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#11100　
バラージ 2021/06/12 12:05
いろいろと

＞『コウラン伝　始皇帝の母』
　Wikipediaによると、「中国で放映されたオリジナル版は１話45分・全62話なのに対し、BSプレミアムの日本語吹き替え版は１話60分・全34話に編集されている」とのことなので大分カットされているんではないかと。DVD＆Blu-rayは本国版同様の全62話バージョンのようです。外国ドラマの日本テレビ放送ではこの手のことがわりにあるようで、現在BS11で放送中の『如懿伝』もCMが入る分、WOWOW放送よりも短縮されたバージョンみたい（放送回数はたぶんいっしょ）。『コウラン伝』もそのうちCSや他の無料BSでDVD通りの字幕版全62話バージョンが放送されるかもしれません。

＞最近観た日本統治下朝鮮を舞台とした映画
『愛を歌う花』
　1943～45年の日本統治下の朝鮮を舞台に、歌手を夢見る２人の妓生の愛憎劇を描いたドラマ映画。歴史映画ではないんだけど、個人的趣味で紹介しちゃいます。主演はハン・ヒョジュで、その親友役がチョン・ウヒ。その２人を目当てに観たんですが、残念ながらいまいちの出来でした。恋人である作曲家を、歌手としても恋においても親友に奪われた嫉妬から、主人公が復讐を胸に秘めて堕ちていくという展開は意外でしたが、物語のテンポが今一つ良くなくてどうにも入り込めませんでした。日本関係の時代考証がいい加減だったのも残念（外国映画にはよくあることではあるんですが）。あと、やっぱりハン・ヒョジュに悪女役はいまいち似合ってないような。チョン・ウヒと逆の配役のほうが良かったかも。２人の美しさと歌の上手さはすごく良かったんだけど。

『マルモイ　ことばあつめ』
　1940年代の日本統治下の朝鮮を舞台に、公用語として日本語を強制され、さらに創氏改名をも強要される中で、朝鮮全土の方言を含む言葉を集めた『朝鮮語辞典』を作ろうとした人々の史実をモデルとしたフィクション映画。なんか前に観た光州事件が題材の『タクシー運転手』に似てるなと思ったら、同じ脚本家の監督デビュー作だそうです。似てるというより基本構造がほとんど同じで、もうちょっと何か違いがあったほうが良かったような。『タクシー運転手』にもあった、泣かせ笑わせることを狙うベタな人情喜劇要素がさらに強くなっていて、特に前半はこれまたどうもいまいち入り込めませんでしたね。『愛を歌う花』同様に、日本人を演じてるのが韓国人俳優なので、みんな日本語が片言なのもマイナス。まあ風俗描写はそっちに比べるとほとんど違和感なかったですけど。ただ後半はさすがになかなか盛り上がり、まあまあ面白かったです。大日本帝国の他民族に対する抑圧的な言語政策を描いた映画としても価値があると思いますが、それだけにせめて日本警察の役を日本人俳優に演じさせていればなあと残念。

＞最近の未見歴史映画＆ドラマ
『HOKUSAI』……現在公開中の葛飾北斎を主人公とした映画。主演は柳楽優弥。
『大コメ騒動』……今年公開された1918年富山米騒動を女たちの視点から描いた映画。主演は井上真央。
『日本独立』……つい最近レンタル店にDVDが並んでるのを見て存在を知った、去年公開されてたらしい映画。地元には来てません。白洲次郎を主人公に、敗戦後に日本の独立回復のためGHQと渡り合いながら憲法制定を目指す……という話らしいんですが、監督が『プライド　運命の瞬間』の伊藤俊也と聞くとどうなんだろなあ？　白洲次郎役が浅野忠信、白洲正子役が宮沢りえ、吉田茂役が小林薫など、配役がやたら豪華。
『ヒノマルソウル　舞台裏の英雄たち』……たびたび公開が延期されて、ようやく公開される冬季長野オリンピックのジャンプ競技を題材とした映画。主演は田中圭。
『三国志　趙雲無双伝』……呂布滅亡のころは公孫&#29914;のもとに身を置いていた趙雲が長坂の戦いにいたるまでを描いた中国映画。若者向け娯楽映画っぽいけど、最近こういうのが多いなあ。
『水滸伝　英雄譜』……これは最近じゃないんだけど、2007年の単発ドラマシリーズ。「楊志」「扈三娘・王英」「孫二娘・張青」の３作があり。
『水滸伝　林冲』……つい最近レンタル店にDVDが並んでた2019年の中国ドラマ。全３話のミニシリーズのようです。
『アフリカン・カンフー・ナチス』……まもなく公開される、日本在住のドイツ人監督がガーナの映画監督とタッグを組んで製作したガーナ・ドイツ・日本合作映画。第２次世界大戦後、ひそかに生き延びていたヒトラーと東條英機が、落ちのびた先のガーナで世界征服のための武闘会を開催するというカンフーアクション映画。どうせならムッソリーニも出せばよかったのに（笑）。


#11099　
バラージ 2021/06/09 21:44
忠臣蔵が多すぎる！

　あらららら、それは大変でしたねえ。年を取るとだんだんいろいろと出てきますが、お互い気を付けましょう。どうぞお大事に。

＞観てない歴史映像作品　江戸前期編
　観てない歴史映画＆テレビドラマのネタ、江戸前期編です。最初は江戸前期・後期まとめてにしようと思ったんですが……同じネタの作品が多すぎる！　特に忠臣蔵！　なんでこんないっぱいあんだよ！　要するに時代劇なんすよね、江戸時代が舞台のドラマって。宮本武蔵も大奥も忠臣蔵も、史劇ではなくて時代劇のノリで作られている。だからこそしょっちゅう作られてるんであって、極端に言えば『水戸黄門』や『遠山の金さん』といっしょなんだよな。特に忠臣蔵はオールスター時代劇を作るのにちょうどいい題材なんで、日本映画全盛期にはやたらに作られたんでしょう。ま、とりあえずDVD化されてるものと近年のものは紹介しておきます。
　その前に前回書き洩らした安土桃山映画。

『３人の信長』……2019年の映画。金ヶ崎撤退戦で今川軍残党が信長を捕らえることに成功するが、捕まえた信長が３人もいた。３人は本物をかばおうと我こそは本物の信長と主張する。果たして本物の信長は？　それとも３人とも影武者なのか？　というコメディ映画。主演はEXILE TAKAHIRO、市原隼人、岡田義徳。

・宮本武蔵もの
『二人の武蔵』……1960年の映画。武蔵は実は２人いたという奇抜な設定の五味康祐の同名小説の映画化。主演は長谷川一夫と市川雷蔵。
『宮本武蔵』……1973年の映画。原作はおなじみ吉川英治で、監督は加藤泰、主演は高橋英樹。
『MUSASHI外伝　ヤングムサシの秘密に迫る』……1996年の映画。DVD題は『MUSASHI　宮本武蔵外伝』で、レンタル店で見かけたことがありますが、今回改めて調べたらもともとのタイトルがなんとも（笑）。しかし内容はDVD題のほうが妥当な感じで、吉川英治とも史実とも違うオリジナルストーリーのようです。
『宮本武蔵』……2014年の２夜連続スペシャルドラマ。原作は吉川英治で、主演は木村拓哉。
『武蔵－むさし－』……2019年の映画。史実に基づくオリジナルストーリーという売り文句で、武蔵の姉役で好きな女優のエンクミこと遠藤久美子が出てたんでどうしようかな～と迷ったけど、結局映画館でもWOWOWの放送でも観逃してしまいました。
『狂（くるい）武蔵』……2020年の映画。全91分のうち77分がワンシーン・ワンカットで撮影した吉岡一門との一乗寺下り松の決闘400人斬りシーンというとんでもない映画だそうです。

・忍びの者シリーズ
『忍びの者　霧隠才蔵』……1964年の映画。主人公が石川五右衛門から霧隠才蔵に変わった市川雷蔵の主演シリーズ第４作。大坂冬の陣終結後から大坂夏の陣の頃が舞台。
『忍びの者　続霧隠才蔵』……1964年のシリーズ第５作。大坂の陣を生き延びて薩摩島津氏のもとに逃れた才蔵・幸村と、家康の追手との戦いを描く。
『忍びの者　伊賀屋敷』……1965年のシリーズ第６作。島原の乱終結後から慶安の変（由井正雪の変）を舞台に、才蔵の子・才助改め２代目才蔵が幕府転覆のため正雪に協力する話。
『忍びの者　新・霧隠才蔵』……1966年のシリーズ第７作。いよいよネタ切れか、主人公が才蔵に戻って内容も４～６作とは無関係なパラレルワールド作品。大坂の陣終結後が舞台。

・忠臣蔵もの
『元禄忠臣蔵　前・後篇』……1941、1942年の映画。劇作家の真山青果による新歌舞伎の同名演目を、巨匠溝口健二監督が戦前戦中に映画化した作品。史実性を重視し、松の廊下などのセットを実寸大で作った一方で、討ち入りシーンがないという変わった忠臣蔵とのこと。主演は河原崎長十郎。
『珍説忠臣蔵』……1953年の新東宝映画。斎藤寅次郎監督で、古川緑波、堺駿二、伴淳三郎、エンタツアチャコ、柳家金語楼など喜劇人総出演のハチャメチャ喜劇映画。
『忠臣蔵　花の巻・雪の巻』……1954年の松竹映画。大曾根辰夫監督、主演は八代目松本幸四郎。GHQ占領明け初の忠臣蔵映画らしい。
『赤穂浪士　天の巻・地の巻』……1956年の東映映画。大河ドラマと同じ大佛次郎の原作の３度目の映画化。松田定次監督で、立花左近役が片岡千恵蔵、大石内蔵助役が市川右太衛門。なぜ立花左近がトップかというと東映のスターシステムの事情らしい（笑）。原作では主人公の堀田隼人役は大友柳太郎。
『大忠臣蔵』……1957年の松竹映画。歌舞伎の仮名手本忠臣蔵をそのまま下敷きにしたという珍しい作品らしく、歌舞伎オールスター出演で、内容的にもほぼ歌舞伎の映画化とのこと。監督は２度目の大曾根辰保（辰夫）、主演は市川猿之助。
『忠臣蔵』……1958年の大映映画。渡辺邦男監督で、主演は長谷川一夫。忠臣蔵入門編としては最適という評判。
『忠臣蔵　櫻花の巻・菊花の巻』……1959年の東映映画。２度目の松田定次監督で、主演は片岡千恵蔵。
『赤穂浪士』……1961年の東映映画。大佛次郎の原作の４度目の映画化で、監督が３度目の松田定次、主演がまたも片岡千恵蔵、市川右太衛門は千坂兵部役、堀田隼人役もまたも大友柳太郎……ってお前らそろいもそろって何度目だよ！（笑）　松田監督は最初の1956年版が１番お気に入りとのこと。
『忠臣蔵　花の巻・雪の巻』……1962年の東宝映画。稲垣浩監督。1954年の松竹映画と同じタイトルで、主演も同じ八代目松本幸四郎だけど、内容は全くの別作品とのこと。ついにタイトルもネタ切れかよ！（笑）
『大忠臣蔵』……1971年の連続ドラマ。主演は三船敏郎。
『忠臣蔵1/47』……2001年の単発ドラマ。主人公は堀部安兵衛で、主演は木村拓哉。
『忠臣蔵　決断の時』……2003年のテレ東新春ワイド時代劇。主演は二代目中村吉右衛門。
『忠臣蔵』……2004年の連続ドラマ。主演は松平健。
『最後の忠臣蔵』……2004年のNHK金曜時代劇。赤穂事件の生き残り浪士・寺坂吉右衛門と討ち入り前夜に逃亡した瀬尾孫左衛門を主人公として、討ち入りの後日談を描いた池宮彰一郎の小説のドラマ化で、主演は上川隆也と香川照之。
『忠臣蔵　瑤泉院の陰謀』……2007年のテレ東新春ワイド時代劇。原作は湯川裕光で、脚本はジェームス三木。内匠頭未亡人の瑤泉院が討ち入りの黒幕だったという設定で、主演は稲森いずみ。内匠頭乱心説を取っていて、吉良は温厚な常識人というドラマのようです。
『最後の忠臣蔵』……2010年の映画。前記同名ドラマ同様に原作は池宮彰一郎の小説で、監督は杉田成道、主演は瀬尾役の役所広司と寺坂役の佐藤浩市。
『決算！忠臣蔵』……2019年の映画。経済の側面から忠臣蔵を描いたコメディタッチの映画で、監督は中村義洋、主演は堤真一と岡村隆史。

・フジテレビ大奥シリーズ
『大奥　華の乱』……2005年の連続ドラマで、シリーズ第３作。５代将軍綱吉の時代が舞台で、主人公は牧野成貞の娘・安子。主演は内山理名。第２作『大奥　第一章』と時代が近いんですが、設定は引き継いでいません。第１作・第２作同様にスペシャル単発ドラマも作られ、本作では前日譚が描かれています。
『大奥　劇場版』……2006年の映画で、シリーズ第４作。７代将軍家継時代の絵島生島事件を描いています。主人公は絵島で、主演は仲間由紀恵。いったんシリーズの完結編として製作された作品で、それまでのシリーズ作に出演していた俳優が別の役で出演しています。やはり前日譚のスペシャル単発ドラマがあり、そちらの主演は深田恭子。
『大奥　最終章』……2019年の単発ドラマで、シリーズ最終第６作。８代将軍吉宗の時代が舞台で、主人公は側室の久免。主演は木村文乃。DVD化されていませんが配信はされています。

・その他
『天草四郎時貞』……1962年の映画。松竹を辞めた大島渚監督が東映で撮った映画で、1960年安保闘争敗北後の民衆の心境を島原の乱にオーバーラップさせた作品とのこと。主演は大川橋蔵。
『阿部一族』……1995年の単発ドラマ。森鴎外の有名な短編小説のドラマ化。監督は深作欣二。


＞『殺戮の戦場』
　僕は、香港のＺ級映画会社（フィルマーク社とかIFDとか）が適当に買ったタイの反ベトナムＢ級戦争映画の中にあった１本で、そのＺ級映画会社が「お！　これ『キリング・フィールド』っぽいじゃん。高値で売れそー」と考えて、外国の映画会社をだまくらかして売り付けたんじゃないかと推測しております。原題の「Kampuchea...The Untold Story」で検索するとなぜかYouTubeにあがっているドイツ版予告編が引っ掛かるんですが、それを観るとなかなかに予算をかけたっぽい迫力の戦争映画。しかし明らかに実際の記録映像も混ざっており、フィルマーク社＆IFDお得意の「ニコイチ」じゃねーだろーな？とついつい疑ってしまうところ。
　ちなみにタイでは反ベトナム映画（もしくは反ベトナム＆反共映画）には一定の需要があるらしく、前回も書いたビデオスルーの『殺戮戦場』（これも観た人の感想は見つからないんだけどニコイチじゃないのかなあ？）もベトコンが悪者のようですが、やはりフィルマーク社によるタイ映画とのニコイチ『バトル・ヒーロー　秘宝強奪作戦』もカンボジアを舞台としたベトコンが悪者のアクション映画のようです。これまたヘラルド配給で日本でも劇場公開されたらしい。やれやれ。でもこちらはビデオ化はされてないみたいですね。

＞『女人平家』
　ああ、やっぱりフィルムでしたか。やはりフィルムかテープかが映像残存度の明暗を分けたんですね。
　フィルムの“味”に関しては、祖母が観てた『水戸黄門』がフィルムからテープに変わった時に、映像が一気に安っぽくなっちゃった記憶があります。まあ解像度が高くなってセットや衣装なんかの安っぽさがよく見えるようになったからなのかもしれないけど、大河ドラマなんかの昔のテープ映像も、今観るとフィルムの初期『水戸黄門』に比べてずいぶん安っぽく見えるんだよな。映画の場合はそもそもテープ撮影をやってたのがＶシネマぐらいなのでは？　Ｖシネの絵の安っぽさについては当時からよく言われてたような気がします。個人的にはＶシネほとんど観てないんでよくわかんないけど。しかし映画もドラマもほとんどがデジタル撮影になった今となっては、そういうのももう過去のことなのかな。


#11098　
徹夜城（ここんとこ家族で医者通いしてる管理人） 2021/06/08 21:38
リコーラン、終わりました。

　結構ご無沙汰しました。先々週から眼医者通いになってしまい、パソコンその他見るのも書くのもしんどい状態になってたりしまして…まぁぼちぼち復活です。

　さて、NHKのBSで吹き替え版が放送されていた中国ドラマ「コウラン伝・始皇帝の母」が先日最終回となりました。僕は回数を知らなかったので内容的にまだまだ先がありそうな…と思ってたんですが、ここ2回で一気に話が進んで、いきなり最終回になって驚いたり。
　この最終回でロウアイの乱、呂不韋の失脚がありましたので、始皇帝の母ドラマとしてはもうやることはやっちゃった、ということではあるでしょう。しかし今思い出すと秦に入るまでの前半はやたら話を作って長かったような。

　例のロウアイについては愛人関係ではないこといなっていて、二人の間に生まれたとされる二人の子も始皇帝の異母弟の子で、あとで秦の最後の王になっちゃうというひねった設定になってました。この辺、映画「始皇帝暗殺」や「キングダム」を見てるといろいろややこしくなりまう（笑）。
　最終回まで太子丹の出番が多い印象があったので、刺客荊軻の話までやるのか？と思わせましたが、そこにいくとそれこそ「始皇帝暗殺」みたいな話になっちゃいますな。


　坂口安吾の名前を見て思い出しましたが、安吾って戦前に僕の住む取手の街に住んでいて、エッセイで当時の描写があるんだそうですな。取手には「食い物屋といえばとんかつ屋と蕎麦屋しかない」んだそうで（笑）。


#11097　
ろんた 2021/06/06 17:06
時代劇専門チャンネルを見る

　え～っ、スカパー無料の日(毎月第一日曜日)の適用外みたいで見てなかったんですが、なにやら平日とスカパー無料の日の14:00からの番組が無料になっているのに気づきました。平日の分は一ヶ月間、繰り返し放送されており、二時間枠の単発モノが多い。したがって、かつて量産された時代劇映画のリメイクだったりするんですが、見始めた一発目が若山富三郎版「怪傑黒頭巾」。一言でいえば少年向け鞍馬天狗なわけですが、ＴＢＳ制作の高橋英樹版は田沼時代のことになっているのに、こちらは「江戸無血開城の影に黒頭巾の活躍があった！」というお話。それじゃぁ、ますます鞍馬天狗なんですけど、こちらの方が原作発表の翌年に制作された映画に近い。ちなみに「紫頭巾」というのもいて、田沼時代に活躍したのはこちららしい。あと、鞍馬天狗と黒頭巾は実は衣装が違っていて、天狗さんは着流し、黒頭巾は忍者っぽくて鎖帷子着用。
　とにかく見どころは若山先生(こう呼ばないと機嫌が悪かったとか)の殺陣。その身体能力の高さに目を見張ります。千葉真一が「師匠」と呼んでいたのも納得。あと、「子連れ狼」の拝一刀役への起用に難色を示す小池一夫の自宅に乗り込んで、殺陣ができないと思ってるのか、と首を縦に振るまでトンボを切り続けたという伝説もある。そして驚くべきことにこのドラマ、1981年ＯＡなので「悪魔の手毬唄」(1977)の磯川警部や「事件」(1978)の弁護士・菊地大三郎の後なんですね。
　ただ、若山先生と貫目を合わせるためか、西郷隆盛＝金田龍之介、勝海舟＝西村晃、近藤勇＝小林昭二と共演者の年齢が高め。あと石橋蓮司の中川宮は、何か悪巧みをするんじゃないかと思ったら、黒頭巾に西郷と勝の会談に尽力させるいい人でした。
　もっと長生きしてほしかったけど、糖尿病で羊羹や饅頭を爆食いしてたら、そりゃあ早死にするよなぁ。

＞清水一家
　ということで時代劇専門チャンネルの番組表をチェックしたりしてるんですが、松平健版(＜ヤクザに見えない)、松方弘樹版(＜お蝶さんを泣かしてそう)、西郷輝彦版の四部作(＜真面目っぽい)となんだか次郎長ものが多いのに気がつきました。調べてみると06/12が次郎長の命日だとか。さらに1820年生まれなんで、去年が生誕200年。そのため静岡市清水区(旧清水市)では、次郎長の業績を紹介する小冊子を作製し配布しているとか。でも、大丈夫かなぁ、という気がするんです。なぜなら、清水区には「清水一家」(山口組系)が実在するから。直系は1966年に解散しているんですが、近年復活したみたいでしばしばニュースを賑わしていたりなんかして。
　まあ、引退後の事績(茶畑の開拓事業とか英語塾の創設とか)を主に紹介して、ヤクザだったのはサラッと触れるだけなんでしょうけど。ヤクザ時代を史実に基づいて記述したらほとんど「仁義なき戦い」だもんなぁ。

＞「眠狂四郎 The Final」
　セリフとか殺陣に難がある、としている向きもありますが、田村狂四郎は元々ボソボソ喋るキャラなんでセリフは問題なし。ただ殺陣はかなり辛いものがあったみたいでストップモーションが多用されていた。それよりも、役者の実年齢が気になってしまって、もう狂四郎をやるのには無理がありすぎ。吉岡里帆は孫だろう、とは前に書きましたが、腹違いの弟より祖父(津川雅彦)の方に年齢が近いのはいかがなものか。
　面白かったのは、最初の方で粛清されちゃった南町奉行が矢部駿河守だったこと。そして、まだ田村正和が元気ハツラツだった頃の「若様侍捕物帖」にも矢部という町奉行が登場するのを思い出した。演じていたのは中村梅之助で、なんで金さんじゃないんだろうと思ったんだけど、当時、杉良版金さんが放送されていたからかも。あと狂四郎の父親である転び伴天連がオランダ人というのには「？」。もっとも、19世紀になってから伴天連が来るという設定がそもそも変なんだけど、「それは言わない約束でしょう、おとっつぁん」(笑)。
　ともかく、ご苦労様でした。

＞「殺戮の戦場」
　困った時のKINENOTEで、検索してみるとヒット。見た人は１、しかし残念ながらレビューは無し。「あらすじ」によると、ベトナム軍に家族を虐殺された兄妹が難民としてタイを目指すが、妹を親切なおばさんに預けて兄はポルポト派に身を投じ、カンボジア解放のために戦う、というお話らしい。確かにポルポトのプロパガンダ映画ですね。ひょっとしたら「キリング・フィールド」(1985)っぽい映画だと勘違いして(あるいは騙されて)香港が出資、日本ヘラルドに"ババ"をつかませたんじゃないかと(笑)。「アメリ」みたいに、Ｂ級ホラー、Ｂ級コメディーと思い込んで買い付けちゃった例もあるし。

＞「女人平家」
　見てました、ＢＳ11。大江広元(浜畑賢吉)と佑子(吉永小百合)の悲恋が縦糸。そしてフィルム撮影。松竹制作だし。大ざっぱに言ってテレビ局か系列の制作会社だとビデオ撮影、映画会社や系列の制作会社だとフィルム撮影となっているみたい。ちなみにフィルム撮影の「味」ってヤツ、16㎜フィルムの解像度の低さのことじゃないかと秘かに思ってます。怒られそうだけど。劇場映画(35㎜)でそんなこと言ってる人見たことないし。

＞「修禅寺物語」
　"修禅寺"は寺号、"修善寺"は地名です。"修善寺温泉"はありますが、"修禅寺温泉"は存在しません。元々は寺領のことだろうから同じ字を使っていたはずなんだけど、後に書き分ける必要ができたってことでしょうか。タイトルで地名の方を使っているのは、そちらの方が馴染みがあるから？


#11096　
バラージ 2021/06/01 23:14
30年以上前の奇妙なカンボジア映画

　７、８年前に物置を整理していたら、30年ほど前の映画誌『ロードショー』の付録に付いていた、その年の日本公開洋画のポスター全集みたいなのが出てきたことがあります。なつかし～と思って、ついパラパラと眺めていたら、ふと目に止まって「こんな映画あったんだ！？」と思ってしまった作品がありました。それ以来気になりながらもなんとなくそのままにしてきたネタを今回改めて書いちゃおうかなと思います。
　その映画とは1988年に劇場公開された『殺戮の戦場』（原題：Kampuchea...The Untold Story、1986年）という映画。なぜ目に止まったかというとカンボジア映画という当時では非常に珍しかったであろう作品だったから。しかも１～２行の説明文を読むとどうもベトナム・カンボジア戦争というきわめて珍しい題材を扱っているようで、しかもしかもなんとも驚くべきことに、あろうことかポル・ポト派（クメール・ルージュ）の少年を主人公として正義の側に置くという、当時としてもちょっとあり得ないようなトンデモ映画だったのですよ。
　カンボジア・香港合作（一部アメリカ・香港合作としてるサイトもあり）となってますが、当時のカンボジアはベトナムの後ろ楯でポル・ポト政権を倒したヘン・サムリン政権だったんだから、こんな映画が作れるはずがありません。監督や出演者の名前を見ると、どうもカンボジアではなくタイ人の名前っぽい。当時、ベトナム軍に追われたポル・ポト派はタイとの国境近くまで逃れ、タイ軍の後ろ楯で反撃を狙ってたはず。そう考えるとタイの後ろ楯で作られたプロパガンダ映画なのかな？　香港が絡んでるというのもなんか怪しい。当時、アンダーな香港の映画会社はタイのB級映画を輸入して、無許可で勝手に適当に作り替えて売ってたりしたんですよね。しかも中国とベトナムは歴史的に仲が悪く（中国はポル・ポト派を支持していた）、香港はそれに加えて共産主義に対する恐怖やボートピープルの存在でベトナムにいい感情を持っていなかったとも思われますし。
　それにしてもこんな映画が日本でも劇場公開されたってのがすごいなあ。しかも配給が日本ヘラルド映画だし。ビデオ化もされてますが、DVD化はされていません。誰か観た人が感想アップしてたりしないかなと探してみたんですが、残念ながら見つかりませんでした。
　ちなみに『殺戮戦場』（原題：Raiders of the Doomed Kingdom、1985年）という似たような邦題の戦争映画もありますが、こちらはベトナム戦争の映画。香港・タイ合作で、やはり監督や出演者の名前は明らかにタイ人です。ビデオパッケージ裏のストーリーを読んでもタイの軍人が主人公で、やっぱりベトナムが悪者。こちらは日本ではビデオスルーでした。


＞セイラム魔女裁判
　この事件を題材に、当時の米国の赤狩りを重ね合わせて書かれたのが、アーサー・ミラーの1953年の戯曲『るつぼ』で、僕が以前紹介した1996年の米国映画『クルーシブル』の原作です。それ以前にフランスでも1957年に映画化されているらしく、そちらも日本で公開されており、邦題は『サレムの魔女』。脚本はジャン・ポール・サルトルで、主演はイヴ・モンタン、シモーヌ・シニョレ、ミレーヌ・ドモンジョという豪華版ですが、日本ではソフト化されていません。また、さらにそれ以前の1937年にも米国でこの事件は映画化されていて、やはり日本公開もされており、邦題は『セイルムの娘』。ただしこちらは登場人物や展開は大幅にフィクションで、最後はハッピーエンドで終わるようです。主演はクローデット・コルベール。やはりソフト化はされていません。

＞観てない歴史映像作品　鎌倉～安土桃山編
『女人平家』……1971～72年のテレビドラマ。平清盛の娘佑子（冷泉隆房の妻。史実では名は不明）を主人公とした群像劇的なドラマらしく、主演は吉永小百合。ソフト化はされていませんが、数年前にBS11で放送されてました。よくテープが残ってたなあ。それともフィルムで撮影したんだろうか？
『富士に立つ若武者』……平治の乱で敗れ伊豆に流された源頼朝が、平家打倒の兵を挙げるまでを描いた1961年の映画。主演は大川橋蔵。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。
『修禅寺物語』……岡本綺堂の戯曲を原作とした1955年の映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。原作はこれ以前に1923年にも映画化されており、またこれ以後にも1961年と1963年にテレビドラマ化されてるようですが、ソフト化されてるのは本作のみ。また本作以外はなぜかタイトルが『修善寺物語』になっていて、そろいもそろって間違えたのか、それともわざとタイトルを原作と変えたのかは不明です。原作の大まかなあらすじはむかし手塚治虫の『七色いんこ』を読んだ時に知ったんですが、確か面作師の父と娘２人が主人公だったはず。しかしこの映画では、原作では脇役の源頼家が主人公のようです。主演は高橋貞二。
『親鸞』『続親鸞』……吉川英治の小説を原作とした1960年の二部作映画。主演は中村錦之助。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。
『親鸞　白い道』……俳優の三國連太郎が自身の小説を自ら監督して映画化した1987年の映画。主演はオーディションで選ばれた森山潤久。この人、俳優としてはほぼ一発屋で、後にほんとに坊さんになったんじゃなかったっけ？
『尚円王』……2020年のテレビドラマ。琉球王国第二尚氏王統の初代国王となった尚円王が主人公。
『新書・忍びの者』……市川雷蔵の『忍びの者』シリーズ最終作で1966年の映画。さすがにネタが尽きたのか時代がさかのぼり、武田信玄と徳川家康の忍び同士の戦いが舞台。雷蔵演じる主人公は霞小次郎という武田側の架空忍者です。
『伊賀忍法帖』……1982年の映画。山田風太郎の小説が原作で、主演は真田広之。ヒロイン役の角川三人娘の１人・渡辺典子のデビュー作でもあります。歴史映画ではないんだけど、悪役として果心居士や松永弾正が出てくるのでご紹介。
『鉄砲伝来記』……1968年の映画。鉄砲伝来なんてどうやって映画にするんだと思ったら、種子島の殿様から鉄砲模造を命じられた鍛冶職人の老人の苦闘と、鉄砲を伝えたポルトガル人と鍛冶職人の娘との国際的恋愛の両方が描かれるらしい。主演はリック・“コンバット”・ジェイソンと若尾文子。
『ホラ吹き太閤記』……1964年のクレージーキャッツ出演の喜劇映画。主人公の秀吉が植木等で、信長がハナ肇、家康が谷啓という、なんか絶妙な配役（笑）。
『青春太閤記　いまにみておれ！』……1970年のテレビドラマ。主演は、なべおさみ。たまに行くレンタル店にDVDがあって、存在を知りました。これもよくテープ（だかフィルムだか）が残ってましたねえ。
『天下を獲った男　豊臣秀吉』……1993年のTBS大型時代劇スペシャル。主演は柳葉敏郎。
『豊臣秀吉　天下を獲る！』……1995年のテレビ東京12時間超ワイドドラマ。主演は中村勘九郎（今の勘九郎のお父さん）。
『利休にたずねよ』……2013年の映画。主演は市川海老蔵。
『花戦さ』……華道家の初代池坊専好を主人公とした2017年の映画。主演は野村萬斎。

＞もひとつ未見ドラマ
　『燕雲台　The Legend of Empress』……今度WOWOWで放送が始まる中国ドラマ。遼の蕭燕燕（睿智蕭皇后）が主人公で、主演はティファニー・タン。睿智蕭皇后は『楊家将演義』では敵ボスの人で、名画座収録の『大遼太后』の主人公と同じ人です。


#11094　
ろんた 2021/05/27 23:14
最近の収穫

　田村正和が亡くなったのは、そうビックリしなかった。遺作(？)の「眠狂四郎 The Final」の番宣とか見るとかなりくたびれてたし、この作品で引退ということだったから。それよりもビックリしたのは三浦健太郎の訃報。一般には全然騒がれてないけど。で、田村正和の方はＦＮＮ系列が追悼企画を頑張っていて、「古畑任三郎３」(地上波)と「総理と呼ばないで」(ＢＳ)を再放送。そして「眠狂四郎 The Final」も土曜日にＢＳ17:00-19:20で放送。実は見逃してたりして(汗)。で、吉岡里帆に「父上」と呼ばれて動揺する田村狂四郎──って、かなり図々しいなぁ。50近く年が違うのに。そこは「お祖父様」だろう(笑)。
　そして以下は、割と最近読んだ本の話

『魔法　その歴史と正体』(カート・セリグマン　平凡社ライブラリー)
　古代のメソポタミア、ペルシア、ヘブライ、エジプト、ギリシアから錬金術、悪魔、魔女を経て、近世のバラ十字会、フリーメーソンまで、西洋のオカルト全般を取り上げ論じている滅茶苦茶な本。元々は平凡社の「世界教養全集」に収められ、呉智英とか「オカルトを論じるならこれを読んでからにしろ」と言ってた。その後、割愛された項目を追加した完全版が人文書院から出版され、そちらが底本。680ページもあるんで読み通す気力が無く(汗)、つまみ食い的に読んでいます。YOU TUBEで山田五郎が「魔女狩りの最盛期は実は17世紀」と言っていたので読んでみると、確かに挙げられている実例は1600年代ばかり。理由は、社会の変化に対する不安とか社会心理学的解釈もできるんでしょうけど、本書では審問官らに出来高制の報酬が払われていたことが示されている。つまり彼らは食いっぱぐれないために魔女を摘発し、拷問し、裁判にかけ、処刑していたわけで、まさに「サタンの永久運動」。ちなみに「ダークサイドミステリー」(BSP)で取り上げられていた、セーラム(本書ではサレム)の魔女裁判にも触れられている。ノストラダムスも出てくるけど、取り上げられている予言詩は「ルイ16世一家の逮捕」「アンリ二世の死」「カトリーヌ・ド・メディシスの息子たちの運命」「自身の死」で、「1999の年７の月……」は取り上げられていない。実はそんなに注目されていなかったのか？　ただ、評価は肯定的。そして不老不死のサン・ジェルマン伯爵は、プロシアのスパイで88歳で亡くなった、としている。ただ、死後にマリ・アントワネットらに警告の手紙が届いている。そして「十八世紀」の章に顔を出しては消えるカリオストロ伯爵(笑)。
　ということで、辞典的に使おうと思ったんですが、この本、索引が無い(汗)。あと、参考文献に横溝の『悪魔の手毬唄』と乱歩の『悪魔の紋章』が入ってるのはなぜだろう。

『続 明治開化 安吾捕物帖』(坂口安吾　角川文庫)
　ＢＳＰで放送された「明治開化 新十郎探偵帖」の原作。「続」とあるが続編ではない。20篇中８篇を抄録した『明治開化 安吾捕物帖』が角川文庫に入っていて、絶版になったのがアニメ「UN-GO(アンゴ)」放送に合わせ新装版として刊行。そして残り12篇を収録したのがこの『続』。舞台は、安吾が戦後日本との共通性を感じていた明治18～19年で、昭電疑獄、新宗教の隆盛、下山事件などが投影されている。明治時代には発生していない、バラバラ殺人事件が起きているのはご愛敬。ドラマでは明治六年の政変が背景になっていて、旗本の庶子だった新十郎は明治政府や勝に複雑な感情を持っている。また、大久保とアメリカで出会って帰国、下野した西郷が勝家に挨拶に来る。ただし政変の原因は、改革急進派の大久保と漸進派の西郷の争いということになっていて征韓論は出てこない。事件自体も今日的な視点からの改変あり。最終回は、西郷暗殺を新十郎が防ぐというオリジナル展開。そして西南戦争、紀尾井坂の変後、探偵事務所を開設する。『緋色の研究』が1887年だから、ホームズより十年ぐらい早い(？)。ああ、勝家の女中としてお糸さんがシレッと出ているが、この人、勝の妾で、当時はもう子供もいたはず(笑)。大河の「勝海舟」で仁科明子(当時)がやっていた役。

『新九郎、奔る！』(６)(７)(ゆうきまさみ　小学館BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
　６巻の方は失恋物語。初恋というのは実らぬものなのだよ、新九郎君。しかもそれが、西荏原と那須家の調停に自分が引っ張り込んだ庄伊豆守のせいなんだから、なかなかきつい。そして長尾影春と太田資長(道灌)が登場。資長の第一声が「のん！　聞き捨てなりませんぞ　むっしゅう！」。何の呪文かと思ったら、キャラデザインがデヴィッド・スーシェというかエルキュール・ポアロ！(笑)　そんなに似てるかなぁ？　まあ、ゆうき先生が土曜の夕方、ＢＳＰを見ているのはわかった。そして脳内ＣＶは熊倉一雄。
　７巻は天然痘＋麻疹＋疫痢のトリプルパンチに見舞われた京が舞台。お馴染みのキャラがバタバタ倒れ、義母・須磨が亡くなり父・盛定が腑抜けと化す。そこで父の仕事を引き継ぐことになったり、日野富子や春王丸に気に入られたりして京から離れられなくなり、一月ごとに京と荏原を往復する羽目になる。７巻の新キャラは、後に新九郎に血祭りにあげられる小鹿範満と、御由緒六家の始祖最後の一人である多米権兵衛。小鹿範満は上辺は誠実そうだが腹にイチモツあるキャラデザ。
　８巻は、関東へ出兵せず遠江に食指を動かす、今川義忠の真意を正すという密命を帯びて新九郎が駿河へ。名目は竜王丸の誕生祝い。旅費とか引き出物は、多分伊勢守貞宗が出してくれるんだろうな。そしておそらく、７巻最後に訃報が届いた伊勢貞親に続いて細川勝元、山名宗禅も退場すると思われる。

『ヒューマン・ファクター』(グレアム・グリーン　ハヤカワepi文庫)
　01/02付け史点中の「スパイ小説みたいなスパイ」を読んで、「もう一人忘れちゃいませんか」と積んでいたのを読み始める。スパイ小説、特に二重スパイものの傑作とされるけど、そんな限定抜きにノベルとエンタメ(グリーンの分類)が高度に融合した傑作。なにかとジェームズ・ボンドを引き合いに出すのがくすぐりになっている。しかしこの傑作も、東西冷戦とかアパルトヘイトが分からないとピンと来ないかもだなぁ。
　グリーンがMI6に在籍していたのは第二次大戦中だから、ル・カレより一世代上。キム・フィルビーが直属の上司で、その回想録の書評にある「＜彼は祖国を裏切った＞──そう、それはその通りだろう。しかし、われわれのうちで、祖国よりも大切な何かや誰かに対して裏切りの罪を犯さなかったものがいるだろうか」は本書のテーマと共通する。キム・フィルビーは『第三の男』のハリー・ライムのモデルとの説もあるとか。ちなみにやはり傑作の『権力と栄光』は、遠藤周作の『沈黙』に影響を与えていると思う。

「角栄に花束を」(「ヤングチャンピオン」09号　2021/04/27)
　いささか遅いですが、また読んでしまったので。編集部の「この話は」によりますと「田中角栄は、日本の独立を果たすためＧＨＱの傀儡である芦田内閣の打倒を目指す。そこで、昭和電工から芦田への不正受給の証拠を手に入れる……」ということで、どこから突っ込んでいいのか分からない(笑)。田中角栄は国会議員になって髭を生やしているが、相変わらず頭はパイナップル。芦田均はザ・悪人面。数字の鬼・池田は「貧乏人は麦を食え」の人。デザインは他のマンガからの流用だが、闇金のオーナーか特殊詐欺の親玉にしか見えない。人事の佐藤は「ノーベル平和賞」の「栄ちゃん」だと思うんだけど、大和田先生、似せる気が全然無い(笑)。あと、人事権がないのに「人事の佐藤」ってどういうこと？　弟分というか子分っぽいキャラが出てくるけど、名前が呼ばれないので誰だかわからん。ひょっとしてひょっとすると宮沢喜一？　昭和電工の日野原社長が、なぜか「ラーメン、ツケメン、ボクイケメン」の人。おねぇちゃん連れて飲み歩いてるところを逮捕されるけど、まぁこの辺の演出は許容範囲内。ホントは家宅捜索＞任意の聴取＞通常逮捕だと思うけど。しかしこの後、造船疑獄や指揮権発動とかあるんだけど大丈夫か？　このマンガ、と心配しつつ、単行本第４巻06/18発売予定、と宣伝したりして。自分は買ってないけど。
　ああ、渋沢栄一の伝記マンガは隔号連載ということで掲載無し。打ち切られたかと思った(汗)。現在、第２巻まで発売中。同じ作者の『哲也－雀聖と呼ばれた男－』も秋田書店から新装版が刊行。これ「少年マガジン」掲載なのに、ヒロポン静注とかやってたんだよなぁ(笑)。



#11093　
バラージ 2021/05/18 23:07
頼朝の爺さんと親父とおじさんと兄ちゃんが出てくる映画＆ドラマ

　頼朝以前の河内源氏が出てくる映画やドラマの話、今回が最終回です。

源為義
　義親の子で義忠の甥（一説では義家の末子で、義親・義忠の弟）。暗殺された義忠の後を14歳で継ぎ、大叔父義綱の追討にも参加しました。保元の乱を戦った武将のため、この人あたりから映像作品への登場も多くなってきます。名画座収録作品では、大河ドラマ『新・平家物語』『平清盛』、TBS大型時代劇『平清盛』に登場。大河２作は観たんですが、『新・平家』は総集編でものすごいダイジェストのため「出てた」という以上の印象はありません。『平清盛』では小日向文世が演じてましたが、おそらく中井貴一演じる平忠盛との対比というドラマ上の演出のため、きわめて情けない武士に描かれてました。為義が忠盛と比べてダメダメだったのは史実通りなんですが、そのダメさの性質や不遇だった理由は全然違っていて、為義は秩序を重んじない乱暴者で、きわめて不祥事が多い人物だったのです。当時の貴族の日記には為義の不祥事についての記述が頻繁に出てくるそうで、殺人犯を匿って検非違使に引き渡さなかったり、自分が検非違使の時に朝廷の命で追討を命じられながらその人物を匿ったり、別の事件では勘違いで別人を捕まえて恥辱を与えたためその人物が出家してしまったり、さらには本人ばかりか郎党も無法のし放題で、まさに一頃流行った「武士＝ヤクザ論」を地で行くような所業の数々。白河法皇や鳥羽上皇にも見放され、受領にもなれず、河内源氏の傍流にも出世で抜かされる始末。それでも彼の武力を必要とした摂関家の大殿藤原忠実に拾われ、それが保元の乱で忠実・頼長親子の爪牙となることにつながっていくのでした。その他の映像作品では、息子の為朝が主人公の1955年の映画『椿説弓張月　第一篇　筑紫の若武者』『弓張月　第二篇　運命の白縫姫』『弓張月　完結篇　南海の覇者』の三部作に登場しているようです。

源義朝
　為義の長男で頼朝や義経の父。為義以上に登場作品は多い……はずなんですが、意外とそうでもないのは義経や頼朝が主人公の作品にあまり登場していないから。大河ドラマ『源義経』は同じ原作の1955年の映画『源義経』のあらすじを読むと義経が鞍馬寺に入っている段階から物語が始まっており、おそらくは原作がそうなのだろうと思われます。そのため同じ原作の大河や日テレ年末時代劇『源義経』でも義朝が出てこないんでしょう。オリジナル作品のTBS大型時代劇『源義経』もやはり鞍馬寺から始まっていて義朝は登場しません。『草燃える』も頼朝と北条政子のＷ主人公のためか頼朝が伊豆に流されている段階から話が始まっていて、やはり義朝は登場せず。そのため義朝は大河『新・平家物語』『平清盛』、TBS大型時代劇『平清盛』といった清盛のライバルとしての登場ばかりとなっています。大河『義経』には珍しく初回だけ登場しましたが、あれも原作は『宮尾本平家物語』だからなあ。あとは映画『五条霊戦記　GOJOE』にチラッとだけ出てましたね。その他には前記の映画『弓張月』三部作、そして頼朝が主人公の1961年の映画『富士に立つ若武者』に登場しているようです。『富士に～』は平治の乱に敗れて逃走してるあたりから始まってるようなので登場してるんじゃないかな。
　ちなみに大河『平清盛』では、為義と義朝の親子仲は基本的に良好だったように描かれており、そのため保元の乱直前になって突然仲違いし出すのがえらく唐突だったんですが、史実では義朝はかなり早い段階で為義に廃嫡されてしまっています。義朝が東国に下る時に無位無官だったのに対して、次弟の義賢はその頃すでに東宮帯刀先生という官職に就いているため、為義の嫡男は義賢だったと思われます。なぜ義朝が廃嫡されたかについてははっきりとはわからないようです。

源義賢
　為義の次男。前記の通り為義の嫡子となったんですが、親父同様に殺人犯を匿って東宮帯刀先生を解任されてしまいます。それでも摂関家の後継者、内大臣藤原頼長に男色の相手として可愛がられ、能登の摂関家領荘園の預所としてもらったものの、そこも年貢未納で解任。まさに親父ゆずりというかなんというか。結局嫡子の座を四弟頼賢にゆずり、すでに父と対立していた長兄義朝同様に活路を求めて東国に下りますが、入れ替わるように京に戻っていた義朝が東国に残してきた庶長子義平の襲撃を受け、自らを擁した秩父重隆ともども討たれてしまいました。これを大蔵合戦と言い、保元の乱前年の東国での事件だったためか義賢は映像作品になかなか登場しなかったんですが、大河ドラマ『平清盛』で初めて登場してましたね。

源頼賢
　為義の四男で、前記の通り次兄義賢に代わって為義の嫡男となり、保元の乱では父とともに崇徳上皇・藤原頼長方の主力となりますが敗れて降伏。朝命によって父や弟たちとともに長兄義朝に処刑されました。映像作品では大河ドラマ『新・平家物語』『平清盛』に登場。

源為朝
　為義の八男で、強弓で有名な武将。兄たち同様に九州に下って大暴れしたんですが、そのため父為義が解任されてしまうことに。保元の乱では大活躍したことが、彼を主人公とした軍記物語『保元物語』に記されてるんですが、関白藤原忠通の家臣平信範の日記『兵範記』でも嫡男である四兄頼賢に次いで他の兄たちを飛び越して名前が記されてるんで、活躍したことは間違いないようです。敗北後も父や兄たちと違って投降せず、１ヶ月以上潜伏してたんですが発見されて捕まってます。伊豆大島への流罪で済まされた理由について『保元物語』では強弓を惜しまれたためと書かれてますが、実際には乱後１ヶ月が経ち、状況が落ち着いて処刑はやりすぎだったという空気が生まれていたためだろうと推測されているようです。むしろ強弓が理由だったら、生かしといたら危険だろうって話ですもんね（笑）。流された伊豆大島でも暴れて追討されたとか、さらにはそれも逃れて琉球に渡り琉球王の先祖になったなんて伝説も生まれ、滝沢馬琴がそれをもとに読本『椿説弓張月』を書いたのは有名。
　そんな伝説もあるためか映像作品への登場も多く、名画座収録作品では大河ドラマ『新・平家物語』『平清盛』、TBS大型時代劇『平清盛』に登場。『新・平家』では後の格さんこと伊吹吾郎が演じていて、頼長に先制攻撃を進言するも却下されるシーンがありましたが、これは『保元物語』に基づいており、より史実性の高い『愚管抄』では進言したのは親父の為義だそうです。他にも1914年の映画『源為朝（弓張月）』、1917年の映画『鎮西八郎為朝』、1920年の映画『源為朝』、前記の1955年の映画『弓張月』三部作といった弓張月系統の映画の他、なぜか1971年のテレビドラマ『女人平家』にも登場しているようです。

源義平
　義朝の長男で頼朝の兄。義朝が坂東に下っている時にできた子供で、母（三浦氏）の出自の低さと鎌倉居住で京にいなかったため、やはり無位無官で、嫡男の座は母の身分が高く京に在住だった三男頼朝が継いでいます。前記の通り坂東に下ってきた叔父義賢を討ち、後に平治の乱で父のもとへ駆けつけるも敗れ、父とも別れ東国に落ちて反撃を志しますが、父の死を知って再入京し清盛の命を狙うものの捕らえられて処刑されました。映像作品では大河ドラマ『新・平家物語』『平清盛』、TBS大型時代劇『平清盛』の他、1961年の映画『富士に立つ若武者』に登場しているようです。

源朝長
　義朝の次男。兄義平よりは母（波多野氏）の身分も高かったんですが、やはり嫡男の座にはつけず。平治の乱では矢傷を負い重傷となって、敗走中に父義朝が自らの手で葬り去っています。映像作品では、大河ドラマ『平清盛』には登場してますが、大河『新・平家物語』やTBS大型時代劇『平清盛』には登場していないようです。他には前記の映画『富士に立つ若武者』に登場している模様。


＞『長安二十四時』
　いやぁ、そもそもタイトル聞いただけでほとんどの人が『24』じゃん！となると思うんで、チャンネル銀河のせいではないと思いますよ。邦題も原題の直訳ですし、原作小説もまるっきりのパクリということはないにしても、設定のヒントには確実にしたんじゃないかなあ。ムックとかでも「中国版『24』とも呼ばれる」なんてはっきり書いちゃってますし（笑）。主人公２人のバディもので、登場人物がやたらたくさん出てくる群像劇ドラマってところは『24』とは（多分）違いますけどね。
　舞台や時代設定は架空ですが、唐の玄宗の時代をモデルとしており、登場人物にもモデルのいる人物が多いようです。主人公２人は、若いイケメンのほうが唐の宰相李泌を、ワイルドなおっさんのほうが『安禄山事跡』という書物に出てくる楊国忠を射殺した兵士をモデルにしているそうです。ウソかホントか製作費は150億円とのことで、下手な映画をはるかにしのぐ規模。検索してみると、観た人はほとんどが絶賛してるようで、『海上牧雲記』と同じレベルならそりゃそうなるだろうなあ。すでにDVD化もされてますが、YouTubeにある予告編を観ても、その規模の大きさと完成度の高さの一端がうかがえます。って僕も観てないんですけどね（笑）。

＞名画座修正情報
『風雲児信長』……オリジナルの『織田信長』は104分で、戦後公開された『風雲児信長』は短縮版だそうです。


#11092　
ろんた 2021/05/13 20:54
「おおきなかたな」「こがたな」

　ＮＨＫ総合の「歴史探偵」、色々とアプローチの仕方がユニークだな、と思って見ているのですが、池田屋事件の回でレポーター役のアナウンサーさんが「おおきなかたな」「こがたな」と連呼してまして……。おいおい「大刀(だいとう)」「小刀(しょうとう)」ぐらい知っとけや、と思わずテレビに突っ込んでしまいました。しかしその一方、ＮＨＫで歴史番組を担当するスタッフや出演者が、誰一人「大刀」「小刀」を知らないなんてことあるわけない、という気もするのです。まさかと思うけど、そっちの方が正式な呼び方だったりするのだろうか、「大刀」「小刀」って時代劇用語(？)なのか、とモヤモヤしているのでした。でもなぁ、「こがたな」って彫刻刀じゃないんだからさぁ。それに「おおきなかたな」に対応するなら「ちいさなかたな」、「こがたな」に対応するなら「おおきがたな」とかじゃないのか？　ああっ、モヤモヤする！

＞バラージさん
　う～ん、「長安二十四時」ですが、わたし、チャンネル銀河営業部の策に引っかかっちゃいましたかね？(汗)　原作があるんなら「24」のイタダキじゃなさそうですが、「24」が始まって大分たつんで原作自体がイタダキということも考えたりして。ちなみに「24」のフォーマットは「大規模無差別テロとか要人暗殺をジャック・バウワー一人が24時間で解決」「ドラマ内の時間と現実の時間がシンクロしている」ぐらいでしょうか。ＣＭ中も時間が進んでるのって、よく考えるとおかしいんだけど。あと、まとめて見ると、ジャック・バウワーって気分の浮き沈みが激しくてついていけない(笑)。


#11091　
バラージ 2021/05/12 23:22
ありゃ

　書き洩らし。
　『曼荼羅　若き日の弘法大師・空海』はDVD化はされていませんがビデオ化はされています。


#11090　
バラージ 2021/05/12 23:14
80年代を舞台とした映画

　先日、隆大介さんの訃報（ご冥福をお祈りします）で知ったんですが、遺作が金子修介監督の『信虎　信玄陣没！国主の帰還』という映画だと聞いてちょっとびっくり。金子監督がそういう映画を撮るイメージがなかったんで、なんでまた？と。宮下玄覇って人と共同監督となってますが、この人が共同監督・脚本・美術・装飾・編集・製作総指揮・プロデューサーで、金子さんは監督だけなんで頼まれ仕事？　主演は寺田農さんで、11月公開予定だそうです。


　ちょっと前に90年代も“歴史”の範疇に入ったから歴史映像名画座候補作品云々と書きましたが、その前にまず80年代（もしくは70年代後半以降）を舞台とした映像作品だよなと思い至りました。しかしこれが結構ないんだよな。70年代後半～80年代というと、個人的には物心ついた頃から少年期（または思春期）にあたります。なので個人的記憶に頼るとサブカルチャー方面とか文化方面ばかりになってしまう。そこで昔出てた『週刊20世紀』のバックナンバーを見て、どんなことがあったのか思い出して（または改めて知って）みました。
　その上で、映画化またはドラマ化されてるものを探すと、まず1984年のグリコ・森永事件をモデルとした小説の映画化として、ついこの間公開された『罪の声』がありました。また同年の三浦和義ロス疑惑をネタの１つとしてたのが滝田洋二郎監督の一般映画デビュー作『コミック雑誌なんかいらない！』。同時代映画なので歴史映画という感じではないんですが、他にも翌1985年の日航ジャンボ機墜落事故とか豊田商事会長刺殺事件なんかも劇中で描かれたみたいですね。ビートたけしが会長刺殺犯を演じてるシーンは何かで観た記憶。日航ジャンボ機墜落事故は他にもそれぞれ映画化とドラマ化がされた『クライマーズ・ハイ』『沈まぬ太陽』があります。僕は『クライマーズ～』の映画版のほうだけ、脇役で出てた女優の野波麻帆さん目当てに観ましたが、内容はあんまり覚えてないなあ。確か事件を追う記者の映画だったような。そして1987年の大韓航空機爆破テロを題材とした『政治犯・金賢姫／真由美』（またはただ単に『真由美』）という韓国映画があります。日本では劇場未公開でビデオスルーでしたが、昔レンタル店で見かけた記憶があります。吹替版のみらしく、時間もオリジナルの110分を93分に短縮したバージョンとのこと。DVD化はされていません。


＞観てない歴史映画
　以前、名画座未掲載の歴史映像作品の感想をずらずらと書いたんですが、今度は名画座未掲載だし僕も観てないんだけど存在だけは知っている、という映画やドラマについてちょこちょこっとずつ書いていこうかなと。基本的にはDVD化されてる作品ですが、DVD化されてなくても配信・ビデオ化・テレビ放送されてたり、最近（10年代）の作品は紹介しちゃいます。
　先史時代は相変わらず思いつかないんで、まずは日本史の神話～平安編。観てもいないんで、そんなに書く量はないなと思ってたんですが、妙に本数が多くて……。ま、それだけ観てないってことなんですが。

『曼荼羅　若き日の弘法大師・空海』……1991年の日中合作映画。中国でのロケもされていて、監督は中国のテン・ウェンジャ、主演は永島敏行。DVD化はされていません。
『陰陽師』……2001年にNHKで放送された連続ドラマ。原作は夢枕獏の小説で、主演は稲垣吾郎。僕は再放送だか再々放送だかでチラッとだけ観ましたが、予算の関係から特撮などはほとんど使っておらず、映画のような派手なシーンこそないものの、静かな雰囲気の中にあやかしの世界を上手く表現してたように思います。
『陰陽師・安倍晴明　王都妖奇譚』……2002年にフジテレビで放送された連続ドラマ。こちらの原作は岩崎陽子のマンガ『王都妖奇譚』。主演は三上博史。
『陰陽師』……2015年にテレビ朝日で放送された単発ドラマ。原作は夢枕獏の小説で、主演は市川染五郎。これは観ました。理由はヒロイン役で山本美月ちゃんが出てたから（笑）。藤原兼家・兼通兄弟や兼家の子である若き日の道長が登場してましたが、たいして面白くはなかったかな。ソフト化はされていません。
『陰陽師』……2020年にテレビ朝日で放送された単発ドラマ。原作は夢枕獏の 『陰陽師　瀧夜叉姫』で、監督は篠原哲雄、主演は佐々木蔵之介。前回書いた通り、平将門の怨霊が敵のようです。ソフト化はされていません。
『陰陽師：とこしえの夢』（原題：晴雅集）……2021年の中国映画。原作は夢枕獏の小説で、主演はマーク・チャオ。本国では小説家でもある監督の過去の盗作が発覚し、本作の中にも『ドクター・ストレンジ』からの盗作とおぼしき場面があるとの指摘があったりしたことから公開から１週間足らずで公開中止となってしまったようですが、日本ではNetflixで配信されています。ちなみに二部作の予定で後編の『朧夜曲』も同時に製作されていたそうですが、そちらの公開も無期限延期になったとのこと。
『陰陽師：二つの世界』（原題：侍神令）……2021年の中国映画。陰陽師を題材とした中国のスマホゲームを原作とした映画とのことで、主演はチェン・クンとジョウ・シュン。日本ではやはりNetflixで配信されてます。
『源氏物語』……1951年の映画。与謝野晶子の現代語訳をもとに新藤兼人が脚本を書き、谷崎潤一郎が監修、吉村公三郎が監督というやたら豪華な布陣で、光源氏役は長谷川一夫。カンヌ映画祭で撮影賞を受賞したとのこと。
『源氏物語　浮舟』……1957年の映画。北条秀司の戯曲が原作で、監督は衣笠貞之助。薫の君役が長谷川一夫、タイトルにもなっている浮舟役が山本富士子、匂宮役が市川雷蔵。
『新源氏物語』……1961年の映画。川口松太郎の小説が原作で、監督は森一生、光源氏役は市川雷蔵。
『源氏物語　千年の謎』……2011年の映画。原作は高山由紀子の小説『源氏物語　悲しみの皇子』（文庫題『源氏物語　千年の謎』）。紫式部と藤原道長が男女関係にあったという設定で、『源氏物語』の話とそれを執筆する紫式部の話を交互に描いていくという映画らしい。光源氏役は生田斗真、紫式部役は中谷美紀、藤原道長役は東山紀之。本編は観てないんですが、他の映画を観に行った時に予告編だけ観ました。なぜか安倍晴明（窪塚洋介）も出てきてましたね。
『藪の中』……有名な芥川の小説が原作の1996年の映画。昔レンタル店でビデオを見かけて知った記憶。低予算のB級映画っぽい匂いがぷんぷんですが、坂上香織がヌードになりまくってるらしい。
『袴だれ保輔』（『平安群盗伝　袴だれ保輔』『袴だれ保輔　平安群盗伝』）……以前紹介した1951年の映画。『今昔物語集』『宇治拾遺物語』に出てくる大盗人・袴だれ保輔を主人公とした吉川英治の短編の映画化。保輔を社会体制の被害者として描いてるようで、そのあたりは『大江山酒天童子』と似てるんですが、当時の流行りだったんだろうか？　ソフト化も配信もされていませんが、CSの衛星劇場で放送されたことがあるようです。

＞名画座修正情報
『GOJOE・五条霊戦記』……『五条霊戦記　GOJOE』が正確な邦題のようです。また平忠則役は岸部一徳です。


#11088　
バラージ 2021/05/03 22:42
頼朝のご先祖様たちが出てくる映画＆ドラマ　その２

　『鎌倉殿の13人』、また新たなキャスト発表。江口のりこさんは味があって好きな役者だけどさあ。亀の前役ってなんかイメージが……。あまりにも配役が斜め上すぎる。やっぱり三谷とは合わんなあ。まぁその一方で比企尼がちゃんと登場するとか、史実よりかなり年上の女優ばかりが演じてきた丹後局が鈴木京香さんとか（まあ年齢的にはいつも通り史実よりかなり年上なんですが）、おっ、と思うところもあるんですがね。


　頼朝のご先祖様たちが出てくる映画やドラマの話、第２回。前回最後に紹介した頼信の子孫の河内源氏編です。

源頼義
　頼信の子で、前九年の役を平定したことで有名。大河ドラマ『炎立つ』に出てましたね。元木泰雄『源頼義』（吉川弘文館）、『河内源氏』（中公新書）によるとこの頼義、受領になれたのが49歳という出世の遅さで、文官の官吏だった弟の頼清のほうが官位も受領も常に先んじていたとのこと。前九年の役平定のために陸奥守となった時にはすでに63歳で、しかも大規模な合戦はほぼ初めてだったそうです（父頼信に従って出陣した平忠常の乱も、前記の通り合戦になる前に終わっている）。前九年の役が苦戦続きで出羽の清原氏の援軍でようやく平定できたのも、そもそも動員できる兵力が少なかった上に、合戦経験があまりなかったからという説ですが、おそらく朝廷も忠常の乱の時のように安倍氏が戦わずして降伏することを期待しての起用だったんではないかなあ。実際、当初はそうなったんだし。
　前九年の役終了後の頼義は出家して極楽往生を願う仏道三昧という、当時の典型的な余生を送ったそうです。なお、長子義家が生まれたのは50歳過ぎてからで、その後さらに義綱・義光に女児までもうけてるんですが、年齢的になんか不自然な気がする。しかし史料的制約もあってか、それを考察してる歴史学者もいないようで。まあ、それ以前の子供はみんな早世して記録が残ってないという可能性もなくはないんだけど……。
　映像作品の話に戻ると、『炎立つ』の他に1961年の『鬼が居たか居なかったかと言う話』という日テレのドラマに登場してるらしいんですが詳細は不明。また1915年の『安倍貞任』、1917年の『安達ヶ原三段目　袖萩祭文』、同年の『安倍貞任　安達三段目』という安倍貞任が出てくる映画があるようですが、やはり詳細は不明で頼義が出てきたかどうかもわかりません。後の２作はタイトルからいって歌舞伎や浄瑠璃の『奥州安達原』の映画化だろうから頼義は出てこないかな。

源義家
　頼義の子で、こちらは後三年の役を平定したことで有名。やはり『炎立つ』に登場しています。ただ頼義にしろ義家にしろ、近年の研究では坂東の武士と強い主従関係を築いたわけではなく、ましてや武家の棟梁などではなかったということが明らかにされています。後三年の役にしても、前九年の役の頼義同様１度は調停に成功したものの結局はそれが破綻して泥沼の合戦に突入。苦戦の末に平定はしましたが、やはりそれは清原清衡（藤原清衡）や吉彦秀武ら現地勢力のおかげで、義家自身はその間の朝廷への貢金未納をとがめられて不興を買ってしまう始末。
　しかもその間に京では次弟義綱が台頭し、義家と勢力を争うほどに成長しており、帰京後は郎党同士の争いから京で合戦寸前にまでなっています。一時は義綱に官職でリードされるなど、義家の地位は決して安泰ではなかったようです。晩年は嫡男（次男）義親の乱行に悩まされ、東国では三弟義光と三男義国（新田氏・足利氏の祖）が抗争を繰り広げるなど一族の内紛が絶えず、悩み多き晩年だったようですが、それでも摂関家に密着した義綱に対抗するために白河上皇に接近し、それが功を奏して院昇殿を許されるなど、それなりに功なり名遂げた生涯だったみたいですね。
　登場する映像作品は『炎立つ』の他には、1922年に『八幡太郎義家』という映画があったようですが詳細は不明。前記の『安倍貞任』（1915年）、『安達ヶ原三段目　袖萩祭文』（1917年）、『安倍貞任　安達三段目』（1917年）が『奥州安達原』の映画化だとすれば義家も出てきた可能性がありますが、やはり詳細は不明です。

源義親
　義家の次男。兄義宗の早世で嫡男になったのに、対馬守という地位の低さが不満だったのか、暴れまわって隠岐に流罪となった不肖の息子。義家や白河上皇によって恩赦があると甘く見ていたという説もありますが、義家の死によってその可能性も消えると、隠岐に渡らず滞在していた出雲でまた挙兵。しかし平正盛によって討ち取られました。映像作品への登場はなし。討ち取った正盛のほうは大河ドラマ『平清盛』に登場しています。清盛のおじいちゃんで、貞盛以降低迷していた伊勢平氏がこれで復活することになりました。

源義忠
　義家の四男で、義親が廃嫡された後に嫡男となり、義家死後に後を継ぎました。しかし義親が討たれた１年後に義忠も郎党に殺されてしまいます。この事件の背後については大がかりな捜索が行われ、河内源氏全体を巻き込んだ大騒動となっています。映像作品への登場はなし。

源義綱
　頼義の次男。父や兄とともに前九年の役に参加してるんですが、『炎立つ』には登場しませんでした。後三年の役では、苦戦する兄義家に代わって（もしくは援軍として？）派遣されることが朝廷で協議されたようですが実現せず。そして前記の通り、義家が奥州で失態を繰り返してる間に摂関家に接近して、兄に並ぶ勢力を得るようになり、その後京で合戦になりかけた時も義家だけが処罰されています。父・兄に次いで陸奥守になって出羽の兵乱も平定し、一時は官職で義家を上回るほどになりました。しかし庇護者だった摂関藤原師通が若くして急死すると勢力は失墜。さらに兄義家死後にその後を継いだ義忠が暗殺されると、義綱の三男義明に疑いがかけられ白河上皇の命で朝廷に討たれてしまいます。怒った義綱と他の息子たちが出奔すると、今度は朝廷は義親の四男で義忠の後を継いだ為義らに追討させ、息子らは全員自害。降伏した義綱も義忠暗殺については無実とされたものの、無断出奔の罪で佐渡に流罪とされてしまいました。まさに波乱万丈の人生ですが、映像作品に登場したことはありません。まあ時代的にも題材にならないだろうしなあ。

源義光
　頼義の三男。こちらは後三年の役の時に官職をなげうって兄義家のもとに駆けつけたというわりと有名なエピソードがあるんですが、やはり『炎立つ』にはなぜか登場しませんでした。ちょうど執筆の遅れた原作に脚本が追いついて、ごたついてたあたりだからなあ？　原作ではどうなんだろ？　兄のもとに駆けつけたのも兄弟愛というよりも、嫡流になる可能性のない義光が武功による恩賞や地方での勢力拡大を求めてのものだったという説が有力です。その後は常陸国で勢力を拡大し、義家の三男義国と抗争を繰り広げたのは前記の通り。また『尊卑分脈』には義忠暗殺の黒幕は義光だったと記されているとのことですが真相は不明。子孫は佐竹氏・武田氏・小笠原氏・平賀氏などになっています。映像作品への登場はありません。


＞『長安二十四時』
　最初に放送してたのはWOWOWで、原題は『長安十二時辰』。馬伯庸という小説家の同名小説のドラマ化だそうです。僕が去年夢中になったドラマ『海上牧雲記　３つの予言と王朝の謎』と同じスタッフが製作したドラマとのことで、キャストも『海上牧雲記』とかなりかぶってる模様。評価もかなり高いようですが、僕はさすがにやたら長いドラマを観るのに疲れてたのと、お目当ての女優が出てるわけでもないってことで観てません。米国ドラマ『24』のほうも観てないので内容が似てるかどうかも不明。ちなみに原作者の馬伯庸は、やはり僕が一昨年から去年にかけて観てたドラマ『三国志　Secret of Three Kingdoms』の原作者でもあるらしい。

＞名画座修正情報
『陰陽師』……主人公の安倍晴明が安部清明になっています。
『源義経』（日テレ年末大型時代劇）……原作は大河ドラマと同じく村上元三です。


#11087　
ろんた 2021/05/01 01:11
「遊の人」

　いつも月末になるとスカパー無料の日(毎月第一日曜日04:00-28:00)に何やるか、チェックするんですが、今月は「新春特別企画　遊の人　天下の御意見番大久保彦左衛門」がTBSチャンネル2で10:00-12:30に放送されます。彦左衛門を演じるのは森繁久彌、家光を竹脇無我が演じ、根本りつ子の出演もあるようで、まるで「おやじのヒゲ」(笑)。このドラマ、お気楽なホームコメディとして見ることはできるんだけど、なんか森繁が息子の嫁(根本りつ子)にエロいこと考えてる気がするんだよなぁ。
　森繁が演じるということで大久保彦左衛門は頑固オヤジではなく、「遊の人」(粋で人間味豊かで人の心の喜怒哀楽に共感できる人。庶民の心のひだを読み取って敢然と悪に立ち向かう人、だそうな)として描かれるとのこと。お話は──年末、春日局(藤間紫)のもとに、駿河大納言忠長(中村橋之助)が殺生禁断の地で狩りをした、との報せがもたらされる。善後策を講ずる幕閣だが、穏便に済まそうとする家光(竹脇無我)、松平伊豆守(平幹二朗)と強硬派の大老・土井利勝が対立。結局、正月の総登城を利用して忠長を詰問することになる。だが、その背後には土井利勝の陰謀があった。──というもの。まあ、最後は大久保彦左衛門が土井利勝の陰謀を打ち砕き、「兄弟仲良く、天下太平のために尽くそうではないか」「はい、兄上」ってことでメデタシメデタシになるんでしょう、正月から滅茶苦茶深刻な兄弟ゲンカ見せられても困るし(笑)。

＞「長安二十四時　TWENTY FOUR」
　ということでＣＳ局のＨＰをめぐったりしているんですが、チャンネル銀河で見つけたのがコレ。５月の番組ガイドの表紙を飾っていて、主人公二人(？)の背後に碁盤の目の町が炎に包まれ、空にはなぜかカラスが飛んでいる。惹句を書き写すと、「中国ドラマ史上最高総製作費150億円の話題作！」「タイムリミットは24時間！」「唐の都、長安を爆破テロから守れ！」「24時間以内に爆破テロから長安を救うべく奔走する主人公たちを描く」「緻密なストーリーとスピード感あふれる展開！」となっております。
　番組紹介によると──天保3年、上元節の祝いで賑わう長安城内。そんな中、靖安司の司丞・李必(り・ひつ)はある男を呼び寄せた。男の名は、張小敬(ちょう・しょうけい)。不義の罪による囚人だ。李必は、長安に紛れた狼衛を追跡するも、首領である曹破延(そう・はえん)を逃したという。そこで都を熟知する小敬に、成功の暁には放免するとの条件下、曹破延の追跡を命じたのだった。与えられた期限はわずか24時間。小敬の命をかけた戦いが始まる。──というお話らしい。
　え～～っ、もちろんアレですね、アレ。いやぁ、この発想はなかったな。日本では翻案してまんま放送するのが精一杯だったし。許可とってるのかな？　それにしても「唐の都」で「爆破テロ」って……。
　しかし良く見ると全48話と書いてあって、放送スケジュールよると……
中国ドラマ「長安二十四時」＃１ 巳の正刻～戦いの始まり～
　(2021/05/20 23:00-24:00 05/23 09:30-10:30)
中国ドラマ「長安二十四時」＃２ 午の初刻～小敬、始動～
　(2021/05/21 23:00-24:00 05/24 09:30-10:30)
中国ドラマ「長安二十四時」＃３ 午の正刻～遺された暗号～
　(2021/05/24 23:00-24:00 05/25 09:30-10:30)
中国ドラマ「長安二十四時」＃４ 午の刻～窮地の靖安司～
　(2021/05/25 23:00-24:00 05/26 09:30-10:30)
中国ドラマ「長安二十四時」＃５ 午の刻～人脈を持つ男～
　(2021/05/26 23:00-24:00 05/27 09:30-10:30)
となっています。事件はリアルタイムに進行……しないじゃねぇか！(笑)

＞徹夜城さん
　あっ、最後の本能寺と、息子と娘を出すために無理しているのは忘れてました。
　最後に本能寺ってことは、あのドラマ全体が走馬燈ってことなんだろうか。ちょっと意味が分からないんですが、ひょっとしてひょっとしたら、「麒麟がくる」にぶつけるつもりだったのかも。コロナ禍が無ければ去年放送されたわけだし。
　今川義元は、「御一家」につながる者としての強烈な自負を持っているように描かれていましたね。「下克上」に対する嫌悪感丸出しだった。義元からすれば、信長なんか斯波の家来のそのまた家来なわけで吹けば飛ぶような存在のくせに、尾張を手中にしているわけで、それだけでも目障りだったのかな。そうそう、尾張侵攻の目的、上洛ではありませんでしたね。
　それにしても、衆人環視の中、義元を討ち取って「己の手柄にせい」とか言われても……毛利新介、困ったろうな(笑)。

＞バラージさん
　古谷一行といえば金田一耕助なわけですが、実は火サスの松本清張作品にたくさん出演していたりします。それも、女関係でしくじる役が多かったような。
「霧の旗」って、あの弁護士からすれば理不尽きわまりない話で、ヒロインには何もしていない。逆恨みですらなく、八つ当たりされているわけです。まぁ、相談受けている時に(ああ、早く温泉で愛人としっぽりしたいなぁ)とか考えていたかと思いますが、それであんな目に遭わされては堪らない。それだけにヒロイン役には、同情を集めるよう演技力が要求されるわけですけど。


#11086　
バラージ 2021/04/25 21:36
震災映画

　災害の映画って、災害そのものをそのまま描いてもドラマにならないんで難しいんですよね。考えてみれば阪神大震災・東日本大震災に限らずとも、実際に起きた災害の映画って「その災害の一部を含んだドラマ映画」か「娯楽的なパニック映画」になっちゃうことが世界的にも多いような。古代ローマのポンペイ火山噴火なんて何度も作られてるわりに後者ばっかりだし（まあ当然っちゃあ当然だけど）、関東大震災にしてもそれのみを中心テーマにした映画やドラマってのは多分ないはず。また同時代の災害そのものを映像でそのまま描くというのは、映画やドラマというより報道やバラエティの再現映像ですし、わざわざ映画やドラマにしなくともそれで良いということになってしまいます。

　僕も『Fukushima 50』は、なんか福島原発よいしょ映画っぽいなあと感じて未だに観ていません。『プロジェクトＸ』系感動泣かせ映画っぽい気もしますし、個人的にはそういうのはちょっと……というのもあります。
　一方、同じ題材を別の角度から扱った『太陽の蓋』という映画を先日観ました。2016年の映画で、劇場公開時はなんとなく気が向かず観に行かなかったんですが、先月にWOWOWで放送されたものを録画していて、今になってようやく観た次第。放送されたのはもともとの130分バージョンですが、再編集した90分バージョンが今年の２月に再上映されたとのこと。
　東日本大震災と福島第一原発事故の当日からの５日間を、報道・官邸・現場・東京および福島の市井の人々らの群像劇として実録風に描いた社会派ドラマ映画で、北村有起哉演じる事故の真実を追う新聞記者を狂言回しとして、事故に直面した官邸の対応を中心に描いています。当時の菅内閣の閣僚たちが実名で登場しており（ただし東京電力は「東日電力」に変えられている）、菅直人首相を演じているのは三田村邦彦。
　いやぁ、予想以上に出来の良い映画でした。正直そんなに期待してなかったんですが、震災と原発事故からの５日間がリアルなドキュメント・タッチで描かれていくのを観ていると、あの時のことがまざまざとよみがえってきて、なんとも言えぬ恐怖を感じましたね。僕自身の立場は当然市井の人々に近く（東京の人々と福島の人々の中間くらいかな）、震災の記憶はそれなりに強く持ってるつもりでしたが、自分が体験したわけではない伝聞したことなんかについては案外忘れてたところもあって、映画を観て「あ～、そんなことあったな」と思い出したりしました。また、官邸に情報を伝えない東電本部なんてのを見てると、太平洋戦争中に日本海軍がミッドウェーで大敗北したことを東条首相にも伝えなかったなんていう話を思い出して、日本的組織って昔から変わらない、変えるのは難しいんだなぁとも思ったり（サリン事件の時も似たような話があったような）。あまり予算がなかったのか、それとも内容的に事務所などからオファーを断られたか、俳優陣はやや地味な顔ぶれなんですが、それが逆に怪我の功名と言うべきか作品のリアリティーを上げています。これは劇場で観るべきだったな。
　あまりに時代が現在に近すぎるんで歴史映画とは呼べないと思うんですが、実録社会派映画なので作りとしては歴史映画に近いものがあると思います。

　僕は東日本大震災関連映画は結構観ているほうで、他に『青いソラ白い雲』『家路』『物置のピアノ』『さよなら歌舞伎町』『彼女の人生は間違いじゃない』『風の電話』『影裏』『浅田家！』といったあたりを観ています。ドキュメンタリー映画では、『がんばっぺフラガール！』『Documentary of AKB48　Show must go on　少女たちは傷つきながら、夢を見る』『サンマとカタール』、テレビドラマは『あまちゃん』『監察医　朝顔』あたりを観ました。『家路』『物置のピアノ』『さよなら歌舞伎町』『彼女の人生は間違いじゃない』『Documentary of AKB48　Show must go on』『あまちゃん』『監察医　朝顔』が面白かったですね。


＞『風と雲と虹と』
　へえ～、最終回にそんなナレーションがあるんですか。ちなみに田原藤太（藤原秀郷）の子孫（の一流）が奥州藤原氏なので、源平合戦は将門を討った人たちの子孫だらけということに（笑）。

＞『霧の旗』
　僕は2003年版しか観てなくて（原作も未読）、観た理由は主演が好きな女優の星野真里さんだったから。もう１人の主演の弁護士役は古谷一行でした。お話のほうはあんまり好きじゃなくて、星野さんの演技力を堪能するドラマだったという感じでしたね。

＞『青天を衝け』
　この間なかなか面白いと書いたとたんに２話ほど見逃してしましましたが（笑）、また３話ほど続けて観て、やっぱりなかなか面白い。題材が発表されたときには興味がないしほとんど観ないだろうな～と思ったんですが、やっぱりドラマや映画は題材よりもドラマ（映画）そのものの出来ですね。


#11085　
徹夜城（たまにはヨーロッパ中世史本を読んでみる管理人） 2021/04/25 21:17
OK狭間の決闘

＞ろんたさん
　海老蔵さんの「桶狭間」、僕も見ました。ネット上で他の方の感想で「完成されちゃった信長」というのがあって、なるほど確かに、と。海老蔵さん、すでに貫禄がありすぎるというか。
　若き日の信長を桶狭間をクライマックスに描く映像作品というのは結構多いですね信長がいちばんかっこいいし、名エピソードに事欠かkないし、桶狭間の逆転勝利が快感を呼ぶ、ということでしょう。
　海老蔵、悪くはないんだけど大仰で貫禄あり過ぎる演技のせいで、定番の道三との会見でも悪い意味で存在感がありすぎちゃうな、と感じた者です。

　今度のドラマで工夫としては三上博史の今川義元かなぁ。近年の映像作品では引き立て役的な感じではなく有能武将に描く傾向があるように感じてますが、三上義元はなかなかかっこよかったのでは。それを信長自身が狙撃も含めて自ら斬りあっちゃう展開は、まぁ東映時代劇チック、と思いましたが、そこでタイトルのようなことを考えた次第。
　それにしてもエンドクレジットのあとに「本能寺」までくっつけちゃって。見逃した人も結構いるんじゃなかろうか。


＞読書。
　ただいま塩野七生さんの「皇帝フリードリッヒ２世の生涯」を読み出しました。まだ彼が少年段階までしか読んでないけど、教皇インノケンチウス３世、アッシジのフランチェスコ、イギリスのジョン王と世界史有名人がぞろぞろと周囲に出てきて楽しい。このへん、あんまり知らないんで誰が同時代人なのか把握できてなかったんですよね。
　アッシジのフランチェスコについては彼を主役にした映画「剣と十字架」で知ってて、あれにインノケンチウス３世も登場してたんでこの二人が同時代なのは知ってたんですけどね。



#11084　
ろんた 2021/04/22 01:27
「桶狭間～織田信長　覇王の誕生～」を見ました

　二時間ドラマ枠がテレ東以外で消え失せる中、地上波では久しぶりの大型歴史劇(or時代劇)。「十三代目市川團十郎白猿襲名記念特別企画」ですが、コロナ禍で襲名披露自体が延期されフジのＨＰでずっと店ざらしになっていたのがやっと放送されました。ということで、もちろん海老蔵の海老蔵による海老蔵のためのドラマ。しかも、タイトルとキャストでどんなドラマか察しがつく親切設計(笑)。もちろん、桶狭間の戦いの一日を見せながら、合間に道三との面会、弟・信勝や母・土田御前との確執、藤吉郎との出会いなどを挟むわけですが、尺の関係か、平手政秀の話はなし。
　役者もスタッフも頑張っていた。特に中尾明慶(藤吉郎)は、今後のはまり役になりそう。小野了(林秀貞(通勝)　「相棒」の中園参事官)は、信長に振り回される普通の人なのがいい。三上博史(今川義元)は、お歯黒、置眉、薄化粧で怪演。指食いちぎってたし。定番通り、冒頭(桶狭間の日の未明)で海老蔵(信長)が謡い舞う幸若舞の敦盛は、さすがの迫力。気になるところは──信長がなぜか西洋の軍隊儀礼を知っている。信勝を討つのが柴田勝家。多分ＣＧの血しぶきがウザイ戦闘シーン。信長の短筒が今川義元の輿を撃ち貫く。信長と義元が一騎打ち。──といったところですけど、まあ、分かっててやってるんだろうから許しちゃう。許すのが難しいのは、セリフとナレで全部説明してしまう脚本……かなぁ。
　あと強烈に違和感があったのは、信長が第六天魔王的に偉そうなこと。回想シーンで芝居を変えるのか、と思ったんだけどそんなこともなく、ず～っと同じ調子。若武者・信長ＶＳ海道一の弓取り・今川義元、という描き方が定番だと思うんだけど、なぜこういう演技プランあるいは演出プランにしたのか不思議。もっとも海老蔵ももう40代なんで、若武者を演じるには無理があるといえば無理がある。となるとミスキャストということになるんだけど、海老蔵の海老蔵による海老蔵のためのドラマなんだから、むしろ企画側のミスでしょうか。
　そこで思い出してしまったのが「霧の旗」(2010)。実は「桶狭間」の後にＢＳ日テレで何度目かの再放送があったんだけど、主人公のヤメ検若手敏腕人権派弁護士(＜肩書きが長い！)を演じた海老蔵は「そんな若いヤメ検なんかいない」とか酷評されてしまったのでした。そんなこと考えると、海老蔵という人は映像作品と相性が悪い感じがする。むしろ「桶狭間」は2010年、「霧の旗」は現在演じるべきだったんではないか。

＞呉座の乱(笑)
　最初から女性嫌悪の気があったのが、鍵垢で同好の士とキャッキャウフフしていてキリモミ状に闇落ちした模様。結局、謝罪する羽目になったわけですが、ここまでは絵に描いたような「自業自得」。あとは被害者が謝罪を受け入れるかどうかというところだったんだけど、ここでなぜか公序良俗派が「連帯」を叫んで群がり出て、日文研への組織的電凸を呼びかけたり、過去ツイをさらして煽動したり。特に後者は、何かあった場合の逃げ道(「やれとは言ってない」)を作っていて呆れる。このところあっち界隈、黒星続きだったからか、いくら叩いてもいい生け贄扱いされちゃってるみたい。こういうのを"魔女の鍋の底"って言うのかな？
　わたしも呉座氏に対する違和感を「七人の侍」評について書いたことありましたけど、その他にも百姓一揆に関する評価で引っかかってました。百姓一揆は平和的なものだから階級闘争じゃない、っていうんだけど、階級闘争は実力行使とイコールじゃないと思うんだけどなぁ。それだと、現代の団体交渉やデモ、ストライキなども階級闘争じゃないってことになっちゃう。『カムイ伝』なんて強訴、逃散、一揆はおろか、子弟の教育や商品作物(綿花)の栽培も階級闘争として描いていたけど。上の世代の大きな物語をつむぐ傾向(＜婉曲表現)を嫌悪するあまり、変なことになってるように思えます。

＞徹夜城さん
「表現の自由戦士」界隈を観測していると、敵対している(？)公序良俗派のなかなか香ばしい発言が流れてきたりします。比較的最近では「普遍的人権思想からいって９歳の女児とセックスしたムハンマド許すまじ。イスラム教撲滅すべし」(大意)ってのが凄かったなぁ。
　そうそう、女郎の「平均寿命」ですが、「23(22.4)歳説」と書いているのは「23(22.7)歳説」の間違いでした。わざわざ数字を細かく書いて間違ってるの、こっぱずかしい(汗)。

＞二つのサリン事件
　地下鉄サリン事件というと、どうしても松本サリン事件を思い起こしてしまいます。「地下鉄」がなければ「松本」はどうなっただろうか。「松本」はメディアの暴走という点で議論されることが多いけど、この事件の特異な点は、一斉に河野義行氏に飛びかかったこと。もともと日本のメディアには「特ダネ逃しても特落ちするな」(笑)的な横並び体質があるようなんだけど、長野県警が関与を公式に認めていないのにこうなるのは珍しい。突っ走った挙げ句に間違っていたら責任とらされるからだし、そのために記者クラブって制度があって、日本の新聞記事の８割は発表モノという説もあるくらい。じゃあそのココロはというと、"かなり確度の高い情報"が"然るべき筋"から"一斉にリーク"されたとしか思えない。そしてこの場合、そんなことができるのは長野県警しかないわけです(笑)。その後捜査が進展してもリークは続いていたらしく、県警の記者会見ではメディア側が、いつ逮捕するのか、と言わんばかりの質問を繰り返し、リークした県警側は判で押したように、河野さんは被疑者ではなく参考人だ、と答弁している。これってかなり恐い。そして地下鉄サリン事件が起きなかったら……河野氏は自白させられたかもしれない、というもっと恐い話になってくる。氏への疑いは地下鉄サリン事件が起こるまで続いた。化学的知識があるというだけで第一発見者を疑い、家宅捜索で出てきた農薬を発生源と断定、有毒ガスがサリンだと判明しても、農薬で製造が可能と見解を変えなかった長野県警は、河野氏が長野県公安委員会委員となるまで謝罪しなかった。まっ、謝罪しないのは検察や裁判所も同じだけど、これは検証も反省もしていないということなので、また同じ事が起こる可能性を考えてしまう。


#11083　
徹夜城（歴史ドラマ長編を何本も見てるとさすがに疲れる管理人） 2021/04/21 23:22
「ととと」

　このタイトルは何かと言えば、大河ドラマ「風と雲と虹と」の大河マニアの間での省略形（笑）。
　現存最古の「全話鑑賞可能な大河ドラマ」であり、現時点で「最古の時代を扱った大河ドラマ」である本作、僕はさすがにリアルタイムではないですが、数年前に全話を鑑賞しました。一応僕は「ご当地住人」でありますしね。

　「風と雲と虹と」は、最終回、将門死後に平貞盛、源経基が顔を並べたカットで、「貞盛の〇〇世子孫が平清盛であり、経基の〇〇世子孫が源頼朝である」とナレーションがはいり、「あーそうなのか」とちょっとした感動を覚えたものです。将門はちと早すぎた人、という感じでもありますね。このドラマ、「中央政府」という現代語がやたらに使われてましたが、「草燃える」も意図して現代風セリフまわしにしてましたね。
　「田原藤太＝藤原秀郷」のことですが、役名は確かに「田原藤太」になってましたけど、ドラマ鑑賞前の段階で配役書いちゃった名残でもありますし、歴史人物の名前としては「秀郷」の方が通りがいいので、そのまんまにしておきます。あのドラマ、将門も役名表示は「平小次郎将門」でしたし。


＞阪神淡路大震災とかオウム事件とか
　確かにストレートに扱った作品はまだないですかね。ドキュメンタリーなものは別といて…テレビドラマでは神戸新聞の震災時の苦闘を描いたものは見たことがあります。同趣旨で東日本大震災時の河北新報のドラマというのもありました。東日本震災では原発事故を描いた「フクシマ５０」があったけど、原作者がアレということもあって未見。
　オウム事件はいろいろと扱いづらい面がありますねぇ…ＨＫの「未解決事件」でやったのくらいしか覚えがない。


＞やっと見終えたドラマ
長い歴史ドラマをいくつも抱えてて、チビチビ見てるんでなかなか終わらないんですが、先日ようやく一つ、「三国志　THE THREE KINGDOMS」は見終えました。これ、原題の「三国」のほうが味があっていいんですが。
　今頃見終わったんかい、という声もありましょうが、ホントに数年がかりで見ました。幼児期なところあんまり先へ先へと見たくなる内容じゃなかったんですよ、僕には。リアルっちゃあリアルだけど全体的に絵作りや音楽が重々しすぎちゃって。基本「演義」なんだけど過去に一度作ってるせいかそのまんまはやらない「新解釈」がフシブシに入る。
　カネがすごくかかってるのはわかるし、以前の三国演義ドラマと比較して質的にはずっと上なのかもしれない。だけどなんか、三国志ファンの僕にしてあまり気乗りしないで見てた、というのが正直な感想で。

　現在は「隋唐演義」と「王の顔」と「オスマン帝国外伝」が同時進行中。録画だけしてまだ手をつけてないのが二本ほど。ほかにも気になってるのはいろいろあるんだけど…


#11082　
バラージ 2021/04/20 01:00
頼朝のご先祖様たちが出てくる映画＆ドラマ　その１

　来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の新たな出演者として、八重役のガッキーこと新垣結衣さんが発表されましたね。キャスト発表第１弾でヒロイン役の女優が全然発表されなかったんで、どうなるんだろ？と思ってたんですが、いきなりの大物だなぁ。
　ただ、八重を北条義時の初恋の人とする設定はかなり斜め上の発想でちょっとびっくり。よほどの源平ファンでなけりゃ知らない人物なので、ニュース記事でやたらと“義時初恋の人”と見出しが付いてるのを見ると、みんなそう認識してしまいそうで頼朝好きとしてはちょっと複雑。それといきなり史実とは違うヒロイン持ってきて、本物の奥さんたち──阿波局（妾で泰時の母）、姫の前（最初の妻）、伊賀の方（後妻）もその後全員ちゃんと描いてくれるんだろうか？　頼朝の妾の亀の前や大進局もしっかり出してほしいところです。


　さて、『鎌倉殿の13人』は源平合戦から鎌倉初期が舞台ということで、好きな時代なのでいろいろ語りたいことはやまやまなんですが、ドラマのネタバレになるのも良くないということで、とりあえず今回はほとんどドラマと関係ないであろう、頼朝のご先祖さまの清和源氏たちが出てくる映画やテレビドラマについてさらっとつらつらと書いていっちゃおうかなと思います。

源経基
　頼朝の７～８代前（系譜が諸説ある）のご先祖さまで、清和源氏で最初に源姓を名乗った人。平将門の乱に関係したため大河ドラマ『風と雲と虹と』に登場してますが、史実的にかなりダメダメな人なので当然ながら悪役まわりのようですね。また、去年テレビ朝日で放送された単発ドラマ『陰陽師』にも登場してたとのこと。僕は未見ですが平将門の怨霊が敵となるドラマだったようで、他にも平貞盛や俵藤太なども出てきたようです。

源満仲
　経基の子ですが今のところ映画やドラマへの登場はなし。まあ関係した事件が安和の変とかマイナーなものしかないからなあ。時代的にもまず題材にならないあたりですし、今後も登場することはおそらくないでしょうね。

源頼光
　満仲の子で、頼朝のご先祖である頼信の長兄。この人は頼朝の先祖じゃないんだけど、有名な人なんで紹介してしまおう。藤原道長の側近的家司として諸国の受領を歴任し、巨万の富を得て摂津源氏の祖となった人物で、あまり武士としての働きはないんですが、そういう史実的なことよりも『今昔物語集』『御伽草子』などでの頼光四天王を率いて鬼や妖怪を退治した話のほうが有名かも。
　映画もそっち方面のものばかりで、歴史映像名画座収録の『大江山酒天童子』の他、1941年の『羅生門』（芥川の小説とも黒澤映画とも無関係）、1956年の『羅生門の妖鬼』、1968年の『薮の中の黒猫』などに登場してるようです。あるいは道長が大河ドラマ化されたら史実系の頼光も登場するかもしれませんが、そもそも道長大河化の可能性がなあ……。

源頼親
　満仲の子で、頼光の次弟。大和源氏の祖となった人物ですが、頼親本人も子孫の大和源氏もたいした事績がないため知名度も低く、当然ながら映画やドラマに登場したこともありません。

源頼信
　満仲の子で、頼光の三弟。頼朝ら河内源氏の祖となった人物です。この人は平忠常の乱を平定したことが最も有名で大きな事績ですが、忠常の乱は平将門の乱や前九年の役・後三年の役と違って軍記物語がなく、そのため合戦の詳細も不明な上、頼信が追討使に起用された途端に忠常があっけなく降伏し、しかも京へ連行される途上で病死してしまうという物語的には甚だしまらない終わり方をしてるので、映画やドラマはもちろん、小説などで描かれることもほとんどありません。
　なので当然頼信も映画などには登場していない……と思いきや、1951年の『袴だれ保輔』（または『平安群盗伝　袴だれ保輔』もしくは『袴だれ保輔　平安群盗伝』）という映画に登場してるようです。吉川英治の短編が原作だそうですが、袴だれ保輔って誰だ？と調べたら、「袴垂」というのは『今昔物語集』『宇治拾遺物語』に出てくる大盗人で、実在の盗賊の頭目だった藤原保輔と結びつけられて「袴垂保輔」という人物になったと思われるとのこと。それらの説話では袴垂とも保輔とも関係ないらしい頼信が映画に登場してるのは、原作者である吉川の創作でしょうか？


＞阪神大震災とサリン事件の映画
　もはや1990年代も“歴史”の範疇に入ったと言っていいのかなと考えると、90年代の大きな事件である阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件を扱った映画やドラマも歴史映像名画座入りの候補になったんでしょうかね。
　というわけで候補作を探してみたんですが、阪神淡路大震災を扱った映画やドラマは思ったほど多くないんですね（そして実は僕は１本も観てない）。何号か前の『キネマ旬報』でも「東日本大震災と映画」というテーマで座談会が行われてたんですが、そこでも東日本大震災に比べて阪神大震災の映画が少なかった理由についていくつか挙げられていて、「当時はまだ震災を扱った映画を作ることに被災者への配慮から躊躇があった」「東京在住のクリエイターにとって関西の災害を自分事ととらえきれず距離感があった」「何より大きなこととして阪神大震災には原発事故というファクターがなかった」などが挙げられてましたが、同年に地下鉄サリン事件が起きて関心が分散してしまったというのもあるんじゃないかと。
　とはいえその地下鉄サリン事件を扱った映画やドラマもまたないんですよね。オウム真理教を扱った映画もドキュメンタリーを別にすればほとんどなく、栄耀映画徒然草にある松本サリン事件を扱った『日本の黒い夏　冤罪』ぐらいでしょうか。

＞最近読んでる本
　１年以上前に出版された桃崎有一郎『室町の覇者　足利義満』（ちくま新書）を今頃になって買い、ようやく読み始めました。内容はもちろん足利義満が中心なんですが、全12章のうち、それ以前の室町幕府初期と以後の義持期に１章ずつ、義教期に２章を割いています。まだ最初の幕府初期の章しか読んでいませんが、足利直義への評価の高さと、逆に直義の政策ゆえに室町幕府が諸大名の統制に苦しむことになったという指摘が興味深かったです。ただ、以前読んだ『征夷大将軍研究の最前線』の論考と異なる部分については同意しがたい部分もあり。あと、細川頼之の評価が低い（そして記述が少ない）ところも珍しい。一般向けを意識してか全体的に文章がかなりくだけた調子で、ちょっとくだけすぎてるところも評価が分かれそう。

＞名画座修正情報
『風と雲と虹と』……露口茂が演じている役名は藤原秀郷ではなく正確には田原藤太ではないでしょうか？（あまり自信はありませんが……）


#11081　
徹夜城（今年もなんとか恒例行事をこなした管理人） 2021/04/01 20:44
毎年この日の恒例行事

　いや～、間に合わないかも、と思いつつ必死こいてなんとか8時台にアップしました。
　今年は普通の「史点」もとどこおりがちですしねぇ。今年はほかのコーナーもなんとかいたいなと。それを教会茶ダメか。


#11080　
バラージ 2021/03/26 23:12
なんでも映画に引き寄せて考えてしまう

　地下鉄サリン事件のあった日に自分が何をしていたか、残念ながら僕は全く思い出せません。どんな感じでそのニュースを知ったのかも覚えてないんですよね。どちらかといえば前年の松本サリン事件のほうがなんとなく記憶にあるんですが、ま、たぶん普通に家にいたんじゃないかと。
　阪神・淡路大震災の時もたぶん家にいたんじゃないかとは思いますが、東北北部までは遠くて揺れがほとんど来なかったこともあり、やはりその瞬間は今一つ記憶に残っていません。サリン事件にしろ大震災にしろ、覚えているのはその瞬間よりも、むしろその後しばらく──だいたい１年くらいの間の事件の流れのほうですね。しかし阪神・淡路大震災の時はまさかその16年後に東北でそれ以上のことが起こるとはもちろん思いもしませんでした。

　以前も別の年の話題の時にやったんですが、僕は映画が趣味ということもあって、その年に公開された映画を振り返ると、そっちのほうがその年の時代の空気とかそういうものを思い出します。
　1995年に日本で公開された洋画の興業収入上位は『ダイ・ハード３』『スピード』『フォレスト・ガンプ　一期一会』『マディソン郡の橋』といったあたりですが、このラインナップでは個人的には今一つピンときません。興収を無視して有名作を見繕うと『ナチュラル・ボーン・キラーズ』『レオン』『ショーシャンクの空に』『ポカホンタス』『ブレイブハート』『クイック＆デッド』といった感じで、こっちのほうがまだ時代的かな。個人的には永瀬正敏が主演したアイスランド映画『コールド・フィーバー』なんかも懐かしい。
　個人的趣味で中華圏映画に限ると、ウォン・カーウァイの『恋する惑星』、エドワード・ヤンの『エドワード・ヤンの恋愛時代』、アン・リーの『恋人たちの食卓』、ツァイ・ミンリャンの『愛情萬歳』が日本公開と、新感覚派が一気に台頭した時代だったんですね。ジャッキー・チェンはハリウッドへの足掛かりをつかんだ『レッド・ブロンクス』が日本公開。『金玉満堂　決戦！炎の料理人』『0061　北京より愛を込めて！？』『君さえいれば　金枝玉葉』と連続で日本公開されたショートカット女優アニタ・ユンがスターダムに躍り出、富田靖子がレオン・カーフェイと共演した『南京の基督』もこの年でした。いやぁ懐かしい。
　邦画に目を転じれば、興業収入１位はジブリの『耳をすませば』。戦後50年で『ひめゆりの塔』『きけ、わだつみの声』『君を忘れない』『WINDS OF GOD』と戦争映画が数多く作られ、『学校の怪談』『トイレの花子さん』と子供向けホラー映画も競作。『ガメラ　大怪獣空中決戦』で平成ガメラシリーズが幕を開け、『Love Letter』『打ち上げ花火、下から見るか？横から見るか？』で岩井俊二が鮮烈に映画デビュー。『ゲレンデがとけるほど恋したい』でホイチョイムービーが幕を閉じる一方で、『白鳥麗子でごさいます！』『花より男子』でぼくたちの映画シリーズが始まり、安達祐実の『家なき子』も映画化。『すももももも』『渚のシンドバッド』に出てた浜崎あゆみはまだ歌手デビュー前で、内田春菊の『ファザーファッカー』が映画化されたのもこの年です。個人的には市川準の『東京兄妹』、大林宣彦の『あした』、ポッキー四姉妹CMから派生した『四姉妹物語』、ゴクミ最後の映画と一旦なった『キャンプで逢いましょう』なんかも懐かしい。そして年末には渥美清の遺作『男はつらいよ　寅次郎紅の花』が公開される。そんな年でした。ちなみに『紅の花』ではその年に起こった阪神・淡路大震災の被災地で寅さんがボランティアをしているシーンがあったそうで。
　他のカルチャーを見れば、音楽ではオリコントップ３が、ドリカム「LOVE LOVE LOVE」、H Jungle With t「WOW WAR TONIGHT」、福山雅治「HELLO」。安室奈美恵も大人気となってアムラーが登場し、コギャルブームも起こって、プリクラが発売。文学では村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル　第３部』が刊行。スポーツでは大リーグに渡った野茂英雄が新人王を獲得し、パ・リーグでまだイチローがいた被災地のオリックス・ブルーウェーブが「がんばろうKOBE」のスローガンのもとにリーグ優勝しています。

　『男はつらいよ』といえば、一昨年末に公開された『男はつらいよ　お帰り寅さん』を先日BS民放で放送してました。なんとなくチャンネルを回したらやってたんですが、映画館で１回観たにも関わらず懐かしさと作劇の上手さと渥美清の名人芸についついまた引き込まれて観ちゃいましたね。回想シーンとして流れる過去のシリーズの場面を観てて思ったんですが、このシリーズも今となってはある種の日本風俗史、そして日本女優史になってるよなあ。
　また、先日終了したドラマ『監察医　朝顔』の原作マンガも阪神・淡路大震災が背景にある物語で、ドラマではそれを東北・東日本大震災に置き換えているとのこと。原作マンガは全然知らなかったんですが、調べるとドラマは設定も作風も大幅に変えており、半分くらいはオリジナルと言っていいようで、それが成功しているようです。原作は画風も設定もいかにもオヤジ漫画という感じで、月９というよりＶシネにでもなりそうな雰囲気。原作のままだったら僕はたぶん観なかったでしょう。ドラマは俳優陣全員が適材適所で素晴らしく、非常に質の高いドラマでした。主演の上野樹里さんは兵庫県出身で阪神大震災を経験しており、また東日本大震災の時には大河ドラマ『江』の撮影中だったとのこと。その『江』で父の浅井長政役だったのが『朝顔』でも父親役の時任三郎さんだったそうで、僕は『江』のほうをほとんど観てなかったんで全然意識してなかったですね。上野さんはその時以来、被災地のために何ができるかを考えていたそうで、こうやって歴史が紡がれていくのでしょう。いいドラマでした。


＞来年の大河
　『鎌倉殿の十三人』の時代考証担当の１人だった呉座勇一氏が降板だそうで。なんでも呉座氏がツイッターで、フェミニスト批評が専門の女性研究者（女性文学者とする記事もあり）の北村紗衣氏を誹謗中傷し、それが女性蔑視・ミソジニーだとの批判がSNSで沸騰。呉座氏がその批判を受けて全面的に謝罪し、NHKに降板を申し出たんだとか。呉座氏の誹謗中傷は長期にわたって繰り返し行われる、かなり粘着質なものだったとのこと。そもそもその呉座氏のツイッターもいわゆる鍵垢と呼ばれるものだったらしく、言論人として甚だカッコ悪いとしか言いようがない。細かい経緯はわかりませんが、なんでまたそんなことになっちゃったのか。記事には出ていませんが、その鍵垢での呉座氏の発言はかなりネトウヨ的との噂もあり、なんだかなあ。後出しになっちゃいますが僕は呉座氏については、どこか危なっかしいところがある人だなとなんとなく感じてたんですよね。具体的な根拠があったわけではなく、あくまでも直感だったんですけど。なので実はそこまで意外というわけでもなかったりします。またも大河に災難が……。ま、俳優や脚本家に問題が発生するよりははるかにマシか。
　それにしてもいつの間にか『鎌倉殿の十三人』の時代考証が決まってたんですね。あとの２人は坂井孝一氏と木下竜馬氏とのことで、木下氏はよく知らないんですが、坂井氏は『曽我物語の史実と虚構』『源実朝 「東国の王権」を夢見た将軍』『承久の乱　真の「武者の世」を告げる大乱』などの著書を読んでます。まあ、時代考証はあくまでサポート役。脚本家や製作側を上回る権限があったりしちゃいけませんよね。


#11079　
徹夜城（まだエヴァを見に行けてなくてちょっと焦ってる管理人） 2021/03/22 22:52
１９９５年という年

　つい先ほど、NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」の庵野秀明監督4年密着番組を見たんですが、思えば「新世紀エヴァンゲリオン」のテレビシリーズ放送開始が１９９５年の10月だったんですね。作中の年代よりあとになって完結することになろうとは…

　ひでさんが地下鉄サリン事件のことをお書きでしたが、これも１９９５年ですね。日付は時々忘れてるんですが、ちょうどその日、僕は箱根で合宿中でして、朝起きたらテレビで何やら大騒ぎしていて、ホテルの売店のおばさんも「オウム？」といきなり口にしたことをよく覚えています。その日、東京を通過して帰宅したんですが、小田急の電車内をチェックする駅員さんたちの目が本気で血走っていた記憶もありますね。
　僕も最近いくつかハシゴしてみてたんですが、当時のテレビの報道番組がオウム一色で２，３か月続いてましたよね。関連報道特番ばっかりやってたような。
　首謀者たちが死刑になった際に史点でもとりあげましたが、確実にこの事件も時代を象徴する歴史的事件となっていきますね。　

　そしてこの１９９５年は1月に阪神淡路大震災。これもまた現代日本における大事件の一つであります。
　調べてみたら「ドラゴンボール」の雑誌連載もこの年に終わってるんですね。


#11078　
ひで 2021/03/21 14:23
あれから26年か、、、

既に昨日になっていますが、26年前の3月20日、家でぐだぐだして寝坊していなかったら色々と大変なことに巻き込まれていたのかもしれないなと、、、。ニュース映像を見て、何が起きてるんだか一寸理解が追いつかなかったです。

あの日からしばらくの異様な数ヶ月間、なんかテンションが変だったような気がしています。色々な情報が垂れ流され、面白がって弄っていたら大変なことになっていたというかなんというか。我が身を振り返り反省しつつ、今後に活かしていきたいところです。

https://historia334.web.fc2.com/index.html
#11077　
バラージ 2021/03/20 22:52
歴史は女で作られる

　いやあ、またまた揺れました。イヤな感じだなあ。それにしても震災から10年が経ちましたが、なんだかそんな気がしません。あの日のことは今でもよく覚えています。

　今月25日からBS11で中国ドラマ『三国志　SECRET of THREE KINGDOMS』の放送が始まります。僕はBS12で放送した時に観ちゃいましたが、最近流行りのブロマンス（男同士の親友以上同性愛未満の関係、もしくは精神的同性愛関係）風味が男としてはちょっと受け付けにくいものの、ドラマ自体はまあまあの出来でした。ヒロインの伏寿（伏皇后）役のレジーナ・ワンの美しさと演技力は一見の価値あり。

＞YouTubeで観た映画
『柳如是』
　日本未公開の2012年の中国映画。YouTubeに全編アップされているものを観ました。違法アップロードではなく公式にアップされたものだと思われます。もちろん日本語字幕はありません（中国語字幕と英語字幕は付いてた）。なぜ字幕も付いてない映画をわざわざ観たかというと、上でも触れた今１番のお気に入り女優レジーナ・ワンの主演映画だから。彼女の出演作は、映画『戦神　ゴッド・オブ・ウォー』『軍中楽園』、ドラマ『麗王別姫』『三国志　SECRET of THREE KINGDOMS』『海上牧雲記』と観れるものは全部観てしまい、目下のところレジーナ不足に陥っているのです。去年公開された出演映画『鵞鳥湖の夜』はいつまで待っても地元に来ないし。『柳如是』は2012年の映画だからどうせ今さら日本じゃDVD化も配信もされないだろうし、字幕なしでもいいやと観てしまいました。実在の人物が主人公の史劇映画なんで、ある程度の大まかなストーリーはなんとなくわかるだろうし。
　柳如是は明末清初の妓女にして女流詩人で、父親ほど歳の違う明末を代表する文人・銭謙益の後妻になった人とのこと。映画は明末清初の動乱を背景に、そんな年の差夫婦の半生と、仕える明王朝の滅亡に直面した人々の選択を描いています。柳如是と最初に恋に落ちる文人の陳子龍や、銭謙益の教え子の鄭成功など明に殉じる人々も登場しますが、あまり予算がなかったようで合戦シーンなどは一切なし。台詞がほとんどわかんないので、50％ぐらいしか理解できてないと思いますが、堅実でオーソドックスな作りの史劇伝記映画という感じです。決してつまらなくはないものの、なんとも素朴というか真面目なつくりの映画で、物語的な盛り上がりや映画芸術的な洗練さには欠ける地味な映画でした。
　銭謙益を演じているのはベテランのチン・ハンで、若い妻にメロメロのおじいちゃんがちょっと微笑ましい。しかしやはりなんといっても、この映画の魅力は主演のレジーナ・ワンに負うところが圧倒的に大きく、セクシーなシーンもあったりしてちょっとうれしい。演技もこの頃から上手いし、やっぱりいい女優です。

＞大河とかその他
　最初はあまり興味がなく、面白さも今一つに感じた『青天を衝け』ですが、先週の第５話はなかなか面白かった。インチキ祈祷師たちをやり込めるところなんかはなかなかに痛快でしたし、お百姓さんが主人公の話ってのがちょっと新鮮。これはちょっと面白くなってきたかも。少なくとも『麒麟がくる』よりはずっとましな出来かと。
　ろんたさんの『鬼滅の刃』の話題は、僕は全然知りませんでした。いくらネットの狭い範囲で話題が沸騰しても、特に興味を持たない人にはニュースなんて入ってこないもんなんだなと。


#11076　
徹夜城（10年前の記録映像をハシゴしている管理人） 2021/03/11 22:32
ちょうど十年が経ちました。

　東日本大震災発生から今日でちょうど十年。早かったと言えば早かった気もするけど、いろいろあったことを思えばずいぶん時間が経ったという気もして…
　あの揺れの時間は、一瞬一瞬を細かく覚えてますね。と書きつつ、この伝言板の当時の自分の書き込み（８８７３あたり）を読み返してみると、ほう、こんなこと書いていたか、とこちらは記憶になかったりします。当時の「史点」も含めて、これもまた歴史資料になっているなあ、と思います。

　仕事で接する生徒たちももう震災の記憶がない世代になってきました。十年というのはそれだけの時間なのですよね。


#11075　
ろんた 2021/03/06 20:12
あんまり詳しくないけど廓話

　なんと年末以来。ちょっと忙しかったんですが、なんか看過できない騒ぎが起こったんで書いちゃいます。

　某国民的人気マンガのアニメ化第二期、舞台が遊郭だってんで、頭の中に思い込みと教条主義を詰め込んだ公序良俗派が突撃。たださすが国民的人気マンガ。ファンが四方八方から湧いて出て袋叩きにし、公序良俗派は「突撃したのは某国民的人気マンガにじゃなくて遊郭を美化する男どもにだ～～」とか泣き言を喚きながら逃走。ただ、どさくさに紛れて「遊女は餓死寸前だった」「遊女の平均寿命は19～20歳」などという嘘八百までまき散らすので質が悪い。

「遊女は餓死寸前」って、遊女を餓死させて女郎屋にメリットはあるのか？　年季いっぱいまで元気で働いてもらうのが一番いいんじゃないか？　借金で縛られていても同じだろう、という疑問がそもそも湧いてくる。何を食っていたかを表にしているけれど、確かに現代から見れば虐待レベル。しかし、史料は嘉永二年の遊女の日記。それから何十年も経っていても「三度三度米の飯が食べられる軍隊サイコー！」という状態だったし、戦後でもカツ丼がサイコーのご馳走だったり、某週刊誌の名物企画では、スケコマシが家出少女を引っ掛けるのに玉子丼を奢る、というエピソードがあったりするわけで、日本人の食生活は、特に高度成長期以前は(今日から見れば)ひどかった。ということで、そう悪くない待遇ではないか。

「遊女の平均寿命は19～20歳」というのは、もっと意味不明。誰がどうやって何を調べて「遊女の平均寿命」なるものを算出したのだろう？　「遊女の平均寿命」なんてのは、ガセに決まっているわけですね。
　わたしが知っているのは23(22.4)歳説で、22～23歳として数え年から満年齢に換算したのか、とちょっと思ったんだけど、しかし３年は引きすぎ。23歳というのは、西山松之助が浄閑寺(いわゆる投げ込み寺の一つ)の過去帳を調べ、死亡年齢の分かる遊女(と思われる者)64人の平均を出したもの。賢明な皆様はもうお分かりかと思いますが、これ平均寿命じゃありません。彼女らは病気、事故、事件(客の無理心中など)で不幸にも亡くなった現役の遊女なわけで、単に「遊女は若かった」ことを示しているに過ぎないのです。しかし、この数字をなぜか江戸東京博物館が遊女の平均寿命として紹介、それを鵜呑みにして著作に書いた某氏が大恥をかくという事件が起こりました(笑)。
　この過去帳に掲載されている遊女(と思われる者)は、1743年から125年間の累計で2000人だそうですけど、この間に遊女だった者は、その百倍はいたんじゃないかな。で、遊女の99％(？)は年季が明けて吉原を出て行ったわけで、彼女らの追跡調査なんかできるわけがない。墓や過去帳に「元遊女」なんてわざわざ書くわけ無いし。したがって、ただし、何代目かの高尾太夫の墓というのは現存するらしい。

　それにしても、遊女とかできるだけひどい目にあっていて欲しい、というのはどうゆう心理なんだろう。年季奉公や借金で縛られ売春を強要されている時点で、十分ひどい目にあっていると思うんだけど。

追記１
　なんだか遊女のことを奴隷だと思っている人が、結構いるみたい。江戸時代の遊女が年季奉公で働いているの、常識だと思ってたんだけど。落語にも出てくるし(パッと思いつくのは「紺屋高尾」ぐらいだけど)。借金で縛られるのは解放令後かな？(＜あんまり詳しくない)　性奴隷として批判されている従軍慰安婦と同じ脳内フォルダーに、雑に収納されているのか。そういえば「女房を質に入れても……」ってのから人身売買を連想している人もいた。質屋は生きた人間(死んでいても)は扱わないし、リサイクルショップじゃないよ(笑)。
追記２
「投げ込み寺」に遊女の死体が投げ込まれていた、と思っている人もいるみたい。常識で考えればありえない話で、境内に若い女の全裸死体が転がっていたら、江戸時代でも普通に事件でしょう(笑)。遊女かなぁ、と思っても、わたしが住職なら寺社奉行なり町奉行に届けますね。後でなんかあっても困るし。大体、過去帳に記載されているということは、女郎屋が連絡して運び込んでるんですよ。でなかったら俗名も享年も分からないでしょう。「投げ込み」ってのは、葬儀をやってもらえないことを自嘲的に言ったんじゃないか？(＜あんまり詳しくない)　安政大地震の際、運び込んだ遊女の死骸を境内に放り投げていたから、という説もあるらしい(それぐらい死者が多かったということ)。
追記３
　吉原とか島原とか丸山とか、旧遊郭を観光に使っているところがあるけど、その中には「ここでは売春はしてませんでした」と明らかに嘘ついてるところがあるとのこと。公序良俗派が「売春窟を観光にするなんて！」と突撃したんじゃないかと想像しちゃうんだけど……これが本当だったら「日本人は買春なんかしてない！」「従軍慰安婦なんかいなかったんだ！」「従軍慰安婦の客は中国人や朝鮮人！」とかいうトンチキが量産されそうで恐い。現在でも「遊郭は貧乏人のセーフティーネット」とか、アボダラ経を唱えてる人間いるし。
追記４
　そういえば「モモ子シリーズ」の二作目で初井言栄さんが、売防法施行後も吉原から離れられなかった老娼婦を演じていたなぁ、と脈絡無く思い出してしまいました。いや、最近youtubeで見たもんで。


#11074　
バラージ 2021/02/26 22:59
史点とか

　またも個人的興味が現代劇に向くターンに入り、最近は歴史ものを全くと言っていいほど観たり読んだりしていません。初回視聴率が上々の滑り出しとなった『青天を衝け』はかろうじて第２話も観ましたが、つまらなくはないんだけど続けて観たくなるってほどでもないかなあ。それにしてもほんとイケメンだらけのドラマですね（笑）。

＞史点
　トランプ支持者の議事堂乱入事件は衝撃的でした。まるでハリウッド映画の一部のような光景で、現実のものとは思えませんでしたね。中南米や東南アジアならともかく（と言っては失礼かもですが）アメリカ合衆国であんなことが起こるとは……。トランプさんはムッソリーニのローマ進軍でも再現するつもりだったんだろうか？　これは米国の民主主義にとって──というより米国そのものにとって、さらには世界にとっても、暗い影を落とす事件になりそうな気がします。米国がこの痛手から立ち直るのは、思ってるよりも時間がかかるのではないかという気がしますね。何度か書いてることですが、トランプさんが去ってもトランプ支持者、トランプ的なるものは確実に残るわけですし。
　愛知県知事のリコール運動の不正署名もねえ。高須院長も河村たかし名古屋市長も、不正が発覚した途端、これはリコール運動を潰そうとする何者かの陰謀だ！と言い出しちゃうあたり、語るに落ちたなと。百万歩譲ってそれが事実だとしても、有効署名が必要数の１割しか無いんだから、何もしなくても潰れてたのにその陰謀企んだやつもとんだ無駄なことしたもんだなと（笑）。それにしても河村さんもなんでずっと名古屋市長やってられるのか、名古屋市民じゃない身としてはちょっと不思議。

　ドラマ『大秦賦』が「始皇帝と習近平を重ねた暴君礼賛」という批判は、僕もちょっと穿ち過ぎのように感じました。主人公を美化するのは史劇ものではよくある、決して珍しくないことですもんね。始皇帝が出てくる中華圏映画は『テラコッタ・ウォリア』『異聞　始皇帝謀殺』『始皇帝暗殺』『HERO』と観ましたが、いずれも単純な暴君には描いていませんでしたし。
　煬帝については、『隋唐演義』より後に作られたドラマ『ムーラン』『独孤皇后』ではやはり悪役まわりのようです。といってもいずれも皇帝になる前の楊広の時代の話なので、暴君ではなく腹黒な陰謀家といったキャラクターのようですが。もう１つのドラマ『独孤伽羅』ではどういう描かれ方だったか不明。

　史点にない歴史関連の話題だと、マルコムＸの暗殺に警察とFBIが関与していた新証拠が浮上して、遺族が再捜査を求めているというニュースが出てましたね。

＞大河ドラマの本能寺の変
　『麒麟がくる』からの流れで、僕がリアルタイムで観た『おんな太閤記』以降の大河ドラマで本能寺の変がどう描かれたのか、ちょっと興味がわいたんで調べてみました。

『おんな太閤記』……全話観たはずですが覚えていません。信長が切腹してるシーンは覚えてるんですが、光秀役の俳優は全然知らない人だし、そもそも他のシーンも含めて光秀の記憶がない。Wikipediaにもくわしい記述がありません。あるいは光秀についてはあまり描かれなかったのかも。僕が忘れてるだけかもしれませんが。
『徳川家康』……定番の怨恨説＆不安説。確か毛利の領地は攻め取ったら光秀の領地にしてもいいが、元の領地は召し上げにすると伝えられたことを、信長は光秀に期待して発破をかけたのに、光秀は左遷・失脚させられたと解釈したという誤解説・行き違い説とでも言うべき展開でした。この誤解説は信長・光秀ともに悪者にしなくていいからか、その後の大河でも何度か形を変えては採用されてるようです。光秀役は寺田農。
『独眼竜政宗』……信長も光秀も登場せず本能寺のシーンもありませんでしたが、信長が本能寺で討たれた知らせが伊達家のもとにもたらされ、衝撃を受けた政宗が「俺は信長という男に会ってみたかった」と海岸で大滝秀治演じる虎哉宗乙に語るシーンがあった記憶。
『春日局』……初回がいきなり本能寺でしたが、観てないのでどういうものだったか不明。Wikipediaにもくわしい説明はありません。春日局の父・斎藤利三が光秀の重臣で、近年では光秀の謀反を主導したとの説もありますが、初回なのであまり背景にまで突っ込んでは描かれなかったかも。光秀役はなんと五木ひろし。
『信長』……ほぼ未見ですが、光秀役がマイケル富岡という配役にびっくりしましたね。Wikipediaによると、光秀は信長から過大な期待を寄せられ、それに応えようとする余り次第にノイローゼに陥り、それが原因となって本能寺の変を起こすという設定だそうで。そのため信長が光秀を冷遇する描写がなく、むしろ信長は光秀の過労を察して労りの言葉をかけているくらいだそうですが、主人公の信長を悪者にしないためなんでしょうねえ。
『秀吉』……これもほぼ未見ですが、光秀役が村上弘明とこれまた二枚目で、秀吉とはライバル関係にして友情を結ぶという準主人公クラスとして取り上げられてた記憶があります。Wikipediaによると基本的には定番の怨恨説ですが、家康と千利休が謀反をけしかける黒幕説も混ぜられてるとのこと。
『利家とまつ』……ちょこちょこ観てはいたんですが、本能寺の変のあたりは観てなくて、萩原健一演じる光秀もあまり印象になし。Wikipediaにもくわしい記述はありません。
『功名が辻』……ほんの少し観てた程度なんで、やはり本能寺は観ていません。Wikipediaによると、温和で道理を重んじる光秀が、正反対な信長の横暴さに焦りと苛立ちを募らせたという性格の違い説とでも言うべき設定で、これも他の作品でもよく採用されてますね。光秀と帰蝶（濃姫）がお互いに淡い恋心を抱いているという設定もあったそうです。光秀役は坂東三津五郎。
『天地人』……未見ですが、Wikipediaによると定番の怨恨説で、光秀役は鶴見辰吾。
『江』……未見。Wikipediaによると性格の違い説と誤解・行き違い説の組み合わせ。光秀役は市村正親。
『軍師官兵衛』……未見。Wikipediaによると怨恨説・不安説に加えて、天皇に代わって自らが国王になるという信長の思想を恐れた光秀が謀反を起こしたという設定のようです。信長が天皇や将軍を廃し国王になる野望を抱いていたという設定は、それ以前に『功名が辻』でも描かれてたようですね。光秀役は春風亭小朝。
『真田丸』……これまた初回が本能寺の変でしたが典型的な怨恨説で、光秀が信長に足蹴にされまくってるのを真田信繁が目撃しています。光秀役は作家で一時バラエティ番組にも出まくってたハコちゃんこと岩下尚史。
『おんな城主直虎』……#10716にも書きましたが、信長が家康を京に呼び寄せたのは家康を殺すためだと光秀が家康に伝え、そこで光秀が冷酷な信長を討つ決意を家康に語るという展開でした（ただし光秀の語った話が事実かは明らかにされない）。光秀役は光石研。


#11073　
バラージ 2021/02/17 13:03
文字化け

　『王女未央　－BIOU－』の原題の２文字目は「糸偏に肅」。北周の武帝の名前は、上に平仮名の「く」みたいのが３本、その下に「口」、一番下が「巴」で、「よう」と読む漢字です。


#11072　
バラージ 2021/02/17 12:54
中国歴史ドラマ紹介を終わらせちゃおうかな

　今週19日金曜日からBS11で中国ドラマ『如懿伝　～紫禁城に散る宿命の王妃～』の放送が始まります。演技派女優勢ぞろいで見ごたえのある面白いドラマですよ。


＞魏晋南北朝ドラマ
　中国歴史ドラマの紹介、最後はみんな大好き三国志を含む魏晋南北朝時代です。以前紹介した『三国志　SECRET of THREE KINGDOMS』（原題：三国機密之潛龍在淵、2018年）は省略しますが、今度はBS11で３月から放送されるとのこと。

『三国志　新武伝』（原題：関公、1993年）
　昔レンタル店で見かけた関羽が主人公のミニシリーズ。日本では2002年にVHS＆DVD化されたようなんですが、調べるとその10年も前のドラマでした。地方局製作の全14話のドラマのようですが、日本版VHS＆DVDは１時間半×３巻に編集したダイジェスト版です。

『曹操』（別邦題：『三国志　曹操』、原題：曹操、1999年）
　中古リサイクルショップで見つけて知ったドラマ。日本版DVDは2006年発売だったようで、これまたずいぶん昔のドラマを……。正史寄りのドラマで、新版と違ってちゃんと曹操が死ぬまでの生涯を描いてるようですが、低予算だったらしく、セットや合戦シーンがしょぼいとの声あり。

『三国志　呂布と貂蝉』（原題：呂布与貂蝉、2001年）
　これも中古リサイクルショップで見つけて知ったドラマ。日本版DVDは2007年発売とのことで、どうも古いなあ。チェン・カイコーがプロデューサー兼総監督となっていて、内容にどこまで関わったかは不明ですが貂蝉役は奥さんのチェン・ホンです。史実なんて吹っ飛ばせ系ファンタジーテイストのハチャメチャ史劇らしく、本国でも問題になったのか途中で放送中止になり、人物の名前を架空のものに変えて『蝶舞天涯』というタイトルで放送し直されたとか。ワイヤーとCG満載で、役者の芝居がそれ以前のドラマと違って京劇調ではないとのこと。

『関羽』（別邦題：『三国志　関公』、原題：関公 または 武聖関公、2004年）
　これは今回調べてるうちに初めて知ったドラマ。これまた関羽の生涯を描いていて、日本でもDVD化の他にBSテレ東で放送もされたようです。

『三国志　Three Kingdoms』（原題：三国、2010年）
　90年代の『三国志演義』以来久々の三国志通史ドラマで、日本でもヒットして新たなスタンダードとなった作品。BSフジでも放送してましたね。京劇調の野暮ったい作風から脱して、現代風に洗練されたのが勝因か。比較的『演義』に忠実だった90年代版に比べてオリジナル要素がかなり強いらしく、なぜか曹操の董卓暗殺計画というずいぶん中途半端なところから物語が始まるようです。初っぱなから主人公クラスの人が出てこないとまずいってことなんだろうか？　おかげでそれ以前の黄巾の乱も宦官と外戚の争いも描かれません。最後も諸葛亮の死でほぼ終わり、最終回で司馬懿の権力掌握と三国統一でおしまいですが、まあこちらは普通にありがちな終わり方かな。

『三国志　～趙雲伝～』（原題：武神趙子龍、2015年）
　趙雲を主人公としたドラマで、確かWOWOWでも放送されてたような。趙雲主人公でどうやって連ドラにするんだと思ったら、登場人物の大半が架空人物の「趙雲外伝」とでも言うべきドラマのようです。特に前半はほとんど架空話で、後半になってようやく『演義』の話になってくるみたい。アクションシーンも少なめで、恋愛要素に比重が置かれてるとの話も。ヒロインの架空女性を演じてるのはK-POPアイドルの少女時代のユナ。

『三国志　～司馬懿　軍師連盟～』（原題：大軍師司馬懿之軍師聯盟＆大軍師司馬懿之虎嘯龍吟、2017年）
　司馬懿を主人公としたドラマで、これもWOWOWで放送されてました。二部構成で、第１部は司馬懿が曹操に仕えるところから、曹丕の側近として曹植との後継者争いを勝ち抜かせるまで。第２部は曹丕の死後、諸葛亮との対決から、魏の覇権を握るまでの話。『演義』ではカットされてる司馬懿晩年の王凌によるクーデター未遂も描かれているらしく、諸葛亮死後もじっくり描かれるのは三国志ものでも珍しい。主演のウー・ショウボウはこのドラマでブレイクした遅咲きの俳優でイケオジ（イケてるオジサン）ブームを巻き起こしたそうですが、愛人との不倫騒動が泥沼化して当局に干され、あっという間に俳優生命の危機とのこと。やれやれ。

『侠影仙踪』（原題：侠影仙踪、2004年）
　歴史ドラマではなく武侠ドラマですが、五胡十六国時代の東晋という珍しい時代が舞台で、実在の人物も出てくるので紹介してしまおう。５代穆帝の時代が舞台で、伝説上の仙人・黄初平をモデルとした若き日の黄楚明という人物が主人公。穆帝に仕える曹操の子孫の架空人物が悪役で、書聖・王羲之も登場するようです。

『北魏馮太后』（原題：北魏馮太后、2006年）
　北魏４代文成帝の皇后で、５代献文帝・６代孝文帝時代には皇太后・太皇太后として垂簾政治を行った馮太后（文成文明皇后）を主人公としたドラマ。３代太武帝の時代から物語が始まるようで、ムーランも出てきます。ドラマとしての評判はいいようですが、史実的には馮太后の美化が甚だしいみたい。日本版DVDは人物の名前が中国語発音のカタカナ表記になっているためちょっとわかりにくいとのこと。主演はン・シンリン。

『王女未央－BIOU－』（原題：錦&#32353;未央、2016年）
　こちらも馮太后を「モデルとした」女性が主人公のラブ史劇。あくまで「モデルとした」ですから史実なんて吹っ飛ばせ系娯楽優先ドラマですが、それが功を奏したのもまた確かで、中国本国では2016年No.1の大ヒットとなり、日本でも好評を博したようです。そう考えると、史実がどうこうなんて結局は関係ねえんだよな。考えてみりゃ当たり前の話で、ドラマなんだから大事なのは何よりもまず「ドラマとしての面白さ」なんですよね。

『蘭陵王』（原題：蘭陵王、2013年）
　北斉の皇族で将軍としても活躍した蘭陵王こと高長恭を主人公とした中国・台湾合作によるキラキライケメンラブ史劇。ヒロインは架空の女性で、北周の武帝宇文&#37013;と三角関係になるようです。史実を大胆に改変したやはり吹っ飛ばせ系ドラマながら、合戦あり、陰謀あり、そして何より恋愛ありという物語で、本国でも日本でも大いにウケたヒット作品とのこと。主演はウィリアム・フォンとアリエル・リン。衣装を蜷川実花が担当しているそうです。

『蘭陵王妃　～王と皇帝に愛された女～』（原題：蘭陵王妃、2016年）
　こちらも『蘭陵王』と同じく架空のヒロインと宇文&#37013;と蘭陵王の三角関係ラブ史劇ですが、原作があるらしく、上記の『蘭陵王』とは無関係。架空ヒロインも全く別の女性です。主人公はその架空ヒロインで、男２人もどちらかというと宇文&#37013;のほうがメインのようですが、本国でも日本でも『蘭陵王』ほどにはウケなかったみたい。


#11071　
バラージ 2021/02/14 23:26
文字化け

　鄧綏の兄の名前は鄧しつ。「しつ」は上がこざと偏に歩、下が馬です。


#11070　
バラージ 2021/02/14 23:11
変なところでバトンタッチ

　いやぁ、揺れた。ちょうど10年ぶりということもあって焦りました。まあ、幸いにもあの時ほどではなかったけど。

　２月頭に連続ドラマが終わり翌週からいきなり次の連続ドラマが始まるって、なんか変な感じですね。大河に限らず普通の民放連ドラでもクールの切れ目じゃないところだし、連ドラが終わったら次の連ドラまで多少のインターバルが置かれるのが普通なのに余韻もクソもないな、と。新ドラマも区切りの悪い時期から始まっちゃうし。

　『麒麟がくる』は最初の１ヶ月で脱落し、本木道三死後はほぼ観ていませんでした。最終回もやはり観ませんでしたが、公式サイトであらすじだけはチェックしたんですよね。本能寺の変はどうなるのかなと思いまして。ま、予想通りと言うべきか、諸説取り入れながらも天下万民のため──要するに世のため人のためという描写になったのかな。実は光秀を主人公に設定しちゃうと、反逆の原因をそのパターンにするしかなくなっちゃうんですよね。怨恨説や不安説じゃ主人公の光秀がカッコ悪いし、黒幕説もやはり光秀が操り人形みたいでカッコ悪い。野望説は私利私欲のために謀反したみたいで具合が悪いし、長宗我部関係説はドラマ的に地味でクライマックスとしての盛り上がりに欠ける。というわけで結局は世のため人のためということになっちゃうんでしょう。まあ、世のため人のためというのはこの手の史劇ではよくあるパターンで、戦国大名にしても主人公になると「戦乱の世を終わらせるために天下統一を目指す」ということになってしまいます。
　それにしてもCG。第１話で感じた風景の鮮やかすぎる緑の不自然さはもうちょっとなんとかならなかったもんか。あのCGの拙さは今年以降に不安を残します。もっとも『いだてん』のCGにはそういう不自然さは感じなかったんで作品ごとの問題なのかもしれませんが、『青天を衝け』でもちょっと不自然さを感じちゃったんだよな。逆に良かったのは、チラッと観ただけだけど足利義昭の描かれ方が珍しかったかな。いつもダメな陰謀家みたいな描かれ方なんで、再評価の流れが反映された感じですかね。なお、合戦シーンが少なくなった理由については、コロナでエキストラを大量動員することができなくなったためではないか？と推測する記事がありました。今年も来年も合戦シーンはあまり必要ない題材ですが、再来年までにはなんとかなってるでしょうか？

　そして個人的にはあまり興味がわかない『青天を衝け』ですが、ガイド本をチラ見した限りでは前半はガッツリ幕末のようですね。登場人物はこれまでの大河で言うと『徳川慶喜』＋『篤姫』という感じ。渋沢栄一は過去の大河だと『獅子の時代』で角野卓造が、また朝ドラの『あさが来た』では三宅裕司が演じてたとのことで、吉沢亮とはいきなりすげえイケメンになっちゃったな（笑）。その『あさが来た』で五代友厚を演じて大ブレイクし、退場とともに“五代ロス”を巻き起こしたディーン・フジオカが再び五代役を演じるとのことで。でも『あさが来た』であれほど人気になったのは、主人公の女性あさを見守るイケメンというポジションも大きかったと思うんですよね。今回はまた違う立ち位置なわけで、あまり人気にはつながらないかも。
　第１話を観た感想としては、クソ生意気なガキだなと（笑）。僕はああいう子供はちょっと……。まあ来週からは吉沢亮に変わるんで、もう１話くらい観てみようかな。興味深かったのはむしろ徳川慶喜のほうですが、このドラマよりも昔の『徳川慶喜』を観たくなっちゃいましたね。放送当時はほとんど観てなかったんで、再放送してくれんだろうか。そういや『徳川慶喜』には逆に渋沢栄一は出てこなかったんだな。それから玉木宏演じるこれまたえらいイケメンの高島秋帆。この人も映像作品に出てくるのは珍しい。でも、あんなワイルドなイケメン、なんかイメージと違うというか、投獄されたんだからもっと失意の淵にいたんではなかろうか？　それから12代将軍家慶役が吉幾三ということで、吉さん、津軽弁が出ちゃわないだろうかとハラハラしました（笑）。


＞前後漢ドラマ
　中国歴史ドラマの紹介、漢王朝編です。間に新を挟んで前漢・後漢と長く続いた有名王朝ながら、人気の項羽劉邦と三国志に挟まれた映像作品的には不遇の時代……と思いきや、結構テレビドラマがありました。

『劉邦の大風歌　－漢建国記－』（原題：大風歌、2009年）
　邦題はもちろん、原題も劉邦が主人公っぽいんですが、実際には劉邦が項羽を倒した後の話で、劉邦は１／３くらいで退場しちゃうようです。以後、呂后専制期を経て、５代文帝治世期まで描かれるとのこと。文帝は序盤から登場するため、実質的には彼が主人公に近いらしい。劉邦役が映画『項羽と劉邦　その愛と興亡』では項羽役を演じていたレイ・ロイなんですが、晩年の劉邦にしては若すぎるのも劉邦主人公と誤解させる原因になってるよなあ。

『美人心計　～一人の妃と二人の皇帝～』（原題：美人心計、2010年）
　文帝の竇皇后を主人公とした、史実なんて吹っ飛ばせ系ハチャメチャ史劇。プロデューサー＆脚本はこれまた于正。「二人の皇帝」は文帝と２代恵帝で、お馴染みの三角関係ラブ史劇です。まあ史劇というより娯楽時代劇として観るべきでしょうね。主演は台湾のルビー・リン。物語は劉邦の後継者争いに巻き込まれた主人公の幼い杜雲汐（後に竇猗房と改名する。史実の竇皇后）が劉恒の乳母だった母共々宮中を追われるところから、竇猗房の息子の６代景帝が死んでその子の７代武帝が即位するあたりまで。ちなみに景帝の時代に起こった呉楚七国の乱は描かれてないようです。

『漢武大帝』（原題：漢武大帝、2004年）
　７代武帝の生涯を描いたドラマ。６代景帝時代の呉楚七国の乱以前から、武帝の死までを描いているとのこと。今となっては一昔前のドラマですな。

『賢后　衛子夫』（原題：衛子夫、2014年）
　武帝の２番目の皇后となった衛子夫を主人公としたラブ史劇。衛子夫が主人公だと最後は悲惨な展開になるのにどうすんだろ？と思ったら、描かれるのはその手前までで、一応のハッピーエンドで終わっているようです。

『風中の縁』（原題：風中奇縁、2012年）
　架空王朝の架空人物たちによる三角関係ラブ史劇なんですが、実は原作小説では前漢の武帝の時代の話で、その３人のうちの１人が霍去病なんだそうです（主人公女性ともう１人の男は原作でも架空人物）。ところがあまりに史実無視ということで、これまた当局より修正命令が出され、全て架空に変えられて台詞も録り直したとのこと。主演女優はリウ・シーシー。

『雲中歌　～愛を奏でる～』（原題：大漢情縁之雲中歌、2013年）
　原作小説が『風中の縁』の原作の続編で、８代昭帝、９代廃帝（昌邑王）、10代宣帝という珍しい時代が舞台の四角関係ラブ史劇。主人公の架空女性・雲歌は昭帝・宣帝ともう１人の架空男性から愛されちゃうというモテモテっぷり。これまた于正がプロデューサー。主演はアンジェラベイビー。

『王妃　王昭君』（原題：王昭君、2007年）
　匈奴に嫁いだ有名な王昭君を主人公としたドラマ。主演はまだ若手の頃のヤン・ミー。序盤は11代元帝の後宮でのなんやかんやで、皇后の王政君も登場。しかし匈奴に嫁いでからの話のほうがむしろかなり長い。レンタル店でDVDを見かけた時はパッケージデザインがちょっと安っぽいなと思った記憶で、写真を見る限りでは絵面が古くさい感じがしました。それと個人的な趣味かもしれませんが、ヤン・ミーの顔立ちって絶世の美女ってタイプじゃないんだよな。

『皇后的男人（こうごうのおとこ）　～紀元を超えた恋～』（原題：相愛穿梭千年、2015年）
　韓国ドラマ『イニョン王妃の男』を前漢末期に置き換えてリメイク。主人公の架空人物の士大夫・公明が昔から現代にタイムスリップしてくる話で、過去の舞台は12代成帝の時代。廃された許皇后を守ろうとする主人公が、成帝に寵愛される側室・趙飛燕派の王莽と戦うが、謎の玉佩の力でタイムスリップしてしまうというストーリー。現代と昔が半々くらいの物語のようで、主人公と恋に落ちるヒロインは現代の女性です。

『秀麗伝　～美しき賢后と帝の紡ぐ愛～』（原題：秀麗江山之長歌行、2013年）
　後漢を建国した光武帝劉秀の２番目の皇后となった陰麗華を主人公としたドラマ。陰麗華役のルビー・リンが自ら立ち上げた製作会社で製作したため主演名義となってますが、実質的には劉秀とのダブル主人公で新末の動乱から天下統一までが描かれ、予告編を観ると大規模な合戦シーンもあるようです。原作小説があるそうですが、劉秀の最初の皇后とその一族の名前が史実と全く違ってるのは、原作からしてそうなのかドラマオリジナルなのか。描写は史実とそれほど違ってないようなんですが。

『ハンシュク　～皇帝の女傅』（原題：班淑伝奇、2014年）
　後漢を舞台とした珍しいドラマ。６代安帝の時代が舞台で、主人公の架空人物・班淑は、班超と異民族の女性の間に生まれ西域で育った女性という設定。幼くして別れた父に会いに都に来るも父はすでに死んでおり、なんやかんやで宮中にある皇族・貴族の子供たちの教師になるというストーリー。ラブロマンス要素もあるものの、熱血女教師物語といった小学校ドラマに近いノリのようで、生徒の子供皇帝安帝はえらい悪ガキ（笑）。他の実在の人物は皇太后の鄧綏とその兄の外戚・鄧&#39469;が登場し、主人公の味方になります。プロデューサーはまたも于正。主演はジン・ティエン。

＞名画座訂正情報
『孫子』……DVDはエースデュースエンタテインメントから発売されています。
『三国志　諸葛孔明』……「メディア」欄にDVDは２巻構成とありますが、DVDもVHS同様に全３巻です。またDVDはエースデュースエンタテインメントから発売されています。
『末代皇帝』……DVDはコニービデオから発売されています。


#11069　
徹夜城（また一つ大河ドラマを見終えた管理人） 2021/02/09 22:55
「麒麟」が終わって

　もう二日たってますが、僕も一応「麒麟がくる」のまとめなぞ。

　明智光秀が主人公のドラマって、あるようでなかったんですよね。大昔に先々代松本幸四郎主演の映画「敵は本能寺にあり」なんてのがあった、というのはつい最近知りましたが、民放製作のスペシャルドラマで唐沢寿明主演のがあったな、というくらいしか思いつかない。
　明智光秀は出番はそれこそ山のようにあったわけですが、信長人気がまずあって、その野望を止めた男ということで悪役回り、あるいは無計画に暴発しちゃった人、という扱いが多かった。過去に演じた俳優さんは癖のある脇役な人が多いですね。
　そんなわけで一年かけて光秀やるとどうなるんだろ、という期待と不安があったわけです。見終えた印象としては…いいところ、わるいところ、双方同等にあるような、というところでしょうか。

　全く不明の光秀前半生部分はかえって自由にやれてよかったそしてその事跡が明らかになってくる中盤では、これまで意外と描かれてこなかった室町幕府の末期事情が光秀の目線で描かれたのは新鮮でした。
　そして本能寺の変へと向かっていく終盤ですが…うーん、諸説盛り込みました、ってところなんでしょうけどねぇ。絞り切れてないだけでドラマとしては今一つ見ごたえが…信長が狂気じみてきて、というのはこれまでにもあった描写ですが、結局はそれが一番動機として印象付けられる形になってました。染谷さんの信長キャスティングは終盤かなり効いていたな、とは思いましたけどね。
　本能寺に向かっては回数消費もゆっくりすぎる、というかいろいろやっちゃうな、本能寺ちゃんとやるのか、と心配したほどでしたが、最終回は本能寺で実質終わらせそのあとは描かない、という形になったのは、まぁそれもありか、と。生存説まではどうかと思いましたが。

　あとは架空キャラの存在が最後まであまり生かせてなかったような。同じ池端作品の「太平記」ではそこそこだったんですけど柳葉敏郎の「石」みたいに途中退場しちゃったこともありましたし、花夜叉も今回の伊呂波大夫に似てて、やはり消化不良の感はありました。「麒麟」では架空キャラだけでなく実在キャラでもなんで出てきたのかわかんない人もいましたしねぇ。なんか構想があったのかもしれませんが。

　ま、さすがにクライマックスの本能寺は迫力がありましたし、信長の描写もこれまでと同じようでまた違った工夫があり、面白く見られました。一方でそこに至る動機面が光秀を主役にしながらもなかなか難しいのだなぁ、と改めて思ったりもして。


#11068　
カプラン 2021/02/07 22:03
『麒麟がくる』を終えて:あるいは、『太平記』の後始末?

こんばんは:HN・カプランでございます。今年、初登場です。<(_ _)>

さて、大河ドラマ『麒麟がくる』が本日最終回となりました。
本日の最終回――、というか、そもそも最終回へ軟着陸できるかどうか多少なりとも不安を感じていたのですが、それなりのところに着地し得たと思います。(某掲示板では、4K先行放送を見た方々が騒いでいたので、内心「大丈夫なのかな?」と感じていましたが、(私としては、)杞憂に終わったようです。)

　以下では、良かった点/難点を3つずつ挙げておきたいと思います。まずは、良かった点として
1)全体としては、質の維持ができていたこと:とりあえず致命的な欠陥は見当たらなかった
ことは指摘しておきたいと思います。それともかかわって…、
2)安定感があったこと:出来としてひどい間違い/勘違いがないということは、実は重要な
　ことだったりします。
　　そういえば、昨年『いだてん』がスタートした当初、この安定感について個人的に不
安を覚えたことを思い出しました――1年もつのかなあと…。というのも、近年の大河ド
ラマの中には、内容の迷走が見て取れるケースが多少なりともあったので。ただ、この
強み(というか、作劇として普通に要求されること)は、難点にも転化するのですが…。
3)撮影の中断/出演者がらみのトラブルが放送スケジュール等の破綻要因にならなかったこ
と:これは、次作以降の大河ドラマのリスク要因にも成り得ると思います。とはいえ、何
とか乗り切れたことは評価していいのではないのでしょうか。

　で、難点として…
1)光秀視点の大河ドラマとして、このエピソード選択はふさわしかったのか?:これはね
ぇ…、歴史的事件と不可分足らざる得ない時代劇として、この要件を満たしていたのか
疑問に思ってしまう…。例えば斎藤道三編は、ドラマを軌道に乗せるためカタパルトと
して、そして最終回への説得力を与えるための材料として機能していたのは分かるので
すが、全体の話数構成としてみても偏りを与える要因になってしまっていると思いまし
た。
2)エピソードの出来/不出来が目立つ:『太平記』を引き合いに出して恐縮ですが、『太平
記』はエピソード的に総じて粒ぞろいで、最終回へうまく収斂している(方だった)のに
対し、今作は正直見劣りがするんですよねえ…。
　　色々、要因を挙げることはできます――アイデア不足とかね(^_^;)。特に指摘したい
のは、麒麟というモチーフが作劇の中で意味があったのか――平和の象徴であるという
ことは見ればわかります。しかし、タイトルに採用している程なのに、さほど深い意味
を持たずにドラマの所々に顔を出す程度の扱いというのは、少々安易かなと感じまし
た。
3)スペクタクル要素が不足している:まず、時代劇の作劇/演出という面で指摘したいと思
います。かつてほど、予算/マンパワーが割けなくなっているという台所事情の厳しさも
あり、例えば、今の時代劇では合戦シーンを撮影する機会が相当減っていると思いま
す。そうなると、そういうノウハウを持っているスタッフが現場を去ったとき、技術継
承の問題がでてしまう。これは時代劇全体として、相変わらずの懸念事項として挙げざ
る得なくなる――杞憂に終わってほしいのですが…。
　　また、スペクタクル要素の不足は、ドラマが持つ熱量不足の原因にもなり得ます。か
つて『秀吉』が(世間的に)好評を博した理由として、もちろん話の辻褄が合っていない
等ありましたが、そういう危なっかしさを振り切るような熱量/パワフルさが埋めて余り
ある魅力を発揮し得ていたことに由来すると思うんです。稀有な例と比較するのは無理
があるのかもしれませんが、これは上記した「安定感」とは裏腹にあるもので、こうい
う危なっかしさは時に毒だが、時に良薬にもなる。大河ドラマが、今作のような安定感
を発揮できたことは肯定的に捉え得るものの、得てして「安住」へと転化してしまわな
いように肝に銘じる必要があると思います――やはりチャレンジは常に必要なのだ、
と。

…やっぱり、分量として難点の方が膨らんでしまった――自分的には絞り込んだつもりではいるのですが(^_^;)。
でも、今作について評価しているんですよ(笑)。
　特に、池端先生は(年齢、体力的にも)大変な骨折りを強いられていたと思います。よく1年間、頑張ってこられたと思います。
　それに、『太平記』で室町幕府草創期のドラマを描き、そして今作『麒麟がくる』では、その室町終焉エピソードの形でドラマを締めくくることができた――脚本家として役得だったのではないのかな?? (三谷センセも『新選組!』、『真田丸』でやってましたね ^_^ ) そういう視点でこのドラマを見返してみると面白いかもしれませんね。
　
　色々と語り残したこと、思いつかなかったこともあるかもしれませんが、私のドラマ評は以上で終えたいと思います。

ではでは…。


#11067　
バラージ 2021/01/30 11:37
懐かしの週刊少年ジャンプ

　僕は週刊少年ジャンプは90年代前半にはほぼ卒業してしまい、『こち亀』だけ細々と読み続けたのも90年代いっぱいくらいまでですから、もう20～30年近く離れてることになります。松井優征という漫画家さんも全く知らなかったんですが、調べると実写映画化もされた『暗殺教室』の作者なんですね。とはいえ映画もテレビCMや番宣で見かけた程度だし、原作にいたっては絵をチラッと見たぐらいでほとんど知りません。
　『逃げ上手の若君』はこちらで知って僕も立ち読みしてみたんですが、決してつまらなくはないけれど次週も続けて読みたくなるほどでもないなあ、というのがジャンプを20～30年読んでない中年の偽らざる感想です。とはいえ僕の感想などどうでもよく、今の小中高生がどう思うかでしょうね。今はどうだか知りませんが、僕が読んでた80年代当時の週刊少年ジャンプは人気アンケート至上主義で、人気がなければ容赦なく10週で打ち切り。人気マンガを生み出しジャンプに多大な貢献をした功労者でも、人気がなければやはり30週くらいで打ち切りにされてました。果たしてどうなりますかねえ。
　マンガの中の歴史的な部分だと、あれっ？　北条泰家は出てこないんだ、というのと、北条邦時がチラッとでも出てきたのは珍しいというくらいかな。


＞映画館で観た映画
『世宗（セジョン）大王　星を追う者たち』
　朝鮮王朝４代国王世宗と彼に仕えた奴婢出身の科学者チャン・ヨンシル（蒋英実）の身分を超えた友情を描いた史劇映画。監督は名作『八月のクリスマス』のホ・ジノで、世宗をハン・ソッキュ、チャン・ヨンシルをチェ・ミンシクという２人の名優が演じています。ハン・ソッキュは『八月のクリスマス』の主演でもあり、チェ・ミンシクとは『シュリ』で共演してましたが、あれからもう20年近く経ったのか。時はあまりに早く流れる。
　豪華キャストながら、前半はチャン・ヨンシルが水時計や天球儀を開発する、えらく地味な話で、作風もホ・ジノらしく物静かで淡々としてるので正直ちょっと盛り上がりに欠けます。最後までこの調子でいくんかなと思ったら、後半は王朝内での激しい権力闘争の話となって、そこはなかなか魅せてくれました。
　ただ世宗とチャン・ヨンシルの関係が友情の域を超えて、なんだか最近流行りのブロマンス（男同士の親友以上同性愛未満の関係、もしくは精神的同性愛関係）に見えちゃうのがちょっとどうもなあ。お前らおっさんの恋人同士かよ！とちょっと気色悪かったですね。女優もチャン・ヨンシルの弟子の子がちょろっと出てくるくらいだし、若い男優も世宗の息子（後の５代国王文宗）ぐらいしかいなくて、出てくるのがおじさんとおじいちゃんばっかりなんだよな。王妃とか奥さんもなぜだか全然出てこないし。
　あと、最初に「史実を基にしたフィクションです」みたいな字幕が出て、わざわざ断るなんて珍しいなと思って観終わった後に調べてみたら、チャン・ヨンシルの史実が少ないこともあってか確かにかなりの部分がフィクションでした。上記の王朝内権力闘争も全くのフィクション。ちょっと気になったのは宗主国の明が史実以上に悪者にされてるところで、これについてはパンフでも史実との違いが解説されてました。映画では明の使者が朝鮮独自の暦制定を中止するよう圧力をかける悪役まわりとして登場するんですが、どうもそういう史実はないようで、明は事実上黙認してたとのこと。逆にチャン・ヨンシルが世宗の命令で明に留学した史実には触れられていません。
　まあ、それでも全体的にはハン・ソッキュとチェ・ミンシクの重厚な激シブ演技のおかげで、まあまあ面白く観れました。ハン・ソッキュはこれ以前にドラマ『根の深い木　世宗大王の誓い』でも世宗を演じているとのこと。

＞秦楚漢ドラマ
　中国歴史ドラマの紹介、今回は三国志に次ぐ人気の始皇帝と項羽と劉邦の時代です。

『始皇帝烈伝　ファーストエンペラー』（原題：秦始皇、2001年）
　始皇帝の生涯を描いたドラマ。主演はチャン・フォンイーで、脇役で若手の頃のファン・ビンビンやチャン・チンチューも出ています。香港では2001年に放送されたけど、製作した中国本土ではなぜか2007年になってからようやく放送されたらしい。

『始皇帝暗殺　荊軻』（原題：荊軻伝奇、2004年）
　秦王政（後の始皇帝）を暗殺しようとした荊軻の半生を大幅にフィクションを交えて描いたドラマ。主演はリウ・イエで、高漸離役がピーター・ホー。紀元前260年の長平の戦いから物語が始まるとのこと。

『始皇帝　－勇壮なる闘い－』（原題：大秦直道、2009年）
　邦題とは違って始皇帝が主人公ではなく、原題通り「秦直道」建設をめぐる群像劇。天下統一後の北方での匈奴との最前線が主舞台で、実質的に蒙恬が主人公に近いらしく、他にもその弟の蒙毅、扶蘇、冒頓単于など映像作品では珍しい面々がメインクラスで登場するとのこと。架空人物のヒロイン・魏霊児（霊公主）役でヤン・ミーが出演。中国本国では何か問題でもあったのか放送が途中で打ち切られ、DVD化などもされていないとのこと。

『麗姫と始皇帝　～月下の誓い～』（原題：秦時麗人明月心、2017年）
　秦が六国を併呑していく時代を舞台に、架空人物である衛の公孫麗という女性と、秦王贏政（後の始皇帝）、公孫麗の兄弟子の荊軻の三角関係を描いたドラマ。若い美男美女によるラブ史劇で、ついに始皇帝や荊軻も若いイケメンになってしまいました（笑）。始皇帝の后妃については史書に記録が残ってないそうで、作品ごとに作り放題ということになりますな。主人公の公孫麗役はディリラバ。

『尋秦記　タイムコップ　B.C.250』（原題：尋秦記、2001年）
　香港のタイムトラベルSFアクションドラマ。B.C.247年の始皇帝即位式を映像に収めるためにタイムトラベルした特殊警察官が誤って３年前に着いてしまう。後に始皇帝となるヤンジョン（贏政）はまだ趙で人質として軟禁されており、特殊警察官は彼を救い出すために奔走することになる……といったお話。主演はルイス・クー。中国各地でロケもされたとのこと。

『THE MYTH　神話』（原題：神話、2009年）
　同名のジャッキー映画を、設定を一新してリメイクした中国のテレビドラマ。映画を監督したスタンリー・トンが芸術総監督、ジャッキーが総合プロデュースという肩書きですが、実際にどこまで関わったかは不明。輪廻転生もので現代が主舞台だった映画に対して、古代が主舞台のタイムスリップものに変わり、ストーリーも大幅に異なっていて、リメイクと言ってもほとんど別物と言っていい作品になっています。タイムスリップした主人公が蒙毅になってしまうようで、実在の人物が蒙毅しか出てこなかった映画と違い、始皇帝や趙高、劉邦、呂雉、項羽、虞姫など有名人がぞろぞろ登場するみたい。主演はフー・ゴー。

『劉邦と項羽』（原題：漢劉邦、1997年）
　原題通り劉邦を主人公としたドラマで項羽は脇役。項羽を滅ぼした後も漢帝国内部の粛清や匈奴との戦いや後継者問題など、劉邦の死までが描かれます。20年以上前のドラマなので今となってはちょっと古っぽいかも。

『項羽と劉邦』（原題：楚漢驕雄、2004年）
　香港ドラマですがかなりの低予算のようで、合戦が報告だけで済まされたりしてるとのこと。ただ、それ以上に一昔前の香港映画みたいなノリのドラマらしく、チャウ・シンチーみたいなおバカコメディっぽいという感想がありました。

『項羽と劉邦　King's War』（原題：楚漢伝奇、2012年）
　今のところ最新版の項羽と劉邦ドラマ。邦題をサブタイトルなしの『項羽と劉邦』としている場合も多いです。『三国志』『水滸伝』に続けと巨額の予算をかけて作られたドラマで、劉邦役がチェン・ダオミン、項羽役がピーター・ホー。呂雉役のチン・ランは映画『項羽と劉邦　鴻門の会』でも呂雉役を演じてました。

『王の女たち　～もうひとつの項羽と劉邦～』（原題：王的女人、2012年）
　レンタル店で見かけて、「最近流行りの女性主人公版『項羽と劉邦』か？」とパッケージ裏のあらすじを読んでみたら、なぜか項羽も劉邦も全然出てこず、明らかに架空人物っぽい知らない名前の人ばかりが出てくる話で、なんじゃこりゃ？と思ってそのまま放置。ずっと後になって調べてみたら、元は呂雉を主人公とした項羽と劉邦ものだったんだけど、あまりにも史実無視の自由奔放ハチャメチャドラマだったため当局より修正命令が出され、吹替で名前を全員変えて架空の話にしてしまったらしい。どうも中国歴史ドラマにはたまにあることみたいで、中国歴史ドラマは普通話をネイティブに話せない役者は吹替になるため、そういうことが可能なんだとか。ちなみにこのドラマのプロデューサーもお騒がせの于正だったりします。


#11066　
もざわ 2021/01/25 22:57
逃げ上手の若君

読みました。娘に借りて&#128513; 南朝を扱うセンシティブさてなものが薄れてきたということなのでしょうか？いずれにせよ地味な題材でありますが、だからこそ好きにキャラ造形できるのかもしれませんね。
漫画日本の歴史以外で諏訪頼重の顔を拝むとは（笑）そして、中先代の乱にやたら詳しい小中学生が増えるかもしれませんね。


#11065　
徹夜城（南北朝マニアの血が騒ぐ管理人） 2021/01/25 22:42
えらいこっちゃ

　気づくのが遅れた…というべきでしょうか。昨日の時点でツイッターでチラッと触れてる人はいたんですけどね。本日午後になって情報が一気に出てきて驚きました。
　なんとまぁ、あの週刊少年ジャンプで南北朝時代漫画の連載が始まっちゃったんのです！松井優征さんの「逃げ上手の若君」という作品で、なんと主人公が北条時行！
　南北朝題材って時点で驚きなんですが、北条時行とはこりゃまたマニアックな。いや、目の付け所はすっごくいいと僕も思いました。あとはそれがどこまで持続させてもらえるか、という点で…
　なにせ近年、南北朝に挑んだ漫画といえば「私本太平記」「ナギ戦記」「バンデット」とありましたがいずれも実質打ち切りの中途半端で終わってしまっています。連続討ち死に記録が伸ばされるのは勘弁してほしいと思うばかり。積極的に応援したいものです。


＞再来年大河
　バラージさんがすでに触れておられますが、再来年は「どうする家康」。またか、と一瞬思いますが家康主役は一応「葵・徳川三代」以来なので20年は経ってるんです。だけど登場だけはあの時代を描いたものでは皆勤状態、しかも近年「おんな城主直虎」での若いころの登場もありましたから、新鮮味には欠けるんですよね。
　今年の渋沢栄一、来年の「鎌倉殿」とやや変化球続きだったから、その辺だろうと予想はできたんですけど…嗚呼、南北朝大河のなんと遠いことよ。時行漫画ができるくらいで、題材なんてゴロゴロあるのに。


#11064　
バラージ 2021/01/20 22:55
文字化け

　ヤバそうだなと思いつつ書き込んでみたんですが、やっぱり文字化けしてしまいました。
　宣太后の姓の「び」は説明が難しいんですが、華を簡略化したみたいな字です。『ミーユエ』の主人公の妹の名前の「しゅ」は女偏に朱。『コウラン伝』の主人公の名前の最後の字は金偏に闌です。


#11063　
バラージ 2021/01/20 22:15
どうする？どうなる？徳川家康

　再来年、2023年の大河ドラマが発表されました。松本潤主演で徳川家康が主人公の『どうする家康』というタイトルとのこと。いやあ、ど真ん中ですな（笑）。1983年の『徳川家康』以来の家康主人公ドラマですが、思えばあれから40年なのか……。何度も題材になってきた、あまりにもど真ん中の有名な主人公なんで、そういう意味では今一つ興味がわかないんですが、脚本が古沢良太ってのが、おっ！？と興味を引きました。僕は古沢さんの脚本家デビュー作である第２回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞受賞作の単発ドラマ『アシ！』を観てまして、以後も映画『60歳のラブレター』、『探偵はBARにいる』シリーズ、『少年Ｈ』、『寄生獣』２部作、『スキャナー　記憶のカケラをよむ男』など結構いろいろと観てるんですよね。別に古沢さん目当てではなくたまたまなんですが（笑）、面白いものが多く実力のある方だと思います。テレビドラマも『相棒』シリーズの一部エピソードや、『リーガル・ハイ』シリーズ、『コンフィデンスマンＪＰ』シリーズなどを手掛けていて、今やすっかり売れっ子脚本家。ただ時代劇は今回の大河が初めてとなるようでどうなるのかな。


＞録画で観た映画
『三国志　黄巾の乱』
　三国志の序盤を舞台とした映画ですが、三国志映画とか、ましてや歴史映画とかではなく、ファンタジー・アクション時代劇と言ったほうがいい作品。邦題よりも原題の『魔国志I之黄巾之乱』、英語題の『Fantasy of Three Kingdoms』というほうがよく内容を表してます。製作側は歴史映画とか『三国志演義』の映画を作ろうなどというつもりはさらさらなく、三国志という有名作品のネタとキャラクターを使いつつ、それを大胆に換骨奪胎して、CGとワイヤーによる特撮満載の若者向け娯楽映画を作り上げたんでしょう。史実的・原典的にはキリがないくらいツッコミどころ満載なんですが、製作側は明らかに確信犯的に変えているのでそんなことにいちいち突っ込むのが間違いかと。
　主人公は曹操で、彼が張角率いる黄巾軍を倒すために、左慈の助言で劉備を仲間に入れ、その弟分・関羽、左慈の弟子の女性・郭伽（架空人物）、許嫁で孫堅の妹の孫香香（架空人物）とともに冒険の旅に出て戦うというお話。５人とも若い美男美女で（関羽には髭がない・笑）、張角三兄弟は妖術というか魔法を使いまくりだし、曹操たちも修行で氷の剣だの炎の棍棒だの水の矢だのといった魔法的必殺技を使えるようになるし、冒頭の合戦シーン以外は５人だけで黄巾軍と戦っちゃうし、曹操をめぐる女性陣の恋の鞘当てはあるし、なんというか全体的にノリがファンタジーRPG的というか、戦隊ヒーロー的というか、週刊少年ジャンプ的というか、ライトノベル的というか、80～90年代香港映画的というか、そんな感じの映画でした。そういう映画だと承知の上で観れば、そこそこ金はかけていて映画としての出来自体は悪くないので意外に楽しめます。僕はあらかじめ大まかなあらすじを読んで普通の三国志ものではないということを知っていたので、俳優も監督も誰一人わからないにも関わらず、わりと面白かったですね。
　原題に「Ⅰ」とあるし、本筋には絡まない董卓や呂布がチラッと登場し、左慈は董卓ともつながっていて何か企んでそうなど、明らかに次作への引きで終わるんですが、調べてみるとやはり続編が作られているようです。そっちもちょっと観てみたい。


＞中国戦国ドラマ
　中国歴史ドラマの紹介、戦国時代編。といっても戦国ドラマはほとんど舞台が秦ばっかりです。

『キングダム　戦国の七雄』（原題：風雲戦国之列国、2019年）
　つい最近（日本で）DVD化された、あからさまに便乗邦題のドラマ（笑）。戦国七雄の７か国を、１国１話１時間強の全７話で描いたドキュメントタッチというか再現ドラマに近いものらしく、低予算の上に１国の歴史を１時間で描くため、かなりのダイジェストながら有名どころはある程度おさえてるとのこと。史実に忠実でドラマ的遊びの部分はほとんどない教育番組みたいなドラマらしく、その辺で好みが分かれそう。ユー・ロングアン、リー・リーチュン、ワン・ジンソン、ケント・チェンといった中華圏映画やドラマでよく見かけるベテラン脇役俳優たちが出てるそうで、戦国バイプレイヤーズ状態ですな。

『鬼谷子　－聖なる謀－』（原題：謀聖鬼谷子、2014年）
　珍しく秦以外が舞台の戦国ドラマ。主人公は鬼谷子こと王禅という人物で、誰だ、そいつ？と調べたら、『史記』に蘇秦と張儀の師匠として名前だけ出てくる鬼谷という人物とのこと。鬼谷が書いたとされる『鬼谷子』という書物もあるものの、『漢書』「芸文志」には同名の書物は記載されておらず、『隋書』「経籍志」で初めて名が見られるため、魏晋南北朝時代に鬼谷に仮託されて書かれた偽書だろうと推測されているそうです。そんなわけでほとんど何もわからない人物のためほぼ架空人物と言ってよく、そのため物語のほうも全編フィクションと言っていいようなドラマみたい。なぜか呉起が敵役っぽいんですが、それも史実とはまるで異なる展開です。ただしドラマ自体は近年流行りの女性向けイケメンドラマではなく、シブイおっさんだらけのワイルドで血生臭い作風……と思ったら2014年製作と結構古いドラマだった。中国本土では何か問題でもあったのか完成発表会見までしたのに未だ放送も配信もされておらず、2019年に韓国で初放送されたとか。日本では去年からCSで放送中で、まだDVD化されていません。

『大秦帝国』（原題：大秦帝国 または 大秦帝国之裂変、2006年）
　秦の25代君主・孝公とその家臣・商鞅を主人公として「商鞅の変法」の時代を描いたドラマ。戦国時代の秦は“帝国”ではないんですが、原題からして『大秦帝国』。原作小説があるらしく、その原作者が脚本も担当しています。女優カオ・ユエンユエンが架空人物・白雪役で出演。日本版DVDはダイジェスト版で劇場公開もされたとのこと。後に完全版もCSで放送されたそうですがそちらはDVD化されていません。

『大秦帝国　縦横　～強国への道～』（原題：大秦帝国之縦横、2012年）
　上記『大秦帝国』の続編ですが、脚本が原作者ではなくなったため前作や原作とは若干の齟齬があるとのこと。主人公は孝公の子の26代君主・恵文王で、張儀による連衡の時代が舞台。必ずしも史実に忠実というわけではなく、娯楽要素も結構入ってるらしい。恵文王の側室・&#32651;八子（後の宣太后）役をニン・チンが演じています。日本ではCSで放送されたのみで、なぜかDVD化されていません。ただしAmazonprimeで動画配信はされているようです。

『ミーユエ　王朝を照らす月』（原題：&#32651;月伝、2015年）
　恵文王の側室で28代君主・昭襄王の母の宣太后を主人公としたドラマ。「ミーユエ」というのは主人公の名前「&#32651;月（びげつ）」の中国語発音で、たぶん「&#32651;」という漢字が日本ではほとんど使われず読めないため中国語発音のカタカナ表記にしちゃったんでしょう。でも姉の&#32651;&#23005;は日本語発音で「びしゅ」なんだよな（笑）。ちなみに&#32651;&#23005;は恵文王の正室になるようですが、史実の正室・恵文后の姓は「魏」で宣太后の姉妹ではなく、また宣太后の名は不明で「月」というのは創作（上記『縦横』の「八子」は秦の後宮における位階。ちなみに恵文后も名は不明）。その他にもかなり史実と異なる部分が多く、そのため「宣太后をモデルとした人物が主人公のドラマ」と形容されることも多いみたいですね。主演はスン・リーで、彼女をはじめ『宮廷の諍い女』のキャスト・スタッフが再結集して製作されたドラマとのこと。

『昭王　～大秦帝国の夜明け～』（原題：大秦帝国之崛起、2017年）
　『大秦帝国』シリーズ第３作で、28代君主・昭王（昭襄王）が主人公。昭王の母・宣太后役を『縦横』から引き続きニン・チンが演じています。原作者が、『縦横』と本作の脚本が自分の原作とあまりにも違っていることに不満を示し原作提供を打ち切ったため、次作以降はオリジナル脚本で作られるとのこと。その４作目にして完結編が先日、暴君礼賛だとニュースになってた『大秦賦（原題）』というドラマです。

『コウラン伝　始皇帝の母』（原題：皓&#37997;伝、2019年）
　始皇帝の母の趙姫を主人公としたドラマで、趙姫は姓名不明のため「李皓&#37997;」という名前に設定されています。始皇帝の母親というと悪役まわりの印象が強いんですが、まあドラマなんだしどうとでも作れますよね。現在NHK-BSで放送中で、まだDVD化されていません。主演のウー・ジンイエンをはじめ、『瓔珞　～紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃～』のキャスト・スタッフが再結集して製作されたドラマだそうですが、『瓔珞』ほどには評判がよろしくないようです。ろんたさんが指摘されてたプロデューサーの于正はいろいろと揉め事を起こしてる問題児のようですが、それでもコンスタントにドラマを手掛けてヒットはさせているようで、歴史映像名画座に収録されてる『後宮の涙』や、ここまでに紹介した『宮　パレス』シリーズ、『則天武后　美しき謀りの妃』『宮廷の泪・山河の恋』『私が大王！？　愛しいあなたは我が家臣』のプロデューサーや脚本をしています。いずれも史実なんて吹っ飛ばせ系の娯楽ドラマですが、『瓔珞』だけは例外的に高く評価されたとのこと。


#11062　
徹夜城（昭和史ものも結構読んでいた管理人） 2021/01/14 00:01
半藤一利さん、逝去

　もう丸一日前に知ったことですが、作家の半藤一利さんが亡くなりました。元文芸春秋の編集者として司馬遼太郎や松本清張らを担当、名作ノンフィクション「日本のいちばん長い日」を書き上げてもいます（発表当時は一記者なので名前は出しませんでしたが）。「日本のいちばん長い日」は東宝オールスターで映画化され、今なお僕にとっては最高の戦争映画だったりするわけで…それはやはりそうしたものを生み出すだけの原作があったというのが大きいでしょう。

　文春を退職後は「歴史探偵」として近現代史、とくに昭和史研究で多くの一般向け著作をものし、僕もいろいろと読ませていただきました。同じく昭和史研究者の保阪正康氏との対談も多かった。特に半藤氏は少年時代に戦争の時代を体験しており、当時の空気を肌で知る世代として、その時代の異常性、軍事面での失敗その他の指摘もずいぶんされていました。

　記者の立場から見た「清張さんと司馬さん」も面白かった。特に司馬遼太郎でしょうねぇ。司馬を尊敬しつつも司馬が昭和史の問題点として重視した「統帥権」の見解についてはやや意見を異にしていたようです。また、司馬に「ノモンハン」を書くよう長くせっつき続けたそうですが、結局司馬は手掛けず、それを自身の手で「ノモンハンの夏」としてまとめることにもなりました。

　９０歳という年齢までとても元気で頭もよく回り、その様子を最近僕は「風立ちぬ」公開時に行われた宮崎駿監督との対談映像でも確認していました。宮崎監督をいて「俺もああいう風に年を取ろう」と言わしめてました。
　その対談で半藤さんは「あと、二、三十年もすれば国家もなくなると私は楽観している」という発言をしてまして…僕も正直なところそれは楽観に過ぎるんじゃないかと思ったのですが、あれだけ歴史をいろいろ考察してきた方の発言だけに重みはあると思います。


#11061　
バラージ 2021/01/10 21:54
『バビロン・ベルリン』シーズン３

　BS12で放送されていたドイツのテレビドラマ『バビロン・ベルリン』シーズン３全12話が終わりました。
　ナチス台頭前の1929年、ワイマール共和国末期を舞台としたハードボイルド・ミステリードラマで、ベルリン警察の刑事ゲレオン・ラート（演：フォルカー・ブルッフ）と、昼は警察で記録係の日雇いをしながら夜はナイトクラブで売春をする極貧家庭のシャルロッテ・リッター（演：リヴ・リサ・フリース）が主人公。一昨年放送（去年再放送）されたシーズン１＆２に比べるとミステリー色がより強くなった感じです。
　シーズン１＆２ではロシア革命で流出したロシア貴族の金塊をめぐる、亡命トロツキスト、スターリンの秘密警察、ベルリン裏社会のギャング、ドイツ帝政復活を目論む影の軍隊「黒い国防軍」の抗争を追うストーリーでした。
　今回のシーズン３では、シャルロッテが念願の刑事見習いに採用。サイレントからトーキーに変わる時代のドイツ映画界で起きた女優殺人事件が主となります。そこに映画に多大な出資をしていたギャングや、そのような事件とは無関係なシーズン１＆２の事件の続きが描かれるというストーリー。まだナチスは泡沫政党の１つで過激派ぐらいにしか思われていない時代ですが、突撃隊やヒトラー・ユーゲントなどが本格的に登場。ドラマの最後には世界大恐慌が起こって、未曾有のバブル的繁栄を謳歌していたドイツ経済は崩壊します。
　いや今回も面白かった。第一次世界大戦とナチス政権に挟まれたワイマール共和国時代が舞台になることはほとんどないので非常に興味深い。純粋にドラマとしても大予算をかけた豪華なセットや、主演２人をはじめとする俳優陣の好演もあって見ごたえがあります。唯一、難点があるとすればゲレオンの甥役とシャルロッテの妹役の２人の子役が大きくなりすぎちゃったってことかな。劇中ではシーズン１＆２から数ヶ月しか経ってない設定ですが、実際には前シーズンから３年も経っちゃってるんで、２人ともすっかり背が伸びて、それぞれゲレオンやシャルロッテより背が高くなっちゃってます。顔立ちもちょっと大人びちゃったし、甥役の子なんか声変わりもしちゃってるんだよなあ。まあ仕方がないけど。
　本国では去年はじめにシーズン３が放送された後、すぐにシーズン４も作られる予定でしたがコロナで中断。先日ようやく撮影が始まったらしい。これまた楽しみ。


＞春秋ドラマ
　中国歴史ドラマの紹介、春秋時代編。わりとメジャーな時代なんで作品は多いんですが題材は偏っていて、ほぼ孔子・孫子・呉越ばっかりです。

『天命の子～趙氏孤児』（原題：趙氏孤兒案、2013年）
　チェン・カイコー監督の映画『運命の子』と同じく、晋の趙武が幼少時に一族絶滅から救われ復讐を果たすまでを描いた元の雑劇『趙氏孤児』を基にしたテレビドラマ。原作や映画とは違って趙武を産んだ母親が自害していない（これは史実通り）など、あえてストーリーを変えている部分もあるようです。

『孔子』（原題：孔子春秋、2011年）
　本作同様に孔子の生涯を描いたテレビドラマ『恕の人　孔子伝』より１年前に製作された孔子ドラマ。WOWOWでは『恕の人』が終わったと思ったらこれが始まって、「また孔子かよ！」と思った記憶あり。

『孫子《兵法》大伝』（原題：孫子大伝、2010年）
　これまたおなじみ孫武ものドラマ。呉王僚の暗殺から呉の滅亡までを描いているとのこと。主演はこのころ史劇ドラマに出まくってたチャン・フォンイーで、他にもブレイク前のジン・ティエンや、香港のウー・マなど有名俳優が出演しています。

『燃ゆる呉越』（原題：越王勾践、2006年）
　これもメジャーな呉越の臥薪嘗胆ドラマ。原題でわかる通り越王勾践のほうを主人公としたドラマで、物語は勾践が呉王夫差に敗れて奴隷となるあたりから、勾践が臥薪嘗胆の末に夫差を倒すまで。伝説の刀匠の手による王者の剣といった娯楽要素も入ってるようです。

『争覇　―越王に仕えた男―』（原題：争覇、2006年）
　こちらは越王勾践の家臣の范蠡を主人公とした香港の臥薪嘗胆ドラマ。物語は勾践が呉王闔閭の侵攻を退けるあたりから、呉滅亡後に范蠡が出奔するあたりまで。香港ドラマだけにやや低予算で武侠ドラマ要素が強いらしく、范蠡とヒロイン西施のラブロマンスも主題の１つみたい。主演は当時中国の売れっ子若手俳優の１人だったチェン・クン。

『復讐の春秋　―臥薪嘗胆―』（原題：臥薪嘗胆、2007年）
　またまた臥薪嘗胆ドラマ。物語は呉王闔閭と越王允常という父親世代の戦いから呉の滅亡まで。勾践役はチェン・ダオミン、夫差役はフー・ジュン。こちらはかなりお堅い真面目路線の史劇ドラマらしいんですが、ストーリーを読むと呉越それぞれの後継者争いなどかなりフィクションも入ってるようです。

『女たちの孫子英雄伝』（原題：英雄、2012年）
　このころから流行りだした女性目線の孫子ものかと思いきや、これも臥薪嘗胆ドラマ。紛らわしい邦題だ。しかも西施主人公の女性ものみたいなデザインなのに、実際には別に西施が主人公ではなく群像劇的なドラマらしい。どっちかというと呉王夫差のほうが主人公に近いという珍しい作品で、夫差はいい人、勾践は極悪人という描かれ方の武侠ドラマ風の作品だそうです。

『三国争乱　春秋炎城』（原題：春秋淹城、2008年）
　ちょうど臥薪嘗胆の頃の話ですが、楚・呉・越の３大国に挟まれた小国・淹城の生き残りをかけた戦いを描くという珍しいドラマ。呉越だけでなく楚も出てくるのも珍しい。淹城というのは実際に中国に残る最古の遺跡で2500年前のものらしいんですが、くわしいことはわからないためドラマは全編創作の架空の国にしちゃってます。ちなみに淹城はすっかりテーマパーク化されてるらしく、このドラマも観光誘致ドラマの側面があるみたい。


#11060　
徹夜城（変換間違いはいつも多い管理人） 2021/01/05 21:30
うお、変換ミス！

　先日の自分の書き込みをよくよく読んだら、「漁師物理学」というとんでもない言葉が開かれてますな（笑）。もちろん正しくは「量子」。「漁師物理学」なんて、それこそ「ウラシマ効果」とか別の意味で使われそうです。

＞今年最初の注目新刊本
　2月18日発売予定で、「南北朝武松列伝・南朝編」という本が出ます。事前情報によると武将だけでなく皇子など３１人収録とのこと。
　南朝編、ということは当然「北朝編」も出るはずで、正月早々楽しみなことです。


#11059　
バラージ 2021/01/03 19:11
あけましておめでとうございます

　今年もよろしくお願いします。
　誰もが言ってることですが、去年は１年があっという間に終わってしまった感じですね。その一方で２～４月くらいまでのことがなんだか遠い昔のようにも思えたりして。
　文字化けは僕も気を付けてはいるんですが、書き込んでみないとわからないところもあり、ついついうっかりということがたびたびありまして……。ご勘弁ください。
　『ハローアインシュタイン』で唯一僕が覚えてるシーンは、電車の中でアインシュタインがナチスに尋問され、自分はアルベルト・アインシュタインだと答えるところですね。

＞史点
　ニグロ・リーグについては、昔、『黒人野球のヒーローたち　「ニグロ・リーグ」の興亡』（佐山和夫、中公新書）を読んでくわしく知りました。ただ、サチェル・ペイジやジャッキー・ロビンソンの名前はそれ以前から聞いたことがあったような気がします。と言いつつロビンソンの伝記映画『42　世界を変えた男』はまだ観てなかったりしますが。
　足利義満の肖像画のニュースは僕も読みました。その製作経緯の説を読んで思ったんですが、室町幕府の権威の象徴はやっぱり義満なんだなあと。武家政権が衰えたり危機に陥ったりすると過去の権威が持ち出されるというのは鎌倉幕府や江戸幕府でも見られる現象ですが、鎌倉幕府は源頼朝、江戸幕府は徳川家康という開祖なのに対して、室町幕府の場合は開祖の尊氏ではなく義満なんですよね。
　そして、なかなかドラマの主人公にならない人物といえば実は頼朝もそうでして。大河ドラマの『草燃える』は北条政子との夫婦主人公で頼朝の前半生は描かれていませんし、それ以外でも主人公なのは1961年の映画『富士に立つ若武者』ぐらい。登場作品自体は多いんですが、そのほとんどが弟の義経や平清盛が主人公でして。小説でも頼朝主人公作品は非常に少なく、吉川英治の『源頼朝』は平家滅亡まで、山岡荘八の『源頼朝』は木曽義仲滅亡までで終わっちゃってます。吉川は弟たちを酷薄に粛清していく頼朝が好きになれないみたいなことを最後に書いてた記憶あり。また頼朝の生涯は、ドラマでは子役時代になるであろう平治の乱までが結構長く、そこから伊豆への流罪時代が20年間続き、挙兵した後も平家追討には弟たちが出陣して自らは鎌倉にいることが多いなど、いろいろとドラマにしにくいことも確かなんだよなあ。
　他にも有名だけど主人公になりにくい人物としては北条時宗なんかがいます。大河ドラマにこそなりましたが、他には1937年の映画『蒙古襲来　敵国降伏』と1961年のドラマ『風雲児時宗』ぐらい。元寇ものは日蓮が主人公のものがほとんどです。これが江戸時代の人物になると、いわゆる「時代劇」があるんで結構登場作品が多かったりするんですが。

＞名画座修正情報
『火の鳥』（実写映画）……ソフト化はされていませんが、動画配信はされています。
『母恋ひの記』……「～谷崎潤一郎「少将滋幹の母」より～」というサブタイトルが付いています。内容的に脚本の中島丈博によるオリジナル部分が多く、谷崎の原作からはかなり逸脱しているとのこと。
『かぶき者慶次』……ソフト化はされていませんが、動画配信はされています。
『足尾から来た女』……ソフト化はされていませんが、動画配信はされています。

＞殷周ドラマ
　中国歴史ドラマの紹介、殷～西周編。といっても殷周のドラマってほとんどないんですよね。殷以前の夏のドラマもありません。歴史というより伝説や神話みたいな話が多くてドラマにしにくいのかもしれませんねえ。人気もあんまりない時代なんでしょう。そんなわけで史実とはあんまり関係ないようなドラマをご紹介。

『封神演義』（原題：封神榜之鳳鳴岐山、2006年）
　日本では90年代後半に週刊少年ジャンプでマンガ化されて大人気となった明代の神怪小説のドラマ化。僕はその頃にはもうジャンプを卒業してたんですが、愛読してた光栄の歴史投稿誌に全く知らない『封神演義』ネタが突然激増して、何なんだ、これは？と戸惑った記憶があります。あんまり歴史ドラマではないんですが、有名作品だし他に紹介するものもないんで紹介してしまおう。原典は殷周革命を題材としつつ、そこに神仙や天界などの要素をしこたまぶちこんだ、半分以上ファンタジーの物語みたいですね。なので映像作品では特撮やCGを使いまくりになります。妲己役がファン・ビンビンで、パッケージではほとんど彼女が主人公みたいな感じだけど、実際そうなのかは不明。ファン・ビンビンは後に2016年の映画『封神伝奇 バトル・オブ・ゴッド』（原題：封神傳奇）でも妲己を演じています。

『封神演義　逆襲の妲己』（原題：封神榜之武王伐紂、2009年）
　上記作品の続編ですが、なぜか主要キャストのほとんどが別の俳優に変わってしまいました。まあ、香港映画なんかでもあるあるのことではあるんですが、なんだかなあ。妲己役は台湾のルビー・リンです。

『私が大王！？　愛しいあなたは我が家臣』（原題：大王不容易、2017年）
　西周を舞台とした珍しいドラマ。といっても史実がどうこうとかはほとんどどうでもいいドラマみたいですね。５代穆王の時代の女性が主人公なんですが、この女性と穆王が入れ替わっちゃいます。そう、『転校生』です。『君の名は。』です。そこから当然のごとく、てんやわんやのラブコメが始まり、西王母とかも出てくるみたいですが、そこまで史実とかけ離れてるんならわざわざ実在の人物にしなくても、それこそ架空史劇でいいような。でもまあ『史記』の穆王の記述だって半分伝説みたいな話でとても事実とは思えないんだし、ま、いいか（笑）。歴史の話なんか忘れて、あくまでラブコメとして観るのが正しい観方のようです。そんなことよりこのドラマ、終盤にどんでん返し連打の超展開が待ち受けているらしく、どうせ観ないだろうからとネタバレ読んだら笑っちゃいましたね。


#11058　
徹夜城（一月は正月で酒が飲めてる管理人） 2021/01/02 20:58
謹賀新年

　もう二日目ですが、あけましておめでとうございます。今年最初の「史点」も本日付でアップさせていただきました。単に年の瀬アップのつもりが遅れてしまっただけですが。

＞正月に少しは歴史本でも
　僕もちょこちょこと図書館から本を借りてきて読んでますが、歴史本のほか必ず理系本も混ぜるんですね。もちろん読めそうなものに絞ってますが…漁師物理学のニールス＝ボーアの伝記漫画（の日本語訳）を借りてきて、そこそこ面白く読み進めています。こういうのは専門的な話よりもその個人の伝記のほうがとっつきやすいですね。
　ほかに「ペストのフランス史」なんて本も。コロナ禍のいま、何か参考になるかなと思いつつチビチビと読んでいます。中世の「消毒」の実態（石灰をよく使う）ところなんかも面白い。

＞ハローアインシュタイン
　バラージさんも放送時見ておられたんですね。僕も見ていて、内容をよく覚えていたのですが、最近ネット上某所にてその録画をみる機会を得まして（今回の「名画座」追加分はこのパターンが多い）僕の記憶がかなり詳細かつ正確であったことを確認しました。その一方でその番組の案内役が手塚治虫だったというのは完全に失念してましたが。
　あのドラマ、日本に来るシーンもちょこっとあって、アインシュタインが人力車を拒否する、という描写があります。日本でロケしたかどうかは分かんないけど。

＞文字化け
　バラージさんの「文字化け」の件ですが、僕もときどきコピペでやっちゃうんですけど、この掲示板では第二水準、環境依存文字は表示不能なので、中国人名地名では気を付けていただくほかないかなぁ…フランス語とか欧州文字もダメなんですよね。
　過去ログですが、最新のやつはデータ量がそれ以前の平均の3倍くらいありまして、そのせいか文中に文字化けが多いからなのか、パソコン上では大丈夫でもネットにアップしたとたんに文字化けして、しばらく改善策がありませんでした。で、一応「おまじない」の一文を入れることで全体のバケは解消してるんですが、こっからどうするかは研究中。


＞そうそう、忘れていたネタを
　ちょっと前に、義満の声を演じたキートン山田さんの引退の話題がありましたが、PCエンジンCD－ROM版「太平記」ではキートンさんが後醍醐天皇を演じてるんですよ。一部で義満こそ後醍醐の後継者、なんて言うんですが、不思議な縁もあるものです。



#11057　
バラージ 2020/12/30 15:30
おお

　最後まで文字化け。『琅ヤ榜（ろうやぼう）』の「ヤ」は「[王邪]（王偏に邪）」です。


#11056　
バラージ 2020/12/30 15:23
歴史的な年

　今年は間違いなく歴史に残るであろう年になってしまいましたね。世界的に歴史年表にも記され後世まで語られるような年を自分が経験しようとは、この歳になるまで想像だにしていませんでした。９年前の東日本大震災も大変な出来事でしたが、今回のコロナウィルスはそれ以上と言っていいでしょう。以前にも書きましたが、おそらくこれはあらゆる意味でかなり大きな世界の変容につながっていくのではないかという漠たる予感があります。それがどのような変容になっていくのかはよくわかりませんが。はたしてコロナ後の世界はどのようになっていくのでしょうか？

　さて、そんな中で映画ファン的に気になった今年の事象の１つが動画配信という形態。去年、Netflix配信の『ROMA／ローマ』がベネチア映画祭金獅子賞を受賞し、アカデミー賞も獲るかと大きなニュースになったあたりからホットな話題になっていましたが、今年は欧米映画がコロナ下でほとんど上映中止に追い込まれ、なにかと話題の『ムーラン』を含む多数の作品が配信オンリーに舵を切る事態となって、ディズニーら配給会社と映画館側が対立する事態も伝えられたりしました。
　日本を含むアジアでも、韓国の配信ドラマ『愛の不時着』『梨泰院クラス』などがコロナ下の巣籠もり需要もあって大ヒット。中国でも若い世代はスマホやタブレットで映画やドラマを観るのが普通になってきたと前回に書きましたし、日本歴代興行収入１位に上り詰めたアニメ映画『鬼滅の刃』にしても、連続テレビアニメ（全26話）の続編がここまでの大ヒットになったのは、テレビ版を配信で観れるために後追い視聴が可能だったからだと分析されています。
　このような映画館やテレビやDVDから動画配信への流れは、すでに以前から確実に起きつつあったものでコロナ流行はそれを後押ししたに過ぎず、この流れを押し止めることはおそらくできないのではないかという気もします。ま、僕自身は動画配信はほとんど観たことがなく、上記作品群も１つも観ていなかったりするんですけどね。昔から流行に背を向ける質なもので（笑）。


＞中国時代劇ドラマの歴史・追記
　前回は当然ながら歴史ドラマを中心に紹介しちゃいましたが、実は最近の中国時代劇ドラマは架空の時代を舞台にしたものが最も多いんですよね。アクション時代劇、架空史劇、ファンタジー時代劇、神仙ファンタジー等々……。ま、一昔前の時代劇全盛のころの日本だって時代劇の中心はあくまで歴史とはあまり関係のない「時代劇」であって、史劇は時代劇の中では少数派でしたしね。これが一般的な状態なのかも。そんなわけでムックでも紹介されていた、それら「時代劇」の代表作についてちょっとだけ追記。

『琅&#29706;榜　～麒麟の才子、風雲起こす～』（2015年）
　南北朝時代を模した架空の国・梁を舞台に繰り広げられる宮廷復讐劇で、全編にわたって伏線が張り巡らされた緻密なストーリーと、手に汗握る迫力のアクションが日本でも熱狂的ファンを生み出したとのこと。主人公を別の人物に変えて続編『琅&#29706;榜＜弐＞　～風雲来る長林軍～』（2017年）も作られました。

『海上牧雲記　～３つの予言と王朝の謎』（2017年）
　架空世界「九州」を舞台に、九州を支配する皇帝一族、それを守護する将軍家、彼らに虐げられた蛮族、さらには人族以外の魅族・河洛族・鮫族・羽族・巨人族をも巻き込んだ壮大なスケールの王朝権力抗争劇。やはり日本でも熱狂的ファンを生み出したらしく、かく言う僕もその１人（笑）。感想は映画板#1797に書いております。ちなみにこのドラマ、中国版『ゲーム・オブ・スローンズ』とも呼ばれてるらしいんだけど、そっちは観てないかんでよくわかりません。本作より700年前が舞台の『九州縹緲録』（2019年）も作られています。

『永遠の桃花　～三生三世～』（2017年）
　神仙たちが登場人物のラブ史劇。架空世界だし、そもそも人間じゃなく神仙なんで「史劇」じゃないんですが、まあ「ラブ史劇」ってのは日本側の造語ですんで（笑）、ドラマの雰囲気や方向性が他のラブ史劇といっしょなんでしょう。『永遠の桃花』の大ヒットにより、主人公を変えて続編が次々に作られたんですが、２作目の『運命の桃花　～宸汐縁～』（2019年）は台湾の名優チャン・チェンのテレビドラマ初主演作。チャン・チェンのテレビドラマ出演も驚きですが、それがコテコテのラブ史劇というのがさらに驚かれたそうです。一作目のスピンオフ『夢幻の桃花　～三生三世枕上書』（2019年）もあり。
　この手の神仙ファンタジーは最近やたらと多いらしく、他に『霜花の姫　～香蜜が咲かせし愛～』（2018年）、『扶揺（フーヤオ）　～伝説の皇后～』（2018年）、『神龍＜シェンロン＞　-Martial Universe-』（2018年）なんかも神仙ファンタジーとのこと。

　その他にも若い女性向けイケメンドラマ『花と将軍　～Oh My General～』（2017年）とか、ブロマンスを前面に打ち出してBLファンのハートをわしづかみにした『陳情令』（2019年）なんかが紹介されてましたね。
　最近は現代劇ドラマも徐々に輸入されつつあるようで、個人的には韓国ドラマや台湾ドラマのように輸入される半分くらいは現代劇にしていただきたいところ。とはいえ中国だと、本国でもいろいろと制約があるんかな。

＞未見映画
『三国志　周瑜と孫策』……こないだレンタル店で見つけた最近中国で流行りの（？）史実なんて吹っ飛ばせ系イケメンだらけ娯楽アクション時代劇映画。周瑜が主人公なんですが、あらすじや予告編を見るとなぜかラスボスが袁紹っぽい。よく原典を自由自在に脚色されちゃうという意味で西遊記映画のノリに近い感じ。監督も知らん人なら俳優も誰もわかりません。
『ムーラン　戦場の花』……同様にレンタル店で見つけた、あからさまにディズニー実写映画の便乗っぽい本家本元中国のアクション史劇映画。定番の木蘭（ムーラン）話を一通りやってる感じですが、これまた監督も俳優も知らん人たち。
『ムーラン　美しき英雄』……もう１本ありました便乗っぽい本家本元中国のアクション史劇映画。上記作品とも無関係で、この辺すっかり中国映画も一昔前の香港映画みたくなっちゃったなあ。こちらは定番話の後日譚で、再び柔然との戦いが巻き起こるといったお話。やっぱり監督も俳優も知らん人たちです。
『安市城　グレート・バトル』……唐の大宗李世民による高句麗侵攻を安市城で撃退したヤン・マンチュン（楊萬春）を主人公とした韓国のスペクタクル史劇映画。予告編を観ると大予算でド迫力の合戦映画でなかなかに面白そう。特に弓矢の使い方がちょっと『神弓』を思わせます。
『代立軍　ウォリアーズ・オブ・ドーン』……豊臣秀吉の朝鮮侵攻で明に逃れた国王宣祖から後事を押し付けられた息子の光海君が、生活のために他人の軍役を代わりに担う「代立軍」と呼ばれる農民たちと共に戦う韓国のアクション史劇映画。ぬくぬくと育てられたあまちゃんの光海君が、代立兵との出会いで成長していくという感じのストーリー。


#11055　
ろんた 2020/12/29 16:18
You are fired.(お前はクビだ)

　新聞の書評を見て『人新世の「資本論」』(斎藤幸平/集英社新書)、『メディアが動かすアメリカ──民主政治とジャーナリズム』(渡辺将人/ちくま新書)を、『白い病』(カレル・チャペック/岩波文庫)と一緒に購入、暇を見つけて読了。

『人新世……』は、『新ＭＥＧＡ』(マルクス・エンゲルス全集の新版)編集の過程で環境問題に関する研究ノートが大量に見つかったことから、晩年のマルクスは唯物史観(生産力主義……かなぁ？)を超克していた、という視点でマルクス主義とエコロジーを脱構築(？)しようとしている。他の著作も読んでみよう……と思ったら１月の「100分de名著　資本論」の講師をやるみたい。ちなみにお正月特番は「100分de萩尾望都」。ＭＣは伊集院光じゃなくてカズ・レーザー。

『メディア……』は言わばテレビメディア現代史。(１)三大ネットワークとアンカーの影響力低下、(２)ＣＮＮの台頭、(３)9.11後の言論一元化、(４)政治トーク番組や「ニューズマガジン」番組の隆盛、(５)自由化による政治思想の商品化(ＦＯＸ,ＭＳＮＢＳなど)、(６)「パンディット(コメンテーター？)」の登場とセレブリティ化、(７)風刺コメディのジャーナリズム化、(８)エスニックメディアの台頭といったところが議論されてます。
　さらに、トランプが大統領にまでのし上がった秘密は、ＳＮＳではなくオワコンのはずのテレビにあるという。トランプって、第三党からの出馬を取り止めた時点でピエロ扱いされていて、政治的には死に体だった。しかも、何回も破産していて一流実業家ってイメージもなかった。それが一変したのは、「アプレンティス(The Apprentice＝見習い)」というリアリティテレビに主演したのがきっかけ。この番組は……

・ビジネスマン志望の一般人がトランプタワーの役員室に集められる
・志望者は二つのグループに分けられ、トランプから課題を与えられる
・売上の多かった方が勝者、敗者のうち一人が脱落
・脱落者が決まる前に、負け組内で話し合い(吊し上げ？)が行われる
・脱落者にトランプが"You are fired."と宣告
・トランプが深遠な経営哲学を語ってＥＮＤ
・最後に勝ち残った一人が、トランプの会社に雇用される

……という段取りで進行。ＮＢＣで2004年から2017年まで、色々変更がありつつも実に14シーズンに渡って放送されていた。しかし「リアリティ(本物っぽい？)テレビ」とはよく言ったもので……

・役員室は、トランプタワー内の空き部屋に組まれたセット
・参加者間でロマンスや仲違いが必ず生まれる
・女性や有色人種は最後まで勝ち残る
・課題のクリア方法は、二つのグループで必ず違う
・脱落者を決めるのは、トランプではなくプロデューサーと構成作家
・トランプの語る経営哲学は、作家が原稿を書いている
　　(読み上げる時はプロンプターを使う)

……と「ヤラセ」のオンパレード。まあ、「……っぽい」だけでドキュメンタリーじゃない、ってのが制作者側の言い分だろうし、それが視聴者との間で共有されてれば問題ないわけですが、最近日本でもあった事件を見るとこれはかなり怪しい。しかもそれを十年以上も見ていれば、トランプを品行方正、謹厳実直な理想的経営者と勘違いしてしまうのも無理はない。さらに政治エリートに対する反感を煽られれば、トランプを大統領に、という気になるのも分からないでもないわけです。
　さらに驚くべきは、番組の成功で莫大な広告収入を得、「文化現象」とまで自画自賛していたＮＢＣエンタテインメントの社長ジェフ・ザッカーが、現在はＣＮＮ社長に転進していること。この四年間の抗争劇って、プロレスだったの!?

『白い病』(カレル・チャペック/岩波文庫)は、緊急事態宣言下で訳出、ウェブで公開していたものをまとめたもの(訳者・阿部賢一の解説より)。2020/09/15の初版から翌月には増刷。そういえば、『ペスト』(カミュ/新潮文庫)、『赤死病』(ジャック・ロンドン/白水社)などパンデミックものの古典が平積みになっていた。菊池寛の『マスク』も(笑)。チャペックの作品は戦間期のチェコスロヴァキアの現実を反映しているけど、そこを突き抜けた普遍性を獲得している傑作ぞろい。『山椒魚戦争』とか『ＲＵＲ』とか。
　舞台は"元帥"が支配する軍事独裁国家。隣国の征服を目論み、経済界を牛耳る"クリューク男爵"も、財閥の総力を挙げて兵器を大増産中。だが、「白い病」と呼ばれる無気味な病が世界的に流行しつつあった。発症者は40代後半以降。最初、皮膚に小さな白い斑点ができ、その部分は感覚が失われる。これが広がると強い腐臭を放ち、全身の敗血症により死に至る。リリエンタール大学病院院長たる"枢密顧問官ジーゲリウス教授"もこの病と戦う一人だが、消臭剤と鎮痛剤を処方するしか手はない。そんな中、治療法を見つけた、という"開業医ガレーン"が現れる。岳父リリエンタールの助手という経歴から臨床実験に協力すると、患者は劇的な回復を見せる。しかし、ガレーンは決してその詳細を明かそうとはせず、治療するのは貧民に限る、としたため二人は決裂する。ガレーンは自分の医院で治療を続けるが、やはり対象は貧しい者のみで、金持ちの患者は、戦争を止めさせれば治療する、と追い返してしまう。それはクリューク男爵に対しても同様で、元帥に平和を懇願して拒否された男爵は絶望し自殺する。しかも隣国に攻め込んだはいいが、意外な抵抗にあい長期化する。このままでは大国の介入も避けられない。そんなある日、元帥は自分の胸から感覚が失われているのに気づく。姿見の前で胸をはだけると、そこには……。
　続きは本編をどうぞ。戯曲だから読みやすいし短い。やりきれないほどブラックなエンディング。それだけに現代を感じさせられてしまいます。発表は1937年ですけど。

＞年末年始の時代劇
　ＢＳＰで「明治開化・新十郎探偵帖」が始まっている。坂口安吾原作で、勝海舟が迷探偵役なのも原作通り。これ多分、『不連続殺人事件』の名探偵役・巨瀬博士が小説家志望だけど、その小説がゲロつまんないというのと対応している。確か、探偵は一般的な心理に通じていなければならないが、小説家は特殊な心理に通じていなければならない、ということだったように思う。ドラマでは西郷、大久保も登場。あと12/29には「三船敏郎・生誕100年～サムライと呼ばれた男の実像」が、12/30には長谷川一夫版「忠臣蔵」(1958年大映)が放送される。で01/01には個人的に望んでいた「大化改新」「大仏開眼」が放送される。雪で受信障害が起きたりしませんように。その後はヒガシの「大岡越前スペシャル～初春に散る影法師」。01/02,03の夜は「コウラン伝・始皇帝の母」のオールナイト放送(笑)。総合では「ライジング若沖・天才かく覚醒せり」が01/02にあるけど、ＢＳＰでは完全版(５分長い)が01/16に放送される。土曜時代劇は「立花登青春手控え２」(01/09～)。01/02にはスペシャルがある。そうそう、ＢＳ４Ｋでは01/10から「キャサリン　スペイン王女の華麗なる野望」を放送。「イギリスの絶対王政を築いたヘンリー8世の最初の妻、「キャサリン・オブ・アラゴン」。スペインの王女として生まれながら、“イギリス王妃になる” 運命を背負ったキャサリンが、異国にわたり、その使命を果たすまでの数奇な人生を描く。」ということで、結婚するまでを恋愛ものとして描くと思われる。それ以降を描くと色々とナニなんでしょう(笑)。ちなみにキャサリンはＢＳ日テレで放送していた「イサベル～波乱のスペイン女王～」の末娘。ただし、こちらは英米制作。そのＢＳ日テレでは01/15,22に「佐武と市捕物控」が再放送される。「トルコ版マザー」が12/30に終わると、12/31から「ポロス」が放送される。ただし、シーズン１の再放送っぽい。


#11054　
バラージ 2020/12/27 00:52
あちゃー

　過去ログの文字化け修正失敗部分が壮大に文字化け（笑）。読めないような難解な字ばっかりだもんなあ。書き込めない文字に変換されちゃってるってこれいかに。以下の部分の文字です。

#10837の上から６行目の「服役中」の「服」の部分などの字。
#10845の下から３行目の「安倍さん」の「倍」の部分などの字。
#10848の上から２行目の「帰納」の「納」の部分などの字。
#10866の下から６行目の「植え付けてやる」の「植」の部分などの字。


#11053　
バラージ 2020/12/26 23:46
歴史映像名画座

　「すべて秘書がやりました」という言い訳で逃れる政治家（前首相）が21世紀令和の世にもまだいたとは！　政治家の永遠の定番の言い訳なのか？

　更新お疲れ様です。今回追加されたものの中では、『いだてん』の他に『ハロー　アインシュタイン』をたぶん観ています。タイトルは覚えてないんですが、子供の頃にテレビでアインシュタインの伝記映画だかドラマだかを観た記憶があるんですよね。内容ももうほとんど覚えてないけれど、放送時期からいってたぶんこれだろうと。いやあ懐かしい。
　そして今回の名画座収録作品の修正漏れ情報を。

『鶴姫伝奇』……「興亡瀬戸内水軍」というサブタイトルが付いています。
『戦国疾風伝　二人の軍師』……「～秀吉に天下を獲らせた男たち～」というサブタイトルが付いています。
『孫文の義士団』……キャストのワン＝チェシーは誤りで、ワン＝シュエチーが正しいです。
『黄山伐』……劇場公開はされてないものの、映画祭「シネマコリア 2005」で『黄山ヶ原』の邦題で上映されたとのこと（Wikipediaに記事が立ってて知りました）。「黄山ヶ原」と書いて「ファンサルボル」と読むらしく、HuluやAmazonprimeで動画配信もされています。
『観相師』……厳密には『観相師　―かんそうし―』という邦題のようです。
『ジンギスカン』（1965年の米国映画）……劇場公開邦題は「・」の入った『ジンギス・カン』だったようで、VHS化の際に「・」の抜けた『ジンギスカン』という邦題になったようです。
『侵略者』……VHS邦題は『侵略者アッチラ』ではなく『侵略王アッチラ』です。
『ニュールンベルグ裁判』……なぜか今回の更新で頭の「ニ」が削除されて『ュールンベルグ裁判』になってしまっています。
『リベレイター』……「南米一の英雄　シモン・ボリバル」というサブタイトルが付いています。

　また、中国史作品に出演している以下の中華圏俳優はそれぞれ同一人物ですので、同一人物とわかるような記載をしたほうがいいかと。
『墨攻』のウー＝チーロン、『新忠烈図』の呉奇隆、徒然草の『墨攻』のニッキー＝ウー。
『墨攻』『始皇帝暗殺』の王志文と、徒然草の『墨攻』のワン＝チーウェン。
『ヘブン・アンド・アース　天地英雄』の王学圻と、『孫文の義士団』のワン＝シュエチー（上記の通りワン＝チェシーは誤り）。
『水滸伝』（2011年）の張函予と、『孫文の義士団』のチャン＝ハンユー。
『岳飛伝　THE LAST HERO』の劉承俊と、『ラスト･ソルジャー』のユ＝スンジュン（韓国俳優です）。
『大明劫』『蒼穹の昴』の余少群と、『１９１１』のユイ＝シャオチュン。
『ラストエンペラー』のウー＝ジュンメイと、『宋家の三姉妹』のヴィヴィアン＝ウー。

　そして#10901～#11100の過去ログ化もご苦労様です。最初に見た時はまたも盛大に文字化けしてたんで、ありゃりゃと思ったんですが、無事復旧したようで良かった。ついでにと言ってはなんですが、#10801～10900の過去ログも一部文字化け？が残ってしまっているので、もし可能でしたら修正していただけないでしょうか？　以下の左側の本来の字が右側の間違った字になってしまっています。もし修正が可能ならの話ですので、難しいのであれば結構です。よろしくお願いします。

○　×
名→吊
」→《
不→上
服→&#26378;
納→紊
植→&#26890;
倍→&#20490;


＞中国近代史ドラマ
　中国歴史ドラマの紹介、清末～中華民国期の近代史編です。近代史ドラマはやっぱり少ないですね。実在の人物を出すと今の中国だといろいろ差しさわりがありそうだし、また日本側の需要もあまりなさそうだもんなあ。

『龍票　清朝最後の豪商』（原題：龍票、2004年）
　道光帝末期から咸豊帝、さらに同治帝初期までの時代を舞台に、巨万の富を築いた山西商人の祁子俊という人物を主人公としたドラマ。商人の歴史ドラマというのは珍しい。祁子俊という人は実在の人物らしいんですが、あくまでモデルであってドラマ自体はフィクション。清朝皇族や太平天国なども登場するようです。主演はホアン・シャオミン。

『月に咲く花の如く』（原題：那年花開月正圓、2017年）
　光緒帝時代の1884年頃から義和団事件の頃までを舞台に、実在の女性商人・周瑩を主人公としたドラマ。こちらもあくまでモデルで、物語自体はフィクションの部分が多いようです。主演はスン・リー。

『西太后の紫禁城』（原題：日落紫禁城、1998年）
　光緒帝時代の西太后と架空の女官、光緒帝、珍妃らの群像を描くドラマ。西太后が悪人ではない人物像に描かれているようです。西太后役はスーチン・カオワーで、朱旭（チウ・シー）も出演。

『末代皇妃－紫禁城の落日－』（原題：末代皇妃、2004年）
　溥儀の側室（第２夫人）で、後に自ら溥儀と離婚した文繍を主人公としたドラマ。1924年の紫禁城退去で始まり、中盤ほどで離婚。その後も物語は続くんですが、かなりフィクション入りまくりのメロドラマみたいですね。皇后婉容はいじめ役で、川島芳子も悪役です。


#11052　
徹夜城（しばらくぶりに史点以外を更新した管理人） 2020/12/24 22:04
クリスマスプレゼント、ってのは大げさですが

　どうも、お久しぶりです。書き込むのはだいぶ久々。なんとなく書く機会を逸していたといいますか。
　本日付で「歴史映像名画座」を更新しました。今回は追加はあまりなくって、しかも最近見る機会を得た古いテレビドラマばかりが並んでしまいました。最近のものは今頃追加した「いだてん」、スペイン史劇「イザベル」だけ。
　今年はコロナのせいもあって映画館もろくにいきませんでしたし、録画だめしてる各国の歴史ドラマは回数が多くて見終えるまでまだまだかかる…という状況。
　バラージさんが書かれていたことにも通じますが、最近はどこの国でも一本の歴史映画よりは長時間のテレビシリーズを、という流れがあるようで、チェックする方も大変です。

　中国の歴史ドラマもいろいろですが、いまNHKでやってる「コウラン伝」のように、女主人公でやたら現代的感覚での大活躍、というものが増えてきてるような…これもあちこちの国で共通してる現象かな。「コウラン伝」の吹替で「呂不韋！」と呼び捨て乱発してるの、正直なところ聞いてて違和感が。ああ、日本の大河でも「秀吉！」とか呼び捨てにする女主人公がいたっけ。

＞太平記
　BSで再放送中の「太平記」も、たまに進行状況を調べてみると（太平記大全へのアクセス分析でわかります）、もう建武政権崩壊して南北朝状態に突入してますね。このあとが近年注目を集めた「観応の擾乱」であります。今思い返すとよくあのややこしい状況をそれなりに整理して映像化したものです。
　


#11051　
バラージ 2020/12/23 23:21
訂正その２

　すいません。康熙帝の第８皇子の名前は「胤[示異]（示偏に異）」です。


#11050　
バラージ 2020/12/23 23:09
訂正

　「ヘシェン」の漢字表記は和[王申]（王偏に申）、『紫禁城　華の嵐』の原題の最後の文字は「草冠に、真ん中部分は師の左側の右に辛、下が子」というえらく複雑な漢字です。


#11049　
バラージ 2020/12/23 22:57
中国ドラマの歴史……ってほどでもないけれど

　ついに放送が始まった『バビロン・ベルリン』シーズン３。今回はサイレントからトーキーに移り変わる頃のドイツ映画界で起きた女優殺人事件が描かれます。シーズン１＆２に比べるとミステリー色が強くなりましたが、相変わらず面白い。歴史ドラマ的には、いよいよ本格的にナチスが登場。そして冒頭で終盤のシーンを取り上げ、そこから物語をさかのぼるというのは１＆２といっしょで、その終盤のシーン、1929年の世界大恐慌に物語は向かっていくでしょう。いや～、楽しみ。


　先日、最近続々出始めた中国時代劇ドラマムックの１つを読んだら、中国時代劇ドラマの日本における受容史というか流行史──って言い方だと堅苦しいな。要するに最近の中国時代劇ドラマブームの流れが解説されてました。実は僕もそれについてはちょっと考えたことがあったんですよね。
　90年代までは放送される中国ドラマ（ほぼ史劇・時代劇）はあっても、あくまでそのドラマが単発で観られるというだけで、中国ドラマというジャンル自体がブームになることはありませんでした。最初に中国というか中華圏のドラマにブームをもたらしたのは、日本の少女マンガを原作とした00年代の台湾ドラマ『流星花園　～花より男子』（2001年）だったと記憶しています。日本では2003年に放送されたとのことで、その後日本の少女マンガを原作とした台湾ドラマが次々と日本でも放送やDVD化がされてました。一方で00年代には金庸原作をはじめとする武侠ドラマも続々と日本でもDVD化されます（主に中国ドラマですが、一部香港ドラマや台湾ドラマもあり）。このあたりが中国ドラマブームの走りと言えるでしょうか。これは１つには『グリーン・デスティニー』（2000年）に始まった武侠映画ブームの影響があり、もう１つは原作である金庸の武侠小説が90年代後半から続々と邦訳が出た影響があると思われます。
　しかし00年代はなんといっても『冬のソナタ』（2002年、日本放送2003年）、『宮廷女官チャングムの誓い』（2003年、日本放送2004年）で巻き起こった韓国ドラマの一大ブーム、いわゆる韓流ブームが圧倒的で（それに対して台湾ドラマは“華流（ふぁーりゅう）”と呼ばれた）、それに比べると武侠ドラマのファン層はやはり限定的なものでしたし、台湾ドラマも韓流ブームの影に隠れてしまったのは否めません。また女性人気が主だった台湾現代劇ドラマと、どちらかといえば中高年男性が主な視聴者だった武侠ドラマのファン層もほとんど重なっていなかったように思われます。
　10年代に入ると中国ドラマ『三国志 Three Kingdoms』（2010年、日本放送2011年）が登場。一躍、人気ドラマとなります。これについては上記ムックでは映画『レッドクリフ』２部作（2008～09年）の大ヒットの影響が指摘されてました。その影響もあってか、『水滸伝』『項羽と劉邦　king's war』などの中国史劇ドラマが後に続きますが、やはり視聴者層は主に中高年男性だった印象。
　そんな流れを変えたのが、タイムスリップ清朝後宮時代劇『宮廷女官　若曦』（2011年、日本放送2014年）。中国で爆発的ヒットとなった後、香港・台湾・韓国を席巻して日本にも上陸。無料BS放送だったこともあって、これまた大ヒットしたそうで、以前も書いた通り僕もこのドラマをきっかけにレンタルDVDコーナーに『宮廷の諍い女』『王の後宮』『二人の王女』『宮　パレス　～時をかける宮女～』『後宮の涙』などの似たような中国後宮ドラマがどっと増えてった記憶があるんですよね。
　この『宮廷女官　若曦』には、ラブ史劇・清朝後宮ドラマ・タイムスリップという後の流行となる要素が詰め込まれており、それまで中国時代劇に見向きもしなかった女性視聴者がどっと流れ込むという現象が日本でも本場中国でも起こったんだそうです。本作の大ヒットでタイムスリップ作品が乱立したこともあり、中国政府（だか役所だか）が「タイムスリップ禁止令」を出したため（なぜか中国政府はタイムスリップものに厳しい。共産主義的に問題でもあるんだろうか？・笑）前記３要素のうちタイムスリップだけは後続作品が少ないんですが、ラブ史劇は今では枚挙の暇がないほどですし、清朝後宮ドラマも『如懿伝　～紫禁城に散る宿命の王妃～』のような文芸大作から『瓔珞～紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃～』のような娯楽大作まで大量に作られてます。
　さらに画期となったのがネットドラマ『太子妃　狂想曲＜ラプソディ＞』（原題：太子妃昇職記、2015年、日本放送2017年）。これまたタイムスリップ後宮ドラマなんですが、タイムスリップする時代は架空の時代で、現代のプレイボーイ男性の心が女官の体に入り込んじゃうという『若曦』のパロディっぽい設定とのこと。ネット小説を原作に無名の新人を起用した、この低予算ネットドラマが中国の若者にバカウケにウケたとのことで、ここから若者、特に若い女性向けのイケメン＆美女ドラマが量産されることになったとか。この流れは現在まで加速しており、ジャンルも時代劇に限っても架空史劇やアクション時代劇、ファンタジー史劇、神仙ファンタジー、果てにはBLやらブロマンスとやらまで幅広く作られる一方で（その他にもちろん現代劇もある）、硬派な史劇ドラマやおっさん主演作は減少傾向にあるようです。
　また、ネット配信ドラマが増加中なのも特徴で、上記『太子妃　狂想曲』『瓔珞』もネットドラマ。日本での売り文句も「○億回再生」などというものが大半になってきました。これには若者のドラマ視聴環境というか視聴習慣の影響も大きいようで、ドラマにしろ映画にしろパソコンやスマホで視聴するのが主流になっているらしい。世界一有名な中国女優チャン・ツィイーがインタビューで、「最近の若者は私の映画を観たことがない」と嘆いていたという話が別の中国時代劇ドラマムックで紹介されてましたが、ジョウ・シュンやタン・ウェイ、台湾のチャン・チェン、そしてチャン・ツィイーといった映画界のビッグネームが近年テレビドラマに回帰または進出しているのも、そういった背景があるとのことです。そう考えると中国の芸能状況も日本や韓国に似てきたのかも。


＞清朝ドラマその３
　清の歴史ドラマ紹介最終回。雍正帝・乾隆帝・嘉慶帝の時代です。その前に、前回の康熙帝時代だったドラマを追加紹介。康熙帝自身は脇役でメインは皇子たち世代なんで勘違いしてました。

『宮廷女官　若曦』（原題：歩歩驚心、2011年）
　康熙帝の第８皇子・胤&#31145;の側室・若蘭の妹の若曦（架空人物）の心に、現代から張暁という女性がタイムスリップ。中身は張暁の若曦は、第８皇子と第４皇子・胤禛（後の雍正帝）に愛され２人の間で揺れ動くという三角関係ラブ史劇。やがて彼女は康熙帝の皇位継承者争い“九王奪嫡”に巻き込まれていきます。上に書いた通り、近年の中国史劇ドラマブームの先駆けとなったタイムスリップ清朝後宮時代劇で、主演はこれでスターの座に駆け上ったリウ・シーシー。
　ちなみに続編を作ろうとしたら、これまた上記の通り「タイムスリップ禁止令」が出たため、『続・宮廷女官　若曦　～輪廻の恋』（原題：歩歩驚情、2014年）は現代に帰ってきた主人公の張暁が、現代人に輪廻転生した康熙帝時代の人々と出会う現代劇ラブストーリーにしちゃったらしい。そのアイデアというかたくましさにはちょっと感心してしまいました。でもそっちはあんまりウケなかったみたい（笑）。

『宮　パレス　～時をかける宮女～』（原題：宮 または 宮鎖心玉、2011年）
『宮　パレス２　～恋におちた女官～』（原題：宮鎖珠簾、2012年）
　１作目の『宮　パレス』は『若曦』そっくりな設定のタイムスリップ・ラブ史劇。主人公女性がタイムスリップ（こちらは普通に身も心もタイムスリップ）するのが康熙帝の時代で、第８皇子・第４皇子（後の雍正帝）と三角関係になるところもいっしょなんですが、製作開始時期もほぼ同じなんでパクリとかではなく、あくまで偶然みたい。主演はやはりこれでスターとなったヤン・ミー。『若曦』が正統派ラブストーリーだとすれば、こちらは明るいラブコメといった感じでやはりヒットしたらしく、雍正帝時代を舞台とした続編『宮　パレス２』も主人公を別人に交代して作られました（恋の相手は雍正帝の第17皇子）。ただし「タイムスリップ禁止令」のため、そちらはタイムスリップものではないみたい。さらに第３作、映画版も作られたようですが、それらは日本未公開。

　ここからが本題。以前に感想を書いた『如懿伝　～紫禁城に散る宿命の王妃～』（原題：如懿伝、2017年）は省略しますが、いよいよ来年２月からBS11で放送開始とのことで無料BS初登場です。文芸大作といった赴きのドラマで、主演のジョウ・シュンはじめ演技派ぞろいで面白かったですよ。

『雍正王朝』（原題：雍正王朝、1999年）
　『康熙王朝』以前に作られた「王朝シリーズ」の１作目で、雍正帝の半生を描いた作品（『康熙王朝』はシリーズ第２作）。前半は康熙帝時代で、雍正帝が即位するのは中盤らしい。ちなみに雍正帝は香港映画では悪役まわりが多いんだそうで、僕が観た『空とぶギロチン』（原題：血滴子、1975年）でも恐怖の独裁者でした。

『宮廷の秘密～王者清風』（原題：王者清風、2013年）
　雍正帝時代が舞台で、第４皇子・弘暦（後の乾隆帝）が主人公のちょっとコミカルなところもある武侠＆ミステリー風味のドラマ。後継者争いが絡むお話のようですが、当然ながらほぼフィクションで、後半は乾隆帝が即位するようです。

『乾隆王朝』（原題：乾隆王朝、2003年）
　「王朝シリーズ」三部作の最終作。といっても１作ずつ別々の作品で、話がつながってるとかいうわけではないようです。乾隆帝晩年の佞臣・奸臣として知られるヘシェン（和&#29637;）がなぜか忠臣・名臣として描かれてるらしい。

　続いて金庸の武侠小説『書剣恩仇録』のドラマ化作品をまとめて紹介。乾隆帝漢人説を題材にした作品で、くわしい説明は映画板#1789の映画『清朝皇帝』二部作の感想をご覧になってください。

『レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター　書剣恩仇録』（原題：書剣恩仇録、2002年）……主演はチウ・マンチェク。日本版DVDはダイジェスト版で、原作の途中までしか描かれてないとのこと。
『書剣恩仇録』（原題：書剣恩仇録、2008年）……こちらは原作をかなり改変してるらしい。題材的に現実に配慮したか？　原作は香港の小説ですが、ドラマのほうは中国製ですからね……。

『還珠姫　～プリンセスのつくりかた～』（原題：還珠格格、1998年）
　乾隆帝の落胤姫と間違えられて宮中に入れられてしまった庶民の娘が巻き起こす大騒動を描いた台湾ドラマ。主演した中国女優ヴィッキー・チャオの出世作となった作品で、主人公と親友になる本物の姫を若き日のルビー・リン、その侍女をこれまた若き日のファン・ビンビンが演じています。もちろん全編ほぼフィクション。

『瓔珞～紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃～』（原題：延禧攻略、2018年）
　乾隆帝の側室・令懿皇貴妃（死後、息子の嘉慶帝即位により孝儀純皇后と追贈）を主人公とした後宮ドラマで、主人公の名前は魏瓔珞と設定されています。『如懿伝』とはそれぞれの主人公のキャラクター設定というか善悪が真逆なんですが、后妃となるとわかってる史実も少ないからどうとでも作れますもんね。配信ドラマとしてはかなりの高予算で、本国では予想外の大ヒットになったとのこと。解説なんかでは「やられたらやり返す半沢直樹的主人公」とか書かれてましたが（笑）、いじめられてもやり返す気の強いキャラというのが今の時代の女性にマッチしてるのかも。物語は主人公が皇貴妃になるところまでのようです。

『紫禁城　華の嵐』（原題：金枝慾&#23421;、2004年）
　珍しい嘉慶帝時代の後宮を舞台とした群像劇の香港ドラマ。いかにも後宮ドラマという感じのどろどろドラマっぽいですね。終盤は癸酉の変（天理教徒の乱）が描かれるらしい。

＞名画座修正情報
『蒼穹の昴』……キャストの張麗頴は「趙」麗頴の誤りです。


#11048　
バラージ 2020/12/11 00:44
訂正

　文字化けだらけになっちゃったなあ。書き込んでみないとわからないもので。
　『皇帝の恋　寂寞の庭に春暮れて』の原題は「寂寞空庭春欲晩」、『花散る宮廷の女たち　～愛と裏切りの生涯～』の主人公の名前は「年[女朱]（女偏に朱）媛」、康熙帝の皇太子の名前は「胤[示乃]（示偏に乃）」です。



#11047　
バラージ 2020/12/11 00:28
義満引退

　キートン山田さんが来年３月でアニメ『ちびまる子ちゃん』のナレーションを卒業し、声優業から引退するとのことで。キートンさんというと『ちびまる子ちゃん』もさることながら、個人的には子供の頃に観ていたアニメ『一休さん』の将軍足利義満役が印象深いですね。「一休どのぉ～！」という甲高いお声がいまだに耳に残っております。長い間、ご苦労様でした。


＞源氏将軍断絶後の足利氏は源氏の嫡流か？
　ちょっと前に『征夷大将軍研究の最前線』（日本史史料研究会・監修、関口崇史・編、洋泉社歴史新書ｙ）の話題を出したんで、もう１つ同書に書かれてる歴史研究の話を。
　確か最初に読んだ数年前にもちょこっと書いた記憶があるんですが、鈴木由美「足利将軍家誕生は、「源氏の嫡流」の復活だったのか？」という論文が興味深かったです。一般的に鎌倉幕府３代将軍・源実朝暗殺後は足利氏が「源氏の嫡流」として遇され、だからこそ尊氏は鎌倉幕府に反旗を翻して、やがて室町幕府を樹立したと言われています。また近年の研究では、鎌倉時代後期には、将軍は源氏であるべきだという「源氏将軍観の高揚」があり、源氏が将軍として担がれるのを防ぐために北条氏が足利氏を「源氏の嫡流」として抱え込んだとする説も唱えられているとのこと。
　それに対して鈴木氏は、実朝没後の鎌倉時代にはそもそも「源氏の嫡流」が存在せず、また鎌倉後期の「源氏将軍観の高揚」も起こっていなかったという説を唱えています。鎌倉時代の足利氏が「源氏の嫡流」だったという同時代史料は確認できず、その説が記されているのは戦国時代の『今川記』『今川家譜』とのこと。頼朝の時代には足利氏は御家人最上位である「門葉」（清和源氏一門）に位置付けられていましたが、あくまで将軍の家臣に過ぎず、また鎌倉後期の家格も北条氏庶流の赤橋氏や金沢氏に並ぶ高いものではあったものの、その位置付けは「源氏の嫡流」ではなく「御家人の中の名門」といったあたりが妥当としています。また鎌倉後期の「源氏将軍観の高揚」とされる現象については、そのほとんどが頼朝に関連付けられており、「源氏将軍観の高揚」ではなく「頼朝の権威上昇」が起こっていたと考えられるというのが鈴木氏の論旨でした。
　実は僕も以前から、源氏将軍断絶後の足利氏を「源氏の嫡流」とする見方には疑問を感じていたんですよね。源平合戦好きからすると、源氏将軍時代の足利氏はそこまで重く扱われてはいませんし、頼朝の子孫でもなく３～４代前の先祖が同じというだけで源氏将軍断絶後に「源氏の嫡流」として扱われるのか甚だ疑問だったんです。なので、この論考はまさに我が意を得たり。非常に納得のいくものでした。
　では足利氏が「源氏の嫡流」となったのはいつか？　鈴木氏は、尊氏ら足利氏宗家が自らの権力の正統性を武士社会で主張するために、「源氏嫡流工作」を行ったとする川合康氏の説を肯定的に引用しています。尊氏らは有名な祖父家時の置文（これ自体も事実とは考えられず創作と思われる）なども用いて自らが源義家の直系であることを主張し、また清和源氏の祖である源満仲をも自らの系譜に取り込んでいるとのこと。さらに宗教政策においても尊氏らは頼朝の先例を追い、自らを頼朝になぞらえることによって「源氏嫡流工作」を推し進めたという生駒哲郎氏の説が提示されています。その上で、それらの政策を「頼朝の家系を相対化した」とする川合氏に対して、鈴木氏はそうではなく鎌倉後期の「頼朝の権威上昇」に呼応したもので、尊氏が頼朝の後継者であることを主張するものだったとしています。
　尊氏の最終目標は征夷大将軍に就任することによって幕府＝武家政権を樹立することであり、それが尊氏が頼朝の後継者として「源氏の嫡流」になることだった。そしてそれが実朝暗殺以来119年ぶりの清和源氏の征夷大将軍＝「源氏の嫡流」の復活だったと結論づけています。


＞清朝ドラマその２
　清の歴史ドラマ紹介、今回は康熙帝の時代編。
　その前にまず新たにDVD化された隋（南北朝）ドラマを追記。

『独孤皇后　～乱世に咲く花～』（原題：独孤皇后、2019年）
　#11039で紹介した『独孤伽羅　～皇后の願い～』（#11039の紹介では２文字目が間違ってました。正しくは「孤」です）と同様に、隋の建国者・楊堅の妻で後に皇后となる独孤伽羅を主人公としたドラマ。『独孤伽羅』が２人の姉（北周の２代皇帝・明帝の后と、唐の初代皇帝・李淵の母）との三姉妹の愛憎劇を主軸としているのに対して、こちらは独孤伽羅と楊堅のラブ史劇といった側面が強いとのこと。

　さて、ここからが本題の康熙帝の時代のドラマ。

『皇帝の恋　寂寞の庭に春暮れて』（原題：寂寞空庭春欲&#26202;、2016年）
　康熙帝と良児（良妃）を主人公とした後宮ラブ史劇。原作がベストセラー小説らしい。良妃は実在の后妃ですが、内容的にはほとんどフィクションみたいです。康熙帝が若い頃の話で、冒頭でオーバイが粛清されるのが物語の始まりとのこと。

『龍珠伝　ラストプリンセス』（原題：龍珠伝奇、2017年）
　南明最後の皇帝・永暦帝の忘れ形見の公主が、清の都でお忍びで街に出ていた康熙帝と出会い、２人はお互いの正体を知らぬまま惹かれ合っていくというラブ史劇。主人公は架空人物なのでお話もほとんどフィクションのようですが、南明の滅亡が描かれるのは珍しいかな。

　続いて金庸の武侠小説『鹿鼎記』のドラマ化作品をまとめて紹介。『鹿鼎記』は『碧血剣』の続編的な作品で、金庸自身も歴史小説としての色彩が強いと書いているとのこと。主人公の韋小寶が機転と運で出世していく物語で、韋小寶は康熙帝の親友として清に仕えつつも同時に反清復明を企てる秘密結社・天地会の幹部にもなってしまうという調子のいいコミカルなお話らしい。オーバイ、陳近南（陳永華）、呉三桂・呉応熊父子、陳円円ら実在人物も登場し、順治帝や李自成も実は生きていた！と登場。原作ではロシア皇帝ピョートル１世の摂政王になる異母姉ソフィアやその部下ゴリーツィンも登場し、韋小寶はネルチンスク条約の締結にも関わるそうですが、映画やドラマでは尺や予算や検閲などの都合でカットされてるとのこと。映画化作品では香港映画『チャウ・シンチーのロイヤル・トランプ』（原題：鹿鼎記、1992年）、『チャウ・シンチーのロイヤル・トランプ２』（原題：鹿鼎記II　神龍教、1992年）が有名ですが、僕はそっちも未見。

『鹿鼎記』（原題：鹿鼎記、1984年）……若き日のトニー・レオンが韋小寶、アンディ・ラウが康熙帝を演じた香港ドラマ。
『鹿鼎記〈新版〉』（原題：鹿鼎記、2008年）……こちらは中国ドラマで、検閲でロシアのくだりがばっさりカットされたとのこと。
『鹿鼎記　ロイヤル・トランプ』（原題：鹿鼎記、2014年）……中国の最新版ドラマ。

『諍い女たちの後宮』（原題：深宮諜影、2011年）
　康熙帝の後宮に衣装の刺繍係として入った架空人物の宮女が、生みの母を殺した仇を探す宮廷ミステリー。しかし紛らわしい邦題だな（笑）。

『花散る宮廷の女たち　～愛と裏切りの生涯～』（原題：花落宮廷錯流年、2017年）
　年&#23005;媛（後の雍正帝の敦粛皇貴妃）と、康熙帝の皇太子・胤&#31037;、その弟の胤禛（後の雍正帝）による、例によって例のごとくの三角関係ラブ史劇。やはりほとんどフィクションの模様。

『宮廷の茗薇　～時をかける恋』（原題：夢回、2019年）
　康熙帝時代の後宮を舞台としたラブ史劇。正確にはタイムスリップものだけど、ついでに紹介しちゃおう。これまたベストセラー小説が原作とのことで、現代からタイムスリップした女性が康熙帝の第13皇子・胤祥と恋に落ちるらしい。
　しかしラブ史劇と武侠ドラマと宮廷ミステリーばっかりだなあ（笑）。


#11046　
バラージ 2020/12/02 23:36
草燃えるンデス

　わーい、いよいよ今週から『バビロン・ベルリン』SEASON３の放送開始だ～。

　『鎌倉殿の13人』の配役も第一次発表がされたってことで、今回は同じ時代を舞台にした昔の大河ドラマ『草燃える』の話。僕はリアルタイムでは観てなくて、90年代だったか00年代だったかにビデオで総集編を観ただけです。
　永井路子の長編小説『北条政子』、連作短編集『炎環』『絵巻』、史論エッセイ『つわものの賦』、歴史紀行『相模のもののふたち』という複数の作品が原作ですが、原作に登場しない架空人物（伊東祐之、茜、小夜菊など）が狂言回しになっているなど脚本の中島丈博によるオリジナル部分も強い作品。総集編は全５回のためダイジェスト感が薄く、それなりに楽しめました。ただ、やはり前記の重要な架空人物の劇中での動きがいまいちよくわからず、ずっと後になってからネットなどで調べて詳細を知った次第。
　源頼朝と北条政子夫妻が主人公ですが、伊豆に流罪となった頼朝が政子と出会うところからドラマが始まっていて、それ以前の頼朝の前半生は描かれておらず、また頼朝はドラマが５分の３ぐらい経ったところで死んで、以後は政子の単独主人公となるため、実質的には北条政子が主人公と言っていいでしょう。『利家とまつ』にしてもそうですが、夫婦主人公ものは初回から夫婦２人ともが登場しなければならないため、どうしても年上の夫の前半生は省略され、逆に夫の死後も妻の単独主人公で物語が続くため、実質的には妻はほうが主人公になってしまいます。まあ本作の場合は『新・平家物語』で頼朝の前半生は多少は描いてるということもあっただろうし、また頼朝の前半生から描くと子役・少年期役の時代が長くなってしまうという事情もあったでしょう（そこが頼朝を主人公にする難しさとも言える）。
　しかし動きの少ない政子だけでは物語を上手く動かせないと考えたか、はたまた中島の個人的な創作性か、弟の北条義時が大きくクローズアップされ第３の主人公のようになってしまいます。もともと原作の永井が義時をやたらと高く評価しており、作中でもそう描いているため、その反映なのかもしれません（永井が杉本苑子との対談で、義時が好きという共通点で盛り上がってるのを読んだこともある）。また、永井は「源実朝暗殺の黒幕は三浦義村説」を小説ばかりでなく史論エッセイでも唱えたことでも知られ、本作でも当然ながらその線でドラマが描かれてます。そのため義村もまた劇中ではかなりの策士として描かれてるんですが、義時はまだしも義村をそこまで高く評価するのは個人的には大いに疑問。僕には、義村は勝ち馬に乗るのが得意な、生き残りに長けただけの人物にしか思えないんですよね。
　もちろんそれまであった義時黒幕説を否定するなど当時としては新しい視点を持ち込み、あまり描かれない義経死後の鎌倉前期をドラマチックに描き出したのは大きな功績だとは思いますが、さすがに40年も前の作品なので今となっては歴史学的には描写が古いことも否めません。Wikipediaに載ってるあらすじを読んでも「あー、ここは今となっては歴史学的に否定されちゃってるところだな～。古いな～」というところが結構あります。そんなわけで『鎌倉殿の13人』にはそのような旧説を刷新した新しい物語を望みたいんですが、配役発表を見るとかなり『草燃える』色が強い感じがするんだよなあ。なんたって三浦義村役が山本耕史ですもんね。義時の盟友という設定のようですし、絶対重要キャラだよな。三谷幸喜が『草燃える』が好きであの時代をまたやりたいみたいな感じなんではなかろうか。でなきゃ北条義時を主人公になんて話になるわけないですし。そういや総集編からはわかりませんが永井は中島に「喜劇でやってほしい」と注文したらしく、ところどころ喜劇風な演出があるとかで、そういうところも三谷に通じるというか。うーん、なんか不安。
　あと『草燃える』は頼朝勢力＝鎌倉幕府の描写が大半で、平家や木曽義仲はあまり登場せず、奥州藤原氏にいたっては直接的には全く登場しません。『鎌倉殿～』は北条義時が主人公ですから、なおさら平家や義仲、奥州藤原氏とは関係が薄いはずだし、義時は合戦でほとんど活躍してないんだよなあ。後白河法皇なんかも義時とは特に関係性はないですしね。ま、個人的にはそれよりもヒロインどうすんだよと（笑）。小池栄子の北条政子や、宮沢りえの牧の方はこれ以上ないハマり役だと思うけど、単純に女優としては僕の好みとはちょっと違うと言いますか……。


＞未見映画
『パドマーワト　女神の誕生』……13世紀末の西インドの小国メーワール王国の妃パドマーワティを主人公にメーワール王ラタン・シンとデリー＝スルタン朝のアラーウッディーンの戦いを描いた16世紀の叙事詩『パドマーワト』を原作とした2018年のインド映画。劇中の描写をめぐって激しい抗議運動と賛否両論の大論争が起こったとのこと。
『マニカルニカ　ジャーンシーの女王』……19世紀インド大反乱（セポイの乱）の女性指導者ラクシュミー・バーイーを主人公とした2019年のインド映画。
『女王トミュリス　史上最強の戦士』……紀元前550年頃の中央アジアの遊牧民マッサゲタイ族の女王トミュリスを主人公に、アケメネス朝ペルシアのキュロス大王を破ったという戦いを描いた2019年のカザフスタン映画。
『ザ・グレイテスト・キング』……ローマ建国伝説「ロムルスとレムス」を映画化した2019年のイタリア・ベルギー合作映画。劇中の言語がラテン語だそうでびっくり。
『ウォリアー』……８世紀のフリースラント・フランク戦争で、フランク王国に支配される以前のフリースラントの独立を守った最後の王レッドボットを主人公とした2018年のオランダ映画。
『グラディウス　希望への奪還』……12世紀、新たに誕生したハールィチ・ヴォルイニ大公国のダヌィーロ・ロマーノヴィチを主人公としてモンゴル軍との戦いを描いた2018年のウクライナ映画。

＞清朝ドラマその１
　中国歴史ドラマの紹介、清の時代編。清が舞台のドラマはかなり多いんですよね。１つには日本の江戸時代と同じで時代劇的な作品が多いってこともありますが、もう１つは近年の中国史劇ドラマブームのきっかけとなった2011年のタイムスリップ清朝後宮時代劇『宮廷女官　若曦』の影響が考えられます。中国で爆発的ヒットとなった後、香港・台湾・韓国を席巻して日本にも上陸。無料BS放送だったこともあって、これまたかなりヒットしたそうで、僕もこのドラマをきっかけにレンタルDVDコーナーに似たような中国後宮ドラマがどっと増えてった記憶があるんですよね。そんなわけで清朝ドラマはやたら多いので何回かに分けてご紹介。今回はヌルハチからホンタイジ、順治帝の時代まで。

『孤高の皇妃』（原題：独歩天下、2017年）
　ヌルハチ後期からホンタイジ前期の時代を舞台としたラブ史劇。女真族一の美女と称えられ７回の結婚を経験する波乱の人生を歩んだというトンガ（別名：ブシヤマラ）という女性が主人公ですが、調べるとドラマではホンタイジの側室のハルジョルという女性と同一人物に設定されているようです。さらにドラマではトンガのことを知ったスランプ中の女性作家が、トンガが主人公の小説を書くところから始まり、その小説の内容がドラマとして画面に映し出されるという設定らしく、さらにはこの小説家が主人公に自分自身を投影して執筆してるとのことで、このあたりは上記のトンデモ設定をはじめとする史実無視っぷりを、「これはあくまで劇中の小説家の創作ですから」という言い訳にする検閲向けの対策なんだろうか？（笑）

『碧血剣』（原題：碧血剣、2007年）
　有名な武侠小説家・金庸の武侠小説のドラマ化。原作は実在の明末期の名将・袁崇煥の遺児・袁承志という架空の人物が主人公で、基本的にはフィクションの物語ですが、崇禎帝、李自成、ホンタイジ、ドルゴンなど実在の人物が登場し、金庸の小説の中ではかなり史実をベースにしている割合が強いとのこと。

『大清風雲』（原題：大清風雲、2005年）
　かつては愛し合っていた大玉児（ホンタイジの孝荘文皇后）と摂政王ドルゴンが、順治帝の治世をめぐって争う宮廷闘争劇。大玉児が順治帝を産むところからドルゴンが死ぬあたりまでの話のようで、ラブ史劇流行前のドラマですが結構史実をいじっており、特に終盤は超展開らしい。大玉児役がシュイ・チンで、ドルゴン役がチャン・フォンイー。ホンタイジ役がなんと珍しくテレビドラマに出演したチアン・ウェンで、ちょうどこの頃は『鬼が来た！』をカンヌに無断出品したという理由で監督業を禁止されてたからかなあ？　まあ序盤で退場しちゃうようですが。

『宮廷の泪・山河の恋』（原題：山河恋・美人無涙、2012年）
　ユアル（玉児）、ホンタイジ、ドルゴンの三角関係を題材として、上記『大清風雲』より大幅に若い美男美女で作り直しちゃったラブ史劇。こちらはヌルハチの死から康熙帝の即位まで描いてるらしい。予告編を観ると合戦シーンもちょっとはあるようです。

『皇后の記』（原題：大玉兒伝奇、2015年）
　三たび作られたユアル（玉児）、ホンタイジ、ドルゴンの三角関係ラブ史劇。あるいは日本に輸入されてないだけで、このネタのドラマはもっと作られてるのかも。性格設定や人物関係を変えれば、また赴きの違うドラマにできますしね。ユアル役はジャッキーの『ポリス・ストーリー　レジェンド』やチャン・イーモウの『グレート・ウォール』で売れっ子となったジン・ティエン。時代はヌルハチの死から順治帝の時代まで。やはり予告編を観ると合戦シーンやアクションシーンもそこそこあるエンターテイメント史劇みたいです。

『王家の愛　侍女と王子たち』（原題：蘇茉兒伝奇、2018年）
　ブムブタイ（孝荘文皇后）の侍女スマラとドルゴンが主人公のラブ史劇。スマラという人は史実では生涯独身だったようで、ドルゴンとも特に関係はないみたいですが、あまりよくわからない人物のためか、ドラマではドルゴンとくっつけて自由にお話を作っちゃったようですね。そこにブムブタイやホンタイジも絡めてなんやかんやというラブストーリーみたい。

『皇貴妃の宮廷』（原題：多情江山、2015年）
　順治帝と漢民族出身の女性で初めて側室に迎えられた董小苑（孝献皇后董鄂妃）を主人公としたラブ史劇後宮ドラマ。しかしラブ史劇ばっかりだな（笑）。地味な順治帝主人公ってのは珍しいですが。出演俳優も地味というかパッとしない感じですが、そんな中で目を引くのは皇太后（孝荘文皇后）役のアニタ・ユンと洪承疇役のアレックス・マンというかつての香港映画スターたち。しかしアニタ・ユンはすっかりおばさんになっちゃったし、アレックス・マンはでっぷりと太っちゃったなあ……。


#11045　
ひで 2020/11/23 21:48
来年より再来年で盛り上がるのもどうかと思いましたが、まあいいか。

お久しぶりです。

再来年大河のキャスト第1弾、時代考証と風俗考証の発表がありましたが、あくまで再来年なんですよね、これ。まだまだ先は長いので、何事もない事を願うのみです。人生、一寸先は闇といいますし、いや、まあ、今の大河のようなアクシデントに見舞われると色々大変だろうと思うので。

個人的には今回の発表から外れた後鳥羽上皇は誰がやるんだろうとか、後白河法皇は誰が演じるのだろうかとか、そっちの方も気になりますね。

https://historia334.web.fc2.com/
#11044　
バラージ 2020/11/21 00:05
『スパイの妻』

　『スパイの妻＜劇場版＞』という映画を観ました。６月にNHK-BS8Kで放送されたドラマ『スパイの妻』をスクリーンサイズや色調を新たにした劇場版として公開したものだそうです。僕は8Kを観れないんでドラマのほうは未見で、これが初観賞でした。
　太平洋戦争開戦前夜の日本を舞台とした黒沢清監督の映画で、舞台は1940年の神戸。主人公の夫は貿易会社を営んでいるが、貿易相手のイギリス人が憲兵隊にスパイ容疑で一時拘束されるなど、主人公の幼なじみである憲兵隊長からもマークされる存在となっている。そんな中、夫は買い付けに渡った満州から帰国した際に、ある女をひそかに連れ帰っていた。やがて夫婦はその女がもたらした国家機密を国際政治の場で訴えるため、命がけで国外に脱出することを決意する……というストーリー。
　いやぁ～、すごい映画でした。これが歴史もの初挑戦という黒沢監督、結構すごいところまで踏み込みましたね。ある意味タイムリーというか、これは必見です。まさかあのネタを取り上げるとは。日本映画では初めてなんじゃないでしょうか。公式サイトやパンフのストーリーでもおそらくはあえて全然触れてなかったんで、予想外の驚きでした。うーん、ネタバレになっちゃうんで具体的に書けないのがもどかしい（笑）。ストーリー展開も、特にラストは「やられた！」という感じで、とても面白かったです。
　そして役者陣も素晴らしい。主演の蒼井優も夫役の高橋一生も本当に演技が上手いんですが、それ以上に主人公の幼なじみの憲兵隊長を演じる東出昌大がまさにハマり役という好演。『寄生獣』の時といい、悪役がハマる俳優なのかもしれません。まあ、この人もいろいろありましたが、おそらくはそれ以前に撮影された映画に現在出まくり状態になってますね。黒沢監督の『散歩する侵略者』にも出てた若手女優の恒松祐里ちゃんも脇役でまた出てて、一服の清涼剤でした。
　あくまでフィクションの映画で、登場人物は全員架空の人物なんで史実を描いた映画ではないんですが、まさに「あの時代を描いた映画」と言っていいでしょう。とにかくこれはおすすめ。傑作です。


＞史点
　「涙目の欧州」の元ネタがわかりません（笑）。
　ムハンマド風刺画問題については、僕はやはりフランス側のやり方に問題を感じてしまいます。表現の自由が大事というはわかるし、「侮辱する権利」というのもわからないではないんですが、その一方で他者が人生において最も大切にしているものを貶めるという行為がどういうことかを根本的にわかっていないのでは？とも思わざるを得ません。イスラムというものに対する根本的な無理解も感じてしまいます。
　ドナルド・トランプのことは最初の大統領選立候補以前から僕は知ってました。といっても大富豪として名前を聞いたことがあるという程度でしたが、名前がちょっと変わってることもあって印象に残ってたんだと思います。トランプについては前回も書きましたがご本人もさることながら、思いのほか非常に広範に存在している、彼を&#8212;&#8212;もしくはトランプ的存在を&#8212;&#8212;支持する人々の存在がそれ以上に重要だろうと思います。米国だけでなく世界的な現象と言えますが、そういう人々の存在を無視したり軽視したりしてはいけないだろうと思いますし、それをどうしていくかというのは非常に難しい問題だなと思います。

＞『鎌倉殿の13人』
　再来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の主要キャストが続々発表されてますが、ちょっと気になったのは最初に発表されているキャストの中にヒロイン役と目される女性がいないこと。主人公の北条義時の妻妾が含まれていませんし、妻妾でなくてもヒロインになりうる女性がいません。発表されてるのは姉妹と継母と姪という近親者だけなんですよね。普通、ヒロインは最初から発表されるような気がするんですが、過去の大河でも発表されない例ってありましたっけ？　義時の妻妾については#10733でも触れましたがどうなるんだろ？　それにしても全体的にキャストが地味というかマニアックというか知らない俳優が多すぎるんだよなあ。
　それと『鎌倉殿の13人』っていうタイトルは、発表された時から予想してた通り２代将軍源頼家の時代の13人の合議制が元ネタでしたが、これって頼家時代の一時期だけで義時の長い人生の中で特別に重要なことでもないんだよな。なんか言葉の面白さだけで付けられたタイトルのような……。そして予想以上に『草燃える』色が強いのもどうも。義時役だった松平健が今度は清盛役だし、三浦義村に山本耕史を持ってくるあたりが……。三谷が『草燃える』が好きだったんだろうなあ。僕は永井路子の人物評価にいまいち同意できなかったんで、また違う切り口にしてほしかったんですよねえ。うーん……。

＞「明智たまだよ。」
　すっかり観なくなった『麒麟がくる』ですが、光秀の娘たま役で芦田愛菜ちゃんが出るというニュースを見て頭に浮かんじゃったダジャレをどこかに吐き出さずにはいられんかった（笑）。『天地人』以来の大河出演となる加藤清史郎くんも誠仁親王役とのことで、子供店長から青年親王へと成長ですな。

＞元明ドラマ
　中国歴史ドラマの紹介、今回は元～明の時代。わりとメジャーな時代のわりに歴史ドラマはあまり多くありません。時代劇なんかは結構あるんですが。前回書いた『大明皇妃　-Empress of the Ming-』（原題：大明風華、2019年）については割愛。

『チンギス・ハーン』（原題：成吉思汗、2004年）
　中国史というよりモンゴル史のドラマなんですが、歴史の流れ的に紹介しておきます。チンギス・ハーンの生涯を描いた中国ドラマで、時間の関係上モンゴル統一で終わってしまうことがほとんどの映画と違って、チンギス・ハーンの死までがしっかりと描かれているようです。金やホラズムもちゃんと登場しますが、尺の都合か西夏との戦いだけはばっさりカットされたみたい。主演は大河ドラマ『北条時宗』でフビライ役を演じたバーサンジャブ。

『フビライ・ハン』（原題：忽必烈伝奇、2013年）
　こちらはチンギス・ハンの死から始まり、オゴデイ、グユク、モンケの歴代ハンに、ジュチ、バトゥ、チャガタイ、フレグとオールスター総出演。しかしどういうわけか金や南宋などがほとんど登場せず、モンゴル帝国の内部抗争ばかりが描かれるドラマのようで、しかもフビライがアリクブカを倒したところで終わってしまい、元の建国とかはナレーションで済まされちゃうようです。その後の日本をはじめとする諸外国への侵攻は、フビライ自身が出陣したわけではないのでドラマ的に面白くないってのと、周辺国への現実的配慮からカットされたのかも。

『織姫の祈り』（原題：天涯織女、2010年）
　黄道婆という宋末～元初の実在の女性紡績家をモデルとした黄巧兒という女性が主人公の市井を舞台とした時代劇。主人公がババアじゃいかんということか、台湾女優チャン・チュンニンが演じるうら若き乙女に変身してしまいました（笑）。南宋が元に滅ぼされる時代が舞台ですが、登場する実在人物は他には南宋末期の皇帝度宗くらいのようで、ほぼ全編フィクションではあるものの、扱ってる時代が珍しいのでご紹介。確か日本に輸入された当初は中国版『チャングムの誓い』と紹介されてたような。

『王朝の謀略　周新と10の怪事件』（原題：大明按察使之鉄血断案、2014年）
　洪武帝から永楽帝の時代の実在の監察官・周新を主人公としたミステリーで、劇中に登場する事件や主要人物もすべて実際に起こった出来事・実在の人物がもとになっているとのこと。永楽帝もちょっと登場するようです。

『永楽英雄伝』（原題：永楽英雄兒女、2004年）
　全編フィクションの武侠ドラマですがついでに紹介してしまおう。主人公は架空人物、ヒロインが永楽帝の娘の蛮公主というこれまた架空人物で、永楽帝も登場。建文帝の残党が悪役のようです。

『女医明妃伝　～雪の日の誓い～』（原題：女医・明妃伝、2016年）
　明の時代の実在の女医で中国四大女医の１人と言われる談允賢をモデルとした譚允賢という女性が主人公で、７代皇帝景泰帝の杭皇后と同一人物に設定されています。允賢は６代＆８代皇帝正統帝（天順帝）と景泰帝の兄弟両方から愛され三角関係となるばかりか、オイラトのエセン・ハーンにも愛されちゃうというモテモテっぷり。主演は日本における中国後宮ドラマブームの火付け役となった『宮廷女官　若曦』で主演だったリウ・シーシー。正統帝役にウォレス・フォ、景泰帝役にホアン・シュエンとなかなか豪華なキャストです。これも中国版『チャングムの誓い』と言われてたみたいですね。

『王の後宮』（原題：后宮、2011年）
　９代皇帝成化帝の寵妃・万貴妃が支配する後宮で正義を貫こうとする架空の女官を主人公とした後宮闘争劇。やはりほとんどフィクションのお話のようです。『宮廷女官　若曦』に続いて次々にリリースされた中国後宮ドラマの１本。

『大明王朝　～嘉靖帝と海瑞～』（原題：大明王朝1566、2007年）
　12代皇帝嘉靖帝の晩年を舞台に、政務を省みない嘉靖帝に諫言する海瑞を主人公とした重厚系ドラマ。いかにも歴史ドラマって感じで、今になってみると中国史劇ドラマでも一昔前の作品という感じ。


#11043　
バラージ 2020/11/08 17:41
Dr.トランプ　アバレちゃん

　すいません、一つ前のは削除してください。

　ちょっとごぶさたでした。いや～最近歴史ネタがなかなか無かったもんで。個人的に「時代劇もう飽きたーっ！　現代劇観てぇーっ！」っていうフェイズに入っちゃってまして。長い中国時代劇を去年から『麗王別姫』『如懿伝』『三国志　SECRET of THREE KINGDOMS』にファンタジーものの『海上牧雲記』と観てきて、さすがにもうお腹いっぱいです。今観てる連ドラも何本かありますが、歴史ものは『バビロン・ベルリン』の再放送だけ。これにしたって20世紀初頭だからいわゆる“時代劇”ではないしな。
　それにしてもタイトルですが、４年前に思い付いたけど使う機会を逃していたこのダジャレを、４年後に使うことになろうとは思わなんだ（笑）。ただ、予想以上の善戦ぶりを見ても明らかな通り、トランプさんが去ってもトランプ的なものは確実に残るわけで、世界的にも難しい時代は続いていくんでしょうね。

　そんなわけで数少ない歴史ネタとして、前に妹が観てると書いた中国ドラマ『大明皇妃　Empress of the Ming』の話を少々。僕も時々隣で観てたんで、あくまでもその範囲での感想です。
　明の５代宣徳帝の２人目の皇后である孫皇后をモデルとした孫若微という女性が主人公で、映画『ラスト、コーション』で有名なタン・ウェイが10年ぶりにテレビドラマ出演……というのが売りのはずなんですが、主演のタン・ウェイがなぜかさっぱり出てきません。永楽帝やその息子の皇太子（宣徳帝の父。後の洪煕帝）を含めた三兄弟や宣徳帝といった男たちのなんやかやばっかりが描かれ、肝心の主人公がほとんど出てこないという変なドラマになっちゃってます。そりゃ主人公の史実があんまりないのはわかるけど、そこをなんとかするのがドラマなのでは？　まあ、永楽帝の時代を描いたドラマはあまりないから歴史ファン的には貴重かもしれませんが、かといって重厚な歴史ドラマでも文芸ドラマでもなく、かなり俗っぽい娯楽ドラマで演出も美術も考証もチープなんだよなあ。妹もあんまり面白くなかったのか、途中から惰性で観てると言い始め、宣徳帝が死んだところで観るのをやめてしまいました。その後はダメ息子の正統帝の時代となり、土木の変も描かれるようですが、僕も全く興味がわきません。

＞五代宋ドラマ
　隋唐ドラマを列挙したんで、他の時代の中国史ドラマについても列挙してみようかな。順番的に隋唐の次の時代の五代～宋を舞台とした歴史ドラマをご紹介……といきたいところなんですが、パッとしない時代のせいか五代～宋を舞台とした歴史ドラマってほとんどないんですよね。遼や西夏や金を舞台とした歴史ドラマもありません。せいぜい実在人物が登場する時代劇的作品があるくらいでして（『水滸伝』なんかもその１つ）。とりあえずその手のドラマを紹介していきたいと思います。
　その前に、前回の隋唐ドラマの時に割愛した『武則天　秘史』についてもちょこっと書いておこうかな。

『武則天　秘史』（原題：武則天秘史、2011年）……全50話で武則天役が３人も変わるのに、武則天が皇帝になったところで終わっちゃうドラマ。若い頃役の女優はよく知らない人ですが、中年期はリウ・シャオチン、老年期はスーチン・ガオワーというベテラン女優が演じています。でもこの２人、そんなに歳は変わらないはずなんだよな。

　さて、ここから五代宋ドラマ。

『晩媚と影　～紅きロマンス～』（原題：媚者無疆、2018年）……女たちによる暗殺組織の刺客となった女性・晩媚と、その護衛役“影”の、禁じられた恋と戦いを描いたラブアクション時代劇。五代十国初期が舞台で、のちの後唐初代皇帝李存勗と２代皇帝李嗣源が出てくるようですが、なにしろ時代劇なんで設定が史実とはだいぶ変えられているようです。しかしそんなことより、なんで刺客に護衛が必要なんだとそっちのほうが気になる……。

『傾城の皇妃　～乱世を駆ける愛と野望～』（原題：傾世皇妃、2011年）……五代十国後期を舞台としたラブ史劇ですが、登場人物のほとんどが架空人物の上、国同士の地理的位置関係も史実とは異なり、限りなく架空史劇に近いと言っていいかと。まあ映画『王妃の紋章』や『女帝　エンペラー』もそうだったしなあ。一応、趙匡胤なんかもちょっと出てくるようなんでご紹介。

　続いて楊家将ドラマを３本ほど。『楊家将演義』は、北宋初期に北漢から降った実在の武将・楊業とその息子の楊延昭らが、遼との戦いで活躍するも奸臣に陥れられる悲劇を描いた古典物語とのこと。『水滸伝』の後半みたいなもんでしょうか。どっちも読んだことないけど（笑）。敵ボスの遼の蕭銀宗は、歴史映像名画座に収録されている映画『大遼太后』の主人公の蕭太后らしい。

『楊家将』（原題：楊家将、1985年）……こんな古い香港ドラマがなんで日本でDVD化されたかというと若い頃のアンディ・ラウやトニー・レオンが出てるから。原典を大幅に改変し、過剰に神仙色の強い『封神演義』みたいなドラマになっているようです。

『楊家将』（原題：楊家将、1991年）……こちらは中国ドラマで比較的原典に忠実とのこと。もちろん現代人の感覚に合うように改変はされてるようですが。1997年にNHK-BSで放送されたことがあるらしいけど全く記憶にないなあ。

『楊家将伝記　兄弟たちの乱世』（原題：少年楊家将、2007年）……初代楊業の時代にしぼった楊家将ドラマで、原題＆邦題の通り息子たちに焦点が当てられた、若手イケメン俳優を集めたドラマのようです。

　続いて名裁判官・包拯もの。包拯は北宋前期に実在した政治家ですが、名裁判官として活躍したという民間説話があり、非常に有名なんだそうです。大岡越前みたいなもんでしょうか。

『七侠五義』（原題：七侠五義　人間道、2011年）……清の時代に作られた通俗小説『三侠五義』を少し後の時代に改変したのが『七侠五義』で、三侠（七侠）というのは包拯の手足となって活躍する侠客たちとのこと。それを元にしたドラマのようです。

『開封府　～北宋を包む青い天～』（原題：開封府傳奇、2017年）……こちらも包拯ものですが、３代皇帝真宗から４代皇帝仁宗時代の後宮を舞台とした陰謀ミステリーものの赴きのようです。

　これより後の時代だと北宋末期を舞台とした有名な『水滸伝』ものがありますが、日本で観れるのは名画座に収録されているものでほぼ全てのようです。南宋のドラマもやはり名画座に収録されている『岳飛伝』くらい。南宋末期のドラマはあるんですが、年代順に並べると元のドラマより後の時代になるので次回以降まわしになります。

＞徳川家と新田氏
　『征夷大将軍研究の最前線』（日本史史料研究会・監修、関口崇史・編、洋泉社歴史新書ｙ）所収の、生駒哲郎「徳川将軍家に振り回された「新田義貞の子孫」たち」「江戸期の歴史書『日本外史』が語る征夷大将軍像」によると、家康もしくは徳川家は征夷大将軍の先例を源頼朝に求める一方で、足利将軍家については否定するという歴史観を持っていたようです。
　清和源氏の頼朝が征夷大将軍となり、その後しばらくして清和源氏の系統は足利氏と新田氏に分かれ、両者に武門としての優劣はないが聖運によって足利氏が天下を治めることになった。その足利氏が滅んだので、今度は新田氏の家康が天下を治める順番だという論理で徳川家の天下の正統性が語られていたとのこと。徳川家の征夷大将軍は足利氏の継承ではなく否定の上に成り立っているのであって、これが江戸時代における南朝正統論につながっていくのは当然の帰結だったのでしょう。
　幕末には尊皇思想の高まりからさらに南朝が称揚されますが、南朝忠臣であると同時に徳川家の先祖ともされる新田義貞の人気や評価は微妙なところがあり、徳川家が倒された明治以降も南朝忠臣として楠木正成ばかりが人気となるのもその影響が一因ではないかとも言及されてましたね。

＞未見映画
『ソード・オブ・アサシン』……15世紀ベトナムの後黎朝大越を舞台としたベトナムのアクション時代劇映画。幼少の３代皇帝黎仁宗を母の宣慈太后が後見していた時代の物語で、宣慈太后に殺された一族の生き残りが太后への復讐のために戦うストーリーらしい。

＞名画座修正情報
『奇皇后　～二つの愛・涙の誓い～』……『奇皇后　～ふたつの愛　涙の誓い～』が正確な邦題のようです。


#11041　
ろんた 2020/11/03 21:14
愚者の知恵は後から回る

　え～～っ、なんとか『太平記』を読み終わりました。もう何年かかってんだ、って話なんですが、読み終えて思うのは、やっぱり楠木正成って「スタア」だな、ってことでして。退場すると読む速度が落ちる落ちる(笑)。そして塩冶判官とか観応の擾乱の辺りを過ぎるとさらにスピードは落ちるのでありました。
　で、読んだのが岩波文庫版なんで解説が各分冊50ページぐらいある。六分冊なんで全部で300ページ。まるまる一冊解説です。そのうち、第六分冊の太平記の影響に関する解説がためになりました。知らないわけじゃなかったのに、それが有機的に結びついていなかった。江戸時代への影響として……

(１)徳川家康、新田氏の末裔を自称
(２)徳川光圀の「南朝正閏論」
(３)藤田幽谷らの「正名論」「尊王攘夷論」
(４)吉田松陰の草莽崛起論

……の四つがおおざっぱに挙げられているのですが、自分では(１)と(２)の間に断絶があるように考えていたのです。つまり、祖父さんが幕府を盤石のものしようと頑張ったのに、不良少年の孫が伯夷・叔斉の話に感激して意識高い系に回心、修史に手をつけて祖父さんの事業を瓦解させた……みたいに。しかし徳川家が新田氏の末裔ということは、光圀の「南朝正閏論」は幕藩体制の補強になっている。実は断絶があるのが(２)と(３)の間。体制を補完していた光圀の思想を、幽谷らは上司を彰考館から追い出して革命思想に転換する。さらに吉田松陰への楠木正成の影響。確かに楠木正成ってなんだか判らない人で、それが天皇と直接結びついているのだから「草莽崛起」の先駆者。そして日本型ネーションステートの構想が誕生、明治維新の思想的バックボーンが出来上がる。と考えてくると、慶喜が鳥羽伏見の戦いで大坂城から逃げちゃったのも理解できるようなできないような……。とりあえず、自分の頭の悪さが情けない(汗)。

＞「コウラン伝　始皇帝の母」
　ＢＳＰで日曜日に放送している華流時代劇。なぜかシネスコサイズ。思いっきりネタバレなサブタイは、「コウラン伝」だけでは何のことか判らないという配慮でしょう。それも道理で、始皇帝の母＝趙姫に「コウラン」という名をドラマが勝手につけている。しかも李氏なので「リ・コウラン」(笑)。このコウランがなぜか強烈な近代的自我の持ち主で、トラブルを招き寄せる。さらに脂っこいキャラが多いうえに、王道パターンをこれでもかとばかりにぶち込んでくるので、もう突っ込みが間に合わないぐらいの怒涛の展開が続きます。主人公が毎回殺されかけるドラマって珍しくないですか？(笑)
　本作のプロデューサーさん、なんでも中華文化圏では＜吉川英治＋司馬遼太郎＋山田風太郎＞な大作家の代表作を、いいようにやらかして大炎上したという「前科」があるらしいですが、「コウラン伝」は原作もないし史料もろくにないのでやりたい放題。一応、秦と六国の関係とか、主人公三人が力を合わせて秦を乗っ取り趙を潰す、という方向性は維持されている模様ですけど。「奇貨居くべし」もやってたし。ただ、後半どうすんだろ。
　ちょっと気になったのは貴人への呼びかけ。吹き替えの問題かわかりやすさ優先か、「陛下」「殿下」じゃなくて「王様」「王子」「王女」と呼んでいる。ちゃんと考証してるのなら御免なさいですが、「王様」って連呼されるとおとぎ話感が出てしまう。そしてなんか笑っちゃうのは(華流時代劇に共通しているけど)、官僚たちが声を揃えて「王様万歳、万歳、万々歳」とか声を揃えて言祝ぐところ。誰か「キュー」出しているのか？　多分様式化していてあちらの人は何とも思わないんだろうな。
　あと、本来は62回なのにＢＳＰでは全34回になっているので、「第一部完」的に中休みするのでしょうか。

＞『新九郎、奔る！』(５)
　３集までが応仁の乱編というか少年時代編。それ以降は青春編。思いもかけず嫡子になり、父の名代で荏原に出張。領地経営に関わるが、父の代の諸問題が降りかかって来る羽目に。こういうのをじっくり描いた作品ってあったでしょうか。ちょっと思いつかない。これが(中世)武士のリアルってヤツなんだなぁ。そして今回は「落馬」する人が多数。笑ったのは、正体を見せ始めた兵庫助(新伊勢守)に背を向けて(だいぶ悪くなって参られた……)と舌を出す新右衛門さん。引きは荏原で三すくみになっていた勢力のうち二つが激突(？)。新九郎は仲裁に入って名を挙げるのか？　そして、金欠問題もストーリーに取り込まれる模様。さらに恋(？)の行方は？　６集を鶴首して待て！

＞「隋唐演義」
　週に四本放送されているので、油断するとすぐ溜まってしまう。やっと楊広即位までを確認。しかし、「力が強い分、頭が弱い」キャラがやたらと出てきて──役人とトラブルを起こす＞主人公が窮地に陥る＞役人の上司が親類でした──というパターンが繰り返され、いささか食傷気味。原作通りだったら確かに文学性は低い。もう『水滸伝』をパクってしまえ！(笑)　客を食材にしちゃう居酒屋を出せ!!　ナチュラルボーンキラーなマサカリ使いを出せ!!　毒婦な兄嫁を解体しちゃう弟を出せ!!
　宿題(？)の李淵の息子は、夭折した玄覇(史実では三男)をモデルにした元霸(ドラマでは四男)。実はオープニングにも登場していて、この時代を扱った「演義」にはお馴染みの登場人物らしい。だけど、頭脳明晰とされた玄覇と正反対に、こいつも「力が強い分、頭が弱い」キャラなのでありました。もう勘弁してくれ。

＞『風雲児たち』一気読み
　先日、ふと気がつくと長いこと『風雲児たち』を買ってないことに気づきまして……。いや、なかなか見かけないんですよ。で、調べてみたら何と未読が10冊。こうなると密林で買うしかないか……でも、なんか悔しい(＜あまのじゃく)……ということで「e-hon」で購入。トーハンがやってるサービスで、書店受け取りにしとくと送料がかからないうえに書店の売り上げになるみたい。ただし受注は10冊まで。んで「うわっ、寺田屋事件大迫力」「岩倉具視を大物として描いてるの面白いな」とか時期外れなことを呟いていたわけです。
　そしたら150回記念のインタビュー記事が掲載されてました。田沼意次は悪役にするつもりだった、というのは驚き。もう当時は、開明的な重商主義者で蘭学の保護者、というイメージが定着していたと思うんだけど。まっ、相変わらず時代劇では、柳沢吉保、鳥居耀蔵と並ぶ三悪人ではありましたが。それから、蝦夷地をめぐる幕府とロシアの交渉を描くべきだった、産業革命の意義を強調するためにもナポレオン伝をやるべきだった、とか言い出してる。「爆走」への後悔ですけど、「ナポレオン伝は単行本一巻を使って……」って、そんなの絶対一巻で収まるはずないって(笑)。もっとも、無かったことになってる『雲竜奔馬』が五巻もあるんで、結果的には「爆走」しなくてもよかったんだよなぁ。
　先の話では竜馬暗殺の話をしています。身内(薩摩？)に殺された説を採用するようですが、よくある「大政奉還に怒った討幕派の犯行」ではなく、「竜馬が本当にやりたかったこと」が漏れて殺されたという展開を考えているよう。何となく、横井小楠の暗殺とかぶるような気がします。


#11040　
徹夜城（久々に執筆するとリハビリが必要だった管理人） 2020/10/13 23:14
南北朝ネタはちらちらと

　どうも、また少しご無沙汰です。どうにか今日付で「史点」を二か月ぶりに更新しました。おかげで首相交代もふくめてスパンの長い話題が目につきます。アルメニアとアゼルバイジャンの紛争は書いてる間にも状況が変転、しつつなかなか終わりません。
　日本学術会議の件もいろいろ書きました。バラージさん同様のことも書いてますね。昭和初期と違う点も多々あるのですが、やはり余裕がなくなってくると似たような動きが出てくるってことでしょうかねぇ。国立大の文学部廃止論なんてのも最近出てますが、それって東条英機内閣でやったことですし。


＞南北朝ネタ
　少ない、少ないと思いつつ、最近はひところより多いんじゃないかな、と思う南北朝ネタテレビ番組。今日になって気づきましたが、Eテレの「知恵泉（ちえいず）」で今回と次回、後醍醐天皇が取り上げられてます。
　最近この番組では足利義満をとりあげましたが、ゲストに元AKBの人とか呼んで無理やり結び付けて正直面白くなく、後半は見なかったんですよね。今回は漫画家のヤマザキマリさんがゲストで、ローマ史の話題に絡めたり、後醍醐の無礼講の話からベルルスコーニの乱痴気パーティーに連想を持っていくなど、まずまず面白く見てます。後醍醐の直筆綸旨の話からトランプ大統領のツイッターにつなげたのも、ああ、そういや似てるかも、と。
　ちょうど今、NHKのBSで再放送してる「太平記」も建武の新政がいろいろ行き詰まってくるあたりですね。

　それと書籍では中公新書で石原比伊呂「北朝の天皇」を先日読了しました。タイトルのとおり南北朝の北朝天皇たちを扱ってますが、南北朝の経緯から室町時代、戦国期の入り淵くらいまでの天皇事情が語られててなかなか面白い。
　南北朝の経緯から天皇は幕府＝将軍におんぶにだっこで頼り、幕府も権威付けの意味で天皇の執事的役割を果たしていた。それが応仁の乱で天皇と将軍が長い同居をすることになり、朝廷の儀礼の衰退、幕府にも金がなくなって天皇の譲位や即位礼もなかなかできない事態になったり…といった話は昨年「史点」でも取り上げましたが面白いもんです。
　あと、下世話ではありますが、天皇周辺の女性たちの「密通事件」が相次いで起こっていた話もなかなかで（笑）。源氏物語からしてそうですが、日本の後宮ってえらくルーズだからなぁ。



#11039　
バラージ 2020/10/12 23:02
令和と昭和はどこか似ている？

　早くも馬脚を現した菅政権。嘘を隠すためにさらに嘘を重ねて自らの首を絞めていく悪循環ですな。日本学術会議任命問題では映画人も抗議声明を出してましたが、僕も最初にニュースを聞いた時、「学問の次は芸術文化だな」と思ったので、当然のことでしょう。なんとなく時代状況が昭和初期に似てきてるようでちょっと不気味。ちなみにタイトルは、昔テレビでやってた「えさし藤原の郷」の地方CMの「平成と平安はどこか似ている」というキャッチコピーのパロディです（パチンコ屋のCMだったかな？・笑）。
　そしてまたも低レベルなろくでもない失言をした杉田水脈議員。安倍さんや菅さんのお気に入りのこの人がいかにどうしようもないかを知るためにも、一刻も早くドキュメンタリー映画『主戦場』をDVD化か動画配信（以下略）。


　先日フジテレビで放送していた『実録ドラマ　３つの取調室　～埼玉愛犬家連続殺人事件～』という番組を観ました。内山理名が主演の１人だからという理由だけで観たんですが、予想外になかなか面白かったです。
　1993年に起こったという埼玉愛犬家連続殺人事件そのものは僕はさっぱり記憶にないんですが、そのちょっと後に起こった阪神大震災やサリン事件で世間でも印象が薄れちゃったらしい。容疑者３人の自供が食い違い何が真実かわからないという展開が、黒澤の『羅生門』というか芥川の『藪の中』といった感じで、僕は事件の記憶が全くないおかげで最後まで結末がわからず、ドラマから目が離せませんでした。３パターンのキャラクターを演じ分けた容疑者役の鶴見辰吾・内山理名・内田朝陽の演技がすごかったですね。映画『羅生門』では目撃者という第４の視点で真実が明らかになるんですが、現実にはそんな都合のいいものがあるはずもなく、一応の判決は出ているもののまさに真相は「藪の中」という感じ。内山さん演じる容疑者の本物の息子が最後にテレビに初めて出演し（もちろん顔は映さない）、当時のことを回想したり現在の母親について語ったりするのも印象的でした。
　個人レベルの犯罪事件なので、サリン事件のような歴史的事件とは言いがたいと思うんですが、それはそれとしてドラマとしては面白かったです。ま、個人的には作品の題材よりも、作品としての面白さのほうがずっと大事なんで。


＞隋唐ドラマ
　古典『隋唐演義』が『三国志演義』『封神演義』と並ぶ三大演義の１つというのは、DVD販売会社か放送局の煽り文句でしょうね。そうでも言わんと売れんだろうという（笑）。昔、中国古典事典だったかで読んだ記憶では、『封神演義』『隋唐演義』『楊家将演義』は四大奇書よりも文学的完成度は劣るが、庶民的人気は昔から高いとか書いてたような。
　『武則天　The Empress』『隋唐演義　～集いし46人の英雄と滅びゆく帝国～』と隋唐時代を舞台にした中国ドラマの話題が出たので、ちょいとその他の隋唐ドラマも列挙紹介しちゃおうかな。といっても僕は以前紹介した『麗王別姫　～花散る永遠の愛～』以外は全然観てないので、わかる範囲で軽～く紹介しちゃうというだけです。すでにちょこっと紹介した『武則天　秘史』は割愛で。

『独弧伽羅　～皇后の願い～』（原題：独弧天下、2018年）……正確には隋唐ではなく南北朝時代を舞台としたドラマなんですが、主人公が隋の建国者・楊堅の妻で後に皇后となる独弧伽羅で、隋の建国までが描かれるんで隋前史ドラマとしてご紹介。

『ムーラン』（原題：巾幗大将軍、2012年）……ディズニーアニメ映画でも有名な木蘭（ムーラン）を主人公としたドラマで、時代は隋に設定されています。本作では主人公は「華若蘭」という名前に変えられ、文帝楊堅の三男・楊俊と恋に落ちるという設定。揉冉（じゅうぜん）という架空の北方異民族が登場するなど、かなり自由奔放な脚色がされているようです。

『皇帝　李世民　～貞観の治～』（原題：貞観之治、2006年）……すでに隋が滅亡して群雄割拠の620年から始まり、李世民の死までを描いてるとのこと。今回紹介したドラマの中ではちょっと古め。

『則天武后　～美しき謀りの妃～』（原題：唐宮美人天下、2011年）……邦題は「則天武后」ですが、主人公は架空人物の宮女で、則天武后は準主人公。武后がまだ側室時代の話で、武后が産んだ赤ん坊を殺した疑いをかけられた王皇后を救うために、皇后を恩人と慕う女性が宮廷に潜入するという、陰謀渦巻く後宮を舞台とした宮廷ミステリーのようです。

『二人の王女』（原題：太平公主秘史、2012年）……上の『則天武后～』で殺されたと書いた赤ん坊（安定思公主。日本語版では安公主）が、実は乳母に助けられ生きていて、自分を殺そうとした母・則天武后への復讐のために、瓜二つの妹・太平公主と入れ替わって母に近づくという入れ替わりドラマ。これも邦題は「二人の王女」ですが、ほとんど太平公主に化けた安公主だけが活躍してるみたい。２役なんでめんどくさかったのかも（笑）。高宗時代から李隆基（玄宗）即位あたりまでを描いていて、大まかには歴史通りの展開なんだけど史実をかなりいじっているようです。

『謀りの後宮』（原題：唐宮燕、2013年）……これまた架空の宮女姉妹を主人公として、武則天の晩年から李隆基（玄宗）即位あたりまでを描いたドラマ。これも邦題に「後宮」と付いてるけれど舞台は後宮ではなく、武則天の後釜を争う権力闘争劇と、それに巻き込まれた宮女姉妹を描いているようです。上の『二人の王女』とかぶる題材ですが、途中退場する武則天よりも韋皇后とその娘の安楽公主とか上官婉児とかがラスボスってところも同じ。主人公姉妹が架空なので創作部分も多いようですが、基本的には史実通りで、ラブ要素も少なめとのこと。

『楊貴妃』（原題：楊貴妃、2000年）……昔レンタル店でエロチックコーナーに置いてあるのを見つけた香港ドラマ。テレビドラマでそんなエロいの放送できるの？と疑ってたんですが、今回観た人の感想を調べたらほんとにエロチックドラマらしい（笑）。日本版ビデオ＆DVDは１本100分の５巻組でしたが、本国では１時間×20話のようなので編集版でしょうか？

『楊貴妃』（原題：大唐芙蓉園、2007年）……後に映画でも楊貴妃を演じるファン・ビンビン主演のドラマ。映画のほうの出来があれだったんで（笑）、ドラマのほうが出来がいいという人が結構いました。玄宗役は名優ウィンストン・チャオで、実質ダブル主演という感想も。

『皇帝と私の秘密　～櫃中美人～』（原題：櫃中美人、2018年）……歴史ドラマではないんですが、扱ってる時代が珍しいのでご紹介。17代文宗の時代が舞台で、宮殿拡張のために山を開発しようとする皇帝を暗殺するために、山に太古から住む狐族が送り込んだイタチの精と九尾の狐が美女に化けて宮廷に潜入する。しかし２人（２匹？）ともが文宗と恋に落ち……というラブ史劇。


#11038　
徹夜城（いろいろあって執筆に集中できない管理人） 2020/09/21 23:25
内閣も変わってしまいましたが

　どうも、ちょいとまたご無沙汰しておりました。「史点」もなかなか書けないうちに内閣総理大臣まで変わってしまい…かっこうのネタなんだけど、ずるずる遅れてます。今回の総理交代につきましてはそのうちに「史点」の方で。

＞訃報
　昨日報じられましたが、俳優の藤木孝さんの訃報が飛び込んできました。高齢だったのですがどうも自殺ということらしくショックです。
　かつて大人気の歌手だったなんて経歴はあとから知ったのですが…僕にとってはなんといっても「太平記」の坊門清忠。ちょうど現在BSで再放送中の「太平記」は建武新政編に突入していて、もう坊門さん大活躍ですから。公家たちの悪い部分を一手に引き受けたような役で凄い存在感でした。極めつけは湊川の戦いの前には正成の献策を退けて死地に追いやったり、戦後には自分の責任を棚に上げて義貞を非難する、あのあたりの名演というか怪演は強烈でした。あれがはまったせいか、その後も公家役をいくつかやっておられたような。
　訃報といえば斎藤洋介さんも。個人的には「翔ぶが如く」の板垣退助役がハマってました。あのドラマ、配役が実に「そっくり」なチョイスでした。


＞ここんとこの自分の歴史映像探索。
　いま公開中の「ミッドウェイ」はなんとか見たいと思ってるんですけどねぇ。
　「武則天」は見逃したんですが、その後番組、ろんたさんもご紹介の「隋唐演義」は見始めてます。妙に長いサブタイトルがついてますが、内容的には水滸伝っぽいと思ったからつけられたのかなぁ。
　BS-TBSでは「王の顔」という韓国歴史ドラマが始まってたんでこれも並行してみてます。こちらも何度か映像作品のネタにされてる光海君（カンヘグン）の話ですね。「顔」がタイトルにあるのは人相占いと絡んでくるからで、そういや「観相師」なんて映画もあったな、と。
　この二本に加えて「オスマン帝国外伝」の第3シリーズの最初の方をチビチビ進めてます。まぁしかし、あちこちの歴史ドラマがいろいろ見られる時代なのは結構ですが、いずれも本数が多くてチェックするのが大変で。



#11037　
バラージ 2020/09/21 21:43
再びの『バビロン・ベルリン』

　BS12で土曜深夜にSEASON１＆２の再放送が始まったドイツのドラマ『バビロン・ベルリン』。以前、本放送が終了した時に感想を書いたと思うんですが、まだ過去ログになってないので（２回分ほど溜まっているような……。今年は学習塾もアクシデントなスケジュールになって大変だと思いますが、できればよろしくお願いします）、書き漏らしたことを書こうと思っても何を書いていて何を書いてないのかよくわからない。まぁ、とりあえず以前書いたかどうかは気にせずに書いていきたいと思います。
　『バビロン・ベルリン』は1929年のワイマール共和国を舞台としたミステリードラマですが、かなり歴史要素が強く、歴史ミステリーと言ったほうが適切です。原作はフォルカー・クッチャーの小説「ベルリン警視庁殺人課ゲレオン・ラート警部」シリーズで、日本でも創元推理文庫から『濡れた魚』『死者の声なき声』『ゴールドスティン』の３作が刊行されているとのことですが、現在ではいずれも絶版のようで、またドラマは原作から大きく改変されているようです。主人公はとある事情でケルン警察からベルリン警察に転任してきたゲレオン・ラート警部と、貧しい家族を養うためにベルリン警察の臨時雇用記録係をしながら夜は売春婦という別の顔も持つシャルロッテ・リッター。彼らはある事件を捜査するうちに、巨大な国家的陰謀に巻き込まれていく……といったストーリー。
　復員兵と戦争後遺症と暗示療法、ナイトクラブやポルノ映画や売春窟といったデカダンス（退廃的）文化、亡命トロツキストとスターリンの秘密警察、ドイツ共産党と血のメーデー事件、黒い国防軍、そしてわずかに見えるナチスの影。様々な歴史要素を含んだサスペンスフルなミステリードラマですごく面白かったです。主演の２人、ゲレオン役のフォルカー・ブルッフと、シャルロッテ・リッター役のリヴ・リサ・フリースもいい。特にリヴ・リサ・フリースは個人的に去年の大ヒットでした。
　BS12では今年の12月から待望のSEASON３が放送開始予定。今度は翌1930年が舞台となります。


＞最近DVDで観た映画
『デスティニー・イン・ザ・ウォー』
　デンマークのビレ・アウグスト監督が、中国で撮った第二次世界大戦を背景とした文芸映画。原題は「烽火芳菲」で英語題は「The Chinese Widow」なのに、なぜかこんなわけわかんない邦題に。太平洋戦争初期、米軍のゲリラ的反撃として有名なドーリットル空襲を終えて中国に向かう途中、墜落する機体からパラシュートで脱出した米軍機長が、貧しい中国の未亡人とその娘に助けられ、彼女たちのあばら家に匿われる。だが彼を捜索する日本軍の手が徐々に迫り……というストーリー。ビレ・アウグスト監督の映画は大学時代にデンマーク映画『ペレ』を観て以来ですが、必要以上に劇的にはしない落ち着いたというかちょっと重い作風は変わっていませんね。脚本もヨーロッパの人で、どことなくヨーロッパ映画っぽい雰囲気ですが、同時に中国映画らしくもあるのが、米国とは違う欧州の歴史深さと言うべきか。機長役のエミール・ハーシュという俳優はよく知らないんですが、どっちかというと未亡人のほうが主人公っぽく、演じているのは『ムーラン』の主演で今何かと話題のリウ・イーフェイ。儚げで美しい未亡人を好演していて、やはり彼女のほうが印象に残ります。彼女の出演映画はジャッキー＆ジェット共演ハリウッド映画『ドラゴン・キングダム』や歴史映画『項羽と劉邦　White Vengeance』『曹操暗殺　三国志外伝』を観ましたが、この映画の彼女が１番良かったかも。空襲される東京のCGが今一つ東京っぽくなかったり（ヨーロッパか中国っぽく見える）、未亡人に目をつけて家捜しに来る日本軍の少佐がなぜかいつも部下も連れずに１人で来るのはちょっと不自然でしたが、全体的にはなかなかの佳作でした。

＞『武則天　The Empress』
　高宗役がイケメンと聞いて誰だろ？と調べてみたらアーリフ・リーという俳優で、どこかで聞いたことのある名前だなと思ったら、ジャッキー映画『カンフー・ヨガ』に出てた若いイケメン俳優ですね。

＞吉備真備
　『大仏開眼』は未見ですが、手塚治虫のマンガ『火の鳥　鳳凰編』にも出てきてましたね。確か史実とは違って、権力者の橘諸兄を追い落とすが、後に自らも藤原仲麻呂に追い落とされるという描写だったような。

＞名画座修正情報
『ラスト・サムライ』……正確には『ラスト サムライ』と、「・」ではなく半角スペースが入る邦題が正しいようです。


#11036　
ろんた 2020/09/16 18:13
「武則天　The Empress」最終回

「武則天　The Empress」最終回を確認しました。武照は茶髪。白髪交じりということか(でもお肌ツルツル)。これがＯＰに出てきた姿でデヴィ夫人似。高宗が最終回の中盤まで生きていて、死ぬとダメ男の皇太子がクーデターを起こす。これを潰すと即位させて幽閉。叛乱の鎮圧に失敗するけど、そのままスルー。ここでは叛乱軍の檄文に感動するという有名な逸話があるはずが、なぜか鼻で笑うという全く逆の話になっている。この辺、史書と違っているところ多数。「皇帝を解放しないと叛乱は続く」と諫言した宰相を排除して狄仁傑が登場。「実権を握っているのになぜ皇帝の座を望むのか？」とズバッと切り込むものの、武照の答がグズグズで何言っているか分からない。この後、「武周」の建国を宣言。ところが、場面転換すると髪の毛が真っ白になってて杖ついてヨボヨボ(でもお肌ツルツル)。そして字幕。「八十二才で死にました」(笑)。
　全編通してはちゃんと見てないんですが(録画だけはしている)、印象としては武照を善人として描いていて、「？」な展開が多い気がしました。高宗が格好良かったり、長孫無忌と和解したり。まあ、メロドラマなんでしょうね。ひょっとしたら薛懐義、張易之・昌宗というのが出てきては都合が悪いので、武周時代を省略したのかも。
　考えたら、このドラマを面白そうと思ったのは、むか～し『武則天』(原百代/講談社文庫/全八巻)を読んだからでした。これ、フェミニズム的に史料を再解釈していて凄く面白い。日本では"則天武后"という表記が多いけど、あえて"武則天"としているのもそのため。武照もちゃんと「悪人」で武周時代も描いている。さらに同時期、『西遊妖猿伝』の玄武門の変の下りを読んでたりして、李(世)勣、尉遅敬徳、李靖、長孫無忌が頭に入ってたりしたのでした。
　で、次の日から始まったのが「隋唐演義～集いし46人の英雄と滅びゆく帝国～」。原作は『三国志演義』『封神演義』と並ぶ三大演義の一つとのことですが、そんな括り知らなかった。雰囲気としては三国志風味の水滸伝。桃園の誓いみたいなこと(違う日に生まれたが同じ日に死ぬことを願うってヤツ)やってたし、今は隋朝廷内の暗闘と「好漢」のエピソードを描いている。原作は隋建国から滅亡、唐の建国から安史の乱の顛末まで描いているらしいけど、ドラマは玄武門の変まで。実在の登場人物はこの時代のオールスターキャストなんだけど、李淵の息子らしいアホの子だけは誰か分からない(笑)。

＞バラージさん
「武則天　The Empress」については、やはり一番盛り上がったところで終わらせた、というのが正解でしょうか。武照って、武周建国時点で66歳。お相手はいるのですが、さすがにメロドラマの主人公はきつい(笑)。しかし、政治ドラマとしては一波乱も二波乱もあるわけで、そこも面白いはずなんだけどなぁ。
　尚巴志ですが、RBC(琉球放送)はラジオ局も持っていて、「琉球を創った男たち　懐機・尚巴志」(全130話　2002)、新録「～琉球を創った男たち～　懐機・尚巴志」最終話(2019)、デジタルリマスター版「連続放送劇　成化風雲録」(全26話　1963)というラジオドラマもあるようです。radikoとかで聞けるのかな？

＞ユダヤ人埴輪
　ユダヤ人かぁ。こんな恰好した人、韓国の時代劇でいっぱい見たことあるんで、きっとアレもユダヤ人なのでしょう。

＞ＮＨＫスペシャル　戦国～激動の世界と日本～
　録画して塩漬けになっていたのを視聴。冒頭、信長が長篠の戦いで使った鉄砲の弾、原料がタイで採掘された鉛だったとの話にかなり期待するが、信長編は目新しさは無し。石山合戦の勝利はキリシタン大名のお陰(当然、背後に宣教師がいる)って、ちょっと大げさだし、「本能寺の変イエズス会黒幕説」をやるんじゃないかと冷や冷や(笑)。秀吉編では、山崎の合戦の勝利はキリシタン大名のお陰みたいになっていて「？」(ここでも背後に宣教師)。朝鮮出兵も「日本に明を征服させてキリスト教国にする」という宣教師の陰謀が影にある、みたいになっていたけど、ＮＨＫらしく律儀に伴天連追放令に触れていて説得力ゼロ。っていうか、そんなこと本気で考えいる宣教師、頭のネジが緩んでるとしか思えない。さらに、朝鮮との戦争に行き詰まった秀吉が金目当てにフィリピン征服を計画しスペインとの世界戦争になりそうだった、という話もどれだけ信憑性があるのか。ただ［お隣との戦争がうまくいかない＞南方進出＞世界中と戦争］ってのはどっかで聞いた気がする。この戦争はフェリペ二世と秀吉が五日違いで亡くなって回避される。
　家康編では定番のヤン・ヨーステン、ウィリアム・アダムスの話から始まって、大阪の陣がオランダとスペインの代理戦争の側面があるとの指摘。スペインが家康に食い込めなかったのは、貿易と宣教をセットにしていたから、というのは新味無し。そして出ました「ブリキトース」(笑)。ここで一番興味深かったのが、元和偃武後に侍が傭兵として"輸出"されていたという話。オランダによってスペインとの植民地戦争に投入され大活躍したとか。山田長政伝説の元ネタか。これが続いていたら、由井正雪の乱とか無かったのかな？
　全体として、宣教師の報告書ってどれだけ信用できるのか、という疑惑が湧いてきました(笑)。

＞「大仏開眼」
　前編は台風が来たわけじゃないのに受信障害。「大化の改新」みたいに受信不能ではなく、低解像度状態になった。南西の方が荒天だったからか？　再放送を望む。ドラマの方は「大仏開眼」というタイトルに偽りありで(？)、まるで吉備真備伝。しかも文武両道のタフガイなのでビックリ。いや、史実から見ればそういうことになるんだろうけど、演じてるのが吉岡秀隆なんで文弱の徒のイメージがついてしまった。だって吉岡秀隆が高橋克典(藤原仲麻呂)に勝てると思わないじゃないですか(笑)。

＞訂正と追加情報
　鞍馬天狗の杉作、大人向けにも登場してました。第二次長州征伐を背景にした『地獄太平記』。天狗さんの泊まっている部屋に坂本竜馬がやってきたりする。
　乱歩の映像化ではＢＳＰで放映された「シリーズ江戸川乱歩短編集」は要チェック。江戸川乱歩の短編小説を気鋭のクリエーターたちが映像化。満島ひかり主演。明智小五郎も演ずる。


#11035　
バラージ 2020/09/05 21:57
中国の歴史ドラマあるある？

　次の最高首脳がごく少数の最高幹部の秘密会議で決められるって、鎌倉幕府北条氏の「深秘の御沙汰」かよ。そういや森首相の時もそうだったっけ。とりあえず菅（すが）さんがどんな人かは、ドキュメンタリー映画『ｉ　新聞記者ドキュメント』でご覧ください。エンタメとしても普通に面白い映画ですから。そして徳川将軍のごとく幕閣よりも側用人を重用して政治運営を行った安倍さんについてはドキュメンタリー映画『主戦場』を……と言いたいところですが、こっちはなぜかまだDVD化も動画配信もされてないんだよな。
　そして世界に目を向ければ、米国も中国（香港）もロシアもベラルーシもブラジルもレバノンもモーリシャスもマリもルワンダも……とどうにもこうにもキナ臭い雰囲気だらけでイヤになっちゃいますねえ。


　さて、本論。実在人物を主人公とした中国の歴史ドラマって、その人が死ぬまでは描かず、ちょっと中途半端なところで終わるというのがわりとよくあるみたいで、歴史映像名画座に掲載されているドラマも『孫子兵法』『クィーンズ』『曹操』『後宮の涙』『創世の龍』といったあたりはそういう終わり方になっているようです。僕はこのうち『曹操』だけレンタルDVDで途中まで観て挫折したんですが、サブタイトルを見たら赤壁の戦い直前で終わるんで、なんで？と不思議でしたね。他にも名画座にはありませんが『賢后　衛子夫』『武則天秘史』『フビライ・ハン』『瓔珞』なんかも同様に主人公の死までは描いてないみたい。
　理由はよくわからないんですが、推測するに１つにはあまり物語のペースを計算してないのでは？という疑いがあります。歴史ドラマというのはそもそも結末がわかってる上で作るため、主人公の死から逆算してペース配分しながら作ると、こう言っちゃ何ですが純粋な意味でのストーリーメーキングやストーリーテリングの面白さが追求しづらいという欠点があると思うんです。そういう制約を捨てて、結末を考えず、ドラマ的な面白さを優先してストーリーメーキングしていくと、（放送回数の制限はあるので）主人公の死まで到達せずに終わるということも十分考えられると思うんですよね。
　もう１つ、おそらくはこちらの可能性のほうが高いと思われますが、これまたドラマとしての面白さを優先して、ドラマとして１番盛り上がったところで終わらせるというパターン。歴史ドラマというのは第一義的にはあくまでドラマですから、ドラマとしての面白さや完成度のほうを優先するというのも当然と言えば当然の話。『武則天　The Empress』や『武則天秘史』が皇帝に即位するあたりで終わるのも、その後の武則天はドラマにしても面白くないという判断からだと思われます。日本の大河ドラマでも『太閤記』や『秀吉』が、秀吉がダメになる晩年をほとんど描かなかったのも同じ理由でしょう。
　そもそも歴史ドラマはどの国でもドラマ全体の中では圧倒的に少数派のジャンルで、現代劇ドラマが最も一般的なドラマのはず。米国ドラマのように、人気がある限り何シーズンでも続き、人気がなくなったら打ち切りという週刊少年ジャンプ方式みたいな国もありますし、ひょっとしたら放送回数の中である程度物語を終わらせる日本のドラマのほうが珍しいのかもしれません。そう考えると、終末点がある程度決まっている歴史ものは、もともとテレビドラマとして難しいのかも。


＞未見琉球史ドラマ
　現在アクシデンタルにめちゃくちゃ忙しくなってしまいふらふらの中、気分転換にレンタルDVD店に行ってぶらぶらと店内を物色していたら、歴史・時代劇コーナーで「琉球歴史ドラマ『尚円王』」というDVDがレンタルされてました。RBC（琉球放送）創立65周年特別番組とのことで、あれ？　そういえば……と思って調べてみると、以前に徹夜城さんがここで触れていた尚巴志のドラマと同じ放送局。全３話が１枚のDVDに収められており、レンタルが開始されたばかりのようでまだ新作でした。Paraviで動画配信もされているようで、そういや『尚巴志』のほうはどうなんだろ？と調べると、こちらはDVD化はされておらずParaviでの動画配信のみのようです。

＞『いだてん』の裏側で……
　論座にちょっと面白い記事が出てました。

首相が病で倒れると何が起きるのか？～1964年東京オリンピックの裏で
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2020082800006.html?page=1

　阿部サダヲが大騒ぎしてる裏側で、桐谷健太や浅野忠信も巻き込んでこんなことが起こっていたとは（笑）。個人的には物心ついた頃に首相だった田中・三木・福田・大平の名前が見えるのが興味深かったですね。

＞名画座修正情報
『クィーンズ　長安・後宮の乱』……厳密には『クィーンズ　長安、後宮の乱』が正しい邦題のようです。


#11034　
ろんた 2020/09/01 18:19
ＢＳ時代劇

　変に喧伝してたんで──体調不良ってことにしておけば、火だるまになるに決まってる国会開かなくていいし、同情が集まって支持率も回復するし、10月になればコロナも収まってるし(＜根拠はない)一石三鳥──とか悪いこと考えてる、と想像してたんだけど、下衆の勘ぐりでした。安倍さんってわたしが思ってたよりも「善人」だったんですね。とすると第一次の時に、参院選に負けて退陣ってのがイヤで難病を言い訳にした、というのも下衆の勘ぐりだったんだなぁ。海より深く反省。でも、「善人」は政治家になるんじゃねぇよ、と下衆人間は思うのでした。

　で、ふと気がつくとＢＳ－Ｐで「鞍馬天狗」が放送されている(毎週金曜日、日曜再放送)。これは野村萬斎主演で比較的原作に忠実にドラマ化され、地上波で放送されたもの。「原作に忠実」というのは、一般に記憶されている「鞍馬天狗」が、実はアラカンこと嵐寛寿郎の創造したものだから。さすがに、アラカン流に覆面して白馬に乗って現れるけど。で、原作では鞍馬天狗と近藤勇が＜「敵」と書いて「とも」と読む＞的な関係になったり、御一新後も活躍したりするのです。あと、鞍馬天狗といえば「杉作、日本の夜明は近いぞ」だけど、杉作って少年向けの作品以外には登場しないんじゃないかな。もっとも、わたしが読んでいるのは鶴見俊輔編集の「鞍馬天狗」(小学館文庫５巻)だけなので、定かではありませんが。あと、桂小五郎役の石原良純が似合わない(笑)。
　同じＢＳ－Ｐでは「大仏開眼」(09/05,12)が放送されます。吉備真備(吉岡秀隆)、孝謙天皇(石原さとみ)、藤原仲麻呂(高橋克典)を中心にした、地上波で放送されたドラマ。同じNHK大阪放送局で制作された「大化の改新」が６月にＢＳ－Ｐで放送されたんだけど、大雨のせいで見られなかった。再放送してくれないもんだろうか。
　ＢＳ朝日では「無用庵隠居修行」が09/01から毎週火曜日に３本再放送。４本目が新作。時代設定は田沼から定信に政権交代があった頃。江戸城の大番士・日向半兵衛(水谷豊)は、剣の達人だがどこか浮世離れした男。妻を亡くし子も無いのに、後添えももらわずやもめ暮らし。出世ばかり考えている同僚に愛想を尽かし、早く隠居したい、と考えている。跡継ぎがいなければ隠居などできない、と用人・勝谷彦之助(岸部一徳)は松田家の出戻り娘・奈津(檀れい)との縁談を進めるが、半兵衛は奈津のことが気に入っているくせに、今さら妻を娶る気はない、などと言い出す。本当なら親類縁者がよってたかって再婚させるか、養子をとらせるかすると思いますが、そこはそれ、時代劇なので至ってのんびりした日常描写が続きます。(後に養子をとって本当に隠居する)　実在人物としては松平定信(杉本哲太)や長谷川平蔵(榎木孝明)が登場。この人たちとの絡みで大事件が起きて、そこが見せ場。「相棒」ファンだと、右京さんと亡き官房長の共演、そこに神戸尊の元嫁が絡むという話(笑)。
　ＢＳフジでは仲代達矢主演の「帰郷」を09/27に放送。てっきり大佛次郎原作かと思ったら、藤沢周平原作の股旅もの。三十年前、親分の罪をかぶって江戸へ出奔した宇之吉が、木曽福島に戻ってきた。三年のつもりが三十年。そこには江戸での大きな事件が関わっていた。そして、故郷に戻った宇之吉は、かつての兄貴分・野馬の九蔵(中村敦夫)がおくみ(常盤貴子)という女に岡惚れし、その思い人・源太(緒形直人)をつけ狙っているのを知る。全然知らなかったのですが、時代劇専門チャンネル制作で劇場公開されたらしい。まあ、仲代さん主演なので、面白くないわけがないとは思います。
　ＢＳテレ東の「竜馬がゆく」は蛤御門の変が終わったあたり。新春の長時間ドラマを１時間ドラマ×10本に再編集したもの。でも竜馬役の市川染五郎(現・松本幸四郎)は、なんか違う気がする(汗)。もっと長身じゃないと竜馬っぽくならない。育ちがよさげなところは面白いと思うんだけど。竜馬って才谷屋のボンボンだから(笑)。ああ、井川遥さんのお田鶴様はいいです。で、この間は天然過激派・高杉晋作(葛山信吾)が熱血ジジイ・来島又兵衛(石橋蓮司)に怒鳴りつけられていて笑ってしまった。高杉って、この前に御殿山の公使館焼き討ちとか無茶苦茶やってるんだけど(幕末太陽伝)、来島又兵衛から見ると臆病者ってことになっちゃうらしい。ただその後、馬上の又兵衛をＣＣＤで撮った画像はいただけない。全然揺れないから、トラックに乗ってるのが見え見え。
　その他だと、日本のものじゃないけど「オスマン帝国外伝３」(ＢＳ日テレ)と「武則天」(ＢＳイレブン)が最終回を迎えます。しかし、「オスマン帝国……」は長いなぁ。次の「４」(チャンネル銀河で放送中)で最後らしいけど、全312話とのこと。「武則天」は、最終話のタイトルが「そして皇帝へ」……!?　え？　即位して終わりなの？　ＯＰにデヴィ夫人みたいなのが出てくるから、死ぬまでやると思ってたのに(笑)。

＞バラージさん
　乱歩の話を続けていいのかと思いつつ……(汗)。
「妻に失恋した男」は青空文庫で読めますが、(なぜこれを映画にしようと思ったかなぁ)というのが正直な感想(笑)。それに「失恋殺人」って、タイトルがネタバレしちゃってますね。明智さんの奥さんってことは文代さん。ネタバレになるので詳細は控えますが、前半生に色々あって探偵もこなせるだけの経験をしています。あと、宮地真緒の無駄づかいという話は、KINENOTEのレビューにもありました。
「キャタピラー」には、そもそも芋虫という意味があるので両者の関係は明白ですし、キャラクターもほぼ小説通り。ただ映画は時代を10年ほどずらし、若松イズムが強く出ているので、「原作」というより「原案」という感じでしょうか。
「人間椅子」は究極のストーカーものでして、かなり恐いですね。


#11033　
バラージ 2020/08/30 00:13
いろいろ小ネタ

＞最近観た、ちょっとだけ歴史関連の映画
『ノー・サレンダー』
　WOWOWで放送されてたエジプトのアクション映画。エジプト映画を観たのは初めてです。WOWOWのガイドブックを見たら、1940年のエジプトを舞台としてイギリスの圧制に立ち向かうアクション映画とあったんで、歴史要素のある社会派アクションかと思って観てみたんですが、全然違いました（笑）。
　エジプトに駐留してるイギリス兵がエジプト人少女をレイプし、エジプト警察に逮捕される。イギリス軍は警察に引き渡しを求めるが、署長（主人公）は拒否。イギリス軍は警察署を包囲して、エジプト警察と壮絶な銃撃戦が始まるというストーリー。おそらくは全くのフィクションで、なんというかきわめてベタでコテコテな娯楽映画です。脚本も演出も役者の演技もやたらと大げさでクサイ。なんとなくインドの娯楽映画に似てるような感じ。イギリス軍もわかりやすいくらいあからさまな悪党だし、逆にエジプト人にはほぼ悪人がいないし、とにかく全編ベタすぎるほどベタな展開で、観ててちょっと笑ってしまうほどでした。またWOWOWサイトでも書いてたんですが、時代背景の説明などが劇中に全くなく、1940年ということにすら触れられていません。たぶんエジプト人にとってはそのあたりはどうでもいいんでしょう。時代的には第二次世界大戦が始まってますが、劇中でそれに触れてるような部分は、エジプト警察に捕まっている元エジプト兵について、自分はドイツとの戦争には関係ないとイギリス軍の徴兵を拒否したため逮捕されたと説明される部分くらい（でも1940年という説明がないと第一次世界大戦でも当てはまる話だよなあ）。ちなみに歴史的には1940年９月にイタリア軍がエジプトに侵攻してきたので、その前の事件とすればつじつまが合うのかな。当時のエジプトには、独伊の力を借りてイギリス軍を追い出そうという世論も強かったとか。
　文化の違いなのか、冒頭で妹に名前で呼ばれて怒り、「お兄様」と呼べと妹を軽くビンタしまくる男が出てきて、てっきりこいつは悪役かと思ったら、それが主人公の署長でした（笑）。妹も文句を言いながらもそこまでひどく憤ってるわけでもないようだし、なんか不思議。署長は自らムキムキの肉体でイギリス兵とバトルしちゃうし、マッチョイズムが強く男尊女卑的な文化があるのかも。あと輸入されたのは英語版で、エジプト人も全員英語でしゃべり、口の動きと合ってないのも何とも。日本人から見るとあらゆる意味でB級アクションとしか言い様がないんですが、エジプト映画としてはこれが普通なのかも。ふーん、エジプト映画ってこんなんなんだ、とそこが１番興味深かったです。

＞初登場将軍
　いよいよ再開される『麒麟がくる』に室町幕府14代将軍・足利義栄が登場するとのこと。大河ドラマに限らず映像作品初登場になると思われます。まあ出番はほんのちょっとだけでしょうし、それを目当てにまた観ようとまでは思いませんが。
　ちなみにこれで足利15代将軍のうち大河ドラマ未登場なのは、３代義満・４代義持・５代義量・12代義晴の４人となります。徳川15代将軍では11代家斉のみが未登場。鎌倉９代将軍では８代久明親王のみが、北条得宗９代では４代時氏・５代経時が未登場となっています。

＞乱歩映画
　改めて調べたら江戸川乱歩原作映画では『失恋殺人』という映画もDVDで観てました。乱歩に興味があったわけではなく、当時ちょっと話題になった主演の宮地真緒のヌードが目当てでもなく、好きな女優の星野真里が脇役で出演してたから観た映画でして（笑）。調べてみるとなんでも『妻に失恋した男』という小説をベースに、原作には登場しない明智小五郎の妻（これが星野さん）を探偵役にした映画だそうで。星野さん目当てで観たんで、可愛い探偵さん大活躍といった感じでそこそこ観れましたが、お話自体はちょっとわけわかんなくて、せっかくヌードになった宮地さんもいまいち魅力的に撮られてなくて、はっきり言って映画としてはいまいちでしたね。
　あとはこれも観た映画の『キャタピラー』が、当初は乱歩の『芋虫』が原作と言われてたけど、その後製作者側は公式には乱歩原作という表記を撤回したそうで。

　『偉大なる夢』のスパイ団、確かに普通に日本人にしちゃうと、「あなたの隣にもスパイが」的疑心暗鬼というか世に不安を醸し出す隣組的発想になっちゃってたかもですね。そういう意味では、現実には存在しない文久年間に定住したアメリカ人の子孫にしたほうが良かったとも言えるのかも。
　「変なことを変な風に描いてしまう変な人」というのは、読んでないし映像化作品も観てないけど『屋根裏の散歩者』とか『人間椅子』のあらすじを読んでも、なんかわかります。僕はそのあたりがちょっと……という感じでして。1997年の映画『人間椅子』も、好きな女優の清水美砂（現・清水美沙）が主演でちょっとエロチックなシーンがあると聞きながら、なんとなく敬遠しちゃって観ないまま今に到ります。


#11032　
ろんた 2020/08/24 22:00
「古代戦士ハニワット」(武富健治)

　同じ導入部で恐縮ですが、「Landreaall」を五冊も買い逃しているのに気づき本屋に行ったのに置いてない。で、べそをかきながら回っていると、「宇崎ちゃん」を見かけたので応援のため買いました(＜何か見たらしい)。そしてふと横を見ると「古代戦士ハニワット」が三巻まであるではないですか。以前、「気分はもう戦争３……だったかもしれない」が掲載された「アクション」誌を購入した際に読んで、異様な印象を受けた作品。で、今回三冊一気読みしたところ……

　長野県長野善光寺市長野善光寺の境内にあった井戸が不思議な光に包まれ、その中から高さ2.5ｍほどの土偶「仮面の女神」(蚩尤　コードネーム「ドグーン」)が現れた。何をするでもなく歩くだけなのだが、障害物は破壊し人間は踏みつぶす。警察は機動隊を配備するが、その目的はドグーンの排除ではなく人々を近づけないこと。これに業を煮やし攻撃した地元青年団は二名死亡、直後にドグーンは光学兵器による無差別攻撃を行い、長野善光寺市は炎に包まれる。だがドグーンはかつて静岡、熊野、宮崎高千穂にも出現しており、それに対処すべく準備を進めている者たちもいた。戸隠神宮は、形態を変化させるドグーンに戸惑いつつも、「寺社会議」と協議のうえ「特殊祭祀」(蚩尤収め)を決行すべく、仮具土の埴輪徒たる仁を招集する。しかし仮具土の埴輪土は無残にも敗北、仁は重体、祭祀グループからも二名の犠牲者が出る。だがそこへヤヨイ・ジョー(弥生縄　ヤヨイ・オグナ)から、真具土の埴輪徒・凛を連れて行くとの連絡が入り……

……というお話でした。四巻(手に入らなかった)でこの長野善光寺編は終わり、現在は新章が展開中とのこと。何やら変身ヒーローものとの見方もありますが、あくまで神事というところに注目しなきゃダメでしょう。確かに真具土の埴輪徒は埴輪土(ハニワット)に「変身」するし、その姿はウルトラマンのようでも仮面ライダーのようでもガンダムのようでもエヴァンゲリオンのようでもあるんだけど、ベースはあの埴輪の兵士(怒る前の大魔神)だし、「戦闘」といっても神事としての「相撲」なんだから。そして周辺では神官が弓弦をかき鳴らし、巫女が鈴を鳴らして舞い、埴輪土はその祈りを力に戦うわけです。わたしなどより古代史や民俗学に詳しい人ならもっと楽しめそうですが、とりあえず土偶ｖｓ埴輪……燃えるぜ！(笑)

＞バラージさん
　スパイ団の設定ですが、「スパイ」といっても諜報員じゃなくて破壊工作員なんで、日本人を出すと差し障りがあったんじゃないですかね。「売国奴を描くとは何事か！」とか。あと、首領の葛藤が小説の一つのテーマになっています。しかし、確かに「アメリカ人の血」とか言っても「？」ですねぇ。しかもドイツ系やイタリア系だったら何やら複雑なことになりそうで……。
　乱歩については私見ですが、「変なことを変な風に描いてしまう変な人」なので、その辺りを楽しむ境地になれないとなかなか難しいかと。作品集Ⅰ収録の「孤島の鬼」なんて、密室殺人＋フリークス＋ホモセクシャル＋洞窟探検だし、「黒蜥蜴」の女賊は、美少年や美少女の剥製を飾って喜んでいるド変態ですし。その境地になると、天知茂主演(明智小五郎役)の「美女シリーズ」も楽しめるんですが……(笑)。
　あっ、そう言えば『少年探偵団・超人ニコラ』の解説を担当している小中千昭氏(脚本家)は、駆け出し時代、円谷プロの鈴木清氏に『少年探偵団』(ＢＤ７)の企画書を書かされたと述懐しています。

＞徹夜城さん
　迎合といえば迎合なんですが、それでも探偵小説を書こうとしているので、そう言ってしまうのは個人的には可哀想な気がします(汗)。探偵小説は、恐らくエログロナンセンス文化の一つと考えられていたんでしょう。紙の配給をしない、という形で弾圧されたようです。で、多くの作家は捕物帖に転向するんですが、乱歩はそれも許されなかった。捕物帖だって、ホームズものをお手本にした「半七捕物帳」(岡本綺堂)がルーツなわけですけど。それでも横溝正史などは「人形佐七捕物帖」の連載中絶に追い込まれます。理由は、佐七が浮気者だから(笑)。まあ、そのお陰で岡山に疎開し、金田一耕助のデビュー作「本陣殺人事件」を思いつくんで、世の中、何が幸いするか分からない。
『怪人二十面相・青銅の魔人』の解説(佐野史郎)と解題(吉田司雄)によると、二十面相がアルセーヌ・ルパンなのは、乱歩もはっきり認めているようです(『わが夢と真実』)。「怪盗」じゃなくて「怪人」なのは、当時の出版コードのせいだとか。それでも物語の主人公であるルパンが愛国者であるのに対し、敵役の二十面相はあくまでも国家・社会への反逆者なのが決定的違い。明智小五郎の方は愛国者で、満州国政府のために働いたりしてますけど。あと「コジマ」「ファントマ」という二本の無声映画の影響も指摘されています。いずれも怪盗が大活躍する話で、前者は子供だった乱歩が大ファンだったそうですし、後者はシルクハット＋燕尾服＋アイマスクというビジュアルが怪人二十面相そのもの。さらに「青銅の魔人」の「鉄人28号」への影響を指摘する向きがある。すると、ガンダムやエヴァのルーツも大乱歩、という話になりそうです(笑)。

　で、角川文庫には『怪人二十面相と黒蜥蜴』(「怪人二十面相」と「黒蜥蜴」をそれぞれ収録)があるようで茫然。それ「混ぜたら危険」なヤツだろう。まあ、二人とも「明智さんラブ」ではありますが。


#11031　
バラージ 2020/08/23 22:04
ありゃ

　文字化けしちゃいましたね。『JIN-仁-』で相島一之が演じてるのは多紀元えん（王偏に炎）です。


#11030　
バラージ 2020/08/23 21:45
歴史映像作品感想追記・タイムスリップ歴史映画編

　名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記、ついにようやく最後のタイムスリップ編です。

『テラコッタ・ウォリア　秦俑』……#9726、映画板#1222
　え～、いきなりですが、タイムスリップものではなく、輪廻転生ネタの歴史関連映画です。1989年の香港・中国合作映画なんですが、中華圏の映画にはなぜかタイムスリップやタイムトラベルよりも輪廻転生ネタの映画のほうが多かったりするんですよね。ま、広い意味での時間移動ものってことで。日本では91年に公開されましたが、僕は映画館では観逃し、レンタルビデオで観ました。ビデオ＆LD邦題はただの『テラコッタ・ウォリア』で、DVD化はされていません。原題は中国では『古今大戦秦俑情』、香港・台湾では『秦俑』とのことで、上映時間についても日本公開版は110分ですが、中国語版Wikipediaでは145分とある一方で、百度百科では106分とあり、この辺どうもよくわからない。監督は『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』などのチン・シウトンで、主演がなんとチャン・イーモウとコン・リー。監督＆主演コンビというイメージだったんで、チャン・イーモウが役者としてコン・リーと共演ってなんか変な感じでした。愛し合う者同士の役なんですが、本人たちもこの頃は絶賛不倫中だったんだよな。今となってはもう懐かしい話だけど。
　チャン・イーモウ演じる始皇帝側近の将軍が、不老不死の仙薬の材料を求めに蓬莱国へ旅立つ徐福率いる派遣団員の１人であるコン・リーと恋に落ちる。派遣団の女性は純潔を守らなければならないため、始皇帝の怒りをかった将軍は兵馬俑へ生き埋めとなり、女性は火刑に。しかし不老不死の試薬をひそかに得ていた女性は口づけするふりをして将軍にそれを飲ませ、自らは火に身を投じる。そして時は流れ1930年代、兵馬俑の中からよみがえった将軍は、女性が転生した売れない女優（コン・リー）と出会うが、当然ながら女優には前世の記憶などない。そんな２人に、兵馬俑の盗掘を企む売れっ子男優が絡んで、一大アクションが展開していく……というお話。ストーリーのメインは1930年代のほうですが列強の侵略とかは描かれておらず、もっぱらインディ・ジョーンズ張りのアクション冒険譚となっています。#11015でも触れたような「香港映画が中国人俳優を起用して中国ロケを行うといった性格のもの」で、兵馬俑でロケもされており、なかなか面白い娯楽映画でした。秦朝時代は純真な乙女で、転生した1930年代はちょっとオツムの足りないハスッパ女優と、自在に演じ分けちゃうコン・リーの演技力も堪能できます。2010年に中国で連続ドラマとしてリメイクされてるらしいんですが、そちらは日本に上陸していません。

『THE MYTH　神話』……#9726、#10680、映画板#1222、#1680
　これまた輪廻転生ネタの香港・中国合作映画。#11015にも書いたように、ジャッキー・チェンが拠点をハリウッドから香港に戻した『香港国際警察　NEW PORICE STORY』に次いで主演した香港回帰の２作目で、中国との初めての合作作品となります。合作なのは、やはり中国ロケがされてるからかも。
　ジャッキーは考古学者のジャックと秦の始皇帝の将軍モンイー（蒙毅）の２役。３ヶ月前から自分が古代の武将になっている夢ばかり見るジャック。その武将は、朝鮮（古朝鮮？）から始皇帝の妃に差し出されたユシュウ姫（キム・ヒソン）を護衛するモンイーだった。やがてモンイーとユシュウ姫は惹かれ合っていく。一方、ジャックは反重力を研究してる親友の物理学者（レオン・カーフェイ）の頼みでインドの古代遺跡に同行する……といったお話。蒙毅は実在の人物ではありますが、名前と始皇帝の家臣という設定以外は全編フィクションで、史実とはほぼ関係ありません。当然ながらジャックの前世がモンイーなわけですが、ジャックの現代シーンのほうがメインでやっぱりちょっとインディ・ジョーンズ風味。ヒロインのキム・ヒソンは当時の中華圏で最も人気のあった韓国女優らしい。実は意外に流行に敏感なジャッキーが、当時の流行りだった武侠もの・韓流ブーム・ボリウッドなどを全部詰めこんだ欲張りな映画なんだけど、それぞれが上手く噛み合ってなくてバラバラな感じ。まあまあという程度の出来でした。
　中国で連続テレビドラマ版も作られていて、そちらも日本でもDVD化されています（邦題は同じ）。ただしそっちはタイムスリップもので項羽と劉邦の時代が舞台らしく、ストーリーは大幅に異なるようです。ドラマ版のほうが歴史度は高そうですが、まぁジャッキーがいないんじゃジャッキーアクションを目玉にできないもんな（笑）。

『信長のシェフ』（第２シリーズまで）……#9320、#9351、#9646、#9684
　2013年と2014年にテレビ朝日で放送された連続ドラマで、『週刊漫画TIMES』というマンガ誌で連載されているマンガのドラマ化とのこと（現在も連載中らしい）。現代から戦国時代にタイムスリップしたシェフの青年が織田信長の料理人に取り立てられ、料理で信長や他の人々を助けて活躍するというストーリー。主人公は過去の記憶を（料理のことを除いては）自分の名前も含めて失っており、なぜタイムスリップしたかも不明で、その謎や未来に帰る方法なども同時並行で探求することになります。
　テレ朝金曜11時台からの金曜ナイトドラマ枠での放送で、低予算をカバーする演出や脚本が上手く、現代若者向けの娯楽要素もバランスよく作られていて、なかなか面白いドラマでした。意外に史実考証がしっかりしており、要所要所の史実もきちんと押さえられている上に、定番を外して新説を取り入れてる部分もありましたね。深夜帯でありながら平均視聴率が10％を超える好調さ（金曜ナイトドラマ歴代ベスト10に入る高さ）で、第２シリーズは木曜８時からというゴールデンタイムに進出。おそらく予算がかかる時代劇だけにゴールデンのほうが良いという判断があったんでしょうし、同じ頃にフジの月９で放送された『信長協奏曲（コンチェルト）』が好調だったことも後押ししたんではないかと思われます。ところがゴールデンに進出した第２シリーズは視聴率が１度も10％に届かないという惨敗に終わり、以後続編は作られていません。木曜８時はもともと木曜ミステリーというテレ朝によくある２時間サスペンス的連ドラ枠だったらしく、金曜11時と木曜８時では視聴層も違っていたと思われ、ゴールデン進出が完全に裏目に出てしまったようです。う～ん、残念。結局描かれたのは原作の途中、室町幕府滅亡あたりまででした。

『JIN-仁-』『JIN-仁-　完結編』……#9684、映画板#1217
　2009年と2011年にTBSで放送された連続ドラマで、原作は『スーパージャンプ』で連載されていた村上もとかの同名マンガ。幕末にタイムスリップした現代の医師が、自分が命を救うことによってその人の運命や過去の歴史をも変えてしまうことに葛藤しつつも、目の前の人々の命を救うために現代の医療知識を駆使して治療を施していく姿を描いています。原作は大ヒット漫画ですが僕は未読。村上もとかのマンガは『六三四の剣』や『NAGISA』『龍-RON-』なんかは読んでるんですけどね。最初のドラマ化がものすごく中途半端なところで終わってしまったため、続編や映画化の可能性が取り沙汰されたんですが、その予定はないと公式発表されたため不満の声が多数あがりました。しかし結局続編の制作が決定し、無事完結しています。
　非常に質の高いドラマで、毎週楽しみに観てました。主演の大沢たかおにとっても代表作の１つになったと言っていいでしょうし、ヒロインの綾瀬はるかも良かった。大河『八重の桜』の主演に決まったのも、あるいはこれが影響したのかも。また内野聖陽の坂本龍馬と、小日向文世の勝海舟がめちゃくちゃハマり役で、そのため翌年の大河『龍馬伝』はいまいち観る気が起きませんでした（笑）。手塚治虫の『陽だまりの樹』では悪役まわりだった多紀一族の多紀元&#29744;が、自らの利害より医師としての使命感を優先する人物として描かれてるのも興味深い（演じてるのは相島一之）。原作はかなりの長編マンガのため、ドラマでは省略されたエピソードや登場しなかった人物もいるようです。またドラマオリジナルの設定もあり、結末も原作とは異なるそうです。
　韓国でも李朝末期に舞台を移してリメイクされ、日本でもDVD化されています。邦題は『Dr.JIN』。

『ミッドナイト・イン・パリ』……#9165、#9684
　追記することは特にありません。

『帰ってきたヒトラー』……#10342
　追記することはあまりありませんが、#10342でも触れた映画の中のドキュメント部分についてちょっと補足。ヒトラー（のそっくりさんタレントと思っている）に目をつけたテレビ番組のディレクターが、彼を連れて街角で市民にインタビューするシーンが、本当の市民にインタビューしているドキュメンタリーとなっています。そこだけ切り取ればなかなか面白い試みなんですが、劇映画としては残念ながら完全に逆効果。ストーリー的には（あるいはおそらく原作小説では）、「市民はヒトラーのそっくりさんだと思ってインタビューに答えている。しかし実は彼は本物のヒトラーなのだ……」という場面なのでしょう。しかし劇映画に挿入されたドキュメンタリー映像（であることは明白）として観てしまうと、ヒトラーのそっくりさんだと思ってインタビューに答えている人たちの認識のほうが実は正しい、要するに劇中のヒトラーはもちろん本物などではなく役者が演じているそっくりさんに過ぎないということが明白になって、観客も否応なくそれを意識させられることになってしまいます。おかげでその後は何があろうと「どうせ芝居」「どうせ役者」という感情で観ざるを得なくなってしまうんですよね。終盤のメタフィクション展開が今一つ効果的にならないのもそのためで、メタフィクションというのは虚実曖昧にする手法ですが、結局はお芝居＝虚構という冷めた認識で観てしまいます。やっぱり監督や脚本に問題があったんじゃないかなあ。
　ムッソリーニに置き換えたイタリア映画『帰ってきたムッソリーニ』も日本公開されましたが、そちらは未見。同じ枢軸国でも日本は政治構造の違いもあって、リメイクは難しいですね。『帰ってきた東条英機』とか『帰ってきた昭和天皇』ってのもちょっと違うもんなあ。１人の導き手に率いられてファシズムに突入していったのではなく、なんとなくみんなで戦争に向かっていったという一種の無責任体制は、戦争責任の所在を曖昧にしてしまったという意味でも日本人に重い課題を含んでいるように思います。

『WINDS OF GOD　ウィンズ・オブ・ゴッド』
　戦後50年の1995年に作られた戦争映画の１本。今井雅之作・主演の舞台（初演は1988年）の映画化で、舞台を演出した奈良橋陽子が監督しています。交通事故のショックで太平洋戦争末期の神風特攻隊基地にタイムスリップした漫才師コンビが主人公。意識のみがタイムスリップして他人である特攻隊員に乗り移っており、彼らは特攻隊員として生きることになってしまうというストーリー。戦時中にタイムスリップして価値観の違いに戸惑うという設定はさほど目新しくもないと思うんですが、舞台は米国公演も成功したとのことだったし、アート系っぽい単館上映だったんで隠れた良作かもとちょっと期待して観てみたところ、これが全くの期待外れ。ストーリーが想定の範囲内なのはある程度予想してましたが、低予算も相まって舞台人が舞台を映画化した時の悪いクセが見事に出ちゃってる映画でした。とにかくあらゆる意味でチープ。どうにもいまいちの出来でしたね。
　その後も何度か映像化されているようで、2005年には『零のかなたへ～THE WINDS OF GOD～』というタイトルでテレビドラマ化されており、そちらもDVD化されています。主演は山口智充と森田剛。また2006年には『THE WINDS OF GOD -KAMIKAZE-』というタイトルで今井自身が主演の他に監督も兼ねて再び映画化されています。DVD化がされていないようで、僕は今回調べるまで存在を知りませんでしたが、タイムスリップして特攻隊員に乗り移るのが米国人という設定で、戦時中の日本のシーンも全編英語という変わった映画だったようです。米国向けに作ったんだろうか？

『スローターハウス５』……#9687
　現代米国文学の巨頭カート・ヴォネガットの傑作SF小説をジョージ・ロイ・ヒル監督が映画化した1972年の作品。いわゆる時間移動ものとは違っていて、自分の意思とは無関係に自分の人生の過去や未来に意識が飛んでしまう主人公ビリー・ピルグリムが、第二次大戦後の米国での中産階級的成功から、第二次大戦中に戻って西部戦線でドイツ軍の捕虜になったかと思えば、空を飛ぶ不思議な物体に連れていかれたトラルファマドア星でのガールフレンドとの生活、フィラデルフィアでの自らの暗殺といった、人生の様々な局面を行ったり来たりする奇想天外なお話です。その中でも最もフィーチャーされるのがビリーがドイツ軍捕虜として遭遇した連合軍によるドレスデン爆撃。ヴォネガット自身が同じ体験をしてるそうですが、原作が出版された1969年当時は歴史学者や退役兵もほとんど触れることがなかったためあまり知られておらず、小説によって認知度が高まったそうです。僕は原作未読のまま映画を観たので、正直今一つわかりにくいところがありました。原作も買ってあるんだけど、ずっと積ん読状態なんだよなあ。いつか読まねば。
　原作は出版当時、保守派（政治的というより社会文化的な）から相当な反発と批判を受けたそうで、そういえば映画『フットルース』の冒頭でも、舞台となる保守的な田舎町で大人たちが小説『スローターハウス５』を批判してるところに登場した主人公の都会からの転校生が、読んだことがあるか尋ねられて「ええ、あれは傑作です」と答えて嫌な顔をされるというシーンがあったっけ。

『リンキング・ラブ』……映画板#1686
　追記することは特にありません。しかしこれを入れちゃうと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とかも入れなきゃならなくなっちゃうかなあ。あれにも主人公が「ジョニー・Ｂ.グッド」を演奏してそれを電話越しに聞くチャック・ベリーなんてシーンがありましたね。


＞てこ歴
　田中英道さん、お名前を見かけたことはあっても著書を読んだことはありませんでしたが、「てこ歴」を読むかぎり、かなり「キてる」と言わざるを得ませんなあ（笑）。もうほとんど末期症状というか、右とか左とかいった問題ではないですね。

＞ペパーミント・キャンディー
　『はちどり』のキム・ボラ監督も、好きな映画の１つとして『ペパーミント・キャンディー』や『オアシス』の監督であるイ・チャンドン監督の作品をあげてました。僕はイ・チャンドン監督の作品は、村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を映画化した『バーニング　劇場版』しか観ていませんが、これはちょっといまいちでしたね。他にキム・ボラ監督は、台湾のエドワード・ヤン監督の遺作となった『ヤンヤン　夏の想い出』と、韓国の女性監督チョン・ジェウンのデビュー作『子猫をお願い』（主演はペ・ドゥナ）をあげています。僕はそっちは２作とも観ていて、いずれも面白かったです。
　『はちどり』については、ベストセラーになった韓国の女性小説家の『82年生まれ　キム・ジヨン』との類似性を指摘するものも多く、こちらの小説も日本でも話題になった作品です。僕は未読だけど、ちょっと気になってる小説だったんだよな。

＞戦争番組
　戦後75年というわりとキリのいい年であるにも関わらず、コロナのおかげで戦争特集番組はちょっと低調。僕が観たのは、TBSの『終戦75年スペシャル　第１部・女性たちの8・15　第２部・綾瀬はるか「戦争」を聞く』と、『報道特集』の「戦争と感染症」。どちらもなかなか興味深かったです。三浦春馬が主演の１人のNHKドラマ『太陽の子』は録画したまま、まだ観ていません。

＞ドイツ史ドラマ再放送
　去年BS12で放送されていたドイツのテレビドラマ『バビロン・ベルリン』がようやく９月12日から毎週深夜３時に再放送開始。ワイマール共和国時代が舞台なんですが、めっちゃ面白かったんだよな。今度は全話Blu-ray保存せねば。


#11029　
徹夜城（次はしりとりかな、と意気込む管理人） 2020/08/20 20:22
「ヘンテコ歴史本」やっと更新。

　実は昨年来、「これはいける」（笑）と思って用意していた素材ですが、この夏になってやっととりかかって形にしました。今年この掲示板や史点でちょこっと触れていた人の本です。あれやこれや言ってるんで絞り込むのに苦労しまして。
　それにしても、昨年そのコーナーで公開した「南北朝は日本の機密は不思議と連日アクセスが多い。調べてみるとどうも「裏天皇」だのといったキーワードで見つけてくるようなんですが、あのページはそういうのを全面否定してるんだけどなぁ。そしかしあれだけ連日アクセスがそこそこあるというのは、そういう話を気に掛ける人が結構いるってことなのか。


＞ろんたさん
　ずいぶん遅れたレスになりますが、乱歩の時勢迎合のスパイ小説の話、面白く読みました。まぁ乱歩も大変だったんでしょうが、世の中余裕がなくなってくると探偵小説も書かせてもらえない、という怖い話です。
　「少年探偵団」も戦前から始まった作品なんですよね。「怪人二十面相」の元ネタがアルセーヌ・ルパンであることはほぼ確実ですが（名前は他の小説から）、あれって「ルパン隊ホームズ」さらには「黄金仮面」の少年向けバージョンという面もありますね。僕も小学校の時に何冊か読みましたが、一部の話に「えらく古い時代の話じゃないのか」とぼんやり思ったことがあります。


＞バラージさん
　前にもここで書いてるかな、と思いつつ書きますが、韓国現代史を通して描いた行くション映画として、「ペパーミントキャンディー」というのがありました。
　大胆にも時代を逆行していく構成になってまして、一人の男の人生を逆にたどりつつ、アジア通貨危機時代、その前の民主化と好景気の時代、その前の軍事政権時代…とここ半世紀くらいの現代勧告がずいぶん変わっていったことがわかる映画ではありました。

　歴史映像名画座もそろそろ更新しないとなぁ。


#11028　
バラージ 2020/08/15 12:02
1994年の韓国社会

　『はちどり』という韓国映画を観ました。韓国が空前の経済成長を遂げていた1994年を舞台とした女子中学生が主人公の思春期映画です。
　子供から大人へと変わり始めた少女と、新たな国へと生まれ変わろうとする韓国の歪みと矛盾と苦しみが二重映しに描かれているんですが、81年生まれの女性でこれが初監督だというキム・ボラ監督は最初からそれを意図して製作したとのこと。
　映画そのものについては映画板のほうにくわしく書いたんで、こちらではその背景として出てくる歴史的事象について。

　まずストーリーは映画板のほうにも書きましたが以下の通り。
　主人公は団地に住む14歳の中学２年生。小さな餅屋を営む両親と、姉と兄の５人家族。学歴偏重のスパルタ教育がのさばる学校にはなじめず友だちもいない。家庭では権力的な家長の父親に誰も口答えできず、高校受験に失敗して隣町の高校に通う姉は彼氏と遊びまくっては父親に叱責されて泣き、ソウル大学を目指すよう父親からハッパをかけられている中学生徒会長の兄はそのストレスから親に隠れて主人公に暴力を振るう。家庭にも学校にも居場所がないと感じる主人公は、同じ漢文塾に通う別の中学の親友とカラオケやディスコで遊んだり、やはり別の中学に通うボーイフレンドや同性愛的に慕ってきた年下の少女とデートを楽しんだりして過ごす。
　孤独を抱える彼女が出会ったのは、新たに漢文塾に来た女性講師だった。ソウル大学を長く休学中という講師はどこか不思議な雰囲気を持ち、中学生の主人公にも子供扱いせず同じ目線で話を聞いてくれた。彼女は主人公に「誰かに殴られても黙っていてはダメ」と言葉をかける。初めて自分を本当に気にかけてくれる大人に出会った主人公は、女性講師に徐々に惹かれていくが、やがて講師はなぜか突然塾を辞めてしまう。そして10月21日、ソウル中心部の漢江にかかるソンス大橋が崩落する大事故が発生した……。

　映画に描かれる韓国の1994年という時代の空気がとても興味深い映画でした。民主化運動の末に軍事政権が終わり文民政府の時代となった90年代ですが、政治体制が変わっても社会風俗や生活文化は一夜にしては変わらない。家庭には強い家父長制が残り、また男尊女卑文化も根強く、学歴主義と相まって男児優先文化が家庭を、そして社会を支配していたことがよくわかります。最初、主人公が父親にずっと敬語で話してるので、養子とか親戚に預けられた子なんだろうか？と思ったんですが、姉兄も同様に父親には敬語だったので、韓国はもともと家父長制文化が強い国だと聞いていたことを思い出しました。それでいて映画は誰かを断罪したりはせず、父親や兄もまたそのような家父長制的男尊女卑文化のある種の犠牲者として描いているのも興味深い。
　また1994年に起こった大きな出来事である北朝鮮の金日成（キム・イルソン）主席の死去も描かれてます。耳の裏のしこりを除去する手術のために主人公が入院した病院でテレビが速報を伝えると、同室のおばちゃんやおばあちゃんたちは、「まさか死ぬなんて」「ずっと死なないと思ってた」「これって喜べばいいの？」なんて戸惑っている（笑）が、主人公にとっては特に関心もない出来事という描写でした。
　こういう小さな世界の小さな社会文化って、いわゆる「歴史映画」では描き得ないもので、やはり近現代&#8212;&#8212;特に戦後以降の現代史を描く映画は、こういう「歴史」というよりも「時代」が描かれているもののほうが興味深いですね。そのクライマックスとして起こるのがソンス大橋崩落事故。これは主人公にもものすごく大きな出来事となるんですが、主人公の人生のある種の転機と韓国社会の転換点を見事に重ね合わせた構成の巧みさに感心しました。とても初監督作とは思えない。とても良い映画でした。


＞「文久年間に定住したアメリカ人が、日本人女性との間に生まれた子に「お前はアメリカ人だ。アメリカのために働け」と教育（洗脳？）し、それを子々孫々続けて結成されている。」
　いやぁ、笑えるような笑えないような話で（笑）。いくら創作とはいえ「んなアホな」って話ですし、乱歩自身ももちろんそれはわかった上で戦時下の物語のネタとして書いてるんでしょうが、いかにも日本的な血の思想と、そういうものとは最も縁遠い米国人を掛け合わせると、なんともおどろおどろしいというか不気味というか気持ち悪い。そういう血の思想って下手すりゃ間違いなく、いや下手しなくても間違いなく差別につながっていく思想なんだよな。
　ちなみに僕が読んだ乱歩作品はポプラ社版の『鉄塔王国の恐怖』だけで……という話は、あれ？　前もしたっけ？と過去ログをさかのぼってみたら、#10851でしてました。また少年探偵団というと子供の頃によく観てたのがテレビドラマ『少年探偵団』（1975～76年）。「♪７人、７人、７人そろえば、くじけはし～な～い～。ぼ～くらは仲間だ～兄弟だ～。魔人怪人ドンと来い。知恵と勇気で戦うぞ。き～たぞ、それ！　取り囲め～。BD7、BD7、BD7は、しょうねんたんていだ～ん！」と主題歌もなんと今でも全部覚えてました（自分でもびっくり）。このドラマの怪人二十面相の変装はどう見ても変身といった感じで、女性やロボットにまで化けちゃうのは子供心にも無理があるだろと思ってましたね。演じているのは団次郎なんですが、クレジットでは「怪人二十面相　　？」となってて、これまた子供心にも「いや、なんで「？」なんだよ。団次郎さんでしょ。『帰ってきたウルトラマン』の人だよ」と思ってましたね（笑）。あとは乱歩本人が主人公の1994年の映画『RAMPO』の奥山監督バージョンを観たくらいかな。


#11027　
ろんた 2020/08/09 17:16
八月だから江戸川乱歩「偉大なる夢」

　さる理由で横溝正史の短篇集『花髑髏』(角川文庫)を買いに行ったのですが、どこにもない。確かに発売日を数日過ぎてはいたのですが、他の新刊はあるのに『花髑髏』だけがない。結局、車で30分かけ地域で一番大きい店で購入できました、最後の一冊だったけど。で、店内をぐるぐる回ると、岩波のＨＰでも「残部僅少」となっていた『江戸川乱歩作品集』(全三冊)があるではないですか。早速、買いそびれていた「Ⅰ」を購入しました。この作品集、三冊で「孤島の鬼」「陰獣」「黒蜥蜴」「パノラマ島奇談」「芋虫」が読めてお買い得。
　一番興味深かったのは「Ⅲ」収録の「偉大なる夢」。初出は『日の出』(S18.11-S19.12)で、探偵小説が壊滅状態にあった時期。さらに「芋虫」以来、軍部に睨まれていた乱歩は、新作の発表も単行本の増刷もできない状態に追い込まれ、執筆はわずかに別名義の科学読み物に限られていた。それが連載なんてできたのは不思議ですが、編者・浜田雄介の解説によると小栗虫太郎や海野十三も同時期に新作を発表しているので、軍部の方で何らかの方針変更があったのかも。
　そうした発表時期のせいもあって非常に軍事色が強い。強すぎたからか、戦後は単行本未収録、没後の全集に初めて収録され改稿がされていません。そのため、当時の空気が缶詰のように保存されていて、冒頭にある(作者の言葉)も勇ましい。

　夢を尊重せよ。われらの陸海軍は皇国三千年の夢を実現しつつあるではないか。偉大なる夢と月々火水木金々の努力、かくして偉大なる現実は生まれるのだ。夢無くして科学は無い。科学の進歩は天才の夢に負う所如何(いか)に多大であるか。科学史の毎頁がこれを証明している。現実に先行する夢なくして現実の進歩はない。今や完全なる勝利か、然(しか)らずんば国民一人残らずの死あるのみである。眼前の現実に跼蹐(きょくせき)して、徒に物資の不自由を喞(かこ)つことをやめよ。卑小なる保身を離れて、偉大なる夢を抱け。私は一つの夢を語ろうとする。無論、昔日の悪夢を語るのではない。昔日の悪夢は悉(ことごと)くかなぐり捨て、私の力の許す限りに於て、大いなる正夢を語ろうとするのである。

　「新しい夢」を「皇国三千年の夢」、「昔日の悪夢」を「エログロな探偵小説」と解釈すれば転向宣言となりそうですが、「偉大なる夢」はアリバイ崩しなど本格探偵小説の結構を持っているので、むしろ、これからも探偵小説を書くぞ、という決意表明と受け取りたい。
　ストーリーは、画期的な新型航空機エンジンをめぐるアメリカ側スパイと憲兵隊との暗闘を描くスパイもの。ところがこの新型エンジンは、東京－ニューヨーク間(１万㎞余り)を五時間で結ぶので時速2,000㎞/h。超音速です(笑)。このエンジンを乗せた爆撃機を量産し戦局を一変させる、と憲兵隊長が夢を語るのですが、機体の開発の方が大変だろうな。
　またルーズベルト大統領が、日本人侮りがたし、と語るんですが、ワシントンＤ.Ｃ.が灯火管制されている。いや、ロンドンなら分かるんだけど、ワシントンは大丈夫じゃない？(笑)　東京がやってるからワシントンもやってるはず、と筆が滑ったのか、そう書くように強制されたのか？
　日本で暗躍するアメリカのスパイ団という設定もユニーク。「007は二度死ぬ」のジェームズ・ボンドみたいのを想像しちゃうけどさにあらず。文久年間に定住したアメリカ人が、日本人女性との間に生まれた子に「お前はアメリカ人だ。アメリカのために働け」と教育(洗脳？)し、それを子々孫々続けて結成されている。どっかで聞いたことあると思ったら、公儀隠密の「草」ってヤツですね。一般人として暮らしつつ、公儀からの指令で隠密として活動を始めるという。ああ、「スリーピーセル」ってのもありましたね(笑)。
　作中、東京が空襲されて、「病院を狙い撃ちしやがって、鬼畜米英許すまじ」という話になるんですが、この爆撃機、大陸から飛んできている。実際、九州北部など成都からの爆撃があったようですが、航続距離の問題でその辺が限界だったらしい。太平洋から来ることにすると、日本軍の「転進」を描かなきゃならなくなるからでしょうか。
　岩波文庫では他に短篇集と少年探偵団ものが二冊(『怪人二十面相・青銅の魔人』『少年探偵団・超人ニコラ』)出てます。少年探偵団の第一作「怪人二十面相」では、少年に追いかけ回されて捕まっちゃう二十面相がかなり情けない(笑)。ただ発表が昭和11年と聞くと、この少年たちのうちどれだけが戦後に生き残れたのか、しんみりとしてしまう八月某日。「青銅の魔人」(S24)でも小林少年は相変わらず少年のまま。でも世相を反映して、浮浪児が捜査に加わっています。その方が元ネタの「ベイカーストリート・イレギュラーズ」に近いんだけど。

＞徹夜城さん
　「角栄に花束を」は生誕一世紀と銘打って連載が開始されたようです。でも角栄が生まれたのは1918年で、連載開始は2019年(笑)。角栄を描くとなると、自民党の暗黒面を描き、「コンピューター付ブルドーザー」という側面を描き(これはやりやすい)、そのうえに信濃川の河川敷をアレしたとかピーナッツをナニしたとかというヤラカシも描かかなきゃならない。でもそれが田中家の「あらまほしき角栄像」に合致するかというと……(汗)。「角栄に花束を」がどこまでやるか、というのは興味深いですね。
　公平を期すと「角栄に花束を」では、角栄を劇画的熱血野郎とだけ描いているわけではありません(その傾向は強いけど)。渋る海運業者に資材の運搬を承知させる場面。業者のほっぺたを札束(百円札×100)じゃなくて札束の山でひっぱたくと同時に、相手を「国士」と持ち上げる。その後「"男が欲しがるモノ"が３つある。"金"と"地位"と"名誉"だ」「そのうち２つも差し出したんだ。働いてもらわなくちゃ困るぜ」と嘯きます。悪党です(＜ほめている)。
　でも畳に叩きつけた札束が「シュウウウ……」と湯気を立てるのはやり過ぎ(笑)。あと海運業者がほとんどヤクザ(亜貴多組！)なのは、荷役業者と混同しているのかな。

＞バラージさん
　五島勉さん、その時々の読者の不安を取り込むのはうまかったと思います。でも、コロナ禍は予言できてない、と突っ込まれてましたね。大体、第一作からして石油ショックを予言できてたかな？　核の恐怖というのは冷戦時代、通奏低音のようにあったわけですけど、80年代に入る頃にはソ連のアフガン侵攻やレーガン大統領の登場などで顕在化したように思います。「マッドマックス」「北斗の拳」、反核運動もこの時期。あと「核の恐怖」というのは「科学技術への不信」という形で「オカルト」や全共闘運動と繋がっていて、社会派以前の探偵小説の再評価もここから始まっていたりするのでした。


#11026　
バラージ 2020/08/04 23:30
歴史映像作品感想追記　第二次世界大戦・アジア太平洋戦線編②

　名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記、第二次世界大戦・アジア太平洋戦線の後編。

『君を忘れない』
　これまた戦後50年の1995年に作られた戦争映画。いや、戦争映画というより青春映画といった雰囲気かな？　こっちは映画館で観る気が起きず、後になってレンタルビデオで観ましたが、レンタル店でも戦争映画コーナーではなくドラマ映画コーナーや青春映画コーナーなんかに置いてあります。神風特攻隊の話で、当時僕は正直言ってすでに神風特攻隊ものは食傷気味だったんでいまいち映画館で観る気が起きなかったんですよね。唐沢寿明・木村拓哉・袴田吉彦・反町隆史などのイケメンたちの中に１人だけ松村邦洋がいるというわかりやすい配役で内容はもうあまり覚えてないんですが、豪華キャストのわりには低予算の映画でした。良く言えばしつこくないというかくどくない作風のあっさりとしたやや薄味の映画で、そういう意味で戦争映画というより青春映画風味。可もなく不可もなくといった感じの、さほど面白くない作品でしたね。

『戦争と青春』……#9726
　意外に珍しい東京大空襲を題材とした1991年の映画。名匠・今井正監督の遺作となりました。原作・脚本は早乙女勝元。ビデオ化のみでDVD化はされていませんが、複数の動画配信サイトで動画配信はされています。これも僕が大学生の時の映画だなぁ。
　残念ながら出来はいまいち。工藤夕貴が演じる現代の女子高生が、伯母が体験した東京大空襲の話を父親から聞かされるという形式で戦時中の物語が展開し、その伯母の若い頃を工藤が２役で演じています。女子高生が伯母の体験した戦争を追体験していくという演出なんでしょうが、これがどうも……。タイムスリップネタと同じで、当時の若者に戦争を自分のこととして考えてもらうためだったんでしょうが（そういや平成に入ったばかりの頃なんだな）、なんというかかえって押し付けがましく、なおかつなんだか嘘くさく感じられてしまいました。ストーリーも全体的に平板で面白くなかったですねえ。また最後のほうで脇役の松村達雄が日本の加害の側面にも台詞でちょっとだけ触れるんですが、これがまた本当に取って付けたような台詞で、あれなら無かったほうが良かった。今井監督が巨匠なことは知ってたし、だからこそ期待して観たんですが、衰えたりと思わせる凡作でした。

『ひめゆりの塔』（1953年）……#9726、映画板#1348
　沖縄戦における、ひめゆり学徒隊の悲劇を描いた1953年の映画。石野径一郎の小説の映画化で、こちらは今井正監督の代表作の１つです。確か中高生の頃にNHK総合か教育でテレビ放送されてるのを観ましたが、たぶん途中からだったんじゃないかなあ。何しろ昔のことなのでよく覚えてないんですが、ラストがそれまでに僕が観たことがなかった「これが戦争だ」と観ている人を突き放すような救いのない終わり方で、強い衝撃を受けた記憶があります。
　当時は沖縄返還前で当然ながら沖縄ロケはできず、千葉の海岸などで撮影したとのこと。そのためか今井監督は同じ水木洋子の脚本で、1982年に現地沖縄ロケのカラー版でリメイクしています。タイトルは同じ『ひめゆりの塔』で、ビデオ化のみでDVD化はされていませんがこれまた動画配信はされています。1995年の下記『ひめゆりの塔』は、その水木脚本と仲宗根政善の『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』が原作。また1968年の日活映画『あゝひめゆりの塔』も石野径一郎の小説が原作です。1962年の『太平洋戦争と姫ゆり部隊』という映画もありますが、そちらはタイトルと違って沖縄戦全体を描いているらしい。新東宝を追放された大蔵貢が設立した大蔵映画で作った日本でも珍しい70㎜映画だそうです。僕は1953年の本作と1995年の下記『ひめゆりの塔』以外は未見。

『ひめゆりの塔』（1995年）……#9988
　追記することは特にありません。戦後50年の1995年に作られた戦争映画の中では唯一の良作でした。

『鬼が来た！』……#9592、映画板#1201
　アジア太平洋戦争末期の中国華北地方で、「私」と名乗る何者かから銃で脅され日本兵捕虜を預けられた中国人農民とその日本兵捕虜との奇妙な交流と、戦争の狂気、有為転変する運命の皮肉を描いたチアン・ウェン監督・主演のドラマ映画。2000年のカンヌ映画祭で審査員特別賞を受賞しました。中国政府機関の審査を受けないままカンヌに出品したため本国では上映禁止となり、チアン・ウェンも以後しばらく監督はできなかったとか。日本兵捕虜役で出演した香川照之の『中国魅録：「鬼が来た！」撮影日記』も出版されましたが、香川さんの出世作でもあるかな。
　実在の人物や実際の事件を扱っているわけではないんですが、日本人の性質をこれほど上手く描いた映画は日本映画にもあまりないと言えるほどの作品で、日本人の心性を中国人監督がここまで理解してるのかと驚きました。それでいて日本人とか中国人とかを超越した普遍的なものを描いている傑作です。とにかくすごい映画でした。


＞名画座・アメリカ合衆国史編・追記
『ホッファ』
　DVD化はされていませんが、複数の動画配信サイトで動画配信がされています。

＞大河ドラマ代替番組
　先々週は、ここ10年の大河ドラマの制作舞台裏を紹介した番組をやってましたが、なかなか面白かったですね。その前にやってた00年代以前の大河名場面番組よりも個人的にはずっと楽しめました。『麒麟がくる』序盤の草原や山々の緑が鮮やかすぎて不自然だったのは、やっぱりCGによる着色だったのがわかっちゃいましたが（笑）。しかしまあドラマを作るのはほんと大変なんだな。

＞高嶋政伸
　ご紹介の記事を読みましたが……すいません、僕は『太平記』以外のところが印象に残ってしまいました。１番興味深かったのは、やはりデビュー作となった『純ちゃんの応援歌』のエピソード。山口智子と唐沢寿明の馴れ初めともなった朝ドラですが、高嶋さんが出てた記憶はありません。まあ、ほとんど観てませんでしたからね。
　『太平記』に続いて主人公の弟役だった『秀吉』は、監督に「弟に見えるんだよ」と言われた話が面白い。ま、実際にも弟ですし（笑）。でも政宏さんはあんまり兄貴キャラをやってないなあ。『人生はフルコース』というドラマは全然知らなかったんですが、主人公のモデルになった村上信夫さんってひょっとして……と思ったら、やっぱり『いだてん』にも出てきた人でした。今回改めて検索してお顔を拝見したら、どこかで見たことのある有名な顔。高嶋さんや『いだてん』の黒田大輔さんよりも芋洗坂係長に似てるような。『真田丸』は、演じた北条氏政が父氏康から「汁飯を一度に食べる分量も分からないで、天下は取れない」と言われたことについて、高嶋さんも父の忠夫さんからお茶漬けの食べ方で同じようなことを言われたことがあり、氏政のことだったんだと気づいたというのが面白かったですね。
　かつては『HOTEL』などのような好青年役が多かった高嶋さん。プライベートのなんやかんやがあってからいつの間にか最近ではすっかり悪役を怪演するのが板についちゃいましたが（笑）、でもなんだか今のほうが楽しそう。役者さんは正義側をやるより悪役のほうが面白いっていう人も多いですしね。


#11025　
徹夜城（いろいろ書いてて順調に遅らせている管理人） 2020/08/03 23:02
高嶋政伸さんインタビュー

　いきなり芸能ネタなタイトルですが、NHKのサイトで高嶋政伸さんのインタビューが出てたのでご報告まで（さっきツイートもしてますが）。
https://www2.nhk.or.jp/archives/jinbutsu/detail.cgi?das_id=D0009070141_00000&og=D0009121676_00000

高嶋さんがこれまでに出演したNHK作品について思い出話をしてるんですが、どうしても注目したのは「「太平記」。当然ながら当時はまだ20代半ばで初の時代劇、しかも大河。周囲の出演者のあまりの豪華さにプレッシャーで帯状疱疹にまでなった、という話が明かされています。しかも当時は長回し撮影が多く先輩俳優が長いセリフを言ったあとで自分の番が回ってくると…という重圧は確かに大変なもんだったでしょう。

　伝説といっていい、最終回の毒殺シーンについても、やはり思い入れが強いようで、詳しく撮影ばなしをされてます。あれ、NGなしで５テイクも撮ったんですね。ディレクターがそれでももっともっと、と気分を高めていって、あの芝居になったわけです。

　で、日曜朝のアンコール放送の方ですが、早くも「帝の脱出」の回。後醍醐天皇が隠岐を脱出、楠木正成は千早城で籠城戦、その戦場に新田義貞の姿が…という盛沢山な回。こっから歴史もドラマも急展開していくのであります。当時の人たちにも目が回るような状況だったでしょうね。


#11023　
バラージ 2020/07/29 21:35
歴史映像作品感想追記　第二次世界大戦・アジア太平洋戦線編①

　名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記、オセアニア・南極史、第一次世界大戦、第二次世界大戦・欧州戦線の作品はないので一気にすっ飛ばして、第二次世界大戦・アジア太平洋戦線の前編です。

『少年義勇兵』……#9726、映画板#1222
　太平洋戦争前夜から初頭のタイ軍の少年義勇兵を描いた2000年のタイ映画。太平洋戦争は日本軍のイギリス領マレー侵攻で始まった（真珠湾攻撃の１時間前）わけですが、その際に起こったのがマレーの隣国タイへの上陸と中立侵犯。日本軍はマレー侵攻のために、当時の東南アジアで唯一の独立国だったタイを同盟国にはできないまでも親日的なピブンソンクラーム首相に領内通過を認めさせたかったのですが、日本に容認的な政策を採ることに将来的な危険性を感じたピブンソンクラームは雲隠れしたため、上陸した日本軍とタイ軍の間で戦闘が発生。数時間後に姿を現したピブンソンクラームと日本軍の間に軍隊通過協定が結ばれ、停戦命令が出されました。
　映画はタイの隣国フランス領インドシナ（仏印）への日本軍の進駐で不穏な空気が漂う1941年５月に、タイ軍が兵力増強のため少年義勇兵を募集するところから始まります。前半は少年義勇兵になった主人公たちの訓練の合間に恋や友情も挟まれる青春ストーリー。後半は12月８日未明に上陸してきた日本軍との激しい戦闘が描かれる戦争映画となります。おそらく実際の戦闘よりもちょっと大規模すぎるんじゃないかという気もしますが、映画的にはそうしないと盛り上がらないでしょうしね。主人公の姉の夫がタイで写真屋を開いている日本人なんですが、実は日本軍特務機関員という描写もあります。青春映画＆戦争映画としてなかなか面白い佳作でした。
　歴史的にはその後タイは実質的に大日本帝国の同盟国に組み込まれ、事実上の占領下に置かれるんですが、その時代を舞台とした『メナムの残照』というタイ人女性と日本軍人の恋愛小説があります。女性作家トムヤンティーが1960年代に発表した作品で、今までに５度の映画化、７度のテレビドラマ化がされるほどの人気作とのこと。1988年の２度目の映画化（主演は当時の国民的人気女優チンタラー・スカパット）は日本でも映画祭上映の後にビデオ化されていて、2013年の５度目の映画化も映画祭上映されているそうです。欧米映画や中華圏映画・韓国映画と違って、東南アジアの映画は日本公開されることが少ないこともあって、太平洋戦争を描いた東南アジアの映画もまた少なく、他には映画祭上映された『アドナン中尉』というマレーシア映画と、ビデオスルーされた『戦場のアンジェリータ　従軍慰安婦の叫び』というフィリピン映画ぐらいしか知りません。僕はいずれも未見。

『風の輝く朝に』……#9549、映画板#1201
　日本軍の香港侵攻を背景に２人の男と１人の女の恋愛と友情を描いた1984年のドラマ映画。香港ニューウェーブの代表作の１つで、その高い評価を伝え聞いた香港映画ファンの間では日本公開前から原題の『等待黎明』で知られていた作品です。1990年にようやく日本公開され、大学生だった僕は翌年か翌々年に当時住んでた都市のホールでの上映会か何かで観ました。いや～、懐かしい。戦争映画ではなく青春映画に近いんですが、日本軍の香港侵攻を描いた映画は珍しいのでご紹介（といっても戦闘シーンはありませんが）。
　日本軍の侵攻が始まり、オーストラリアへの脱出を試みるも失敗した青年（チョウ・ユンファ）。彼は仕方なく米倉庫の日雇い仕事につくが、そこで意気投合した青年（アレックス・マン）とその恋人（イップ・トン）と今度は中国内地に逃れようとするがその日に香港が陥落。香港は無政府状態の混乱から日本軍による圧政が始まり、彼らの運命もそれに巻き込まれていく……。
　男２人と女１人の三角関係を描いた青春映画ということで、フランス映画の『冒険者たち』や『突然炎のごとく』（僕はいずれも未見）と比べられることも多い映画ですが、日本軍による暴虐もよく描き込まれています。若き日のチョウ・ユンファの出世作で、ユンファは80年代末頃には『獣たちの熱い夜　ある帰還兵の記録』（1981年。僕は未見）、本作、『男たちの挽歌』（1986年）、『誰かがあなたを愛してる』（1987年）の４本が自分の出演作の中で気に入っていると言ってた記憶あり。イップ・トン（セシリア・イップ）、アレックス・マンも好演でなかなかの佳作です。

『戦場のメリークリスマス』……#9726
　小説家のローレンス・ヴァン・デル・ポストが自らの実体験を反映させた、ジャワ島の日本軍捕虜収容所における日本軍人とイギリス軍人捕虜との邂逅を描く中編小説集『影の獄にて』を、大島渚監督が国際的キャストで映画化した1983年の日英合作映画。原作のうち、ハラ（ビートたけし）とロレンス（トム・コンティ）のエピソードを描いた『影さす牢格子』と、ヨノイ（坂本龍一）とセリエ（映画ではセリアズ。デヴィッド・ボウイ）のエピソードを描いた『種子と蒔く者』という別々の中編を組み合わせて構成されています（残る一編『剣と人形』のエピソードはロレンスが台詞の中でわずかに触れるのみ）。戦場が舞台ではないんですが、日本史に入れるのもイギリス史に入れるのも違うし、ましてやインドネシア史の映画でもないんで、第二次世界大戦に入れてみました。
　僕は確か90年代半ばから後半あたりにビデオで観たかなぁ。大学時代に読んだ心理学者・河合隼雄氏の『影の現象学』でまず原作の一編『影さす牢格子』を知り、それから90年代前半から半ばぐらいにその原作を読んで、しばらくしてから本作がその映画化だと知ってビデオで観たという順番でした。『影の現象学』で紹介された『影さす牢格子』については、河合氏がスイスのユング研究所に留学中に分析医からすすめられ、読んで深く感動したというエピソードが素晴らしく、それで原作を読んだんですよね。確かにとても良い小説でした。
　映画は個人的には小説に比べればやや落ちるものの、それでもなかなか面白かったです。坂本龍一による有名なピアノ音楽が印象的。公開時にテレビCMが流れてた記憶があるんですが、今思えばあのたけしがどアップになったシーン、映画のラストシーンなんじゃないかな？　それをCMで先に流しちゃダメなんでは？（笑）

『きけ、わだつみの声　Last Friends』
　戦後50年の1995年に作られた戦争映画の１つ。1950年の映画『日本戦歿学生の手記　きけ、わだつみの声』のリメイクとしているサイトもありますが、ストーリーが全く違っていてリメイクではありません。1950年版はビルマでのインパール作戦を舞台としているのに対して、本作はフィリピン戦線や神風特攻隊、徴兵拒否など複数の題材を同時平行的に扱った群像劇作品となっています。僕は1950年版は未見ですが、戦没学徒兵の手記を集めた『はるかなる山河に　東大戦歿学生の手記』とその続編『きけわだつみのこえ　日本戦歿学生の手記』をヒントに製作されたとのことで、クレジットにも原作の表記はありません。それらの手記も未読ですが、おそらくは手記なので明確なストーリーがあるわけではないでしょうし、そのまま原作としては使えないでしょう。本作もまたクレジットに原作の表記はなく、どの程度手記を反映しているのか、あるいはタイトルのみいただいたのかは、僕は原作を読んでないため不明です。
　映画はラグビーをしていた青年（緒形直人）がなぜか突然1943年10月の学徒出陣壮行会が行われてる神宮外苑にタイムスリップするところから始まります。この手のネタはこのころに作られた戦争映画にやたら多かったもので、おそらく戦争が遠い昔のこととなり身近に感じられなくなった当時の若者たちに自分のこととして考えてもらうための手段だったんだろうけど、ちょっと安易というか少なくともこの映画においてはあまり効果的になっていません。演出が悪いのか脚本が悪いのかタイムスリップがあまりに唐突ですし、そもそもなぜタイムスリップしたかの説明が最後までないのもなんとも。結局、当時の価値観が理解できない青年は徴兵拒否をして逃亡しまくるんですが、このパートが全体的に支離滅裂というか辻褄が合ってなくて首をひねるばかり。あるいは実はタイムスリップではなくて、青年が見た夢の話だったのかな？　そう考えれば一応辻褄は合うんですが、でもタイムスリップにしか見えなかったよなあ。
　壮行会で青年が会った３人の学生のうち、２人（織田裕二、風間トオル）はフィリピン戦線へ送られ、１人（仲村トオル）は神風特攻隊に志願。フィリピンでは従軍看護婦（鶴田真由）の他に、バイクに乗って上半身に弾帯を巻いたランボーみたいな兵隊（的場浩司）も出てきたりして、どうにもリアリティが……。ただ日本軍人の現地人に対する暴虐や、朝鮮人従軍慰安婦の存在などが描かれてたのは、おお、と思いました。日本映画に朝鮮人従軍慰安婦が登場したのは今のところこれが最後なんじゃないかなあ。神風特攻隊のパートは印象が薄かったのか、あまり記憶にありません。
　この３つのエピソードが冒頭以外は特に関係なく別々に進むため全体的に散漫だし、他にもいろんな要素てんこ盛りなためそれぞれの掘り下げが浅く、また若者向けエンタメ要素が中途半端に取り入れられてそれがちぐはぐな印象を与えてしまっており、残念ながらいまいちとしか言い様のない映画でした。

『従軍慰安婦』……#9689
　従軍慰安婦を題材とした1993年（1991年としているサイトもあり）の韓国映画。日本では1995年にビデオスルーされたのみで、DVD化はされていません。当時はマクザムやアルバトロスなどからこの手のアジア映画がやたらとビデオスルーされていて、以前取り上げた『南京1937』『黒い太陽七三一』や前記の『戦場のアンジェリータ　従軍慰安婦の叫び』の他、『香港大虐殺』とか『従軍慰安婦２』なんてのもリリースされてましたね。『従軍慰安婦２』は香港映画で本作とは何の関係もないんですが、発売元のアルバトロスが勝手にシリーズみたいな邦題にしてました（笑）。パッケージデザインやタイトル文字もやたらおどろおどろしく、そういう線で売ろうとしたんでしょうねえ。本作は1998年にハピネット・ピクチャーズ（ファイブウェイズとするサイトもあり）から再発売されたんですが、その時はもっとまともなデザインになってました。
　映画は1943年8月に強制的に集められた慰安婦たちがフィリピン戦線へ送られるところから始まり、ほぼ全編フィリピンが舞台ですが、正直言ってB級としか言い様のない出来です。明らかに低予算で、女優たちもおそらく当時日本でちょっと流行ったコリアン・エロス映画に出てたような人たちでしょうし、主要人物以外の俳優たちはフィリピン現地の人だったような。日本兵たちも当然全員韓国語ですが、明らかに侮蔑的なニュアンスの「バカヤロー」と「チョーセンジン」だけは日本語なのがちょっと興味深かったかな。戦死する日本兵が慰安婦に最後におっぱいを触らせてくれと頼み、「お母さん……」と言って死んでいくシーンがあったり、ラストが主人公慰安婦の「果たして悪かったのは日本人なのか、私たちを見捨てた祖国だったのか……」みたいなモノローグなど、日本＝悪という構図を避けるためか、妙なバランス感で陳腐な描写を入れてますが、とにかく映画としてつまらんので好事家以外は観る必要はないと思われます。


＞名画座情報訂正
　歴史映像名画座の古代ローマ史にある『La leggenda di Enea』について、Amazonの情報を引用して、『トロイ』という邦題でビデオメーカーという会社からビデオが出ていると紹介しましたが、「ビデオメーカー」というのは会社名ではなく、一般的な意味でのビデオ販売会社という意味かもしれません。というのも今回調べた『従軍慰安婦』はアルバトロス、『戦場のアンジェリータ』はマクザムからの発売なのに、Amazonでは発売元が『トロイ』同様「ビデオメーカー」になっているからでして。Amazonのシステムはよくわかりませんが、出品者が発売元を記入しなかった場合には「ビデオメーカー」と表記されるのかもしれません。いろいろ調べましたが、『トロイ（La leggenda di Enea）』の発売元はわかりませんでした。


＞オカルトと第三次世界大戦の思い出（追悼・五島勉）
　五島勉氏が亡くなられたということで、子供の頃読んだなぁと懐かしく思い出してしまいました。いつ頃のことだっけ？と著作の出版時期を見てみると、おそらく1982～85年あたり。ちょうど僕の中学生（＆予備校生）時代ということになります。何がきっかけだったかも最初に読んだのがどの本だったかももう覚えてないんですが、確か『ノストラダムスの大予言』は４ぐらいまで出てたはず。当時はとにかくとりつかれたように夢中になって、ノストラダムスばかりでなく五島氏の著書（祥伝社ノン・ブック＆ノン・ノベル）を過去作までさかのぼって読み尽くしましたね。まるごと信じて読んでたというよりも、半信半疑ながら面白くてやめられなかったという感じかな。初期の作品なんかはさすがに時代的な古さを感じたり（最初の『～大予言』は1973年出版）、作品同士で相互の主張が微妙に矛盾してたりもしたんですが、そういうところも含めてエンターテイメントとして面白がってたような気がします。徹夜城さんがTwitterで触れてた惑星直列とかグランドクロスも著書のどれかで取り上げてた記憶があるし、ポールシフトなんてのも取り上げてたなあ。
　僕が読んだ著作群は、『ノストラダムスの大予言』（1973年、以下特に記載のないものはノン・ブック）、『実説大予言』（西丸震哉・共著、1974年）、『宇宙人謎の遺産』（1975年）、『カバラの呪い』（ノン・ノベル、1976年）、『ツングース恐怖の黙示』（1977年）、『超兵器戦争（スーパーウェポンゲーム）』（ノン・ノベル、1978年）、『カルマの法則』（1978年）、『～大予言２』（1979年）、『～大予言３』（1981年）、『ファティマ・第三の秘密』（1981年）、『～大予言４』（1982年）、『ノストラダムスの大秘法』（1983年）、『影の軍団』（ノン・ポシェット、1983年）、『第三の黙示録』（1983年）、『幻の超古代帝国アスカ』（1985年）といったあたり。『～大予言５』（1986年）は読んだかどうか記憶が曖昧で、このあたりで卒業したようです。本当に憑き物が落ちるようにきれいに卒業しちゃったんですよね。思春期の流行り病とでも言うべきか（笑）。ノストラダムス本だと、川尻徹という精神科医の『滅亡のシナリオ』（1985年）なんてのも読んだなあ。
　特に面白かったのは『ノストラダムスの大予言』ではなく（笑）、『ノストラダムスの大秘法』『幻の超古代帝国アスカ』と、小説の『超兵器戦争（スーパーウェポンゲーム）』『カバラの呪い』といったあたり。高校生になると五島氏の本はほとんど古本屋に売っちゃったんですが、『アスカ』と『超兵器戦争』だけは大学生の頃まで持ってましたね。あるいは最初に読んだ五島氏の本は『超兵器戦争』だったかも。一種の近未来戦争小説でして、出てくる超兵器がなかなか面白かった記憶があります（ミサイルの最高速度が戦闘機より遅いなど変なところもあったけど・笑）。オカルトの文脈で語られることの多い『ノストラダムスの大予言』（をはじめとする五島氏の著作）ですが、核戦争の危機とか第三次世界大戦の可能性といったものも背景にあったと思うんですよね。だからこそベストセラーにもなったんじゃないかと。

　第三次世界大戦ということでこれまた思い出したんですが、同じ頃に二見書房から出てた第三次世界大戦シリーズという近未来戦争小説も読んでました。実際に近未来に起こりうる第三次世界大戦のシミュレーション小説といった感じの作品で、改めて調べるとサラ・ブックスというレーベルから出てたようです。確か僕が買ったのは、『第三次世界大戦』（ジョン・ウインスロップ・ハケット、1983年）、『悪魔の軍団』（フランソワ、1983年）、『ソ連軍日本上陸』（久留島竜夫と軍事研究グループ、1983年）、『北海道占領さる』（岩野正隆、1983年）、『ホルムズ海峡封鎖す』（久留島竜夫と軍事研究グループ、1984年）といったあたり。ただ最後まで読み通したのは『ソ連軍日本上陸』だけで、他はいずれも途中で放り出してしまいました。なぜかというとどれも小説としては面白くなかったからで、興味は急速にしぼんじゃいましたね。シミュレーションと小説（物語）は相性が悪いのかも。
　その頃はちょうど中学の友人の誘いでボードシミュレーションゲームにハマり始めた時期でもあり、近未来シミュレーション小説への興味もそれと連動してるところもあるのかもしれません（この辺、どっちが先だったか記憶が定かでない）。シミュレーションゲームには近未来戦（もしくは現代戦）のジャンルも数は少ないながらもあったんですが、そちらに手を出したのは高校時代。『サード・ワールド・ウォー』という邦訳された海外ゲームで、第三次大戦ものではお決まりの東西ドイツ国境で米ソ両軍が激突というものでしたね（続編にペルシャ湾を舞台とした『ペルシアン・ガルフ』というのもあった）。しかし大学時代になるとソ連崩壊と冷戦終結であっという間に過去の遺物になるのであった（笑）。すぐ古くなってしまうのが近未来ものの欠点です。
　ま、これも80年代サブカルチャー史ってことで、五島氏のご冥福をお祈りします。


#11022　
バラージ 2020/07/19 15:33
いろんな話題

＞最近観た歴史映画
『ハリエット』
　19世紀米国の元奴隷の黒人女性である奴隷解放活動家ハリエット・タブマンの伝記映画。逃亡奴隷を助ける秘密組織“地下鉄道”の助けを借りて、奴隷州のメリーランド州から、奴隷制が廃止された自由州のペンシルベニア州フィラデルフィアまで逃亡。後に自らが“地下鉄道”における逃亡奴隷の先導役“車掌”として10度以上南部に潜入し、70人以上の奴隷を自由州まで逃亡させたというハリエットの半生が描かれています。
　ハリエット・タブマンについては奴隷の身から逃亡し、他の奴隷たちをカナダに逃がす“地下鉄道”に従事したという程度のことは知ってましたが、くわしいことは知りませんでした。地下鉄道っていうからてっきり地下道みたいなところを通って逃げたようなイメージがあったんですが、カナダまでそんな長いトンネルが作れるわきゃないか（笑）。1913年に93歳で亡くなったそうですが、20世紀まで生きてたんですねえ。もっと昔の人だと思ってました。
　映画は丁寧に作られていてなかなか面白かったんですが、ちょっと堅実な作り過ぎてややインパクトに欠けるというか、よくできてはいるんだけど２～３年後には印象が薄れちゃってそうな気がしないでもありません。主演女優のシンシア・エリヴォ、自由黒人女性役のジャネール・モネイはとても良かったです。

＞秀吉
　大河ドラマ３作目の『太閤記』でも、やはり秀吉晩年の負の面は描かれなかったらしいですね（原作が小牧長久手までしか描かれてない。信長の助命嘆願が殺到し本能寺の変が２ヶ月延びた、など別の理由もあるようですが）。そして主演の緒形拳は、やはり後の大河『黄金の日日』で秀吉晩年の負の面を演じることに。晩年のダメになっていく秀吉を演じたいというのは、昔ビートたけしも言っていたような記憶があります。
　臨床心理学者の故・河合隼雄氏は、秀吉が日本人に人気がある理由として、道化（トリックスター）→英雄→王→権力にとりつかれた独裁者→幼い息子を心配するただの死にゆく老人、というシェークスピア悲劇のような一生が、人生のロールモデルとして日本人の琴線に触れるからだと書いてましたね。
　大河中断中の代打番組は、一応『政宗』『国盗り』『利まつ』『秀吉』とちょこちょこずつ観てますが、勝新太郎、火野正平、香川照之、竹中直人と並べると、やっぱりカツシンだけが異質というか正直ミスキャストだよなあ（笑）。渡辺謙がカツシンの迫力にびびったという話は何度もしてて、確かにすごい存在感なんですが。

＞上皇の奥さんの呼称
　そう言われてみれば、という話で、僕もあまり考えたことがなかったですね。僕の興味範囲は源平合戦期という、まさに院政時代なんですが、上皇の奥さんについての特別な呼称は聞いた覚えがありません。皇太后は「上皇の后」というより「天皇の母」とか「前の天皇の后」（上皇が同時に複数いることもよくあった）に用いられた称号ですし、女院（門院）は天皇の娘などにも与えられた称号です。基本的には天皇時代の呼称が持ち越されたんじゃないですかね。

＞愛の奴隷
　僕は今回前記のアルゼンチン映画を改めて調べた際に、同じ邦題のソ連映画があったのを初めて知りました。まあ、「愛の奴隷」という言葉もそこまで突拍子もなく珍しい表現というわけでもないし、あるいは邦題を付けた人も知らなかったのかもしれませんね。さすがに古今東西の映画のタイトルを全部覚えているわけでもないだろうし。むしろ有名なのは同タイトルの昔の日本の歌謡曲のほうで……と思ってよくよく調べたら、そっちは『恋の奴隷』だった（笑）。案外、ソ連映画もアルゼンチン映画も邦題の元ネタはその歌謡曲かも。
　ニキータ・ミハルコフの名前はもちろん知ってたんですが、『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』とか『黒い瞳』あたりからで、実際に観たのはこれまた前記の『太陽に灼かれて』だけ。出演映画だと日ソ合作映画『オーロラの下で』も観ています（期待外れでつまんなかった）。


#11021　
Kocmoc　Kocma 2020/07/18 16:21
愛の奴隷違い

アジェンデの映画「愛の奴隷」は1995年日本公開だったようですが、新宿のチケットぴあで「愛の奴隷」のチケットを見かけて、「え？『愛の奴隷』上映あるの？」心ときめいて購入。
新宿駅改札に入ろうとした直前にチケットをもう一回観て「あら？？？」と不審に感じ、よ～～～く見て、「あ！スペイン語の映画？これ、何か違う！」とあわやのところで自分の間違いに気が付いて、チケットぴあまで戻って、「すみません、さっきここで買ったんですが、『愛の奴隷』違いでした。別の作品だと勘違いして買ってしまいました」と言ったら、「あ、はい」という感じで払い戻ししてくれました。

私はてっきり、ニキータ・ミハルコフの「愛の奴隷」だと思ったのですよ。
1970年代のソ連映画を今どき公開するなんて珍しいな（映画祭上映じゃなくてちゃんとしたチケット作って）と思ったら、やっぱり違っていました。がっかり。

ミハルコフの「愛の奴隷」はロシア革命後の内戦期の南ロシアの映画撮影所を舞台にしていて、彼自身は否定していますが、ヒロインのオリガはロシア帝国無声映画時代のスター女優、ヴェラ・ホロドナヤ（「人生には人生を」http://www.athenee.net/culturalcenter/database/title/title_s/shi/jinseiniha.html　等）を思い出させるものです。
ミハルコフの長編第一作「光と影のバラード」も革命後の国内戦の頃が舞台で、こちらはわくわくドキドキのアクション映画。大好き。
国内戦の頃を題材にしていて女性が主役のだと、チュフライの「女狙撃兵マリュートカ」（←この邦題嫌い）もありました。

当のアジェンデの「愛の奴隷」も、この時はパスしたものの、その後どこかの映画館で観ることになりました。
でも、何故全く同じ邦訳をつけるのかしらん
アルゼンチン映画の方は直訳だと「奴隷」は出てこないのだけど。
思い出話で始まり、まとまりない話になりましたが、要は、この時代（ロシア革命後の内戦期）の作品もリストに加えて欲しいなーというリクエストです。




#11020　
徹夜城（久々に図書館から本を借りてきた管理人） 2020/07/18 15:34
上皇のお妃

＞マナさん
　「上皇后」という単語自体、昨年からの登場ですからねぇ。大昔の中国で使用例があるそうですが、それは前皇帝の后ではなく皇帝の皇后が風数いた場合の一番上の人、ということだったようで。

　日本では「上皇」の出現自体200年ぶりだったわけですが、そもそもそれ以前にも「上皇后」という地位は存在しませんでした。というか、皇后自体がめったにいません。中宮が実質正妻扱いになっていたり…
　上皇のお妃はなんと呼んだのか、という話なんですが、僕の知る限りでは決めてなかったんじゃないかと。まぁ僕の知ってる範囲も中世にかたよってますけどね。中世では天皇はとっとと退位して上皇になってから院政で本番、みたいなかんじですから、上皇も複数の后妃を抱えているのは普通でした。ただそうした后妃たちの呼称がちゃんとあったような覚えがないんですよね。形式的とはいえ上皇って引退した存在ですから、それに仕える女性たちもあくまで私的な関係の女性たちということになっちゃうのでは。

　さらにいえば、中世の皇室からみの女性たちは、相手を結構「乗り換え」てしまうことも多くて、天皇の後宮にいた女性が上皇のほうに乗り換えたり、兄の後宮の女性を弟がとっちゃったり（みんな後醍醐がらみの例だったりして）、ときには叔父の皇子とされてる人について「あれは私の子だ」と言い出す上皇がいたり（光厳）、出家して法皇になってからもお子様を作っちゃったりと、同じ建物の中に同居してるせいもあってか、実態はかなり乱婚状態になってたような…「とわずがたり」もそんな感じですしね。


#11019　
マナ 2020/07/17 22:41
この話大丈夫ですか？

今さらですが、今年は、香淳皇太后の薨去20年だったんですね。それで昨年から上皇后の呼称に違和感を感じていた理由が分かった気がします。平安時代以降上皇のお后はなんと呼ばれていたんでしょうか?ー門院は、側室というか、正式な結婚ではないですよね？
昭和から平成のときは、小6であまり記憶に無く、教育てれびばかり見ていたように思います。



#11018　
徹夜城（そういえば最後に東京行ったのはいつだっけと考える管理人） 2020/07/16 22:47
ヒゲと天皇

　やや遅れて報告ですが、昨日付けで「史点」更新しました。間が10日しか空いてないのも珍しい…というか、記事の半分くらいは前回の予定だったりします。

＞大河「太平記」のこと。
　先日の日曜日早朝に放送された大河アンコール「太平記」は第15回。高氏と正成が初めて顔合わせをする回ですが、ほかにも囚人となった後醍醐が「ひげ面」に変身する重要な回です。吉川英治の原作の方にもある描写ですが、笠置山でとらわれた後醍醐が京の幽閉先で、自分にヒゲが生えてきたことに気づいて感慨深く語ります（宮中では知らぬうちに誰かが剃ってくれていたらしい）。
「生きておれば、ヒゲも伸び、垢も出る。朕にも人間のにおいがしてきたぞ」
いやぁ、これ、ほんとにいいセリフで、ドラマではこれを後醍醐のひげ面への変身、外見だけでなく中身もワイルド化していくという演出に生かしていたわけです。

　もちろん後醍醐がいつからあのようなひげ面であったのかは不明です。どの肖像画も同じような長いひげ面になっているので、少なくとも後半生はあの姿だったと思いますが。
　「天子摂関御影」という、平安末～南北朝の歴代天皇の肖像画を並べた画像資料があります。いずれもかなりリアルにモデルを描いたものと考えられ、僕も「南北朝列伝」で画像を使わせてもらってますが、やっぱり後醍醐ほどのヒゲ面はいないですね。生やしても口ひげを八の字に、あごのさきにちょっとだけ、といった形で、やはり後醍醐の異様さが際立ちます。それ以後の天皇の肖像画の全部チェックはしてませんが、やっぱりかなり珍しいんじゃないかなぁ。
　明治時代に突入すると地位の高い人の多くがかなりのヒゲ面化しますが（これは欧米の流行でもあるようで）、明治天皇も後半生はかなり伸ばしたヒゲ面になってますね。あれは後醍醐以来なのかなぁ。

　話が飛びますが、「上皇がハゼ新種発見」という見出しは、なんだか不思議な言葉のとりあわせだなあと思いましたね。今上天皇がいずれ歴史上の新説を発表したりすることがあったりするのかも。


＞大河「秀吉」と「官兵衛」
　バラージさんが「軍師官兵衛」に触れていたので連想で書きますが、先日の「麒麟がくるまでお待ちください」の戦国大河特集は竹中直人主演の「秀吉」でした。当時僕はあんまり見てなかったんですけどね。「太平記」の主役とその妻役と弟役が出てましたが（妻役と弟役は本作でも同じでした）。

　番組で印象的だったのは、主演の竹中さんはオファーがきたとき「最低の秀吉を演じたい」と希望、特に人生終盤の秀吉の醜態を演じることに意欲を示したそうなんですね。しかし秀吉を主役にした同ドラマではその辺はカットして終わってしまいました。これがのちに「軍師官兵衛」で秀吉を再演するにあたって宿願を果たすことになるわけで。
　竹中直人＝秀吉のイメージはカードローンのＣＭでも定着してしまってましたな（笑）。


＞ろんたさん
　「ヤングチャンピオン」とは、チェックしてなかったなぁ。大和田秀樹さん、そっちで角栄書いていたんですか。「疾風の勇人」が打ち切られたののリベンジみたいなものですかね、「勇人」のときも読み切り外伝で角栄をかいたのがあったはず。
　角栄の評価はまだまだ難しいところですが、人気がまだまだあるのは確か。伝記ドラマだって絶対企画されてると思うのですが、風のうわさでは田中家側が許可しないらしい。


#11017　
バラージ 2020/07/13 23:21
歴史映像作品感想追記・中南米史編

　名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記、中南米史編。ふう、やっと終わりが見えてきた。

『エビータ』……#9703、映画板#1221
　第二次大戦後のアルゼンチンの大統領フアン・ペロンのファーストレディで、エビータの愛称で呼ばれたエバ・ペロンを描いたアンドリュー・ロイド・ウェバー作曲、ティム・ライス作詞のミュージカルの1996年の映画化。彼女が田舎町からブエノスアイレスに出てきた1930年代から、1952年に33歳の若さで死去するまでが描かれてます。監督はアラン・パーカーで、主演はマドンナ。狂言回しとして出てくる、チェ・ゲバラをモデルとした「チェ」を演じてるのはアントニオ・バンデラス。一時オリバー・ストーン監督で企画が進んでるという噂を聞いたんですが、いつの間にか降板したようです。そもそもミュージカルが上演された1978年頃から映画化の企画はされてたらしく、当初の監督候補はケン・ラッセル。主演にはバーブラ・ストライサンド、ライザ・ミネリ、カーラ・デヴィート、エレイン・ペイジ、ミシェル・ファイファーなど、完成までに７人の監督と７人の女優が候補に上がるという約20年に及ぶ紆余曲折があったらしい。映画は全編ミュージカルのためもあってか、マドンナが演じてるわりに意外と薄口であっさりとした感じ。ストーンが監督だったらどんな映画になってたんだろ？　ただ、マドンナが歌った「アルゼンチンよ、泣かないで（Don't Cry for Me Argentina）」は非常に印象的な曲でした。
　エバ・ペロンはアルゼンチンでは非常に人気があるらしく、「聖女」などと呼ぶ向きもあるらしい。そのためかエバをしたたかで上昇志向の強い女として、その聖俗両面を描いた原作ミュージカル及びその映画化である本作には本国アルゼンチンからは反発も強く、同じ1996年にアルゼンチン政府の全面支援で『エバ・ペロン　エビータの真実』というエバの最期の２年間を肯定的に描いた映画も作られたとのこと。そちらは日本ではビデオスルーでしたが僕は未見。DVD化もされていません。

『汚れた心』……#9351
　追記することは特にありません。

『エルネスト』（『エルネスト　もう一人のゲバラ』というサブタイトル付きの邦題にしているサイトもあり）……#10634
　追記することは特にありません。

『ミッシング』……#9703、映画板#1221
　1973年の軍事クーデター下のチリで行方不明となった米国人男性を捜す妻と父親の実話を描いた米国の社会派映画。1982年の映画で、監督はギリシャ出身のコスタ・ガブラス。確か大学時代にビデオで観たんだったかな？　クーデターの背後にいる米国の影などハードでシリアスな事実を描く一方で、思想信条の異なる舅と嫁（＆夫＝息子）の和解というテーマも含んでいます。力作ではありますが映画としてはストレートで遊びが少ないように感じられ、もうちょっと娯楽性も欲しいなあなどとも思ったり。

『愛の奴隷』……#9703、映画板#1221
　こちらはクーデター後の軍事政権下チリにおける軍の非道を描いた米国・アルゼンチン・スペイン合作による1994年の社会派映画で、クーデターで死んだアジェンデ大統領の従兄弟の娘イザベル・アジェンデの小説『Of Love and Shadows』の映画化。主演は当時アイドル的人気のピークがやや過ぎていたジェニファー・コネリーと、ブレイク直前だったアントニオ・バンデラス。邦題といい（原題は原作と同じ）ポスターデザインといい、明らかに『愛の嵐』を連想させるデカダンス的エロスを思わせ振りにして売ろうという意図が見え見えだったんだけど、僕もそこをちょっと期待してビデオを借りちゃったのもまた確かだったりします（笑）。しかし実際に観てみたらそんなシーンはほんのちょっとだけ。軍部による残虐行為を告発・報道しようとするジャーナリストを描いた、極めて真面目な社会派映画でした。なかなか面白い映画で、意外な拾い物の一本でしたね。
　チリ・クーデターやピノチェト政権を描いた映画は意外と多く、他にも1975年のフランス・ブルガリア合作映画『サンチャゴに雨が降る』（ビデオ邦題は『特攻要塞都市』。DVD邦題は劇場公開邦題と同じ）や、やはりイザベル・アジェンデのデビュー作である大河小説『精霊たちの家』をビレ・アウグスト監督が1993年に映画化した『愛と精霊の家』なんかがありますが、僕はいずれも未見。『愛と精霊の家』は劇場公開時から興味を感じつつ、今にいたるまで観てないんですよね。

『サルバドル　遥かなる日々』……#9703、映画板#1221
　1980年に始まったエルサルバドル内戦を取材したフォトジャーナリストのリチャード・ボイルが実体験をもとに書いた小説を、オリバー・ストーン監督が1986年に映画化した社会派映画。確か大学時代にビデオで観たかな。1980年を舞台としており、政府軍によってロメロ大司教が暗殺されるシーンがあります。ジェームズ・ウッズ演じる主人公のボイルが必ずしも正義感の強いジャーナリストではなく、酒や女やドラッグに溺れたりもしているのが面白い。そんな彼が右派政府軍の残虐さを見て徐々にジャーナリストとしての使命感を取り戻していく描写も良い。政府軍の裏にちらつく米国の影を容赦なく描いたり、米国大手メディアの偽善性を暴き出したりするのはストーンの真骨頂ですが、一方で左派の反政府ゲリラも手段を選ばぬ勢力だったりして、何が正義かわからない混沌とした状況も描かれます。しかし映画はヒットせず、次の『プラトーン』でストーンはブレイクするんですが、個人的には出来はこっちのほうが上なんじゃなかろうか。非常に面白かったです。


＞果たして大河復権か？──『軍師官兵衛』『真田丸』『西郷どん』感想追記
　大河ドラマの思い出最終回。2014年の『軍師官兵衛』、2016年の『真田丸』、2018年の『西郷どん』についての追記をまとめて。

　『軍師官兵衛』は例年のごとく序盤で脱落し、記憶にもあまり残っていません。平均視聴率15.8％というのも、『平清盛』『八重の桜』よりは上がったものの『江』よりは下で、この頃はまだ低くはないものの高くもないといった程度であったためか、良くも悪くも世間的にも特に話題にはならなかったように記憶しています。そんなわけで特にこれ以上言うこともないなあ。

　『真田丸』も最初はいまいち面白くなくて、待望の真田幸村にも関わらず序盤でやはり一時脱落したんですが、４月頃だったか秀吉編になったということでまたちょっと観たら、これが意外に面白く、そこからは毎週ではないものの結構観てました。特に竹内結子が演じた茶々（淀殿）のキャラクターが良かった。ああいう茶々の描かれ方は珍しく、その茶々との関係性が最後に信繁（幸村）を大坂の陣へと引っ張っていく……という展開が予想され、ちょっとワクワクしましたね。小日向文世の秀吉も好演でした。
　ところが肝心の大坂の陣に入ったら失速。あれほど輝いていた竹内茶々もなぜか出番が減ってしまったし、肝心要の合戦シーンがなんかいまいち。今になって思えば大坂の陣編になってから作風がちょっと変わったというか、なんか舞台（演劇）っぽくなったような気がするんですよね。脚本だけで演出はしてないとはいえ、いよいよクライマックスということで三谷幸喜が表向きの作風をかなぐり捨てて、本当にやりたい作風に戻したようにも感じられます。だとするとやっぱり俺は三谷とは合わんなあ。ただ最後は長澤まさみが演じる「きり」が全部持ってった感じで、彼女にかなり救われました。あと、少なくとも秀吉編までは意外にも史実重視の姿勢だったんですが、逆にあまりに個々の史実や新説にこだわりすぎて、なんだか物語としてのまとまりというか流れが悪くなっていたように感じます。
　平均視聴率は16.6％と、１年を通して完全地デジ化となった2012年以降では最高となりました。そのようなこともあってか主にスポーツ紙系ネットメディアが毎回のように視聴率が高いと騒ぎ、“大河復権”などと書き立てました（今年の『麒麟がくる』にもその傾向が見られる）が、冷静に見て果たして16.6％というのは高い数字でしょうか？　本作も『官兵衛』もBS先行視聴の分を合わせても、不振と言われた00年代男性主人公大河の平均的な視聴率とさほど変わらないように思えます。世間でも本作が話題になったというような実感はそこまで感じませんでした。

　『西郷どん』も序盤で一旦脱落というか、観たり観なかったり状態に。しかしたまたま観た回がやはり結構面白く、これまた４月頃から毎週観るようになりました。ところがこの年は７月から勤務体制が臨時で２ヶ月変更になって日曜の夜にテレビが観れなくなり、面白かったとはいえ個人的には録画して観るほどまででもなかったため、そのままなんとなくフェードアウトしてしまいました。９月になっても視聴復帰する気がいまいち起きなかった理由として、明治になってからはかつての盟友と内ゲバ状態になる陰鬱な展開が予想されたことと、征韓論が絡んできちゃうというところがありました。かなり無理のある遣韓論で押しきるしかないよなあと思ったし、実際そうなったみたいだけど、それでもやや引っかかるところはありましたね。明治編に入るのがずいぶん遅れましたが、たぶん原作の林真理子氏も同じことを感じてたんじゃないかなあ？　平均視聴率は12.7％とまたも惨敗。幕末大河は視聴率が取れないことを証明する形となってしまいました。

　去年の『いだてん』は散々書いたんで特に追記することはありません。まだほんの去年のドラマだし。というわけで大河ドラマの感想追記もこれでおしまい。ふう、長かった。

＞DVDで観た映画
『The Crossing　ザ・クロッシング　PartⅠ』『The Crossing　ザ・クロッシング　PartⅡ』
　ジョン・ウー監督による二部作の大河ドラマ中国映画。DVD邦題はそれぞれ『ザ・クロッシング　Part１：戦場』『ザ・クロッシング　Part２：運命』。原題は『太平輪』『太平輪　彼岸』（『The Crossing』は英語題）で、国共内戦末期の1949年に上海から台湾に出港した中華民国の豪華客船「太平輪」の沈没事故を題材としています。中国版タイタニックみたいな事件らしいですね。中国・台湾・韓国・日本と、アジアのスターを集めた2014年（PartⅡは翌2015年）の大作でしたが、中国本国で大コケにコケたためか日本にはなかなか来ず、去年ようやく大都市限定で公開されました。もちろん僕の地元には来ず。
　PartⅠ（前編）ではなんとタイトルになってる太平輪がほぼ出てきません（笑）。『赤壁（レッドクリフ）』二部作もそうだったとはいえ、あっちは一応赤壁の戦いに物語が向かってましたが、こっちは必ずしもやらなくていいような話をずっとやってるような。アジア太平洋戦争末期から国共内戦までが描かれる戦争映画といった趣きで、国民党将軍のホアン・シャオミンと富豪の娘のソン・ヘギョ（韓国女優ですが中国人役を演じています）、国民党軍兵士のトン・ダーウェイと貧困女性のチャン・ツィイー、元日本軍医台湾人の金城武と日本に帰国した長澤まさみという３組の男女のラブストーリーなんですが、ラブロマンス描写の苦手なジョン・ウーだけあって古色蒼然とした陳腐なメロドラマといった感じでどうにもいまいち。それが戦闘シーンになるとお得意のドンパチと男の友情で途端にイキイキし始めるんだけど（笑）、あまりに派手すぎて戦争のリアリティにはやや欠ける気も。あと家屋のセットやCGを使ってると思われる自然の風景がやたらと作り物くさく見えます。また従軍看護婦から街娼にまで身を落とすチャン・ツィイーが他の誰より美しいってのもどうかと思いますが、彼女目当てで最後まで観れてしまったのも確か。最後はPartⅡ（後編）の予告編みたいな感じで終わるんで、壮大な予告編を見せられた感じでした。
　PartⅡ（後編）でようやく主人公たちが太平輪に乗るかと思いきや、再編集された前編終盤のシーンが振り返りのように30分近く続き、主人公たちが太平輪に乗るのはなんと後編も１時間以上過ぎてから。それまでは前編と同じくベッタベタに古くさいメロドラマです。ただ、乗り込んだ後の他の船との衝突・沈没シーンからは特撮とスペクタクルでなかなか見せてくれますし、海に投げ出された人々のドラマもそれなりに良いかな。とはいえ前後編で４時間以上もかけるような話じゃないよなあ。もっとコンパクトにまとめられたんじゃないかと。まあ、チャン・ツィイーとソン・ヘギョの美しさが眼福だったこともあって、最後までそれなりに見れてしまいましたが。台湾の白色テロのシーンもあったりと歴史要素が意外にあるんですが、映画として大事なのはそういうとこじゃないんだよな。肝心の本筋がどうも……。やっぱりジョン・ウーにはラブロマンス描写は向いてないよなあ。
　ちなみにホアン・シャオミンは前編でほぼ出番が終わっていて、後編は回想でちょっと出てくるだけ。ソン・ヘギョは前編ですでに台湾に渡っていて、長澤まさみはそもそも前編が始まった時点で日本に帰国している設定なので全編回想シーンでしか出てきません。そのため太平輪に乗るのはチャン・ツィイーと金城武とトン・ダーウェイだけでした。


#11016　
ろんた 2020/07/12 21:37
ヤングチャンピオン

お久しぶりです。あんまり久しぶりなんで連投になるかもです。

「ヤングチャンピオン」誌(月二回発行)に「角栄に花束を」(大和田秀樹)、「ちらん」(魚乃目三太)が連載されていたのは承知していたのですが、このほど「日本を創った男」(星野泰視)という渋沢栄一の伝記マンガが始まりました。ただ雑誌の性質上、歴史物というよりも娯楽性やわかりやすさ重視。
　冒頭の紹介では渋沢栄一は農夫出身ってことになってるのに、家は名字帯刀を許されてて、親類の尾高家と一緒に陣屋の代官から「百両貸せ(返さないけど)」「二百両貸せ(返さないけど)」とやられてるんで、控えめに言って豪農ですな。あと、これは幕藩体制の矛盾を意識させるためだと思うけど、嘉永五年という設定なのに陣屋の代官が切捨御免しかねないほど高圧的なのは「？」。もう一つ、「討幕の志士」がうろちょろしているのも「？」。まだ、ペリーも来てねぇよ(笑)。
　んで、第一回の引きは、傷ついた討幕の志士と栄一少年の出会い。そして栄一少年は「テロリスト」への道を一直線！　しかし、この現代の観念を歴史的事象に貼り付けてしまうというのも「なんだかなぁ」と思います。
　そして「角栄に花束を」は、「私の履歴書」を劇画的想像力で演出している感じ。最初に読んだのが第15話で、肺炎で満洲から内地へ送還される話(昭和16年の除隊直前)。今回読んだ第18話では、なんと戦争が終わってしまう。展開早すぎないか？　そして、建設した工場を「新生朝鮮の役に立ててくれ」と現地に残して引き上げる感動の展開。でも、あらためて絵にされると「その工場って角さんのものじゃなくて理研のものだよね!?」と突っ込みたくなってしまう(笑)。
　それにしても田中角栄って「刑務所の塀の上を歩いているような男だが、落ちる時は必ず外側に落ちる」って言われてるし、その政治手法は、金で権力を握り権力で金を生む、というもので、いろんなフィクションに出て来る「汚い大人」の原型だと思うんだけど、今後の展開どうするんだろう、と思っていたら──そんな老婆心は無用でした。第一巻の帯に「米国が最も恐れた戦後最高の天才！」とあります！　そう、石原慎太郎史観(？)であります!!　悪いことはみんなＣＩＡの陰謀なのであります!!!!　なお「新潟県内書店、売り切れ続出御免なさい」だそうであります！
　ついでですが、「別冊ヤングチャンピオン」連載の「信長を殺した男」(藤堂裕)が最終回。明智憲三郎氏、「原案」ってなってるけど最初からそうだったかな？

＞ＢＬＭと「風と共に去りぬ」
　最初の頃は、暴動を起こしている、と右方面から批判されていたけど、ああいう抗議行動があると「ヒャッホ～イ！」とショーウィンドウ壊して回ったり、盗んだスマホが使えない、と抗議して捕まるヤカラが出て来るのはいつものことなわけで、「アンティファがやってる」「極右がやってる」というのも陰謀論っぽいと思ってました。しかし最近の騒ぎでは、より過激な言動をすることで運動の主導権を握ろうとする勢力があるんじゃないか、とも思えてきます。奴隷農場主だからマイナス100万点、みたいなことやってたら焼け野原になって誰も残らないぞ(笑)。建国神話の中で神格化されてきた事への反動と考えれば理解できないこともないですが、あの有名なリンカーン像を引き倒そうというのは意味不明。像の前で「引き倒せ」と叫ぶ白人活動家の前に黒人たちが立ちはだかって「俺たちの先祖が金出して建てたんだ」と言い返すのって、もう地獄絵図。
　で、「風と共に去りぬ」も批判にさらされたわけですが、今回の批判は至極真っ当。現役の脚本家によるものらしいので当たり前といえば当たり前だけど、これまでの「批判」って、小説や映画を鑑賞する能力があるのか疑わしいものが多かったんですね。じゃあ真っ当な批判って何かというと、一本の映画を見ただけで南部が分かった気になるなよ、ってことなんですよ。そもそもあの映画、黒人奴隷がどんな風に労働しているか(させられているか)の具体的な描写が全くないんですね。これは原作でも同じなんですが、さらに映画が罪深いのは、原作にはっきり書いてある、奴隷農場主が女奴隷を犯して奴隷を増やしていたり、登場する男性キャラが(レット・バトラーを除き)全員ＫＫＫであることが、割愛されているんです。難民区でスカーレットを襲うのが、白人と黒人のコンビであるところまで原作通りなのに！　つまり「風と共に去りぬ」は(特に映画は)、描かれていることよりも描かれていないことが差別的ということになるわけです。ということで、映画を見る際は原作も参照するのがお勧め。特に岩波文庫版。解説が全部で実に300ページあって訳注も豊富ですから。

＞史点：中印のどつきあい
　これ、人民解放軍は投石器使ったんじゃないかなぁ。ダビデがゴリアテを殺したヤツ。次はインド軍が「投石機」使ったりして。(火器じゃないもんね、って笑い事ではない)。


#11015　
バラージ 2020/07/10 22:52
史点について

　といっても本論ではなく脇道の話題。

＞「男子の面子、軍の権威、それが傷つけられても北朝鮮が勝利すればよろしい！」「この北朝鮮、みくびっては困る」「恥を知れ、俗物！」
　金与正（キム・ヨジョン）氏、キシリア・ザビやハマーン・カーンに比されてましたか（笑）。キシリアはともかく、ハマーン様（とつい言ってしまう）はガンダムシリーズでも屈指の人気キャラですからねえ。その辺は与正氏とは大いに違うような。しかし上記のような名台詞を当てはめちゃうと、なんだか与正氏がかっこよく思えてきちゃって困るなあ（笑）。
　実を言うとハマーンはもちろん、キシリアも劇中ではそんなに悪人には描かれてないように思うんです。もちろん善人ではないんですが、なんというかかっこいい女性として描かれてるのは間違いなく、おそらく富野由悠季監督のある種の理想の女性像の１つなんじゃないかという気がしますね。それが『ORIGIN』のキシリアになると紛れもない悪人になっちゃうんですが（わずかなシフトチェンジで完全悪人化できるキャラなのも確かなんだよな）、そのあたりは富野監督と安彦良和の女性観の違いで、安彦さんは多分ああいう女性が好きじゃないんだろうな。『アリオン』や『虹色のトロツキー』など他の作品からもそれがうかがえます。

　ボルトン元大統領補佐官の暴露本ですが、まあこの人もネオコンでゴリゴリの右派だから、トランプ大統領がもしこの人の言う通りにしてたとしてもそれはそれで問題だったとも思います。もっともそれが正しいかどうかはともかくとしてボルトンさんはある種の理念を持った人ですが、トランプさんの理念は右とか左とか真ん中とかではなくて、俺様にとって得か損かだけなんでしょうね。そのあたりはいかにも商売人というか。パフォーマンスもやたら派手ですが、それもかつて自らが参加したWWEのようなもんで、どこまで本気なのかわかりにくい。しかしまあ政権にいた人たちがネオコンから穏健派までことごとくクビにされていくのもすごいなあ。

　朝鮮戦争の陸上戦にも日本人が参加していたというのは、僕は以前確かTBSの『報道特集』で見ました。それともNHKのドキュメンタリーだったかな？


＞香港映画の盛衰
　ジャッキー・チェンが以前から中国寄りの発言をしていたのは事実なんですが、仕事の中心を中国本土に移したのは必ずしも他の香港映画人に比べて早くはなかったように思います。そもそも香港が中国に返還された1997年前後には多くの香港映画人がハリウッドに進出しました。その中の１人がジャッキーで、他にチョウ・ユンファやジェット・リー、サモ・ハン・キンポーなどもその時期にハリウッド進出しています。もちろん映画俳優として単純にハリウッド進出を狙っていたという面もあるでしょうが（ジャッキーはそれ以前の80年代にもハリウッド進出をはかり失敗している）、中国政府の文化統制によって映画製作の自由が失われるのを危ぶんだのがその理由の１つと言われています。
　ジャッキーの場合はカナダのバンクーバーで全面ロケをした（舞台はニューヨークのブロンクス）1995年の香港映画『レッド・ブロンクス』がアジア映画初の全米興行収入初登場１位となったのを足掛かりに、1998年の『ラッシュアワー』でハリウッド映画に進出し、これも大ヒット。2004年の『80デイズ』までハリウッド中心に活動しましたが、映画製作や文化の違いに辟易したのと、おそらくこの時点では思ったほど香港映画への中国政府の介入がなかったために香港へ回帰したようです。中国映画への進出は香港との合作だった2005年の『THE MYTH　神話』が最初ですが、この映画自体は韓流やボリウッドの取り込みが特徴で、中国色はあまり強くありません。中国色が強くなったのは10年代に入ってからで、『ラスト・ソルジャー』（2010年）、『1911』（2011年）あたりが嚆矢となります。
　ユンファの場合もハリウッド進出は1998年の『リプレイスメント・キラー』で、すでに1993年の『ハード・ターゲット』で一足早くハリウッドに進出していた盟友ジョン・ウーのプロデュース作でした。そして今のところ2010年の『シャンハイ』が最後のハリウッド映画で、中国映画へは2006年の『王妃の紋章』で進出しています。ジョン・ウーもハリウッド映画は2003年の『ペイチェック　消された記憶』が最後で、2008年の『レッドクリフ　part１』で中国に進出。サモもやはり1998年のテレビドラマ『L.A.大捜査線　マーシャル・ロー』で米国に進出するも2000年の同作終了とともに香港に帰っています。ジェットも1998年の『リーサル・ウェポン４』でハリウッドに進出し、以後はハリウッドと中国・香港映画に並行して出演。最初の中国映画は2002年の『HERO』ですが、彼はもともとが大陸出身でデビュー作の『少林寺』からして中国・香港合作なので中国進出というのとはちょっと違うかな。

　香港映画が中国返還後に衰退したのにはいくつかの理由があると思いますが、１つにはまず上記のような00年代前半のスターのハリウッド流出が挙げられると思います。もちろんその時期にも『少林サッカー』（2001年）や『インファナル・アフェア』三部作（2002～03年）などのヒット作はあったわけですが、1997年のアジア通貨危機から2002～03年のSARS流行以降、香港が深刻な不況に陥り中国資本が流入したことによって一気に中国との合作映画が増えたようです。中国との合作は古くは80年代の上記『少林寺』（1982年）や『西太后』二部作（1983年）、『天山回廊　ザ・シルクロード』（1987年）などがありましたが、いずれも香港映画が中国人俳優を起用して中国ロケを行うといった性格のものでした。それが80年代末から90年代に入ると、チャン・イーモウら中国第五世代とホウ・シャオシェンら台湾ニューシネマの台頭で国境を越えた中華圏映画のコラボレーションが行われるようになり、その最初の集大成となったのが1993年の中香合作映画『さらば、わが愛　覇王別姫』。以後この流れは加速していき、2000年には台香中米合作の『グリーン・デスティニー』が国際的にもヒットしています。また1994年に中国政府が外国映画を解禁したことで中国映画もハリウッド映画などへの対抗上娯楽大作化する必要に迫られ、その流れで香港俳優を大量動員して作られたのが『HERO』（2002年）、『LOVERS』（2004年）、『PROMISE』（2005年）などでした。
　一方で不況下の香港映画界も中国史上に活路を求め、映画監督たちも中国へと進出していきます。『2046』（2004年）、『ウィンター・ソング』（2005年）、『レッドクリフ』二部作（2008・09年）、『ドラゴンゲート　空飛ぶ剣と幻の秘宝』（2011年）などがそのさきがけです。そもそも一都市に過ぎない香港では製作費をペイできないため、香港映画は昔から海外展開を前提にするのが普通でした。古くは台湾や東南アジアで、ブルース・リーの登場で香港映画が世界に知られるようになってからは日本や韓国がそれに加わります。80年代のジャッキー最盛期には地元香港より先に日本で公開されるほど海外市場が重視されてました。それが21世紀になると最後の巨大市場中国となったわけです。
　また香港映画は台湾や東南アジア華人の俳優の進出が古くからあり、ブリジット・リンやジョイ・ウォン、金城武、スー・チーは台湾出身、ジェット・リーは中国出身、ミシェール・ヨーはマレーシア華僑出身の俳優です。彼ら彼女らが主体的に進出するというより、香港映画界の側が引っ張ってきたことも多く、さらに90年代にはレスリー・チャンが中国映画に出る一方で、コン・リーが香港映画に出たり、トニー・レオンが台湾映画に出たりといったことも行われてました。もはや現在では中香台の俳優がそれぞれ別の地域の映画やドラマに出るのは一般的なことになっています。こうなってくると中国・香港合作というのがやたら多くなったこともあって、中国映画と香港映画の境界が極めて曖昧になってくるのも当然で、香港映画の独自色が消えていくと同時に、中国映画もまた90年代から変容を遂げ、様変わりしてしまいました。有り体に言えば、中国映画が（かつての）香港映画化してしまったと僕などには感じられるのです。もはや80年代末から90年代のチャン・イーモウやチェン・カイコーが台頭した頃の中国映画はどこにもありません。もちろんこれは自然の流れであって仕方のないことなのですが。

　話を戻すと、香港国家安全維持法については映画人ばかりでなく、実は香港の富裕層にも一定の支持があるという記事を読みました。法律の支持というよりは、彼ら富裕層にとってはここ数年のデモ続きで市場経済が麻痺することのほうが迷惑ということで「何よりも秩序と安定を」という意見のようです。富裕層ではありませんが、街の個人商店などにも「これじゃあ商売あがったり」という声もあるようで。デモの参加者に若者が多いのももちろん良い面もあるものの、生活を背負ってない年齢層という意味ではやや危うさを感じなくもありません。それにしても権力というものは真綿で首を締めるように巧妙に時間をかけて締め上げてくるもんですね。
　しかし改めて思ったのは、よくよく考えると彼ら若者はイギリス植民地時代を経験していない世代ということで、考えてみりゃ当たり前のことなんですが、うわー、そんな時代になっちゃったか、と。中国でも天安門事件をリアルタイムで知ってる人は40代以上なわけで、時というのはどんどん後ろに過ぎ去っていきます。


＞歴史映像作品感想・アメリカ合衆国史編で書き忘れた映画の追記
『ゲット・オン・ザ・バス』
　かつてマルコムＸも所属した黒人（アフリカ系米国人）イスラム団体ネイション・オブ・イスラムの指導者ルイス・ファラカンの主導で1995年にワシントンDCで行われたデモ運動「百万人大行進」に参加するためのバスに乗り合わせた黒人たちを描いたスパイク・リー監督の1996年の群像劇映画。製作年代が完全に同時代なので歴史映画とは言いがたい上に、映画の内容は全編フィクションなんですが、時代状況をよく映し出した映画だと思うんで紹介します。『アイ、トーニャ』と『ブッシュ』の間あたりの時代かな。なかなか面白い映画でした。


#11014　
徹夜城（今朝は地震にたたき起こされた管理人） 2020/07/09 23:13
夜中に見かけた現代史ドキュメンタリー

　どうも、しばらくぶりで書き込みます。次回「史点」はネタがが早くたまったのでもう書き始めてますが、同時にこのサイト内某コーナーの「新作」の作業も進めてます。

＞夜中に見たドキュメンタリー
　先日、録画だめしてる歴史ドラマを夜中に鑑賞してまして、見終えて再生を止めたらＮＨＫのＢＳ１で何やら面白そうなドキュメンタリーをやってたんで、ついつい見入ってしまいました。あとで調べたら昨年秋に放送したものの再放送でした。

　その番組は「よみがえる悪夢・知られざる核戦争危機」と題する現代史ドキュメンタリー。１９７３年に勃発した「第四次中東戦争」は日本ではトイレットペーパーで何かと引き合いにされる「石油危機」を引き起こしたことでもっとも有名ですが、この戦争の影で米ソが危うく核戦争突入の危機、キューバ危機並みの危うい状況だった、という話を、当時の関係者インタビューや各種資料をもとに再構成した力作です。

　第四次中東戦争はエジプトがイスラエルに奇襲攻撃をかけ、序盤はイスラエルを亡国の危機まで陥れるが後半はイスラエルが巻き返し、結局はエジプト・イスラエルの直接対話につながることになった、という戦いです。その背後で米ソ両国が外交軍事の駆け引きを展開、当人たちの思惑を超えていつの間にやら核戦争危機、ということになっていた、というあまり知られてない話でした。

　当時のソ連はブレジネフ、アメリカはニクソンですが、ニクソンはちょうどウォーターゲート事件の真っ最中で、あのキッシンジャー博士がホワイトハウスの外交を仕切ってました。お互いに戦争なんてする気はなく、むしろデタント（緊張緩和）を進めていたのですが、それがちょっとでも情勢を自国に有利にしようともくろんで変な画策をし、その中でエジプトとイスラエルがいずれも米ソ両国の言うことを聞かずに勝手な行動をとり、米ソ両国は疑心暗鬼でお互いに相手を信用できず戦争一歩手前までエスカレートしてしまう…という、誤算に次ぐ誤算の連続で、映画「博士の異常な愛情」を思わせる、「怖いコメディ」になってました。

　特にブレジネフもニクソンもそろって酔っぱらって正常な判断ができない状況になっちゃってた、ってくだりは、歴史というのはときどきフィクションよりずっと面白い偶然を作ってしまう例になるなぁ、と。
　
　この手の現代史裏面、とくに外交駆け引きのドキュメンタリーというのは過去にもなかなか面白いなと思ったものがありましたが、いざ挙げようとすると何があったっけ、となっちゃう。
　ドキュメンタリーとドラマを掛け合わせたもので、ドイツ制作の「ドイツ統一の舞台裏」というのがあって、これがえらく面白かったのですが（当時の東西各国の首脳が俳優に演じられぞろぞろ出てくる）僕も録画保存しませんでしたし、ソフト化もされてない。ネット上にも転がってなくって、今も惜しいことをしたと思ってるんですが…


#11013　
バラージ 2020/06/29 22:33
歴史映像作品感想追記・アメリカ合衆国史編③

　名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記、アメリカ合衆国史編の最終回。

『ドアーズ』……#9703、映画板#1220
　1960年代後半から70年代初めに活躍したロックバンド・ドアーズのボーカルで、ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリンと並ぶ時代のカリスマだったジム・モリソンを主人公としたオリバー・ストーン監督による1991年の映画。当時僕が住んでた仙台では１週間しか上映されず、映画館では観逃してレンタルビデオで観ました。1965年のドアーズ結成から71年のモリソンの死までが描かれており、伝記映画であっていわゆる歴史映画と言えるかは微妙なんですが、ドラッグやヒッピーに彩られた1970年前後という時代の空気は上手く表現されているように思いますし、個人的には現代史映画においてはそういうもののほうが重要だと思うんだよな。僕はこの映画がドアーズ初体験なんですが（本物ではなく伝記映画が初体験という・笑）、主演ヴァル・キルマーのジム・モリソンになりきりぶりがすごく、劇中に流れるドアーズの楽曲の数々も素晴らしい。また恋人のパメラ・カーソン役がメグ・ライアンで、キーボードのレイ・マンザレク役がカイル・マクラクランてのも、製作当時の時代を感じて今となっては懐かしい気分にさせられます。チラッと出てきたアンディ・ウォーホル役が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で主人公の父親役だったクリスピン・グローバーだったってのは今回調べて初めて知ったけど。なかなか面白い映画だったんですが、マンザレクは劇中のモリソンの描写について大いに不満で、インタビューでも「大嫌いな映画だ」と言ってましたね。

『ドアーズ／まぼろしの世界』……#9665、映画板#1274
　こちらは2010年に公開されたドアーズのドキュメンタリー映画。原題は『When You're Strange』。初のドアーズ公認劇場用長編ドキュメンタリー映画とのことで、やはりレイ・マンザレクとジム・モリソンがUCLAで顔を合わせていた1964年ごろから、モリソンが死去した71年までが範囲となっています。モリソンが69年に監督・主演した幻の映画『HWY（ハイウェイ）』のフッテージを含む当時のオリジナル映像と、ジョニー・デップによるナレーションのみで構成されていて、新たな撮影は一切行われていません。前記『ドアーズ』について、時代の空気を上手く映し出していると書きましたが、本作を観たらやはり本物の前では霞まざるを得ないなと思わされます。本物には勝てないなと。当時の映像と、そこに映し出される本物のドアーズのライブ音楽の中には間違いなくあの時代の空気が流れていて、スクリーン越しにもそれが伝わってくるのです。
　僕はオリバー・ストーンの『ドアーズ』を観てしばらく経ってから、90年代前半に買った安いオールディーズベストのCDに収録されていたドアーズの『Light My Fire（ハートに火をつけて）』を聞いて心をつかまれ、そこからドアーズのCDを買い集めたんですが、このドキュメンタリー映画は素晴らしい出来でした。ポスター＆チラシのデザインもやたらとカッコ良く、「すべては滅びても、詩と歌は残る……」というモリソンの言葉を使ったキャッチコピーも秀逸。オリジナルTシャツも通販で買ってしまった（笑）。

『ブラック・クランズマン』……#10898
　追記することは特にありません。

『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』……#10767
　追記することは特にありません。

『キルスティン・ダンストの大統領に気をつけろ！』……#9703、映画板#1220
　ウォーターゲート事件の密告者ディープ・スロートの正体はおバカ女子高生２人組だった！というティーンズ向けおバカ青春コメディ映画。いや、米国のティーンズもウォーターゲート事件なんて知らないし、わかんないか（本国公開された1999年時点でも。日本では2004年にビデオ＆DVDスルー）。だとしたら通向けのハイブロウなパロディおふざけコメディとでも言うべきかな。キルスティンとミシェル・ウィリアムズが主演で、なぜかミシェルがニクソン大統領に恋い焦がれており、浜辺でディック（ニクソンの名前リチャードの愛称）と愛し合うことを夢想したりする冒頭から笑ってしまいます。このおバカ女子高生２人のダメっぷりは、同じダメ女子高生２人組が主人公の青春映画『ゴーストワールド』とか、ヒーローアクション映画『キックアス』にも通じるようなキャラクター。この２人が社会科見学で訪れたホワイトハウスでひょんなことからニクソンの飼い犬の散歩係に採用され……というようなストーリー。ニクソン大統領とその政府関係者から事件をスクープしたワシントンポストの記者２人組まで全員をおちょくり倒し、こけにしまくってるのが、なんとも偉いというかすごいですね（笑）。日本ならこんなことしたら絶対怒られそうだ。原題の『Dick』はニクソンの愛称であるとともに男性器の隠語でもあったりして、「ディープ・スロート」の語源と考え合わせると、ああなるほどというタイトルだったり、パロディ映画として秀逸で芸が細かい。完全にキルスティン目当てで観た映画ですが、意外な拾い物の一本でした。面白かった。

『ホッファ』……#10591
　1930～70年代の労働組合指導者で全米トラック運転組合委員長だったジミー・ホッファの伝記映画。1992年の映画で主演はジャック・ニコルソン、監督は助演もしている俳優のダニー・デビート。ビデオ＆LD化はされてますがDVD化はされていません。ビデオ邦題は『ホッファ　ＪＦＫが最も恐れた男』（LD邦題は劇場公開邦題と同じでサブタイトルは無し）というあからさまな便乗邦題ですが、ケネディ大統領は名前だけしか出てこないんだよな。ホッファは全米トラック運転組合を米国最大の労組に押し上げる一方で、マフィアと癒着し長年に渡って不正を働いていたと言われ、ロバート・ケネディ司法長官に追求されて1967年に不正運用などで有罪となり収監されるも、ニクソン政権下の71年に特赦で出獄。その後、マフィアとの関係が悪化し、75年に人と会うため自宅を出た後、行方不明となりました。映画ではその最期を推測して描いています。細かいところはもう忘れたけど、出来はまあまあといったところだったような。
　つい最近、限定劇場公開の後Netflix配信となったマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ主演の映画『アイリッシュマン』もホッファを題材にしているとのことで、ホッファを殺害したと告白したフランク・シーランをデ・ニーロが、ホッファをパチーノがそれぞれ演じてるそうです。

『７月４日に生まれて』……#9703、映画板#1220
　ベトナム戦争で負傷して車椅子生活となり、後に反戦活動家となったロン・コビックの自伝的小説をオリバー・ストーン監督がトム・クルーズ主演で映画化した1989年の作品。コビックは1946年７月４日という米国の独立記念日に生まれ、64年に海兵隊に入隊。しかし68年に下半身不随となる重傷を負い、69年に故郷へと戻ることになります。そこで米国での反戦運動の盛り上がりを目の当たりにしてショックを受け、自暴自棄になって彷徨を経た上で、72年に自ら反戦運動に身を投じ、76年に『７月４日に生まれて』を出版するエピローグまでが描かれます。ベトナムの戦場のシーンもありますが、基本的には米国内における反戦運動の映画。まあまあ面白かったです。

『フロントランナー』……#10875
　追記することは特にありません。

『アイ、トーニャ　史上最大のスキャンダル』……#10750
　追記することは特にありません。

『ブッシュ』……#10867
　追記することは特にありません。

『記者たち　衝撃と畏怖の真実』……#10886
『シチズンフォー　スノーデンの暴露』……#10736
『スノーデン』……#10736
　以上３作は完全に21世紀に入ってからが舞台の映画なんで、まだ歴史映画とは言いがたいんですが、歴史の流れから紹介してしまおう。といってもいずれも追記することは特にありません（笑）。


＞史点について思い出したこと
　前回書き込んだ後で思い出したんですが、上で紹介したスパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』が、今回の黒人差別問題についてのタイムリーな映画でした。冒頭シーンが映画『風と共に去りぬ』から始まって、ラストは白人至上主義団体KKKの指導者デビッド・デュークで終わるこの映画こそ、今観るべき映画なのかもしれません。
　ちなみに『ドクター・ドリトル』は、ロバート・ダウニーJr.主演の最新版がただいま公開中。

＞女子大河の落日──『花燃ゆ』『おんな城主　直虎』感想追記
　順番的には2014年の『軍師官兵衛』ですが、話の流れ的に今回は2015年の『花燃ゆ』と2017年の『おんな城主　直虎』についてまとめて追記。
　実は僕はどちらも題材についてはある程度予想が当たりました。当時は男女交互に主人公になっていたので、いずれも順番的に女性主人公であることは予想がつきましたし、2015年については２年連続で戦国はないだろうしマイナーな時代の可能性も低いんでおそらく幕末。また当時は完全版が残っていない大河と同じ題材の２度目のドラマ化という流れがあったんで、井伊直弼や勝海舟の可能性はまずないだろうから龍馬の次は長州。ということで幕末の長州の女性主人公だろうという予想をしてたんですよね。2017年についてはそこまではっきりとは予想できませんでしたが、女武将主人公というのはいつかはやるだろうと予想してましたし、女性大河は幕末が続いていたんでそろそろ戦国になるんじゃないかという予想はしてました。この頃は男女交互だから予想しやすかったんだよなあ。
　平均視聴率はそれぞれ12.0％、12.8％と『八重の桜』以上の大惨敗。『花燃ゆ』は『平清盛』に並ぶ当時の最低記録となりました（厳密には0.01％低く、当時の歴代最低だったとのこと）。10年代に大河の主人公が男女交互になったのは、00年代に平均視聴率が高かったのがいずれも女性主人公だったから。ところが10年代は逆に女性主人公のほうが低くなってしまいました。そうなるとネタ的にも苦しい女性主人公をそんなに頻繁にやる理由はなくなるわけで、『直虎』が惨敗に終わったあたりで僕は「女子大河もそろそろ終わりかな」と思ったんですが、やっぱりその通りになりました。
　僕自身も序盤で脱落したんですが、いずれも『八重』の失敗を教訓として、当初はなんとか主人公を物語の中心に置こうと努力してたとは思います。しかしやはりそれは難しかったのか、徐々に主人公が傍観者的立ち位置になってしまったり、別の人物が主人公のようになって主人公がほとんど出てこなくなったりしてたようで、それでは物語としてはやっぱりまずいですよね。また、大河ドラマの視聴者層は70～80％以上が65歳以上と言われており、要するにほとんどがジジババとなっています。なのでそういう年代の人たちに面白がってもらえないと視聴率は取れない。00年代の女性大河『利家とまつ』『功名が辻』『篤姫』（＆『天地人』）は高齢男性に加えて高齢女性にもウケたからこそ高視聴率となったんでしょうが、それに対して10年代の女性大河『江』『八重』『花燃ゆ』『直虎』は高齢男性にも高齢女性にもウケなかったわけで、簡単に言えば高齢者から見てドラマとして面白くなかったんでしょう。

＞大河ドラマの視聴率に関する追記
　前回『八重の桜』について、初回視聴率は高かったが平均視聴率は低くなってしまったと書きましたが、00年代の大河でそうだったのが2004年の『新選組！』。初回視聴率は00年代最高の26.3％だったのに、最終的な平均視聴率は17.4％と00年代で下から２番目になってしまいました（ワーストの『武蔵』は初回も高くないので、落差的には『新選組！』のほうが大きい）。初回が高かった理由は、①香取慎吾ファンが観た②その他の俳優のファンが観た③三谷幸喜ファンが観た④新選組ファンが観た、といったあたりかなぁ。それが下がったのは、上記それぞれのファンが期待したものと違ったのか、あるいは大河の固定ファン層が離れたんでしょうか。


#11012　
バラージ 2020/06/22 21:50
歴史映像作品感想追記・アメリカ合衆国史編②

　『アンタッチャブル』は、実在のギャングで有名なのはなんといってもアル・カポネというのと、禁酒法時代を描いてるっていうのと、映画自体が80年代末という懐かしさから、つい入れてしまいました（笑）。そういや映画の後日談的なテレビ映画らしい『新アンタッチャブル　カポネの逆襲』ってのもビデオ化されてたな。『ゴッドファーザー』は僕は１作も観てないんですよねえ。『３』の予告編だけは当時映画館で観たんですが、あの有名な音楽が３度も流れたので、さすがに３度目では笑ってしまいました。


　名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記、アメリカ合衆国史編その２。

『チャーリー』
　あまりにも有名なチャールズ・チャップリンの半生を描いた1992年の伝記映画ですが、ハリウッド草創期からナチスの台頭と第二次大戦、そして赤狩りまで至る米国史映画として観ることもできます。監督はリチャード・アッテンボローで、主演はロバート・ダウニーJr.。若き日のダウニーJr.もがんばってはいるものの、やっぱりチャップリンには見えない。映像作品が残っている有名俳優を別の俳優が演じるのは──ましてやそれがほとんど伝説的な俳優となると──やはり難しいものがあります（他にはブルース・リーとかジェームス・ディーンとかマリリン・モンローとかもね）。その他の配役も当然ながらと言うべきかやたらと豪華で、個人的には３番目の妻ポーレット・ゴダート役のダイアン・レインや、初恋の人ヘティ・ケリーと最後の妻ウーナ・オニールの２役を演じたモイラ・ケリーがお気に入り。最初の妻ミルドレッド・ハリス役で、デビューしたてのミラ・ジョヴォヴィッチ（当時はただのミラ）も出ています。しかし残念ながら映画の出来はダイジェスト的で今一つ。

『真実の瞬間（とき）』……映画板#1219
　マッカーシズム（赤狩り）を描いた1991年の社会派歴史映画。基本的には架空人物の架空物語ですが、ロバート・デ・ニーロ演じる主人公のモデルは赤狩りでフランスに亡命したジョン・ベリーという映画監督とのこと。またマーティン・スコセッシが演じる赤狩りで海外へ亡命する映画監督のモデルは、『暗殺者のメロディ』などを監督したジョゼフ・ロージーらしい。赤狩りの恐ろしさを描いた秀作でしたね。デ・ニーロはこの頃映画に出まくってたなあ。

『グッドナイト＆グッドラック』……#9703
　マッカーシズムに立ち向かったCBSのニュースキャスターのエド・マローと番組のスタッフたちを描いた社会派歴史映画。俳優ジョージ・クルーニーの監督２作目で、番組プロデューサー役で出演もしています。タイトルはマローがニュース番組の最後に言うお決まりの台詞から。全編モノクロの作品で、権力や世間の空気やそれに迎合するテレビ局経営陣による抑圧と、それに抗するジャーナリズムという絶好の題材ながら、全編に渡ってあまりにも淡々と物語が進んでいくので映画としての盛り上がりに欠け、ちょっと退屈な映画でした。

『トランボ　ハリウッドに最も嫌われた男』……#10445
　追記することは特にありません。

『リトル・モー』……#9602
　1950年代に活躍した女子テニス選手モーリン・コノリーの半生を描いた1978年の伝記映画。あんまり歴史映画とは言えないんですが、個人的趣味で紹介してしまおう。子供の頃（80年代）にたまたまテレビ放送で観て、とても印象に残ったんですが、実在の女子テニス選手の伝記映画ということしか記憶になく、タイトルも主人公の名前も出演俳優も記憶になかったんで、自分でも長く「あれはなんていう映画だったのかなあ？」と心に引っ掛かってた映画です。やがて21世紀に入ってから、テニス誌でこの映画の話題があがっているのをたまたま読み、そこで初めてもろもろを知った次第。TVムービーらしいんですが日本では劇場公開されたそうで、ビデオ化もされたようですが僕はレンタル店で見かけた記憶がありません。DVD化もされてないんだよな。モーリン・コノリーは1953年に女子テニス選手初の年間グランドスラム（その年の四大大会全てで優勝すること）を達成し、時代の女王となりましたが、翌54年に事故による大怪我のため19歳で選手生命を絶たれ、69年に癌によって34歳の若さで亡くなったとのこと。身長160㎝と小柄だったことから「リトル・モー」と呼ばれたそうです。実は某有名動画サイトに日本語字幕版が全編アップされてるのを見つけたんで、そのうち観ようとずっと思ってるんですがいまだに観てないんですよね。

『LBJ　ケネディの意志を継いだ男』……#10990
　追記することは特にありません。

『フォッグ・オブ・ウォー　マクナマラ元米国国防長官の告白』……#9665
　ケネディ政権とジョンソン政権で国防長官を務めたロバート・マクナマラが自らの半生と米国史を語ったドキュメンタリー映画。ハーバード大学院卒、フォード社社長、国防長官、世界銀行総裁という知的エリートの道を歩んできたマクナマラが関わった第二次大戦からキューバ危機、ベトナム戦争までの20世紀米国史が綴られていくとともに、それらに対するマクナマラの悔恨と教訓、逃避と自己弁護が語られていきます。米国最高の頭脳と呼ばれた人物が世界を見誤り失敗した事実と、それを認めながらも「仕方がなかった」と自己正当化しようとする矛盾が心に残るドキュメンタリーでした。


＞『八重の桜』感想追記
　2013年の大河ドラマ『八重の桜』についての追記。最初の発表時には、なにも大河ドラマで東日本大震災復興応援企画をせんでも……と正直思いましたね。復興応援企画なら普通に現代劇ドラマでやりゃあいいのにと。史劇って自由にストーリー作れるわけじゃないし、そもそも現代を舞台にしてないんだから復興応援には向いてないと思うんですよ。
　平均視聴率は14.6％とまたも低迷。その原因を題材や主人公に求める意見もありますが、僕はそうではないだろうと考えます。なぜなら初回の視聴率が21.4％と高かったから。前年の『平清盛』の初回視聴率は17.3％。翌年以降にも初回視聴率が20％を越えた例はなく、2011年４月の完全地デジ化以降では最高視聴率回となっています。つまりこのドラマ、最初は視聴者から大いに期待されてたんですよね。それなのに最終的な平均視聴率は非常に低いものになったんだから、低視聴率の原因は始まる前からわかってた題材や主人公ではなく、単純にドラマの内容に問題があったと考えられます。まず初回の高視聴率はなぜかと考えると、１つには復興応援という言葉に惹かれた視聴者心理もあったんじゃないかと推測しますが、それ以上に主演が綾瀬はるかだったからというのが最大の理由なんではないでしょうか。というかそれ以外の理由が思いつかない。彼女の出世作は2004年のテレビドラマ版『世界の中心で、愛をさけぶ』で、さらに一段とブレイクしたのが2007年の主演ドラマ『ホタルノヒカリ』。以後は映画にドラマに主演にヒロインにと快進撃を続けてたところでの大河登板で、この頃の彼女は紛れもなく「数字を持ってた」んだと思います。
　となれば視聴率が急落した理由もまた明白で、これは放送中にも書きましたが、主演であるはずの綾瀬さんの出番が序盤少なく、ほとんど脇役的立ち位置に終始してたことが挙げられます。オープニングでは綾瀬さん出ずっぱりなのに本編に入った途端パタッと出なくなっちゃうんだもんなあ。綾瀬さんということを抜きにしても、主人公がまるで脇役みたいというのはドラマとして破綻してると言われても仕方がない（初回の子役からしてそうだった）。視聴率が20％を越えたのは初回だけで、５話までが18％台。６話では15％台まで落ち、７話は17％台だったものの、その後はほぼ15％台以下に終始しましたから、その辺で不満な人がほぼ脱落したんでしょう（かく言う僕もその１人）。まあ、「ひょっとしたら面白くなるかも」となんとか付き合えるのはそれぐらいまでですよね。まあ同情できるところもあります。急遽の題材変更だった上に脚本家複数人体制では、オリジナルストーリーとして脚本を練り上げる時間がなく、史実を追いかけるばかりの展開にならざるを得なかったんでしょう。そうなると史実のあまり残ってない八重は出番が少なくなり、脇役のような存在になってしまったんだろうと思われます。
　さらに言えば、主人公の八重がいつも肩をいからせて怒ってばかりいるような感情移入しがたいキャラクターだったこともマイナスでした。綾瀬さんはシリアスからコメディまで硬軟自在に演じ分ける女優だと思いますが、一般的に人気だったのは『ホタルノヒカリ』で演じたようなちょっと天然なところのあるコミカルなキャラクター。役だけでなくご本人もそういうキャラクターだったことが相乗効果となり、今でもCMで演じてるのは専らそういうキャラクターばかりです。僕は始まる前は新島八重のことをほとんど知らないこともあって、主人公が戦火などの困難を乗り越えていく朝ドラ的な明るいドラマになると予想してたんですが見事に大ハズレでした。
　それでも地元福島では視聴率は好調だったようですし、観光地の集客も増加したらしいんで復興応援にはなったのかな。何よりも綾瀬はるかと福島の人々の間に強い絆が生まれ、彼女がその後もたびたび福島を訪れているのが本作が残した最もポジティブな遺産だと言えるかも。

＞史点
　米国のアフリカ系（いわゆる黒人）差別の現状については、スパイク・リー監督の1989年の映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』を取り上げた考察が複数ありましたね。あの頃から30年か……。

＞歴史とほとんど関係ない映画の中の歴史
　先日、１～２年前に公開された『レディ・バード』という米国の青春映画を観たんですが、その中の本筋とは関係ない部分で興味深い歴史ネタがありました。女性監督の半自伝的映画で、21世紀初頭のイラク戦争の頃のカリフォルニア州サクラメント市に住む、ミッション系高校に通う３年生の女子高生が主人公。自分で付けた“レディ・バード”というニックネームで自らを呼ぶ彼女は、退屈な田舎町を出てニューヨークの大学に行きたいと考えているんですが、この映画の中で時折テレビでイラク戦争のニュースが流れるシーンがあります。しかしレディ・バードは気のない感じでニュースを眺めたりといった程度で、ひどい目にあった時には「戦争じゃなくたって悲惨なことはあるわ」とひとりごちたりします。ニューヨークの大学に補欠合格したシーンでも、9.11テロのためにニューヨークの大学を忌避する高校生が多くて競争率が下がったから、なんて台詞もありました。田舎町に住む高校生の彼女にとっては、イラク戦争はおろか9.11もどこか遠い世界の出来事で、家族、特に母との確執や、進路や恋や友情や初体験のほうが重要、というのもまた１つの真実なのでしょう。そういうのって歴史映画や戦争映画では描き得ないもので、なかなか興味深かったです。


#11010　
マナ 2020/06/21 21:19
お久しぶりです

10年程ぶりに大河ドラマを見ているうちに懐かしく、こちらを思い出し、書き込みました。
その間に、産んだ子が、小学校で歴史を習ってまして、江戸時代に興味を持っているようです。
今風の歴史漫画で好きになったようで、ここにも時代の流れを感じます。
また室町時代の本を読んでみたいと思っています。



#11009　
徹夜城（止まっていた仕事の一部が動き出してる管理人） 2020/06/16 23:51
「太平記」再放送も佳境へ

　NHK-BS早朝にやってる「太平記」再放送もはや１１回「楠木立つ」まで来ているそうで、ここからまさに怒涛の展開でありますね。ツイッター眺めてると案外「初めて見た」という人が多くて感想が楽しいんですが、やがて出てくる赤坂城・千早城の攻防戦は今見ても見ごたえがあると思いますね。
　後醍醐挙兵以後は、先日「麒麟がくる」で斎藤道三役を終えた本木雅弘さんが千種忠顕役で登場し巻いて、「出ていたんだ！」と驚いてる人も多いですね。

　その「麒麟がくる」ですが、コロナ禍の影響でついにいったん休止。確かにこの辺でひとまずの感想が言えるかな、と。ちょうど桶狭間もやって区切りにはなりました。
　まぁ予想されたことなんですが、光秀は前半生がまるきり不明なので、自由に描けるぶん動かし方が難しいんですよね。なんか毎回あっちこっちと「お使い」に出かけてる印象で、伏線にはなっていくんでしょうが今のところ特に大事件に関与するでもない（道三戦士くらいか）ので、ドラマとしては今一つ盛り上がらない。
　まぁ同じ池端脚本の「太平記」だって、事件はやたら多いけど主人公の高氏自身が主体的に動き出すのはだいぶかかりましたけどね。

　「麒麟」が休みの間にNHKは戦国大河スペシャルをやることになり、先日の「独眼竜政宗」の回はやっぱり見入ってしまいました。渡辺謙さんのインタビューも貴重ですし、出演はしてないけど大河常連の高橋英樹さんがゲストでリモート出演し、名場面にあれこれコメントしてたのも見もの。高橋英樹さんは民放の大型時代劇でほぼ話が同じ「政宗」をやってるんで場面場面に覚えがあるでしょうしね。
　もうずいぶん前のドラマだから当然ですが、出演者たちの「当時○○歳」と表示されるたびに「へぇ～」と驚いてしまうばかりでした。

　次回は「国盗り物語」で、高橋英樹・近藤正臣の信長光秀両氏がゲスト出演するようでこれが楽しみ。


＞Kocmoc　Kocma さん
　いやあ、ご指摘どうもです。恥ずかしながら「首相が感染」と聞いてただけでメドヴェージェフさんだと勝手に思い込んでました。「史点」更新と同時に修正しておきました。
　それにしてもプーチンの次は誰がでてくるんでしょうかねぇ。ロシア指導者の「法則」から気になるところで（笑）。

＞バラージさん
「アンタッチャブル」が出てきましたか…今回ご紹介ぶんではそれだけは見ています。でパルマ監督の映画版だけしか見てないけど、もともとテレビドラマとかいろいろあるんですよね。
　こういうのも扱いに困るところで…史実ベースの話だし、モデルはあるとはいえフィクションの「ゴッドファーザー」入れといてこっちは迷うんですね。「歴史」を感じるかどうか、という僕の感覚的なものが左右しちまいまして。
　「アンタッチャブル」って、主役のエリオット＝ネス当人の宣伝によるところが大きいようで、カポネを主役にした佐藤賢一さんの小説「カポネ」だと、ネスがえらくひどい奴に描かれていました。あの映画版はその方向をさらに煎じ詰めた感もあります。


#11008　
バラージ 2020/06/14 22:40
歴史映像作品感想追記・アメリカ合衆国史編①

　東（香港）も権力がデモを暴力で鎮圧、西（米国）も権力がデモを暴力で鎮圧……。


　名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記、今回はアメリカ合衆国史編その１。

『クルーシブル』……#9602、映画板#1218
　1692年の英国植民地マサチューセッツ州で起こった「セイラムの魔女狩り」を描いたアーサー・ミラーの1953年の戯曲『るつぼ』の1996年の映画化。監督はニコラス・ハイトナーで、脚本はミラー自身が書いています。主演はダニエル・デイ・ルイスとウィノナ・ライダー。原作は、「セイラムの魔女狩り」を通して、ミラー自身も経験した当時の“赤狩り”を描いたものだそうです。とにかく救いようのない悲劇的な結末へと向かっていく号泣必至の映画で、すすり泣きが映画館のあちこちから聞こえました。映画館で泣くのは気恥ずかしくて泣かないようにしてた当時の僕も、到底こらえきれず涙が止められなかったですね。特にラスト手前でのデイ・ルイスの魂の叫びがヤバい。嫉妬で狂気に走っていくライダーの演技も圧巻。ま、この人もその後いろいろありましたが。
　『るつぼ』の映画化はこれが２度目で、それ以前にフランスで1957 年に映画化されているそうです。邦題は『サレムの魔女』で、なんとジャン・ポール・サルトルが脚本を書いているとのこと。主演はイヴ・モンタン、シモーヌ・シニョレ、ミレーヌ・ドモンジョ。また、セイラムの魔女狩りは1937年にも米国で映画になっており、そちらの邦題は『セイルムの娘』。ただし、こちらは登場人物や展開などがかなりフィクションで、なぜか最後はみんなが魔女狩りの間違いに気付きハッピーエンドになっちゃうらしい。主演はクローデット・コルベール。

『バース・オブ・ネイション』……#10843
　追記することは特にありません。

『死刑台のメロディ』……#9703、映画板#1218
　1920年に起こったサッコ・ヴァンゼッティ事件（イタリア系移民のニコラ・サッコとバルトロメオ・ヴァンゼッティが、身に覚えのない強盗殺人犯として逮捕され裁判の末に死刑判決を受けた冤罪事件。1927年に死刑執行）をなぜかイタリアが映画化した1971年の社会派歴史映画。当然全編イタリア語です。確か90年代前半にレンタルビデオで観ました。原題はまんま「サッコとヴァンゼッティ」。２人は無政府主義者で徴兵拒否をした過去があり、第一次大戦後米国の不況による社会不安が当時勃興した共産主義への恐怖と結び付いてそのような冤罪を生み出したという、第二次大戦後の赤狩りに通じる事件だったようです。米国ばかりでなく世界中で抗議運動が起こりましたが、死刑執行が行われました。映画は作風がやはりヨーロッパ映画で、米国映画とは雰囲気が違っており、冤罪の恐ろしさを描いたなかなかの佳作でした。

『アンタッチャブル』……#9703
　1930年代の禁酒法時代のシカゴを舞台に、財務省捜査官エリオット・ネス率いる捜査班がアル・カポネを逮捕し有罪判決に持ち込むまでを描いた1987年の映画。ケビン・コスナーとアンディ・ガルシアの出世作で、ロバート・デニーロ、ショーン・コネリーの共演もあり、日本でも大ヒットしました。僕はテレビで観ましたが、まあまあ面白かったってぐらいかなあ。ブライアン・デ・パルマ監督は当たり外れが大きいとのことで、確かに『ミッション・インポッシブル』は面白かったけど、『虚栄のかがり火』なんかはいまいちでした。本作はネスの自伝に基づいてるとのことですが、自伝には自身を飾る虚構が多く、事実とはかなり異なるとのこと。
　自伝を原作とした連続テレビドラマも1959～63年に放送され、日本でも『アンタッチャブル』の邦題で放送されたそうで、そのパイロット版は『どてっ腹に穴をあけろ』の邦題で劇場公開されたとか。そのパイロット版は『ザ・アンタッチャブル　どてっ腹に穴をあけろ』の邦題でビデオ化もされてましたね。

『栄光のランナー　1936ベルリン』……#10427
　追記することは特にありません。

『ジュリア』……#9629、映画板#1215
　劇作家リリアン・へルマンの短編自伝を映画化した1977年の映画。反ナチス・ドイツ闘争に身を投じた幼なじみジュリアとの友情と、小説家ダシール・ハメットとの愛が描かれています。これも確か90年代前半にレンタルビデオで観たな。主演のジェーン・フォンダとジュリア役のバネッサ・レッドグレーブの熱演と、フレッド・ジンネマン監督の堅実な演出でなかなか面白い映画でした。ただし原作であるへルマンの自伝には創作の疑いがあり、ジュリアという人物の実在性についても客観的証拠はないようです。

『愛と哀しみの旅路』……#9703、映画板#1218
　第二次大戦前夜の白人男性と日系米国人二世女性の恋愛・結婚から、大戦勃発により主人公の家族ら日系人がマンザナール収容所に強制収容される悲劇を描いたアラン・パーカー監督による1990年のヒューマンドラマ映画。原題は『Come See the Paradise』。主演の白人男性役はデニス・クエイドで、もう１人の主演である日系人女性役のタムリン・トミタをはじめ日系米国人俳優が大挙出演しています。日系人たちの台詞が英語と日本語がちゃんぽんになったような言葉なんですが、同じシーンを英語の台詞バージョンと日本語台詞バージョンで別々に撮り、編集だか録音の段階でミックスしたらしい。日系人の描写が非常にリアルで、この頃の外国映画によくあった勘違い日本人になっていません。まあ日本人ではなく日系米国人だからかもしれないし、あるいは日系人から見たら不自然なところもあるのかもしれないけど。架空人物の架空の物語ですが、社会派要素とドラマ要素のバランスが上手くとられている佳作でした。


＞大河ドラマ『平清盛』追記
　2012年の大河ドラマ『平清盛』からはリアルタイムでこちらに感想を書き込んでたので、過去ログを読んで書き漏らしてたり後から思い付いたことを追記するだけにしようと思います。
　感想は以前も書きましたが、序盤から保元の乱までの展開はほとんど文句なしの出来。キャスティングも最高の顔触れと言ってよく、特に松田翔太の後白河や山本耕史の藤原頼長は最高でした。深田恭子、加藤あい、武井咲、田中麗奈といった女優陣も良かった。ただ、保元の乱後はやや失速した印象でしたね。前半と後半で人物設定にやや齟齬も見られました（史実では親平家の明雲を清盛の対立キャラにしたため後半でキャラ変をしなければならなくなった。史実では早い段階から仲が悪かった源為義・義朝親子を仲良し設定にしたため後半で突然親子仲を悪くしなければならなくなった。後半における清盛の突然の悪人化など）。とはいえ全体としては源平ファンとして非常に満足のいく出来のドラマでした。
　ただ平均視聴率は12.0%と歴代最低記録を更新。わが家でも初回で清盛の母・舞子（吹石一恵）が惨殺されるシーンで老母が「イヤねえ、昔の人は残酷で」と嫌悪感を示し、戦国好きの老父も「面白くねえ」とチャンネルを変えたがり、松ケンファンの妹も全く興味を示さず、僕１人が意地になって観続けている状態でした。なので低視聴率の実感を身をもって感じております（笑）。擁護する声も結構ありましたが、やはり『新選組！』や『いだてん』同様にマニア受けのドラマだったということなのかなあ。実は21世紀に入ってからのドラマには放送時には視聴率は必ずしも高くなかったにも関わらず、コアな人気を獲得して最終的に続編映画化までされたというパターンの作品が結構あります（『トリック』『木更津キャッツアイ』『SPEC』『モテキ』『みんな！エスパーだよ！』『賭ケグルイ』など）。でも歴史ドラマって続編が作れないことがほとんどなんで映画化なんてこともないんですよねえ。『新選組！』の単発ドラマも厳密には続編というよりスピンオフですし。
　そういえば過去ログを読んで思い出したんですが、同じく平清盛が主人公の大河ドラマ『新・平家物語』においては、小沢栄太郎演じる信西について視聴者から「早く殺せ」という声があったほどの悪役だったという話がありました。僕は初耳だったんですが、源平ファンからするとそもそも信西がそれほどの悪役に設定されるほうが意外。史実はもちろん、『平治物語』でも信西は別に悪役回りじゃないんですよね。むしろ悪役なのは信西と対立して平治の乱を起こす藤原信頼のほうでして。まあ『保元物語』では比較的悪役っぽい描写もあるようですが、それを言ったら清盛だってそうですし、なぜ信西だけそんな設定になったんだろ？　僕は原作未読ですが、原作でもそうなんでしょうか？　あるいは同じ原作の人形劇『平家物語』とかも？（こちらも未見）

＞『麒麟がくる』
　やっぱり越年して全44話放送することになったそうで。まあ久々の視聴率好調大河だからNHKも放送したいでしょうしねえ。これでジャンプの打ち切りマンガ的結末は回避されそう。ただ、収録では出演者同士は原則２メートルの距離を取るなど感染防止のための制作マニュアルに基づいて行うとのことで、それで撮影ができるもんなんだろうか？　もちろんドラマの完成より出演者やスタッフの安全のほうが大事なのは当然なんですが。
　俳優の演技についてはそれぞれの主観的評価なので何とも言えないんですが、個人的には本木雅弘の斎藤道三は好演かつ怪演だなぁと思っております。怪演すぎて主人公を食っちゃってるのはバランス的にちょっとあれですが（笑）。『信長』はほぼ未見なんで道三役が芦田伸介だったことすら知らなかったんですが、今回の道三は親子二代による国盗り説を採っているので比較的若めの道三になったんでしょう（というか当時の芦田伸介は旧説の道三としても歳を取りすぎのような）。そのようなこれまでの定番イメージを外した配役が、最初に聞いた時から新鮮だったんですよね。一方、高政（義龍）役の伊藤英明は以前書いた通り１～３月期のTBSドラマ『病室で念仏を唱えないでください』の主演がかなりハマってたのに比べると、せいぜい可もなく不可もなくといった感じ。
　ドラマそのものについては、たまたま僕が観た回がそういう回ばかりだったのかもしれないけど、主人公の光秀の出番が全体的に少なく、物語の中心に立っていないように感じます。休止前最後の回もたまたま観ましたが、光秀は桶狭間に関係ないから仕方がないとはいえほとんど脇役に近く、ドラマとしてはどうなんだろ？と。あるいは光秀を狂言回しに戦国の群像を描こうという意図なのかもしれないけれど、それにしても主人公である以上物語の真ん中にいるべきなんじゃないかと思うんですよね。なんか『八重の桜』を思い出しました。もっとも『八重』と違って視聴率は好調のようですが。主演の長谷川博己も、僕は二番手以降で輝くタイプの俳優だと思ってたんで、大河の主演に抜擢されたのはミスキャストのように思えたんですが、物語の中心にいない脇役的立ち位置がかえって妙にハマってしまったということなんだろうか？　ま、どっちにしろ僕はモックン退場であとはどうでもよくなったんでここで完全離脱いたしますです。

＞中国史ドラマ
　前に書いたWOWOW放送中のタン・ウェイ主演中国ドラマ『大明皇妃　Empress of the Ming』。僕は１話でもういいやとリタイアしたんですが、僕が観ていた『如懿伝』をときどき横で観ていた妹が興味を持ったようで毎回録画視聴しています。僕も付き合いでこの間たまたま観たら、大航海から帰還した鄭和が登場。彼が連れてきた各国からの使節をもてなす園遊会が出てくるんですが、その使節たちの格好がみんなどこかちょっと……いや、かなり変（笑）。永楽帝（演じているのはワン・シュエチー）に謁見する日本から来た足利将軍の使者は江戸時代のバカ殿みたいな衣装でちょんまげも妙ちくりんだし、なぜか園遊会で踊りを踊る女性たちも大量に来ているんですが、芸者みたいな格好でほとんど現代の盆踊りに近い。これまた大勢来ている朝鮮の女の人たちも現代のお祭り（四天王寺ワッソとか？）で踊る人みたいだし、インドとかアフリカとかモンゴルとかみんななんか変なんですよねえ。まあ、ありがちっちゃありがちな話ですが。ちなみに足利将軍の使者は永楽帝に倭寇を取り締まれとか言われてました。


#11007　
Kocmoc　Kocma 2020/06/13 19:31
メドヴェさん

管理人様
この度のニュースな史点の「夏も近づく７５年」に、
＞ロシアではメドヴェージェフ首相や閣僚も新型コロナに感染
とあって、あれえ？メドヴェさん感染してたっけ？と思ったんですが、いや、そもそもメドヴェさん、もう首相じゃないですよね。
メドさんは大統領退任後長く首相でしたが、ロシアでは何といってもプーチンさんがビッグすぎて首相が誰っていうのは殆ど意識されませんが。
メドヴェさんはそれでも”プーチンが演説している前で眠り込んでも解任も叱責もされない、意外と度胸のある人物なのかも？”と噂されていました。

新型コロナウイルスに感染したのはミシュスチン首相、ヤクシェフ建設住宅相、リュビーモヴァ文化相などです。あと、ペスコフ大統領報道官の妻でトリノ五輪アイスダンス金メダリスト、タチヤーナ・ナフカさんもですね（政治家じゃないけど）。


#11006　
カプラン 2020/06/07 22:42
『麒麟がくる』:私的な中間評価など

　お世話になります:カプランでございます。
　大河ドラマ『麒麟がくる』が已むに已まれぬ一時中断となり、しばらくお休みと
なります。
　この機会を捉えて(普段でしたら年1回くらいのカキコのペースなのですが)、私の
中間評価を5つほど挙げさせていただきたく存じます。

　まあ、正直申し上げて、全体として期待外れの出来になってしまっているというの
が率直な印象です:しかし、(共同執筆ではあるものの)池端俊策先生の作品ではある
のですが、ブランドイメージで語られすぎな感じがしますねえ――大御所クラスで
あることは認めるのですが、出来/不出来の評価は当然別個であるはずなのに、その
尻馬に乗ろうとする雰囲気があるようで(制作者をも含む)…。

以下、思いつくままなのですが…。
1)当て書き要素が強く、ストーリー展開に訴求力が欠ける:お目当ての俳優さんを
　ファン的な視点から評価して満足する方々にとっては、この評価は当たらないの
　かもしれません。とはいえ、ストーリーそれ自体だけを取り出してみた場合、
　展開に無理/不自然がある部分(例:なぜ平和を希求するシーン説明として「麒麟」
　の存在が持ち出されるのか、(そしてなぜ登場人物皆が知っているのか、)説明され
　ない…。民間伝承の流布でもあったという説明付けがあるならば、いざ知らず…。)
　や無関係な部分(例:光秀を無理やりストーリーに絡めるシーンが　結構ある。
　『太平記』ならば、ストーリー展開の自然さを優先させる形で、足利尊氏不在の
　鎌倉攻めシーンを描くぐらいの大胆さがあった。しかし、今回はそういう割り切り
　がない…。)が散見されるんですよねえ…。
2)(当て書き要素との関連で、)キャラクターの魅力が俳優さんの個性や演技力に依存
　してしまっている:つまり、俳優さんの個性や(こう書くと顰蹙を買うかもしれま
　せんが ^_^;)演技力がキャラの出来/不出来に反映してしまうということ。
　あくまで、個人的評価ですが、本木雅弘さんの斎藤道三って好演でした?? 私には
　ミスキャストの印象が…。例えば『信長 KING OF ZIPANGU』の芦田伸介さんと比べ
　てしまうと、やっぱり(頑張ってはいるのは分かりますが)貫禄不足…。(反対に、
　伊藤英明さんの斎藤高政はハマっていたように思います。とはいえ、この場合は
　「当て書きがうまく機能している」が故の評価なので、額面通りとはいかないのが
　私としても苦しいのですが…。)
3)伏線の未回収:最終的判断は保留になりますが、(見落としていないのならば)明智
　光安の扱いは気になりました。一時期、織田へ寝返りって　いた(らしい)時期が
　あったはず…。結局、種明かしされずに終わってしまうのであれば、おしいかな
　と…。この伏線を利用してエピソードが作れそうなものなのに…。
　　逆に、駒を救ったのが光秀の父であったという謎解きは、出来としてどうなん
　でしょう?? わざわざ引っ張る必要があったのか、と…。
　　後、菊丸が三河の忍びという設定…。あっさりとバラしすぎのような気が…。
　(そうでもしないと、説明するタイミングを逃しかねないということか?? )
4)未処理エピソードの存在:まあ、どんなドラマでもありますけどね…。ただ、光秀の
　婚儀に関しては拙速でしょう…。
5)ビジュアル・インパクトの重視:というか、ストーリーの貧しさを、ビジュアルの
　出来で補正しようとしているのか…、と勘繰りたくなる…。デフォルメ・ビジュ
　アルの多さも気になります…。

　まあ、こんなことを書いてしまいましたが、今後の展開を楽しみにはしています。
　とはいえ、『坂の上の雲』の出来を見て、池端先生のストーリー構築力に緩みが
出てきたのかなあ…、と気にはしていましたが…。(尤も、脚本監修としてどこまで
関与していたのかは不明ですが…。この作品、映像はよかったんですけどね…。
ストーリーが視聴者にどのように映ったのか、気にはなりますが…。)

こんな感じですが、しかし…、災難を吹き飛ばしてよい続編となることを願って
います:これは本心です。

　以上、お目汚し、失礼いたしました。(シーンの見逃し/思い違いがありましたら、
ゴメンナサイ。)


#11005　
バラージ 2020/06/05 22:38
またまた、激動の韓国現代史映画

　ようやくNHKの公式発表で、『麒麟がくる』がお休みの間は過去の戦国大河名場面スペシャルを放送するとのこと。緊急事態宣言が解除されたため収録はなるべく早く再開したいが、再開時期については現時点では未定で、放送再開や放送回数も収録再開後に検討するんだとか。来年の『青天を衝け』は現時点では放送期間を見直す予定はないが収録開始時期は例年より遅れるそうです。やっぱり最初に予想した通りの展開だなあ。『麒麟がくる』、僕はすっかり脱落してたんですが、モックン道三の最期は観ておこうと久々に観ました。やはりモックンの存在感が強烈で、相変わらず長谷川光秀の影が薄い。というか光秀、まだ信長に仕えてなかったのか。ようやく朝倉義景に仕えたところで放送休止ということで、さすがに斎藤氏パートを引っ張りすぎたんでは？　結局、「あれから○年……」でいきなり本能寺とか、超ダイジェスト展開でいきなり本能寺とか、本能寺まで行かず「光秀の戦いはまだまだこれからだ！」エンドとかに……ってジャンプの打ち切りマンガかよ。


　緊急事態宣言が解除ということで僕の地方では映画館が営業再開されたため、まだ新作があるうちにと『スウィング・キッズ』という韓国映画を観てきました。
　舞台は朝鮮戦争の時代。巨済島にある米軍の捕虜収容所の所長が宣伝戦略のために、元ブロードウェイのメインダンサーだった黒人下士官に捕虜たちによるダンスチームを編成するよう命令する。集まったのは問題児の北朝鮮兵捕虜、臨時通訳の貧困女性、妻を探す民間人捕虜、太った中国兵捕虜の４人。このでこぼこチームは衝突や紆余曲折を繰り返しながらクリスマス公演に向けてタップダンスを練習する中で１チームとしてまとまっていくが、その裏では様々な不穏な思惑が進行していた……といったストーリー。
　いやぁ～、面白かった！　前半こそコミカルなタッチがリアリティを損ねてるというか、ちょっと漫画チックに感じられて、だいじょうぶか？と心配になるんですが、全ては後半一気にハードでシリアスな悲劇的展開へと暗転していくための前奏でした。人種・民族・性差・イデオロギー、そういったあらゆる障害に囚われながらも、それを越えていくタップダンスの響き、躍動。そしてそれをも無惨に打ち砕く非情な現実。クライマックスの公演のタップダンス・シーンでは感動でちょっと泣いてしまいました。タップダンスと演出の素晴らしさに泣けたのです。歳のせいですかね（笑）。そしてそこからのラストの落差。いや、すごかった。架空人物による架空の物語であって、史実を扱ったいわゆる歴史映画ではないんですが、これはおすすめです。やはり今は韓国映画の時代なのかもしれません。
　監督は『サニー　永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチョル。『サニー』は評価の高さを聞きながらもなんとなく観逃したんですが、DVDで観てみようかな。主演はEXOというグループのD.O.。黒人下士官役が本物のブロードウェイ・ダンサーのジャレッド・グライムス。紅一点の４か国語に通じた跳ねっ返りの「パンパン」役のパク・ヘスは、決して美人な顔立ちではないんですが、その佇まいというか雰囲気がとても美しい。いい女優です。

＞DVDで観た映画
『国家が破産する日』
　1997年のアジア通貨危機で起こった韓国の通貨危機を描いた韓国の社会派映画で、通貨危機をいち早く予測して対策を上層部に進言する韓国銀行通貨政策チーム長の女性、やはりいち早く予測して絶好のチャンスと大勝負に出る若い金融コンサルタント、経済情勢を知らず倒産の危機に陥る町工場の経営者という３人の架空人物が主人公。他の登場人物もほぼ架空の人物で、実在人物は金泳三大統領がチラッと出てくるくらいです。経済という門外漢には難解でドラマ性にも乏しい題材を、事実をわかりやすく再構成してエンタメ系社会派映画に仕上げていて、まあまあ面白かったですね。ただ、やはり経済理論的な話は難しくてところどころわかりにくかったし、物語的には逆にエンタメ的にわかりやすくしようとしすぎて単純な勧善懲悪（といっても正義が勝つわけじゃないんだけど）になってしまっているのも否めません。


＞史点
　本丸とは別のところで失脚してしまった黒川検事長。本丸の件をうやむやにしちゃいたい安倍首相にとってはむしろ好都合だったんじゃないかという見方も一部ではあるようですね。ひょっとしてウヨクな文春がお仲間の安倍首相をアシストしたのでは？　ウヨク仲間の産経も攻撃することになりますが、雑誌と新聞の確執もあるだろうし、宿敵朝日も道連れにできるわけだから……。ま、実際には単にスクープネタを飛ばしたかっただけなんだろうけど（笑）。文春も『諸君』が廃刊になったあたりから、生き残りをかけて方針転換し、今やすっかりスキャンダル誌になった感があります。
　賭け麻雀は、法律を守るべき検事長なのにとか、この三密を避けるべき非常時にとかいうことはあるにしても、それ自体は正直言って大したことじゃないと思うんです。このニュースを何人かの芸人たちが、「あれ？　お前もやってたよな？」「や、やってねえよ！（焦）」というネタにしてたように、ぶっちゃけそれほど珍しいことでもないですし。いっしょに雀卓囲んだ記者もネタ探しというより単に麻雀やりたかっただけで、検事長も同様の要するに“雀友”だったんでしょうね。接待ゴルフと言いながら、接待は言い訳で単にゴルフがしたいだけ、みたいなのといっしょで。
　しかしまあ安倍首相もあっさり黒川さんを切り捨てちゃいましたな。森友の籠池さんなんかもそうですが、安倍さんは自分が目をかけた人でも、自分自身がヤバくなると冷たく切り捨ててしまいます。その一方で昔からの友だちの加計さんは切り捨てないし、奥さんにいたってはかばいっぱなしなのがなんとも。それにしても安倍さんが目をかけた人はほんとしょーもない人が多くて、やっぱり人を見る目がないんだな。

＞歴史映像名画座
　過去ログ（#9851～9856）を読んで思い出したんですが、オリエント・聖書関係史の『キング・オブ・キングス』の解説の「動いてしゃべる生身のイエスが描かれた最初の映画」という部分は、「アメリカ映画におけるイエス像の時代的変遷」（https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/16395/003074010006.pdf）という論文を見ると誤りなので修正したほうがいいと思います。なお、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督による1935年のフランス映画『ゴルゴダの丘』でもイエスの顔や全身が映っており、（フランス語を）しゃべってます。

＞戦国ガールズ（特に意味はない）
　大河ドラマの思い出もついに10年代に入り、2011年の『江　姫たちの戦国』です。さすがに10年代となると、思い出と言っていいのかとも思うんですが、10年前（正確には９年前）と考えるとそれなりに年月は経ってるとも言えるんですよね。
　最初に主人公が浅井三姉妹の末っ子の江と聞いた時には、え？　長女の淀殿じゃないの？と思ったんですが、正室ではなく側室ということや、最後が悲劇的で暗くなって終わることが敬遠されたのかな。江というと戦国っていうより大奥初期の敵役のイメージのほうが強かったんですが（本作の数年前に観た『大奥　第一章』では高島礼子が演じてた。大河だとやはり『葵』の岩下志麻が印象的）、それだけにそれ以前の江については淀殿のおまけみたいな描かれ方でしかなかったため、そういう意味では目新しかったのかも。とはいえ僕が観たのは最初の２話くらいで、これはちょっとなあという出来だったのでそのままリタイア。ただ女性だし戦国だしで我が家ではチャンネル回してたんだっけかなあ？　どうも今一つ記憶がありません。というのもこの年の３月11日に東日本大震災が発生。それどころではなくなったこともあって記憶が飛んじゃってます（まあ僕のところはライフラインの停止だけで電気も数日後には復旧しましたが）。あと、この年の４月から（東北以外では）完全地デジ化となってBS2がなくなり、BSハイビジョンがBSプレミアムに変わって、ほとんどの視聴者が地上波放送より先にBS放送で観れるようになったんですよね。
　平均視聴率は17.7％と惨敗し、00年代の救世主となった女子大河初めての躓きとなりました。理由についてははっきりとはわかりませんが、主人公の夫がいろんな理由で３人も変わるため、夫婦ものとして展開させづらかったというのも一因かもしれません。理由はどうであれ、00年代女子大河のように中高年女性の支持を得られなかったことが低視聴率の原因なのは間違いないでしょう。しかしこの時はこれが10年代大河最高の平均視聴率になるとは、まだ誰も知る由もないのであった（笑）。
　視聴率が低かったためもあって週刊誌やスポーツ紙やネットメディアで相当叩かれてた印象がありますが、僕も最初のほうでリタイアしちゃったんで言えた義理ではないけれど、それにしたってちょっと叩かれ過ぎてたような気も。ドラマそのものばかりでなく、主演の上野樹里の演技についてもやたら叩かれてましたが、時代劇初出演ということもあって確かに今一つの印象があったとはいえ、彼女の演技そのものへのオヤジ系（もしくはジジイ系）メディアの低評価には首を捻るものがありました。彼女の出世作は2004年の映画『スウィングガールズ』ですが、僕が強く印象に残ったのはそれより後にDVDで観た2003年の映画デビュー作『ジョゼと虎と魚たち』での主人公の恋敵役。“演技の怪物”池脇千鶴を相手に、薄っぺらい善意の優等生という難役を見事に演じ、弱冠17歳でベッドシーンまでさらりと演じちゃう肝っ玉に驚嘆しましたね。『スウィング～』以後は主演やヒロインクラスで次々に映画出演。お茶の間に名前が知れ渡ったのは連ドラから最終的に劇場版まで作られた『のだめカンタービレ』（2006～2010年）で、以後主演から助演まで、コミカルからシリアスまで硬軟自在に演じ分ける若手演技派女優として活躍しています。去年主演した『監察医　朝顔』も好演でしたし、特別出演だった今年の『テセウスの船』でも場をさらう演技でした。


#11004　
バラージ 2020/05/24 11:16
名画座情報

　歴史映画の感想追記はちょっと一休み。『麒麟がくる』はまたまた一転して、越年してでも全44話放送するというニュースですね。で、来年の『青天を衝け』が遅れて始まり、少し短くなるという。NHKも何やらいろいろ混乱してますな。
　最近、『百田尚樹をぜんぶ読む』（杉田俊介・藤田直哉・共著、集英社新書）という本を読みました。実は百田尚樹自体には僕はあまり興味がなく、小説等の著書も１冊も読んでなければ映像化作品も全く観ていないんですが、この本は本屋でなんとなく──本当に何の気なしに、手に取ってパラパラと立ち読みしたら面白くてついつい読み込んでしまったため買ってしまいました。２人の批評家の対談による百田に批判的なリベラルな姿勢からの批評ですが、その一方で小説作品についての評論でもあり、諸作品それぞれの評価は両者で違っているところもあって、興味深く読みました。こちらの掲示板でも百田の『日本国記』についての話題があがったことがありましたが、興味のある方は読んでみてはいかがでしょう。小説以外の著作に関しては１作ごとの評論はありませんが。

　さて、今回は今までに書いた歴史映像名画座収録作品の修正情報を総ざらい。気づいた都度にちょこちょこ書いてきたんで１度まとめておこうと思いまして。いつか情報を追加・修正する時にご参考にしていただければ幸いです。
　ちなみにVHS＆LD化情報はallcinemaが充実していたためそちらを参考にし、それをAmazonや駿河屋で確認する方法をとりました。Amazonには案外出品情報がない場合も多く、特にLDに関しては駿河屋で確認したものが多いです（品切れのものも含めて過去の出品情報が掲載されている）。パッケージ画像もだいたいあるので重宝しました。まれにAmazonにも駿河屋にも情報がない場合もありましたが、その時はYahoo!やGoogleで「○○　VHS」「○○　LD」で直接検索するとオークションに出品された情報が結構引っかかりましたね。動画配信についてはfilmarksが充実していて参考になりました。

『卑弥呼』……キングレコードから「ATG初DVD化BOX」という他のATG９作品とのBOXセットでDVDが発売されています。単品バラ売りはありません。
『鶴姫伝奇』……「興亡瀬戸内水軍」というサブタイトルが付いています。
『戦国疾風伝　二人の軍師』……「～秀吉に天下を獲らせた男たち～」というサブタイトルが付いています。
『家康、江戸を建てる』……NHKエンタープライズよりDVDが発売されています。
『江戸城大乱』……LDはポニーキャニオンから発売されていたようです。また動画配信もされています。
『花燃ゆ』……完全版・総集編ともにBlu-rayも発売されています。
『永遠のニシパ　～北海道と名付けた男　松浦武四郎～』……NHKエンタープライズよりBlu-ray＆DVDが発売されています。
『HERO』……チャン＝ツィイー、ドニー＝イェンが、チャン＝ツ「イ」イー、ドニー＝イ「エ」ンと大文字になっちゃってます。
『創世の竜　李世民　大唐建国記』……『創世の「龍」　李世民　大唐建国記』が正しい邦題です。
『ザ・エンペラー　西蔵之王』……劇場公開邦題はただの『ザ・エンペラー』で、「西蔵之王」というサブタイトルが付いているのはVHS邦題です。
『水滸伝（1983年の映画）』……DVD化はされていませんが、VHSの他にLDもパイオニアLDCから発売されています。また動画配信もされています。
『忠烈図』……LDはパイオニアLDCから発売されていたようです。
『ウォーロード　男たちの誓い』……日本で劇場公開されたのは113分の短縮版のみで、DVDは逆に126分の完全版のみ。
『観相師』……厳密には『観相師　―かんそうし―』という邦題のようです。
『怪傑　洪吉童』……『洪吉童　ホン・ギルトン』の邦題でブロードウェイからDVDが発売されています（北朝鮮映画の全貌シリーズ）。
『ブラザーフッド』……ウォン=ビンは「=」の入らない「ウォンビン」が正しいです。
『ジンギスカン（1965年の米国映画）』……劇場公開邦題は「・」の入った「ジンギス・カン」だったようで、VHS化の際に「・」の抜けた「ジンギスカン」という邦題になったようです。
『チンギスハーン』……「・」の入った「チンギス・ハーン」が正確な邦題のようです。
『マンドハイ』……DVD化はされていませんが、VHSの他にLDもパイオニアLDCから発売されています。
『ソドムとゴモラ（1962年）』……DVD化はされていませんが、VHSの他にLDも日本コロムビア株式会社から発売されています。
『ダビデとゴライアス』……DVD化はされていませんが、VHSが東芝映像ソフト株式会社から発売されています。
『キング・ダビデ　愛と闘いの伝説』……DVD化はされていませんが、VHSの他にLDもパラマウントホームエンタテインメントジャパンから発売されています。
『ジュリアス･シーザー（1970年）』……Blu-ray＆DVDが復刻シネマライブラリーから発売されています。
『侵略者』……DVD化はされていませんが、『侵略王アッチラ』の邦題でVHSが東宝から発売されています。
『パン・タデウシュ物語』……DVD化はされていませんが、VHSがエムスリイエンタテイメントから発売されています。
『ヴァイキング・サーガ』……「・」無しの『ヴァイキングサーガ』が正確な邦題のようです。
『ルードヴィヒ』……最初に公開された際の邦題は『ルー「ドウ」ィヒ　神々の黄昏』で184分。完全版の邦題は『ルー「トヴ」ィヒ』。DVDは両バージョンともあり。
『リベレイター』……「南米一の英雄　シモン・ボリバル」というサブタイトルが付いています。
『戦うパンチョビラ』……VHS邦題は正確には劇場公開邦題と違って『戦うパンチョ・ビラ』と「・」が入っているようです。
『モアイの謎』……DVD化はされていませんが、VHSの他にLDもパイオニアLDCから発売されています（邦題はVHSと同じ）。

　以下の作品はいずれもDVD化はされていませんが、動画配信がされています。
『火の鳥（実写映画）』『徳川家康（映画）』『かぶき者慶次』『江戸城大乱』『竜馬を斬った男』『足尾から来た女』『ドラマ「東京裁判」　TOKYO TRIAL』『三国志＆三国志II 天翔ける英雄たち』『水滸伝（1983年の映画）』

　中国史作品に出演している以下の中華圏俳優はそれぞれ同一人物です。
『墨攻』のウー＝チーロンと、『新忠烈図』の呉奇隆。表記はニッキー＝ウーが一般的ですね。徒然草の『墨攻』の項ではニッキー＝ウーになっています。
『墨攻』『始皇帝暗殺』の王志文と、徒然草の『墨攻』のワン＝チーウェン。
『ヘブン・アンド・アース　天地英雄』の王学圻と、『孫文の義士団』のワン＝チェシー。後者のカタカナ表記は間違いで、ワン＝シュエチーが正しいです。
『水滸伝（2011年）』の張函予と、『孫文の義士団』のチャン＝ハンユー。
『岳飛伝　THE LAST HERO』の劉承俊と、『ラスト･ソルジャー』のユ＝スンジュン。韓国出身の俳優です。
『大明劫』『蒼穹の昴』の余少群と、『１９１１』のユイ＝シャオチュン。
『ラストエンペラー』のウー＝ジュンメイと、『宋家の三姉妹』のヴィヴィアン＝ウー。同一人物ですが間違いというわけではなく、『ラストエンペラー』の時はウー＝ジュンメイと表記されてたんですが、その次の日本公開作（というか日本映画）『チャイナシャドー』からヴィヴィアン＝ウー（またはビビアン＝ウー）と表記されるようになりました。


＞Majiで大政奉還する５秒前（特に意味はない）
　大河ドラマの思い出、ついに00年代最後の2010年『龍馬伝』です。主人公が大河で２度目の坂本龍馬ですが、すでに秀吉や義経も２度目の主人公になってたんで龍馬もそのうちやるだろうなと思ってました。ただ主演が福山雅治というのは男前すぎというか、ちょっと狙いすぎのようにも感じましたね。前年の10月～12月にTBSで放送してたタイムスリップ幕末ドラマ『ＪＩＮ　仁』の内野聖陽が演じる坂本龍馬（と小日向文世が演じる勝海舟）があまりにもハマり役で、ドラマ自体も面白くて毎回観てたので、また龍馬かよという感じでいまいち興味がわきませんでした。ちなみに本作で勝海舟を演じた龍馬マニアの武田鉄矢は『ＪＩＮ　仁』では緒方洪庵役で特別出演。武田はもちろん龍馬も演じたことがありますが、もう１人、本作でジョン万次郎を演じたトータス松本も市川準監督の映画『龍馬の妻とその夫と愛人』で龍馬を演じたことがあります。それから『ＪＩＮ　仁』では中岡慎太郎だった市川亀治郎は本作では今井信郎と、殺される人から殺す人になってしまいました。
　平井加尾（広末涼子）、千葉佐那（貫地谷しほり）、楢崎龍（真木よう子）、お元（蒼井優）の４人のヒロインをリレー形式に登場させるという前宣伝だった記憶があり、レンタルビデオ店でDVDパッケージ裏のあらすじを読むと実際その通りの展開だったようです。中でもやはり話題になったのは高知出身No.1有名人となった広末涼子が高知の英雄・龍馬のドラマに出演というところで、大河ドラマ全作品公式サイトの『龍馬伝』の項でも主な出演者として掲載されているのは４人の中では彼女だけです。広末さん自身は以前から乙女姉さんを演じたいと言ってたんですが、やっぱり彼女のイメージとはちょっと違うよなあ（笑）。平井加尾は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』に登場する「お田鶴」のモデルになった女性とのことで、そのためもあってかそれまで映画やドラマに登場したことがなく、本作がドラマ初登場となったそうです。また龍馬の姪・坂本春猪役で、当時ブレイクし始めたAKB48の絶対センター前田敦子が出演したのも、彼女がすっかり女優となった今では今昔の感あり。
　僕は前記の通りいまいち興味がわかず、戦国じゃないし女性主人公じゃないしで我が家でもほとんどチャンネルを回してなかったんで、ほんのちらっとしか観ていません。観たのは確か蒼井優が演じるお元が出てきたあたりだったような記憶。しかし実は最近になってレンタルDVDで最終回だけ観ました。なぜかというと好きな女優の星野真里が最終回にだけ出演してたから。龍馬が暗殺された時に宿泊してた近江屋の妻・スミ役でして、なんで最終回にだけそんなちょい役で出たんだろ？　武田鉄矢が演じた坂本金八の娘の乙女ちゃん役だったからだろうか？（笑）　てか、これが彼女の唯一の大河出演なんだよなあ。NHKももうちょっとちゃんとした役で出してほしいもんです。それはともかく最終回を観た限りではハードでシリアスなドラマで、なかなか面白かったです。幕末にはあまり興味がないんですが、これはドラマとして面白そうだし配役的にもちょっと興味があるので、観てみても良かったかなあ。平均視聴率はまたも20％を切り18.7％。やはりこういう重厚タイプの大河ドラマは視聴率が取れない。おそらく中高年女性が敬遠するんでしょうねえ。うーん……。


#11003　
バラージ「 2020/05/09 22:27
歴史映像作品感想追記・ヨーロッパ史編②

　確かに実話をモデルにしたフィクションの映画は歴史映画の範疇に入れていいか微妙ですね。僕は掲載するわけではない無責任さで、映画として面白いから紹介しちゃいましたが（笑）。社会派映画と言われるジャンルも結構観てまして。
　『麒麟が来る』は、スポーツ紙の記事によると収録が終わってるのが６月７日に放送される21話までとのことで放送中断の可能性が濃厚。一時は越年かなんて噂もありましたが、新たな記事では放送話数を減らして年内に終了するという話で、こっちのほうが現実的な気がします。役者やスタッフのスケジュールも今年の分しかおさえてないでしょうし、来年は来年で『青天を衝く』の吉沢亮くんのスケジュールがすでにおさえてあるはず。今は全員がSTAY HOME状態で来年の見通しもわからないとはいえ、当初の予定を変えたらスケジュールの再調整が大変なことになってしまいます。しかし全44話の予定がさらに短縮となると、物語がかなり駆け足になってしまいそう。ドラマが再開したと思ったら、「あれから○年……」とかナレーションが入って、いきなり本能寺の変になってたりして（笑）。穴埋め番組はとりあえず放送回までの総集編をやるみたいな話がありますが、その後はどうするんですかねえ？　大河って1年ドラマだからこういう時、小回り利かないんだよなあ。
　あ、大河ドラマといえば、『いだてん』を６話に再編集して英語字幕＆ナレーションを付けたワールド版『IDATEN　The Epic Marathon to Tokyo』がNHK国際放送のNHKワールドJAPANで放送されるそうで。


　名画座未掲載の歴史映像作品の感想の追記、ヨーロッパ史編の後半。

・ドイツ・オーストリア史
『不滅の恋　ベートーヴェン』……#9629、映画板#1215
　ベートーヴェンの死後に発見された「不滅の恋人への手紙」の「不滅の恋人」とは誰かをめぐるミステリー仕立ての伝記映画。1994年の英米合作映画です。
　映画はベートーヴェンの死後、秘書のアントン・シンドラーが発見したベートーヴェンの遺書にしたためられていた「不滅の恋人」を探すために、ジュリエッタ・グィチアルディ、アンナ・マリー・エルデーティーら「不滅の恋人」と思われる女性たちのもとを訪れ、彼女たちの回想でベートーヴェンの半生が描かれていくという構成で、最後に「不滅の恋人」の意外な正体が明らかになります。非常によくできてて面白い映画だったんですが、ずっと後になってから調べると必ずしも史実通りではなく、かなりフィクションが含まれているようです。「不滅の恋人」の正体にしても史実的にはかなり無理があるようですが、それはそれとして物語としてはすごく面白いんだよな。ベートーヴェンの楽曲が全編に散りばめられていて耳にも心地いい映画で、主演のゲイリー・オールドマンや、イザベラ・ロッセリーニ、ヴァレリア・ゴリノら女優陣も好演。
　バーナード・ローズ監督は去年公開された日本映画『サムライマラソン』（未見）でもなぜか監督をしてましたが、企画・プロデュースもジェレミー・トーマスということでイギリス発の企画だったみたい。

『敬愛なるベートーヴェン』……#9943
　こちらは交響曲第九番初演前後を舞台に、ベートーヴェンとある女性写譜師（作曲家が書いた楽譜を清書する職業）の交流を描いたイギリス・ハンガリー合作映画。こちらのベートーヴェン役はエド・ハリスで、アンナという女性写譜師はダイアン・クルーガーが演じています。へえ～、そんな女性いたんだと思って観ていたら、聞いたこともないようなエピソードが続き、首をひねりながら観ていたところ、第九初演の場面になってその疑問は頂点に。第九初演時のベートーヴェンには有名なエピソードがありますが、根本的にそれとは異なる描写になっていて、さすがにこれはおかしいと思って観終わった後に調べたら、なんとアンナは映画のために創作された架空の人物でした。映画はそのアンナとベートーヴェンのダブル主人公と言ってよく、２人の関係性が物語のメインなのでほぼ全編フィクションだったんですね。それでも映画として面白ければ別にいいんですが、その肝心の面白さも今一つなんだよなあ。

『ローザ・ルクセンブルク』……#9629、映画板#1215
　20世紀初めのドイツのマルクス主義革命家ローザ・ルクセンブルクの半生を描いた1985年の西ドイツの伝記映画。日本公開は1987年とのことで、僕は大学時代にビデオで観ました。当時、映画本で知って、レンタルビデオで見つけたんじゃなかったかなあ。監督＆主演は『ハンナ・アーレント』のマルガレーテ・フォン・トロッタとバルバラ・スコヴァで、同作公開時に本作もリバイバル上映されたみたいですが、VHS＆LD化はされているもののDVD化はされていません。
　1906年にローザがポーランドで投獄されるあたりから、ドイツ社会民主党内の妥協主義者との路線闘争、第一次世界大戦への反対、ドイツ革命とドイツ共産党の結成、そして1919年に反革命右翼軍人に惨殺されるまでの半生が描かれています。全く知らない人物で、全く知らない歴史だったので非常に興味深く、ラストの衝撃的な展開に暗澹とした気分になりました。ハリウッド的な劇的さを排したヨーロッパ映画的というかドイツ映画的な作風がすごく新鮮に感じた記憶があります。当時はベルリンの壁が崩壊して東西ドイツが統一された時代で、ドイツ史としても大きな曲がり角でした。

『バビロン・ベルリン』……#10937、10947、10953
　追記することはあまりありません。DVD化はされていませんが、Amazonprimeで動画配信が始まりました。BS12で再放送されんかな。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』……#10095
　追記することは特にありません。

『チャップリンの独裁者』……#9629
　これも同時代を描いた映画で、歴史映画ではないんですが個人的な趣味で紹介してしまおう。まあ内容は説明不要でしょう。喜劇王チャップリンが、床屋のチャーリーとナチス・ドイツのヒトラーをモデルとしたトメニア国の独裁者ヒンケルの２役を演じ、ファシズムを痛烈に風刺し批判した1940年の歴史的な喜劇映画です。当時は第二次世界大戦は始まっていたものの米国とドイツはまだ開戦しておらず、米国でも映画は大ヒットしたにも関わらず右派や保守層からは反発もあった他、製作中には政治的圧力もかけられたとのこと。戦後にはナチスやヒトラーを批判した映画はたくさん作られましたが、ヒトラーが破竹の快進撃を続けていたリアルタイムで、米国の対独開戦前からこういう映画を作ったところにチャップリンのすごさの１つがあるのでしょう。

『さよなら、アドルフ』……#9583
　追記することは特にありません。

『僕たちは希望という名の列車に乗った』……#10909
　追記することは特にありません。

『顔のないヒトラーたち』……#10030
　追記することは特にありません。

『ハンナ・アーレント』……#9523
　追記することは特にありません。

・オランダ史
『チューリップ・フィーバー　肖像画に秘めた愛』……#10939
　追記することは特にありません。

・フランス史
『カミーユ・クローデル』……#9629
　有名な彫刻家ロダンの弟子で愛人でもあった19世紀末から20世紀初めの女性彫刻家カミーユ・クローデルの伝記映画。1988年のフランス映画で、日本では1989年の公開。僕は当時大学生で映画館で観ましたが、地方なので上映は遅れて翌年ぐらいだったと思います。イザベル・アジャーニが次第に精神を病んでいくカミーユを熱演。芸術家の伝記映画なので、これも歴史映画と言えるかはちょっと微妙なんですが、他に観たフランス史映画がないもんで（笑）。そもそもフランス現代史の映画ってあんまりないんだよな。ちなみにアニメ『機動戦士Ζガンダム』の主人公カミーユ・ビダンの名前はカミーユ・クローデルから付けられたそうです。

・イギリス史
『炎のランナー』……#9602、#10189、映画板#1210
　追記することは特にありません。

『最後のランナー』……#10937
　追記することは特にありません。

『ノーウェアボーイ　ひとりぼっちのあいつ』……#9874
　追記することは特にありません。

『ナッシング・パーソナル』（VHS邦題：ナッシング・パーソナル　報復の無差別爆破）
　テロによる事実上の内戦状態が続く1975年の北アイルランドを舞台に、プロテスタントのユニオニスト（イギリス領であることを望む人々）側のテロリスト（ロイヤリスト）を描いた1995年のアイルランド・イギリス合作の社会派ヒューマンドラマ映画。VHS化はされてますがDVD化はされていません。北アイルランド紛争についてはアイルランド併合を目指すカトリックのＩＲＡ（ナショナリスト）が題材とされることが多く、逆の側が題材になることは珍しい。とはいえ主人公は両派の抗争に巻き込まれたカトリックの一般市民の男性で、物語は悲劇的結末を向かえます。観た当時から最近までずっと現在（公開時点）を舞台とした映画だと思ってたんですが、少し前にたまたま改めて調べたら1975年が舞台だったと知りました。あくまで架空の物語で実際の事件を描いてるわけではないんですが、北アイルランド紛争という歴史的題材を描いた、とてもいい映画だったのでご紹介。夫のテロに反対するロイヤリストの妻を『ザ・コミットメンツ』のマリア・ドイル・ケネディが演じています。この頃は他にも『マイケル・コリンズ』などアイルランドを舞台とした映画が多く作られた時期でした。

・アイルランド史
『麦の穂をゆらす風』……#9835
　追記することは特にありません。

『ジミー、野を駆ける伝説』……#9835
　追記することは特にありません。

・イタリア史
『愛の勝利を　ムッソリーニを愛した女』……#9229
　追記することは特にありません。

・ヨーロッパ史その他
『バック・ビート』……#9629、#9874
　ビートルズ幻の初期メンバーで「５人目のビートルズ」とも呼ばれるスチュアート・サトクリフの伝記映画。ビートルズは言うまでもなくイギリスのバンドですが、映画の舞台は終始ハンブルクなので「ヨーロッパ史その他」に入れました。ビートルズのレコードデビュー前の話で、スチュアートが親友ジョン・レノンの誘いでビートルズに加入する1960年から始まり、演奏旅行のために訪れたハンブルクでの女性写真家アストリッド・キルヒヘルとの出会いと恋、ジョンとの友情、ビートルズからの脱退、そして1962年に21歳の若さで死ぬまでが描かれます。当時のビートルズのメンバーは、スチュアート、ジョン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリソン、やはり「５人目のビートルズ」と呼ばれる初期メンバーのピート・ベストで、加入前のリンゴ・スターは１シーンしか登場しません。1994年のイギリス映画で、さほどビートルズにくわしくない僕は知らなかったことも多く、なかなか面白い青春映画でした。

『ボルグ／マッケンロー　氷の男と炎の男』……#10799
　追記することは特にありません。

『否定と肯定』……#10700
　追記することは特にありません。


＞こども家老
　大河ドラマの思い出、今回は2009年の『天地人』。最初に主人公が直江兼続と聞いた時には、またずいぶんとマイナーなところを持ってきたなあと思いましたね。安土桃山もやり尽くしてネタがなくなってきたんだろうけど、直江兼続なんてよほどの戦国ファン（もしくは『信長の野望』ファン？）以外は誰それ状態だったのでは？　だいたい主の上杉景勝だって相当マイナーなんだし（まあ、利まつ夫妻や千代一夫妻だって似たようなもんか）。
　しかし蓋を開けてみると、主人公の子供時代を演じた加藤清史郎くんの人気が大沸騰。序盤わずか２話の出演だったにも関わらず、「わしはこんなところに来とうはなかった！」の台詞が流行語になるほどで、NHKにも問い合わせや再出演の要望が殺到したらしく、「大河ドラマ＋時代劇登場人物配役事典」によると、以後１・２話の出演シーンが回想として、３・４・７・８・19・23・27・34の各話に挿入されたようです。さらに39～45話に兼続の息子の竹松（直江景明）役で再出演。最終47話でも回想で１・２話出演シーンが登場したそうで、これだけ出演した子役も大河では珍しいのでは？　放送終了後に何かのイベントに清史郎くんといっしょに出演した妻夫木聡も、「このドラマは全部清史郎に持っていかれた（笑）」と冗談ぽく話してたという記事を見た記憶がありますが、実際その通りでしょう。我が家でも老母がテレビにかぶりついて清史郎くんを見ておりました。僕はあんまり観てなかったけど（笑）。
　そんな清史郎くん人気のおかげか平均視聴率も21.2％と、今のところ21世紀の男性主人公大河で唯一平均20％以上を記録しました。女性上位夫婦大河の『功名が辻』（20.9％）よりも上なんだもんなあ。まさに清史郎くん様々ですな。でも子役人気ってあらかじめ計算できるもんではないんだよなあ。以後の大河でこれほど子役が人気となったドラマはまだありません。ちなみにこれまた有名な「こども店長」のCMもこの年の４月から始まっており、相乗効果で清史郎くん人気が爆発したんですよね。
　ほとんど観てなかったこともあって清史郎くん以外に触れるところはほとんどないんですが、兼続や景勝らが成人しても前髪あるのは絶対『花の慶次』を意識してるよね？とか、長澤まさみはここでも忍び役だったのか、ますます『功名が辻』『真田丸』とごちゃついてくるなあとか、そんなことぐらいかな。

＞中国史ドラマ
　WOWOWで新しい中国史ドラマ『大明皇妃　Empress of the Ming』の第１話が先行放送されました。明の５代宣徳帝の２人目の皇后孫氏をモデルとした孫若微という女性が主人公で、主演は映画『ラスト、コーション』のタン・ウェイ。10年ぶりのドラマ出演だそうです。中国（香港・台湾含む）は米国同様に映画がテレビドラマよりも格上なんですが、近年ジョウ・シュン、タン・ウェイ、さらにチャン・ツィイーまでもテレビドラマに回帰または進出しており（チャン・ツィイーのドラマはまだ審査中。“章子怡電視降臨”なんて言われてるらしい）、彼女たちがいずれも出産からあまり日が経ってないことを考えると、育児のためには撮影時間の計算ができるテレビドラマのほうが好都合なのかも。
　それはさておきドラマのほうは靖難の変で幕を開け、宣徳帝の祖父永楽帝や、倒された建文帝が登場。主人公・孫若微の父は建文帝の御史大夫で殺されたという設定で、宣徳帝の最初の皇后胡善祥は孫若微の生き別れの妹という大胆な改変がされているようです。娯楽ドラマ要素が強く、主人公が刺客たちと永楽帝暗殺計画に参加したりしてます。まあ、それはともかくとして肝心のドラマとしての出来が『如懿伝』に比べるとどうもいまいち。時代劇初挑戦というタン・ウェイもあまり似合ってない感じです。永楽帝役のワン・シュエチーも映画の時に比べるとなんかちょっと。後半は主人公の息子の英宗（正統帝）も登場し、土木の変も描かれるようですが、僕は１話でもういいかなという感じ。
　土木の変といえばその時代を舞台にした『女医明妃伝　雪の日の誓い』もBS11で放送中。実在の女医・談允賢が主人公のモデルで、彼女が名医になっていくまでの物語。主人公・允賢は正統帝、その弟の景泰帝、オイラトのエセン・ハーンの３人に愛されちゃうというモテモテっぷりとのこと。韓国ドラマばかり放送してたNHK総合でもついに中国史ドラマ『コウラン伝　始皇帝の母』が放送開始……される予定だったんですが、コロナの影響で放送延期に。海外のドラマなんだからもう完成してるものを流すだけなのでは？と思ったんですが、たぶん吹替の収録ができないんだろうと推測してる人がいて納得。そうだ。NHK地上波は吹替版だったんだ。
　しかし今僕が観てる中国ドラマはそれらのどれでもなく、BS12で再放送中の『海上牧雲記　３つの予言と王朝の謎』。本放送の時は同じBS12の『三国志　SECRET of THREE KINGDOMS』と放送時期がかぶってて、週５放送のドラマを２つも掛け持ちできねーやってことで観てなかったんですよね。観てる理由はまたまた好きな女優のレジーナ・ワンが脇役で出てるから。史劇ドラマではなく架空世界を舞台にした史劇風ファンタジードラマなんですが、これが予想外に面白い！　結構ハマって観ています。でも週５放送はやっぱり録画消化がきついんだよな。しかもまた80話以上もあるし。


#11001　
サラマンサ 2020/05/01 23:29
謝罪

攻撃的な書き込みになってしまいすみませんでした。反省しております。管理人さんの穏やかな対応に頭が下がります。

前回、隠れキリシタン・潜伏キリシタン云々に関し書き直すと自分から言いだして結局そのままになってしまいました。お恥ずかしい限りです。

書きたいことは色々あるのですが、上手くまとめられませんので、これで失礼いたします。


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