過去の雑記 00年10月

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10月11日
『ウンベルト・エーコの文体練習』読了。予想以上にわかりやすいパスティーシュが多く、ちょっと驚いた。とりあえず、『クオレ』の「悪役」(多分)フランティを痴愚神のように礼賛する「フランティ礼賛」がベスト。いや、『クオレ』読んだことないけど。

10月12日
ディスカバリー打上げ成功。シャトルの打上げをリアルタイム中継で見たのは初めてだな。しかし、いくら100回目の記念だからって、「ツァラトゥストラかく語りき」の演奏というのはどうか。> NASA-TV
今年はまだ2000年だ。

SFM11月号読了。ゲイマンのアーバン・ファンタジーが心地よかった。老婦人が出てくる短編に悪いものはないね。
連載では、牧野修の「傀儡后」に驚かされた。今回話が終わってないんだけど、連作じゃなかったのか、これ。
小説外では、巻末の作家が選ぶ文庫SFベストが興味深い。あまりにもそれらしい作品を選ぶ人、外そうという意志が見えすぎて苦笑を誘う人、脈絡が全く見えない人、そもそもコンセプトを理解しているかどうかもわからない人など、リストを見ているだけでもかなり楽しめる。
それはそれとして、この手の記事で集計をしないとは怠慢である、と思わず集計を始めてしまったのだが、いきなり大後悔。てんでバラバラで面白くもなんともありゃしない。何百番台が最も多く選ばれているかとか、どの作家が一番好まれているかのような集計をしないと駄目なようやね。
順位を気にせず投票した作家数だけを数える方法だと、一番人気は『バベル-17』『竜の卵』(5票)。文系ハードSFと理系ハードSFの代表作が並ぶってのはいくらなんでも出来すぎだろう。シリーズ単位(シリーズ構成作品への投票はシリーズへの投票として集計)だと<ノウンスペース>、<ウルフガイ>、<エルリック・サーガ>、<人類補完機構>の4シリーズが仲良く5票。<エターナル・チャンピオン>という裏技を使ってもムアコックが抜け出せないのは残念。<コルム>の面白さがわからないようでは、この連中もたいしたことが無いな。< ありがちなイタイ発言
高評価で当然の<ジェイムスン教授>はともかく、<渡り鳥都市(オーキー)>が<ホーカ>と並んだのは意外。今の若者の間でアンケートをとったら絶対出てこないタイトルのような。いや、3票なんだけどね。

シーズンも終わり各種人事は本格化。監督が代わる横浜では、コーチ陣の退団が発表された。今回退団するのは、山下大輔ヘッド兼内野守備走塁コーチ、大谷幸弘トレーニングコーチ、山下和彦バッテリーコーチと湘南シーレックスの小山昭吉バッテリーコーチ補佐。高木由一打撃コーチが残留なのは心強いが、98年のシーズン、佐々木の壊れかけた腰と肘を1年持たせた大谷コーチが退団するのは痛い。内野守備コーチが山下から豊になるというのも不安だな。だいたい、今年の成績で投手コーチが留任というのはどうしたわけだ。とりあえず一軍投手コーチとして、権藤博の招聘を希望。

ちなみに選手の方もけっこう大きく代わる。大物だけでも、ローズ、島田、荒井、駒田が退団の予定だ。退団者の中で最も気になる名前は島田か。先発陣の再生がなったとしても、五十嵐が不調で、島田を欠くとなると、どうやって試合を組み立てるのか見当もつかない。ああ、佐伯あたりで誰か中継ぎ左腕がとれないものか。
野手を見るとローズの穴がやはり大きい。石井琢(1 SS)、鈴木尚(3 LF)、谷繁(8 CT)、金城(2 3B)、進藤(7 2B)は確定として、守備位置は、センター、ライト、ファーストが未定、打順は、4、5、6番が未定となる。候補者は中根(5or6 OF)、波留(1or2 OF)、佐伯(6 1BorRF)。うーむ。このラインナップだとどうやっても4番が足りないなあ。4番一塁がつとまる外国人さえ呼んでくる事が出来れば、石井琢(SS) 波留(CF) 鈴木尚(LF) 新外国人(1B) 中根(RF) 金城(3B) 進藤(2B) 谷繁(CT)という比較的常識的な打線が組めるんだけど。

10月13日
初めて柏から仕事場に出社。むちゃくちゃ乗り継ぎが上手く行き、行き帰りとも90分しかかからなかった。ああでも、柏から荒川沖まで立って行かねばならないのは大変な事であるなあ。なぜ、千葉から茨城まで通わなければならないか。> 学生諸君

テレビ周りのレイアウトも含め部屋はどうにか整理終了。微修正はあるだろうけど大筋はこんなもんだろう。これでいつ誰が遊びに来ても大丈夫。いや、しばらく土日は部屋にいないけど。

レイアウトのポイントは色々あるが、やはりスチール書棚の導入が最大のトピックか。棚のたわみを気にしつつ本を買う生活ともこれでおさらばである。問題は畳のたわみだが。

しかし、雑誌や漫画をひっくるめたところで、せいぜい1000冊は越えるという程度のうちでこの調子なのだとすると、1万冊を越える一人暮らしの人というのはどうやって生活しているのだろう。どうしてます?>小松さん(8) & どうしてました?> 加沢さん(4)

そういや、西川魯介の『初恋★電動ファイト』を読んだ。これが手に入る当たり、柏の本屋も捨てたもんじゃないね。模型と精神が入れ替わってしまうというだけでも随分なのに、あまつさえ模型の心が入った少年とやってしまう話など、例によって素晴らしく頭の悪い作品が並んでいる。とりあえず、鴉に隠れて顔の見えない黒瓜先輩(名前は荒須太とかか?)が気に入ったので、登場作の単行本化希望。

10月14日
近所の本屋の性能を確かめようと色々まわるうちに、キネ旬のフィルム・メイカーズなんて手にしている自分に気づく。本当に世の中は油断がならないことである。しかし、その勢いでSFJapanを買うところまでは良いとして、怪獣魂VSメカ怪獣魂まで買う必要はなかったんじゃないか?>おれ

近所の高島屋のインド料理屋で遅い昼食。王将が無い、CoCo壱が無い、午後11時過ぎにやっている本屋が見あたら無いなど、致命的な欠点を露呈しまくっている柏だが、デパートが徒歩圏内に2軒ある生活というのは思いの他便利。ビリヤード屋兼卓球屋なんてのもあるし、意外と良い街かも。いや、別に卓球が出来ても嬉しくないけど。

10月15日
朝7時にテレビ東京で始まった「トムとジェリー」を見損なう。痛恨。しかし、どうもトム&ジェリーの声が昔と違うらしいあたり気になるな。……などと思っていたらとんでもない事実が発覚。真ん中の話が、テックス・エイヴリーじゃない!何を考えているのか、テレビ東京。確かにシルヴェスター&トゥイーティーも悪い作品ではないが、ドゥルーピーとは比較の対象にもならない事くらいわかっているだろう。テレビ東京には、このような文化破壊行為を即刻止めて昔のフィルムを忠実に再放送することを望む。

10月16日
所用で福岡へ。実は飛行機に乗るのは初めてだったりするのだが、目先にもっと深刻な心配事があったおかげで、不安も何も感じる暇が無かった。何か心配事があるときは、同等以上の心配事を作ると気にならなくなるというのは生活の知恵ですね。< そうか?

窓際の席でピーカンの空という好条件のおかげで、地上方向の視野は完璧。それはもう、小学生のように、「おお、信州の盆地地帯だ」「本当に渓谷沿いに集落が広がっている!」「湖北と敦賀湾が一望できるとは!!」と(心の中で)騒いでました。いや、しかし。集落というのは本当に川沿いに出来るものだったのか。

心配事もどうにか終わり、ホテルに行く。「中洲で飲んで風俗に繰り出すという「オヤジの出張」を体験だ」と心に決めていたのだが、ホテルのすぐ傍に聳える巨大なオヤジの顔に、そんな計画は粉砕された。よりにもよって、宿から徒歩1分なんて場所に、まんだらけがなくても。これではいつもの「おたくの出張」でしかない。
「まあ、仕方が無いから寄ってはやろう。でも、夢路行を探すだけだ」と、目標を絞り速攻で探索を終えようと思ったら、この作戦も開始後すぐに潰された。なんで、『マイルド寿庵』なんて置いてるかなあ。
その後も、イダタツヒコ『ブレイド』3巻、不可知『D.A.』など、かなり負けた気がするタイトルを見つけ、敗北感に打ちひしがれつつ店を出ようとしたとき、目の前にあった本は柴田昌弘『ミッシング アイランズ』なのだった。この上、ハナアルキ漫画まで買えという事か。買うけどさあ。
目的の夢路行が1冊も(『鈴が鳴る』『夜話』さえも)見当たらなかったというのに、4冊も買わされるとは。古本屋だけは油断できない。

そんなこんなでいい時間になってしまったので、開き直って王将スタンプラリーのため努力する事にする。事前の下調べによると、福岡市中央区の王将は平尾駅前店と吉塚駅前店の2軒。地下鉄天神駅/西鉄福岡駅からのアクセスが良いのは平尾駅の方らしい。というわけで餃子定食を食うためだけに電車に乗って、平尾駅へ。しかし、餃子の道は修羅の道。30分にわたってうろついてみても、見つかったのはBook Off風の古本屋だけだった。

そんなこんなで強い敗北感に打ちひしがれつつ、宿の向かいの店で遅い夕飯を摂る。ああ、なんで福岡まで来てCoCo壱でカレー喰わにゃならんかな。

10月17日
夕方過ぎに所用も無事終わり、福岡から戻る。帰りはずっと曇っていたので太平洋岸の景色を楽しむという野望は果たされなかった。眼下に広がる雲海も、これはこれで見物ではあるが、いかんせん20分も見ていると飽きてくる。だからといって、テトリスもどきをし続ける事も無いと思うが。> おれ

アル・サラントニオ編『999 聖金曜日』(創元推理文庫)読了。ベストは、マイケル・マーシャル・スミス「無理数の話」。rational、irrationalといった日常語としても数学用語としても使われる言葉を多用し、双方の意味を交錯させる中で主人公の混乱した精神状態を描いていく技巧的な短編。その性質上、ほとんど翻訳不可能と思われる作品を、ルビと併記を駆使して上手く日本語にしている。ただ、328頁の「10から20までの素数は、13、17、19だ」という記述は気になった。主人公の混乱を示すための仕掛けなのか、作者のケアレスミスなのか。11は「国道11号線」という記述に登場するくらいで、主人公が数字自体に拘りを示す描写が無いので、前者ではないと思うのだが。ひょっとしたら、teensを訳しすぎたために発生した誤訳という可能性もあるが、原文が手元に無いのでよくわからない。かなり厳密に組まれた繊細な作品だけに、(誰のものにせよ)ミスだとすれば惜しまれる。
他で気になったのは、アメリカ南部の民話をモチーフとしたナンシー・A・コリンズ「ナマズ娘のブルース」、抑えた筆致で描かれた異様なイメージの奔流ラムジー・キャンベル「ザ・エンターテインメント」、やりきれない哀しさがありきたりなテーマを救うP・D・カセック「墓」など。
不思議だったのはデイヴィッド・マレル「リオ・グランデ・ゴシック」。細かい伏線がちゃんと張られ、こちらもそれを意識しているのに、それが暗喩として活きてこない。おかげで、ネタを割る部分がただ白けるだけのものになってしまっている。必要な要素は揃っているのに、なんでこんなにつまらないんだろう。
とはいえ、退屈だったのはこれと表題作くらい。短めの話に面白い作品が揃った良い巻だった。

深夜に我慢しきれず福砂屋のカステラを開けてしまう。ああ、ねしま(多分、名古屋弁)にこんなもん食っちまったら、さぞ体に悪かろう。とはいえ、開けてしまったものは仕方が無い。ともかく牛乳かなんかでさくっと食って寝てしまおう。湯を沸かし、ポットを暖め、カップを暖め……、なぜ本気で紅茶まで入れているか。>おれ

10月18日
先日買い込んだマンガなど。

不可知『D.A.』(富士美コミックス)はただの出来の悪いエロマンガ。初単行本だけあって、『堕姫』に比べても、画、話ともに数段落ちる。特に語るべき内容はないが、巻末にやや込み入った乱丁があったのは驚いた。そうか、まだ乱丁ってのはあるんだね。

イダタツヒコ『ブレイド』3巻(ヤンマガKCスペシャル)は、発売当時怖くて買えなかったもの。案の定、僕の中の美しい『ブレイド』像を打ち砕かれてしまったよ。女性が姿を変える応身刀というアイデアを軸に、現代に蘇った剣客たちの闘いと、裏で暗躍する謎の企業の陰謀を描いてきた1、2巻は、あれほどどこまで広がるんだろうという期待感を与えてくれていたのに、それがこんな陳腐なまとまり方をしてしまうとは。いくら連載誌の廃刊という事態があったからって悲しすぎる。ああ、『ゴルディアス』はこうなりませんように。

柴田昌弘『ミッシング アイランズ』は、ただのSFホラーに終わらないちゃんとした鼻行類マンガ。ジェットハナアルキのエピソードなどに疑問は残るものの、鼻行類の異質な魅力を良く引き出している点は評価すべきだろう。

後藤寿庵『マイルド寿庵』は、拙い絵柄といい、放り投げたような落とし方といい、どうしようもなく後藤寿庵。いまさら読む価値はさすがになかったかも。

10月19日
いつになく早く帰宅したので、新星堂に寄って、ハルキ文庫数冊と、カッパから出たアンソロジーを買う。あらためて、この店の棚を眺めてみると、思いの外使いやすい。「幻想文学」のバックナンバーが並んでいるというだけでも十分評価に価するだろう。これで、せめて午後10時までやっていれば使えるのに。惜しいなあ。

10月20日
昼過ぎに起きて市役所に行ったり郵便局に行ったり銀行に行ったり。平日の昼間に用があるとき、夜勤は便利だね。

ふと気がつくと、ヒューストンのMCCからピカチュウが無くなっていた。いったいどうしたんだろう。

謎といえば、ミッション5日目のWake Up Call、"Camelot"("Monty Python and the Holy Grail"より)の選曲理由も謎。やはりパイソンズは世界の共通語なのか。

夜勤をしてたら風邪引いた。

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