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白鳥の湖:志賀育恵・黄凱、東京シティバレエ (2006.7.15)
志賀育恵が、オッデト/オディールを踊ると知って、急いでチケットを買いました。
志賀育恵さんは、
東京シティバレエ団の若きプリマ・バレリーナ。彼女の踊りを観るのは「
コッペリア」以来4年ぶりのこと。「コッペリア」でのスワニルダは、派手ではないが、軽やかで繊細で正確で、しかも、表情がとても豊かだったと記憶しています。今回は、古典バレエの最大の名作、彼女が、どんなオッデト/オディールを踊ってくれるかとても興味がありました。
難役中の難役、オッデト/オディールに挑む育恵さん、本番を数日後に控えて、彼女は
ご自身のブログに次のようなメッセージを残していました。
「今週末、本番・・・。緊張する〜、お腹痛〜い。本番まで持ってくれ私の身体・・・」、経験豊富なプリンシパルの育恵さんでさえ、「白鳥〜」の主役は相当なプレッシャーだったのでしょう。一方、ファンからの「白鳥、黒鳥それぞれ気を付けてるポイント教えて」という質問に、「白鳥は悲しいけれど、凛とした姿や、細かいステップに気をつけています。そしてクラスをするように基礎に忠実にやってます。
チュチュだし、Vaも基礎基礎って嫌にくらいなステップばかり…。後は、ポーズの意味や、立ち位置の場所の意味。
白鳥は本当に奥が深く、いろんなところに意味を探しながら…。黒鳥は…王子を落とす!!。
でも、黒鳥もステップが雑にならないように気をつけてます。何よりも、その作品でで全く別の役を演じる難しさを楽しんで踊ってます(彼女のブログより)」と、自信と意欲も覗かせていました。
「
クラスをするように基礎に忠実に」と語っていた通り、
今回のオデット、この古典バレエの基本を忠実に守り、柔らかい背中と、すっと伸びた脚の作る空間は、惚れ惚れするほど素敵でした。
一方、オディールは、「
黒鳥もステップが雑にならないように」アダージョもヴァリエーションも、上品過ぎるくらい丁寧なステップと美しいポーズで、
妖艶というよりも爽やかさを感じました。私はむしろこんなオディールの方が好きです。
見せ場のアラベスクのバランスでは、パートナーに支えてもらった右腕がやや揺れたものの必死に堪えて、180度を超えるほどの極限の開脚に挑戦。観客の拍手を誘いました。
ただコーダのグラン・フェッテでは、いまいち調子が良くなかったのか、それまでの笑顔が一転険しい表情に変わり、回転がやや不安定でハラハラしました。
終盤疲れが出たのでしょうか、回転が止まりそうになり、あわや・・・と思ったものの、懸命に立て直し、頑張って最後まで回りきったのは立派でした。
踊り終えて大きく肩で息をしながらも、ホッとした美しい笑顔に戻りました。ブログに「
私、回転苦手だからな〜。」と書いていた彼女ですが、苦手な回転に懸命に取り組む、彼女のひたむきな努力に、彼女から勇気を与えてもらったようで、胸が熱くなりました。
ひいきのダンサーが、技術的にも精神面でも着実に成長している姿を目の当たりにして、本当に嬉しく思いました。バレエが一層好きになりました。
黄凱さんのジークフリートは、どの場面も完璧なまでの美しさと表現力で、胸が痛くなる様な叙情的な世界を創り上げていました。
志賀育恵さんとの息もぴったりで、育恵さん、安心して身を任せているというようででした。
アダージョが終わったとき、二人目を合わせて、「うまくいって良かったね」「上手なサポートありがとう」と言っているようで、微笑ましさを感じました。
第4幕、通常の群舞ではなく、代わって、「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(だと思う?)の曲が挿入されていましたが、これがとてもよく調和していました。
第4幕の終わりに、突然照明が消えステージの真っ暗になりましたが、再び照明が点くと、育恵さんや他の白鳥たちのチュチュが普通の衣装に変わっていてビックリ。わずかな時間に着替えたテクニックも見事。
白鳥は人間の姿に戻ったのです。演出の石田種生氏は、「愛は死よりも強し」という考えを、今回の演出には表現したとのことですが、
オデットと王子が、死によって愛を完全なものにするのではなく、生きて愛を実らせ、他の白鳥たちも復活する・・
という大いなる愛の賛歌、改めて古典バレエ本来の美しさを残しながら、改変の素晴らしさをしみじみと感じさせてくれた見事な演出でした。
育恵さんが、「4幕がいいのよ〜」とブログで言っていた訳が分かりました。
この「白鳥の湖」、舞台全体から受ける雰囲気がとてもいいのです。特に華やかさがあるとか、技術が際立っているとか、
いうことではないのですが、ステージの展開が実に滑らかで、全4幕にわたって、ほんわかした温かな感触なのです。
また、
福田一雄さんの指揮した東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 も、スケールは大きくはないものの一糸乱れぬ堅実な演奏で、
ステージのダンサーたちを的確にサポートしていました。
久しぶりに「白鳥はこうで無ければ・・・」と感じた、本当に素敵な「白鳥の湖」でした。
ダンサーの皆さん、スタッフの方々、お疲れ様、夢を有り難う!!!。
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2006年7月15日(土)、ティアラこうとう 大ホール
出演:オデット/オディール=志賀育恵、ジークフリート王子=黄凱
ロットバルト=青田しげる
演奏:福田一雄指揮、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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