ひのでやエコライフ研究所  かんきょうもんだい一日一言

 トレーはリサイクルしたほうがいいのか

1999年4月19日
 「リサイクルをして意味があるのか」というのは、どうしても気になるところのようです。「トレーはそのまま捨てたほうがいいのか、リサイクルしたほうがいいのか」という問い合わせがありましたので、持っている情報だけでまとめてみます。

 結論から言うと、ドングリの背比べというか、五十歩百歩というか、そんな感じです。
 

■比較する対象

 「どちらが環境にいいのか」を比較するにあたっては、何と何を比較するのかをはっきりさせる必要があります。ここでは、トレーを使ってしまった後での比較なので、処理の部分だけを考えたらいいような気もしますが、リサイクルを含めると実はそう簡単な話でもありません。これは、空き缶のリサイクルでも、牛乳パックのリサイクルでも同じように起こってくる話です。

 トレーをそのままごみとして捨ててしまう場合には、ごみ袋に入れ、ごみ回収がされ、焼却され、埋め立てられるまでを考えることができます。回収するときにも回収車の燃料が必要でしょうし、焼却されると二酸化炭素が排出されます。また焼却に伴って二酸化炭素以外の有害物質が排出されることも考えられますし、灰となった後に流れ出すことも考えられます。

 一方でリサイクルした場合には、トレーを洗って、排水が下水処理される。一方でトレーはトラックで輸送され、加工され、新しいトレーとして生まれ変わる、という流れになります。トレーを洗うときには水が必要ですし、下水処理するときにもエネルギーが必要になりますし、水汚染にも寄与します。再生する時にも当然のことながらエネルギーが必要になります。

 これだけで比較していいような気もしますが、リサイクルのシナリオでは、新しく1枚のトレーが生み出されますので、比較する場合にはちょうど「新しいトレーを1枚作るのにかかる環境負荷」を差し引かないと不公平になるわけです。
 

廃棄シナリオ    トレー製造 → 輸送 → 使用 → 排出・回収 → 焼却 → 埋め立て

リサイクルシナリオ トレー製造 → 輸送 → 使用 → 洗浄 → 排出・回収 → 再生 
(1回だけリサイクル)       → 輸送 → 使用 → 排出・回収 → 焼却 → 埋め立て
 

■二酸化炭素排出量

 たぶんこうした各場面でのエネルギー負荷を全て計算して出したのでしょうが、環境庁が環境家計簿の中で、「トレーをリサイクルしたほうが1枚あたり2g分の二酸化炭素が削減できる」としています。4月13日にも書きましたが、製造の時には1枚あたりおよそ8gの二酸化炭素を排出していますので・・・・

    二酸化炭素対決  廃棄する場合  8g     リサイクルする場合  6g

ということになるでしょう。(これには一応、焼却の二酸化炭素、トレー回収の輸送は含まれる勘定になります)

 ただし回収にエネルギーがかかるので二酸化炭素排出もリサイクルしたほうが多くなるという計算もあります。
 回収されたトレーはかさばるために、ほとんど空気を運んでいるようなものです。4トントラック(20m3)に一杯に積んでも200kg(4万枚)運べたらいい方でしょう。(ごみ袋1つに200枚程度です)。
 さて、もしこれを600kmはなれた再生工場まで運ぶと仮定しましょう。4トントラックの燃費を3km/リットルとすると、200リットルの軽油が必要になります。軽油1gで0.72gの二酸化炭素が出ますから、つまり1枚あたり4gの二酸化炭素がこれで余計にかかってしまうわけです。製造に8gしかかかっていないのに対して、かなり輸送が大きな割合を占めており、設定を少し変えると、かえってリサイクルのほうが負荷が大きいことにもなりかねません。

 ちなみに、洗浄にかかる水を供給するためのエネルギーも考えられますが、1リットル使った場合には、0.16グラムになります。たぶん大きくは効いてこないでしょう。

■水汚染

 トレーを洗ったときには、洗った分だけ水汚染をすることになります。一般に水汚染を評価する手法としては、汚れをきれいにするために微生物が働いたとして、何グラムの酸素が必要になるかと言う指標(BOD)が使われます。
 もし油が1g付いている状態で洗ったとすると、およそ2gの酸素が必要となり、BOD負荷2gとなります。これはリサイクルをした時にだけ効いてきます。

   水汚染負荷   廃棄する場合 0g      リサイクルする場合  2g
 

■埋め立て地の減少は

 物を燃やすと灰が出てきますが、プラスチックの場合には少量の燃え残りが出てくる程度です。本当はそこまで含めて計算をする必要があるのでしょうが、よく排出されたごみの量の時点で比較することもあります。

   ごみ量      廃棄する場合 5g      リサイクルする場合  0g
 

■焼却炉で発電をしている場合には

 最近の焼却炉は、ただ燃やしているだけだと能がないというので、燃やすときに出る熱を利用して発電する設備を備えたものが多くなっています。この場合には、焼却のエネルギーの1割から2割程度を回収できるようで、その分だけ二酸化炭素の排出を減らすこともできます。
 

■それじゃあどう判断したらいいの?

 結局、二酸化炭素の事を考えたらリサイクルしたほうがいいし、水汚染のことを考えたらそのまま廃棄したほうがいいという結果が出てきました。ここから先は、「水汚染と二酸化炭素のどちらを重視するか」という問題になってきますので、みんなで決めて行かなくてはいけないところです。

 なおちなみに 高月紘編著『自分の暮らしがわかる エコロジー・テスト』 講談社ブルーバックス1237 には、二酸化炭素と水汚染の重み付けについて話が書いてあります。直接トレーの話は書いてありませんが、本で言っていることをちょっと強引に解釈をして、重み付けをすると次のようになります。

   二酸化炭素負荷 0.9ポイント/g-C
   ごみ負荷     1.0ポイント/g
   BOD負荷     8.5ポイント/g-BOD

 これをそれぞれ掛け合わせると・・・・

   トレーを焼却した場合    12.2ポイント
   トレーをリサイクルした場合 22.4ポイント

 値が大きいほど、環境負荷が大きいことですから、これでみると、焼却したほうがいいことになります。まあ油が1gついているというのもちょっと極端な値なので、トレーについているものによって違ってきます。
 

■結論

 トレーをごみに出すのと、リサイクルするのとどちらがいいの? という単純な比較だったのですが、こんなかんじで、値の取り方、何を重視するかによって大きくちがってきます。

 ごみとして捨てるよりは、リサイクルの習慣をつけたほうが、教育的な視点からいいのかもしれません。しかし一番いいのは、必要ないのならトレーを使わないことでしょうね。「トレーを使ってしまってから悩んでも遅い」のかもしれません。

 リサイクルはなんとなく、そのまま新しい製品に生まれ変わるのだからいいイメージがあるのかもしれませんが、特にトレーについては難しいところです。こうした細かいことに気を回すのであれば、もっと効果的な取り組みがたくさんあるのではないかと思うのですが・・・・・。
 

この内容に関してのお問い合わせは鈴木まで。お気軽にどうぞ。

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