過去の雑記 01年11月

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11月11日
どうもノリの悪い一日。仕事を一気に片付けようと思っていたのだが果たせなかった。困ったものである。

おまけに電話で大変気の滅入る話を聞かされたり。あれより落ちるというのは一体どうすればそんなことがあり得るのか。

そんなこんなでテンションが低かったのでやけになって色々と読む。

『また、つかぬことをうかがいますが…』(ハヤカワ文庫NF)読了。イギリスの科学誌の投稿欄をまとめた本の第二弾。前作同様つるつると読める。ときどきスピードが乗りすぎて理解しないうちに読み終えたりするのが難点か。概ね良い本だと思うがイラストの位置に不自然なものがあるのが気になった。

乾くるみ『マリオネット症候群』(徳間デュアル文庫)読了。評判通り。確かに中盤以降の展開はすごい。あからさまな伏線があるので落ち前のネタは読めているわけだがそんな些細なことは気にならないというか。イラスト、ページ数含めかなり好感が持てた。

<異形コレクション>『夢魔』(光文社文庫)読了。やっと追いついた。やや低調だった『幽霊船』に比べ遥かに質が高い作品が並んでいる。普段の基準で秀作を挙げていると冗長になるので数段選を厳しくするとして、田中哲弥「げろめさん」の上品な汚さ、深川拓「ゆびに・からめる」の妖しさ、平山夢明「怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男」の混乱した世界がそれぞれに秀逸。

11月12日
寒い。心のそこから寒い。ただでさえ利根川の北は一段寒いってのに雨まで篠突くのだからたまらない。だから寒いんだってば。

あまりに寒いんで一回休み。うたた寝して起きたら飛行機が落ちてたのには驚いた。

11月13日
ややいまさらパット・マーフィー『ノービットの冒険』(ハヤカワ文庫SF)読了。なるほど面白い。大まかなプロットやキャラ配置は丁寧に『ホビット』をなぞっており、徹頭徹尾ファンタジーの文法で書かれているはずなのに雰囲気はすっかりSF。ガジェットをSFにするだけでここまで効果があるとは。「SFとは物の見方だ」だの「センス・オブ・ワンダーだ」だのといってもしょせんガジェットにはかなわないんじゃという気分にさせてくれる始末に悪い佳作。

11月14日
これもいまさら北野勇作『かめくん』(徳間デュアル文庫)読了。穏やかに、微笑ましく、物悲しいのはいいんだが、ちょっとがんばって詰め込みすぎだろう。もう少し気合が抜けている方が好み。

11月15日
昨日、久しぶり(だいたい三日ぶりくらい)に本屋に寄る。入用の本を一通り買ったあたりで、態度保留としていたスティーヴァン・ジョーンズ編『インスマス年代記』(学研M文庫)を発見。上巻をぱらぱらとめくり回避しても良いかなと思っていたら下巻の目次に足元をすくわれた。キム・ニューマン、ブライアン・ステイブルフォード、デイヴィッド・ラングフォード、マイケル・マーシャル・スミス、ニール・ゲイマンじゃしょうがない。こんな微妙なラインナップを出してくるなんてホラーの人は卑怯だと思いました、まる。

ちなみに、なぜいきなり昨日の話なのかというと、今日はまとまった残業後、帰りのバスが事故渋滞に巻き込まれ、おかげで数分差で電車を逃し、30分待つ羽目になったので、悄然としつつ駅近くのコンビニによったが探したものは見つからず、あまつさえひいき球団が買収されてしまうという何も無い一日だったからだ。ああ、何も無かった。

11月16日
まあ、いいさ。買収されてっても関東企業だ。フランチャイズを動かすとは思えない。ヤクルトと同じサンケイグループってのは気になるが、TBS資本だって入ってるんだ。無茶なことは出来ないだろう。もともとベイスターズに好意的だったニッポン放送が本格的に参入するんだ。状況は良くなるほうに向かうはずだ。そう自分を説得しながら部屋を出ると、「横浜 ヤクルトと合併か」などという言語道断な見出しを掲げたスポーツ紙朝刊が目に入ってしまった。朝からなんて嫌な気分にさせやがる。

スポーツマスコミの観測気球は無視して、仕事を進めつつ本を読む。『NOVEL21 少年の時間』(徳間デュアル文庫)読了。どうにも、あと一歩感が強い。どれも最低の水準はクリアしているがそこを大きく越えてないというか。強いて一作取り上げるなら少年の閉塞を見事に描き出した菅浩江「夜を駆けるドギー」だが、あの2chそのままの陳腐なネット描写に耐えてまで推す価値があるのかと問われると悩む。

11月17日
11月半ばの土曜である。京フェスである。京フェスであるからには京都に行かねばならない。一コマめは午前中である。そんなこんなで平日よりも早い時間に起き出し、ノートパソコンだけ抱えて南に向かう常磐線に飛び乗る。眠い。

常磐線、山手線と睡魔と闘いつつ、どうにかこうにか午前八時東京発ののぞみに乗車。禁煙席、前より、富士山側という前日に予約したとは思えない好条件の席に座り、そのまま眠り込む。富士山側の意味、まったくなし。

しかし天の配剤は不思議なもの。スパムメールの到着を告げるPHSの振動に起こされたそこはちょうど富士山の目の前だった。起きてしまったものはしかたがないので富士の雄姿をしばし堪能。いや、富士よりは睡眠時間のほうが遥かに貴重なんだが。

再び眠りに着き、目を覚ますとそこは京都。荷物をまとめながらふと後ろを振り向くと、少し先に山岸真さんがいた。おお。先に京都にいたみらい子さんと合流し、会場に向かうタクシーに便乗させていただくことに。こんなありがたい偶然があるとは。日ごろから善行は積んでおくものだ。ああ、えーと、嘘をつかないとか。

会場到着後は例によって博史さん(8:名大暦、以下同)と合流し無駄話。行動の端々に新婚さんっぷりが見られるのが微笑ましい。そのうち野呂(17)、荒川(19)、堀口(13)も合流し、みんなでそこはかとなくかたまって座る。例によって例のごとくだな。

本会パネルについては諸般の事情で省略。というわけでいきなり本会は終了である。愛する奥さんのもとに急ぐ博史さんを見送った後、晩飯を食える場所を求めて放浪する。今日は南へ、明日は北。さんざん迷った末にたどり着いた洋食屋は芝蘭会館のさらに北だった。我ながら無意味な行動だとは思っているので突っ込みはご無用に願いたい。

合宿会場で知り合いに挨拶をするふりをして身内だけで語り合っていると、いつのまにやら7時過ぎ。オープニングが始まった。

例年なら小浜さんの司会のもとプロ、セミプロ参加者の自己紹介がえんえん続くオープニングだが、今年は時間が無いということで異様にさくさくと進む。30分以内に収めるというので、それは無理だろうと思っていたのだが本当に30分で終わらせてしまった。恐るべし司会の二〇年選手。

30分でおわらせた客席紹介の後は長丁場のオープニングクイズ。
まずは出演者を選ぶための全員参加早押しクイズ。形式的には今回の中で最も普通のものだったのだが問題に難。「R・A・ラファティ「カミロイ人の行政組織と慣習」で、立候補者が『対立候補は五である』と非難した場合、その意味は」だの、「コードウェイナー・スミス「人びとが降った日」で一日目に降ったチャイネシア人は何人か」だの、小浜家以外にわかるわけのない問題の連続。案の定、誰も回答できない気まずい状況が続いてしまったりしたのであった。まあ、問題自体は受けてたからいいんだけど。
で、ここで「J・W・キャンベル・Jr.の直前のAstaunding編集長は誰か」などというサービス問題がでたのでつい答えてしまったのが大間違い。厳密には間違っていた(×トレイメン→○トレメイン)のに壇上に上げられる羽目となった。クイズは5年前に卒業したはずだったのに。油断というものは恐ろしいものである。

そのうち、難問の中に隠されたサービス問題だったり、タイミングのよさによる一点突破だったり、圧倒的な実力だったりで出演者が出揃う。メンバーは野呂(17)、向井さん谷田貝さんらじさんの5名。らじさんを除いては直接面識のある方および奴だけという狭さ。いいのか、それは。

さて、出演者が揃ったところでメインクイズ。前半は観客を動員しての集団ジェスチャー。親が客席から所定人数を指名してジェスチャーをやってもらい、子がその内容を当てるという形式。2,3人ならともかく最大11人という動員人数はさすがに無茶だった気が。僕の問題は「「万華鏡」を11人(作中に登場する人物の数らしい(苦笑))で」だったので古手著名SFファンを中心に大量動員。指名している内に怖いもの知らず状態になっていたが後から考えてみるとあまりに勇気がありすぎた気がしてくる。よくあの人やあの人を指名する勇気があったな。 > おれ

一回りジェスチャーが終わったあとは後半の「何とかといえば」。「何とかといえば」というお題に対して出演者が回答し一致した人が多いほど高得点が入るというもの。なんせ知っている人が多いのでこれは楽勝。概ね野呂に合わせておいて、野呂との点差を広げるべき局面では向井さんに振るという方法で地道に得点を重ねる。結果、僅差の逃げ切りで優勝。なんだかんだいって京フェスクイズの優勝は初めてなので実は結構嬉しかったりしたのだった。しかし僕ももう、自分が最初に参加したときの小浜・三村・山岸世代の年齢なのである。後進に道を譲るためにもちゃんと引退せねばと思ったことでもあるよ。

はっ!それとも後進が乗り越えるべき壁としてしばし立ちふさがるべきなのか。どう思いますか? > 同様の問題を抱える鈴木力さんとか

クイズ終了後は主に細井さん、かつきさん、山岸さんと、立ちよる人にアンケートを依頼しながら<20世紀SF>話。かつきさんが、全作ワープロ入力をしなおしつつアンソロジーを編んでいたという話に、みな呆然とする。いくら短篇好きでもそこまでやる人は滅多にいないと思う。細井さんは初めて見るほどのノンストップモード。何かというと「小一時間問いつめたい」と来るので、聞いてみたら、実は2ちゃんねらー(書き込み経験あり)という事実が判明したり。まったくもって世の中という奴は油断ならない。

一応、企画にも参加せねばということで、「アンサンブルの部屋」に参加。話の流れに執着せず、興味が向いた話題に話を振る細井さんの仕切りが面白かった。

企画から戻ってからも大広間でだらだらと会話。そんなこんなのうちに寝部屋を確保し損ねたので5時過ぎに大広間で仮眠。気がついたら組長が挨拶していたよ。

11月18日
合宿明け。混雑が強く予想されるからふね屋を避けて朝食を摂ろうという加藤逸人さん、山岸真さん、福井健太さんの後を追い西に向かう。もちろん堀口(13:名大暦、以下同)、野呂(17)、荒川(19)の名大組も一緒だ。イベントにおける名大勢は不可分なのだな。< なさけなくないか

本会会場下の喫茶店で朝食を摂った後、東に移動するメンバーで京都駅へ。他の人と別れてみやげ物を買い、新幹線の予約を取り直して戻ると同じ車両に山岸さんがいたのにはさすがに驚いた。それはいくらなんでも偶然に過ぎるのでは。

帰り道は為すことなく熟睡。上野駅構内の書店に立ち寄った以外は寄り道もせず柏に戻り本格的に眠る。寝っぱなしである。

夜中に起きて獅子座流星群を見物。あまりの寒さに体調を慮って15分ほどで切り上げてしまったが、それでも数10個の流星を見ることが出来た。3年前には1時間半で4個だけだったことを思うと今回がいかに壮大だったかがわかる。良い体験をした。

ああ、ただ火球と言えるほどの奴は見てないんだよなあ。これが大きな心残り。うむ。

11月19日
会社の創立記念日の振替休日(そういうものがあるのだ)で休み。京フェスの疲れと流星群見物による睡眠不足を解消するため始終だらだらして過ごす。だらだら。

だらだらの合間に近所の本屋で昨日買わずにおいた恐竜ものを探すが見つからず。都会の本屋に行かなきゃダメなのか。それは効率が悪いなあ。

夜、あまりに寒かったので近所の鳥料理屋で鍋を食べる。一緒に注文したもも焼きがレアだったのでかなり心配していたがありがたいことに杞憂に終わった。次は謎の地鶏ソーセージに挑戦だな。うむ。

11月20日
近所の書店でやっと見つけたエリック・ガルシア『さらば、愛しき鉤爪』(ソニーマガジンズ ヴィレッジブックス)購入。これが噂の恐竜ハードボイルドらしい。

そうか噂なのか。

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