道教と仙学 第4章

 

 

5、女子の内丹修練法

 

 

 女子と男子には生理的・心理的な違いがあるので、内丹仙学には女金丹が伝えられている。内丹仙学では、男は外が陽で内が陰、女は外が陰で内が陽であると考え、後天の離()卦を男に例え、坎()卦を女に例える。女子にはもともと丹が身体の中にあり、性質は純で柔らかい。だから女子が丹を修めるのは男子より容易である。昔から仙道を修行する女子は多いが、女子の修行を論じた丹経は少ない。また年齢や結婚・出産経験の有無など、条件が違うと修行の仕方も違うので、女丹の修行法を一つにまとめることは非常に難しい。ここでは現在残されている女丹道の書物によって論じる。堪母派は許遜と呉猛の著した《石函記》と《銅符鉄巻文》を伝え、天元大丹の法である。南岳魏夫人(魏華存)派は《黄庭経》を伝えている。謝仙姑派は《太清中黄真経》の功法を伝えている。謝仙姑は名前を謝自然といい、十代から穀物を食べない「辟穀」や「服気」などの呼吸法を修行しはじめた。曹文逸真人派は《霊源大道歌》を伝えている。孫不二元君派は《孫不二元君法語》などを伝えている。そのほか、剣術で内から修練していく中条山老姆派があり、《呂祖全書》の中にも女丹について記載がある。これらのうち、曹文逸真人の《霊源大道歌》の丹功は純正で、心を清め欲をなくすことによって気を純粋にして柔らかくし、元を和らげ内を働かせる。孫不二元君の《坤道功夫次第詩》の女丹は正当な修行法であり、血を煉り、太陰煉形の術で赤龍を斬る。陳寧氏の著した《孫不二女丹詩注》、《黄庭経講義》、《霊源大道歌白話解》は、女子の丹法について詳しく論述している。

 女子と男子の内丹の主な違いは、とりかかりの築基と初関仙術のやり方である。男子は精が基礎であるが、女子は血を基礎にする。男子の場合ははじめに精を補い、それから精を煉りに変える。女子の場合ははじめに血を補い肉体を修練して童女のような体に戻り、それから血を煉りに変える。この過程で乳房は男子のように縮み、月経は自然に途絶える(斬赤龍)。だから「男子は修練が完成すると精を漏らさず、女子は修練が完成すると経を漏らさない」と説かれている。女子の丹功の鍵となる修練法は「太陰煉形」の術である。この方法で重要視する関竅は、両方の乳房の中間に位置する中穴(女丹では穴、乳渓という。男子の中丹田に相当する)と血海(子宮のある部位。男子の下丹田に相当する)である。「形」というのは乳房であり、「質」というのは経血のことである。男子は精が生命の元であり、まず本元を煉り、それから形質を煉る。中老年の場合には先に精気を補って童の体に戻る。女子は血が生命の元であり,まず形質を煉り、それから本元を煉る。年老いて月経が絶えてしまった女子の場合は、先にもう一度月経に至るまで修練して処女の体を回復し、それから赤龍を斬って体質を男子のように変える。それがうまくいくとあとは男子と同じように内丹功法を修練できる。


坤道入手図
(《内外功図説輯要》より)

 女丹の修練方法は、まず静かに座って神を凝らし、舌を上顎につけ、唾液が出てきたら唾液を飲み込む。目を閉じて呼吸を調え、意識は中に集中し、雑念を払って静寂の状態に入る。それから両手を交差して乳房を捧げ持ち、まず左から右へ時計回りに36回軽く揉みほぐし、次に反時計回りに揉みほぐす。揉む時は神によって体内の気の働きを活発にする。揉むのを止めたら、両手で両方の乳房を捧げ持って中に寄せ、神を凝らして元気を中穴に入れ、それを充満させて旋回させる。それから下丹田の血海から気を36回少しずつ吸い上げ、両手を交差して乳房を捧げ持ったままで、呼吸を調え定に入る。このようにすると血海に真気が発生し、両方の乳房や中まで上昇する。真気は絶えず往来し、これにつれて血液も変化する。そのあと転河車の修練を行う。真気を血海に降ろし、臍を通り、尾閭を突き抜け、夾脊を過ぎ、泥丸まで上げ、そして重楼を通り、下丹田まで下ろす。こうして血を煉ってkに変え、斬赤龍の修練を完成すると、月経は自然に絶え、乳房は男子のようになる。斬赤龍が完成したら、乳房を捧げ持って気を吸う必要はない。ただ神を凝らして中に静かに意識をかけ、ゆったりと呼吸し、滞りなく河車を回す。初関の小周天の修練が完成すると、あとは男子の内丹功法と同じである。女丹の場合、初関として中黄直透[中脈を通す方法]の修衝脈功法を採用することも比較的容易である。この場合、血海の中の元気を採って小薬とし、これを衝脈[中脈]に沿って泥丸まで上げたあと中(穴)まで下ろして薬を煉り、小周天の修練を完成する。《女丹十則》は、養真化気、九転煉形、運用火符、黙運胎息、調養元神、移神出殻など、女子の内丹の修練方法を比較的詳しく記述している。

 女丹の修練は、まずリラックスし、雑念を払って静寂の状態に入り、心と気をのびのびさせ、火候は活発で自然であるようにするべきである。精神分裂症や子宮出血などの奇病を引き起こす可能性があるので、武火[強い意識集中]にこだわったり、軽率に武火を用いたりしてはいけない。丹功では、男子は八を用い、2×8=16歳のときに陽精は最も盛んで、64歳[8×8=64]で陽気は絶える。女子は七を用い、2×7=14歳のとき月経が始まり、49歳[7×7=14]で月経は止まる。女子は月経がはじまる前に、めまいや腰痛を感じることがあるが、これは壬水が完全には癸水に至っていないと言われる。このとき回光返照法を用いて壬水を採り脳を補うことができるが、もし月経が始まったら、修練を止め、心を平静にし、気を和やかにして静養するべきである。もし月経の期間中に無理に採取したりすると、逆に病気を引き起こすことになる。30時辰[時辰は旧時の時間単位。1時辰は2時間]が経過して月経が過ぎると、修練を行うことができる。

 まだ月経のない童女は、女丹の修練は比較的簡単で、築基の段階を省くことができる。少女の場合には斬赤龍の修練を行う必要がある。すでに結婚して出産の経験がある老年の婦女の場合は、すぐに斬赤龍の修練を行わず、先に欠損を補わなければならない。女丹の丹功は、美容術とも関係があり、美顔などの効果もある。夏姫が得たと言われる養陰の方を実践すると、年老いても容貌は処女のようであり、飛燕行内視の術を実践すると、体が非常に軽やかになる。また夫婦でお互いに助け合って修練すると、神仙の仲間入りができる。

 ここで牛金宝氏が1987年に雑誌《武魂》に発表した《道教龍門派坤生功法法訣歌》を以下に載せておく。

足を組んで座り、静功を煉るには、

全身をリラックスさせる。

目を閉じ心を見て本来の自分を意識し、

神を凝らし光を蓄えて意識を中にいれる。

手は曲げて雑念を除き、

舌を上顎につけていると自然に唾液が生じる。

呼吸は深く細く長くひとしくなり、

心は落ち着き想念が止むのが正しい修練である。

座っていて人我を忘れると、

目の前に光がぼんやりとあるいははっきりと現れる。

座ることが終わったら顔をこすり熱くなった手を両方の眼球につけ、

肘や腰を伸ばして気血を通す。

全身を上下に一回こすり、

乳房をよく揉み絳宮[中]を揉む。

このようにしていれば容貌は衰えず、

老いた人も若返る。

 この法訣は取り掛かりの修練としては、平易簡明で覚えやすい。牛金宝の修練法は千峰老人趙避塵が伝えたものである。趙避塵は《性命法訣明指》を著した。彼の流派は千峰派と呼ばれ、もとを辿れば柳華陽に行き着く。この修練法を理解するために《性命法訣明指》を参考にするのもよい。

 

  

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