「ユダヤ人」というキーワードはしばしばトンデモさんを魅了するらしい。世にあふれる陰謀論の多くに「ユダヤ」ネタが含まれるし、「知られざる歴史」を唱えるトンデモ歴史本にも「ユダヤ」はしばしば顔を出す。それも欧米や中東の話ではなく、本来ユダヤ人とほとんど縁のないはずの日本において、日本人とユダヤ人を結びつける言説は繰り返し繰り返し浮上してくる「人気ジャンル」である。この本はそうした流れの最新版の一つで、伝統的な日ユ同祖論やユダヤ陰謀本の流れを汲みつつ、バリバリの保守論客による日本万歳史観と結びついたところに特徴がある。 |
◆「歴史教科書」運動に深くかかわる保守論客が
著者の田中英道氏は1942年生まれ、主にルネサンス期を中心とした西洋美術史の研究者として内外で活躍してきたキャリアをもつ。その一方で日本の保守言論人の一人としても活動を続けており、あの「あたらしい歴史教科書をつくる会」にも参加、「国民の芸術」という本を出したほか、一時「つくる会」の会長をつとめたこともある。「つくる会」が激しい内ゲバの末に分裂すると、分離した「日本教育機構」の方に顧問として参加している。「機構」は産経新聞系の育鵬社という出版社から歴史教科書を出しているが、今回ここでとりあげた田中氏の著作も同じ育鵬社から刊行されたものだ。◆「ユダヤ人埴輪」そして「秦氏」
本書は通史なので、内容は縄文時代論から始まっているのだが、田中氏がわざわざタイトルにして表紙にもその写真をドカンと載せてアピールしている、「ユダヤ人埴輪」の話から論じてみよう。田中氏が重視する千葉県出土の「ユダヤ人埴輪」。(同署より) | 現代イスラエルに住む「ユダヤ教超正統派」の男性のスタイル。(Wikipediaより) |