CARAのブレーキパッドを交換する(その2)

(作業日:2000.6.3/初稿:2000.6.4/最終稿:2000.6.18)



 え〜、前回のフロントパッド交換より、早いものですでに1年以上経ってしまいました。結局その間パッド鳴きっぱなしでした。
 3月初めにCARAを12ヶ月点検に出したんですが、クルマ帰ってきた時「リアのパッド替えときました」だって。「え〜、違うパッドにしようと思ってたんですよー」って言ったら、「残り0.5mmでしたから」。…仕方ないか。

 さて、その「違うパッド」ですが、「違う」というくらいですから、ディーラーで替えてもらう純正品(または純正互換品)ではありません。かといってAZ-1(CARA)にサイズが合うだけというものでもありません。AZ-1(CARA)専用パッドです。
 何が専用かというと、「前後のブレーキバランス」です。AZ-1(CARA)はご存知のとおりエンジンが後ろにある関係でフロントが普通のクルマに比べて非常に軽いです。で、ノーマルのパッドが何故かフロントが早く減るのは前回の交換レポートで述べたとおりです。相対的にリアが重いはずなのに、特にリアのブレーキが効いてる感じもなかったですし。もともとAZ-1(CARA)は互換部品の寄せ集め的なところが散見されますから、一番大事なブレーキにもかかわらずそれすら例外でないかもしれないと思っています。
 そんなAZ-1(CARA)のブレーキに不満を持ち、専用パッドを作ってしまった方がみえます。CARAで精力的にサーキット走行をされている中田さんです。その中田さんが埼玉県入間市にある「アルファーレーシングサービス」に注文して某ブレーキパッドメーカーと共同開発されたそうです。コンセプトは「AZ-1(CARA)の前後ブレーキバランスを最適化し、サーキットでの使用をメインに、峠でもそこそこ効き、街乗りでも使える」という何とも欲張ったものです。
 中田さんはじめその他の方が使用された結果も良好だそうで、じゃあ私も、というわけで注文してしまいました。

 送られてきたパッドと共に手紙が。どれどれ。「パッド取り付け前に#60くらいのサンドペーパーでローターの両面を磨いて下さい」とのことです。ローターの表面に前のパッドが皮膜を作っているため、それをきれいに落とさないと、新しいパッドの効果が半減するようです。これは全てのパッドに言えることだそうです。ディーラーとかで交換しても、そこまではやってくれないだろうなー。

 さて、作業の手順をレポートしましょう。何度も言いますけどブレーキは最重要保安部品の一つです。万が一のこともあってはいけないので、例によって元メカニックの鈴木君のチカラを借りまくりの交換作業です。

これが送られてきたブレーキパッドです。
箱には何も書いてありません。かえって不気味です。
箱は性能には何の関係もないので、コスト縮減のためだそうです。納得。
#60の耐水ペーパーと、スポンジに研磨剤を巻き付けてある「ソフトサンダー」ってのを買ってきました。

封を開けてみましょう。わくわく。
フロントパッドです。
真ん中にスリットが入っています。何のためでしょう?
放熱?バランス取り?わかりません。
鳴き防止の面取りも施してあります。
リアパッドです。
こっちはノーマル然としています。
やはり鳴き防止の面取りが施してあります。
色が黒いのは放熱効果を考えてのことだそうです。
機能第一なんですね。納得。

まずはフロントから交換ですが、フロントは前回もやっているので今回はリアを中心にレポートしましょう。
フロントキャリパーは下側のボルトを外して、キャリパーをクルっと回せばOKでしたが、リアはサイドブレーキワイヤーがあるため、キャリパーを外してしまう必要があります。
ボルトを2本とも外して、キャリパーをグリグリっと外します。
ローターを磨いています。ゴシゴシ。
でも、どの程度磨けばいいのかよくわかってません。まぁ、やったということで…。

さて、ここで大問題発生。いや、ホント大問題です。
ノーマルパッドを外してみたら…
ローターに当たっていないところがありました。
これは左リアのパッドです。上が内側、下が外側です。
外側はきれいに当たっているのですが、内側は半分ほど当たっていないようです。
ちょっとわかりづらいでしょうけど、ローターの裏側の外周側が錆びています。
全然パッドが当たっていないということですね。
ちなみに右後ろのパッドです。上が内側、下が外側です。
やはり内側が半分当たっていません。
左側とまったくの対称形であるところがなんとも不気味です。

とりあえず、問題は問題として宿題にしておきましょう。
気を取りなおして新しいパッドを組み付けます。
ピストンを戻します。
フロントはキャリパーごと挟んで押し戻せばOKですが、リアはピストンを回しながらねじ込みます。
この時、ピストンに切ってある十文字をパッド裏に当てる金具に残っている跡に合わせます。
前回の交換時には無かったブレーキグリスを塗ります。なかなか売ってないんですよ、これ。
前回のレポートでは普通のグリスでもいいと書きましたが、熱で溶けて流れてしまうのでだめだそうです。
グリスを塗る場所は、金属が当たるところ全部です。
具体的に言うと、パッドと裏に当てる金具の間、金具とピストン、パッドを押さえる爪が当たるところ。

できた。
グリスたっぷり。
鈴木君曰く、「こんなに丁寧にやったことない」。おいおい。
ローターについている溝は見なかったことにして下さい。
さて、押し戻したピストンでマスターシリンダーのフルードがこぼれそうになってしまいました。
MAX線まで吸い取って蓋してOKです。


 というわけで、とりあえず付きました。鈴木君へのお礼はAZ-1のノーマルステアリングです。彼の奥さんが乗っているAZ-3に付けるんだそうです。

 さて、ファーストインプレッションをお届けしましょう。
 まずは100km程度の慣らしが必要ということで、その日の午後、買い物がてら富山市まで行ってきました。交通の流れに沿って「急」の付く運転を避けてのんびりツーリングです。そのくらいの速度域では、ノーマルパッドより効きが甘いです。これまでより踏力が若干必要です。まぁ、慣れればどってことないレベルですけど。
 その翌日、十三墓峠へ行ってきました。「飛騨いろは坂」と岐阜県知事が命名した峠です。急勾配+狭い車線+きついなんてもんじゃないコーナーの三重苦な峠で、ブレーキのテストにはもってこいです。(いや、テストコースとしては最高ですけど、私にテストできる腕があるかどうかは別問題ですね)
 いつもより1速高いギアで、エンジンブレーキに頼らずフットブレーキメインで下ってみましたが、最後まで効きが衰えません。ノーマルパッドだと最後の方で結構ブレーキのストローク増えるんですけど。おそらくセルフサーボ効果もあるんでしょうが、ある程度温度が上がると「ググッ」と効いてきます。
 上りもいつもと同じ所でブレーキングを開始すると速度が落ちすぎてしまいます。これまでならロックしているはずのフロントがロックせずにきれいに回頭します。タイヤがプアなので結局プッシングアンダーは出るんですが(ヘタとも言う)、これまで以上にリアが効いている(しかも前後のバランス良く)証でしょうか。
 ブレーキだけでクルマの性格変わるもんなんですねぇ。初めて経験しました。
 街乗りで効きが甘いくらいですから、温度が上がるまではこのパッド本領を発揮しません。ですから、ジムカーナには向かないと思います。

 ただし、上でレポートしたとおり、私のクルマはリアのキャリパーがおかしい可能性があります。これは近いうちにディーラーに持ち込んでチェックしてもらいます。このブレーキパッドの本当の効果は、その後でないと体験できないのかもしれません。現状でも充分すごいですけど。もちろん次も同じパッドにするつもりです。


2000/6/18追記
 本日、ディーラーでリアブレーキ周りを見てもらいました。新たに組んだパッドはローターにきれいに当たっていました。で、サービスの人と「なんでやろなぁ、おかしいなぁ」としばらく思案していたら、サービス曰く「あ、ここに当たっとったかもしれん。」
 リアのパッド裏面には凸部分があります(この頁上から4枚目の画像参照)。で、ピストンには十文字型の切り欠きがあります(11枚目の画像参照)。本来ならこの凸凹がしっかり合っていないといけないんですが、たまたま12ヶ月点検の交換時にそれを確認しないまま組んでしまったために、ピストンが凸を押すようなカタチとなっていたんですね。面ではなく、点で接していたためにチカラが偏って、偏摩耗を引き起こしていたということです。ローター内側の外周が当たっていなかったと同時に、外側のハブに近い部分も当たっていませんでした。
こんな感じで押していました。
だからリアのピストンは回しながら押し戻すようになっているんですね。

 なんでリアのピストンだけこんなカタチになっているんでしょう?とサービスに質問したら、「サイドブレーキが付いているから」という、わかるようでわからない答えが返ってきました。そういうことにしておきましょう。
 というわけで、アルファーレーシングのパッドは、ちゃんと付いていたことがわかりましたので、前回のファーストインプレはパッドそのものの持つ性能の私なりのインプレだと思っていただいてよろしいかと思います。






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