築基参証 第二篇 健身静坐法の実践
第8章 静坐時の呼吸

許進忠     撰述
虞陽子     査定
神坂雲太郎    訳

 

第8章 静坐時の呼吸

 

  1. 息を一度吸って一度吐くのを、一息という。静坐するときの呼吸は、その度合いによって分かれ、四つの段階に区別される。
     第一の種類は、静坐をし始めた頃の呼吸で、凡息といわれ、普通の人とあまり変わ
    らない。
     第二の種類は、内呼吸の養成である。
     第三の種類は、静坐が次第に進んできた時、つまり気が十二時位を通り過ぎて以降に発生する呼吸で、真息といわれる。
     第四の種類は、静坐がもっと深まったとき、つまり真息の後に発生する呼吸で、胎息といわれる。
  2. 静坐の初期の呼吸は普通の人と似ているが、唯一つ異なるのは、呼吸する時一度調理(訳者注: 文息や武息などをすること)を経ていることである。これはまったく効果がないというわけではなく、密かに規則にあっていなくてはならず、いにしえの吐納術 にいくぶん似ている。この効果は、意識で観照することで息を吸ったり吐いたりすることを調節し、身体の内部の陽気を奮い立たせ、陽気が身 体の各部を巡ることができるようにするのである。
  3. 静坐が進歩してくると、呼吸の現象はゆっくりと普通の人と異なってくる。これは、外呼吸の調節により、体内における一種の神と気の交 わり(訳者注: 原文は「一種闔闢運動」)の養成に自ずと感応するのである。この身体の中で次第に陽気が旺盛になっていくにしたがって生理機能は直接影響を受け、そのため 鼻の穴からの呼吸が自動的に止まるという生理現象が生まれる。こういった外呼吸が止まる現象は、大体小薬ができる頃に静坐している時経験 するもので、静坐をするならば必ず通る過程であり、これを病的な状態と見なしてはならない。
  4. 真息と胎息は、両方とも一歩一歩修行を進めて出現するものであって、わざと求めたり、わざと真似をしてはならないのであり、自然に発 生するのに任せなければ、きっと様々な弊害を生み出すことになろう。

 

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