循環型社会形成システム研究室 研究内容

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耐久財起源の循環資源の適正管理に関する研究

 建設物や自動車、家電などの耐久財は、既に廃棄物発生量のうちの大きな割合を占めていますが、今後、使い捨て型の廃棄物の減量化が見込まれること、社会が成熟し、過去からのストックが更新の時期を迎えることなどから、このような耐久財を起源とする循環資源の重要度が増してくるものと考えられます。そこで当研究室では、こうした耐久財起源の循環資源に焦点をあて、今後の発生量を予測し、そこに含まれる物質の有用性・有害性などの質的側面を評価するとともに、リサイクル・適正処理処分促進のための技術や施策等の管理手法とその効果について検討してきました。

 まず、マテリアルフローの推計に関する研究です。耐久財はある一定の使用期間の後に廃棄される潜在廃棄物とも将来利用されうる潜在的な循環資源ともいうことができます。どのようなモノがどれだけいつ頃に排出されるかを把握することは耐久財起源の循環資源の適正管理に向けた第一歩となります。

●建築物・土木構想物のマテリアルフローの推計

 耐久財のなかでも量で大部分を占める建築物・土木構造物について、主要建材のマテリアルフローを2030年まで推計しました。また、関連するリサイクル技術の動向を整理し、今後の長期的管理の課題を検討しています。その結果、社会における建材の蓄積の全てが廃棄物になるわけではないこと、2030年頃にはコンクリート塊の需給バランスが問題となりうること、処理時に注意を要する建材の適切な管理が重要であることなどが示されました。図1に示すように、社会に蓄積されている建設鉱物のうち、将来的に廃棄物として発生しないであろうものを「失われるストック」と名付けましたが、このような物質をどのように適正に管理すべきか等については今後より詳細な研究を進める必要があります。

 また、建設廃棄物の発生実態に関する日本と欧州主要国との比較分析を行った結果からは、重量ベースの一人あたり建設廃棄物発生量は日本と英独仏とで大差はないが、日本の方が建築・解体のサイクルが速いこと、混合廃棄物の割合が大きいことなどが示されています。


建設鉱物の需要内訳と廃棄内訳(1995)

図1 建設鉱物の需要内訳と廃棄内訳(1995)



●自動車、電気・電子製品のマテリアルフローの推計

 量は建築物ほどでないにしても、現代社会に特徴的な製品といえば自動車や電気・電子製品です。これらの製品には重金属などの有害な物質やレアメタルなどの貴重な物質が含まれていますので、素材・物質ごとのマテリアルフロー推計が求められます。そこで、自動車に用いられる各種素材の時系列的なマテリアルフローを2020年まで推算しました。その結果、アルミとPP、その他プラ(PEとABSを除く)の廃棄が今後増加すること、リサイクルされる素材数は少ない一方で処理処分される素材数が多いことなどが示されました。

 ところで、マテリアルフロー推計のための手法群は、実はまだ体系的に整備されているとはいえない状況です。耐久財のマテリアルフロー推計においては何よりも製品の使用年数を求めることが重要ですので、家電製品を例に使用年数分布の調査方法を開発しています。また、あるシステム内のそれぞれのフローを推計する最適化計算手法の開発も行っています。

 次に、明らかにされたこれらのマテリアルフローがどのような要因によって規程・影響されているかを把握するとともに、何らかの対策・取組を実施した場合の影響と効果を把握することが求められます。

●耐久財の廃棄・保有行動に及ぼす要因の分析

 家電製品と自動車の廃棄・保有行動の要因について、一般消費者の過去ならびに今後予定される行動についてアンケート調査を行い、要因分析を行いました。車の廃棄・買替の主要因は車を変更する意思と車検の時期であること、一方、家電等の主要因は故障であり、また、家電等の修理・リユース意識が高くないだけでなく意識が高い人でもこれらの行動を断念せざるを得ない状況があること、家電等のリユースが必ずしも製品使用年数を長くさせるわけではないことなどが示されました。

乗用車の長期使用が及ぼす環境と経済への影響解析の枠組み

図2 乗用車の長期使用が及ぼす環境と経済への影響解析の枠組み



●乗用車の長期使用による環境と経済への影響解析

 耐久財の長期使用は環境や経済にどのような影響を及ぼすでしょうか。乗用車を例に、産業連関モデルと自動車の廃棄モデルを用いて長期使用の影響解析を行っています。図2がその解析の枠組みです。これまでの解析結果によれば、長期使用による買替需要の低下が経済にマイナスの影響を与えますが、長期使用に付随する家計消費の減少分が乗用車購入以外の消費や貯蓄・投資へ向かった場合の二次的影響を分析すると、GDPを上げつつ産業廃棄物発生量を低減させるシナリオが存在することが分かりました。なお、現在のモデルには、製品のモデルチェンジと長期使用による修理頻度の増加が組み込まれていませんので、さらなる研究を進めています。

●家電リサイクル法施行による効果・影響の実態評価

 上記のようなモデル解析の一方で、実際に行われた施策の効果や影響を実態的に把握・評価することも重要です。これまでに、家電リサイクル法を対象として、その法施行前後における廃棄フローの変化・実態を調査・解析しました。法施行直前の駆込廃棄は主に古い製品の廃棄であること、リサイクル費用の徴収により発生抑制が進む可能性は認められなかったこと、法施行後の排出家電全体のフローのうち法がカバーしているのは約4〜5割であり、使用済み家電全体の包括的評価が求められることなどが示されました。

 (この研究は、2001-2003年度廃棄物処理等科学研究費補助金によるものです)

<主要関連成果>

・ 田崎智宏、寺園淳、森口祐一:長期使用とリユース促進のための家電製品・パソコンの廃棄行動実態とその行動要因の調査、廃棄物学会論文誌、15(4)、310-319、2004

・ 加河茂美、田崎智宏、森口祐一:乗用車の長期使用による環境と経済への影響分析、環境経済・政策学会2003 年大会報告要旨集、78-79、2003

・ (日本語版)田崎智宏、寺園淳、森口祐一、本田大作、宮川英樹:自動車解体業における部品・素材の回収実態と全国推計、第15回廃棄物学会研究発表会講演論文集、245-247、2004 (英語版)Tomohiro Tasaki, Seiji Hashimoto, Atsushi Terazono, and Yuichi Moriguchi: Product-level material flow analysis: a case study of cars in Japan, ConAccount Meeting 2004 book of abstracts, 37, 2004

・ 田崎智宏、寺園淳、森口祐一:物質フローと廃棄行動の変化に基づく家電リサイクル法の施行影響の把握、環境経済・政策学会2003 年大会報告要旨集、112-113、2003

・ (日本語版)橋本征二、谷川寛樹、森口祐一:建設鉱物のマテリアルバランス〜失われるマテリアルストックと再生砕石の需給に関する検討、第31 回環境システム研究論文発表会講演集、497-502、2003 (英語版)Seiji Hashimoto, Hiroki Tanikawa, and Yuichi Moriguchi: Where will huge amount of Net Additions to Stock (NAS) of materials within the economic system go?: Material flow analysis of construction minerals, Proceedings of the 6th International Conference on Ecobalance, 193-196, 2004

 
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