第37回SF大会レポート
〜CAPRICON1〜

(1日めのみ)

 行ってきました、SF大会!私は今年が初参加。SFのエの字くらいしか知らない私なんぞが行ってもいいものかと、若干躊躇いたしましたが、SF界の大物の方々に会えるというミーハー根性に負け、名古屋まで足を運ぶことに致しました。

 98年8月29日、私とダイジマンの一行は新幹線で9:15に名古屋駅に到着(すでに東京で乗りこむ前に、堺三保氏を発見。たぶん、同じ新幹線だったと思われる)。ほかにSFびとはいないかとキョロキョロしながら、地下鉄で日比野駅へ。降り立ったとたん、あやしい人々発見。「あれ、ぜったいSFびとだよ、オーラが出てる」「あ、あの犬もそうだよ」などと勝手なことをほざきつつ、名古屋国際会議場へ向かう。

 会場はすごくでかくて形が凝っていて、水玉蛍之丞いわく「いまにも立ちあがりそう」な、ロボットみたいでまさしくSF大会にぴったりの建築物であった。受付にたむろする人々も、もうあやしさ大爆発!といったところ。男女比率は7:3とのことで、やはり男性多し。年代は30代が最も多く、5年後には40代になるだろうというジョークが出る。明日のSF界をしょって立つ、若い世代の減少が心配されているよう。

 11:00、オープニング開始。司会の窪田氏(違ってたらごめんなさい)の挨拶に続いて、自作パロディ映画上映。銀英伝のパロで、SF統一の宇宙戦がくりひろげられる。場内爆笑の渦。今大会の合言葉「帝国、ばんざい!」を叫びあったのち、それぞれの目指す会場へと散る。

 12:00、私達は3F会議室134の「SFセミナー名古屋出張版」へ。開始より15分ほど早く着いたため、菊地氏の生ギター演奏をちょっとだけ聞くことができた。
 12:15〜1:15のプログラムは、「
メイキング・オブ・SFオンライン
 言うまでもないが、これは昨年2月よりスタートした、ソネットの提供による日本初のSF専門ウェブマガジン。このスタッフが登場し、裏方話をいろいろご披露してくださった。

 メンバーは、小浜徹也(東京創元社編集者)、岩郷重力(ページデザイン)、堺三保(アニメSF設定等)、坂口哲也(ソネットから来たプロデューサー)、添野知生(編集・映画関連執筆)というメンツ。
 小浜氏の軽快な司会により、どういういきさつでこのページが始まったのか、毎月どのように作られているのか、その苦労話などが爆笑トークにて公開された。

 紙の雑誌とはまた違った苦労がいろいろおありのよう。字数がなまじ自由になるために、原稿を5枚お願いしたら50枚になったとか、印刷屋に出すようなきっちりした締め切りがないための、発刊前の二晩徹夜とか、ウェブの不理解による取材のやりにくさなど(画像をコピーして乱用されるのが著作権問題的にこわいらしい。確かに、簡単にできちゃうもんなあ)。ホームページを作っている者として、うなずける話や参考になる話がいっぱいあり、大変勉強になった。

 そのあと、会場内の執筆者の方々の紹介とコメント。お名前だけはよく目にするSF方面の有名な方々が、続々紹介され、ミーハーな私は喜びまくる。

 1:15〜2:15は、2つめのプログラム「辺境の電脳たち・ライブ〜SF大会篇」
これは、いまは亡きパソコン雑誌「The BASIC」に連載されてた大森望&水玉蛍之丞によるSF対談レビューを、ライブ版で公開したもの。(一度お顔を拝見したかったお二人にお会いできて、私はそれだけでもう感激であった。)

 とにかくSFならなんでも読みまくっているお二人の、濃くて熱い爆笑トーク!会場には、「コンピュータもしくはそれに準じるものが登場する最近1年ぐらいのリスト」が配られ、それに出ているSF本の話がいろいろかわされた。

「殺人摩天楼」の帯には「ビルが人を襲う!」ってまんまネタバレだ!とか、「エドガー@サイプラス」の主人公のようにコンピュータに人間が恋するか?とか。模型偏愛主義の水玉さんは、「パソコンがかっこいい男の人型だったらいいな。私はロボットと駆け落ちするのが夢だ」とのたまっていた。わかるわ〜、それ。
 「サイバー戦争」は、ひとつの話がどんどん方向が変わって行って、5つも6つもネタが入ってるので、まるで連載がのびてるんで話を引き伸ばすマンガみたいだとか。堺氏は、最近のSFはあれこれ新しい設定はあるのに、最後はどうして「結局コンピュータはこわい」という結末になってしまうんだ、昔となんにも変わってないぞ!と怒っていた。

 ウルティマ・オンラインの乞食ビル・ゲイツの話など、もうあっちこっち飛びまくりの、とめどなく面白いSFトークであった。涙が出るほど笑わせていただいた。改めてお二人の大ファンになってしまった。とにかく、ユーモアのセンスがいいのよ!原稿から想像できる性格、そのまんまのお二人であった。
 この対談、どこかの雑誌でまた連載してくれないかなあ。ほんと、もったいないよ、これを聞いたらゼッタイ本を読みたくなるもん。SF普及に大変貢献すると思うのだが、いかがでしょうか。

 会社の先輩と合流後、お次は、2:30〜3:30までの「SFハンマープライス」を見に、1Fイベントホールステージ前へ。作家の方々などからいろいろな掘り出しものを持ち寄っていただき、それを競り落とすというもの。ワールドこんからのお土産、柴野氏からの手塚治虫の超貴重マンガ本、赤井孝美氏の星界シリーズの表紙画セット(2万5千円で落札)、明智抄のマンガに名前が出る権利などなどが出た。
 懐かしの「月刊OUT」のシールセットを3500円で落としたのは私です。司会の窪田氏に、「年がわかりますね」と言われた。ふ〜んだ。だって、浪花あいさんの、五右衛門とシャア猫のシールがあったのよ!懐かしいでしょ〜!

 そこへ、なんとカジシン登場!!舞台に出てちょっと御挨拶して、なんと次回の彼の小説に名前が出る権利を出品してくださった。これはファンには感涙もの!どうしようかと迷ったが、帰りかける彼を捕まえて、サインしてもらうという、目の前の幸せの方をとってしまった私。自宅から持ってきた、「おもいでエマノン」にサインをいただいた。「うわ〜、どこで買ったんですか?」と聞かれた。そう、もうこれ絶版なんですよね。いい本なのに。もう在庫がこれだけという、とり・みきさんの書いたカジシンの似顔絵のシールも貼っていただき、もう天にも上る幸せであった。思わず、このページのアドレスの載った名刺をお渡しするという、大それたマネまでしてしまった。へへ。

 そのあとは、同じイベントホール内のディーラーズルームを冷やかした。これは、SF同人誌の販売など。浪花あいさんの同人誌、「宇宙塵」178号(1977.1)などを購入(カジシンの「地球はプレイン・ヨーグルト」が載っていたため)。ダイジマンは、堀晃氏主宰の同人誌「ソリトン」を全巻(2巻のみ品切れ、残念)購入し、販売していた堀氏本人からサインを頂いていた。彼はほかにも、「宇宙塵」の、並べてあるもの全巻(20冊くらいだったかな?)などを購入して、すごい荷物になっていた。

 一服したのち、ダイジマンは「SFセミナー」の「ライブ・スキャナー」に、私と先輩は17:15〜19:00、4F会議室141「SFミステリークラブ’98」へ。ゲストは、有栖川有栖氏、綾辻行人氏、太田忠司氏、大森望氏。けっこう期待して行ったのだが、結果はちょっと不満足だった。

 司会者のお姉ちゃんが質問を出し、それに各人が答えるという趣向だったのだが、この質問がとにかくつまらない。陳腐、ありきたり、たぶん彼らが今までいやというほど浴びせられた質問ばかり。ここでしか聞けないような、もっとコアな話やウラ話を期待してたのになあ。質問は、初めて読んだSF・ミステリ、オールタイムベスト、SFとミステリの定義、これからの予定など。ゲストの方々も、答えに窮してしまっていた。もっと、ゲストに自由にしゃべらせてあげるようにすればよかったのに。

 それでもまあ後半はなんとか大森氏の誘導で話が弾んだ。
 大森氏は、「ミステリとSF、どちらもひっくり返されたときの驚きという点では、センスオブワンダーだ」と言っていた。有栖川氏は、それを引き継いで「2つの違いは、SFは架空の設定を使って現実をひっくり返すが、我々(ミステリ)は現実を使って現実をひっくり返すのだ」と語っていた。綾辻氏はさらに「ちゃんと整合性のあるひっくり返しにこだわる」と言い、太田氏は「風呂敷の広げ方よりも、むしろ僕は風呂敷のたたみ方にこだわる、人が納得できる、あっと驚くようなたたみ方をしたい」と語っていた。みな、それぞれ彼ららしい意見であった。

 かつて、綾辻氏がデビューする前、本格ミステリは「焼け跡の時代」と言われ、古典はあったが、新作を読みたくても全く出てない時代があったそうだ。それを受けて、「いままさにSFがそうですよ」と、大森氏が合いの手を入れていた。海外SFはそこそこあるが、国産ものの量がぜんぜんない、と嘆いていた。
 有栖川氏は、「またあのように本格ミステリが衰退する時代が来るのではないかと、いつも危惧している」と語っていた。へえ、今こんなに隆盛なのにね、ミステリ畑は。「今がピークだろう」と、彼は言う。「もし、本格ミステリが衰退してしまったら、これは誰にも止められないし、どうしようもない。仕事もなくなるかもしれない。でも、またあの時代が来ても、僕らが立ちあがって見せる!」と頼もしいことを言っておられた。

 最後の質問コーナーでは、「コミケなどの同人誌パロディのネタにされるのをどう思いますか?」との問いに、有栖川氏は「自分と別のものだと思ってるから、勝手にやってくれていい。見ないことにしてるから」と、あきらめの境地であった。太田氏は、「外伝とかはやめてほしい。それは、僕自身が書くべきもので、もうちゃんと自分の中にあるので」と言っていた。綾辻氏は、「外伝でいいのができたら僕に送ってください。僕の名前で出します」と言い、ウケていた。

 19:00で本日の出し物は終わり。夜は、合宿企画「れふこん」などがあったが、私と先輩は都合により、ここで帰ることに。(ダイジマンは、引き続き明日も参加。)行きより重くなった荷物を抱え、後ろ髪を引かれつつ、帰りの新幹線に乗ったのだった。うう、残念だなあ。来年こそは、2日間まるまる参加するぞ!

 なにも分からなかったらどうしようかと思ったが、この大会は、私のようにそんなに深くSFを知らない者にも、十分楽しめる内容だった。マジ面白かった〜!スタッフの方々、本当にご苦労様でした。あれだけの運営をこなすのは、並々ならぬ大変さだったことでしょう。ありがとうございました。
 2日目のレポートは、ダイジマンに書かせますので、どうぞお楽しみに!


SF大会レポート(ダイジマン編) 

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