過去の雑記 98年9月

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9月12日
なんとなく金を使う気分になっていたので、高田馬場芳林堂で大量のマンガを購入。うちわけは内藤泰弘『トライガン』1・2、同「トライガン最終完成形」、あろひろし『ぱらのい屋劇場』弐、山田章博『Beast of East』1、吉野朔実『ぼくだけが知っている』5、王欣太『蒼天航路』13の5冊と雑誌1。
内藤の『トライガン』は、思ったよりテレビのままなので驚いた。かなり良質のアクションなので、Ours連載の『トライガン・マキシマム』の方も買うことを決定。
あろの『ぱらのい屋』は前作同様の秀作。ただ、同時掲載の作品には今一つの出来のものが多いので、2冊に分ける必要があったのかという点が疑問になってくる。
山田の『Beast of East』は九尾の狐の話。まだちゃんと話が始まっていないが、今のところは面白い。
あとの2冊は安定した出来栄え。特に『蒼天航路』は袁紹篇の前哨戦に入って、俄然面白くなってきている。呂布はそれほどでもなかったが、董卓といい、この袁紹といい、通常ろくな描かれかたをしない敵役の描写は実に素晴らしい。袁家3兄弟の描き分けなんて普通の作家にはできないよ。

昨年来、中野君から借りっぱなしになっていたモンタネッリ『ルネッサンスの歴史』(中公文庫)を読了。まったく知らないと言ってもいい話だったので、実に刺激的で面白かった。もちろん、内容のほとんどはもう忘れてるんだけど。そのうち買ってきて、歴史地図片手に読み返そう。
ついでにタッカー『時の支配者』(ハヤカワ銀背)も読了。想像よりは遥かに面白い。タッカーの短編が面白い、というか面白いタッカーの短編がある事は知っていたけど、長編の出来は期待していなかったのでこれは嬉しい誤算。まあ、中身は結局サスペンス物なんだけど、主人公の正体が明かされるあたりの緊張感はなかなかのもの。『ホログラム街の女』もこれくらい緊張感があれば面白かったかもしれないんだけどな。

ついふらふらと、TVで「カットスロートアイランド」なる映画の最後の方を見る。16世紀あたりの海賊物なんだけど、これがめっぽう面白い。いや、ストーリーは最後の10数分しか見てないんで、どうでもいいんだけど、使われる武器が昔テーブルトークRPGやボードゲームで見たものばかりで…。カトラスとソードブレーカーの二刀流なんて見せられた日にゃ、おおジャリー・ア・コネルとでも思うしかないじゃないですか。やあ、いいもんを見た。


9月13日
いままでのつけが回ってきて宿題をして過ごす…、はずがなんでこんなに何もしないで終るかな。結局、一日野球を見てF1を見ていただけのような。


9月14日
ロビンスン『レッド・マーズ』(創元SF文庫)を読む気力がおきないので、アジェンデ『精霊たちの家』(国書)を読みはじめる。むちゃくちゃ面白い。同じ分厚い本でも、SFだと読む気が起きないのに、幻想文学だとするする読めるのはなぜだろう?SFを読むときには、無意識のうちに「エンターテインメントなんだから簡単に読めるべきだ」と思いながら読んでるからかもしれないが、根本的なところで技術が違うという気もするな。
SFよりも幻想小説の方が優れている、なんて間抜けな主張をする気はないけど、SFよりも幻想小説の方が長い話に向いているのは確かじゃなかろうか。


9月15日
2日前に宿題を片づけるのに失敗したので今日こそはと思っていたはずなのに、気がついてみるとウェブコンテンツの整備も含め何も進んでいない。なんか、最近そんなことばかり書いている気がするぞ。

ただ別の意味で有意義な一日であったとはいえるかも。本を読んだり、データベースの入力をしたり、日記を書いたりというような「仕事」ではない、娯楽はいろいろと楽しんだ。
まず、ここ1週間ほど気になっていた、新規開店の古本屋をチェックに行く。Book Kという、正確には中古ゲーム&コミック屋兼マンガ喫茶らしいのだが、これは駄目駄目。中古コミックの在庫傾向が僕の趣味とは相容れない。家庭用ゲーム機を買わない限り、もう訪れる事はないだろう。

目当ての古本屋で金を使う事が無かったので、代わりにCD屋に行って、「太陽の牙ダグラム」、「獣神ライガー」、「銀河漂流VIFAM13」の各シングルと、「トライガン」のアルバムを購入する。「トライガン」、「ダグラム」、「VIFAM13」まではともかく(ともかくか?)、「獣神ライガー」を買ってしまったのはカラオケで曲に感心したから。ちなみに元歌を聴いた感想は、「カラオケで聞いたときの方が良い」だ。

夕方から、ベルマーレ対ヴェルディを見るとも無しに見たり、日本対アルゼンチンを見たり、横浜対読売を見たりする。こうやってウダウダ時を過ごしていると、満ち足りた気分にはなってくる。この何もしなかったことに対する罪悪感がまたなんとも…。
最後に多少なりとも有意義に過ごす事を決意し、「lain」の6話、「トライガン」の19話、「はれブタ」の何話だかを見る。特にこれといった感慨はない。


9月16日
定時間日なのでとっとと帰り、半日ビデオを見る。「lain」7、8、9話と「トライガン」20、22話だっけか。「lain」を2日で4話も見ると頭がぼうっとしてきますね。とりあえずの感想はヴァッシュには共感できんということくらいか。化け物に非武装を説かれてもねえ。強者の平和主義というものが弱者の目には如何にグロテスクに映るかを見せつけられた思いがする。


9月17日
ふらっと立ち寄った古本屋で『新・読者への挑戦』を見つけてしまったので諦めて購入する。もちろん、購入理由は「ラファティの短篇が収録されているから」だ。収録された「ほとんど完全殺人」はミステリ・マガジン掲載版を持っているはずなので本質的には不要なのだが、まあ600円だったらとりあえず買うしかないよな。

で、帰りの電車で中身を読みはじめてびっくり。この本、著者名を伏せて読者に当てさせる趣向の企画本なんでやんの。ぢゃあラファティの「ほとんど完全殺人」なんて書いちゃ駄目じゃん。

で、「ほとんど完全殺人」を読んでみる。前述の通り、掲載のHMMは持っているので、絶対再読だと思ったら驚いたことに初読だったりする。なんでいままで読んでなかったんだろう。とりあえず、どこからどう読んでもラファティという話だったんで一安心。これなら作者をばらしたと非難されることもないだろう。ミステリとはいいづらいが結構良い出来で、私的ラファティランキングの40位くらいには認定できそう。これで、商業翻訳のあるラファティは一通り読み終わったはずとなる。さあて、次はファンジンか。
#その前に買ったっきりのペーパーバックを読めよという突っ込みは無視する。

読み終わってから、ふと翻訳者を見てまたびっくり。HMM版と訳者が違うんでやんの。家に帰るなり、リストの当該個所を修正してWebを内緒で更新する。ああ、しかしこんなに明白なミスなのに、何で誰もクレームをつけてこなかったんだろう。不思議だ。


9月18日
「lain」の10話と、「トライガン」の23話を見る。そろそろ現在に追いつけそうだ。とりあえず、ウルフウッドの使い方のもったいなさに涙する。でもまあ、全26話ならここまでのキャラかなあ。


9月19日
アシモフ&ローランス編『新・読者への挑戦』(ハヤカワ文庫HM)を読了。作者当てという趣向は悪くないし、確かにそれなりに作風もバラバラなんだが、いかんせん知った作家がほとんどいないのでろくに楽しめなかった。僕がミステリに詳しくないだけかもしれないが、それにしても無名作家が多すぎないか?中身も退屈な作品が多く全体としての評価は低め。ラファティの短編を読んだらあとはいらない。

大熊君に誘われたので東洋大の読書会に混ぜていただく。お題は新潮社から久々に復刊された『六番目の小夜子』。けっこう面白い読みも繰り広げられたし、何より黒川先生というキャラの重要性を再認識させられたのは収穫だったが、再読以来の「良いところもあるが欠点の多い小説」という感想を覆すまでには至らなかった。やっぱりハードカバーという器には似合わないよ、これ。
新潮文庫ファンタジーノベルシリーズとしては傑作だと思うけど。

読書会終了後、参加者全員で池袋芳林堂によってお買い物。何かが壊れていたのか気がつくと実にいろんな本を買い込んでいた。買ったのは、ホルト『疾風魔法大戦』(ハヤカワ文庫FT)、バカSFアンソロジー『SFバカ本たわし篇プラス』(廣済堂文庫)、バラード『殺す』(創元海外文学セレクション)、倉本『鬼の宇宙誌』(平凡社ライブラリー)、「夜想34(パペット・アニメーション)」。理性があればバラードだけにとどめているはずなのだが…。

夕食を兼ねて飲んだ後(楽しかったです。ありがとうございます。 > 東洋大の方)、高田馬場を通るついでに例会にちょっとだけ寄って帰宅。


9月20日
バカSFアンソロジー『SFバカ本たわし篇プラス』(廣済堂文庫)を読了。ってゆーか作品はハードカバー版(ジャストシステム)で読んでいたので、著者紹介と巻末の対談「おもろ大放談」だけを読む。対談は、タイトルからして往年の傑作「おもろ放談」を踏まえているわけだが出来は段違い。内輪の話題を語っているようでも読者へのサービスを忘れていなかった第1世代作家たちの対談に比べ、こちらの対談は本当に内輪の話題だけに終始してしまっている。森奈津子の話はまだしも面白いんだが。
やはりSF作家たるもの、身の回りの話題ではなく、森羅万象を騙って欲しいというのは高望みにすぎるのか?まあ、メンバーが火浦・大原・森・高井・岬・岡崎では話題が近所に終始しても仕方が無いのかもしれないが…。
もともと、このシリーズ、せっかくバカSFと謳いながらヨコジュンを一歩も越えられていない作品が並ぶだけの退屈な代物だったので、対談には期待していたんだが。これなら同じ廣済堂文庫の『悪魔の発明』の方がよっぽどバカSFらしいぞ。


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