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ウィーンフィル・ニューイヤー・コンサート2010    (2010.01.02)

今年もNHKテレビで、ウィーン楽友協会大ホールから生中継された、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを楽しみました。
 
今回の指揮者はジョルジュ・プレートル。ジョルジュ・プレートルはフランス・レジオン・ドヌール勲章と オーストリア学術・文化名誉十字勲章という、フランス国内外双方の最高勲章を受けた、 数少ないフランス人アーティストで、ウィーン楽友協会の名誉会員でもあるとのこと。 2008年に続き、2度目の登場です。史上最高齢の85歳。ところが演奏はダイナミック、とても85歳とは思えませんでした。 昨年のダニエル・バレンボイムの全体的に固く重いシンフォニックな演奏は、私好みではなかったのですが、ジョルジュ・プレートルの指揮による今回の演奏は、とても楽しめました。一昨年も非常に爽やかだったと記憶していますが、今回も楽しく気持ちよく聴くことができました。舞曲を奏でる際のリズム感覚と軽妙さが絶妙で、とても表情が豊かで、心から音楽を楽しんでいる感じがしました。フランス人ならではのユーモアとエスプリとでも言うのでしょうか。パリの粋とウィーンの粋とが融合した素晴らしい演奏会でした。
 
定番のシュトラウス一家の曲に加え、2010年に生誕200年になるニコライやニューイヤー初登場のロンビの作品が演奏されました。ロンビはデンマークの作曲家。オーケストラのためのワルツやポルカ、マズルカ、ギャロップなどを残し、「北国のヨハン・シュトラウス」の異名をとっています。ロンビの「シャンパン・ギャロップ」は「シャンパンのコルクを抜いたときのはじけた音」に始まり、演奏中に本物のシャンパンコルクを4回ほどパンと抜く音が斬新で楽しい曲でした。
 
コンサート恒例のバレエシーンはウィーンの美術史美術館で撮影されたそうで、 ポルカ・マズルカ「心と魂」のゲストは、パリ・オペラ座バレエ団のエレオノーラ・アッバニャートとニコラ・ル・リッシュで、 振付はレナート・ツァネラとのこと。真っ赤なドレスを纏ってニコラにエスコートされるエレオノーラが美しかった。ワルツ「朝の新聞」はウィーン国立歌劇場バレエ団とウィーンフォルクスオーパーバレエ団でした。
 
私はプレートルには思い出があります。 私が初めて買ったオペラ全曲レコード盤が、このジョルジュ・プレートルの指揮による「カルメン」だったのです。 1965年、私が大学1年の時で、マリア・カラスのカルメン、ニコライ・ゲッダのドン・ホセ、パリ国立歌劇場管弦楽団による3枚組のLPレコードです。 定価6000円は、学生の私にはかなり高額で、アルバイト代を貯めて、やっと買うことができました。 当時のマリア・カラスのレコードの多くはイタリア歌劇で、恩師トゥリオ・セラフィン指揮によるものが多かったのですが、マリア・カラスは若きプレートルに絶大な信頼をおいていたとのことで、 彼女は、ビゼー作のカルメンの指揮者に、同じフランス人の新進指揮者プレートルを抜擢したということです。 このレコードは、カラスの息詰まるような迫力と、軽快でかつドラマチックなプレートルの指揮、それに当時としては抜群の録音の良さで、 「レコード芸術」等の雑誌で話題になりました。プレートルは、それまで日本では、殆んど知られていませんでしたが、これ以後、 フランス音楽の演奏者として名を馳せるようになりました。
 
なお、今回のテレビ中継は、昨年までと違い、NHKの女性アナウンサーが、第1部と第2部の冒頭に、簡単に説明しただけで、ストレートにウィーンから中継をそのまま流していましたが、これはとても良かった。昨年までは、このコンサートに場違いと思えるようなゲストが沢山出てきて、ろくでもない賛辞を繰り返すのにうんざりでしたが、今回は、風景やリハーサル映像を流していて、楽しめました。次回以降も、こうして欲しいと思います。ともあれ、地球の裏側で行われているニューイヤーコンサートを、同じ時間に日本に居ながらにして、ハイビジョンの高画質で観ることができるなんて、本当に素晴らしいことだと思います。
 
ちなみに、2011年の指揮者はランツ・ウェルザー=メストだそうです。 彼はオーストリア出身で、2010年秋からウィーン国立歌劇場の音楽監督だそうですから、ウフィンナワルツやポルカはお手の物といったところでしょう。楽しみです。(New Year's Concert 2011 →)
    ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2010
     
    第1部 
    J.シュトラウス2世:喜歌劇《こうもり》序曲
    ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ《女心》
    J.シュトラウス2世:ポルカ《クラプフェンの森で》
    J.シュトラウス2世:ポルカ《恋と踊りに熱中して》
    J.シュトラウス2世:ワルツ《酒・女・歌》
    J.シュトラウス2世:常動曲
     
    第2部 
    オットー・ニコライ:喜歌劇《ウィンザーと陽気な女房たち》序曲
    J.シュトラウス2世:ワルツ《ウィーンのボンボン》
    J.シュトラウス2世:シャンパン・ポルカ
    J.シュトラウス2世:ポルカ・マズルカ《心と魂》
    J.シュトラウス1世:パリのカーニヴァル
    オッフェンバック:喜歌劇《ライン川の水の精》序曲
    エドゥアルト・シュトラウス:美しきエレーヌのカドリーユ
    ヨハン・シュトラウス2世:ワルツ《朝刊》
    ハンス・クリスティアン・ロンビ:シャンパン・ギャロップ
     
    アンコール
    ヨハン・シュトラウスU:ポルカ《狩り》
    ヨハン・シュトラウスU:ワルツ《美しく青きドナウ》
    ヨハン・シュトラウスT:ラデツキー行進曲
     
    管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮:ジョルジュ・プレートル
     
      2010年1月1日 オーストリア・ウィーン楽友協会から中継       
歴代ニュー・イヤー・コンサートの指揮者 ( )は回数
1941 クレメンス・クラウス(1)1942 クレメンス・クラウス(2)1943 クレメンス・クラウス(3)1944 クレメンス・クラウス(4)1945 中止
1946 ヨーゼフ・クリップス(1)1947 ヨーゼフ・クリップス(2)1948 クレメンス・クラウス(5)1949 クレメンス・クラウス(6)1950 クレメンス・クラウス(7)
1951 クレメンス・クラウス(8)1952 クレメンス・クラウス(9)1953 クレメンス・クラウス(10)1954 クレメンス・クラウス(11)1955 ボスコフスキー(1)
1956 ウィリー・ボスコフスキー(2)1957 ウィリー・ボスコフスキー(3)1958 ウィリー・ボスコフスキー(4)1959 ウィリー・ボスコフスキー(5)1960 ウィリー・ボスコフスキー(6)
1961 ウィリー・ボスコフスキー(7)1962 ウィリー・ボスコフスキー(8)1963 ウィリー・ボスコフスキー(9)1964 ウィリー・ボスコフスキー(10)1965 ウィリー・ボスコフスキー(11)
1966 ウィリー・ボスコフスキー(12)1967 ウィリー・ボスコフスキー(13)1968 ウィリー・ボスコフスキー(14)1969 ウィリー・ボスコフスキー(15)1970 ウィリー・ボスコフスキー(16)
1971 ウィリー・ボスコフスキー(17)1972 ウィリー・ボスコフスキー(18)1973 ウィリー・ボスコフスキー(19)1974 ウィリー・ボスコフスキー(20)1975 ウィリー・ボスコフスキー(21)
1976 ウィリー・ボスコフスキー(22)1977 ウィリー・ボスコフスキー(23)1978 ウィリー・ボスコフスキー(24)1979 ウィリー・ボスコフスキー(25)1980 ロリン・マゼール(1)
1981 ロリン・マゼール(2)1982 ロリン・マゼール(3)1983 ロリン・マゼール(4)1984 ロリン・マゼール(5)1985 ロリン・マゼール(6)
1986 ロリン・マゼール(7)1987 ヘルベルト・フォン・カラヤン(1)1988 クラウディオ・アバド(1)1989 カルロス・クライバー(1)1990 ズービン・メータ(1)
1991 クラウディオ・アバド(2)1992 カルロス・クライバー(2)1993 リッカルド・ムーティ(1)1994 ロリン・マゼール(8)1995 ズービン・メータ(2)
1996 ロリン・マゼール(9)1997 リッカルド・ムーティ(2)1998 ズービン・メータ(3)1999 ロリン・マゼール(10)2000 リッカルド・ムーティ(3)
2001 ニコラウス・アーノンクール(1)2002 小澤征爾(1)2003 ニコラウス・アーノンクール(2)2004 リッカルド・ムーティ(4)2005 ロリン・マゼール(11)
2006 マリス・ヤンソンス(1)2007 ズービン・メータ(4)2008 ジョルジュ・プレートル(1)2009 ダニエル・バレンボイム(1)2010 ジョルジュ・プレートル(2)

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