


日本史が編纂されてから何百年もあるでしょうから、 とりあえず定説はありますよね?
そういうの俯瞰できるのお願いいたします。



#10703 
質問者 2018/03/16 01:44
連続投稿すみません

スマホの調子が悪くて……。
私は日本の成り立ちが知りたいのですが、流れというのか大雑把な。古墳の構造がどうとかでなく。
何か良い本ありませんか?



#10702 
質問者 2018/03/16 01:41


日本史に興味を持った者ですが、古代史本を探すと考古学や民俗学の本ばかり。別に朝廷の正史でなくても文献はあると思うのですが。それじゃダメなんですか?



#10701 
バラージ 2018/03/11 22:11
時が経っても

歴史にはなっていかないものもあります。



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