ニュースな
1999年7月4日

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 ◆今週の記事

◆モーセの十戒を学校に!
 
 言い古されてる事だと思うが、アメリカは「銃大国」だ。
 とにかくごく日常的に銃が身近に存在している観がある。そしてそれに伴い銃による犯罪も後を絶たない。最近では児童までが銃犯罪を起こす始末で、「学校で子供が銃を乱射」というニュースすら「日常的光景」になっちゃっている(以前この「史点」でもとりあげたことがある)。当然ながら銃を規制しようとする動きも活発にはなっている。
 しかし、これまたよく報道されているように「銃の所持は国民の当然の権利」として銃規制に猛反対する意見も根強い。政界への圧力団体として名高い、あのチャールトン=ヘストンが会長を務める「全米ライフル協会」なんてのもある。彼らの主張するところを見ていると何やら日本の武士達の刀に対する感情に近くなってきてる気もするな。西部劇時代以来の伝統ってやつだし。
 民主党のクリントン政権は基本的に「銃規制」の姿勢を示している。しかし共和党の勢力が優勢な連邦議会が抵抗し、なかなか銃規制のための各種法案が通らない情勢だという。

 そんな中。何やら珍妙な法案が議会を通過した。
 「モーセの十戒を学校内に掲示する事を認める」という法案だそうである。聖書をちょっとかじったぐらいの方だと「ははん」とお気づきかも。そう、モーセの十戒には「なんじ殺すなかれ」とあるのだ!これを校内に掲示して毎日見ていれば生徒も人殺しはせんだろう、というわけだ!僕は一瞬何かのギャグかと思ってしまったが、銃規制の法案よりこんな法案を議会が通したという現実があるのだ。うーむ、「聖書への回帰」ってやつなのかな?結局「道徳」は宗教によって植え付けるしかないって事なのか?「なんじ姦淫するなかれ」なんてのはクリントンには良い当てつけだろうが(笑)。
 当然ながらこの法案については「政教一致であり、憲法違反だ!」との反対論がある。いちおう「掲示することを認める」のであって強制するわけではないのだが、今のアメリカ、みんながみんなキリスト教徒なわけでもないし問題になるところだろう(そういえば大統領就任の宣誓時、聖書に手を置いてるような気がしたががあれは問題になってないのかな?)



◆大卒以外お断り!?
 
 会社の新人採用の話ではない。なんとある国の大統領のお話である。
 インドネシアのハビビ政権(与党ゴルカル)が「大卒(学士号保有者)以外の者は大統領になれない」という法案を作成しているそうな。その狙いはもちろん、さきの選挙で大勝した最大野党「闘争民主党」党首メガワティ女史(大学には入ったが中退している)の大統領就任を阻止することにある。あまりに露骨なのでマスコミの非難を浴びているとのこと。

 このメガワティさんについては前にも書いたが、あのインドネシア独立の父ともいうべきスカルノ大統領の娘さんだ。スカルノを追って長期にわたり政権を握ったのがスハルト前大統領で、現在のハビビ政権はそれを引き継いだ形となっている。メガワティさんの台頭は言ってみれば「親の仇討ち」をやってるようなところがあり、長期の腐敗政権に幻滅した国民の人気を集めている。政府与党はその勢いをかなり恐れて、その人気失墜にやっきとなっているわけだ。
 まず「国民の9割がイスラム教の我が国に女性大統領はふさわしくない!」とキャンペーンをブチ上げ、インドネシアのイスラム系保守派に支持を求めた。しかしこれはかえって不評を呼び(だいたいイスラム圏でも女性政治家はけっこういるんだよな)、闘争民主党とイスラム系政党の連合をはばめないままでいる。そこで今度はメガワティさんが「大学中退者」であることに目をつけたという次第だ。ホント手段を選ばない方々である。
 もっともこの法案、政府内部からも批判が出ていて、まぁ実現しないだろうとのこと。



◆CIA極秘指令:ミロシェビッチ政権を打倒せよ! 

 勝手なタイトルをつけてしまったが、極秘でもなんでもないところがアメリカらしい。ワシントン・タイムズ紙の報道だもんな。
 議会当局者が漏らしたところによると、先日NATOに対して事実上の「降伏」をしたミロシェビッチ・ユーゴスラビア大統領を政権の座から追い落とすべく、クリントン大統領がCIAに工作活動を起こす承認を与えたとのこと。どんな工作活動をするかというと、野党政治家への資金提供、反政府勢力への援助といったものから、ハッカーを使ったミロシェビッチ大統領の国外銀行口座への侵入(おいおい!ホントにやっていいのか、そんなこと!)など多彩だそうだ。

 ホントかどうか怪しい気がする部分もあったが、まあ過去の経緯から考えても「工作」はしてるだろう。先週、チリのアジェンデ社会主義政権を打倒したピノチェト将軍(ただいまイギリスで軟禁中)のクーデターにCIAの積極的な工作があったことが文書公開で明かとなった。前から当然視されてはいたんだけどね。先日某右派系雑誌でソ連の工作うんぬんを書いてる記事があったが(それで「赤狩り」を肯定するという恐ろしいことを書いていた)、アメリカも露骨に他国の内政に干渉工作してきた歴史があるのだ。
 しかしそれでいて案外「成功」してないケースも多い。イラクのサダム・フセイン大統領が良い例だ。正確には記憶してないのだが、湾岸戦争終結後、アメリカの国務長官はフセイン政権について「三カ月以内に倒れるだろう」と言ったそうである。ところが実際にはその時のアメリカ大統領が選挙に敗れ、その次の大統領が二期務めてそろそろ任期切れという時期になってもサダム君の政権は相変わらず健在である。

 その「故事」をふまえて、オルブライト国務長官の会見中、記者から質問が飛んだ。「ミロシェビッチ政権はいつまでもつのか?」と。オルブライトさんも「故事」をふまえて明言を避けたそうである。さすが(笑)。



◆ボンよさらば!

   「ボン」といえば旧西ドイツの「首都」。ドイツの田舎の小都市に過ぎなかったが、ドイツが大戦後東西に分割されるなか、西ドイツの連邦議会、政府がおかれ、その「首都」としての役割を果たしてきた。しかし1989年にあの「ベルリンの壁」が崩壊、1990年には統一ドイツが誕生した。そして統一ドイツの首都もベルリンに定まり、ボンはその使命を終えることとなったのである。この夏にボンにある議会、官庁、各国大使館などがこぞってベルリンに移転される。もちろんそれに伴いお役人たちの移転も行われるわけで(しかし今年中は大半が単身赴任とのこと)、今年の夏は「引っ越しの夏」とドイツでは呼んでいるそうな。日本のお盆帰省ラッシュみたいな状況になるらしい。現在ボンの人口は30万人だそうだが(つくづく小さな首都だったんだな)、ゴソッと減っちゃうんだろうなぁ。歴史には残るだろうけど(戦前の日本でいってた「吉野時代」みたいになるかも)町としての世界的知名度は相当下がると思われる。

 先週、ついに最期の連邦議会本会議が行われ、1949年以来の「ボン議会」の歴史に幕が下ろされた。本会議では「民主主義50年――ありがとうボン」と題する記念演説がコール前首相によって行われ、戦後ドイツ民主主義の歴史の総括がなされた。長年「西ドイツの顔」だった巨漢・コール前首相は辞任以来久々に登場し、「ボンはドイツの民主主義のゆりかごだった」とその意義を讃えた。そして「我々はベルリンへ行くが、新しい共和国へ入るわけではない」とシュレーダー現首相をチクリと皮肉ったという。なんでもシュレーダー首相は新しいドイツを「ベルリン共和国」とか呼んでるんだそうで、そのへんへの反発があったらしい。
 演説は「ドイツの欧州人、欧州のドイツ人であることが、平和で自由な未来につながる」と締めくくられた。そう、時代はもう「ドイツ」ではなく「EU」なのだ。明らかに周辺諸国に配慮した発言だが、どことなくシュレーダー批判に聞こえないこともない。どうもシュレーダーさんって「大国ドイツ」を掲げてるイメージがありましてね。
 


99/7/4記

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