それでも確かに劇的な場面の多い、小説の主役にはまさにかっこうの人物ではある。その劇的な場面の舞台となったところに京都伏見の船宿「寺田屋」がある。坂本龍馬がしばしばここに泊まり、その女将お登勢が龍馬をよく助け、またその養女となっていたおりょうは龍馬の妻となるなどとにかく縁が深く、小説・ドラマなどでもたびたび登場する幕末の「名所」だ。倒幕の決起を起こそうとする薩摩藩士と、それを君命により止めに行った薩摩藩士とが血みどろの同士討ちをやってしまった「寺田屋事件」もここで起こったものだし、慶応2年(1866)の薩長同盟締結直後、ここに宿泊中の龍馬が幕府の手勢に襲撃され、危ういところで逃走したという有名な事件もある(おりょうさんが風呂から裸で出てきて龍馬に急を知らせるという名場面がありますね)。ところで元ネタにした記事群の中にはこの二つの事件がゴチャゴチャになっている感じのも見かけられたぞ(笑)。ついでながら龍馬が本当に暗殺されてしまった宿は「近江屋」です。
で、ようやく本題だが(前フリ長すぎましたね)、この寺田屋の土地・建物が京都市に差し押さえられると言うニュースが8月24日になって報じられた。なんでも現在の所有者である不動産業者が固定資産税を滞納していたためだそうな。寺田屋そのものは鳥羽・伏見の戦いの際に焼失したが、再建してお登勢さんの子孫が営業を続けた。その後人手を転々として、現在の所有者である不動産業者が寺田屋の土地・建物を購入したのは昭和51年(1976)のこと。それで営業を続けていたのだが、本業の方の不振で平成10年(1998)以降固定資産税の滞納が続き、ついに昨年2月に京都市による差し押さえが実行されてしまった。何で今頃ニュースになったのかは分からないが…。
ま、あくまで「差し押さえ」であって別にこの歴史的遺物が破壊されるとかそういうことではないんですけどね。それにしても幕末の宿がそのまま営業を続けていたって事実の方に脱帽。
さて、この章孝厳氏だが、国民党内の要職を歴任し、李登輝前総統の側近となり、総統府秘書長にまで登り詰めた人物。ところが昨年12月に女性スキャンダルで辞任に追い込まれていたそうで(うーん、「史点」ではキャッチしてなかったな)。しかし国民党の関係者であるうちは墓参りのために大陸に渡るなどということはおよそ実現するものではなかった。ところがご存じのように今年3月の台湾総統選挙で国民党は半世紀にして台湾の政権の座を追われ、野党になってしまった。このことで章孝厳氏の政治的な束縛がかなりゆるめられ、ようやくこの8月に祖先の地訪問が実現したわけだ。この展開はなんか皮肉でもある。
…さて、この章さん、ある超有名人のお孫さんなんですね。この方、台湾の総統もつとめたある人物の「非嫡出子」で父祖と同じ姓を名乗っていない。たまたま日本語の発音は同じなんだけど(笑)。お祖父さんはこの文中に登場する人物です、…ってまるわかりですね(笑)。ま、そういうことです。
で、いま中国はまさに「資本主義国化」しつつあるとしか思えない状況なわけで、私企業の経営者など、すでに「資本家階級」と呼べる人々が登場しつつある。登場するだけでなくこうした人々は当然その地方において経済力と共に政治的な影響力をも与えるようになってきている。政治的、と書いたが共産党による一党指導体制をとっている中国では、政治家とは共産党員とイコールに他ならない。政治的影響力をもつ、あるいはより持ちたい「資本家」の人々は、自然な流れとして「共産党員」になるということになる。また地方の共産党組織も彼らのような「資本家」と結びついておいたほうが得策だという思惑があって共産党組織に彼らを加えていく傾向もあるらしい。このあたり、なんだか明清時代の地方有力者の子弟が科挙に合格して中央官僚となり、引退後も地方において影響力をふるったあたりの構造と似ているような気もしてくる。
さて、こうした流れの中で出現してきた「資本家共産党員」(少し前のマルクス主義者だったら目を回しそうなフレーズですな)あるいは「赤い資本家」について、中国共産党内でも対応に困っているようだ(元ネタはまたしても「読売新聞」)。建前論で行けば「社会主義中国」は資本家階級との階級闘争に打ち勝った労働者・農民が権力を持つ国であり(共産党はその代表かつ指導者という論理で独裁になる)、資本家階級は労働者から搾取を行う、打破されるべき存在だ。その資本家が共産党に入る、しかも下手すると地方では指導的立場に立つ可能性があるとなると、もうこれは共産党の根元に関わる問題であるとも言える。
もっとも声高に資本家入党反対論を唱えるのは共産党内でも保守系の少数派であるらしい。保守系の雑誌数冊にその論調の論文が載ったそうで、議論に火がついてはいるものの、実質的に「容認」あるいは「黙認」「追認」しちゃっているのが現状のようだ。別にこうした「資本家」たちが共産党政権打倒を図っているわけでもなく、むしろ自己の利益のために共産党入りしようとしているわけだし。彼らのような存在が党内にいたほうが特に地方ではなにかと便利だということもあって現実問題としては容認せざるを得ないところなのだろう。2002年の党大会で一つの焦点になるとはいうが…
これとある程度関連する話なんだけど、やはり読売新聞に「中国で腐敗撲滅映画が大ヒット」という記事が出ていた(17日付)。問題の映画は上海の撮影所で製作された于本正監督作品「生死をかけた選択」。なんでもある都市の市長(もちろん共産党員である)が自分の妻や元上司も関わる不正事件を、共産党員としての使命感に燃えてあばくというストーリーだそうな。その記事によると上海での鑑賞者数がすでに延べ1100万人(延べ、だけど上海市民のほとんどが見ていることになっちゃうな)に達し、ここ五年間で最大のヒットとなったという。簡単な内容紹介を見る限り、タイトルも含めて「なんだかなぁ」と思うお話なのだが(映画マニアの僕でも余り見る気は起きない)、それなりに熱血型のストーリーが受けているのかも知れない。それとそれだけ中国国民の共産党員の腐敗に対する不満が強くなってきているってこともあるんだろう。先日も党中央のかなりのランクの人物が汚職で死刑宣告されちゃってたし、共産党自身も重大な問題として受け止めている。それでこの映画を鑑賞するよう大規模なキャンペーンを行ってたりもするというから、この驚異的な大ヒットにはそのぶんもかなり含まれていると考えた方がいいだろう。機関誌「人民日報」でも「悪を恐れない共産党員の公正な気風を浮き彫りにし、わが党の反腐敗にかける固い決意を表している」ってな論文が出たそうで。
どこでもそうですけど、長期独裁政権って必然的にいろいろと腐敗を引き起こしますからねぇ。
で、地元の地方裁判所がつい先日判決を下した。普通に考えると器物破損とかの罪で最高6ヶ月の服役刑が科せられるところであったが、この裁判所、なかなか面白い判決を下した。1998年度のスティーブン=スピルバーグ監督の話題作「プライベート・ライアン」(原題"SavingPrivate Ryan")を「見なさい」という「刑」を言い渡したのだ。おそらく史上初の「映画鑑賞の刑」である。
「プライベート・ライアン」はご覧になった方も多いと思うが、第二次大戦中、ノルマンディー上陸作戦の描写から始まって、他の3兄弟がみんな戦死した「ライアン二等兵」を母親の元に連れ帰るという使命を帯びた兵士達の苦闘を描くという内容だ。その壮絶な戦闘シーンは元兵士達をして「もっとも忠実に戦場を再現した」と言わしめ、そのちっともカッコ良くない悲惨な戦場の描写は、米陸軍のお偉方をして「志願兵が減ってしまう!」と変な意味で恐れさせたものであった。
この裁判長の判決はもちろん「第二次大戦でお国のため(民主主義のため?)に戦った兵士達の苦労を知りなさい」という意図だろう。「退役兵をただのお年寄りと思ってもらっては困る」とも諭したというから、だいたいどういう意図であの映画を見ろと言ったのか見当はつく。アメリカのマスコミもこの判決におおむね好意的だそうだ。もっとも僕などはちょいとあの映画の趣旨からズレた部分も感じるけど。兵士の人達が苦労したってことは確かですけどね、なんか「アメリカの正義」をふりかざす傾向を感じなくはないな。スピルバーグ自身は何かコメントをしていないのだろうか。
さらにこの判決では高校生達に「第2次大戦で米兵が果たした役割を紹介したベストセラー」(具体的なタイトルは不明)を読むことも要求。1000語の「反省文」を書いて12月7日までに提出することを命じたという。12月7日とは、もちろん日本軍による真珠湾攻撃の日(現地時間)。そのへんにもかなりこの裁判長のこだわりが感じられますな。そして日本人には逆に素直に賛同しがたいものを感じるのも事実。
戦争で苦労した兵士達をいたわること、戦死した兵士を悼むことはそれはそれで大事なことだと僕は思う。ただその時に妙に戦争そのものを美化しようとしたり意義あるものにしようとする傾向は非常に嫌味を感じるものだ。大半の兵士は死ななくてもいいのに死んだのだということを忘れないでもらいたい。しかしまぁそういう傾向ってのはどこでも似たようなものではあるらしい。
◆大相撲の新弟子検査にたった1名!(8月29日)
なんと1936年の新弟子検査制度が出来て以来最小の記録。近ごろ話題の年齢・17才の少年がたった一人で受験し合格していたが、本人もビックリしていたとのこと。若者頭・出羽ケ崎さん(64)は「昔は不景気だと『大メシ食らいは相撲取りになれ』と、口減らしで新弟子が増えたもんだが……。社会が変わったんだねえ」とコメントしていた。ちなみに最多は若・貴ブームのときで百数十人が受験したそうである。最近は学生相撲出身者も多いので新弟子検査を受ける人が少ないのはそれも一因かも。
◆モスクワのテレビ塔火災(8月27日)
潜水艦沈没に続き今度はモスクワのシンボルともなっていたテレビ塔の火災。エレベーターが落ちて4人の死者も出てしまった。テレビ放送は当然麻痺してしまい、レンタルビデオ屋が大繁盛したそうで(笑)。こういうところにむしろ僕などはロシアの民主化・自由化を感じちゃいますねぇ。日本でも昭和天皇が亡くなったときレンタルビデオ屋が繁盛してたっけ。それにしてもロシアはいろいろと御難が続きます。
◆ロシア帝国時代の勲章復活(8月25日)
先日、ニコライ2世の「聖人化」が報じられたロシアで、今度は帝政時代の「聖ゲオルギー勲章」が復活した。この勲章は祖国防衛に多大な功績のあった軍人に贈られるもので、始めたのはなんとあのエカテリーナ2世。ロシア革命後廃止されていたが、ここにきてプーチンさんが復活を発表。あれこれとほころびの目立つロシア軍の士気高揚を狙ったものだそうだが…
◆戦国時代の竹簡に孔子の文章発見(8月17日)
中国・上海博物館の所蔵する竹簡(1300本、35000字)を調べていたら「孔子曰」から始まる、孔子が詩作について述べている文が見つかった。これまで知られていた文献には載っていない文章で注目されているとのこと。ほかにも「詩経」に載っていない詩や楽器の音調などについての貴重な資料が含まれているとのこと。竹簡の世界はこれからも何が出てくるか分からないんだよなぁ。
◆ティティカカ湖湖底に遺跡が!(8月22日)
イタリア・ブラジル人で構成された調査団がペルー・ボリビア国境にあるティティカカ湖(標高3800m!)の湖底に寺院や道路や段々畑、壁や石碑などの遺構を見つけたと発表した。1000〜1500年前のティアワナコ文明の遺跡と見られるとのこと。南米のこのへんも探せばまだまだいろいろあるのかもしれませんな。
◆ダイアナさんの死の真相は?(8月30日)
元イギリス皇太子妃でパリで事故死したダイアナさんの死は三年前の8月31日。この時一緒に事故死した恋人のドディ=アルファイド氏の父親・有名実業家のムハメド=アルファイド氏が、30日に「CIA」など米情報機関に対し、事故に関連する資料の公開を求める訴訟をワシントン連邦地裁に起こすと発表。なんでも息子さんとダイアナ妃の死には「驚くべき真相」があるのだそうで、それを知っていながら「英国のシークレット・サービスの求めに応じて、いくつかの記録を隠している」CIAに情報提供を要求するのだという。アルファイドさんはエジプト出身のアラブ人で、イスラム教徒。そのためイスラム圏ではダイアナ妃事故死について「将来の国王の母がイスラム教徒と結婚することを恐れたイギリス情報部の陰謀」という説が根強い(あのリビアのカダフィさんも言ってたぐらい)。どうもアルファイドさんもそう信じているようだ。さて、真相は…