ニュースな
2000年2月13日

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 ◆今週の記事

◆フィンランドに女性大統領

 日本でも初の女性知事ってのが誕生しましたが(さて、「土俵」にあがれますかどうか、当コーナーのネタとして注目してます)、日本からはるかかなたの北欧の国フィンランドでも初めての女性大統領が誕生していた。大統領に当選したのは社会民主党のタルヤ・ハロネン外相(56)。得票率は接戦の51.6%だった。この国では前回の大統領選でも男性候補対女性候補の戦いが行われていて、やはり接戦となっており、今回の結果はその流れの延長上にあったと言えそうだ。もともと全国会議員の三分の一が女性というお国柄なんだそうであるが(そういえば、先日フランスで選挙候補者の半数を女性にするとかいう法案が出ていたような。以上余談)

 マスコミに出ていたプロフィールによると、この新大統領、21歳のお嬢さんもいるのだが、現在独身である。事実上の夫と言ってもいい「恋人」がいるのだが、入籍はしておらず同じマンションに隣どうしで住んでいるのだそうだ。労働組合の弁護士をつとめて「赤毛の闘士」と呼ばれた過去を持ち、政治家になってからは教会の批判や同性愛者の擁護など、左派的な言動で知られていたという。外相となってからは、おりしもEU(ヨーロッパ連合)にフィンランドが加盟、会議の議長国もつとめたこともあり、その政治的外交的手腕を発揮していた。こう書けば、かなりの実力ある政治家と見ることが出来そうだ。

 しかし聞くところでは、今度の大統領選の争点はもっぱら性別問題に集中しているところがあったという。前回の時はEU加盟をするかどうかという大問題もあったのだが、現実にEUに加盟しちゃった今はこれも大きな争点とはならなかったそうで。保守系の対立候補はオーストリアに極右参加政権ができた事に対するEU各国の厳しい反応を批判し、フィンランドの問題に絡めて保守層に支持を求めたが、一歩及ばなかった形だ。
 フィンランドって国はロシア帝国領内だった時代もあるし、独立後もソ連に侵入されたり、内政に深く関与されたりと、とにかくお隣の大国ロシアとの関係で悩まされ続けた歴史を持つ。いまだにフラフラと腰の定まらないロシアには不安を感じているところだろう。だからEUにも加盟するし、どうやらNATO加盟も健闘している様子だ(東欧諸国はどこもそうらしいけど)。外相出身のハロネン新大統領、やはり外交面での成果を期待されていることだろう。ちなみに大統領の任期は6年だそうだ。

 ところで。
 「ハロネン」という名前を聞いたとき、僕は「そういや、冬季オリンピックの選手で「アホネン」って関西弁みたいな名前のがいたっけなぁ」などと即座に連想していた。するとなんと!ハロネン女史と大統領の椅子を争った対立候補の名は「エスコ・アホ」といったのだ!いやー、はるかかなたの国で多くの人に爆笑されてるとは、この大統領候補は想像もしないことでありましょうね。
   



◆ユーゴに暗殺テロの嵐が?

 なにやら映画「JFK」とか「Z」(知ってる方いるかなぁ…イブ=モンタン主演でギリシャの政治的暗殺事件を描いた映画です)はたまたただ今公開中の韓国映画「シュリ」なんかを連想させる事件がユーゴスラビア、というよりもセルビアで発生している。政治関係の要人が相次いで暗殺されるという不気味な現象が起きているのだ。

 2月7日午後7時ごろ、首都ベオグラード市内のレストランでパブレ・ブラトビッチ連邦国防相(51)が知人の銀行頭取らと一緒に食事をとっていた。そのレストランの外から、暗殺犯は自動小銃で窓越しにブラドビッチ国防相を狙撃、そのまま逃走した。国防相はまもなく死亡、同席していた二人も負傷した。その狙撃から逃走までの手際の良さから犯人は「プロ」と考えられているとのこと。さらに言えば国防相のスケジュールを完全に知って犯行に及んでいるわけで、内部事情に詳しい者の犯行との見方も強まっている。「ゴルゴ13」がネタにする確率は高そうだな(笑)。
 殺されたブラドビッチ国防相はユーゴ連邦を構成する、今や数少ない国の一つモンテネグロの出身で同国の社会人民党の幹部。1993年から国防相を務めており、ミロシェビッチ大統領の忠実な部下と見られていた。しかしながらこれといって功績も失点もない人物で、国防相という肩書きのわりにはいたって地味な人物だった(昨年のハイライト・コソボ紛争・NATO空爆でもこれといったことはしていない)。だから国民の間でもこの暗殺には首をかしげる向きも多いという。この暗殺を受けてユーゴ政府は「国防相は典型的なテロの犠牲となった。今後、テロ撲滅に全力を尽くす」と声明を発表しているが、テロを実行したのが何者であるのか、いっさい明らかにしていない。あれこれと憶測を呼んでいるところであるが…

 セルビアではこの事件の前にすでに要人暗殺事件が未遂を含めて3件起こっている。昨年秋に最大野党の指導者ドラシュコビッチ氏が交通事故(乗っていた車が正面衝突)に遭い負傷(まぁこれは偶然の事故もありうるけど)。今年1月15日には「ユーゴの闇の帝王」といわる民兵指導者でユーゴ国際法廷において戦犯扱いされている、通称アルカンことゼリコ・ラズナトビッチ氏がホテルで何者かに銃撃され死亡。さらに連立与党の一角を占めている急進党(民族主義政党)の党首のボディガードが狙撃され重傷を負うという事件も起こっている。とにかく何やら不気味な銃撃事件が相次いでおり、空爆終了後のセルビアはますます混沌とした状態になっているようだ。

 普通に考えれば疑われるのは時の権力者。この事件被害者リストを見ていて僕ですらミロシェビッチ大統領の関与を考えちゃうぐらいだ。当然ながらユーゴでも同様の噂が広がっているらしい。ラズナトビッチ暗殺事件では、石油取引をめぐって彼とミロシェビッチの息子の間に対立があったとされており、ミロシェビッチ婦人がラズナトビッチ未亡人を訪ねて潔白を訴えるなんて一幕があった、という話もあるという。あくまで噂なんだけど、それだけユーゴの市民は一連の事件に政府が関係していると疑っているということだ。今回殺された国防相も大統領の意向で更迭されるところだった…という噂もある。

 それにしてもユーゴのお名前には「ビッチ」が多くて混乱するぜ、サノバビッチ!(←アメリカにおける東欧ネタギャグの定番らしい)
 
◇一年後のコメント◇
実はこの記事からちょうど一年後の今年2月6日、またしてもユーゴで謎の事件が起こっている。ミロシェビッチ政権で内相を務めたソコロビッチ氏が自家用車の中で死んでいるのが発見されている。当局者は自殺と判断しているが、さて…



◆乗客ぐるみのハイジャック?
 
 2月6日、アフガニスタンの首都カブールを飛び立ったアフガニスタン国営アリアナ航空ボーイング727型機が、武装グループにハイジャックされた。乗っ取られた飛行機はウズベキスタン、カザフスタン、ロシアのモスクワの空港で着陸し、その都度人質の一部を解放しつつ飛び続け、ついにロンドンのスタンステッド空港に着陸。ここでイギリス政府側との交渉に入った。犯人グループは6人から10人と想定され、どうやらアフガニスタンを支配しているイスラム原理主義勢力タリバーンに反対する立場の人間らしいということが分かってきた。昨年末にインドの飛行機がハイジャックされアフガニスタンに入ったこともあったばかりだったから、何らかの政治的要求が出るのでは、と思われていた。

 ところが。2月10日朝になって犯人グループは人質にしていた乗員乗客151人を全て解放して投降し、事件はあっけなく解決してしまったのである。犯行グループは警察に拘束されたが、彼らは政治犯釈放などのいっさい政治的要求もしていないという。しかも逮捕された人数は当初の予想を上回る19人。そして驚くべき事に解放された「人質」のうち約半数の74人がイギリスへの亡命を求めているというのだ!
 となると、想像されるのは当然ながら「犯人と乗客がグルだった」ということ。実際に乗客の中に犯人グループと関わりのある者が混じっており、犯人の親類も団体で乗り込んでいたようだという。母国のアフガニスタンからの情報では、犯人グループが武器を機内に持ち込むために女性を利用しており、その女性数人が逮捕されているとの話もある。タリバーンは厳格なイスラム原理主義をとっているため、法律上警官は女性の身体検査が出来ない。そこをついて機内に武器を持ち込んだという。タリバーンはあわてて空港に女性警官や金属探知器の配置を始めたそうだが…。
 要するに「ハイジャックを装った集団亡命」というのが事の真相のようだ。前代未聞だろうなぁ、こんなの。面白いことにこのハイジャック亡命計画は事前にカブールでは噂となっていたようで、イギリスのBBCではその飛行機に乗れずに悔しがっているカブール市民の声を紹介しているという。

 なんでこんな大冒険をしてまで亡命を求める市民が出ているのだろうか?このあたり、アフガニスタンのここ20年間の激動がかいま見える。今は亡きソビエト連邦がアフガニスタンに親ソ連政権を樹立させて軍事介入、全土を制圧したのが1979年のこと。その後イスラム勢力を中心とする反ソ連の武装ゲリラが各地で抵抗、アメリカやイスラム諸国がこれに援助を行って延々と内戦が続いた。しかしソ連にゴルバチョフ書記長が登場して改革を進める中、1988年にソ連軍はアフガニスタンから撤退を開始した。後ろ盾を失ったソ連よりの政権は各武装勢力の攻撃を受けて崩壊。しかしお次は歴史の定石通り勝利側内部の勢力争いが開始される。そして現在イスラム原理主義勢力であるタリバーンがアフガニスタンを実効支配しているという状態になっている。
 一時とはいえソ連的な政権があってヨーロッパスタイルの空気が入った後でのイスラム原理主義政権である。当然息苦しく感じる市民も多いはずだ。最近はタリバーン政府も周囲を気遣って一頃ほどの強硬姿勢をみせていないけど、市民レベルではそうとう不満が広がっているようだ。
 



◆あの事件に時効成立
 
 あの事件とは、言うまでもなく「グリコ・森永事件」のこと。ついにこの事件を構成する全てが13日午前0時をもって時効となってしまった。かつての「三億円事件」と並んでいつまでも推理マニアの想像をかき立てる事件となることだろう。「三億円」も有名だが、規模や社会に与えた影響は格段にこちらの方がデカい。マスコミに「挑戦状」を送って声明を出すなどしたため「劇場型犯罪」などと言われるが、僕自身も少年時代にその「劇場」の観客の一人だった。この事件の展開は今でもよく覚えている。
 この犯罪の経緯は各マスコミでここ数日イヤになるほどやっているのでここでクダクダ書くのは避けたい(それにしても、「キツネ目」宮崎学さん、出まくってましたね)。ここでは僕個人の目で見ていた「グリコ・森永」について書いてみたい。かなり「自分史」的なもんですね。

 事件の発端は1984年3月。グリコの江崎社長が誘拐された事に始まる。自宅に押し入り入浴中の江崎社長を誘拐するという、まぁなんとも荒っぽい手口だった。僕がこの事件のニュースを聞いてまず思ったのは「はー、やっぱりグリコの社長って江崎さんっていうんだ!」などというものだった(笑)。その三日後、江崎社長は犯人のスキをついて監禁場所を脱出。子供心にもこの「脱出劇」を凄いと思う反面、ずいぶん間の抜けた犯人のやり方を不審に思ったものだ。当時赤塚不二夫が週刊誌に書いていた漫画で、誘拐された江崎社長が犯人にグリコの菓子を要求、一口食べたらグリコのマークの恰好で走って逃げ出していく(おわかりですよね?)というのがあって大爆笑した。この漫画では犯人達は次に森永の社長を誘拐、今度も社長の求めに応じて森永キャラメルを食べさせたところ、背中に羽が生えて逃げられてしまう(笑)。この時点ではギャグだったが、この後の展開を考えるとえらく暗示的な漫画だったなぁ。

 その後の一連の「かい人21面相の挑戦状」にはルパン(三世じゃないよ)マニアばりばりの中学生だった僕や友人達は興奮させられたものだ。子供じみた不謹慎と思われるかも知れないが、あの当時、犯人グループにどことなくエールを送っていたのは子どもたちばかりではなかったはず。実際文面が面白かったモンね。空気が一変したのは「どくいりきけん たべたらしぬで」の青酸入りチョコレートの発見だったろう。実際に殺傷力のあるブツが出てきたことで、さすがに「お遊びムード」は下火になった。森永・グリコのお菓子が店頭から消える現象は僕の周囲でも起こっていた。それでも結構置いている店も多く、肝試し的にわざわざグリコや森永のお菓子を買うなんて事を友人達とやったこともあった。
 ハウス食品を脅迫して金の受け渡しを要求する「せんごひゃくめーとるいったところに…」という関西訛の子どもの声の物まねもよくやっていた(笑)。あの子どももどうしていることやら。この際滋賀県警が犯人逮捕に後一歩まで迫っていたことはしばらく後になって報道された。そのドキュメントたるや、ドラマや小説を遙かに上まわる緊迫感だったものだ。この時の「責任」を感じてなのだろう、滋賀県警の本部長が焼身自殺したのにはさすがに参った。犯人が「終結宣言」を出すのはその5日後のことだ。考えてみれば人的被害はこの本部長だけなのである。それだけにこの時ばかりは全国民が犯人をハッキリと敵視したように感じられた記憶がある。

 数年前からいくつかの案件が時効を迎えていた。今回で全てが時効となる。正直な気持ち、犯人に名乗り出て欲しいと思う人は多いだろう。でも出てこないんだろうなぁ。
 


2000/2/13記

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