AD物語II 第6話 「ダイダロスアタック」



〜さくらももこのオールナイトニッポンの想い出〜
 92年秋、大槻ケンヂのオールナイトニッポン(以下、ANN)は、終了。  ANNの場合、番組が終了すると、ディレクターや放送作家は、  その番組終了とともに、その「枠」(今回の場合、月曜1部)からいなくなってしまうのが常。  しかし、AD及びミキサーは、番組についているわけではなく、  その「枠」についているので、パーソナリティがかわっても、  引き続きその時間帯で仕事をさせてもらえます。  ボクとミキサーの清水さんは、もうまる8年ぐらい、  コンビを組んで仕事をしています。
 さて、そんな月曜1部にやってきたのは、  マンガ家の「さくらももこ」さんです。  そう、あのちびまる子ちゃんの作者です。  ちなみに、担当ディレクターは、あの「Nさん」でした。  残念ながら、さくらももこさんは、ANNを生でやるのを非常に不安に感じたらしく、  毎回毎回、録音をとることになってしまいました。  ANNの一番楽しい、「生」を感じてもらえなかったのは、  今でも、非常に残念です。  そんなこんなで、92年の年末、  ふいに持ち上がった企画がありました。  それは・・・、 「さくらももこの家で録音!」  ・・・というものでした!
 さくらももこさんはちょうど、ANNが始まった頃から家を建て始めていたらしいんです。  「ちびまる子ちゃん」が大ヒットした頃ですなあ。  いいですなあ。新居ですか。  タレントさんとかの家って、基本的に遊びに行ったこととかないから、  どんなとこに住んでんだろ。  楽しみだなあ。  てなことで、都内某所のさくらももこ邸に向かうスタッフ一同。  タクシーを降りたとたんに、全員仰天!  まさに「ちびまる子ちゃん御殿!」  でけぇ。  でかすぎるぜ、おい。  都内でこんなにでかい家に住んでていいのか?  圧倒されつつ、玄関を開けます。  おいおい!!  普通、玄関の扉を開けると、「土間」と呼ばれるスペースがありますよね。  いわゆる、靴を脱いだり履いたりするスペースです。  ま、どんなに土間のでかい家でも、畳半分〜1畳ってのが相場でしょう。  玄関と農機具置き場を兼ねている農家の方の家でさえ、  4畳分ほどのスペースあったら、「でかい土間」って感じですやね。  ところが、「さくらももこ邸」は、この「土間」が、  20メートルぐらいあるんです。  玄関の扉を開けて、靴を脱ぐまで、20メートルも歩かなきゃいけない家なんて、  初めてみたぜ、オイ。  しかも、その20メートルの間、左右の壁に貼られた、  「ちびまる子ちゃん」模様のタイルが、  僕らにやさしく微笑みかけてくれています。  どーゆーセンスなんでしょ?
 てくてくと、その土間を歩いていきますと、  そこで初めて靴を脱ぎ、待合室のような所に入ります。  ここだけで、うちのリビングの倍くらいあるよん。  この待合室から、レンガばりの中庭を見ると、  直径3メートルくらいの植木鉢に、  超巨大なフェニックスの木が植えてあったりします。  ・・・もはや、人智の及ばぬ家です。
 1階が、だいたい、さくらさんの仕事場になっているようで、  実際にマンガを書く部屋は、12畳程度の普通の部屋でした。  さくらさんの机と、アシスタントの方の机。  それに本棚に大量の資料が詰まってる、  まあ、雑誌なんかでよく見る「マンガ家の部屋」って感じ。  あ、この部屋からも、さっきの巨大な植木鉢が見えてる・・・。
 もはやスタッフ一同、浮き足立っちゃってて、  録音のためにここに来たことをすっかり忘れちゃってます。  今度は、地下の「趣味の階」にご案内されます。  するとそこには!  超巨大なレコード室が!  おいおい、ニッポン放送のレコード室なみに広いじゃねぇか。  さくらさんのダンナさんは、大のビートルズマニアで、  過去に出版された「オフィシャル」のレコードはもちろんのこと、  各国で発売された、様々なバージョンのLPや、  海賊版までも収集されている方なのです。  で、そんなレコードを聴いたり、ビデオを見たりするお部屋も当然ありまして、  これがまたすごい。  カーペット敷きにはなってますが、  イスをならべたら、映画館じゃん。  ・・・てなお部屋。  更に、僕らにトドメを刺したのは、  スタジオです!  前もって言っておきますが、さくらももこ夫妻から、  「楽器を演奏するのが趣味です。」  ・・・と聞いたことはタダの一度もありません。  なのになぜ、ニッポン放送のスタジオよりも立派なスタジオがある?  理解不能。理解不能。理解不能。  理解不能。理解不能。理解不能。  どーやら、お友達のバンド「たま」のメンバーなんかが、  遊びに来たときに、この部屋で演奏してもらうつもりなんですって。
 ほかにも、2階の「夫婦の階」には、 「総檜(ひのき)風呂」があるとか、 「2トンのウォーターベッド」があるとか、  (さすがに、実際には見せてもらえませんでしたが)  もう、ビックリの連続です。  ディズニーランドなんかより、数百、数千、数万倍のビックリです。  いやあ、いい経験させていただきました!
 続く  1997/12/12

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