循環型社会形成システム研究室 研究内容

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廃棄物処理・リサイクルのためのLCA手法の検討と事例研究

 リサイクルは本当に環境によいのかといった疑問も聞かれますが、このような疑問に答えるためには、資源の採取から製品の生産、流通、使用、その廃棄にいたるまでの一連の過程を総合的にとらえて、真に効果的な循環の技術や仕組みを明らかにすることが必要です。ライフサイクルアセスメント(LCA)は、そのような視点から製品やサービスの環境負荷を分析する手法であり、当研究室では、循環型社会の形成に資する施策の効果を評価するため、LCAを適用した研究を行っています。また、廃棄物処理・サイクルの評価にLCAを適用するため、インベントリ分析およびインパクト評価における廃棄物・リサイクルに特有の課題について検討を行ってきました。

●廃棄物処理・サイクルのLCAによる評価手法の検討

 廃棄物・リサイクルを対象としてLCAを実施する際に特に注意すべき点としては、リサイクルに伴うその他の活動の間接的な変化があります。リサイクルを取り扱う場合はその間接的な影響を注意深く検討し、目的に合わせて比較するシステムが同等の機能を持つようにしなければなりません。これは、リサイクルによる再生品が何を代替するのか、すなわち、再生品によってどんな製品の生産が削減されるかといった間接的な影響の想定如何で、得られる結果が大きく異なる場合があるからです。得られる再生品の品質が通常の製品の品質と異なっている場合や再生品の需要に問題がある場合、また、複数の再生品が得られる場合などに、とりわけ注意が必要です。代替されるものが1つに決まらない場合は、複数のシナリオについて検討することも必要でしょう。また、このような留意点に加えて、廃棄物の最終処分のインパクト評価手法などについても検討を行ってきました。

 以上のような評価手法の検討をもとに、事例研究も行っています。例えば、廃プラスチックのリサイクルには表1に示すように、様々な利点・欠点が存在します。LCAは、マテリアル、ケミカル、サーマルなど異なるリサイクルシステム間の比較などに有効な手法です。

廃プラスチックリサイクルの利点と欠点

廃プラスチックリサイクルの利点と欠点

●収集・選別・運搬プロセスを対象とした事例研究

 質の高いリサイクルを行う為には、分別収集が欠かせないプロセスとなります。しかし、家庭から出た資源ごみを分別収集したり、選別・保管したり、リサイクルを行う施設まで輸送するためにはエネルギーを掛ける必要があります。この時消費するエネルギーや、それに伴って排出される二酸化炭素の発生量が、リサイクルすることで削減される量に比べて大きいのであれば、リサイクルすることの意味は薄らいでしまいます。容器包装プラスチック(レジ袋やトレーなど)のリサイクルを対象として、複数の市町村へのヒアリング調査を行った結果、通常これらのプロセスに掛かるエネルギー消費や二酸化炭素の排出は、リサイクルで得られる効果に比べて軽微であることが分かりました。

●製鉄所における廃プラスチックのケミカルリサイクルを対象とした事例研究

 容器包装プラスチックのリサイクル方法には、溶かしてパレットやコンテナーなどに再成形する材料リサイクル、分子構造をばらばらにして化学原料や燃料、還元剤として利用するケミカルリサイクルがあります。ここでは製鉄所でのケミカルリサイクルを取り上げます。製鉄所でのリサイクル方法には、コークス炉化学原料化と高炉還元があります。いずれも既存の設備をそのまま利用できるのが大きな利点です。また、塩素を含む樹脂や異物の混入もある程度許容される技術であることから、容器包装プラスチック(PET以外のプラスチック)のように、現状では必ずしも分別が徹底されておらず、品質がまちまちであるものでも、広く受け入れることの可能なリサイクル方法であるといえます。

廃プラスチックリサイクルのシナリオ

図1 廃プラスチックリサイクルのシナリオ

各リサイクルシナリオにおける二酸化炭素排出量・資源消費量の相対比較(サーマルリサイクルを基準とする)

図2 各リサイクルシナリオにおける二酸化炭素排出量・資源消費量の相対比較(サーマルリサイクルを基準とする)

 LCAを実施するにあたり、製鉄所におけるリサイクル工程を詳細に記述するとともに、石油精製のように、資源の調達に伴う環境負荷も考慮しました。検討したリサイクルシナリオを図1に、LCAの結果を図2に示します。製鉄所での各リサイクルシナリオでは、主に二酸化炭素排出量と石炭消費量が削減されることが予測されました。もう少し詳しく見ると、二酸化炭素排出量と石炭消費量の削減の面では高炉還元のコークス代替が最も有効といえますが、石油消費量の削減の面では、コークス炉化学原料化が有効といえます。ただしこれらの結果は、ごみ焼却発電の発電効率(一律10%を仮定)によっても変動し得るものです。それぞれのシナリオにおける技術やプロセスの進歩によって、これらの差は拡大・縮小・逆転する可能性のあることに注意する必要があります。


<主要関連成果>

・ 橋本征二:廃棄物管理のLCA:その意義、研究事例、留意点、都市清掃、57(258)、137-142、2004

・ 東野達、南齋規介:循環型社会の形成におけるLCAの役割:LCAの考え方と電化製品への適用例の紹介、電気評論、13-20、2004

・ Rokuta Inaba and Yuichi Moriguchi: The consideration of site-dependency of environmental impact in LCA of recycling and waste management system, Abstracts of 10th LCA Case Studies Symposium, 189-193, 2002

・ 稲葉陸太、橋本征二、森口祐一、萩原一仁、中村信夫、鵜飼隆広: 廃プラスチックリサイクルのLCA?コークス炉化学原料化と高炉還元の場合?、第14回廃棄物学会研究発表会講演論文集、110-112、2003

 
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