「ホフマン物語」は、オッフェンバックのオペラですが、バレエ化した映画があります。オペラではステラはプリマドンナのソプラノ歌手ですが、この映画では、プリマ・バレリーナという設定になっています。この映画が、最近、DVDで発売になりました。
オペラは、プロローグ、3つのエピソード、エピローグからなっていますが、この映画では代表的な歌曲を中心に全体を再構成し、パントマイムとバレエに入れ替え、周辺人物や説明を大幅に割愛しています。こうすることで、やや退屈な3時間以上のオペラが、上映時間は約2時間のスピード感溢れる映画になっています。
シアラーの「蜻蛉の踊り」や「オリンピア」はすばらしく、バレエ映画としては、こちらをより傑作とする評価もあります。
出演者は、モイラ・シアラー、ロバート・ヘルプマン、レオニード・マシー ン、そしてアシュトン。いずれも英国バレエ史に名を残すトップスターたち。振付がフレデリック・アシュトンという豪華版。
物語は、バレエダンサーに振られたと思い込んだホフマンが、劇場の近くの酒場で仲間たちと飲んだくれ、彼らのリクエストに応えて3つの幻想的な物語を語り始めます。
第1話は、若い学生のホフマンが、魔法のメガネ越しに見る自動人形のオランピアに心惹かれる物語です。オランピアを演じているのは「赤い靴」のモイラ・シアラー。彼女はプロローグとエピローグでも、ホフマンの恋人役で登場しています。いわば彼女は、現実と幻想の架け橋となるヒロインです。第1話は、映画の中でもっともバレエが多く取り入れられているところです。機械仕掛けのオランピアは、ゼンマイが切れると動かなくなってしまいます。ゼンマイを巻き直すと、また動き始めます。オランピアとホフマンが踊るシーンがとても面白い。突然人形のクビがはずれたり、最後にオランピアがばらばらにされてしまうなど、少し残酷なシーンもありますが、とても面白い。
第2話は少しお金持ちになったホフマンが、ヴェネチアの高級娼婦(コーティザン)に影を盗まれるお話。これ以降は、バレエよりも歌が全面に出てきます。ここでは、有名な「ホフマンの舟歌」が使われています。
第3話はギリシアの孤島に待つ病気の恋人を有名な詩人になったホフマンが訪ねる話。
ヒロインのアントニアを演じているソプラノ歌手のアン・エアーズは、見事な歌声を聴かせています。ここでは、バレエはほとんどありません。
プロローグからエピローグまで、語り手であるホフマンと彼からヒロインを奪うロバート・ヘルプマンが登場します。また、レオニード・マシーンがホフマンと対照的な男性キャラクターを演じているのが興味深いところです。
「ホフマン物語」1951年 イギリス映画
製作・監督・脚本 マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー
振付 フレデリック・アシュトン
作曲 ジャック・オッフェンバック
台本 ジュール・バルビエ
指揮 サー・トマス・ビーチャム
演奏 ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
美術・衣装 ハイン・ヘックロート
キャスト
モイラ・シアラー
ルドミーラ・チェリーナ
レオニード・マシーン
フレデリック・アシュトン
ロバート・ヘルプマン
ロバート・ラウンズヴィル
ヒロインのモイラ・シアラーは、1946年頃から、サドラーズ・ウェルズバレエ(現ロイヤルバレエ)で活躍していました。
バレエ団のプリマは、3歳先輩のマーゴット・フォンティーンでしたが、このバレエ団の「シンデレラ」初演は、シアラーが主役を務めています。
シアラーは、映画「赤い靴」に主演して、一時、しのぐほどの人気者になりました。
「赤い靴」の成功以後、シアラーは、「ホフマン物語」「三つの恋の物語」など、映画出演に重点をおき、舞台出演を減らしました。
この選択が失敗だった?か、人気は長続きせず、バレリーナとしての人生は短命でした。舞台を完全に辞めたのがいつかはっきりしませんが、、天才ヌレエフをパートナーに得て人気を維持し、60歳近くまで、長いステージ生活を現役で送り続けた
マーゴ・フォンティーンとは対象的です。
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