今年もNHKテレビで、ウィーン楽友協会大ホールから生中継された、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを楽しみました。
今回の指揮者はジョルジュ・プレートル。ジョルジュ・プレートルはフランス・レジオン・ドヌール勲章と
オーストリア学術・文化名誉十字勲章という、フランス国内外双方の最高勲章を受けた、
数少ないフランス人アーティストで、ウィーン楽友協会の名誉会員でもあるとのこと。
2008年に続き、2度目の登場です。史上最高齢の85歳。ところが演奏はダイナミック、とても85歳とは思えませんでした。
昨年のダニエル・バレンボイムの全体的に固く重いシンフォニックな演奏は、私好みではなかったのですが、ジョルジュ・プレートルの指揮による今回の演奏は、とても楽しめました。一昨年も非常に爽やかだったと記憶していますが、今回も楽しく気持ちよく聴くことができました。舞曲を奏でる際のリズム感覚と軽妙さが絶妙で、とても表情が豊かで、心から音楽を楽しんでいる感じがしました。フランス人ならではのユーモアとエスプリとでも言うのでしょうか。パリの粋とウィーンの粋とが融合した素晴らしい演奏会でした。
定番のシュトラウス一家の曲に加え、2010年に生誕200年になるニコライやニューイヤー初登場のロンビの作品が演奏されました。ロンビはデンマークの作曲家。オーケストラのためのワルツやポルカ、マズルカ、ギャロップなどを残し、「北国のヨハン・シュトラウス」の異名をとっています。ロンビの「シャンパン・ギャロップ」は「シャンパンのコルクを抜いたときのはじけた音」に始まり、演奏中に本物のシャンパンコルクを4回ほどパンと抜く音が斬新で楽しい曲でした。
コンサート恒例のバレエシーンはウィーンの美術史美術館で撮影されたそうで、
ポルカ・マズルカ「心と魂」のゲストは、パリ・オペラ座バレエ団のエレオノーラ・アッバニャートとニコラ・ル・リッシュで、 振付はレナート・ツァネラとのこと。真っ赤なドレスを纏ってニコラにエスコートされるエレオノーラが美しかった。ワルツ「朝の新聞」はウィーン国立歌劇場バレエ団とウィーンフォルクスオーパーバレエ団でした。
私はプレートルには思い出があります。
私が初めて買ったオペラ全曲レコード盤が、このジョルジュ・プレートルの指揮による「カルメン」だったのです。
1965年、私が大学1年の時で、マリア・カラスのカルメン、ニコライ・ゲッダのドン・ホセ、パリ国立歌劇場管弦楽団による3枚組のLPレコードです。
定価6000円は、学生の私にはかなり高額で、アルバイト代を貯めて、やっと買うことができました。
当時のマリア・カラスのレコードの多くはイタリア歌劇で、恩師トゥリオ・セラフィン指揮によるものが多かったのですが、マリア・カラスは若きプレートルに絶大な信頼をおいていたとのことで、
彼女は、ビゼー作のカルメンの指揮者に、同じフランス人の新進指揮者プレートルを抜擢したということです。
このレコードは、カラスの息詰まるような迫力と、軽快でかつドラマチックなプレートルの指揮、それに当時としては抜群の録音の良さで、
「レコード芸術」等の雑誌で話題になりました。プレートルは、それまで日本では、殆んど知られていませんでしたが、これ以後、
フランス音楽の演奏者として名を馳せるようになりました。
なお、今回のテレビ中継は、昨年までと違い、NHKの女性アナウンサーが、第1部と第2部の冒頭に、簡単に説明しただけで、ストレートにウィーンから中継をそのまま流していましたが、これはとても良かった。昨年までは、このコンサートに場違いと思えるようなゲストが沢山出てきて、ろくでもない賛辞を繰り返すのにうんざりでしたが、今回は、風景やリハーサル映像を流していて、楽しめました。次回以降も、こうして欲しいと思います。ともあれ、地球の裏側で行われているニューイヤーコンサートを、同じ時間に日本に居ながらにして、ハイビジョンの高画質で観ることができるなんて、本当に素晴らしいことだと思います。
ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2010
第1部
J.シュトラウス2世:喜歌劇《こうもり》序曲
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ《女心》
J.シュトラウス2世:ポルカ《クラプフェンの森で》
J.シュトラウス2世:ポルカ《恋と踊りに熱中して》
J.シュトラウス2世:ワルツ《酒・女・歌》
J.シュトラウス2世:常動曲
第2部
オットー・ニコライ:喜歌劇《ウィンザーと陽気な女房たち》序曲
J.シュトラウス2世:ワルツ《ウィーンのボンボン》
J.シュトラウス2世:シャンパン・ポルカ
J.シュトラウス2世:ポルカ・マズルカ《心と魂》
J.シュトラウス1世:パリのカーニヴァル
オッフェンバック:喜歌劇《ライン川の水の精》序曲
エドゥアルト・シュトラウス:美しきエレーヌのカドリーユ
ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ《朝刊》
ハンス・クリスティアン・ロンビ:シャンパン・ギャロップ
ヨハン・シュトラウスU:ポルカ《狩り》
ヨハン・シュトラウスU:ワルツ《美しく青きドナウ》
ヨハン・シュトラウスT:ラデツキー行進曲
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ジョルジュ・プレートル
2010年1月1日 オーストリア・ウィーン楽友協会から中継
歴代ニュー・イヤー・コンサートの指揮者 ( )は回数
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