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ティーエスワン(TS-1)について

ティーエスワンの特徴

 ティーエスワンはテガフール(FT)、ギメラシル(CDHP)、オテラシルカリウム(Oxo)の3成分を配合した経口抗悪性腫瘍剤です。 FT:CDHP:Oxo = 1:0.4:1

テガフール:FT
 5-FUのプロドラッグであり、主として肝ミクロゾームP450(CYPsA6)により徐々に5-FUに変換される
ギメラシル:CDHP
 主として肝に多く分布する5-FUの異化代謝酵素のジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)を選択的に阻害(可逆的)することにより、テガフールより派生する5-FU濃度の上昇に伴って、腫瘍内では5-FUのリン酸化代謝物である5-フルオロヌクレオチド(FUMP等)が高濃度持続し、抗腫瘍効果が増強する。
オテラシルカリウム:Oxo
 主として消化管組織に分布してオロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ(OPRT)を選択的に阻害し、5-FUからFUMPへの生成を選択的に抑制する。その結果、ティーエスワン投与により5-FUの強い抗腫瘍効果を損なうことなく、消化管障害が軽減されると考えられている。

■ 警告
1.本剤を含むがん化学療法は、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで本療法が適切と判断される症例についてのみ実施すること。適応患者の選択にあたっては、各併用薬剤の添付文書を参照して十分注意すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
2.本剤は従来の経口フルオロウラシル系薬剤とは投与制限毒性(Dose Limiting Toxicity、 DLT)が骨髄抑制という点で異なり(「副作用」の項参照)、特に臨床検査値に十分注意する必要がある。頻回に臨床検査を実施すること。
3.劇症肝炎等の重篤な肝障害が起こることがあるので、定期的に肝機能検査を行うなど観察を十分に行い、肝障害の早期発見に努めること。肝障害の前兆又は自覚症状と考えられる食欲不振を伴う倦怠感等の発現に十分に注意し、黄疸(眼球黄染)があらわれた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。
4.他のフッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤、これらの薬剤との併用療法(ホリナート・テガフール・ウラシル療法等)、あるいは抗真菌剤フルシトシンとの併用により、重篤な血液障害等の副作用が発現するおそれがあるので、併用を行わないこと。(「相互作用」の項参照)。
5.本剤使用にあたっては添付文書を熟読し、用法・用量を厳守して投与すること。

効能・効果

 胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、 手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌

用法・用量

※ 空腹時投与ではオテラシルカリウムのバイオアベイラビリティが変化し、フルオロウラシルのリン酸化が抑制され、抗腫瘍効果の減弱お起こることが予想されるため食後投与とする。

初回基準量
 通常、成人には初回投与量(1回量)を体表面積に合わせて次の基準量とし、朝食後及び夕食後の1日2回、28日間連日経口投与し、その後14日間休薬する。これを1クールとして投与を繰り返す。
体表面積 テガフール相当量 処方量
1.25m未満 1回40mg

ティーエスワン(20) 4カプセル

2×朝・夕食後

1.25m〜1.5m未満 1回50mg

ティーエスワン(25) 4カプセル

2×朝・夕食後

1.5m以上 1回60mg

ティーエスワン(20) 6カプセル

2×朝・夕食後

最大投与量 1回75mg

ティーエスワン(25) 6カプセル

2×朝・夕食後

LinkIcon体表面積換算表はこちら。(別ウインドウで開きます)

 なお、患者の状態により適宜増減する。増減量の段階を40mg、50mg、60mg、75mg/回とする。増量は本剤の投与によると判断される臨床検査値異常(血液検査、肝・腎機能検査)及び消化器症状が発現せず、安全性に問題がなく、増量できると判断される場合に初回基準量から一段階までとし、75mg/回を限度とする。また、減量は通常一段階ずつ行い、最低投与量は40mg/回とする。
※ 投与前に必ず身長・体重を測定し、体表面積より1日処方量を設定すること。また、ティーエスワンに含まれるギメラシルは腎排泄型であるため、クレアチニン値も考慮すること。

投与方法(胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌、 手術不能又は再発乳癌、膵癌、胆道癌)
 ティーエスワン21日間(3週間)連日経口投与に、シスプラチン60mg/m2を第8日目に投与し、その後、14日間(2週間)休薬する。これを1クールとして投与を繰り返す。
 シスプラチンの投与前後は十分な尿量確保のためハイドレーションを行う。なお、心疾患が疑われる場合、胸水、腹水がある場合には、過剰な水分負荷にならないように注意する。また、シスプラチンの投与量の増加に伴い聴器障害の発現頻度が高くなり、特に1日投与量では80mg/m2以上で、総投与量では300mg/m2を超えるとその傾向は顕著となりますので、シスプラチンの投与に関しては蓄積性を考慮して投与を行う。
※ 非小細胞癌における本剤単剤での使用については、有効性及び安全性は確立していません。

休薬期間について
 休薬期間は原則として14日間であるが、本剤の投与によると判断される臨床検査値異常(血液・肝・腎機能検査)および消化器症状が発現せず、安全性に問題がない場合には休薬期間を短縮できる。しかし、その場合でも、少なくとも7日間は休薬すること。
 なお、手術不能又は再発乳癌においては休薬期間の短縮を行った場合の安全性は確立していない(使用経験はない)。

飲み忘れた場合の対処法
 飲み忘れた場合は、飲み忘れの分をとばし(内服せず)次の分から服用し、絶対に2回分を一度に飲まないようにする。

長期投与について
 本剤の長期投与により副作用の増強等も考えられため、定期的な臨床検査ならびに問診を行うこと。
 なお、非小細胞肺癌における本剤と併用されるシスプラチンでは、シスプラチンの投与量の増加に伴い聴器障害の発現頻度が高くなるため、シスプラチンの投与に関しては蓄積性を考慮して投与する。

ティーエスワン投与終了後の治療
 本剤を含む癌化学療法終了後に他治療に変更する場合には、十分な間隔をおき、臨床検査及び患者状態を確認の上、他治療を実施すること。

臨床検査
骨髄抑制、劇症肝炎等の重篤な副作用を回避するため各クール開始前及び投与期間中は2週間に1回以上、臨床検査(血液検査、肝・腎機能検査等)を行い、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には休薬期間の延長、上記に応じた減量、投与中止などの適切な処置を行う。特に1クール目及び増量時には頻回に臨床検査を実施すること。

妊婦・産婦・授乳婦等への投与について
(1)妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。[テガフール・ウラシルを投与された婦人において奇形を有する児を出産したとの報告あり。また、動物実験で催奇形作用の報告あり。]
(2)授乳婦に投与する場合には授乳を中止すること。[使用経験はないが、動物実験(ラット)で乳汁中移行が報告されている。]

投与期間中の観察項目(胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、手術不能または再発乳癌)
 本剤を含むがん化学療法開始後は、2週間に1回以上の臨床検査(血液学的検査、肝機能検査、腎機能検査)ならびに臨床症状について問診(臨床症状の変化)を実施すること。異常が認められた場合には、休薬、減量、治療薬投与など適切な処置を行う。
 次クール開始前には必ず臨床検査を実施するとともに、患者状態を十分把握し、投与の可否(休薬延長、減量投与)の判断を行う。なお、体重が減少した場合には投与基準量の見直しを図る。

副作用の好発時期(単独投与)
 使用成績調査(胃癌)中間集計の結果より主な副作用の好発時期を示します。 本剤投与後は患者の状態を十分観察して下さい。
副作用の好発時期(単独投与)

投与期間中の観察項目(非小細胞癌)
 非小細胞肺癌においては、後期臨床第II相試験(本剤21日間連日経口投与にシスプラチン 60mg/m2を第8日目に投与)で用いられた用法・用量以外では有効性、安全性が確立されておりません。
 本剤及びシスプラチン併用療法開始後は、1週間に1回以上の臨床検査(血液学的検査、肝機能検査、腎機能検査)ならびに臨床症状について問診を実施すること。特に非小細胞肺癌では、間質性肺炎等肺障害が他の癌腫より発現しやすい可能性があるため、本剤投与中は呼吸状態、咳、発熱の有無等の臨床症状を十分観察し、又、必要に応じて胸部X線検査等を行うこと。
 異常が認められた場合には、休薬、減量、治療薬投与など適切な処置を行う。

※ 「効能効果」、「用法・用量」、「使用上の注意」等、詳細につきましては最新の添付文書をご参照下さい。

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