スバルヴィヴィオ(SUBARU VIVIO)

(初稿:2000.4.10最終稿:2006.3.26)


 '94年(平成6年)式RX-Rの4WDです。
 事の起こりは'99年春先のこと。我社の娘のVIVIOが不調を訴え、不具合箇所を直している時に調子を確かめるために試乗を繰り返し、「VIVIOっていいなぁ」と思うようになってしまったことです。(その時の様子は別コーナーのプラグとエアクリーナーを交換したレポートを参照して下さい)
 で、それ以降、その娘に「クルマ替える時はVIVIOを私に譲ってね」と、くどいほどお願いしていたかいがあり、このたびプレオへの買い替えと相成りましたので、めでたく譲っていただけたという次第です。
 さて、私はスバル車のオーナーとなるのが初めてで、これまでとりたててスバルのクルマに興味があったわけでもなくヴィヴィオの成り立ちについて蘊蓄をかたむけるだけの知識があるわけでもなく、ただ単にこのヴィヴィオというクルマが好きになったので手に入れたかったというだけのことなのです。
 私は既にシトロエンAXとスズキCARAを所有していますので、これ以上のクルマが必要な訳でもなかったのですが、じゃあ何でわざわざ買ったの?と言えば、「母親のアシグルマとして」ということになりますね。
 私の両親は一週間に3度必ず高山市まで出かけるのですが、その途中にある「十三墓峠」(通称:正式名称は大坂峠)の上りで、母親曰く「セルボ(モード)は力がない。3速で上れん。」とのたまうのでした。普通、3速でストレスなく上れるクルマって少ないんですけど、その峠。じゃあ、ってんで、私が買ってあげることにしました。3速で上れるクルマ。それがヴィヴィオです。セルボモードは買い取られていくことになりました。

 最近はインターネット上にいろんな情報がありまして、ヴィヴィオについても例外ではありません。事前学習には充分以上の知識を蓄えさせていただきました(耳年増になったともいいますね)。
 それによると我が家のヴィヴィオは2度目のマイナーチェンジ後の「C型」ってやつらしいです。それまでとの大きな違いは、
(1)ドアミラーがボディ同色から黒になった(普通逆だと思うんですけど)。
(2)リアに3点式シートベルトが付いた。
(3)リアのスプリング形状が変った。
等々、結構それ以前のヴァージョンとは異なっているようです。
 当時の東京地区標準価格が132.8万円です。CARAが151.3万円でしたから、相当お買い得と言える価格設定ですね。

 最初からVIVIOにあって、CARAに無いものは、
(1)パワーステアリング(これはクルマの性格からいってCARAに無いからどうというものでもありませんね)
(2)パワーウィンドウ(CARAに付いてたら笑っちゃいますけど)
(3)リモコンドアミラー(AXのところで述べたとおり、小さなクルマに必ず必要(?)なものとは思っていません)
(4)ABS(確かCARAには設定がなかったはず。AZ-1にはありましたけど)
(5)革巻きステアリングとシフトノブ(これはうらやましかったりします。直接身体に触れるところなので)
(6)アルミホイール(純正品は重いですけど、鉄よりはましかな)
(7)エアロパーツ(CARAは絶対的な空気抵抗は少ないですけどね。というか、エアロパーツは普通空気抵抗増やすだけですけど)
(8)4WD(この値段で4WDですからね。ビスカスを使ったスタンバイ4WDではありますが)
(9)リアシート(…こらこら)
等々、値段を考えたら破格の装備ですね。この辺が大衆車ベースのクルマと最初から数売れないことを前提に作られたクルマとのコストの差なんでしょうか。
お気に入りのシート

 VIVIOがホントにすごいと思うところは、
(1)シート。少なくともCARAの見た目だけバケットで実はホールドさっぱりダメシートなんかより数段ましです。インプレッサWRXのシートも評判いいようですし、スバルは金かけるべきところがわかっているようです。
(2)あえてスーパーチャージャー。実用性からいったらターボよりトルクの出方がより自然ですから、極限のホンの少しの性能アップより実用域での扱いやすさに重点を置いた選択はスバルの良心を感じます。
(3)4気筒がギミックでないエンジン。これはスーパーチャージャー抜きでは語れないとは思いますが、ホント、日常使用する回転域では全てがスムーズです。トルクもちゃんと出ています。不思議なのはバイクを作っている(小排気量マルチなんて得意中の得意なはずの)スズキやホンダが4気筒エンジンを持っていないということです(スズキはF6Bというエンジン持ってましたけど、やめちゃいましたよね)。ですから、スバルやダイハツに4気筒エンジンがあるから技術力が高いなんていうつもりは毛頭ありません。
(4)高い剛性の足回りやボディ。今まで私が乗ったことのある軽自動車の中では恐らく一番です。スバルは金かけるべきところがわかっているようです(さっきも言いましたけど)。
(5)ヒーター。良く効きます。びっくりです。CARA(リアエンジン/フロントラジエーターの、と比べるなってか?)の3倍の速度でフロントウィンドーの霜を溶かします。本当です。積雪寒冷地ではありがたいです。暖気運転時間も短くて済みますし。地球にも懐にも優しいクルマです。
ちょっと見にくいですけど、ホイールハウス
が室内幅の1/4以上を占めています。ハッチ
の開口部が狭いのもうなずけます。

 ちょっとホメ過ぎなような気もしますが、これが私の率直な感想です。が、反面「う〜ん」と首を傾げざるを得ないところもいくつかあります。
(1)エンジンのレスポンスが悪い。これは「悪い」と呼んで差し支えないでしょう。たぶんスロットルの位置に起因するものだとは思っていますが、何故エアクリーナーボックスにくっ付いているんでしょう。インジェクションなんですから、どうせ空気量の調整をするだけだろうに。吹け上がりの悪さには少々目を瞑っても、回転落ちの悪さだけは許せません。せっかくの4気筒+スーパーチャージャーが泣いてます、これじゃ。
(2)純正装着タイヤ。なんとミシュランMXTです。これ、転がり抵抗の少ない省燃費タイヤとして売り出しているものです。タイヤのトレッド面が硬いくせにサイドウォールは軟らかいときてますから、RX-Rの固められた足には全然マッチしていません。実はCARAにもしばらく同じタイヤ履いていました。なぜなら、RX-Rが標準装着していたタイヤだからです(まさか自分がRX-Rのオーナーになるとは思っていなかった頃の話です)。…全然合いませんでした。ひょっとすると4WD+加給器の燃費の悪さをカバーするために省燃費タイヤ履いてるんじゃないかと勘ぐりたくなってしまいます。と言いつつ、現在はセルボモードに履いてたMXTをそのまま履いてるんですけどね。このタイヤ、なかなか減らないんですよ。次は減ってもいいからRX-Rの性格にマッチしたタイヤにしようかと考えています。
(3)4輪ストラット。普通、良いところに上げられそうでしょ?違うんですよ。まず、RX-RはVIVIOの中でも特殊なグレードであることはご承知置きください。そうでない普通のVIVIOにとって何が大切でしょう。第一に広い室内とラゲッジスペースではないでしょうか。他社の同クラスのクルマが押し並べてリアにリジッドサスペンションを採用するのには、広いラゲッジスペースを確保するためという目的があります。勿論、コストも大きな要因でしょうが。私、最初にリアのハッチを開けて愕然としました。狭いんです、荷室が。ストラットの構造上、高さと幅をとることは避けられません。これがそのままラゲッジスペースにせり出して、結果非常に使い勝手の悪そうな荷室を作り出しています。操縦性云々の話になっても、リジッドサスなら理論上対地キャンバー角の変化は起こりません。すなわちタイヤの性能を常に発揮できるわけです。ベース車が大衆車であることを考えると、私的にはアルトやミラの選択の方が正しいという気がします。VIVIOにRX-Rというグレードしかないんだったら、また違った評価になりますけど。実際、いい足ですし。

 とりあえず、メインで使う両親のファーストインプレッションは上々でした。「チカラがある」(そりゃそうだ)「身体が揺すられない」(少し硬い足+シートのおかげ)。つまるところ、それでいいのではないでしょうか。いい買い物をしたと思っています。


(2006.3.26追記)
 我が家へ来た時の走行距離がおよそ43,000kmだった1号機も、2005年には150,000kmを超え、母親もそろそろ違う車に乗りたくなったようです。
 そんな2005年4月のとある日、スバルの中古車専門店が新聞の1面広告を出していました。しかもカラーで。何気なく見ていると「H8年式RX-R39.8万円」とか書いてあるじゃないですか。さっそく電話してみました。

 というわけで、早速見に行ってきましたよ、岐阜市まで。
 で、その場で即決。
 1号機と同じH6年式KK4で、色は黒。ワンオーナーで走行距離は約29,000km!。試乗時のシートのへたり具合やショックアブソーバーの減衰力の残り具合から走行距離に偽りは無いと判断しました。事故車ではないとの事ですが、見た目では判りませんから、そのまま信じるしかないですね。
 1号機との唯一の違いはABSが付いてないこと。しかし、その後走行を重ねるにつれ判ってきたことなんですが、ABSが付いてない方がブレーキのフィーリングが数段いい。1号機で感じたブレーキの甘さはABS(のユニットというか回路)が邪魔をしていた可能性があります。とにかく2号機のブレーキは違和感の無い普通のブレーキです。
 それと、2号機はやたらテールが出ます。特に左コーナーで。おそらくトーの調整でニュートラルな感じにできるとは思いますが、左右で操縦性が違うというのもなんだかなぁといったところです。この状態では怖くてコーナー攻められません。私のような素人にはアンダー気味のほうが安心して走れますね。

 今さらながら10年以上前の車に込み込みで60万円以上のお金をかける価値があるのかどうか、という疑問は付きまといますが、何しろ実質的なオーナーの母親がヴィヴィオを気に入ってしまっているのだから仕様が無い。
 で、ヴィヴィオのどこがそんなにいいのかというと、(1)動力性能(2)雪道の走破性(3)取り回しのよさ(4)MT、なのだそうです。同じ660cc64psのエンジンでも、旧規格でかつミニバンスタイルでない小さく軽いボディならその能力を充分に生かすことができますし、取り回し性もいいことは想像に難くありません。雪道の走破性は、さすがスバルといったところでしょうか(私的には初代アルトがFFのくせに見せたあの走破性のほうが余程すごいと思っていますが)。MTは、運転歴40年の母親には必須らしいです。ATは怖くて運転できないんだとか。
 安全性が叫ばれて、軽自動車といえどもそれを蔑ろにはできなくなり、新規格へとサイズアップしたわけですが、実際のところサイズアップされた寸法がそのまま安全のために使われているかというと、甚だ疑問ではありますが。新規格車のあの短いボンネットや相変わらず薄っぺらなドアを見ると、安全性向上なんていうのはサイズアップによる室内空間の確保のための方便だったのではないかと、今さらながらに勘繰ってしまいます。
 我が家のように1台多人数乗車ができる車があり、軽自動車は個々の日々の足にしか過ぎないという使われ方をする限り、新規格の大きくて重いボディは全ての面で邪魔以外の何者でもないわけで、次に買い替えるときは小さな普通車(マーチとかスイフトとかルポとか)になりそうな予感がします。

(2号機の画像はいずれアップします)







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