過去の雑記 99年 1月

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1月11日
2週間ぶりくらいに雑記を更新。なんか雑記の更新にエネルギーをとられて本来の更新作業ができなくなっているような気がするのは気のせいか。

クラフト・エヴィング商會『クラウド・コレクター』(筑摩書房)を読了。クラフト・エヴィング商會の2代店主、吉田傳次郎が、すぐそこの最も遠い場所であるアゾットを訪れた際の旅行記、という形式を借りて傳次郎が綴った架空旅行記、という形式を借りた商會の作品カタログだ。
雲母の薄片に記された書物、細長い詩の結晶、あるはずのない記憶を固めた雲砂糖…。個々の「もの」たちのイメージの美しさといい、その背景となるアゾットという世界の不思議さといい、かなりのものなのだが、ここでは、その創作の秘密が惜しげも無く語られてしまう。パスポートナンバーの謎、世界の色の謎、回転の意味、雲の意味、明かさなければ限りない想像を掻き立てたかもしれない謎を尽く明かしてしまうことにより、後には至ってシンプルな作品そのものに対する感動が残ることになる。
この本を読むことで、昨日の展覧会に込められたさまざまな意味を理解することが出来た。会期中にもう一度訪れてみよう。双眼鏡ではなく、望永遠鏡で作品を眺めるために。

と終ればきれいだっただが、つい油断して「宇宙海賊ミト」を見てしまう。しまった、面白い…。


1月12日
昨日の余勢を駆ってクラフト・エヴィング商會『すぐそこの遠い場所』(晶文社)を読了。こちらは、架空世界アゾットに関する事典になっている。
『クラウド・コレクター』のスピン・オフのような性格が強い作品だが、統一的な物語を志向することから解放されているためか、ここに描かれる世界の断片は『クラウド・コレクター』のそれよりも美しい。
1ヶ月半にわたって上映される観光、ものすごく込み入った路地の奥の小さな工場にひっそりと閉じ込められた怪物の剥製、空飛ぶ絨毯の上で幸せそうに眠り続ける太った猫、世界中に散らばって一つの音楽を奏でる「かなでるもの」たち…。わずか120ページほどの薄い本ではあるが、たっぷりと時間をかけて読むことをお勧めする。これだけ良質のファンタジーに触れる機会はそうはない。


1月13日
<異形コレクション>『チャイルド』を読了。やっと、現在に追いつけそうだ。
回を重ねるごとに出来不出来の差が大きくなってきているが、今回はクズが少なかったので比較的安心して読むことが出来た。そのかわり、宝石も少なかったのだが。
今回の収穫は、とりあえず斎藤肇「臨」ということにしておこう。文章はやや練りが足らない気がしたが、盛り込まれたイメージの壮大さでもういいやという気になった。ファンタジーはやっぱりこれくらい豪気な方がいいよね。


1月14日
CoCo壱番屋でスポーツ紙を眺めながら遅い夕食をとっていると、突然「ピカチュウ」「獣姦」「逮捕」という文字が目に入ってきてびっくりする。どうやらピカチュウ×サトシの同人誌を作った人が任天堂の訴えで京都府警にしょっぴかれたらしい。
この事件から著作権とファン活動について、あるいは著作権とパロディという行為について考察するというのが正しいオタクというものかもしれないが、僕の頭には「そうか。ピカチュウというのは盲点だった。」という思いしか浮かばなかった。
そうか。そうすると、ピカチュウ×ヒトカゲとか、フシギダネ×ゼニガメとかもありなんだよな、きっと。ひょっとするとピカチュウ少女ものとかもジャンルとして成立してたりするんだろうか?世の中奥が深いなあ。


1月15日
三連休だから有意義に過ごそうなどというふぬけた計画を立てても無駄に終ることは経験的に知っているので最初から諦めてはいたがしょっぱなから予想通りだったのはちょっと情けないかも。なんとなく「アポロ13」を見ていたら一日が終ってしまった。
「アポロ13」は実に良くできていたんで感心した。事故のあり方としては最も退屈な部類に入るであろう宇宙船の事故で、これほど緊迫感のある映画ができあがるとは。作り手に知恵さえあれば、どんなものでも面白くできるのだなあ。


1月16日
『クラウドコレクター』&『すぐそこの遠い場所』読了記念で、新宿紀伊國屋のクラフト・エヴィング商會の展覧会に行く。
途中、ついYellow Submarine東口店に寄ってしまったり、あまつさえモン・コレのカードをシングル買い(「リザードマン突攻隊「葵」」「夢魔の女王リリス」「アポカリプス#2」計4000円)したりしてしまうというアクシデントはあったが、なんとか無事到着。今度はエピソードを頭に描きながら展示を堪能することができた。観賞時間はやっぱり十五分だったけど。

せっかく、大型書店に来たので星新一ショートショート全集を探すが見つからず。ついでに南口の方にも回ってみたが見つからなかった。これは池袋にでも行ってみろということだろうか。

一瞬、本気で池袋に出ることも考えたが、夕方になってしまったので諦めて高田馬場へ向かう。松野さん(9)がユタの例会に来るかも知れなかったのである。
が、残念ながら松野さんはいらっしゃらなかった。というわけで参加者は大森望、小浜徹也、堺三保、須藤玲司、高橋良平、林、藤元直樹、三村美衣、柳下毅一郎(あいうえお順、敬称略)。大森さんにt-timeの画面を見せて頂いたり、SF-Onlineの1月号がどんなにすごいかという話を聞いたり、『G 重力の軛』のどこが面白いかという話しを聞いたりするうちに、食事の時間となったのでルノアール隣のヤキトリ屋へ移動。三村さんから先日の京フェスでの「キャラ萌え野郎吊しあげ事件」の顛末を伺ったり、須藤さんから昨今のアングラアニソン界の動向などを伺ったりした。

「吊しあげ事件」については加害者(笑)にその気はなかったのは確かだとしても、実態はやはり吊し上げだったようで。「キャラ萌え」について本気で実態を知りたいのなら、fj.rec.games.video.*とかで、キャラ萌え罵倒発言をしてみるのが一番簡単なのでは。 > 三村さん



1月18日
SFM1月号読了。誌面の大刷新のおかげで今一つ読みづらい。とりあえず慣れるまでしばらくかかりそうだ。
バクスター「軍用機」は歴史改変な宇宙開発もの。落ちがありがちという弱点はあるが、バクスターとはとても思えないくらいに良くまとまっており、情感すら感じられてしまったりする。でも、この話なら最後は壊れてくれた方が面白かったと思うぞ。
ケリー「ストロベリー・フィールズにて」はヴァーチャル・リアリティで家族の問題な男の願望充足小説。仕事にかまけて家庭を見捨てても、妻はわかってくれてるし、娘もいつかはわかってくれるという幻想に浸りたいかたはお勧め。生の願望充足がこうまで気持ち悪いもんだとは思いませんでしたね。
スティール「ヒンデンブルク号、炎上せず」は長い小品。細かいくすぐりを笑う以外の楽しみかたがよくわからなかった。悪くはないけど、ヒューゴーをとるほどか?
谷&水樹『果てなき蒼氓』は『エリコ』から一転、谷甲州らしい抑えの効いたハードSFになっている。まだ慣らし運転のような感があるがのってくればかなり面白いものになるかも。
てなことをつらつらと書いてはみたが、この号で一番面白かったのは1ページの「萬古道具珍奇堂」だ。目次の前ページなので万が一にも気づいてない人がいたらすぐにチェックだ。商品説明がかなり変だぞ。


1月19日
昨日から風邪気味だったので、即効性の薬を飲みあまつさえスーツの下にセーターまで来て出かけたのだが、今年のインフルエンザと筑波の寒さはなみ大抵ではなく見事に症状が悪化、仕事が終ると同時にすべての買い物の予定をなげうって部屋に帰るはめになった。
部屋に戻ってからも、食事どころか眠り込む体力すらない状態で、買い置きのみかんとアイスクリームでどうにか燃料補給をしながら、ひたすら布団の中でボーッとするというていたらく。久しぶりに、高熱というものを体験しているらしい。


1月20日
午前7時まで寝たり起きたりを繰り返しているうちに、どうにか体調も落ち着いてきたが、会社に行くとどうなるかわからなかったのでスパッと休むことにして本気で寝る。昨日から無理矢理眠り続けたことが功を奏したか、なんとかまとまった時間眠るだけの体力が回復した。夕方、それなりにちゃんとした食事をとり、翌日の出社に備えて早めに就寝。せっかくの有給休暇を本も読まずに過ごしてしまったことだけが心残りである。

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