ニュースな
1999年7月18日

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 ◆今週の記事

◆中国あたりが少々きな臭い…?

   先週はなにやら中国ネタが多かったような気がする。
 まず中台関係をめぐりまたも一悶着があった。台湾の李登輝総統がドイツのテレビのインタビューで「台湾と中国は特殊な国と国との関係」と発言し、これが「『一つの中国』を破壊し中国の分裂を図るものだ!」と大陸側中国の怒りを買い、波紋が世界的に広がっている。つい先日もパプアニューギニアが台湾を「国家」と認めて外交関係を結び中国の反発を買っていたが、今回はなんといっても総統自身の発言なので影響も大きい。あれでいて大陸中国を正統と認めているアメリカも困惑の呈らしい。米ルービン報道官は会見で「米国は、1.台湾の独立2.『二つの中国』3.国家主権を必要とする国際機関への台湾加盟、のいずれも支持しない」と述べ、クリントン大統領が示したアメリカの姿勢である「三つのNO」を改めて確認していた。今回の総統の発言については「その真意をさぐっている」のだそうだ。

 台湾は来年総統選があり、李登輝氏の後継が争われる。どうも今回の発言はそれを睨んだ意図があったと思える。前回の総統選の際には中国海軍が台湾海峡で威嚇的演習を行い、アメリカ空母が近くまで出動するという騒ぎになったことがあり、今回も似たシチュエーションが生まれつつある。実際、台湾の対岸である福建省泉州沖で一般船舶100隻を集めた軍事演習が行われていたそうである。

 なんだかんだ言いながらもクリントン政権は基本的に大陸中国に接近をしていく姿勢である。ハッキリ言っちゃえばその背景には中国市場に参入したいというアメリカ経済界の期待が大きく存在する(なんてったって14億人という巨大市場だもん)。しかしその一方でアメリカの一部の「反中国感情」の高まりも明らかになっている。どうもソ連崩壊後の「仮想敵」を中国に求めているフシを感じるのだが…。とくに議会で共和党系の議員さんがうるさいようである。
 先日のユーゴの中国大使館「誤爆」事件もまだまだ尾を引いている。中国側は依然として「故意の爆撃」と感じており、実際その日CIAが作戦に絡んでいたとか当事者が辞任したとか「故意の証拠」ともとれる事実もいくつか上がっている(まぁ僕もまだ判断しにくいとこですね)。そんななか、連邦議会の某議員がとんでもないことを言っていた。「中国大使館で死亡したのはスパイ活動を行っていたのだ!」…って、おいおい、仮に本当にスパイだったとしても、他国にいるスパイを勝手に殺しちゃっていいって法はないだろう。どうつもりでこういう発言が出来るんだか…まぁ少数の跳ねっ返りだとは思うが。

 そしてこの手の「反中国感情」の現れとも言えるのが「中国による米核技術スパイ疑惑」だ。どっからか騒ぎ出したのをキッカケに連邦議会で「事実究明」が行われ、「明かに核技術を盗み出した事実があった」とする報告書まで出てしまった。まぁ僕も「やったかもしれないな」といささか思うところもあるが、これに関しては「盗まれる方がアホ」というべきで。だいたいなんで今ごろ騒ぎ出すんだか。
 この問題に中国側は当然ながら反発。「核技術は自前だ!」と反論しているわけだが、ここで「とっくに中性子爆弾を自前で作れる技術がある!」と言っちゃったことも波紋を呼んだ。まぁ「技術がある」ってだけで「作った」とは一応言っていないんだけど…読みとりようによっては「威嚇」ともとれる発言である。

 今のところなんだかんだと冷え切っているように「見える」米中関係である。それに便乗してか日本の一部右派論客が中国叩きしているのを見かけるが(「てこ歴」で扱った「中国4000年の真実」がまさにそうだ)、僕がみるところ、あれでいてアメリカって中国とそう仲悪くないんだよねぇ。少なくともアメリカは中国を「対等国扱い」して対話する。日本なんてああた…(苦笑)。

◆一年後のコメント
うーん、李登輝前総統の「二国論」ってほんの一年前に言い出したことだったのかぁ。その後の台湾をめぐる情勢はめまぐるしいものがありましたねぇ。
 



◆ちかごろの宇宙開発事情
 
 アポロ11号が月に着陸してちょうど30年がたった。先週とりあげた「追悼文」ネタはそのために明るみになったわけだ。先日の新聞見てたらアームストロング船長はじめアポロ11号の乗組員が珍しく一堂に会して記念のイベントに出ていた。アームストロング船長は「人類は次は火星へいくのだ!」と吠えていたが「20年以内にはいけるはず」とのことであった。やれやれ、宇宙開発も気長な話になってきちゃったようである。僕が子供の頃読んだ本ではとっくに火星上陸計画が実行されていたはずなのだが(笑)。この会見でも言っていたが、アメリカでも宇宙開発の予算は厳しいところのようである。昔はソ連に対抗する「国家事業」だったからなぁ…

 ところで事情が厳しいのはかつての対抗国ロシアも同じこと。ロシアのロケット打ち上げはおなじみ「バイコヌール宇宙基地」なのであるが、ここは現在は独立状態(いちおう独立国家共同体には加盟)のカザフスタンの領内にあり、ロシアが年間1億1500万ドルも払ってカザフスタンから基地を「借りる」形になっているのだ。だから昔のようにはいかないことが多くなった。
 最近あるロケット打ち上げで失敗事故が起こり、有毒物質を含む大量の燃料を周辺にぶちまけてしまい、カザフスタンが激怒。「原因究明と補償がなされないかぎりロケット打ち上げを認めない」と表明した。慌てたのはロシアである。ロシアの有人宇宙ステーション「ミール」に補給船をただちに送らねばならなかったのだ。補給が来なければ「ミール」の乗員達は地球へ脱出帰還しなければならなくなる。さらに「ミール」自体も資金不足で放棄せざるを得ない状況で、「このまま放っておくと「ミール」が地上に落下する恐れもある!」とロシア側は懸念を表明した(もっとも大気圏突入時に燃え尽きるというのが大方の見解である)
 まぁとにかくすったもんだの末、ロシア・カザフの話し合いがまとまり、補給船は無事打ち上げられることになった。この際ロシア側はイコヌール基地の「賃借料」のうち、滞納分5000万ドル(笑)を11月までに支払うことを約束したとのこと。なんだ、まともに金払ってなかったんじゃん、そりゃカザフも怒るって。

 ところでそんな米ソ両国を尻目に中国が「有人宇宙計画」を進めていることが明らかになってきた。ほんらい今年の「建国50周年記念」で実行する予定だったそうだが、新型ロケット開発が遅れて来年に実現の運びだそうだ。なんでもインターネット上でどういうわけか「中国宇宙船」とおぼしき写真が出回ったそうで(ソ連のソユーズに似てるらしい)、ほぼ確実に今世紀以内には中国は有人宇宙飛行を実現させるようである。実現すると米ソに次ぐ「有人宇宙船」実行国となるわけ。
 「宇宙少年」という部分もある僕などには胸躍る話題だったりするのだが、例によってアメリカの反中国層では「中国の宇宙からの軍事的脅威」を叫ぶ声が上がっている。自分のことは棚に上げて…(笑)。

 そうそう、北朝鮮もぼちぼち「人工衛星」をまた打ち上げるそうである。やれやれ(^^; )。

◆一年後のコメント
一年経って、この辺の話もいろいろと変化がある。一時廃棄されかかったロシアの宇宙ステーション「ミール」はスポンサーの出現で存続が決まり、国際宇宙ステーションの建設もロシア担当部分が打ち上げられてようやく始動した。中国の「有人宇宙計画」はその後また噂が出るが(今後の「史点」に登場)、現時点では音沙汰なし。今世紀中かどうかはあやしいところ…?
北朝鮮の「人工衛星」も結局打ち上げないまんまですな、そういえば(笑)。



◆オーストリアが非核憲法制定

  「非核」といえば「唯一の被爆国」である日本の「非核三原則」が有名だ。「核を持たず、作らず、持ち込ませず」ってあれだ。ただこれはあくまで「核兵器」についての原則であって、同じ「核」である原子力発電についてはむしろ積極的な国であったりする。ところがここに来て日本を上回る「非核」すなわち原子力発電まで規制する国が登場した。

 それは、ヨーロッパ中央にある国・オーストリアだ。「ハプスブルグ帝国」だった昔はともかく、今は永世中立を標榜する「小国」と言って良い国だ。そこの下院が「原子力発電所の建設・稼動と核兵器持ち込みの禁止」を憲法に明記することを全会一致(!)で承認しちゃったのだそうだ。憲法に明記となるとこれまた日本を上回る「非核化」である(考えてみると日本は憲法では非核三原則をうたっていないんだよな)
 なんでも今回の憲法明記以前から通常の法律でも原発の建設・操業は禁止されていたんだそうな。核兵器の持ち込みについても外国軍駐留を禁じた「中立法」で規定していたとのこと。今回は両者を改めて「憲法」に付け加えたということにすぎない(だから全会一致なんてことになるんだな)。記事を眺めていたら1978年に国内に建設された原発の稼働の是非を問う国民投票があり、反対が多数を占めて結局操業されなかったという過去があるそうだ(スリーマイル島事故のあとだったのかな?)

 今回の決定は西欧諸国に広がる「脱原発」の流れの上にあり、またその流れを推進するものとなるようだ。まぁ僕も原発推進派とは言い難いところなのだが、原発の代わりの電力の源をどこに求めるんだろう、と素朴な疑問は湧く。火力はそれこそクリーンとは言い難いと思うし、水力発電ではそんなに電力が得られるのだろうか、とかいろいろ考えちゃうんだけどね。太陽熱発電だってまだまだってとこらしいしなぁ…。

◆一年後のコメント
ちょうど一年たったころ、ドイツでは将来的に原発を全廃することを政府が決定してしまった。ヨーロッパの「脱原発」の方向はますます強まる様子である。



◆ケネディ家の悲劇がまた…?

   この原稿を打っている現時点ではまだ「消息不明」の状態だが、どうも絶望的状況らしい。もう昨夜からニュースで盛んに報道されているが、ジョン=F=ケネディ・ジュニアが自家用飛行機で遭難、夫人ともども行方不明になってしまった。説明する必要もないと思うが、この人、あのケネディ大統領のお子さんである。そう、あのダラスで暗殺された「JFK」だ。

 1963年11月22日、ジョン=F=ケネディ第35代米大統領はダラスでパレード中に狙撃され死亡した。この事件についてはあれこれ謎が多く「陰謀説」もかなり根強く囁かれている(映画「JFK」は全面的に正しいとも言い難いがかなり参考になる)。そしてそのJFKの弟・ロバート=ケネディは68年6月、大統領選の遊説中にやはり狙撃され殺された(この場面も「JFK」に出てくるな)。これだけで「ケネディ家の悲劇」というフレーズは事実上固定化していた(なんか他にもあったような気がしたが忘れた)
 そして1997年。ロバート=ケネディの息子・マイケル氏がスキー事故で死亡。この時も「ケネディ家の悲劇」という言葉が飛び交っていた。そして今年の7月16日。このマイケル氏の妹・ロリーさんが結婚式を挙げることになり、親戚一同が集まることとなった。JFK2世はそこへ向かう途中で消息を絶ったのである。当然ながら式は延期。親戚一同で追悼のミサを行う予定だそうである。
 実は、僕はこのJFK2世のことがマスコミの話題に上ったとき、一部では政治家希望かと報じられたこともあって「まさかまた暗殺なんてことはなかろうな」と冗談を言っていたものだ。もっともご本人はまるで政治家には興味が無く、父親以上にハンサムなプレイボーイとして名を馳せている程度だった。しかしまぁこんな最期を迎えるとは…。いや、まだクリントン大統領も言うとおり「無事の生還」が期待されてはいますけどね。しかし破片もみつかるなどほぼ絶望的な状況で、アメリカでは「ケネディ家の悲劇がまた」とマスコミが大騒ぎしているそうである。

 今度ばかりは「陰謀」とは言い難いと思うんだけど(だいいち何のメリットもない)、それにしてもいちいち劇的な一族ではある。アイルランド系の移民でカトリック。そこから大統領を出し、そして二人の暗殺。その後も続く悲劇…そのまんま大河ドラマにでもされそうだな。
 


99/7/18記

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