14:00、2コマ目は「「クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」を語る部屋」へ。部屋といっても、こちらはSF広場のカーペットの一角(笑)。周りの企画と一緒なので、ちょっと声が聞きづらかったです。
ビデオをバックに、向かって左から眠田直、唐沢俊一、山本弘(敬称略)。ビデオを観ながら、「ああ、この場面はこうだよね」などと3人がコメントしつつ、進んでいきました。まずはクレヨンしんちゃんの映画第一弾から、予告編をいろいろ。ってこれ、どうやって撮ったんだ!?まさか、テレビから録画!?だとしたら、すっげー大変だったのでは??
ああっ、でもダメよ!ダメ!私はあの、しんちゃんがニセ東京タワーを走って登るシーンを見ただけで思わず涙が出ちゃうんだもん!(笑)こんな一部のカットだけでもう目がうるうるになってしまって、ああ恥ずかしい。しかもますます声は聞き取りにくくなるしで、残念ながら途中でリタイア。
で、途中からメイン企画2の「未来はSFの手の中に」に乱入。こちらは石川喬司、小松左京、柴野拓美、豊田有恒、森優。司会は牧眞司、柏崎玲央奈(敬称略)。
牧さんがいろいろと質問をなさって、それに森さんや柴野さん、石川さんたちが答えていたような印象。小松さんは、またしてもオープニングライブ/『教養』のときと同じようなネタをしゃべっていたような(笑)。
13:30、終了。πRさんと、私の会社の同僚であるIさんと、私の3人で軽く昼食。
16:30、3コマ目「瀬名秀明 SFとのセカンドコンタクト」へ。まずは部屋に入るなり、段ボールにたくさん入っていた「講演資料 SFセミナー2001」をいただく。これは全部、瀬名さんが自腹を切って、無料で配布してくださったもの。あ、ありがとうございます〜。っていうか、お金取ればいいのにぃ、遠慮せずに。皆、ちゃんと払ってくれると思うけどなあ。
向かって左から野尻抱介、野田令子、瀬名秀明(敬称略)。司会は瀬名さん。この企画は、瀬名さんがテープ起こしをして、後に全部ネットでアップしてくださるそうなので、あまり詳細なレポは書かないでおきます。もっと喧喧ごうごうのバトルになるかと思いきや、案外平和な、互いを理解しようとする話し合いという感じで、ホッとしました。
まずは例の、今年のSFセミナー2001の話からスタート。瀬名さんは、あの場で「SFは本当に売れないのか?」というディスカッションをしようと思ったそう。で、ネットや文芸編集者の方々からアンケートをとって、そのデータから現在のSFの現状を理解してみようと試みたそうです。そして、そこから外部とSFファンダムとの相互理解にはどうしたらいいかを「センス・オブ・ワンダー」をキーワードとして解釈し、なおかつ今後SFはどうしていけばいいのか、僕はどうしていけばいいのかを述べた、と。
そして、今回の企画では、まず前半は相互理解の話、後半はSFの未来をどうしていけばいいのか、をディスカッション形式で進めていきたい、と述べられました。
まずは野尻さんも野田さんも、瀬名さんの言うことがよくわからなかった、と述べられました。野尻さんは「1500万出すのはありがたいけどそれで瀬名さんはいいのか?」と、野田さんは「なぜそこまでSFに肩入れしてくれるのですか?」と。これには瀬名さんは「SFが好きだからと言うほかない」と苦笑しておられました。
瀬名さんはSFファンとハードSFファンの違いをお二人に質問。野尻さんは「前者は心で読むタイプで、後者は頭で読むタイプ」と解答。会場からの意見では「この違いは自分で明確にわかるもの。ハードSFの人は、出版社に「あそこは違ってるから直せ」とか「ちゃんと計算して書け」とか言ってくる」そうな(笑)。
また、瀬名さんは「ハードSF的な考え方って何?」と質問。そこからまたいろんな意見が出たのですが、瀬名さんの「考え方の方向性が訓練されないとダメなのかな」とぽつり。「人間以外の知性が出たって時点で、普通の人からはもう(考え方が)飛んじゃってる。(一番上をハードSFとするなら)その距離を僕はまん中までしか飛躍しなかったんですよ」と。野田さんはこれに「よくわかる」と大きくうなずいてらっしゃました。「そう、だから中途半端な感じがしたんですよ」と。
瀬名さんはさらにハードSFについて質問。野田さんがホーガンの話をすると、野尻さんがホーガン叩きとホーガン贔屓について述べ、「そこでも流派があるんですか?」と瀬名さんツッコミ。「こうやってガヤガヤしてるのがSFなんですよ」と野尻さん。瀬名さんは「大学でも、こういう議論のぶつかり合いってのはあるんですよ。でもサロンの外には出てこない。ハードSFは、これが全部ネットなんかで外に聞こえちゃってるのが、外部との衝突の原因かも?」と推理。
瀬名さんは「「これはSFではない」は今後5年間禁止」発言にも触れ、「これで非常に反感を買ってしまったようで」と苦笑。野尻さんは「SFではない、ってのはサッカーのフーリガンみたいなもので、それもひとつの文化。いいことがないからって、言わないのは文化としてどうか?」と発言。野田さんは「「これはやおいではない」と言っても別に反感はないのに、「これはSFではない」という言葉にはすごい反感があるのはなぜだろう?」とコメント。瀬名さんは、「さきほどの「SF/ミステリの今」企画で、ミステリ作家の方々が「あれはSFですか?」と大森さんにおそるおそる聞いてるのを見て、SF方面からどうとらえられるか、ちょっと怯えてるような感じがした」とコメント。ここで、瀬名さんの「そういえば僕は「これはドラえもんじゃない」と言ったことはある」発言には、会場爆笑。「「〜ではない」と言いたい気持ちはわかる、けど破壊力はある。外から来た人には、総スカン食らったような印象がある」と。瀬名さんの分析によると、「SFではない」発言は
1、要するにSFファン同士の自己確認
2、でもそれを書いた作家に向かって言うので、言われたほうは困ってしまうのでは?というのが出ました。
会場から「SF読んでるといじめられませんか?という電話が出版社に来る」とか「SF研で、好きなSFを言ったらこき下ろされた。ジャンルが固まりすぎててこわい」などの意見が出て、ここで水鏡子氏が「若い頃は理想が高くて、100冊中に1冊傑作があればいいほうだった。今は年とともに丸くなりました(笑)」とコメント。さらに「昔、ちょっと映画なんかでいいのが出ると「単なるSFじゃない」とか言われて(会場笑)、「じゃSFとは何か?」って常に考えてて、今でもその本がSFかどうかってのはとても気にしてしまう。ちなみに今年のマイベストは『鳥類学者のファンタジア』なのだが、これは期待していたけどSFではないな、と。これはSFの論理で切ってはいけないな、と。それが傑作であるなしと、SFであるなしは全然別の話」と述べられました。「SFかどうかってのは、自分の庭をきっちりさせる作業」とも。瀬名さんは、これには「む、難しい…」と悩んでおられたよう(笑)。
話は変わって、瀬名さんが「SFが下った原因として、SFはSF評論家だけしか評論してもらえない、普通の文学と一緒に評論してくれる人がいないのでは?」と質問。さらに「僕は今、ミステリの人から評論されなくなるのがとても恐怖」とも。ここでは会場から、喜多さんがSFマガジンでのSF以外の評論についての難しさを述べられました。さらに瀬名さんはロシアSFを引き合いに出して、「SFって、本当はもっといろんな考え方で書けたのかもしれないけど、今はひとつかふたつの道しか残ってないような気がする。で、それに反するものはみんな「これはSFじゃない」と言って切られてしまうのでは?」とコメント。「ハードSFは、普通の読者にとっては、入り口がすごく狭いような印象を受ける」とも。
ここから、「今後どうしていけばいいのか」という話題に。
瀬名さんがSFセミナー2001で提唱した「全面広告を出す」は不評とのこと。野田さんは「2ちゃんねるに書いてあったけど、瀬名さんがほんパラの5分枠を買い取って、SFをオススメするのは?」と聞くと、「でもそれが「SFじゃない」と言われたら?(笑)」と瀬名さん。会場からは、「キャンペーンを打つと、書店は場所を作って平台に置いてくれる」と意見が。瀬名さんは、ミステリやホラーがやってるように、SFもハードカバーを平台にどんと積んで売っていきたい模様。「ネットの反響で、今出てるものだけで十分、というのを読んでとても驚いた。今1冊出てるSFが、5冊になり10冊になれば、たくさんいい小説が出る可能性が増えるわけで。オレ的SFには関係ない、と思ってる方もいらっしゃるようだが、決してそんなことはない」と強調。
野尻さんは、「SFは新しいのが命。僕は中・高校生が買いやすいヤングアダルト路線を書いて、最初に読まれるSF作品を目ざしている」と発言。野田さんは「原稿書くので、なんでも仕事ください!」とコメント。「物理学的ハードSFは多いけど、生物学的ハードSFが増えて欲しい」とも。
最後に野尻さんが瀬名さんに「本当にSFから離れるの?」と核心を突いた質問。瀬名さんはこれに答えて「もうSF雑誌には書かないし、SF大会ももう来ないと思う。SFを書いてくれという依頼は多いけど、自分の中で、もう書けない。また「SFじゃない」って評価を受けるのかと思うと…。今は、「これがオレの小説だ!」と思って一生懸命書いてる。けどこのストレスが精神的にすごく大きいので、とにかくそのストレスをとるためにSFという題目はもう外したい」とコメント。
会場の喜多さんからは、「SFってそんなたいそうなもんか?って思う。だから瀬名さんもたかがSF、と開き直れば?」という意見が。瀬名さんは「まだ、これがオレ的SFだ!と言い切る自信はないので、とりあえずオレ的小説を書いていきます」と解答。
18:00、終了。さっそく壇上のお三方と名刺交換。瀬名さんには、『八月の博物館』にサインもいただきました。ありがとうございます!やっぱりSFから離れてしまうという残念な解答でしたが、でもジャンルにこだわらずとも、瀬名さんがご自分の小説を書いてくださるというのなら、それで全然オッケーですよ。面白い新作小説をどんどん書いて下さいませ。楽しみにしております。
(以下、まだ続きます。何か間違いやツッコミなどありましたら、メールか掲示板でご連絡くださいませ)01.8.24 安田ママ