過去の雑記 98年8月

雑記のトップへ

前回へ
8月21日
『夜明けのロボット』読了せず。というわけで12日からの連続読了記録は9日間で終ってしまった。さすがに、いまさらアシモフはきつかったか。


8月23日
なんとなく『世界の歴史 東南アジア』なんてのを読んでみる。知らない話ばかりでかなり面白くはある。ただ、近代・現代史中心だったのはちと残念。もっと昔の話を期待していたんだけど。ってゆーか、"History of the World" (AH)の背景知識として、クメール帝国についての詳しい話を期待してたんだけどな。


8月25日
行徳で人身事故があったおかげで東西線が思いっきり止まる。飛び込むときはもう少し僕の迷惑というものを考えて欲しいものだ。都営新宿線に飛び込むとか、総武線に飛び込むとか、もう少しやりかたがあるだろうに。
だいたい、地下鉄に飛び込むなんてのが非常識だ。死ぬならもっと明るいところで死ぬべきだろう。確かに、行徳駅はたまたま地上にあるが、そんな些細なことは問題ではない。理性ある一般人なら本質的には地下鉄である代物に飛び込むよりは、本質的には地上を走る電車に飛び込む方が明るい気分になれるはずだ。だいいち、こーゆー事になれているJR中央線にしておけば、事故処理もスムーズに進んで、迷惑を被る人も飛躍的に少なくなっただろうに、ぶつぶつ。

給料をもらったので計算してみると、予算が1万円以上余っていたことに気づく。当然本屋で使い果たすことに決定。朝の出来事のおかげで残業ができなくなったしね。
とりあえず、一部から圧力がかかっている『六番目の小夜子』新版を買おうと思い、高田馬場芳林堂に行くと、何とこれが置いていない。確か日曜日にはあったはずなのだが、まさか売り切れたなんてことはないだろうし、うーむ。
これはしばらく買わなくてもいいという天啓に違いないと思い、他の本を買っていると一瞬で1万円は越えてしまった。買ったのは、<文学の冒険>『血の伯爵夫人』上下に、『凍月』、『屍者の行進』、『メチル・メタフィジーク』…、あれ?どうやっても1万円は越えそうにないな。まあ、きっと何か買ったんだろう(9/7記)。

吾妻ひでお『メチル・メタフィジーク』は恥ずかしながら、初めて通して読んだのだが、やはり最高。これを読んでしまうと、僕の好きなとり・みきも、唐沢なをきもしょせんコピーにすぎないのではという気になってくる。理系ギャグについて何かを語るなら、肯定するにしろ否定するにしろ一度は読んでおくべき作品だろう。
あ、表題作と同時収録の「るなてぃっく」も必読だから、79-80年のSFMだけ揃えたって無駄だよ。


8月26日
全国10万くらい(じゃないか?)のモン・コレファンをやきもきさせていた12600円相当のプレミアカード、「ジャッジメント」がやっと到着。ユニット的にはとてもじゃないが使いやすいとはいえないので、冗談以外でデックに入れる気はないが、やっぱりないよりはある方が良いよね。さあて、どうやってこれでウケを取るかな。

グレッグ・ベア『凍月』を読み終わるっつーかなんつーか。正確に言うと、SFマガジンの96年2月号をひっぱりだして、突き合わせながらの訳文チェック。注釈の言葉がいっぱい入って、随所にわかりやすくしようという意志が見られるのは好感が持てる。でも、「おお!!これはちがう」ってほどじゃないな。マガジンで読んじゃった人は、ベアの笑っちゃうくらいに何もかも語っている序文以外は読む必要無いかも。
しかし、この長さで読むと『火星転移』がいかに冗長か良くわかるね。政治の話さえしなけりゃ、んでもって文学を書こうとしなけりゃベアもいい作家なのに。アイデアを力技で展開することにしか向いてないことに早く気づいて欲しいな。


8月27日
<異形コレクション>『悪魔の発明』を読了。このシリーズ、比較的トップと底辺の差が少ない上に、テーマアンソロジーなんで個々の印象がすぐ混ざるのが難点か。読んでる最中は、出来不出来がけっこうあるように感じるんだけど、読み終わってしばらくすると1、2作の傑作以外何も覚えちゃいない。
今回の、その1、2作は牧野修「非-知工場」と岡崎弘明「空想科学博士」。前者はそのたたみかける狂った論理が、後者はあんなアイデアを臆面も無く正面から扱ってしまう勇気がすばらしい。
ところで、久しぶりの堀晃の新作「ハリー博士の自動輪」は、情報論でエントロピーな、実に堀晃している佳作なんだが、あれのどこに熱力学の第3法則が関係するのかどうしてもわからない。熱力学の第3法則って、「絶対零度ではエントロピーは0である」じゃなかったっけ?


8月28日
『夜明けのロボット』の上を無理矢理読み終わって、名古屋入り。もちろん有給休暇だ。

帰省といっても、つい2週間前に帰っているので、特にやりたいことはない。とりあえず、駅(注:名古屋で「駅」といったら名古屋駅である。駅前で待ち合わせと言われて栄駅前に行く奴は村八分にされるので気をつけるように。)地下の三省堂で『六番目の小夜子』が売っていることを確認し、安心した後で、浄心、鶴舞、杁中と鶴舞線沿いの古本屋をまわって見ることにする。……何にも無い。この2、3年でえらく棚が枯れた気がするんだが、気のせいか?
さて、ろくでもない成果に落胆し、しかたがないので名大に向かってしまった僕の進路が「たまたま」聖霊病院から八事日赤に向かう道だったのは、ただの偶然で片づけるにはあまりに恐ろしい事実を含んでいたのであった。
おりしも、名古屋はどしゃ降りの雨。降りしきる雨の中、坂道を登り続けたわたしが、ふと目に留まった山荘風の喫茶店に入ってしまったとして、いったい誰が責められよう。そう、その時はまだ知らなかったのだ。その薄暗い山荘で、あのような凄惨な事件が起ろうとは。
ってな冗談を考えつつ、ついに到着したのは伝説の喫茶"マウンテン"。大森掲示板で話題を振ってはみたものの、食生活には恵まれた自宅生だっただけに、こんな怪しげな喫茶店には入ったことはなかったのだが、貧しい下宿生の人々から、噂だけはさんざんに聞かされていた店である。
さすがに、薄暗い店内に一人だけだとスパゲティを頼む勇気はわかないので、コーヒーフロートを頼んでみる。数分後、出てきた物を見てびっくり。確かにコーヒーフロートは頼んだが、「ジョッキコーヒーの上面をアイスクリームで蓋をしたもの」を頼んだ気はないぞ。込み上げる笑いをこらえながら、一生懸命アイスクリームを口に運ぶ。
無限に続くかと思わせたアイスクリームも何とか食べ終わりそろそろ出ようとしていると、カップルが入ってきておもむろにピラフとパスタを一つずつ注文していた。思わず、もうしばらく居座り様子をうかがうと、やがて、明らかに2人前は有りそうなピラフが運ばれていった。なるほど、これがマウンテンの量ってやつか。一人納得し名大に向う。しかし、あのカップルは都合4人前の料理を無事食べきれたんだろうか。

名大の部室に着くと驚いた事に神崎(13)と野呂(17)がいない。なんでもMILKSOFT144号の再編集をしているらしい。そんなやる気のある奴らじゃないはずなのに。


8月29日
大会一日目。家から歩いていって、SF大会に歩いていった男として一部で話題になろうかと思ったのだが、客(といっても、細木さん(8)と水牧先生(10)だが)と一緒なので残念ながら断念。やや遅めに会場に着くと、オープニングが始まった。
…得るところの少ないオープニングが終わったので、とりあえずディーラーズ・ルームへ。渡辺英樹さん(1)の創元SF文庫リストは混んでいたので後で買う事にして、しばらくその辺をぶらつく。しかし、結局欲しいかもしれないもののブースはどこも混んでいる事に気づいただけだったり。しかたがないので、買い物は後にする事にして企画を見に行く事にする。

とりあえず、「オタク・アミーゴス」を見に行こうとすると、ディーラーズでちょっと長居しすぎたか、とても入れそうに無い状態になっていた。無理矢理入り込んで立ち見というのも嫌なので、諦めて第2希望に向う事にする。今回、どうも動作が緩慢だったようでこんな体験が異常に多かった。おかげでファニッシュな企画にはほとんど参加していない。これではSF大会に参加した意味が…。
まあ、そんなこんなで最初に入ったのは「ノストラダまスの部屋」。メンバー紹介が長すぎてややだれてしまった。本題も、話している中身は割と面白そうなのだが、大人数を前にしての語りに慣れてないようで、聞いているのがやや苦痛。結局、企画の途中で出てしまう事になった。そりゃ、「SF大会の企画側はみな唐沢俊一クラスの語りの能力を持つべきだ」などという無謀な考えは持っちゃいないが、自分の持ちネタを鑑みて「語りを要するネタだ」と思うようなら練習を積むくらいはして欲しい。

再度、時間調整の為、ディーラーズへ。英樹さんのブースが空いてきたようなので、創元リストを買おうとすると、なんと売り切れ。欲しいものは見た瞬間に買っとけという今更ながらの教訓を実感させられてしまったのであった。

やや放心しながら、「SFセミナーの部屋」に行く。結局、この日は(というか大会の間ずっと)「SFセミナーの部屋」とディーラーズを往復して過ごしてしまった。いくらなんでもありがちに過ぎる行動で恥ずかしい限り。もうちょっと、上前津の古本屋に行くとか、勝川古書センターに行くとか有意義な時間の使い方をすれば良かった、と反省しきりな今日このごろである。

「SFセミナーの部屋」でちゃんと見たのは、「辺境の電脳たち」「日本SFの現状」「ライブ・スキャナー」「日米殺人対決!」の4つ。
「辺境の電脳たち」は大森望と水玉蛍之丞のコンピュータSFを題材とした漫才。わかっていたこととはいえ、さすがの話芸に感心することしきり。堺三保のコメントも人柄を偲ばせて実に良い味を出していた。
「日本SFの現状」は星敬、日下三蔵、牧眞司による日本SFがいかに素晴らしいかについての対談。「SF冬の時代なんて大嘘だ。こんなにすばらしい作品がある。」っていう導入はいいんだが、結論で復刊の話になってしまっては「今が駄目」というのを肯定しかねないような。
「ライブ・スキャナー」は、嶋田洋一、古沢嘉通、岡田靖史、東茅子、内田昌之、堺三保、山岸真(多分登場順)による海外作品紹介。結構楽しくきいたはずなんだけど、メモをちゃんと取らなかったんでさすがに内容が思い出せない(99年3月24日・記)。特に印象に残っているのは、"An Exchange of Hostages"(スーザン・アルマシューズ)を紹介したときの東茅子の楽しげな語り口か。あとは内田昌之のソウヤー新作紹介も面白かった。ソウヤーのSFじゃない成分は翻訳者にとってもいらない部分なわけね。
「日米殺人対決!」は、會津信吾と柳下毅一郎による殺人マニア対談。腹掻っ捌いて時計を埋め込む日本人殺人者もなかなかのもんだけど、被害者の皮でドラムを作って月夜に叩く海外の殺人者には1段劣るね、ってな話が1時間。大会一日目でもっとも充実した一時間だったかも。こんな面白い世界を見逃していたとは後悔しきり、ってな気分にさせてくれる一時間でありました。

ディーラーズで買ったのは、水玉蛍之丞のイラスト入り湯飲みとカードゲーム声優物語。ファンジンを一つも買えなかったのは残念なことである。

なんだかんだで一日目が終ったので帰ろうと思ったが、水牧先生が山田さん(8)主催の若者の夕食会に行くというのでついていくことにする。そんな怪しげな企画に誰が参加するんだろうと思っていたが、意外と参加者が多かったのでびっくり。参加していただいたのは千葉大、明治大、京大、大阪市大、福岡教大の学生の方。名大の若者たちがヤングアダルトネタしか振らなかったこともあるんだろうけど、話題はアニメとヤングアダルト中心。だれも早川・創元の話をしようとしないのが印象的でしたね。
全体的にはそれなりに話も弾んでいたようで喜ばしい限り。あとは、この手の企画が現役の中から盛り上がってくるようだとさらに喜ばしいんだがなあ。

夕食会終了後、夜の街に繰り出していった水牧先生達とは分かれて帰宅。細木さんと声優物語のデータ設定に文句をつけたりしているうちに夜は更けていった。


8月30日
更けていったので、朝はかなりつらかったがなんとか開始時刻に間に合って大会二日目。午前中は行くところが無かったので例によってセミナーの部屋へ。

今日聞いたのは、「SFマガジンはこう作られる」と「パルプマガジンとジャンルSFの成立」の2本。
「SFマガジンはこう作られる」は牧眞司を司会にSFM編集長・塩澤快浩がSFMのすべてを語るというコーナー。編集の日程や人数配分なんかの話は「ふーん」という気分で聞いていたのだが、参加者の質問コーナーが始まってから急に面白くなった。「YA作家を使う気はないのか」という質問に対する塩澤編集長の答えは、「YAは作品だけから作家の質と編集者の質を分離して評価することが難しい」「長篇主体なので、短篇主体のSFMという場に適合するかどうかの判断が難しい」というもの。どちらも言われるまで気づいてなかった部分なので、なるほどと感心してしまった。前者に関しては「てれぽーと」で有名な葉陰立直が、「YA(ナポレオン文庫のことと思われる:引用者注)では、章毎にネームを書いて編集者の許可を仰ぐ」という趣旨の発言をし、塩澤発言を裏付けていた。事実だとすれば、YAってーのは小説よりはマンガに近いシステムで作られるメディアだってことになりますね。本当のところどうなんだろう。興味あるなあ。
「パルプマガジンとジャンルSFの成立」は牧眞司によるSF前史の講義。かなり詳細にメモは取ったけど長くなるんでここでは省略。とりあえずむちゃくちゃ面白かったとだけ言っておこう。

「パルプ」が終ったあたりで「第7回日本トンデモ本大賞」に移動。ノミネートを聞き逃してるんで、分かんない話も多かったけどあいかわらず唐沢俊一の話芸は見事だった。もう、話してる中身なんてどうでもいいという。文章だと、この話芸が完璧には再現されないのが実に惜しい。

「トンデモ本大賞」の発表が終った後は、まったく見るものが無くなってしまったので喫茶店で神崎(13)とひたすら話しこむ。主な話題は彼がどれほどヤマモト・ヨーコを嫌っているかについて。普段クールであまり感情というものを表に出さない彼が、これほど熱く否定する作品というのはどんなものか少しだけ興味はあるが、すこしだけだからまあいいや。
その他、しらない後輩の悪口などを聞いているうちになんだかんだでエンディングの時間となった。エンディングはまあ、そんな感じ。素人演芸を見る恥ずかしさなんかもありはしたけど閉鎖環境効果で受けてはいたからいいんじゃないでしょうか。とりあえず僕的には、吉村文庫の竹取物語が見られただけでも十分に価値のあるエンディングだった。
エンディングだから星雲賞も当然発表される。これについては言いたいことも色々あるが、まあすんでしまったことを穿り返してもしょうがない。「みんな、来年はちゃんと本を読んでから投票しようね」と書くにとどめておこう。受賞した作家が悲しむような投票ってのはやっぱり駄目だよ。

エンディングが終ると外は台風。新幹線が留まっているという情報が飛び交う中、僕は名大勢と分かれ、水上かなみさん(南山大OG)と共に、プロの人御一向を引き連れてのマウンテン体験ツアーのガイド役を担当した。
このマウンテンツアーがどんなだったかについては各所でリアルタイムに報じられているからここで多くを語る必要はないだろう。とりあえず、一人でパスタを食うのは不可能であることを痛感しただけでも収穫としたい。名大SF研で、最もマウンテンが忘れられていた時期に学生生活を送ることが出来た幸運を今更ながらに噛み締める今日このごろであった。

その後も色々あったが、最終的にはプロな人と別れ、雨の八事山を名大へ。細木さん・水牧先生と合流し、家路についた。

#その後、朝まで各出版社別マンガベスト10などという会話を交わしてしまったという事実はあまりに恥ずかしいので秘密だ。


8月31日
午前中に細木さん(8)、水牧先生(10)と別れ、しばらくうだうだした後東京へ戻る。帰りがけに名駅三省堂で『六番目の小夜子』を買って帰ろうとすると、なんと売り切れ。しかたがないので、帰りがけに八重洲ブックセンターによってなんとか確保する。その後、少しはレポートを書こうとするが、果たせず。諦めて寝てしまう。


次回へ

このページのトップへ