やっぱ2ストでしょ!
TDR80(3GA)



ピストン交換日記

作業日:2008.5.6/初稿:2008.5.26

私、まったくの「ど素人」なので、用語の使い方とかパーツの名前とか、あるいは取り付け方法などが間違っている可能性があります。ウソは書いていないつもりですけど、書いてあることを鵜呑みにしないでください。



 昨年(2007年)の秋、会社からの帰宅途中でエンジンが抱きついた件は、当日のブログに掲載していますので、ご存じの方は既に経緯からご存知だとは思いますが、改めて当日の記事を掲載。

さて、帰り道でのこと。
坂道を2速全開で勢い良く上っていたら、いきなり後輪がロック。
あっ、やべっ。
咄嗟の間の出来事でしたが、奇跡的に転倒を回避。自分のどこにそんなテクが? いや、まぐれでしょう。
ひょっとして焼き付いた?
恐る恐るキックペダルを踏み下ろしたら、ちゃんと動く。
少し安心。
でも、このままひと気の無い駒鼻峠へ向かうのは大いに不安だったので、ルートを変更して国府町から十三墓峠を経由して帰ることに。
怖くて全開(というか、高回転まで回すことが)にできない。4〜5千回転前後をキープしつつ走っていたら、アクセルオフでエンスト。
・・・やばいです。エンジンが逝きました。
国府駅前までどうにか移動して、家に電話。
あれ?前にもこんなシーンがあったような。

迎えを待つ間、オイルタンクの残量をチェックしてみても、少ないながらもちゃんとある。
ジェット、絞り過ぎですかね。というか、気温が下がった時点で濃い目に変更しておかないと。

どのみちシーズンオフにピストン交換する予定だったし。
そのシーズンオフが一週間ほど早く来ただけだし。
と、慰めにもなっていない慰めを自分自身に行ってみたり。
ピストンだけで済めば安いもんなんですけど。開けてみるまでダメージがわからないし。

そうこうしている内にフレンディが到着。

まさか、フレンディのトランポネタをアップした翌日にTDRを積むことになろうとは。

とほほ。

(2007.10.26「気が付けば絶版車blog版」より転載)


 というわけで、エンジンもかかったことから、軽い抱きつきかな、と判断して、冬の間に必要な部品を揃えておきました。

 例年と比べて、今年は気温が高いような気がします。ゴールデンウィーク明けからバイク通勤を再開すべく、この連休中に作業を行うことにしました。

今回交換するパーツ。


今回交換するパーツリストです。
部品番号部品名数量単価
3GA-11181-00ガスケツト,シリンダヘツド 1
1
2,069
10X-11351-00ガスケツト,シリンダ
1
284
3GA-11631-00-96ピストン (STD)
1
4,841
30W-11601-00ピストンリングセツト (STD)
1
4,074
4V1-11633-00ピン,ピストン
1
630
5X2-11634-00クリツプ,ピストンピン
2
89
93310-212L6ベアリング
1
473

※パーツリストの内容は2008年5月25日現在のヤマハwebページにある「部品情報検索」のものです。当日では上記パーツは全て「在庫あり」となっていますが、いつ何時在庫が無くなるか判りませんし、部品番号や単価も変わる可能性があります。

 ピストンの交換はTZMで経験済みなので、そんなに苦労することはないとは思いますが、サービスマニュアル片手に作業を進めます。

 まずは冷却水を抜きます。
 若干濁っていますけど、2シーズンも使えばこんなもんでしょう。・・・あ、オイルが混じって出てきた。
 むむっ。これは今回の抱き付きが原因なのでしょうか。はたまた別のトラブルを抱えているのでしょうか。
 考えていても仕方がないので、見なかったことにして次に進みます。

抜いた冷却水。
乳化しかけたオイルが混じっている。
この画像の見える範囲内でも4箇所外します。


 シート、燃料タンクとフロントサイドカウル、シート下のサイドカウルを外しエンジン左側のパーツを外しにかかります。
 クラッチケーブルとラジエターからシリンダーヘッドのサーモスタットへ行っているバイプとヘッド上のフレームから吊るされたエアチャンバーです。
 次に正面に回ってラジエター本体を外します。
 さらにエキパイ。シリンダーに固定するスタッドボルトが固着しているので、潤滑油を吹いてしばし休憩。
 TZMはM仕様にしたりSP仕様にしたりで、しょっちゅうチャンバーの交換をしていますから、ここが固着するということはないんですが、普通に乗っているだけならまず外すことのないところなので、仕方ないことです。
 休憩の後、ナットを回してみたら、結構すんなりと外れました。が、ナットが外れたのではなく、ボルトごと外れてしまいました。いいんだろうか。

エキパイを固定するボルトが固着している。
熱が入るところなので仕方ないです。
そんなにしょっちゅう外すところでもないし。
ここまでくればあと少し。


 次にチャンバーに隠れて外せなかった右側のパーツを外します。
 シリンダーヘッドからキャブレターへ行っているバイプ2本、クランクケースへ行っているパイプです。
 さらにキャブレター本体とプラグとフレームから来ているエンジンハンガーのボルトを外して完了。

 シリンダーヘッドは5本のナットで固定されています。5本を順番に少しずつ緩めて、ヘッドを外し・・・外れません。シリンダーのスタッドボルトが長くて、ヘッドとエンジンハンガーが干渉します。
 なので、エンジンハンガーをフレーム側から外します。あー面倒くさい。

外れたよ、シリンダーヘッド。


 外したシリンダーヘッドを見てみると、結構カーボンというかスラッジが付着しています。特に排気側。
 スラッジを爪でカリカリとしてみたら、何となく落ちそうだったので、燃焼室に傷を付けないように落とせるだけ落としました。
 同様にガスケットの残骸もスクレーパーでこそぎ落とします。

シリンダーヘッドを外したところ。
ピストンは下死点付近。

シリンダーに縦筋が見えます。
ピストンが上死点付近に来た
状態。

なんじゃこりゃ、なピストンヘッド。


 シリンダーは抜き取るだけなので、簡単。
 画像に見えるシリンダーの縦筋ですが、実際に指で触ってみても傷になっているわけではなさそうなので、そのまま使用することにします。っていうか、傷が入っていた時のことを全然考えていませんでした。
 ちなみに新品シリンダーは廃盤となっています。

シリンダーまで外したところ。
ピストン、すごいことになってますねー。
クランクの状態。
思っていたより綺麗。
ピストンを外すために養生したところ。


 ピストンが酷い状態であることはある程度予想できましたので、現物を見ても、あーこんなもんか、くらいにしか思いませんでしたが、クランクがどんな状態なのかちょっと心配でした。
 恐る恐る覗いてみると、思ったより綺麗で一安心。いや、見た目が綺麗ならそれでいいとかいう問題じゃないんですけどね。

 クランクケースとシリンダーの間のガスケットの残骸をクランク内部に落とさないように剥がします。

 ここまでやったらピストンを外すためにクランクケース周りをウェスで養生します。
 サークリップを外してピストンピンを抜き取れば、ピストンが外れます。コンロッド側にあるベアリングも外します。

抱き付いたピストン。
ピストンリングが役に立っていません。
左:新品ピストン。
右:言うまでもなく抱き付いたピストン。


 外したピストンを見てみると、ピストンリングが用を成していませんでした。今回の抱きつきとの因果関係までは私の知識では判りませんけど、相当圧縮漏れを起こしていたのではないかと想像しています。

 シリンダーとシリンダーヘッドの水路に水垢というかスラッジが沢山付いていたので、これを綺麗にしてから組み立てに向かいます。
 シリンダー壁面やピストンなどに2サイクルオイルを塗ってから組み立てです。ばらした時と逆の手順で組み立てるだけなので、画像はありません。

 ついでというか、今回の抱きつきの原因の一つであるキャブレターのメインジェットとパイロットジェットをそれぞれ一段濃いもの(M/J:#100→#105、P/J:#20→#22.5)に交換。

 組み立てが終わったところでエンジン始動。ドキドキな瞬間です。
 おっ、エンジン掛かったぞ。

 ようやく一息つけました。

 引き続きラジエターの洗浄を行います。組み立てたときに付着したオイルのギラギラが無くなるまで水を回し、MoCOOLを5%添加したクーラントを充填して完了。

 連休明けから通勤に使用しているのですが、一発目のインプレッションは5月13日付けのブログに掲載していますので、それを転記します。

ピストン周り一式を交換したTDRですが、交換後今日までに通勤で3往復使ってみました。
いきなり全開というわけにもいかないので、およそ6,000rpmを上限としています。

で、感想を少々。

(1)トルクバンドが1,000rpmくらい下側へ広くなった。
(2)回転の上がり具合が若干鈍い気がする。
(3)でも、6,000rpmを超えると勢いよく回ろうとする。

といった具合です。

昨年秋に抱きついたピストンは、さすがに使い物にならないくらいの状態になっていたのですが、シリンダーはどうやらそのまま使えそうだったので、迷うことなく使っています。
トルクバンドが広がったというよりは、単純に新車の状態に近づいただけなのでしょう。当然ピストンリングも新調していますので、圧縮が元に戻ったのが一番の原因かと。これまでは6,500rpm以下が使い物にならなかったんですが、5,500rpmくらいから実用的なトルクを発生するようになりました。なので、上限6,000rpmくらいの現在でも普通に走れています。
回転の上がり具合が鈍い件は、パイロットジェットもメインジェットも一番手濃くしました(P/J:#20→#22.5、M/J:#100→#105)ので、当然といえば当然のことかも。
それでも6,000rpmを超えた辺りから吹け上がりが鋭くなってきますので、もう少ししたらどこまで回るのか試してみることにします。

ちなみに燃料消費量は、2往復で4.92リットルでした。2往復目の往路(スタンドが会社の近くにあるので、往路が帰宅路になる)で市街地を余分に走ったので、その分燃料も余分に消費しているはず。何しろ信号にことごとく引っかかって、その度にほぼ全開(なるべく6,000rpmまでで)加速でしたから。

(2008.5.13「気が付けば絶版車blog版」より転載)


 その後、寄り道をせずに純粋に通勤のみに使ったときの燃料消費量は、4.5〜4.9リットル/2往復程度となっています。フォーゲルのレベルに近付いてきたぞ。

 ただし、馴らしが済んで、8,000rpmくらいまで回したり、次のネタとなるチューニングを行った結果も入っていますので、ピストン交換だけでこうなったのかどうかの検証はできません。









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