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ウィーンフィル・ニューイヤー・コンサート2009    (2009.01.02)

今年もNHKテレビで、ウィーン楽友協会大ホールから生中継された、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートを楽しみました。
 
2009年は、ダニエル・バレンボイムの指揮。 ピアニストとしても有名なバレンボイムは、バイロイトやシカゴ響、ベルリン・フィル、ベルリン国立歌劇場などで数多く指揮を重ね、録音も多く残しており、ウィーン・フィルとも共演を行っていますが、ニューイヤーコンサートの指揮は初めてです。 2008年のジョルジュ・プレートルも初演だったので、2年連続の初登場指揮者ということになります。一曲目の「喜歌劇“ベネチアの一夜”序曲(ベルリン版)」が演奏されましたが、この曲はベルリンで初演された音楽だそうで、自身がベルリン国立歌劇場の音楽監督をしているので、これをアッピールしたのでしょうか。

演奏曲目は従来のシュトラウス一家とヘルメスベルガーの曲に加え、2009年はハイドン没後200周年ということで、第二部の最後、アンコールの前に、ハイドンの交響曲第45番「告別」の第4楽章が演奏されました。「告別」の第4楽章は、作曲家の指示で演奏者がステージから退出する演出があります。「告別」はニコラウス・エステルハージ侯のために作曲され、作曲当時、ハイドンと宮廷楽団員は、エステルハージ家の夏の離宮エステルハーザに滞在中で、滞在期間が予想以上に長びいたため、ほとんどの楽団員がアイゼンシュタットの住居に妻を送り返さなければならなかった。 このためハイドンは、エステルハージ侯が進んで、楽団員の帰宅を認める気持ちになるように、終楽章で巧みにエステルハージ侯に訴えたのです。 終楽章後半の「アダージョ」で、演奏者は1人ずつ演奏をやめ、ロウソクの火を吹き消して交互に立ち去って行き、最後に、2人の弱音器をつけたヴァイオリン奏者のみが取り残されたということです。エステルハージ侯は、この訴えを汲み取り、初演の翌日に宮廷はアイゼンシュタットに戻されたそうです。今回のニューイヤーコンサートでも最後はヴァイオリン奏者が二人になってしまいました。もっとも、この曲の演奏終了後には、退出した楽員は戻ってきて、アンコールの為に備えていました。

このような粋な演出もありましたが、バレンボイムの指揮は全体的に固く、私好みではありませんでした。バレンボイムは、バレエ「白鳥の湖」や「くるみ割り人形」のDVDで、とてもよい演奏をしていたので、ウィンナワルツやポルカも期待したのですが、正直のところ、あまり上手いとは思わなかった。ウィンナーワルツのやわらかさや遊びの感覚は欠けていたように思えます。正直、昨年のフランス人のジョルジュ・プレートルの演奏の方が、はるかに面白かった。ちなみに、来年は、再びジョルジュ・プレートルが指揮するそうです。

「宝のワルツ」 、「ポルカ“ハンガリー万歳”」、アンコールの「美しき青きドナウ」でバレエが踊られましたが、例年に比べ中途半端でつまらなかった。「宝のワルツ」には、ウラジミール・マラーホフが踊りましたが、年のせいか、来日の時のような精彩がなかった。「ポルカ“ハンガリー万歳”」の男性ダンサーは良かったのですが、「青きドナウ」では、昨年と同様、客席に入って踊る演出で、天使に扮した少年と、少女たちのバレエは愛らしいものでしたが、子供のダンサーでお茶をにごした感じで、どうか?と思いました。

ともあれ、地球の裏側で行われているニューイヤーコンサートを、同じ時間に日本に居ながらにして、ハイビジョンの高画質で観ることができるなんて、本当に素晴らしいことだと思います。  
    ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2009 
                                  
    − 第1部 −                      
    「喜歌劇“ベネチアの一夜”序曲(ベルリン版)」       
    「ワルツ“東洋のおとぎ話”作品447」           
    「アンネン・ポルカ 作品117」              
    「速達ポルカ 作品159」                 
    「ワルツ“南国のばら”作品388」             
    「ポルカ“百発百中”作品326」              
                      ヨハン・シュトラウス作曲
                                  
     − 第2部 −                      
    「喜歌劇“ジプシー男爵”序曲」               
    「喜歌劇“ジプシー男爵”入場行進曲」            
    「宝のワルツ 作品418」                 
                      ヨハン・シュトラウス作曲
                                  
    「スペイン風ワルツ」          ヘルメスベルガー作曲
                                  
    「ザンパのギャロップ」     ヨハン・シュトラウス父・作曲
                                  
    「アレクサンドリーネ・ポルカ 作品198」         
    「ポルカ“雷鳴と電光”作品324」  ヨハン・シュトラウス作曲
                                  
    「ワルツ“天体の音楽”作品235」ヨーゼフ・シュトラウス作曲
                                  
    「ポルカ“ハンガリー万歳”作品332」 ヨハン・シュトラウス作曲
                                  
    「交響曲 第45番“告別”から 第4楽章」   ハイドン作曲

    アンコール「ワルツ“美しき青きドナウ”作品314」ヨハン・シュトラウス作曲                              
         「ラデッキー行進曲 作品228」ヨハン・シュトラウス1世作曲                               

     (演奏)ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (指揮)ダニエル・バレンボイム
      2009年1月1日 オーストリア・ウィーン楽友協会から中継       
歴代ニュー・イヤー・コンサートの指揮者 ( )は回数
1941 クレメンス・クラウス(1)1942 クレメンス・クラウス(2)1943 クレメンス・クラウス(3)1944 クレメンス・クラウス(4)1945 中止
1946 ヨーゼフ・クリップス(1)1947 ヨーゼフ・クリップス(2)1948 クレメンス・クラウス(5)1949 クレメンス・クラウス(6)1950 クレメンス・クラウス(7)
1951 クレメンス・クラウス(8)1952 クレメンス・クラウス(9)1953 クレメンス・クラウス(10)1954 クレメンス・クラウス(11)1955 ボスコフスキー(1)
1956 ウィリー・ボスコフスキー(2)1957 ウィリー・ボスコフスキー(3)1958 ウィリー・ボスコフスキー(4)1959 ウィリー・ボスコフスキー(5)1960 ウィリー・ボスコフスキー(6)
1961 ウィリー・ボスコフスキー(7)1962 ウィリー・ボスコフスキー(8)1963 ウィリー・ボスコフスキー(9)1964 ウィリー・ボスコフスキー(10)1965 ウィリー・ボスコフスキー(11)
1966 ウィリー・ボスコフスキー(12)1967 ウィリー・ボスコフスキー(13)1968 ウィリー・ボスコフスキー(14)1969 ウィリー・ボスコフスキー(15)1970 ウィリー・ボスコフスキー(16)
1971 ウィリー・ボスコフスキー(17)1972 ウィリー・ボスコフスキー(18)1973 ウィリー・ボスコフスキー(19)1974 ウィリー・ボスコフスキー(20)1975 ウィリー・ボスコフスキー(21)
1976 ウィリー・ボスコフスキー(22)1977 ウィリー・ボスコフスキー(23)1978 ウィリー・ボスコフスキー(24)1979 ウィリー・ボスコフスキー(25)1980 ロリン・マゼール(1)
1981 ロリン・マゼール(2)1982 ロリン・マゼール(3)1983 ロリン・マゼール(4)1984 ロリン・マゼール(5)1985 ロリン・マゼール(6)
1986 ロリン・マゼール(7)1987 ヘルベルト・フォン・カラヤン(1)1988 クラウディオ・アバド(1)1989 カルロス・クライバー(1)1990 ズービン・メータ(1)
1991 クラウディオ・アバド(2)1992 カルロス・クライバー(2)1993 リッカルド・ムーティ(1)1994 ロリン・マゼール(8)1995 ズービン・メータ(2)
1996 ロリン・マゼール(9)1997 リッカルド・ムーティ(2)1998 ズービン・メータ(3)1999 ロリン・マゼール(10)2000 リッカルド・ムーティ(3)
2001 ニコラウス・アーノンクール(1)2002 小澤征爾(1)2003 ニコラウス・アーノンクール(2)2004 リッカルド・ムーティ(4)2005 ロリン・マゼール(11)
2006 マリス・ヤンソンス(1)2007 ズービン・メータ(4)2008 ジョルジュ・プレートル(1)2009 ダニエル・バレンボイム(1)