AD物語II 第28話 「マイ・アルバム」



〜「あなたにWINK」の想い出〜
 以前に一度書きましたが、  ニッポン放送の「完パケ番組」は、ほとんど、  「収録」   ↓  「編集」   ↓  「ダビング」  ・・・と3段階の行程を経て制作されています。  「完パケ番組」におけるADの役割というのは、  「収録」に立ち会い、  ディレクターが「編集」したテープを受け取り、  それを「ダビング」して「完パケ」状態にするのがパターンです。  すなわち、1つの「完パケ番組」のADになると、  最低、週に2回は、この番組のために拘束されることになります。  (注:ただし収録が隔週だったりする場合はこの限りではありませんが・・・。)  そんなわけで、学生時代のボクは、「完パケ」のお仕事の依頼が来ても、  そのほとんどを丁重にお断りしていました。  学生ADをやっていて「完パケ番組」を持つと、  週の拘束時間がどんどん長くなり、  学校に行くことができなくなっちゃう  ・・・からです(笑)。  だが、しかし・・・。
 ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる・・・・。  「はいはい、起きますよ・・・。」  寝ぼけまなこで、目覚まし時計に手を伸ばす。  ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる・・・・。  あれ?  目覚まし時計じゃないのか?  ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる・・・・。  あ、電話だ。  ちっきしょー。人の安眠をじゃましやがって。  シカトきめこむか?  ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる・・・・。  いいや、いいや。二度寝、二度寝。  ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる・・・・。  しっつこいな〜。  ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる・・・・。  ちっきしょー。  分かった、分かった。  出てやるよ。これで、セールスだったりしてみろよ。  ブチ殺すかんな。  ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる・・・・。  ガチャ。 「はい小林ですが(怒)」  『あ、いたいた。良かったぁ。勝島だけど。』 「あ、お早うございますぅ(平身低頭)」  危ない、危ない。電話の相手は、  フリーディレクターの希望の星(?)勝島さんだった。  勝島さん相手に「居留守」なんか使ったのがバレた日にゃ、  あとでどんな噂たてられるか、分かったもんじゃない(※注)。  『いやぁ、いてくれて助かったよ。』  「・・・と申しますと、またですか。」  『ああ。WINKの完パケの収録の立ち会い、頼みたいんだけど。』  「・・・はぁ。」  『悪りぃな。ヨ・ロ・シ・ク・ぅ!』  「いや、いいっすよ。で、何時から・・・」  ガチャ。ツーツーツーツー・・・・。  切りやがった。
 当時、元祖スーパーフリーディレクター・勝島氏は、  いっぱい仕事を抱えていたらしく、  ダブルブッキング(同じ時間に仕事が重なっちゃうことね)になると、  必ずボクのところに電話が入るのでした。  しかも、そのほとんどがWINKの番組の「収録・立ち会い」。  ま、仕事的には、録音テープを回すだけだから、ラクっちゃ、ラクな仕事なんだけど。  仕方なく、早速家を出てニッポン放送にむかう。  スタジオ管理室・・・通称・スタ管で、  スタジオの予約状況を確認・・・と。  ふうん。WINKの番組の収録は、15時からなのね。  ほほー。  ・・・あれ?  15時からribbon(リボン)の番組の収録もあるね。  いいなー。  永作博美ちゃんに会いたいなー。  あ、ちょっと見に行っちゃおうかな。  まだ時間あるし。  てくてく階段を上って、収録スタジオに向かうと、  なにやらチョコレートの香りが漂ってくる。  それと同時に、なにやら胸の中を、イヤーな予感も漂ってくる。  この臭いは・・・・。  ribbonの番組の収録スタジオの前まで来ると、  さわやかな声が飛んできた。  「あ、小林ぃ。WINKの方、ヨロシクね!」  「・・・やっぱり、勝島さんでしたか。」  「・・・何が?」  「何やってんすか!」  「いやぁ、WINKとribbonが、また重なっちゃってさぁ。」  「・・・『また』?」  「いや、WINKの収録とribbonの収録が重なること、多くってな。」  「するってぇと、なんですか。今までボクがWINKの収録にかり出されてた時は・・・。」  「俺がribbonの収録。」  「・・・な・・なぜ、ribbonの方を?」 「俺が『博ちゃん』に会いたいから。」  勝島康一、あなどれず!  (※注)  勝島ディレクターは、  「フリーにとって放送局の情報は命!」という持論を持っており、  これが高じて大の「噂話好き」になってしまったのである(笑)。
 続く  1998/11/07

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