ひのでやエコライフ研究所  かんきょうもんだい一日一言

 環境のことを考えない商店街には将来がない

1999年6月27日
  前回紹介した、おおさか「みなみ」の商店街のお話の続きです。前回は企画者の会議だったのですが、7月1日に商店街の人と打ち合わせをするというので文章を書いてくれと依頼され、作成したものです。かなり内容を過激に書いてしまいましたが、ここまですっきりと表現できると書いていて気持ちがいいいですね。
 ちなみにこれが前文で、このあとに具体的な取り組みの提案が続きます。


 地球温暖化、オゾン層の破壊、砂漠化、生物種の絶滅、ごみの埋め立てや焼却に伴う各種の問題など、環境の問題はよりいっそう深刻さを増しています。数千年をかけて築き上げてきた人類の文明ですが、環境のことを考えてこなかったために、今の繁栄が今後100年続くことはなかなか考えにくい状況になってきています。主要なエネルギー源である石油も可採年数は40年あまりですし、銅や鉛といった主要金属も100年以内には枯渇します )。一方温暖化によって今後100年の間に地球の平均気温が2度上がり、地球の気候は大きく変わってしまうことが予測されています )。さらに廃棄物処分場に至っては、埋め立て容量はあとわずか数年の余裕しかなく )、住民の反対から処分場を作れない状況が広まっており、今後より深刻になることは明らかとなっています。
 消費者に大量の商品を買ってもらい、商店からも大量にごみを出す、といった現状の仕組みをこのまま続けていくことはできなくなります。環境のことを考えた社会に向けて、大きな転換をしていく必要に迫られています。

 環境の影響というのはなかなか実感しにくいものです。「まだ周りでだれも取り組んでいない」「そんなこと考えなくても十分商売をやっていける」と考える方もまだ多いかもしれません。しかし状況はそんなに甘くはなく、非常に深刻です。社会的にも環境に取り組むことの重要性が認知されてきており、「環境の対策に失敗した会社は将来生き残れない」ことまで言われています。
 例えば、温暖化の原因となっている二酸化炭素を減らすために、世の中では省エネの重要性が叫ばれており、それに対応して、自動車・家電などのメーカーは省エネ型機器を開発するために必至となっています。家電製品に関しては省エネ基準が法律で定められ、現在の最高水準の省エネ機器と同じ基準の製品しか売れなくなります。すなわち、省エネ製品を作る技術を持たない企業は、容赦なく市場から切り捨てられていくことになります。自動車産業についても、いかに燃費がいい自動車を開発できるかどうかが、21世紀に生き残る大きな条件となっています。
 小売店についても例外ではありません。全国規模で展開をしている大手スーパーや、生協を中心として、ここ数年で環境対策は大きく進んでいます。以前は市場よりも包装が多いということで非難されていたスーパーも、包装削減やリサイクルなどに取り組んでおり、現状では逆にスーパーで購入したほうが環境にいいとまで言われています。こうした小売店の環境対策の調査は、市民団体を中心として全国で実施されており、小売店の環境度ランキングをする本も発行されています )。市民も「環境」という視点からお店を選びはじめているのです。
 世の中の状況を見ても、これから環境のことを考えた小売店のほうが求められるのは確かです。容器包装リサイクル法が2000年4月から正式に施行されますが、余計な包装が付いている場合には市民の金銭的・分別の負担も大きくなることが予想されます。また最近厚生省の中でも、ごみ減量に有効な手段として家庭ごみの有料化を進めることが検討されています。ドイツのように全面的に有料化された場合には、ごみ袋一袋で数百円の負担になり、少しでも包装の少ない店で商品を購入したほうが安上がりになりますし、使い捨て容器よりも牛乳瓶のように使い回しできる容器のほうが好まれるようになるでしょう。
 市民の健康に対する関心も大きくなっています。所沢のダイオキシン騒動もありましたが、有害なものが含まれる可能性のある食べものは避ける傾向は大きくなっています。より安心な省農薬野菜、有機野菜といったものが、多少値段が高くても好まれる傾向があります。
 大手のスーパーはこうした消費者のニーズを先取りし、環境負荷の小さな商品を取りそろえ、積極的に安全な食べ物の品揃えを増やしています。これも将来生き残るためです。

 環境の取り組みというのは、余計なお金と手間がかかるものと考えられ、躊躇する人が多くありました。取り組まなくていいものなら、取り組まないほうが得といった考え方もまだ根強くあります。しかし、環境を巡る状況がどんどん悪化しており、市民も環境のことを考えて店を選ぶような社会状況ができあがってくると、事情は大きく異なってきます。むしろ、積極的に環境のことに取り組んだほうが得になることも多くなります。
 環境への取り組むには確かに大きなコストがかかりますが、同業者ならだれでも同じようにかかるものです。その場合に、問題が大きくなってからあわてて対応するよりは、早めに対応を検討していくほうが、移行がしやすく、高く評価される対策がとれるのは確かです。環境に積極的に取り組んでいる企業は、消費者の信頼も高まるでしょう。
 こうした考え方に変わってきているからこそ、大手スーパーを始めとして多くの企業が環境対策を積極的に推進しているのです。

 商店街は、街全体を支えていく要です。多くの人も集まってきますし、それだけ世の中への影響力も大きいものです。単に自分たちの都合で商売をするのではなく、「子孫に残せるような環境を積極的に作っていく」「いっしょに住みやすい街づくりをしていく」といった視点から、商売を考え直してみる必要があるのではないでしょうか。
 まだ大阪の商店街は元気なほうです。その条件に甘えて生きながらえるのではなく、積極的に商店街の可能性を模索して、全国の商店街の見本となるようなものを作っていく責任があるのではないでしょうか。大阪で成功すれば全国に広まる可能性があります。一方で大阪の商店街ができなければ、他の都市で始めるのは困難でしょう。

 将来のことを考えれば環境対策をすることをお勧めしますが、もちろん商店街として環境対策に取り組まないという選択肢もあります。ただその場合には、きっとスーパーが商店街の代わりとなって、街を支えていくことになるでしょう。

 

この内容に関してのお問い合わせは鈴木まで。お気軽にどうぞ。

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