過去の雑記 98年2月

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2月1日
本格的に、ウェブページの作成をはじめる。この雑記がどの程度のテンポで更新されるか、また、どんな内容になるかはまだまったく決まっていない。とりあえず、目先の仕事から逃避することだけがこれを書いている目的だな。
きょうのSFな出来事といえば、「インターネットで選ぶ全日本小説大賞98」に投票したことくらいか。ちなみに投票内容はこんな感じ。
      海外                   国内
    リトル・ビッグ      +7 三月は深き紅の淵を +6
    火星夜想曲          +4 星は、昴           +5
    花粉戦争            +4 光の帝国           +4
    フィアサム・エンジン+4 人獣細工           +4
    女王天使             0 架空の町           +4
97年は『リトル・ビッグ』と恩田陸の年だったというところかな。


2月7日
東京に来ていた田中と会い、モンコレをプレイする。さすがにプレイ経験の差が物を言い、全勝するが薄氷の勝利も幾つか。あいかわらず、自分のゲーム感が悪いことを痛感。なかなか、勝負所というやつを見抜けないんだよなあ。
その後、二人で神保町に行き、いくつか本とシングル・カードを買わせることに成功。人に無駄金を使わせるほど楽しいことはない(笑)。
三省堂で、SF-MLで話題の「ソレマンの宇宙艇」を発見。平積みだったんだけど、じつは、今ホットな作品なんだろうか。


2月8日
昨日、竹橋→神保町→水道橋→飯田橋と寒空を歩いたのが祟ったか、すっかり風邪気味。しかたがないので、ウェブページの調整をして一日を過ごす。手を掛け続けると無限に時間がつぶれそうなところが怖い。どの辺で見切りをつけるかが問題だな。


2月11日
松谷健二が死んだらしい。これで最近の日本のSF関係者では、藤本弘、星新一、石森章太郎に続いて、4人目になるだろうか。前の3人に比べると、正直、感情面での衝撃はもっとも弱い。
それはそうだ。『バケルくん』に『21エモン』、『サイボーグ009』、そしてなにより星新一のショートショート群といった作品とは違ってローダンシリーズにはなんの思い入れもないのだ。
しかし、じつはジャンルに与える影響は最大じゃないかと思っている。80年代半ばに事実上引退していた星新一、ここ数年は『ドラえもん』しか描いていなかった藤本弘、『サイボーグ009』の新作が噂されていたとはいえ、実質SFマンガから撤退していた石森章太郎、この3人とは違い松谷健二はバリバリの現役だったのだ。しかも、ペリー・ローダンは年間10冊が出版され、そのそれぞれがハヤカワ文庫SFでは売り上げ上位なのではという(少なくとも名大生協では最高だった)人気シリーズ、この影響は小さいとは思えない。確かに、創作者が亡くなったわけではない。別の翻訳者が引き継ぎさえすればなんとかなることではある。とはいえ、翻訳しても何の権威になるわけでもないエンターテインメントのシリーズを年10冊前後も訳せるほど、ドイツ語翻訳の層が厚いとは思えない。これを契機にローダンの刊行がストップし、部門全体での売り上げ減からハヤカワ文庫SF自体の刊行が止まるなどということが無いよう願うのみである。

話はすっかり変わって、「万能文化猫娘」を見た。恐ろしいまでのできである。狂うデッサン、ド下手な演出、頻出する明らかな手抜き、そしてなにより立ってないキャラ。アニメというジャンルは明らかに自家中毒をおこしているようだ。ここには、70年代から80年代にかけてTVアニメが培ってきた文化は何も活かされていない。あるのはただ形骸のみである。中3でアニメ誌を買うのをやめてからアニメに対する執着は無くしてはいるが、昔好きだったものが無残な姿をさらすのを見るのは悲しいものだ。世の「抜けSFファン」もこんな気持ちなんだろうな。

その後、「Dr.スランプ」を見る。スッパマンの声が古谷徹というのには笑ってしまったが作品としてはよくできていた。まあ、原作そのままなので当たり前といえば当たり前なのだが。いまさらながら、当時の鳥山明の素晴らしさには感心する。


2月12日
高田馬場芳林堂によると早川の98年1月目録が出ていたのでもらって帰る。

相変わらず恐ろしい勢いで目録落ちが生まれており、ほとんど笑うしかない状況である。なんせ、新規掲載(復活含む)が41冊(上下巻別)で、目録落ちが77冊なのだから。明らかにSFの倉庫自体が痩せている。文庫SFの全掲載数が400冊程度だから、1割減ったわけだ。

記念再刊で載っていたのが落ちただけの『類猿人ターザン』『征服王コナン』『宇宙嵐のかなた』<星間パトロール>なんてのはともかくとしても、アンダースンの『タイム・パトロール』を落とすなどかなり衝撃的なこともやっている。特に情けないのが、『ありえざる都市(1-3)』『女の国の門』『アリアドニの遁走曲』あたり。

この辺は、ここ数年の路線が軒並み失敗していることを証明してるようなもので、ここんとこでまともに成功してるのなんて、固定ファンだけを向いてる<宇宙大作戦>とマキャフリイとヴォネガットだけじゃないかという気すらする。実際、巨匠の再刊路線すら『獣の数字1-3』という脱落者が出てしまった今、早川の頼りはローダンだけなんじゃないかと思うと、それも結構後がなさそうだし…。早川のSF部門って、2000年までもつんだろうか?


2月13〜14日
山本正之MLのライブチケット購入オフに参加。徹夜でカラオケなどしてしまう。7人で8時間、しかも最初の3時間は全員で合唱ってのはだれも朝まで保たないから止めたほうがいい。情けないことに午前3時には高音部が、午前5時には声自体すらろくにでなくなってしまった。

このカラオケで「絶対運命黙示録」と「バーチャルスター発生学」をはじめて聞く。へんだ。歌詞だけ見たときにはYAPOOSかと思った。おもわず帰りがけにアルバムを買ってしまった。

チケット購入後、八重洲ブックセンターに寄ろうとして、途中の古本屋でハヤカワ ハィ!4号を買う。SFMの別冊だからあきらめて見つけたら買ってはいるが、あまりにもレベルが低い。なんでこんな雑誌が10何号も続いたんだろう。

14日正午に帰宅。メールチェック後「ウテナ」のサントラを聞きながら寝る。 うむ、へんだ。


2月15日
前日午後11時起床。13日に広告を載せた大森望掲示板にフォローがついている。ファンジンのチェックはやりたいけどさあ。『世界の終りと物語の始まり』がいつどこで出たのかすらわからんもんなあ。とりあえず、資料チェックを行い、満足できる量が集まった時点でコンテンツをおこすことを決意。とはいえ、手元にある一次資料はトーキングヘッズ文庫の『アーキペラゴ1』(86年山形浩生・訳)くらい。2次資料も確実そうなのはPSYPHERBORIA14、17号に田中祥介さんの訳があることくらいで、ファンジン名、発行時期、掲載作品などがちゃんと分かるものは少ない。今月中から来月を目処として、SFMてれぽーと欄などをチェックする予定ではあるが、どこまでできることか。このファンジンに載っていた情報は大歓迎、ファンジン貸しますメイルは特に歓迎です。

で、手元のファンジンに関連する情報がないかと探していたら朝まで時間がつぶれてしまった。しかし、TORANU TあNUKI、NOVA MONTHLY第2期、SF BIBLIO FILEなど、自分が金を払ってないだけなのかもしれないが、続きが止まっているファンジンが多い気がする。実は出てるのかなあ。

本格的な更新は後日の宿題とし、あからさまな事実誤認などを幾つか修正する。「素顔のユリーマ」がネビュラを取ったなんて戯言どこで思いついたんだろう? > おれ

オンライン古本屋の在庫リストが新しくなっていたのでチェック。オールディス『爆発星雲の伝説』、奇想天外版『魔法のお店』、SF宝石バックナンバーなどを注文する。しかし、『奇妙な触合い』って、どこに行ったら見つかるんだろう。


2月16日
「インターネットで選ぶ全日本小説大賞98」の結果が出ていたのでチェックしてみる。

面白いくらいに、海外と国内で違う結果が出ている。国内のトップは順当に京極なのに比べて、海外は、なんと『火星夜想曲』である(同率だが)。「いかに海外ミステリのファン層が薄いか」、あるいは、「いかに海外SFの作品層が薄いか」を現しているといえる。今年こそ、「票が割れてトップを取り逃がした」なんて事態を望みたい気もするが、まあ、『虚数』と『エヂプト』がでれば後はどうだっていいや。

国内プロパーSFはみごとに海外SFと同規模。トップの『星は、昴』で7人ってんだから、ファンの母集団は 国内ミステリ >> 海外ミステリ > 海外SF > 国内SFってわけね。まあ、『ターン』『BRAIN VALLEY』がそれなりに得票しているから、ジャンルとしては問題ないという気もするけど(前記2作が自分にとってSFと思えるかどうかは読んでないので知らない)、SFファンもSFプロパーの衰退を嘆くくらいだったら、こういう人目に触れる所で啓蒙活動に勤めるほうがましだと思うがなあ。
#って、他人のことを言えるようなコメントを書いちゃいないが。

まあ、なんにせよ最大の問題は『リトル・ビッグ』だ。あの傑作が14pしか取れていないとは、どーゆーことだ。なんせ、7点満点で平均得点率が7点という傑作である。まあ、ボリューム的に読んだ人数が少なくなることは容易に想像できるから、1位を争ったりはしないだろうと思うが、いくらなんでも投票者2人はないだろう。せめて、5人35点で6位くらいには入って欲しかった。とりあえず、この由々しき事態の責任者は、読み終わっていたにもかかわらず投票しなかった東洋大SF研の大熊君と、読みかけていたにもかかわらず読了しなかった名大SF研の堀口(13)だな。二人は反省するように。
#読んでないって、こんなとこ。



2月18日
一瞬だが、トランスフォーマー・ビーストウォーズを見る。大笑い。なんか、そのCG絵のあまりの違和感に笑うしかないという感じである。一度も見たことがなければ、一度は見たほうがいい。2度見る必要は感じないが。


2月20日
柴田元幸・訳編の『夜の姉妹団』読了。柴田訳の英米文学作品集で、ミルハウザーが入ってるなんて面白いに決まってるんだが予想通り実に楽しく読みおわることができた。ぜひ、レビューを書いとこうと思うが、こーゆー傑作だと、書くことが逆に無くて困ったりするんだよな。


2月21日
法事のため名古屋に帰る。ついでに『なくしてしまった物たち』を探すが、発見できなかった。都内で渋谷パルコ、池袋ジュンク堂、高田馬場芳林堂、八重洲BCをまわって見つからず、名古屋で三省堂、パルコ、杁中三洋堂に無いとなると、さすがに注文したほうが早いかもしれない。

山本正之のニューアルバム「桃の花」を5件目のCD屋でなんとか発見。どうも、思ったよりはるかに発売枚数が少ないようだ。これ、売れないとたいへんそうだな。

三松堂で『スラデック言語遊戯短編集』(初版・帯つき、2500円)を購入。一度読んではいるが、やはり面白い。こういった作品が、5年に一度、1年間目録に載ってくれるのなら、とりあえずの文句も無いんだが。

夜、MILK SOFTの原稿を本ページ用にリファインしようかと思い、チェックしてみる。自分のレビューが、「その時」に強く依存する文体になっていることに気づいた。これじゃあ、ちょっと使いづらいなあ。とりあえず、東京に持っていって使い道を考えることにする。

その後、古いファンジンを読みふけっていたら夜が明けてしまった。困ったものである。


2月25日
ふとみると、週刊少年マガジンの表紙が矢吹ジョウだった。ジャンプを抜いた記念らしい。マガジンにもジャンプにも思い入れはないので特に感慨はないが、そうか、マガジンか。あの地に足ついたマンガしか載せないマガジンね。(いや、MMRなんて偉大な例外もあるけど。)健全な結果というか、つまんない結果というか。


2月26日
手近に売っていなかったので、少し無理してSFマガジンを買いに行く。ついでに、星新一追悼記事の掲載された小説新潮も買って行こうと思ったら、レムの『虚数』を見つけてしまった。これでは、小説新潮なんて買っている余裕はない。諦めて『虚数』とSFマガジンを買ったら、残金が300円を割ってしまったり。困ったものである。

まあ、それはともかく星新一追悼記事だ。SFマガジンの記事は客観的な略歴紹介として始まったはずが、著者の星新一への思い入れを語っておわってしまった牧眞司の記事を始めとして、全体的に愛があふれていてよかった。この手の追悼記事には、いかにもおざなりに書きましたというものが少なくないが、ほとんどの文章に氏への想いがあふれており、珍しく涙させられた。特に、真鍋博の文章に刻まれた「想い」にはただ感動の一言である。

ただ、巻末のリストはちょっと残念だった。前号で「1001編のショートショートまでを網羅した」リストとあったので、単行本未収録作品も含めて、エヌ氏の会が持っているはずの1001編を特定したアイウエオ順リストが見られるのかと期待していたのだが、本当に著作リストだとは。数えかたにもよるが、単行本収録作だけだと、ショートショートは九百何十編かにしかならないはず。筒井・小松作品の研究があれだけなされているのだから星作品の研究本ももっと出ていいと思うのだが。

蛇足・牧眞司の記事に「狐のためいき」には現物が残っていないとあるが、じつは、この作品、季刊SFアドベンチャー93年春号に星氏本人の解説付きで掲載されている。覚えておくと、便利かもしれない。 < 何にだ


2月27日
ラファティの作品リストにつける情報源表示のフォーマットを決定する。実際には、3〜4種類の資料をならべて一番ましなものに決めるなどということもよくあったので、絶対的な参考にはならないだろうが、一応の目安にはなるだろう。問題は、原著に当ったマークをつけたデータを信用されたらどうするかだ。確かに、一次資料はふつう一番確度が高い情報源だが、2次資料のほうが情報量が多い/確度が高いこともあるのだな。特に翻訳者名などで別ペンネームを使っている場合、その訳者に近い人間の作った資料の方が、もとの本よりはるかに役に立ったりする。某所で、これから努力して原書も集めますなどと言ったが、それを考えるといまいちやる気がね。

まあ、僕が英語が苦手で、原書が手に入っても資料として以外使う予定が無いことと、何より、二次資料を突き合わせて矛盾点を洗い出すことのほうが好きなのが問題なんだが(笑)。

だって、古本屋を丹念にまわって『新・読者への挑戦』を見つけ出して発行年月を調べるより、古い目録と原書の発行年情報から発売時期の見当をつけてSFマガジンをひっくり返して新刊広告が載った時期を探す方が面白いんだもん。

いや、原書も調べようとは思ってますけどね。


2月28日
いやあ、たくさん金を使ってしまった。

まず、書泉ブックマートでふと見つけてしまった『湾岸戦争』(翔企画)。湾岸戦争後にでたシンプルなマルチだ。TACTICSやシミュレーターの記事が面白そうだったので気になってはいたのだが、つい買うタイミングを逃していた。ついでに『モンスター・コレクションTCGスタートブック』も買うがこちらは失敗。本当に入門レベルのリプレイだけで図版のたぐいも少なく、あの程度のルールが分からない人間以外にはいらない代物だった。まあ、ルールブックの記述外の情報も多少は含まれているが、SNEのホームページの情報を見に行くほうがはるかに有意義だ。

その後、イエローサブマリンお茶の水店でシングルカードを4枚購入。これで、コンプまで残り3枚になったのはいいが、おかげで大分財布がつらい。ただでさえ、前日に『黒鉄』『ヨコハマ買い出し紀行』『蒼天航路』『ルンナ姫放浪記』などかなりのマンガを買い込んだというのに。今月、月末までもつのだろうか。

そんな心配をしつつ山本正之のライブである。今回は(一応)徹夜で並んだだけあって、3列目で聞くことになったのだが、これが結構つらい。スピーカーが目の前で音量は凄いし、首は正面やや上方を見なきゃいけないし。体力が無ければ、素直に中央やや後ろくらいのほうが楽らしい。

ライブ自体は面白かった。今回はニューアルバムの曲が中心で、新曲は少なかったのだが、アルバムの曲にライブ向けの曲が多かったことと少ない新曲が傑作だったことで、ここ数回ではベストに近いライブ体験となった。

特に、新作長編少年ドラマシリーズ「あーちゃん三ッ葉の13」は傑作。「兄と弟」を描いた「黒百合城の兄弟」、「父と息子」を描いた「サスクハナ号の曳航」、「少年の友情」を描いた「ミノリの秋」に対し、この作品のテーマは「年上の女性への憧れ」あるいはずばり「初恋」。病床の少女の部屋に開けられた唯一の「窓」から「外」を眺めるシーンの幻想性も見事。さすがに少年を書かせたらトップクラスの作詞家だ。

その後、一緒にライブに来ていた藤澤さんと飯を食って帰る。楽しかったのはいいが、ライブが終って9時半過ぎはやはりちょっとつらい。寮に戻ると12時をまわっていたので、html編集を諦め寝る。


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