ニュースな
1999年4月11日

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 ◆今週の記事



◆中国・朱鎔基首相が訪米で…
 
 最近何かと注目されている中国の朱鎔基首相が訪米した。主な目的は中国のWTO(世界貿易機関)加盟の件で、このところ話がかみ合わないアメリカと少しでも合意に近づいておこうということだったようだ。結論から言うとあまり大した譲歩も引き出せず、進展もなかったようだけど(表面だけって可能性もあるけどね)。

 しかしむしろ印象的だったのはこの朱鎔基なる中国人の独特のスマートさだ。東洋の政治家にはちょっと珍しい快活さとユーモアとちょっときつい皮肉を交えた会見やスピーチをやってくれる。実際欧米の報道陣にも受けが良いようだ。
 何でも最近アメリカでは、中国によるアメリカ核技術盗用疑惑とかいうものがあるようだが、朱首相は会見でこれに触れ「今度我が国でやる軍事パレードで披露される兵器はみんな中国製ですよ。「メイド・イン・チャイナ」って書いておきましょうか」と言って場内を沸かせていた。その一方でWTO関係が不調に終わった後、「アメリカは中国進出のチャンスを逸した。ヨーロッパに先んじられるだろう」と脅迫じみたセリフを吐いていた(しかも会見の最後にチョロっと付け足す形で)。

 この人の「欧米流」とも言えるスタイルについては以前にも耳にしていた。なんでも彼は日本の要人と会うのを極端に嫌うらしいのである。その理由が「日本人は儀礼的なやりとりが多く、無駄な時間を使うから」というのだから凄い(笑)。日本流のやり方にそういう無駄が多いのは確かなんだけど、そういうのって中国文化から影響を大きく受けたような気もするんだけどなぁ。その本家本元にそう言われてしまうと、なんだか切ないぞ(笑)。
 
 しかしまぁ、中国のトップって何だかんだ言っても世界に通用する人が出てくるのだよね(周恩来・トウ小平とかも外国経験あるしね)。言いたかないが日本の政治家でそういうのってどれほどいるんだろうか。「小物」ばかり出てくるのも考えようによっては平和な良い国ってことも言えるんだけどね。



  ◆南沙諸島でベトナム・フィリピンがついに対決!?

 世界中、国が接するところ、「領土問題」のタネは尽きない。日本周辺だって韓国との「竹島=独島」問題やロシアとの千島列島問題、そして中国との尖閣諸島問題などを抱えている。そしてその中国は東南アジア方面でも「南沙諸島」領有をめぐってベトナム、フィリピン、ブルネイなどと争っていたりする。地図を見ると分かるが、ちょうど各国の真ん中当たりに位置する群島というか珊瑚礁の集まりみたいな所で、どうも海底資源があるんじゃないかということになっており各国とも小島にそれぞれの守備隊を置いたりして「領有」を主張している。さすがに戦闘こそないもののにらみ合い状態は続いている(個人的には中国に関しては手を伸ばし過ぎな印象を抱くが)。

 さて、このたび領有を主張するベトナム・フィリピン両国の守備隊がついに直接対決という事態になってしまったのだ!と言っても、これ実はただのサッカー親善試合(笑)。そんなにらみ合いしてるのになんで親善試合なんかしなきゃならんのかわからんが、まぁ平和で結構なことである。絶海の孤島でただただ守備してるのもヒマなんでしょう。
 しかし、なんでも当初フィリピン側からの提案では競技はバスケットという事だったようだ。しかしバスケットの伝統がまるでないベトナム側が難色を示し、そう実力差のないサッカーということで落ち着いたらしい。見えないところで妙な駆け引きは行われていたのである(笑)。やっぱ大差付くと国の面子が立たないし。

 いっそのこと領有を主張する各国が集まって毎年「親善試合」をやったらどうなんだろうね。で、勝った国がその年だけ領有できるようにすると(爆笑)。こうすれば血も流れないし、国家がサッカー強化に軍事教練並みに励むだろうから、サッカーの実力もアップするしで良いことずくめである!うまくいったら世界中の領土紛争に同様の提案をしてみようじゃないか。



◆ユーゴ関係あれこれ

 ユーゴのコソボ自治州をめぐる紛争でNATOの空爆があったりしたが、依然として先の見えない展開が続いている。ユーゴ側はコソボからアルバニア系住民をほとんど追い払っちゃって一方的に「停戦宣言」をしたが、「勝ち逃げ」を認めまいとするNATO軍はユーゴ空爆をさらに強化している。事態が泥沼化の様相を呈してきているわけだが、そんななかでいくつか気になった話題などを。

 セルビア系のユーゴ軍によるコソボのアルバニア系住民への迫害は実際相当のものがあるらしい。虐殺もかなり酷いものがあるようで、「今どきもこんな事が」という悲惨な話が伝えられている。凄いのが、コソボにいるセルビア系住民が自宅に「C(キリル文字でのセルビアの頭文字)」の文字を書き、ユーゴ軍はそれを目印にアルバニア系住民の家を襲ったというエピソード。「旧約聖書」の出エジプト記に似たような話があったような…

 もう一つ面白い話。「週刊文春」に出ていた話だが、なんでNATOはあんなにしつこくユーゴ空爆を続けるのであろーか。それは何と「2000年問題対策」だというのである!今どきの兵器、もはやコンピュータが積まれていないものはない。当然ながらミサイルや爆弾だって例外ではないのである。しかもそうそう使うものではないから古いプログラムがそのまま使われているわけだ。2000年になった時、変な誤作動を起こさないうちにこの際全部使ってしまえというわけで、今ユーゴにばらまいているのだという!デパートが夕方にやる閉店間際の大安売りみたいなもんか。ホンマかいな(^^; )。



◆チベットに火葬場建設
 
  突然話のスケールが小さくなってしまうようだが、どうも今週はネタ枯れぎみなので勘弁してもらいたい。新華社通信によるとチベットに初めての近代的火葬場が建設されたというのである。じゃあ今まで土葬にしていたのかというとさにあらず。そう、あの「鳥葬」の習慣が今でも続いているのだそうである。

 「鳥葬」とは死体を野ざらしにして鳥がついばむのに任せるというアレである。つまり自然に帰すという発想なわけだ。放っておけば見事に骨だけになってしまう。チベット仏教文化圏であるモンゴルなんかでも行われている習慣だ(今もやってるかどうかは不明だが)。途中経過は見た目にいささか無惨だが、人間を自然の一部に過ぎないと認識する発想なんかは今はやりのエコロジー精神につながるようで現代人の共感を集めるところもある。そこへ中国が火葬場を作ったというのは、やはり独立傾向の強いチベット文化存続への圧力という所もあるのかも知れないな。
 ちなみに中国では火葬にして灰を海にまくことが奨励されているそうだ。何せあの人口でみんな墓を作ったら大変なことになる(笑)。故トウ小平も自ら範を示したわけだが、国民全体にいきわたっているのだろうか?
 


99/4/11記

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