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#11200
バラージ 2022/04/30 01:16
史点とか鎌倉史とか
>史点その1 軍艦の名前
史点の本論ではなく脇道話。僕は昔々、小学校高学年から中学生の頃にちょいミリタリーファンだった時期がありました。特に軍艦が好きで、『日本の軍艦大百科』だの『世界の空母大図鑑』だのといったみたいな本を買って読んだりしたもんです。その記憶から言うと、軍艦の名前に地名を付けるのは結構メジャーで、人名を付けるほうがいささかマイナーだったような記憶があるんですよね。というのも太平洋戦争時は日本海軍ばかりでなく、米国海軍も艦名には多くが地名由来のものを付けていたからでして。戦艦はアリゾナやアイオワ、ミズーリなど州の名前が付いてましたし、巡洋艦はアトランタなど都市名が付けられ、駆逐艦に人名が付けられていたようです。でも米国の駆逐艦に注目したりはしなかったもんなあ。新顔の艦種だった空母にはエンタープライズやヨークタウンなど古戦場名や独立戦争などの殊勲艦名が付けられたらしい。イギリスやフランス・ドイツなどは明確な基準はなく、地名を付けたり人名を付けたりしてたようですが、その頃興味があったのはなんといっても太平洋戦争時代の日米の軍艦でした。
一方で1980年代当時の世界の空母にも、その頃は興味があったのは前記の通り。そんな中、旧ソ連の当時の軍艦で今回の戦争に絡んでついつい思い出しちゃうのが空母キエフ。垂直離着陸機(VTOL機)を搭載した空母でした。キエフがキーウに変わったと聞くたびに、なぜかこの空母キエフを思い出してしまうんですよね。80年代後半あたりからミリタリー系への興味は薄れはじめたんですが、空母キエフはソ連崩壊後の1993年に退役し、今は中国に売却されてホテルになっているそうです。同型艦にミンスク、ノヴォロシースク、バクーがあったらしい。その一世代前にあたるのが、今回沈没した戦艦と同じ名前のヘリコプター巡洋艦モスクワ。こちらはキエフより長命で、1996年に退役したようです。同型艦にはレニングラードがありました。
>史点その2 日本の顔
日独伊三国同盟で、ヒトラー、ムッソリーニと並べる大日本帝国の代表的人物は誰かというのはなかなか難しい問題で……。昭和天皇も東条英機もちょっと違うんですよね。昔読んだ臨床心理学者の河合隼雄氏の文章で、確かヒトラーについての西ドイツのドキュメンタリー映画と日本人の精神構造について触れながら、ドイツにおけるヒトラーの位置に昭和天皇または東条英機を置くことはできない。日本はヒトラーのような明確な導き手を欠いたまま、みんなで何となく戦争に突入していった。これは日本の戦争責任の追及を極めて曖昧にしてしまった問題の大きな要因の一つでもある、というようなことが書いてあって、深く考えさせられました。
>鎌倉史追記 プリティ・ベビー
そういえば先週の『13人』で三浦義村がなぜか自分の赤ん坊を義時の妻(八重→阿波局)に預けに来るシーンがありました。どうもこのドラマの義村は何考えてんだかよくわかんない男(それがギャグ1歩手前の域にまで来てるような)ですが、それはそれとして、この赤ん坊についてTwitterなどではやはり、三浦泰村か?と詮索してる人が多い。
泰村は義村の次男で、後を継いだ人物ですが、1247年の宝治合戦で北条時頼や安達氏に討たれ、三浦氏は滅亡しています(大河ドラマ『北条時宗』の第1話で描かれてました)。ただ泰村だと産まれるのがちょっと早すぎないかと思って調べてみると、確かに泰村には1184年生まれ説があるらしい。『吾妻鏡』では泰村の生年は不明ですが、『関東評定伝』という史料に享年64歳とあるとのことで、逆算すると1184年生まれとなります。ところが古活字本『承久記』では、宇治橋合戦で泰村が生年18歳と名乗っているとのことで、その場合は1204年生まれ(享年44歳)となり、宝治合戦で共に死んだ次男が13歳、九男が4歳らしいことや、烏帽子親として泰村に偏諱(「泰」の字)を与えたと思われる北条泰時の生年が1183年であることなどから、こちらのほうが有力な説のようです。
とはいえ三谷氏はおそらく何らかの伏線として挿入したんでしょうし、一応1184年生まれ説もあることだから、まぁあれは泰村なんでしょうね。前記の通り泰村は次男で、義村の長男は三浦朝村なんですが、朝村では何の伏線にもなりませんし。朝村は名前を見ても、おそらく源実朝の偏諱(「朝」の字)を受けており、もともとの義村嫡子(後継者)だったと思われるんですが、生没年は不明。1222年が『吾妻鏡』における最後の記載で、以後は嫡子の三浦氏村が『吾妻鏡』に現れるので、その頃に亡くなったと思われます(『吾妻鏡』における初見は朝村・泰村ともに1219年)。氏村が幼少だったため、義村が嫡流を次男の泰村に移したんでしょう。マイナーゆえの哀しさ、Twitterで朝村に言及してるのはわずか1人だけでした。
なお泰時の最初の妻の矢部禅尼も義村の娘で、この人でも伏線にはなりますが、生年が1187年と微妙にずれてるので、おそらくは違うんじゃないかな。
#11199
バラージ 2022/04/24 22:55
今週の鎌倉史 美化とワル化
今週の『13人』。三谷は義仲に思い入れでもあるのか、義経とは対照的に妙に美化されちゃってますね。なぜか義仲が頼朝(の派遣した義経)に、共に平家を攻めようなどという書状を送っちゃってますが、実際には逆に平家に、共に頼朝を攻めようと呼びかけて一蹴されちゃってるんだよな。
また、後白河法皇を北陸へ連れていこうと思ったが諦めたとか言って、後白河らを感心させてましたが、これまた実際には後白河を北陸に連行しようとしたけど、義経軍の早急な進出でその余裕を無くして諦めただけなんですよね。
それから巴が、新たな妻妾を欲しがってた和田義盛に捕らわれてましたが、これは『源平盛衰記』にのみある話。『盛衰記』では巴が義盛の三男で豪傑で知られる朝比奈義秀を産んだとされてるんですが、実際には義仲が討死した時、義秀はすでに9歳になっているため全くの作り話。巴については古文の教科書にも載ってる語り本系の覚一本『平家物語』での、敵将を討ち取った後、いずこかに落ち延びたという話が有名ですが、より古態を残してると言われる読み本系の延慶本『平家物語』では、敗走中に行方知れずとなっており討死したのか落ち延びたのかわからないという描写になっているそうで、こっちのほうがリアル。
逆にやたらとワルにされちゃってる義経。判官贔屓嫌いの僕ですが、さすがにちょっとワルにされすぎかなという気が。平家に和平を提案して油断させるというのは義経の発案ではなく、後白河から出たものです。朝廷では平家を追討するか和睦するかで貴族たちの意見が分かれ、頼朝軍も和睦に同意してたんですが、後白河とその近臣が強硬に追討を主張したため頼朝軍が出陣したということのようです。そして後白河が和睦の使者を送ると称して平家を油断させたわけで、後白河は平家を相当憎んでいたことがうかがわれます。
それから義仲討伐後に鎌倉に届けられた諸将の使者のうち、要領を得ない報告だった他の諸将に対して、梶原景時の使者のみが理路整然とした詳報を届けたという話。史実では、景時以外の要領を得ない報せを送ったのは範頼・義経と甲斐源氏の安田義定・一条忠頼でした。
それと冒頭で北条時政がようやく頼朝に許され、鎌倉に戻ってきてましたが、何度も書いてるように『吾妻鏡』の1183年が欠落してるため、どの時点で戻ってきたかは史実では不明。ただ時政はその後もしばらく干され気味なので、たぶん義時が「どうか親父を許してやってください」と頼朝に頼み込んで、しぶしぶ許されたんじゃないかと個人的には推測します。
ちなみに義時が時政に付いていかず頼朝の元に残ったのは、江間家としてすでに別家を立てていたから可能だったんでしょう。そしてこれは全くの想像になりますが、義時が孕ませちゃった侍女(つまり泰時を孕んだ阿波局)を、頼朝が義弟のために気を利かせて御所で何日か働かせて、御所の女房という形をとって格好をつけてやったんじゃないかなと。その恩義を感じて、義時は父の時政より主君にして義兄の頼朝をとったんじゃないかと想像いたします。
それにしても、ここ何話かえらくダイジェスト気味なような。スパンが長くて義時の死まで行かなきゃならないからかもしれないけど、『草燃える』もこんな感じだったのかな? それからコロナ騒ぎですっかり忘れてますが、『麒麟がくる』が始まる頃に働き方改革で放送話数が短縮されるなんて話がありましたよね。その削減分でオリンピックを放送するという話でした。結局、コロナで延期という予想外の事態となり越年、そして翌年の『青天を衝け』もその煽りで短縮ということで、なんとなくうやむやになってしまいましたが、今年はどうなるんだろ?
#11198
バラージ 2022/04/20 20:12
戦争映画も多すぎる
今週の『13人』は基本的に前週の続きでほぼ全編フィクションですが、それについては前回ほとんど書いちゃったのでそれほど書くことはなし。ただフィクションとはいえ、あんな大規模クーデターが発覚しながら全員お咎めなしってのはあり得ないんじゃないだろうか? また、あそこから義仲討伐戦ができるとは思えないよなあ。まあ、そうしないと歴史通りの展開に持ち込めないからしょうがないんだけど……。
史実における上総広常の誅殺については、またまた現代ビジネス公式サイトの呉座氏の連載に譲りますが、少しだけ追記。この事件では広常の嫡男能常も殺され上総氏は滅亡していますが、その一族庶流や家臣などに大きな動揺が無かったことについて、元木泰雄氏は上総一族の内紛や在地勢力との乖離など広常の立場には脆弱さがあり、頼朝はそうした弱点を把握していたと思われるとしています(『源頼朝』中公新書)。また幕府(頼朝政権)内部にもほとんど動揺がなく、迅速に義仲や平家の追討が行われていることから、あくまで上洛に反対する広常は坂東武士の間でも浮き上がった存在になっていたのだろうと個人的に推測します。
>観てない歴史映像作品 第一次世界大戦編
戦争映画はあまりに多すぎるので厳選したものを紹介します(っていっても観てない映画だから厳選の仕方もなんとなくではありますが)。
『担え銃』(原題:Shoulder Arms)……1918年の米国映画。チャールズ・チャップリン監督・主演による46分の中編映画で、『担へ銃』『チャップリンの兵隊さん』などの別邦題もあり。これは観ました。第一次大戦終結の年に早くも作られたチャップリンの戦争喜劇で、今となってはコメディの古典だけど、なかなか面白かったですね。
『西部戦線一九一八年』……1930年のドイツ映画。ナチス台頭直前、ワイマール共和国末期のドイツで作られた強烈な反戦映画で、フランスの村に駐屯する4人のドイツ兵を主人公としているとのこと。でも結局ナチスが政権を取って、第二次大戦が起こっちゃったんだなあ。
『突撃』(原題:Paths of Glory)……1957年の米国映画。監督はスタンリー・キューブリック。主演はカーク・ダグラス。フランス軍上層部の無謀な突撃命令に服さなかった部隊長と兵卒が軍法会議にかけられる不条理を描いた作品で、原作小説は実話を基に書かれたとのこと。
『銃殺』(原題:King and Country)……1964年のイギリス映画。監督はジョゼフ・ロージー。主演はダーク・ボガード。こちらも前線から逃亡して軍法会議にかけられるイギリス軍の兵卒と、彼を弁護する将校を描いた反戦映画。
『まぼろしの市街戦』……1967年のフランス映画。監督はフィリップ・ド・ブロカ。撤退したドイツ軍がフランスの街に仕掛けた時限爆弾の解除のために潜入したイギリス兵と、住民が全員避難した街で自由を謳歌する精神病院から逃げ出した患者たちを描いた戦争風刺ユーモア映画。
『ジョニーは戦場へ行った』(原題:Johnny Got His Gun)……1971年の米国映画。第一次大戦で両手・両足・耳・眼・口を失いながら、大戦終結後も15年近く生き続けたイギリス将校がいたという事実を基にしたダルトン・トランボの小説『ジョニーは銃をとった』を、トランボ自らが脚本・監督した、あまりにも有名な反戦映画。
『西部戦線異状なし』(原題:All Quiet On The Western Front)……1979年の米国・イギリス合作のTVムービー。これまた有名な反戦小説の2度目の映像化。
『ザ・トレンチ 塹壕』(原題:The Trench)……1999年のイギリス映画。1916年のソンムの戦い前夜の48時間のイギリス軍の塹壕の中の様子を、青年兵士たちの目を通して描いた作品とのこと。
『戦場のアリア』……2005年のフランス・イギリス・ドイツ・ベルギー ・ルーマニア合作映画。主演はダイアン・クルーガー。フランス・スコットランド連合軍とドイツ軍が対峙する最前線で、1つの歌声がきっかけで期せずして一夜限りの休戦が実現したという、実際に起こったクリスマス休戦を基にした作品。
『戦火の馬』(原題:War Horse)……2011年の米国映画。監督はスティーヴン・スピルバーグ。第一次大戦でイギリス軍に徴用され最前線に送られた一頭の馬とその飼い主の青年との友情と奇跡の物語を描いたマイケル・モーパーゴの同名児童文学の映画化。
『1917 命をかけた伝令』(原題:1917)……2019年のイギリス・米国合作映画。1917年の西部戦線で、最前線にいる1600人の仲間の命を救うため、一刻も早く重要な伝令を届けよとの命令を受けた2人のイギリス軍兵士の姿を全編ワンカット撮影で描いた作品。
『大海の底』(原題:The Seas Beneath)……1931年の米国映画。DVD邦題は『海の底』。監督はジョン・フォード。ドイツ海軍のUボートと、それを誘き寄せる米国海軍の偽装船の戦いを描いた作品。
『ブルー・マックス』(原題:The Blue Max)……1966年の米国映画。ドイツ軍の上昇志向の強い野心家のパイロットを主人公とした空戦映画。ミニチュアを用いず、再現された実機を使って撮影されたとのこと。リヒトホーフェンもちらっと登場するようです。
『レッド・バロン』(原題:The Red Baron)……1971年の米国映画。ドイツ軍の撃墜王リヒトホーフェンを主人公とした空戦映画で、監督はB級映画の帝王ロジャー・コーマン。空中戦が騎士道的な戦いからビジネスとしての殺戮戦争へと転換していく時代を描いており、やはり実機を使用して撮影されたとのこと。
『スカイエース』(原題:Aces High)……1976年のイギリス・フランス合作映画。主演はマルコム・マクドウェル。こちらはイギリス空軍のパイロットを主人公とした空戦映画で、やはり少々厭戦的な作品らしい。
『フライボーイズ』(原題:Flyboys)……2006年の米国映画。中立の立場をとっていた米国から義勇兵としてフランス空軍に参加したラファイエット戦闘機隊の実話を基にした空戦映画。
『総進撃』……1970年のイタリア・ユーゴスラビア合作映画。監督はフランチェスコ・ロージ。オーストリア=ハンガリー帝国軍と戦うイタリア軍の無能な将軍による無謀な突撃命令に反感を募らせていくイタリア軍兵士たちの抵抗が、軍隊と戦争の非人間的な理不尽さに押し潰されていく姿を描いた反戦映画。
『サイレント・マウンテン 巌壁の戦場』……2013年のオーストリア映画。“未回収のイタリア”のチロル地方に攻めてきたイタリア軍と戦うオーストリア=ハンガリー帝国軍の“最強の山岳部隊”チロル猟兵連隊を描いた作品。
『バタリオン ロシア婦人決死隊VSドイツ軍』……2015年のロシア映画。大戦末期の1917年、ロシア二月革命による臨時政府の命令によって結成された、マリア・ボチカリョーワ率いる婦人決死隊(バタリオン)を描いた作品。邦題やDVDパッケージはいかにもB級ですが、非常に真面目でシリアスな映画だとのこと。
『セルビア・クライシス』……2018年のセルビア・ギリシャ合作映画。サラエボ事件で始まった第一次大戦下のセルビア国王ペータル1世と、セルビアの無名の兵士たちを描いた、戦争映画というより歴史映画らしい。これまた邦題とDVDパッケージが内容とミスマッチとのことで、まあDVDスルーの戦争映画にはよくあるパターンではあります。
『1916 自由をかけた戦い』……2019年のポーランド映画。第一次大戦下のポーランド軍団が、独立を目指してオーストリア=ハンガリー帝国の支援を受けながらロシア軍と戦う戦争映画で、ポーランド軍創立者にしてポーランド共和国初代国家元首となるユゼフ・ピウスツキも脇役として登場するらしい。邦題は完全に『1917』の便乗ですな。
『バトル・オブ・オーシャン』……2013年のトルコ映画。ガリポリの戦いを舞台としたスナイパーの兄弟の話なんですが、邦題とDVDパッケージが思いっきり海戦ものに見せかけてるんで、名画座に掲載されてる『シー・バトル』ともども邦題&パケ写詐欺と言われているようです(笑)。
>観てない歴史映像作品の追記
以下の作品にも第一次大戦の描写が含まれてるものがあるみたいだけど、メインは別の題材のようなので、分けて紹介いたします。
・トルコ史
『ディバイナー 戦禍に光を求めて』(原題:The Water Diviner)……2014年のオーストラリア・米国・トルコ合作映画。主演のラッセル・クロウが初監督も務めています。第一次大戦のガリポリの戦いで行方不明となった3人の息子を探すために、終戦後の1919年にオーストラリアからトルコにやってきた父親の実話を基にした作品。ギリシャとトルコの希土戦争を舞台としてるようなんですが、ギリシャからは内容があまりにトルコ寄りだとの批判も起こったらしい。
・ロシア史
『提督の戦艦』……2008年のロシア映画。第一次大戦で活躍した後、ロシア革命後の内戦において白軍側として赤軍と戦った海軍司令官アレクサンドル・コルチャークの伝記映画。とはいえ戦争シーンばかりではなく、友人セルゲイ・チミリョフの妻アンナ・チミリョヴァとの恋愛(不倫)関係にかなりの尺が費やされてるらしい。
・バルト三国史
『バトル・オブ・リガ』……2007年のラトビア映画。第一次大戦直後のラトビア独立戦争を題材とした作品。主人公たちラトビア軍が、敗戦後も駐留を続けるドイツ軍とそれに協力するロシア白軍と戦うというストーリーで、かなり史実を単純化してるようです。ラトビア初代首相のカールリス・ウルマニスも出てくるらしい。
・北欧史
『4月の涙』……2009年のフィンランド・ドイツ・ギリシャ合作映画。やはり第一次大戦直後の1918年のフィンランド内戦を舞台とした作品で、白軍男性と赤軍女性のたどる過酷な運命と恋を描いたドラマ映画。
#11197
バラージ 2022/04/14 20:08
今週の鎌倉ツッコミ 話の辻褄が合いません
今週の『13人』もツッコミどころ満載というかなんというか……。「原作は『吾妻鏡』」と言ってる三谷氏ですが、ちょうど『吾妻鏡』の1183年がまるごと欠落してるため、おそらくは『平家物語』などを基本にしつつ、自由に話作っちゃってもいいだろということなのか、あまりに自由奔放にストーリーを作りすぎて、完全に史実から離れた、かなりぶっ飛んだ展開になっちゃってます。
まずは、まだ許容範囲かなという部分で源義仲(木曽義仲)に関するところ。軽~いところでは、義仲らの上洛戦のうち越中国での倶利伽羅峠の戦いのみが触れられ、加賀国での篠原の戦いはスルーされてしまいました。実際、倶利伽羅峠の戦いのほうが圧倒的に有名なんですが、近年の研究では倶利伽羅峠は平家軍の先鋒が潰滅した前哨戦で、篠原の戦いで全軍が潰滅する致命的敗北を喫したということのようです。
また入京した義仲らの参内の場面で、義仲のみが汚ならしい格好をして、行家はそれなりにきちんとした身なりをしていましたが、公家の吉田経房の日記『吉記』によると2人ともがみすぼらしい姿だったので後白河も公家たちも愕然としたとのこと。また九条兼実の日記『玉葉』には1列になって参内するのが慣例なのに、義仲と行家が先頭を争って最終的に2人並んで参内したとあり、連合軍の足並みの乱れに朝廷は早くも不安を感じたようです。
それから呉座氏の現代ビジネス連載でも言及されていた、義仲が擁した以仁王遺児の北陸宮が登場していないため、平家が奉じて西走した安徳天皇の後継選びに義仲が介入して北陸宮を推し、後白河との仲が悪化したエピソードもありません。まあ『平家物語』にはない話なので仕方がないとも言えるんですが、それはそれとしても義仲が三種の神器を知らないというのはいくらなんでもあり得ないのでは……。
また連合軍の京中における乱暴狼藉も義仲や行家は自分たち以外の軍勢によるものと言ってましたが、実際には義仲軍・行家軍も含めた連合軍全体によるもので、前年の大飢饉で食糧や馬用の飼い葉が欠乏してた京に大軍を駐留させたために起こったものでした。あまり厳重に取り締まれば、食糧や飼い葉の尽きた兵の脱走が止められず軍勢が崩壊してしまうため、彼らも事実上黙認してたようです。
全体的に義仲のくだりがダイジェスト気味になっちゃったのは、何しろ承久の乱や義時の死まで行かなきゃならないんで仕方がないけど(清盛もたいして出番のないまま、あっという間に死んじゃったし)、やたらワルな義経に対して義仲のほうは微妙に美化されちゃってるのがなあ。義仲だって天下を狙う野心家の1人だと思うんだけど。義仲の親父の義賢が頼朝の兄貴の義平に討たれた大蔵合戦については#11185に書きましたが、そこでもわかる通り義仲は頼朝に対する恨みこそあれ、平家には特に恨みがないんですよね。だから源氏同士の争いを避けて平家を討つという発想にはならないと思うんです。平家を討つために京に上ったのは単純に天下を取るためだと考えざるを得ません。
それでも義仲に関する部分はまだ良しとしましょう。それよりも問題なのは、御家人たちが頼朝に不満を抱いてクーデターを目論むという、史実はもちろん物語類にもない完全オリジナルな展開のほう。そもそも御家人たちが義仲を討つのをなんであんなに嫌がるのか、それが全然わからない。前回も書いた通り、平家を討つために上洛しようとした頼朝を止めて同じ源氏の佐竹氏を討たせた御家人たちが、義仲の話になったとたんに平家を討つならともかく源氏同士の戦いは嫌だとか言い出すのは、史実云々以前にドラマのストーリーとして辻褄が合いません。一応、時政が御家人たちは所領のために戦ってるだけだとか言うフォローが入ってましたが、いかにも取って付けたような説明でした。
しかもクーデターの御輿として担ぎ出すのが、人質として鎌倉に下ってきた源義高(木曽義高)なんていくらなんでもあり得ねえよ。そもそも義高が御家人たちとあんなに自由に交流してるのも違和感なのに……。御輿にするにしてももっと適当なやつがいくらでもいるだろって話ですが、かといって範頼とか義経とか阿野全成とかにしちゃうと歴史が大きく変わっちゃうんでできないんでしょう。上総広常の粛清と義高の誅殺を絡めて物語として大きく膨らませたんでしょうが、はっきり言って、んなアホな!という展開になっちゃってます。次回はその完結編だろうけど、この分じゃあドラマの先がますます思いやられるなあ。
>今週の鎌倉史 源義仲をめぐる人々
前回、北関東ではないってことと文章量が多くなることを懸念して書かなかった越後国北部の城氏について軽く説明。城氏は桓武平氏維茂流の一族で、11世紀に出羽国から越後国に進出し、12世紀に越後北部に勢力を広げたとのこと。治承・寿永の乱勃発時の当主は城資永(資長、助永、助長とも)で、1181年に自ら申請して平宗盛から東国の源氏討伐の院宣を得ると、信濃国の源義仲を討とうとしますが、出陣前に急死。後を継いだ弟の資職(助職、助茂とも。後に改名して長茂、または永茂、永用……ってややこしいなあ、もう)は信濃に出陣するものの、横田河原の戦いで数に劣る義仲ら木曽衆・佐久衆・甲斐衆連合軍の奇襲を受けて敗北します。なお、この横田河原の戦いを『吾妻鏡』と延慶本を除く『平家物語』では1182年としていますが、同時代史料の『玉葉』では1181年に記されているとのこと。惨敗を喫した資職が越後に退却すると地元武士たちが一斉に背き、資職は陸奥国会津に逃亡するも、今度は藤原秀衡が会津へ軍を進め、資職は越後北部に逼塞することとなります。その後、宗盛から越後守に任じられるも、大勢を挽回することはできませんでした。
そして義仲と同盟した叔父の源行家。戦には弱いくせにプライドは高く、あっちに付いては喧嘩して飛び出し、こっちに付いては喧嘩して飛び出しといった感じで、源平ファンの間でもあまり評判のよろしくない人物ですが、この人の足取りには今一つはっきりしないところがあります。1180年初頭に以仁王の令旨を諸国に伝えた後、次に出てくるのは同年末。佐竹氏討伐を終えた甥の頼朝のもとに兄の志田義広と共に参陣したとのことで、これには疑問を呈する見方ありということを前回書きました。なぜなら翌1181年3月には尾張国で挙兵して墨俣川の戦いで平家軍に惨敗を喫しており、前年末に常陸国にいたとは考えにくいためです。その後、『平家物語』『源平盛衰記』によると頼朝を頼り相模国松田に住むものの、所領の要求を頼朝に断られると信濃国の義仲のもとに走ったとされています。これが頼朝と義仲の仲を悪化させた一因とされ、1183年に行家か義仲嫡男の義高のどちらかを人質に差し出すよう頼朝に要求された義仲は、行家が拒否したため義高を差し出したとのこと。しかし個人的にはこれにも疑問あり。同年には前記の義広もやはり前回書いた野木宮の戦いで頼朝に敗れ、義仲のもとに落ち延びています。不満で出奔しただけの行家が、合戦に及んだ義広よりも問題視されるとは考えにくく、後に義仲・行家・義広らが平家を追って入京した際にも頼朝は義広のことを最も問題視していると朝廷に申し入れており、人質に差し出すよう要求されたのは行家ではなく義広だったのではないでしょうか。物語類は義広と行家を取り違えたか、または意図的に変えたんだろうと思われます。
>呼称の話・古代ローマの人名編
古代ローマの人物の呼称でいうと、「ユリウス・カエサル」なんかはまだまだ「ジュリアス・シーザー」も通用してますね。これはシェイクスピア史劇およびその映画化作品が流通してるためかもしれません。ただ「アントニウス」なんかの場合は「アントニー」はほとんど使われてないのでケース・バイ・ケースなのかな。他に「スパルタクス」も映画やドラマがあるためか「スパルタカス」もまだまだ通用するような。むしろ現在でも英語発音のほうがメジャーなのが「ブルータス」。「ブルータス、お前もか」という有名な名言?もありますし、なんたって雑誌『BRUTUS(ブルータス)』が有名だしなあ。原語読みの「ブルートゥス(またはブルトゥス)」は今回調べて初めて知りました。
>明ドラマ
『大明皇妃 Empress of the Ming』もWOWOWで放送した後にBS12で放送されてましたね。現在は『成化十四年 都に咲く秘密』がBS11で放送中。
>名画座訂正情報
『スターリングラード大攻防戦』……劇場公開邦題は『白銀の戦場 スターリングラード大攻防戦』で、『スターリングラード大攻防戦』はビデオ・DVDなどのソフト邦題のようです。
>観てない映像作品の訂正情報
・ドイツ史
『誰が祖国を売ったか?』……劇場公開邦題は『誰が祖国を売ったか!』(「!」マーク)で、『誰が祖国を売ったか?』(「?」マーク)はDVD邦題だったようです。
#11196
バラージ 2022/04/08 20:40
今週の鎌倉史 なんだかよくわからない北関東
義経が後の奥さんと会ったその日にベッドイン(笑)。なぜか義経の描写だけはいちいち僕の好みに合っております。ただ範頼・義経と比企氏の血を引く娘たちとの婚姻は実際には頼朝の肝いりで行われたものでしょうね。奥さんはそれぞれ安達盛長と河越重頼の娘ですが、出てきてない重頼はともかくとして、父親の盛長が絡まず義理の伯父の比企能員が引き合わせるというのは不自然な気が。あと黒義経はいいんだけど、あんなに悪事が暴かれてるのに、軽い処罰しか受けてないのもなんだかちょっと違和感。まぁ重い処罰受けちゃったら、歴史が変わっちゃうからしょうがないんだけど。
そして今週は木曽義仲が本格的に登場。史実的に「?」な部分については、現代ビジネスの呉座勇一氏による連載コラムにおまかせ。一応追記すると、御家人たちが、平家を討つならともかく同じ源氏の義仲を討つのは嫌だと不満を述べてましたが、これはおかしい。それを言い出したら佐竹だって源氏だろって話ですし、平家を討つために上洛しようとした頼朝に反対して佐竹を討つように言ってたこととつじつまが合いません。『吾妻鏡』は1183年が欠落してますが、『平家物語』諸本にもない描写なので、あの描かれ方は疑問。だいたいあの御家人たちだってもともとは平氏なんだし、源氏だ平氏だなんて実はあんまり関係ないんですよね。
それから頼朝の娘の大姫との婚約という名目で、実質的には人質として鎌倉に送られた義仲の嫡子義高。昔から不思議に思っていたんですが、嫡子を人質に出すというのは事実上の服属に近いんではないでしょうか。戦国時代などでも婚姻という形をとった人質を送って同盟を組む例はあるものの、ほとんどが庶子か娘です。つまりこの時期に義仲は頼朝の軍門に下り、その傘下に入ったと見なされ得る状況になったと考えれば、京の朝廷や公家が義仲や行家を頼朝の代官と見なした理由も、彼らを飛び越えて頼朝を勲功第1とした理由も納得がいくんですよね。
そしてそして義朝の5男で頼朝の同母弟の源希義(まれよし)、やっぱり出てこなかったか。じゃあまあここをお借りして軽く説明を。希義は平治の乱の時はまだ9歳で元服もしておらず、当然戦場にも出ませんでしたが、父の敗死により土佐国へ流罪となりました。『平治物語』によると正式な名前がないと流刑にできないので、その際に希義という名を与えられたそうです。20年後に頼朝が挙兵すると希義にも平家から疑いの目が向けられて追討令が出され、希義は夜須行宗を頼って逃れる途中に討たれたとのこと。なお『吾妻鏡』ではその事件を1182年のこととして記してますが、『延慶本 平家物語』『尊卑分脈』『平治物語』はいずれも1180年のこととしているので、『吾妻鏡』の編纂ミスと考えられています。行宗は海路頼朝の下に馳せ参じて希義の死を告げ、頼朝は源有綱に軍勢を与え行宗を先導役として土佐国に派遣し、希義を討った蓮池家綱・平田俊遠らを討たせています。ただ、この時期に頼朝が土佐くんだりまで軍勢を派遣できたかなあと、そこはちょっと疑問。
また、常陸国の源義広(志田義広、義憲、義範)が頼朝軍に敗れた野木宮の戦いも残念ながら描かれず。てなわけでいろいろと諸説あってはっきりしないところも多い、この頃の北関東の情勢をざっと書いていっちゃおうかな。
まず、1180年の金砂城の戦いで敗れた同じ常陸国の佐竹氏。その後は陸奥国または常陸国北部に逃れ逼塞しますが、頼朝が奥州藤原氏と並んで佐竹氏の脅威を挙げて後白河法皇ら朝廷の上洛要請を断っていることなどから、佐竹氏はその後も治承・寿永の内乱後半まで、あるいは奥州戦役直前まで、ある程度の勢力は保っていたとする説もあるらしい。でもなあ、佐竹氏単独で頼朝を脅かせたとは思えない。佐竹氏は奥州藤原氏と姻戚関係があったとのことで(佐竹隆義の母が藤原清衡の娘)、あくまで奥州藤原氏の勢力をバックに、奥地に籠ってゲリラ戦を展開したとかその程度なんじゃないかなあ。
次に前記の常陸国南部の源義広。志田三郎先生(せんじょう)義広とも呼ばれ、略して志田義広、また名前を義憲、義範とする記述もあります(うーん、ややこしい)。源為義の3男で頼朝の叔父に当たるんですが、常陸国信太荘に下向して保元・平治の乱には関わらず、平家全盛期にも同地で勢力を保ったようです。前記の金砂城の戦い後に、以仁王令旨を諸国に配った末弟の行家とともに頼朝の下に参陣したと『吾妻鏡』にはありますが、これには疑問を呈する見方もあるみたい。『吾妻鏡』によると1181年、平家軍下向の噂を聞いた頼朝が東海道に軍勢を派遣したのを知った義広は、その隙に鎌倉を攻めようとするも、下野国野木宮で偽って味方した頼朝の御家人・小山朝政らによる奇襲に敗れ(野木宮の戦い)、その後信濃国から上野国北部に進出していた甥の木曽義仲を頼っています。ところが『吾妻鏡』の別の箇所には1183年に野木宮の戦いの恩賞が与えられたという文書が掲載されていることから、現在では1181年というのは『吾妻鏡』の編纂ミスで、野木宮の戦いは1183年というのが定説になっているみたい。しかしやはり1181年のほうが正しく、1183年のほうが誤りという説も最近出されたみたいで、どうもよくわからない。さらに常陸国(茨城県)の義広が鎌倉の頼朝を攻めるのに下野国(栃木県)に進軍するのは不自然だとして、頼朝とは関係ない義広と小山氏の合戦だったという説も出されているとのこと。確かにその不自然な進軍は、藤姓足利氏との合流を目指したとか、義仲との合流を目指したという推測で説明されたりもしています。なお、この野木宮の戦いで源範頼の名前が初登場するんですが、上記の頼朝無関係説では小山氏がその頃担いでたのは範頼だったとされているとのこと。話戻って志田義広ですが、実は手塚治虫のマンガ『火の鳥 乱世編』に出てきています。義仲に火の鳥を届けてくれと主人公の弁太に頼む役どころで、志田三郎義教という名前でした。
続いて下野国の藤姓足利氏。子孫が室町幕府を開いたのは源姓足利氏のほうで、こちらは藤原秀郷流の足利氏です。当時の当主は足利俊綱で、下野国では頼朝にいち早く味方した小山氏と勢力を二分する存在だったとのこと。平家に従い、息子の忠綱は以仁王の乱平定に活躍(しかしその恩賞への不満から一時頼朝側に寝返ったとの説もあり)。その後、野木宮の戦いで志田義広に味方したことにより、敗れた忠綱は家臣の勧めで山陰道を通って平家軍に加わるため西国に赴き、以後の消息は不明。父の俊綱も頼朝の討伐を受け、頼朝軍の到着前に家臣の裏切りにより殺されたとあり、藤姓足利氏は滅亡しています。ただしこちらにも、藤姓足利氏は野木宮の戦いとは無関係で頼朝の攻撃はそれとは別の戦いだとか、だから父俊綱の暗殺が先でその後に忠綱が西走したとか、忠綱の西国行きは改心して頼朝の平家討伐軍に加わるためだったとかいう説もあるらしく、諸説乱立といった感じですね。
最後にほぼ同族の下野国南部の源姓足利氏と、上野国南部の新田氏。当時の当主は新田氏が新田義重で、源姓足利氏がその甥の足利義兼。義兼の父義康(義重の弟)は、頼朝の父義朝と妻が姉妹同士という相婿で、保元の乱でも義朝や清盛と肩を並べて戦った武将ですが、その翌年に若くして死去。義兼は伯父の義重の庇護下で育ったらしい。頼朝が挙兵すると、藤姓足利氏に圧迫されていた義兼や、義重の庶子の山名義範、庶孫の里見義成らは頼朝の下にいち早く参陣しますが、義重はもともと平家の家人として活動していたことや、自らが源義家嫡孫で頼朝などは流人風情と見下していたことなどから、当初は平家方として活動し、坂東では平家方不利と見てからは自立する形勢を見せ、なかなか頼朝の下には参陣しませんでした。しかし南関東を頼朝、甲斐と東海を甲斐源氏武田氏が支配し、さらに信濃国の義仲が上野国北部へ侵入してくるに及んで、1180年末に頼朝の下に参陣。遅れての参陣は頼朝の不興を買い、以後新田氏は幕府で冷遇されたとされています。しかし『吾妻鏡』には1193年に頼朝が那須狩の帰りに義重の館で遊覧したとも記されており、必ずしも全面的に冷遇されたというわけでもなかったような。新田氏はむしろその後に庶流への分裂や不祥事による失脚があり、『吾妻鏡』編纂の頃には没落していたので、先祖の功績をアピールするような発言権がなかったのかもしれません。
なお、『吾妻鏡』には義重の娘についての逸話が記されています。それによると1182年に頼朝は伏見広綱に命じて、平治の乱で死んだ兄義平の未亡人である義重の娘に艶書(恋文)を送ったんですが、色好い返事が得られなかったため、父義重に直接妾として所望したところ、義重は政子の怒りを恐れて娘を師六郎という者に嫁がせてしまったとのこと。そのためますます頼朝の機嫌を損ね、さらなる新田氏の冷遇につながったとされています。でもなあ、この話はちょっと信じ難い。義平は1160年に死んでるわけですから、それから22年も経っています。その間ずっと再婚もしなかったのかとか、年齢も当時としてはいい歳だろとか、どこで頼朝は彼女のことを見知ったんだとか疑問点が多いんですよね。新田氏没落を説明するための俗話か新田氏側の主張が入り込んだんじゃないかなあ。ちょうどその数ヶ月後に亀の前事件が起こっており、それに関係した伏見広綱が絡んでいるのも、そこから逆算して作られた説話だという感じがしますね。
>呼称とかドラマとか
「アレキサンダー」または「アレクサンダー」のほうが今でもメジャーで、「アレクサンドロス」はまだまだマイナーなんじゃないですかねえ? オリバー・ストーン監督の映画の邦題も『アレキサンダー』ですし。中国の歴史人物名も、劉邦とか曹操みたいな名前そのものだったらともかく、始皇帝とか楊貴妃みたいなのが中国語発音になっちゃうのはどうも違和感が。「皇帝」は「こうてい」なのに、「始皇帝」になったとたんに中国語発音てのもややこしいですし。これから習う子はともかく、今まで覚えてきた名前を全部1から覚え直すのもうんざりだし、『三国志演義』とか『水滸伝』『西遊記』の人物名が全部中国語発音になっちゃったら、もう読むのめんどくさくて、ちゃぶ台ひっくり返したくなっちゃいそう(笑)。あと、以前映画板にも書いたけど、そもそも外国語の発音を日本語の発音に移すと表記に揺れが発生するので、どこかで表記の統一がなされないと媒体によって表記が変わってしまうという問題が発生してしまうような。
『三国志 ~司馬懿 軍師連盟~』は確か最初はWOWOWで放送してたんですが、好きな女優が出てるわけでもないってことでパス。外国のテレビドラマはとにかく長くて……。『女医明妃伝 雪の日の誓い』も、映画『真夜中の五分前』『ブレイド・マスター』のリウ・シーシー、ドラマ『如懿伝』のウォレス・フォ、映画『芳華』『空海』やドラマ『海上牧雲記』のホアン・シュエンという豪華な顔ぶれながら、やはり二の足を踏んでしまいました。今観てる中国ドラマはこれまたWOWOWでやってるチャン・ツィイー主演の架空史劇『上陽賦 運命の王妃』。チャン・ツィイー初の連ドラ出演作で、全68話が来月でようやく終わります。長かった~。
>追悼・藤子不二雄A
ちょっと前に「小学○年生」「コロコロコミック」や『魔太郎がくる』の話題を書いたら……。最初に藤子不二雄氏を知った時には、まだFとAに分かれる前の合同ペンネームでした。『忍者ハットリくん』や『怪物くん』、最後の合作と言われる『お化けのQ太郎』もコロコロに載ってたから読んでいたとはいえ、『ドラえもん』の熱烈なファンだった僕は今考えるとどちらかといえばF派でしたね。Aさんのマンガで1番印象深いのはやはり『魔太郎がくる』。『笑ゥせぇるすまん』はテレビ番組「ギミアぶれいく」のアニメで観ただけで原作は読んでいません。『少年時代』(原作は柏原兵三の小説『長い道』とのこと)も実写映画化作品しか観ていません(まあまあ面白かった)。市川準監督の映画『トキワ荘の青春』では、現在は映画監督としても活躍している鈴木卓爾が安孫子素雄(=A)役を演じてましたね(F=藤本弘役は阿部サダヲ)。
そしてロシアの極右政治家として一時有名だったジリノフスキーもひっそりと死去。コロナに感染してたとのことで。ソ連が崩壊しロシアとなった90年代には、過激というかむちゃくちゃな発言で話題になりました。
いずれもご冥福をお祈りします。
#11195
徹夜城(ただいま西村京太郎追悼読書を二冊同時並行ですすめる管理人) 2022/04/05 22:41
オデーサの階段、オデーサ作戦
4月1日から、政府決定を受けて各マスコミもウクライナ地名をウクライナ語表記しはじめたわけですが、もともとそれほどなじみがある地名があったわけでもないのでそう混乱は…と思うのですが、「チェルノブイリ」は強烈に印象付けられた名前だけにどうしても「移行」できないでいます。
キエフはもちろん歴史用語としてもよく知っているのですが、まぁ「キーウ」くらいなら…オデッサがオデーサになると、「戦艦ポチョムキン」も今後どうすりゃいいんだろ。そして「機動戦士ガンダム」の「オデッサ作戦」も。トニーたけざきさんのガンダムパロディ漫画でレビル将軍が地名を度忘れして「オデサッサ作戦」になってしまうってギャグがあったなぁ、などと連想が…
人名・地名など、歴史教育の現場でも「現地発音主義」がずいぶん浸透してきてます。もうかなりの世代の方が「チャールズ大帝」だの「ピーター大帝」だの「アレクサンダー大王」だのといった呼び方には「?」となってしまうんじゃないかと。いや、アレクサンダーはまだまだ生き残ってるかな?
いずれ問題になるだろうと言われてるの中国の歴史人物・地名の扱いで…一部でちらほらと「現地発音」表現が出てきてて、現在や近代の人名などは結構中国語表記がされるようにもなってきてますが、歴史人物地名となると、なまじ日本ではなじみがあるだけにそう簡単には移行できなさそうで。あと現代北京語に合わせるのが「正しい」のか、という問題も出てきますけどね。
同じことはすでに韓国・北朝鮮と日本の間ではすでにやってるんですが、こちらはそれほど混乱しなかったような印象があります。歴史人物地名だと残念ながらもともとそれほどなじみがないだけに…といっても、韓国では豊臣秀吉は「プンシンスギル」。徳川家康は「トッチョンカガン」と呼ぶ方がなじみがあったみたいです。
>近頃の歴史映像おっかけ
来週でBS日テレの「オスマン帝国外伝・愛と欲望のハレム」の放送がついに終わるそうで。僕もこれを録画しながら追いかけてるわけですが、あと110話くらい見ないと終わらない(汗)。面白いんですけどね、長すぎるよ、とは思います。あとこのドラマについては邦題に大いにケチをつけたい。これ「外伝」でもなんでもないぞ。
で、その「外伝」が終わるんで、HDDレコーダー圧迫との戦いに一息つけるかと思ったら、続けて「三国志 司馬懿・軍師連盟」が始まるそうで、結局状況は変わらないのでした。
つい先日、ようやく「隋唐演義」を見終わり、その後番組の「女医・明妃伝」を見始めましたが、これも見終わるのは当分先。
#11194
バラージ 2022/04/02 22:16
呼称変更
キエフがキーウ、オデッサがオデーサ、ドニエプルがドニプロ、チェルノブイリがチョルノービリ。ウクライナ側の要請とはいえ、慣れ親しんだ名前がいきなり変わっちゃうと、なんか変な感じですね(グルジアがジョージアに変わった時もそうだった)。ドニプロ川とかチョルノービリ原発とか言われても、なんだかピンと来ないなあ。
ウクライナ情勢を見てるとハリコフとかクルスクという地名が出てきて、第二次大戦の東部戦線も連想してしまいます。
>歴史関連マンガの話
去年の夏ごろに買った石坂啓のマンガ『ハルコロ』(原作・本多勝一、監修・萱野茂、岩波現代文庫)を今ごろになってようやく読了。読み始めたら1週間もかからずに読み終えてしまいました。やっぱりマンガは読み進むのが早いですね(笑)。
和人が進出してくる以前の道東アイヌの生活を主人公の少女ハルコロを通して描いた作品で、原作は本多氏の『アイヌ民族』ですが、2~3割が石坂氏のオリジナル創作とのこと。そのためか主人公の少女像・女性像が血の通ったリアルなものになっています(原作は未読)。なかなか面白かったんですが、終盤に主人公が出産したあたりから物語がバタバタとした展開になり、主人公の息子があっという間に青年に成長して旅立つと、その青年の話になってハルコロが全く登場しなくなってしまいます。その青年の話も猛スピードで進んで、さらにその息子が青年となって父と同じように旅立つところで物語は終了。コシャマイン蜂起を予感させるラストで終わっています。ハルコロの成長と恋愛の物語が、アイヌの生活文化や風俗描写を交えて丁寧かつ繊細に描かれていくのが興味深かっただけに、終盤の慌ただしいダイジェストみたいな展開はやや残念ですが、どうも原作がその後のコシャマイン戦争からのアイヌ受難史を第2部、明治以後のアイヌ現代史を第3部として描く予定だったらしく、そのためにあんな感じになったのかも。結局それは構想のみに終わり、描かれることはなかったんですが、その時代を扱ったものは比較的他にもありますし、中川裕の解説にもあるように、アイヌに“滅びゆく”とか“虐げられた”とかいったラベルが貼られていない作品だというのが、この作品のいいところなんでしょう。NHK時代劇とかで実写化してくれませんかねえ。
#11193
バラージ 2022/03/28 23:26
今週の鎌倉史 ザ・デストロイヤー
『時をかける愛』に代わって、NHK-BSで始まった『しずかちゃんとパパ』が、『13人』でささくれ立った日曜夜の僕の心を癒してくれております(ま、『時をかける愛』には及ばないんだけど)。
しっかし『13人』の義時はほんとダメダメな主人公だなぁ。あと、上総“佐藤浩市”広常も三浦“山本耕史”義村も頼朝になめた口ききすぎだろ。特に山本耕史はその濃すぎる芝居が先日観たアホアホコメディ映画『KAPPEI カッペイ』での役柄とかぶって見えちゃって、なんか笑ってしまいました。そして義経役の菅田将暉も(ほんとの奥さんの小松菜奈ちゃん共々)コロナ感染……。
今週の『13人』はついに政子による亀の前へのうわなり打ちが描かれました。何回か書いてますが、『13人』の亀の前はほとんど史実と関係ないオリキャラと化しており、重複になりますが改めて史実での亀の前について説明を。
亀の前は良橋太郎入道という人の娘で、頼朝が伊豆国で流人だった頃から仕えており、政子が妊娠中だった1182年の春頃には密かに鎌倉に呼び寄せられて寵愛を受けていたとのこと。亀の前は美貌だっただけでなく、性格も柔和だったため(政子と正反対だなあ・笑)頼朝に気に入られたんだそうです。6月頃になるとますます寵愛が深まり、小坪(現在の逗子市)の中原光家(やはり頼朝流人時代から仕えていた幕府官僚)宅に呼び寄せられたんですが、外聞をはばかって居所を遠くに構えたんだとか。その後さらに飯島(逗子市)の伏見広綱(頼朝の右筆)宅に移され寵愛され続けるも、8月12日に頼家を出産した政子が、継母牧の方からそれを知らされ激怒。11月10日に牧の方の兄牧宗親に命じて広綱宅を破壊するうわなり打ちに及び、亀の前は広綱に連れられて命からがら鐙摺(葉山町)の大多和義久(三浦義明の子で義澄の弟)宅へ逃れました。
それを知った頼朝は12日に遊興にことよせて宗親を伴って義久宅に出向き、広綱に事の経緯を聞いて宗親を問いただしたところ、宗親は言葉もなく顔を地にこすりつけて平伏すばかり。怒りの収まらない頼朝は「政子の言うことに従うのは良いが、実行に移す前に私に密かに報告すべきだろう」と宗親の髻(もとどり)を切って辱め、宗親は泣いて逃亡したとのこと。そして頼朝はそのまま義久宅に二晩宿泊したそうです。これを知った時政は義兄である宗親への仕打ちに怒り、一族を率いて伊豆国へ立ち退いてしまう騒動に発展しました。頼朝は時政の短慮に怒り、一方で父に従わず鎌倉に残っていた義時を呼び出して褒め称えたということです。
12月10日には、亀の前は再び小坪の光家宅へ移されます。亀の前は政子にまた襲われるんではないかとひどく恐れたんですが、頼朝のお召しには逆らえず、頼朝の寵愛はますます深まったとのこと。当然政子の怒りは収まらないため、16日には広綱が遠江国へ流罪となっています。最終的にこの騒動の顛末がどうなったかは、『吾妻鏡』の翌1183年がまるごと欠落しているため不明です。亀の前や広綱の名は1184年以降も現れず、やはりその後は不明。
中原光家はその後も頼朝の御家人として活動していることが『吾妻鏡』に見られ、大多和義久も大多和氏の祖とされていることから、いずれも処罰は受けなかったようで、なぜ伏見広綱だけが政子の怒りの対象となり流罪となったかは謎。うわなり打ちを行ったのは広綱宅ですが、その後に亀の前は光家宅へ移されているので、政子がそれを知らなかったはずはありません。牧宗親との関係で、父と継母に後ろめたさでも感じたんでしょうか? あるいは広綱の流罪は形式的なもので、実際には頼朝の命で亀の前を伴って京にでも上ったのかもしれません。他にもやはり後に頼朝に寵愛されて貞暁を産んだ妾の大進局が、政子の迫害を受けて貞暁と共に京へ上ってますし、義時と離縁した姫の前や時政死後の牧の方なども京へ上っており、この時代の鎌倉で寄る辺を無くした女性が京へ上るのはよくあったことのようです。
なお時政もいつの間にか幕府に復帰しています。ただし時政はその短慮と粗忽ぶりによって頼朝からの評価を大いに下げたようで、その後は閑職に回されたのかほとんど幕府での活動が見られなくなります。また宗親もやはり以後も頼朝の御家人として活動すると共に時政の側近としても活動してるようです。宗親については『吾妻鏡』では牧の方の兄弟(武者所宗親)とあるんですが、『愚管抄』では牧の方の父(大舎人允宗親)となっており、どちらが正しいのかは不明。『愚管抄』で宗親の息子とある大岡判官時親と『吾妻鏡』の宗親を同一人物と見る説もあるようです(大岡時親は『吾妻鏡』にも大岡備前守時親として出てくるが、宗親との続柄には言及がないらしい)。
うわなり打ちというのは平安時代に発生したらしく、政子の行為もこれに相当すると考えられているようです。そこから政子の行為も当時の一般的なものとして擁護する見解があるんですが、個人的にこれは大いに疑問。なぜなら『吾妻鏡』に他の女性が同様の行為を行ったという記録が見られないからです。それ以前の平安時代にうわなり打ちの例がいくつか見られるそうですが、それでもその数は決して多くはないようです。よって社会的慣習として認められてはいても、それが実際に行使されることはそれほど多くはなかったと考えるべきでしょう。なぜ実際に行使されることが少なかったかというと、この亀の前の事件でもわかるように、それは諸方面に様々な軋轢を生んでしまう可能性が高かったからだと思われます。妻妾の側が夫の女性関係になんらかの不満を持ったとしても、そこまでの過激な行為に及ぶことは躊躇する女性が大半だったと見るべきで、政子の行為を一般化して擁護するのは妥当ではないだろうと思います。
また、前回も触れた通り、身分的に政子は頼朝の妻(室、御台所)ではなく妾であって、亀の前とは基本的に同格の妾同士であり、政子にとって亀の前(や他の妾およびその可能性がある女)は自らの地位を脅かす恐れのある存在だったとする見解もあります。そのため亀の前の存在は政子ばかりでなく北条氏全体にとって不都合なことであり、牧の方が政子に亀の前の存在を教えたのもそのためとしています。こちらはかなり説得力のある説ですが、それでもそれだけで全てを説明できるとは思えない。なぜなら前記の通り『吾妻鏡』には他の女性が同様の行為を行ったという記録がありません。2代将軍頼家にも複数の妻妾がおり、それぞれに男子をもうけていましたが、そのような争いは発生していませんし、義経なども複数の妻妾がいましたがやはり同様の問題は起こっていません。
よってやはりこの事件の根本的な原因は政子という人の個性──極端なまでの嫉妬深さと旺盛過ぎる行動力、短気で直情径行な激情家──といったところに求めるのが正しいだろうと考えます。政子は自分の感情を自分で制御できない性格で、頭に血が上ると見境がなくなり、自分の行動で周囲の人間が──例えそれが頼朝や時政や牧の方であっても──どれだけ迷惑をこうむる結果になろうと一顧だにできない人間だったのでしょう。こういう人は極めて厄介で、以後も政子はたびたび騒動を起こすことになります。
ところで、この亀の前について、“浮気”とか“愛人”と表現してる記述を歴史学者の本でさえ時々見かけますが、当時の貴種の男性が複数の愛妾を持つのはごく一般的なことであって、妾もまた妻妾であり愛人とは異なります。こういう表現は単に扇情的な表現で耳目を引き付けようとしているか、もしくは無意識に頼朝やその愛妾に反感を持ったり政子に感情移入したりしてる人の言い草でしょう。当時35歳でいまだに男子がなかった頼朝にしてみれば、何としても自らの男子が欲しかったはず。当時政子は妊娠してたとはいえ、産まれてみるまではそれが男子か女子かはわかりません(結果的には頼家=男子だったが)。男子か女子かの確率は半々であって、もしまた女子だった場合のことを考えれば、政子の妊娠中に他の女性とも関係を持って自らの男子を得ようとするのは当然のことだったと思われます。
#11192
バラージ 2022/03/26 16:36
ようやく終わりが見えてきました
>観てない歴史映像作品 中南米史&オセアニア史&南極史編
これで後は戦争映画とタイムスリップ映画だけ。
・中南米史
『征服への道』(原題:Captain from Casile)……1948年の米国映画。1518年のスペインとメキシコを舞台とした架空人物が主人公の冒険活劇ですが、主人公がメキシコ(アステカ帝国)征服に向かうコルテスの部隊に加わるという設定なのでご紹介。とはいえそこは話のメインではなく、またコルテスも悪者とか侵略者とは描かれていないようです。監督はヘンリー・キング。主演はタイロン・パワー。
『アギーレ 神の怒り』……1972年の西ドイツ映画。1560~61年にアマゾン奥地の黄金郷エル・ドラドを探索したスペイン探検隊分遣隊副長のドン・ロペ・デ・アギーレらの壮絶な運命を描いたニュー・ジャーマン・シネマの1本。ただし結末などは史実と異なっているようです。監督はベルナー・ヘルツォーク。主演はクラウス・キンスキー。
『エル・ドラド』……1987年のスペイン・イタリア・フランス合作映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。上記『アギーレ~』と同じ題材を扱った本場スペインの作品で、監督はカルロス・サウラ。
『ウォーカー』(原題:Walker)……1987年の米国映画。19世紀半ばに米国の尖兵としてニカラグアを征服し、自ら大統領となって独裁者として君臨するも、民衆からの反発や近隣諸国の危惧、そして本国のスポンサーである財界人コーネリアス・ヴァンダービルトにも見放されて失脚した米国人傭兵ウィリアム・ウォーカーの伝記映画。グレナダやパナマ、エルサルバドル、そしてニカラグアなどにちょっかいを出しまくってた当時の米国を皮肉ったブラックユーモア的な作品で、当時は無いはずのニューズウィークやマルボロ、コカコーラやヘリコプターなどが登場するとのこと。監督はアレックス・コックス。主演はエド・ハリス。ウォーカーの妻役に当時聾唖女優としてブレイクしてたマーリー・マトリン。
『革命児ファレス』(原題:Juarez)……1939年の米国映画。日本ではテレビ放送のみで、劇場公開もソフト化もされていません。19世紀半ばの先住民族初のメキシコ大統領ベニート・フアレスを主人公としてフランス干渉戦争(メキシコ出兵)を描いているようで、マクシミリアン皇帝やその妻カルロータ、フランスのナポレオン3世なんかも出てくるようです。主演はポール・ムニで、カルロータ役がベティ・デイヴィス。
『奇傑パンチョ』(原題:Viva Villa!)……1934年の米国映画。メキシコ革命のパンチョ・ビジャ(ビリャ、ビラとも)を主人公とした娯楽映画ですが、ビジャの死からさほど経ってない時期に作られたため、いろいろと差し障りがあったのか、かなりフィクションが混ぜられているようです。
『バンデラスの英雄パンチョ・ヴィラ』(原題:And Starring Pancho Villa as Himself)……2003年の米国のTVムービー。テレビ放送のみでソフト化はされていません。『革命の男 パンチョ・ヴィラ』という別邦題もあるようです。やはりパンチョ・ヴィラが主人公ですが、D・W・グリフィスの指示でヴィラの映画を撮りに来た若い米国人監督の視点で描かれた映画とのことで、他にジョン・リードなども登場するようです。監督はブルース・ベレスフォード。主演はアントニオ・バンデラス。
『エバ・ペロン エビータの真実』……1996年のアルゼンチン映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。第二次大戦前から戦後にかけてのアルゼンチンにおいて女優から大統領夫人にまでなった“エビータ”ことエバ・ペロンの伝記映画。米国のミュージカルおよびその映画化の『エビータ』に反発したアルゼンチン本国が作った映画で、“聖女”として美化されたエビータ像をそのまま描いている作品らしい。
『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』……2016年のチリ・アルゼンチン・フランス・スペイン合作映画。後にノーベル文学賞を受賞するチリの詩人で政治家でもあったパブロ・ネルーダが、1948年に非合法化された共産党員だったため政治犯として追われる身となったその逃亡劇を描いた作品。
『チェ・ゲバラ 密林のゲリラ戦』……1969年のイタリア映画。日本ではテレビ放送のみで、劇場公開もソフト化もされていません。ボリビアでのゲバラの最期の日々を描いた作品みたい。
『チェ・ゲバラ 革命と戦いの日々』(原題:Che Guevara)……2005年の米国映画。キューバ革命を中心に、ゲバラの半生をドキュメンタリー・タッチかつダイジェストで描いた作品らしい。
『戒厳令』……1972年または1973年のフランス・イタリア合作映画。1970年のウルグアイでイタリア系米国人のダン・アンソニー・ミトリオンが都市ゲリラ革命グループのツパマロスによって誘拐され殺害された事件をモデルに、戒厳令下の恐怖政治を描いた社会派映画。ミトリオンは民間人と称しながら実はCIAの元要員で南米において左翼勢力を弾圧する人やグループを育成すると共に自身も弾圧に関与していたとのこと。監督はコスタ・ガブラス。主演はイヴ・モンタン。
『サンチャゴに雨が降る』……1975年のフランス・ブルガリア合作映画。VHS邦題は『特攻要塞都市』(DVD邦題は劇場公開邦題と同じ)。1973年のチリ・クーデターをドキュメンタリー・タッチで描いた社会派映画で、9月11日早朝のクーデター発生から首都サンチャゴを中心とした各地での市街戦、軍事評議会による権力掌握を経て、詩人パブロ・ネルーダの葬儀にいたる10数日間の出来事の描写を軸に、登場人物の一人である外国人記者の回想という形でサルバドール・アジェンデの大統領当選からクーデターに至るまでの流れが並行して描かれているとのこと。
『コロニア』……2015年のドイツ、フランス、ルクセンブルク合作映画。チリ・クーデターの実話を基にした作品で、ピノチェト独裁政権下で実際に拷問施設として使用されていたコロニア・ディグニダが題材。監督はフローリアン・ガレンベルガー。主演はエマ・ワトソン。
『アンダー・ファイア』(原題:Under Fire)……1983年の米国映画。Blu-ray化のみでDVD化はされていません。1979年のニカラグア内戦の実話を基に、戦場を取材する3人のジャーナリストを描いた社会派映画で、監督はロジャー・スポティスウッド。主演はニック・ノルティとジーン・ハックマン。
『イノセント・ボイス 12歳の戦場』……2004年のメキシコ映画。1980年代のエルサルバドル内戦で、政府軍と社会主義勢力である反政府ゲリラ組織ファラブンド・マルティ民族解放戦線の戦争に巻き込まれていく子供の姿を描いたヒューマンドラマ映画。
『ステイト・オブ・ウォー』……2005年のアルゼンチン・スペイン合作映画。フォークランド紛争をアルゼンチン兵の側から描いた戦争映画ですが、敗戦国だけあってか戦争への悔恨が色濃い作品とのこと。
『トゥルース・オブ・ウォー』……2016年のアルゼンチン映画。これもフォークランド紛争をアルゼンチン兵の側から描いた戦争映画で、やはり戦争への悔恨が色濃い作品らしい。
・オセアニア史
『プリンセス・カイウラニ』(原題:Princess Kaiulani)……2010年の米国映画。19世紀のハワイ王朝最後の王女カイウラニの生涯を描いた作品。主演はクオリアンカ・キルヒャー。
『カウラ大脱走』(原題:Cowra Breakout)……1984年のオーストラリアのTVミニシリーズ。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。かなり昔にレンタル店でVHS全3巻を見かけた記憶あり。第二次大戦中にオーストラリアのカウラにある捕虜収容所から日本兵捕虜が集団脱走を企てて鎮圧されたカウラ事件を題材とした作品で、日本からは石田純一が出演しています。
『あの日、僕らの命はトイレットペーパーよりも軽かった カウラ捕虜収容所からの大脱走』……2008年の日本の単発ドラマ。やはりカウラ事件を題材とした作品で、脚本は伯父が実際に事件の経験者だったという中園ミホ。出演は小泉孝太郎、大泉洋、加藤あい、阿部サダヲ、山崎努など。DVDは未公開シーンを収録した約3時間の完全版。
『WAR OF THE SUN カウラ事件─太陽への脱出』(原題:Broken Sun)……2008年または2010年のオーストラリア映画。やはりカウラ事件を題材とした作品です。そういや中野不二男によるカウラ事件のノンフィクション『カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットはなぜ死んだか』もずっと昔に買ったんだけど、いまだにずっと積ん読のままだなぁ。
『コン・ティキ』(原題:Kon-Tiki)……2012年のイギリス・ノルウェー・デンマーク・ドイツ合作映画。ノルウェーの人類学者トール・ヘイエルダールが、ポリネシア人の祖先が南米から海を渡ってきたという自説を証明するために、1947年にいかだ「コン・ティキ号」で8000キロの太平洋横断に挑戦した実話の映画化。
・南極史
『Amundsen(原題)』……2019年のノルウェー映画。日本未公開の作品ですが、見つけて、おっ、と思ったので紹介してしまおう。南極点に初到達した極地探検家アムンセンの伝記映画なんですが、DVDスルーでもいいから日本語版も出たりしないもんだろうか。なおアムンセンは1926年に飛行船ノルゲ号による北極点到達にも成功したんですが、それ以前の北極点到達の主張(1908年のクック、1909年のピアリー、1926年のバード)には精確さへの疑問などがあるため、北極点初到達もまたアムンセンだった可能性もあるとのこと。
#11191
バラージ 2022/03/21 21:03
今週の鎌倉ツッコミ へんーしん! とう!
今週はますます義経が悪辣に。やっぱり明らかに『火の鳥 乱世編』に影響受けているのでは……。判官贔屓嫌いの僕は実を言うとこういう黒義経は大歓迎でして(笑)。個人的にはあんまりノレない『13人』ですが、ここは個人的に高評価なところ。義経が主人公の作品じゃ、こうは描けないでしょうし。ただし前にも書いた通り、義円は実際には頼朝のもとに参じてなかったと思われますが(行家もこの時期に鎌倉に来た形跡はない)、まぁこうでもしないとドラマに出てこなかったでしょうしね。このあたりは前回書いちゃったんで、伊東祐親・祐清父子の最期ともども若干のネタバレになっちゃいましたが、まあいいか。
ネタバレついでに、どうせ今後も出てこないだろうから書いちゃいますが、祐清の妻である比企掃部允と比企尼の三女(実名はもちろん、通称なども全く不詳のためこういう長ったらしい呼称にせざるを得ない)は、祐清と離縁(または死別)後に源氏一族の重臣・平賀義信と再婚しており、息子の朝雅は北条時政と牧の方の娘を娶っています。この朝雅も後半の北条氏内部の抗争に濃厚に絡んでくる人でして。
そして、今週の『13人』はついに八重が義時の妻・阿波局へと変身の兆し(笑)。これは三谷幸喜のオリジナルではなく、時代考証の坂井孝一氏が『鎌倉殿と執権北条氏』(NHK出版新書)で提示した仮説が元ネタなんですが、改めて同書をしっかり読んでみてもやっぱりいくらなんでも無理がある説だとしか思えない。まず大前提として、そもそも八重=伊東祐親の三女が実在したのかという問題があります。祐親三女は同時代史料はもちろん、『吾妻鏡』など後世の編纂史料にも出てこない人で、『延慶本 平家物語』『源平盛衰記』『源平闘諍録』『曽我物語』などの物語類にしか現れない人物です。僕も実在したかしないかの可能性は高く見積もってもせいぜい50:50ぐらいだろうと思ってますし、もし実在しなかったとしたら坂井氏の仮説はその時点で崩壊してしまいます。また仮に実在したとしても、祐親三女が義時の最初の妻(または妾)の阿波局になったという坂井氏の推論は、何重にも推測に推測を(というよりも想像に想像を)重ねた上で導き出されており、牽強付会というか根拠薄弱というか、もっとはっきり言えば「義経=ジンギスカン説」よりはいくぶんマシといった程度のきわめて荒唐無稽な説としか思えない。その辺は坂井氏も自覚してるのか、「推論に推論を重ねることを承知の上で、いささか想像をめぐらしてみたい」「単なる推論、憶測と退けられるかもしれないが」「不明な点、論証できない点は少なくないが」などと何度もエクスキューズを付けています。同書は昨年出版されたばかりで、他の研究者の反応は今のところまだありませんが、おそらくこの「八重=阿波局」同一人物説を支持する人はほとんどいないんではないかなあ。無論ドラマ(や映画や小説やマンガ)のほうは作り話ですからどういう設定だろうと、たとえ義経がジンギスカンになろうと全く構わないわけですか、歴史研究とか学説とかはそうではないわけで。
以前も書きましたが同書のあとがきによると、『13人』の製作発表直後にNHK出版より坂井氏に執筆依頼があり、書き上げて編集部に送った後に時代考証の依頼が来たんだとか。おそらくですが、NHK側は明らかに『13人』の参考文献とするために執筆依頼をしたのであって、なおかつそれを読んだ三谷氏が内容を気に入ったんでしょう。特にこの「八重=阿波局」同一人物説を読んだ時に、三谷は「しめた!」と思ったはず。なぜなら過去の大河『草燃える』でも義時の最初の妻で泰時の母に当たる人物がやたらフィクションで大きく膨らまされて、ほとんど架空の人物になっていたからです。『草』では茜という名前で、演じたのは松坂慶子。大庭景親の娘という設定で、義時の最初の妻だったが平家追討に出陣してる間に頼朝の手が付き、頼朝と義時のどちらが父かわからない子(泰時)を妊娠。鎌倉を去り、平家に仕え女房となり、壇ノ浦で義時に泰時を託し、彼の目の前で海に沈む……って完全に架空人物だよ!(笑) 原作の永井路子は作中に架空人物を出すことを嫌った人で、義時主人公の短編『覇樹』でも阿波局はわずかにしか登場していないので、完全に脚本の中島丈博のオリジナル人物。お話のドロドロっぷりはさすが『牡丹と薔薇』『真珠夫人』の昼ドラテイストです(笑)。おそらく三谷は『草』を楽しんだ世代だと思われ、『13人』は明らかに『草』を意識してるんで、義時の最初の妻で泰時の母をヒロインとして描きたかったんでしょうけど、でもねえ……。
では古典物語での祐親三女はどうなったかというと、頼朝との息子の千鶴が父祐親に殺され、頼朝と別れさせられて伊豆国住人の江馬次郎に嫁がされた後については、『延慶本 平家物語』『源平盛衰記』には記されていません。『源平闘諍録』では江馬の元を出奔し、後年頼朝から呼び戻されて、その計らいで相馬師常と結ばれたとあります。師常は千葉常胤の庶子で、『闘諍録』は千葉氏の影響下で成立したという説があります。『曽我物語』では後に密かに伊東館を抜け出して頼朝のいる北条館を訪れたが、すでに頼朝は政子と恋仲になっていたため真珠ヶ淵に身を投げて入水自殺したとされており、『闘諍録』ともどもいかにも物語的なお話ですね。なお八重という名前は古典物語類には実は出てきません。室町から江戸期に民間伝承として発生した名前のようです。
そして義時の妻妾の阿波局ですが、この人については御所に仕える女房だったとされている以外は一切不明。父母や出自などもわかっていません。義時の後を継ぎ名執権とうたわれた泰時の母でありながら、父の名すらわからないというのは非常に不思議な話です。『吾妻鏡』では義時の妻とされており、研究者でもそれをそのまま受け取って「義時の妻」としている人もいますが(坂井氏もその1人)、上記の父の名すらわからないという理由からおそらくは相当に低い身分で、実際には妾だったのではないかと推測する向き(山本みなみ氏など)もあり、僕もおそらくそうであろうと考えています。この時代の貴種ではない地方の武士は妻妾は1人だけで、妾(側室)は持っていなかったという説もあり、坂井氏もそれを強調して義時の妻としていますが、一方で妻か妾かは出自の身分により決まるのであって、夫と釣り合う身分の妻妾は「妻」、釣り合わない身分の妻妾は「妾」となるという説もあり、妻がいなくても妾はいるということはあり得るとされています。ちなみに、この説を取る人(永井晋氏など)は政子も頼朝の妾で、頼朝死後に頼朝の後室を取りまとめる立場に立ち、当主頼家や実朝の母となったから「妻」となったとしています(なお、秀吉の側室とされる淀殿も近年では北政所ねねと共に正室だった、つまり秀吉には正室が2人いたとする説が有力らしい)。
『吾妻鏡』は泰時の子孫である得宗家が権力を握った時代(時宗から貞時の頃)の幕府によって編纂されており、得宗家の先祖、特に泰時の顕彰(いわゆる“よいしょ”)が著しい。得宗家に対抗的で、宮騒動や二月騒動で粛清された名越家の先祖である朝時(泰時の弟)は、母・姫の前(比企朝宗の娘)が義時の妻だったとやはり『吾妻鏡』にも記されており、義時の当初の嫡子は朝時だったと思われます。泰時は庶長子という位置付けだったことが推定されており、そのような過去を隠し、得宗家の名越家に対する優位と正統性を主張するためにそのような曲筆が行われたと考えられています。ちなみに御所に仕える女房だったというのは『系図纂要』に記されてるらしいんですが、これもかなり怪しい。
ここからは僕の個人的な推測。事実上何もわからない阿波局ですが、おそらくは義時が出来心で1度だけ手を付けちゃった、いわゆる「一夜妻」なんじゃないでしょうか。その1回で泰時が出来ちゃったということなんではないかなあ。要するに足利直冬の母と同じっていうことで。たぶん義時が江間家を興した頃に家中の端女(下女)に手を付けたという、昔の名家ではわりとよくあった話なんじゃないかと考えると、いかにもありそうな話に思えるんだよなあ。ただ、なかなか直冬を実子と認めず、弟の養子にしてしまった尊氏よりは、ちゃんと自分の子供として育てた義時のほうがまだ偉いと言えるのかも。
#11190
バラージ 2022/03/18 23:06
いやぁ、焦りました
2段階で来て、2回目のが結構すごかった。11年前ほどではなかったけど、気を緩めるなっていう天の警告かもしれませんねえ。それにしても今年はまだ春前から戦争に地震と先が思いやられるなあ。コロナも一向におさまらんし。
『13人』は楽しむどころか観るたびにフラストレーションがたまります。もし楽しめてたら、「今週も面白かったです」の一言で話が済んでしまうため、こんなに頻繁に書き込みはしていないはず(『平清盛』の時はこんなに書き込んでませんでしたし)。そのフラストレーションを、こないだまではあまりに素晴らしすぎた『時をかける愛』がきれいに消し去ってくれてたんですが、それももう終わっちゃいまして。ただまあ、政子や義経の描写なんかは僕の好みに合っているので、いいところもなくはないのも確かなんですが、頼朝とか亀の前の描写がそれを帳消しにするくらいひどすぎる……。あと、これはドラマの出来とは関係ありませんが、やっぱり僕は三谷幸喜の作風は今一つ趣味に合わない。しかし時代的には最も興味のある時代のため、やっぱりどうしても観ちゃうという一種の苦行のような状態になっちゃってます。この苦行があと9ヶ月も続くのかあ……。
佐竹氏は確かに今までの大河で描かれたことなかったかもしれませんね。『草燃える』にも出てこなかったようですし、また出そうにも戦国なんかでも立ち位置が今一つ微妙なんだよなあ。関ヶ原でも合戦自体はしていませんし。僕の佐竹ファーストは、友達が持ってたエポック社のボードシミュレーションゲーム『関ヶ原』でした。一応イベントによっては出陣の可能性があるんですよね。ものすごく可能性は低いけれど。佐竹氏が出てくる漫画で印象深かったのが、岩明均の『雪の峠・剣の舞』の表題作である短期連載漫画「雪の峠」ですね。もっとも秋田転封後の話なんですが、佐竹義宣の近習頭(後に家老となる)渋江内膳(政光)が主人公で、なかなか面白い漫画でした。
源平合戦時代の常陸国というともう1人、頼朝の叔父(義朝の三弟)の源(志田)義広(義憲、義範)もいますが、やはり映像作品未登場。今後登場するのでしょうか?
>観てない歴史映像作品 アメリカ合衆国史編 最終回
最終回は1970年代から90年代の20世紀いっぱいまで。
『アポロ13』(原題:Apollo 13)……1995年の米国映画。1970年のアポロ13号爆発事故を描いたドラマ映画で、監督はロン・ハワード。主演はトム・ハンクス。これは劇場公開時に観ました。『フォレスト・ガンプ』が当たったハンクスの次の出演作だったかな。まあまあ面白かったですね。
『名誉ある撤退 ニクソンの夜』(原題:Secret Honor)……1984年の米国映画。日本では2007年の映画祭上映のみで、劇場公開もソフト化もされていません。監督はロバート・アルトマン。ニクソン役を演じるフィリップ・ベイカー・ホールの一人芝居という変わった映画のようです。
『キッシンジャー&ニクソン 合衆国の決断』(原題:Kissinger and Nixon)……1995年の米国のTVムービー。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。キッシンジャーの自伝に基づいた作品で、ニクソン政権下のキューバ危機、中国国交正常化、ベトナム戦争の終結問題などが描かれているとのこと。
『エルヴィスとニクソン』(原題:Elvis Meets Nixon)……1997年の米国のTVムービー。エルヴィス・プレスリーとニクソン大統領が1970年に密かに会見していたという実話を基にした作品。
『フロスト×ニクソン』(原題:Frost/Nixon)……2009年の米国映画。1977年に行われた、イギリスの人気トーク番組の司会者デビッド・フロストによるニクソン元大統領のインタビュー番組収録とその舞台裏を描いた作品。監督はロン・ハワード。
『エルヴィスとニクソン 写真に隠された真実』(原題:Elvis & Nixon)……2016年の米国映画。日本ではテレビ放送のみで、劇場公開もソフト化もされていませんが、『エルヴィス&ニクソン』の邦題でAmazonprimeで配信されています。上記1997年の『エルヴィスとニクソン』と同じ題材の映画で、主演はマイケル・シャノンとケヴィン・スペイシー。
『ザ・シークレットマン』(原題:Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House)……2017年の米国映画。ウォーターゲート事件の匿名の情報提供者“ディープ・スロート”であることを2005年に自ら公表した当時のFBI副長官マーク・フェルトの自伝を基にした作品。主演はリーアム・ニーソン。共演はダイアン・レイン。
『アリ ザ・グレーテスト』(原題:The Greatest)……1977年の米国映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。モハメド・アリの半生をアリの自伝を原作としてアリ自身の主演で描いちゃった作品。1960年ローマ五輪での金メダル獲得から1974年の“キンシャサの奇跡”までを描いているとのこと。
『ALI アリ』(原題:Ali)……2001年の米国映画。こちらもモハメド・アリの半生の映画化。こちらは1964年に世界ヘビー級チャンピオンになったところから、やはり“キンシャサの奇跡”まで。監督はマイケル・マン。主演はウィル・スミス。
『シルクウッド』(原題:Silkwood)……1983年の米国映画。核燃料工場労働組合の活動家で、核の危険性を訴えて労働条件改善を求めていた最中の1974年に謎の交通事故死を遂げたカレン・シルクウッドの事件の映画化。監督はマイク・ニコルズ。主演はメリル・ストリープ。
『アイリッシュマン』(原題:The Irishman)……2019年の米国映画。限定劇場公開された後Netflixで独占配信されており、DVD化はされていません。マフィアのラッセル・バッファリーノに仕えた実在の殺し屋で、1975年の全米トラック運転組合委員長ジミー・ホッファ失踪事件に関与したとされるフランク・シーランを描いた作品。監督はマーティン・スコセッシ。主演はロバート・デ・ニーロで、ホッファ役がアル・パチーノ、バッファリーノ役がジョー・ペシという豪華キャスト。
『運命の瞬間(とき) そしてエイズは蔓延した』(原題:And the Band Played On)……1993年の米国のTVムービー。ビデオ&LD化はされましたがDVD化はされていません。1980年代初めのエイズ流行初期を、実在の医学者・感染者・官僚・同性愛者・血友病患者など多彩な人々で描いた実録作品。冒頭にはアフリカでのエボラ出血熱発生のシーンもあるらしい。出演はマシュー・モディン、リチャード・ギア、スティーヴ・マーティン、アンジェリカ・ヒューストンなど、これまた超豪華キャスト。
『ゼロ・ペイシェンス』(原題:Zero Patience)……1993年のカナダ映画。『世界で初めてエイズに冒された男 ゼロ・ペイシェンス』の邦題でビデオ化されましたがDVD化はされていません。1987年に北米に初めてエイズを持ち込んだ男として新聞を賑わせた実在のカナダ人をモデルとした主人公が、死者の国から現代に自らの汚名を晴らしに来るという設定のミュージカル映画。エイズを取り巻くメディアへの批判が描かれてるとのこと。
『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(原題:Heartbreak Ridge)……1986年の米国映画。1983年のグレナダ侵攻を描いた戦争映画というか、海兵隊の鬼軍曹が落ちこぼれ兵士たちを鍛え上げていくという軍隊特訓映画らしい。監督・主演はクリント・イーストウッド。
『ウォール街』(原題:Wall Street)……1987年の米国映画。歴史映画ではなく同時代映画なんですが、きわめて時代的な題材を描いてるんで個人的趣味から入れてしまおう。バブル景気真っ只中のウォール街を舞台に、証券業界のインサイダー取引を題材とした作品で、監督はオリバー・ストーン。主演はチャーリー・シーンとマイケル・ダグラス。これは大学時代にビデオで観ました。面白かったですねえ。2010年の続編『ウォール・ストリート』(原題:Wall Street: Money Never Sleeps)も劇場公開時に観ましたが、こっちのほうがずっと面白かったです。
『ガルフ・ウォー』(原題:Thanks of a Grateful Nation)……1998年の米国のTVムービー。湾岸戦争を舞台に米軍の生物兵器の使用や湾岸戦争症候群の謎に迫った作品で、体験者へのインタビューや証言、実際の映像と再現映像で構成された3時間半近い作品です。出演はジェニファー・ジェイソン・リーなど。
『ライブ・フロム・バグダッド 湾岸戦争最前線』(原題:Live from Baghdad)……2002年の米国のTVムービー。湾岸戦争の生中継をしたCNNの取材班ジャーナリストたちの実話を描いた作品。主演はマイケル・キートンとヘレナ・ボナム=カーター。
『ダーク・スティール』(原題:Dark Blue)……2002年の米国映画。ロドニー・キング集団暴行事件の評決を目前とした1992年のロサンゼルス暴動までの時間軸を背景として、警察組織の腐敗を題材としたポリティカル・アクション。あくまで事件は背景であって主題ではなく、主題となるストーリーは架空の話。主演はカート・ラッセル。
『マイ・サンシャイン』(原題:Kings)……2017年のフランス・ベルギー合作映画。様々な事情で両親と暮らせない子どもたちを育てている女性とその隣人の男性を主人公に、1991年のロドニー・キング事件とラターシャ・ハーリンズ事件の判決をきっかけとした1992年のロサンゼルス暴動に巻き込まれていく人々を描いた社会派ヒューマンドラマ。主演はハル・ベリーとダニエル・クレイグ。
『ボウリング・フォー・コロンバイン』(原題:Bowling for Columbine)……2002年の米国のドキュメンタリー映画。マイケル・ムーア監督が、1999年に起こったコロンバイン高校銃乱射事件をきっかけに米国が抱える銃問題に迫った問題作。これもビデオかDVDで観ました。非常に面白かったですね。マイケル・ムーアの名前が強烈に印象づけられました。
『エレファント』(原題:Elephant)……2003年の米国映画。コロンバイン高校銃乱射事件をモチーフに、事件が起きるまでの高校生たちの1日を淡々と描いた青春映画。監督はガス・ヴァン・サント。
>未見映画
『水滸英雄伝』(原題:豹子頭林冲)……林冲を主人公とした2018年の中国映画。DVDスルーされてました。
#11189
徹夜城(だいぶ昔の信長の野望はいつも佐竹でプレイしていた管理人) 2022/03/17 23:08
地震・カミナリ・火事・プーチン
コロナも含めて世の中恐いものがいろいろございますが、昨日の地震はかなりビビりました。僕のあたりは震度5弱ってことですが(震度4という話もありましたが体感では5と思う)二段階で来たことと、揺れ方の長さとでやはり東日本大震災を思い出さずにはいられませんでした。昨年2月にもそういうのがあった、と言われても記憶が(汗)。
>鎌倉殿
バラージさん、なんだかんだでお楽しみになってるような(笑)。
ツイッターでも書いたことですが、僕は佐竹氏の「登場」そのものに感慨を覚えましたねぇ。茨城人としてはやはり思い入れはある大名で、「信長の野望」でも佐竹で天下統一をよくやってました(といっても「戦国群雄伝」「武将風雲録」だけ)。茨城県内、常陸下総両国ではいくつか有力氏族はいるんですが、やはり佐竹が代表ではあるでしょう。源義光にルーツをもち、常陸北部に延々と勢力をもち、戦国まで続いて江戸初期に秋田へ転封、秋田藩としてまた延々と…と息の長い一族ではあります。
その割に知名度というか、マニアな歴史好きでないと知られてない存在ではありまして。歴代当主でもそんなに有名ってのはいないですし。そして過去歴代の大河ドラマでも佐竹氏の武将が登場したことはないんじゃないかと。
「独眼竜政宗」で敵勢力としては出て来たんですが、特定個人は登場せず。「太平記」でも建武新政期に奥州へ下った北畠親房・顕家父子が反乱軍と戦う場面で「敵は佐竹」と言及はされたもののやはり登場はせず。
今回の「鎌倉殿」で描かれた、頼朝による佐竹征伐については僕は小学校時代に読んだ「茨城県の歴史」というローカル歴史本で知りました。あの本、親房の活動も結構詳しく書いてたっけ。
それでも詳細は僕も知らなかったので、「鎌倉殿」での描写は史実はともかくとして結構楽しんでました。ついに佐竹氏の武将が俳優によって演じられ登場、セリフもそこそこにすぐ殺されたけど長らく佐竹と親しんできた僕としてはなかなか感慨深いものがあったんです。
「鎌倉殿」はこの当時の武田氏も出てきましたし、当時の関東武士団もまぁいろいろあった、ということが分かるのが面白いです。こういうところは南北朝まで引きずりますけどね。
、
#11188
バラージ 2022/03/15 21:41
今週の鎌倉ツッコミ 『華麗なる一族』か?
いや、いくらなんでも頼朝が女房と愛人と元女房を同居させたりしねえだろ(ま、厳密に言えば、最初の妻妾と2番目の妾と物語にしか登場しない妻妾ですが)。政子が寛大な(というか当時の一般的な)女性ならまだしも、嫉妬で発狂するのわかりきってんだからさあ。そんな危険な真似するわけねえっつーの。
実際、以前書いた通り、亀の前は史実ではこの頃はまだ伊豆国に住んでいたはずで、政子の出産が迫った1182年の春頃に鎌倉に呼び寄せられ(伊豆国まで通うのは大変だったんでしょう。鎌倉をそうそう留守にするわけにもいかないし)、6月には小坪(現在の逗子市)の中原光家の宅に住まわせたとのこと。外聞をはばかって居所を遠くに構えたとのことですが、この「外聞をはばかって」とは要するに政子の耳目に入らないようにってことなんでしょうね。まあ、これも以前書いたんですが、『13人』の亀の前は史実もクソもないほぼ100%架空の人物になっちゃってるんで仕方がないっちゃ仕方がないけど、今週もなんだかなあという感じ。柔和な性格なんざどこにもありませんでしたな。やれやれ。
さて、今週は頼朝の弟勢ぞろいとなりましたが、幼少時代の乙若を除けば映像作品初登場となった義円。しかし『吾妻鏡』には頼朝の元に参じたという記述はなく、1181年に叔父行家と共に平家と戦っているため、頼朝とは別に独自に挙兵したと推測されています。それが今まで映像作品には登場しなかった理由なんでしょう。いったん頼朝の元に来てから行家の元に遣わされたと推測する見方もあるようですが、特に根拠はないようですね。
また義経についてですが、九条兼実の日記『玉葉』には頼朝と義経を「父子之義」と記しており、『吾妻鏡』で義経を「御曹司」と呼称していることも傍証として、頼朝は義経を猶子(養子)として2人は疑似父子関係になったとする説があります。義経が頼朝の元に参じた時点ではまだ頼家は生まれておらず、頼朝に男子がいなかったため、そのまま男子が生まれなければ義経が後継者となる可能性もあったことから、北条氏にとっては警戒すべき人物だったとする説もあるようです。
それから頼朝にはもう1人、義朝5男の希義という同母弟がいるんですが、言及されてなかったような。平治の乱の結果、土佐国に配流されていて、1182年に平家に討たれており(『吾妻鏡』の編纂ミスで実際には1180年という説が有力)、頼朝と2度と会うことはなかったんですが、今後言及されるのかなあ?
そして今週はついに伊東祐親が頼朝に降伏。三浦義澄に預けられることになったというのは『吾妻鏡』にある通りなんですが、実はこれにもちょっと疑問があるんですよね。この時点で頼朝に敵対した伊豆と南関東の武士たちのうち、河越重頼・畠山重忠・江戸重長ら秩父氏は帰順、波多野義常は追討を受け自害、大庭景親は降伏して処刑、山内首藤経俊も処刑されるところを頼朝の乳母である母の山内尼(摩々尼)の懇願で許されるなど、いずれも処刑か帰順しており、祐親だけが預りになるというのはどうも不自然なんですよ。普通この時点で処刑か許されるかしてるだろうと。結局『吾妻鏡』によると1年半後に政子が懐妊した際に恩赦されるんですが、祐親は以前の行いを恥じるとして自害しています。これもおかしな話で、以前の行いを恥じて自害するんなら取っ捕まった時にすればよかろう。あんた1年半も何してたんだよっていう話でして。そのためこれも『吾妻鏡』の編纂ミスと見てか、元木泰雄『源頼朝』(中公新書)や山本みなみ『史伝 北条義時』(小学館)では捕らえられた際に処刑されたとしています。
あるいは『吾妻鏡』のエピソードを事実と見るにしても、時期はやはり降伏直後のことだろうと思われます。その場合、頼朝がなぜ祐親を許そうとしたかを推測すると、おそらく頼朝は祐親の息子の祐清を助けたかったんでしょう。頼朝の乳母比企尼の三女を妻としていた祐清は比企尼の命で頼朝に近侍しており、祐親が頼朝を殺そうとした時にはそれを密告して助けた命の恩人でした。同様に比企尼の次女を妻として頼朝に近侍した河越重頼や、やはり頼朝の乳母だった山内尼の息子の山内首藤経俊も前記の通り許されており、頼朝は祐清も助けたかったんでしょうね。そのためにはその父祐親も許さねばならなかったということなんではないでしょうか。
祐清のその後については『吾妻鏡』の中でも矛盾する記述があって混乱しています。治承4年(1180年)10月19日条では、祐親ともども捕らえられた際に頼朝からかつて命を救った恩賞を与えようとされたが、父が頼朝の敵となっているからとそれを断り、身の暇を乞うて平家側に加わるために上洛したとあります。ところが養和2年(1182年)2月15日条では、祐親が自害を遂げた際に自らにも死を賜るよう頼朝に願ったため、頼朝は心ならずも祐清を誅殺したとしており、明らかに矛盾しています。さらに建久4年(1193年)6月1日条によると、それ以前のこととして平家軍に加わった祐清が北陸道の合戦で討ち死にしたとの記述があり、こちらは治承4年(1180年)の記事と符合しています。『覚一本 平家物語』にも、木曽義仲勢との篠原の戦いで伊東九郎祐氏(=祐清)が討ち死にしたとあり、養和2年(1182年)以外の3つの記事は矛盾していないため、祐親および祐清の死を1182年とする養和2年の記事がやはり誤りで、祐親を捕らえた直後に処刑(もしくは自害)したとする元木氏や山本氏の解釈が正しいのだろうと思われます。
それから前記の通り、山内首藤経俊は頼朝の乳母の1人だった母の山内尼の懇願で許されましたが、実は頼朝は石橋山の戦いで経俊が射た矢が刺さったままの鎧の袖を山内尼に見せ、いったんは退かせています(『13人』ではなぜか矢を引っこ抜いて捨てちゃってましたが)。その後、結局経俊は許されるんですが、頼朝は比企尼の関係者にも寛大で、なおかつその後も重用しているのも前記の通り。また伯母が頼朝の乳母だった三善康信(善信)が頼朝にたびたび京の情勢を知らせているのも『13人』でも描かれてましたが、善信は後に頼朝の招きで鎌倉に下り、頼朝に仕えています。そしてもう1人、『13人』には出てきてないし言及もされてない頼朝の乳母に寒河尼という人がいまして、下野国の小山政光の継室(後妻)となって結城朝光を産んでおり、やはり母子ともども頼朝に寵愛されました。いずれもこの時代に乳母や乳母子、乳母兄弟が重んじられた例としてしばしば紹介される人たちです。
>史点
本日の地方紙に載ってた記事なんですが、シリア難民受け入れに消極的だった欧州諸国がウクライナ難民は積極的に受け入れていることに、シリア難民は「偽善と二重基準」と複雑な思いで受け止めているとのこと。EUも「二重基準」批判への釈明に追われてるようで、欧米メディアにも中東蔑視と見受けられる例がちらほらあるようです。日本政府もウクライナ難民受け入れを表明したりしてるようですが、日本はもともと難民受け入れが他国に比べて異常なほど少なかったんじゃなかったっけ? スリランカのウィシュマさんが名古屋入管で殺された件ともどう整合性をとるつもりなのかな?
>最近DVDで観た歴史関連映画
『王朝の陰謀 闇の四天王と黄金のドラゴン』
ツイ・ハーク監督の「狄仁傑(ディー・レンチェ)」シリーズ第3作。1作目はアンディ・ラウ主演の『王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件』(#9444)、2作目が若手のマーク・チャオに主演が交代した前日譚『ライズ・オブ・シードラゴン 謎の鉄の爪』(#10458)、3作目も引き続きマーク・チャオが主演で2作目の続きです。ちなみに最近他にも『王朝の陰謀~』という邦題の映画がわんさかDVD化されてますが、それらは全部ただの便乗映画。昔のキョンシー映画とか『ゴッド・ギャンブラーなんちゃら』みたいなもんですな。『ライズ~』があまりにもCGまみれの妖怪映画だったんでもういいかなと思って3作目は観てなかったんですが、『ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』のマー・スーチュンが出てると知り、他に彼女の出演映画で観れるのがなかったんで(ドラマはあるが長い)観てみることにしました。なかなか面白かったです。さすがに前作の全編CG過ぎとファンタジー過ぎを反省したか、CGやファンタジーのバランスを上手く取って面白いファンタジー・アクション時代劇に仕立ててありました。今回は幻術が主な題材で、その辺はチェン・カイコー監督の『空海 美しき王妃の謎』と同じなんですが、映画としての出来はこっちのほうがずっといい。やはり特撮娯楽映画ではツイ・ハークのほうに一日の長がありますな。史実とはほとんど関係ない時代劇ですが、1作目が則天武后(武則天)の時代だったのに対して、前日譚となった2作目はまだ武后が高宗の皇后時代で、3作目も引き続き同様。この3作目では武后が野心を露にし始めるんですが、3作一貫して武后役のカリーナ・ラウはまさに怪演といった感じ。また本作では玄奘三蔵法師の弟子にあたるというユエンツォー大師という人が出てくるんですが、この人は史実の円測という人みたい。最後はこの人がお助けキャラとして出てきて、若干の西遊記オマージュもありつつ、仏教最強!悟り最強!みたいな展開になっちゃいます(笑)。マー・スーチュンも魅力的な女剣客を演じていて良かった。さらなる続編もありのような引きで終わってましたが、今のところは作られていません。
#11187
バラージ 2022/03/09 22:01
またまた、義時小説
あー、地元ローカル局で日曜夜に放送してた台湾ドラマ『時をかける愛』がついに最終回を迎えてしまった。すっげえ面白くて、日曜夜の楽しみだったのに……。
嶋津義忠の小説『北条義時 「武士の世」を創った男』(PHP文庫)を読了。
うーん、感想を一言で言うと「古い」。いや、これ20年前に書かれた小説なのか?と思うほど古い歴史観で書かれてて、ちょっとびっくり。ここ20年ほどの研究の進展がまるで取り入れられていません。例えば頼朝の征夷大将軍就任については、2004年に櫻井陽子氏が新史料を発見したことにより研究の大転換が起こりましたが(#10696)、この小説では頼朝が「征夷大将軍」就任を望み、それを拒否する後白河法皇の死後ようやく就任することができたという、今となってはカビが生えたような旧説のままの展開が長文で描かれてます。他にも頼家は絵に描いたような暗君だし、比企能員の乱や実朝暗殺も曲筆のある『吾妻鏡』そのまんま(実朝暗殺については黒幕説を取ってないという意味では1周回って新しいっちゃ新しいけど)。
小説には珍しくあとがきに参考文献が書いてあるんですが、6冊あるうち1冊が『吾妻鏡』、3冊が1960年代という古めの本で、新しめなのは2冊だけ。これじゃ今となっては古くさい時代遅れの歴史描写になっちゃうのも無理はない。まぁ大河便乗で依頼されて書いただけで、この時代に今まで深い興味があったわけではなかったんでしょうね。実朝とともに暗殺された源仲章を一族の青年武将とか義時の側近の一人としていたり(実朝の一族なのか北条の一族なのか書き方からは不明ですが、どちらにしろ誤り。仲章は清和源氏ではなく宇多源氏で、義時の側近でもありません)、公暁の死で頼朝直系の血は絶えたとしている(公暁の弟の禅暁や妹の竹御所、頼朝の子の貞暁がまだ生きてる)など、一部に単純なリサーチミスもあります。
主人公の義時は基本的に優れた人物で大きな仕事を成し遂げるという典型的な英雄物語なんですが、小説としてはやや平板な展開で今一つ面白味がないんですよね。その辺もいかにもPHP文庫と言うべきか(ってPHP文庫の小説をほとんど読んだことないけど、なんとなくイメージ的に)。ただ参考文献に坂井孝一氏の『承久の乱』(中公新書)があるためか、承久の乱のあたりの記述になると突然生き生きとした描写になって、ちょっと面白くなっちゃいます(笑)。しかし参考文献の記述をそのまま取り込んじゃったのか、幕府軍の残虐描写もそのまま描かれちゃってて、主人公側の描き方とはちょっと思えない。義時本人は戦場にいないとはいえ、まるで幕府側が悪役みたいで、描写としては面白いっちゃ面白いけど、小説的一貫性としてはちょっとどうよと。
義時の妻子については、高橋直樹氏の小説よりも記述が多く、3人の妻(阿波局・姫の前・伊賀の方)に息子の泰時・朝時・重時・政村、さらに孫の時氏(泰時の子)も登場。とはいえ1人1人の出番は少なく、比較的出番が多いのは2番目の妻・姫の前と長男泰時ぐらいでした。義時の家臣(得宗被官)としては藤馬という人物が出てくるんですが、『愚管抄』で頼家の嫡子一幡を殺害したと記されてる人物のようです。
そして奥山景布子の小説『義時 運命の輪』(集英社文庫)も読了。
こちらはなかなか面白かった。女性作家らしい細やかな描写が印象的でした。特に北条政子や阿波局(政子や義時の妹のほう)の描写が秀逸というか、女性特有のイヤらしさや論理的一貫性の乏しい感情的なところなんかが非常に上手く描かれてて、こういうところは女性でなきゃ描けないかもなぁなどと思ったりもしました。女性作家だけに女性に対する妙な理想がないというか、悪女ではない女性も出てはくるんですが総じて影が薄いんですよねえ(男としてはそこがちょっと物足りなくはあった)。
逆に男たちは主人公の義時を除けば存在感に乏しく、せいぜい弟の時房がちょっと出番が多いくらい。親父の時政ですら出番が少ない。梶原、比企、畠山、和田といった北条に滅ぼされた御家人たちも出番はごくわずかで、後鳥羽上皇も直接的には登場せず、頼家や実朝も影が薄い。そんな中、唯一大きな存在感を放っていたのが頼朝です。嶋津氏や高橋直樹氏の小説にも共通する部分なんですが、頼朝が偉大で英雄的な人物として描かれ、その頼朝を畏敬する義時が彼から学び、その影を追いかけて、やがてその後継者となっていくというのが3作共通した基本プロットとなっています。共通してるといえば、ストーリーがほぼ頼朝挙兵か石橋山から始まり、4分の1ぐらいまでで頼朝が死ぬというのもいっしょ。これは義時を主人公にして描くとなると、どうしてもそういう形にならざるを得ないってことなんでしょうね。高橋氏はそれ以前から“頼朝という巨人の影に翻弄される人々”を描いてきたんですが、今回読んだお二人もおそらくは依頼されて義時の小説を描くために調べた結果、結局そういう形にするのが物語として1番収まりがいいと感じたんでしょう。
また、男性作家2人の小説に比べて合戦シーンの描写が非常に少なく、あったとしてもかなりあっさりとしているのも特徴。おそらく奥山氏は逆に女性だけにそういう描写は苦手なんでしょう。クライマックスの承久の乱も前線の泰時からの報告という形で描写され、戦場そのもののシーンは全くありません。ただ、その副産物と言いますか、承久の乱の描写になると主人公義時の出番が全然無くなってしまった嶋津&高橋氏の小説に対して、あくまで鎌倉にいる義時が主人公という描写に終始できていたのは成功かも。それから大河ドラマなんかではやたらと絆や仲の良さが強調される主人公の兄弟姉妹間の関係性が、奥山氏や高橋氏の小説では希薄だったり打算的だったりするのも印象的で、意外とこっちのほうが実際に近いのかもと思わされました。ただ、タイトルにある「運命の輪」が作品中ではあまり有効に機能してなかったような。なんかいまいちピンと来ませんでしたね。
それから、こちらの小説でもやはり最後に参考文献が多数挙げられてます。こちらは史料類の他は新しいものが多く(そもそも参考文献数が10数冊とかなり多い)、そのため小説も最新の知見に基づいたものになってるんですが、それ以前の問題としてそもそも歴史小説で参考文献が巻末に列記されたりするのって一般的なのかな? 僕はあんまり見たことないんですが……。いやまあ列記されてても別にいいっちゃいいんですけど。
そして義時の妻子ももちろん登場。妻妾では嶋津氏の小説ともども劇的エピソードのある前室・姫の前がヒロイン格で、継室・伊賀の方は義時死後の伊賀氏の変からの逆算なのか、どちらの小説でも記述が少なく、またあまり良く描かれていません(この辺、個人的にはちょっと異論があるんだけど、それはまた後の機会に)。泰時母の阿波局はいずれも姫の前を娶るあたりで回想的にほんのわずか登場するだけですが、最初の妻として設定されています(史実的には妾説もあり、僕はそちらを支持している)。息子の泰時・朝時・重時・有時・実義と孫の時氏も登場しますが、出番がある程度あるのは泰時・朝時だけで、重時以下は名前が出てくる程度。実義がなぜか承久の乱に出陣してましたが、史実では年齢的に出陣はしていないんじゃないかな? 息子ではなぜか実義の同母兄政村だけが登場していませんが、これも伊賀氏の変からの逆算か? 家臣はやはり藤馬と金窪行親が登場しています。
>この人たちも出さなきゃでしょ
義時の息子たちのことを書いてて、そういや『13人』の出演者発表で、義時の子供たちや家臣などの主人公を取り巻く人々の発表がまだまだあんまりされてないなということに気付きました。義経の妻がどうしたこうしたなんて言ってたけど、よくよく考えたら義経なんて前半で消えちゃう人で。そう考えるとまだ出演者発表は半分までも行っていないのか? ちなみに『草燃える』はあくまで頼朝・政子夫妻が主人公な上にオリキャラが出張ったりしてたんで、案外物語後半での実在の義時周辺人物は出てきてません。以前書いた義時の継室・伊賀の方なんかもその1人で。
てなわけで、今後発表される可能性がありそうな義時の子供たちその他を考えてみよう。まず先日発表されたばかりの姫の前(役名は比奈)の息子で義時の次男の朝時。当初の嫡子は彼だったという説(阿波局は妾で泰時は庶長子だったとする説)が近年では有力です。『草燃える』にも出てたようですが、総集編を観たけど記憶になし。次にその同母弟の重時。こちらはおじいちゃんになった時代の大河『北条時宗』に出てきました。そしてその同母姉妹の竹殿。こちらは映像作品未登場。また四男は伊佐朝政の娘を母とする有時ですが、非常に影の薄い人物です。母親の伊佐朝政の娘も妾で有時は庶子。そもそも伊佐朝政もどんな人物かほとんどわかりません。もちろん映像作品未登場。五男となるのが継室・伊賀の方の息子の政村。やはりおじいちゃんになった時代の『北条時宗』に出てきました。そしてその同母弟の実義。これまた未登場。さらに伊賀の方の父の伊賀朝光、その息子で伊賀の方の兄弟の伊賀光季と光宗。光季は『草燃える』に出てきたようですが、伊賀の方が出てこなかったため義時の義兄弟ではなく、ただの御家人という扱いだったと思われます。さらには泰時の息子の時氏と時実。そしてそして時氏の息子で4代執権となった経時も義時の死んだ年に誕生しています(ただし経時の生まれた月日は不明のため、生まれたのが義時の生前か死後かは不明)。もちろんいずれも映像作品未登場ですが、経時は『北条時宗』の原作である高橋克彦の『時宗』冒頭で、彼の臨終と遺言シーンから始まってました。
>今週のミニ鎌倉史
今週『13人』で描かれた富士川の戦いでは、ドラマには出てきませんでしたが、平家側の武将として上総広常の庶兄常茂(常義)が討死しています。常茂は広常との家督争いの末に平家に与しており、そのような経緯からも広常が平家側に付くなどという可能性はあり得ず、挙兵前から頼朝と通じていたというのが現在の定説のようです。
またドラマに出てきてないといえば大庭景親の兄の景義もそう。景義は保元の乱で源為朝の強弓で右膝を射られ、それ以来歩行困難となったため弟の景親に家督を譲ったとのこと。頼朝が挙兵すると弟とは袂を分かち頼朝の元に駆けつけ、以後頼朝陣営の古老として幕府初期まで重んじられたそうです。
#11186
バラージ 2022/03/04 23:13
歴史は繰り返すのか
1980年モスクワ夏季五輪、1984年ロサンゼルス夏季五輪の悲劇再び、いや三たびか……(正確にはその前の1976年夏季モントリオール五輪もあるから四たびか)。
そしてNHKドラマ『しもべえ』、また休みかよお。オリンピックが終わって再開したと思ったら、わずか1週でまたパラリンピックってえ。いやまあ、しょうがないけどさあ。『鎌倉殿』は休まないくせにい。
そんな『鎌倉殿』、またまた出演者発表。親父の河越重頼が出ないからどうなることかと思ってた義経の妻ですが、出ることが確定して一安心。演じるのは映画『ドライブ・マイ・カー』でヒロインだった三浦透子さんとのことで、静御前役の石橋静河さんともども、またずいぶんシブイとこ突いてくるなあ。いや、いい意味で。九条兼実に公暁に運慶も発表されましたが、頼朝の愛妾・大進局はどうなるんだろ? まぁ亀の前の描かれ方見てると、出てきてもあんなじゃなあとも思ってしまうんだけれども。亀の前は他の作品にも出てきたことあるからまだマシだけど、大進局が映像作品初登場であんな史実ガン無視の貶められた描かれ方したら本当にがっかりだし、それくらいなら出てこないほうがいいのかなあとも思ったりなんかして。
とか考えてたら頼朝と景時がコロナ感染……。
>観てない歴史映像作品 アメリカ合衆国史編③
今回は戦後から1960年代くらいまで。
『タッカー』(原題:Tucker: The Man and His Dream)……1988年の米国映画。1940年代後半に米国の巨大自動車産業界に挑んだプレストン・トマス・タッカーの実話を映画化したヒューマンドラマ作品。監督はフランシス・フォード・コッポラ。主演はジェフ・ブリッジス。
『虚偽 シチズン・コーン』(原題:Citizen Cohn)……1992年の米国のTVムービー。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。赤狩り(マッカーシズム)で有名な政治家マッカーシーの法律顧問として悪名の高い弁護士ロイ・コーンの半生を描いた伝記ドラマ。主演はジェームズ・ウッズ。
『バード』(原題:Bird)……1988年の米国映画。“バード”の愛称で知られるジャズ・ミュージシャンで、「モダン・ジャズ(ビバップ)」の創始者でもあるアルトサックス奏者チャーリー・パーカーの伝記映画。監督はクリント・イーストウッド。主演はフォレスト・ウィテカー。
『クイズ・ショウ』(原題:Quiz Show)……1994年の米国映画。1956年に全米で社会現象にまでなっていたテレビのクイズ番組『21』で起きた八百長事件の映画化。監督はロバート・レッドフォード。主演はレイフ・ファインズとジョン・タトゥーロ。これは劇場公開時に観ました。まあまあってところかな。ポスターに「70年代、ウォーターゲート。60年代、ケネディ暗殺。そして50年代、全米を震撼させた史上最大のTVスキャンダル」というキャッチコピーが載ってたんだけど、さすがにクイズ番組のヤラセを大統領の事件と同列に扱うのは無理あるだろと思いましたね。
『ブリッジ・オブ・スパイ』(原題:Bridge of Spies)……2015年の米国映画。1957年にソ連のスパイとして逮捕されたルドルフ・アベルの国選弁護人となったジェームズ・ドノヴァンが、アベルの死刑を回避することに成功し、さらに5年後の1962年にU-2撃墜事件でソ連の捕虜となったフランシス・ゲイリー・パワーズとアベルの捕虜交換の交渉役を果たすまでを描く。監督はスティーブン・スピルバーグ。主演はトム・ハンクス。
『ノーマ・ジーンとマリリン』(原題:Norma Jean and Marilyn)……1996年の米国のTVムービー。日本では劇場公開され、ビデオ&LD化もされましたがDVD化はされていません。マリリン・モンローの生涯を、本名のノーマ・ジーンとスター女優のマリリン・モンローの2つの人格に分け、2人1役で描いた伝記作品。主演はモンロー役がミラ・ソルヴィーノ、ノーマ・ジーン役がアシュレイ・ジャッド。
『マリリン 7日間の恋』(原題:My Week with Marilyn)……2011年のイギリス・米国合作映画。1956年、ローレンス・オリビエが監督・主演を務める映画『王子と踊子』の撮影のためイギリスへと渡りロンドンを訪れたマリリン・モンローと第3助監督のコリン・クラークの淡いロマンスを、クラークの回想録をもとに映画化。主演はミシェル・ウィリアムズ、共演にケネス・ブラナーなど。
『ジャック・ルビー』(原題:Ruby)……1992年の米国映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。ただし『ルビー』の邦題でAmazonprimeで配信がされているようです。ケネディ大統領暗殺犯として逮捕されたオズワルドを護送中に射殺したジャック・ルビーを主人公とした作品で、主演はダニー・アイエロ。
『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』(原題:Parkland)……2013年の米国映画。ケネディ大統領暗殺の瞬間を偶然8ミリフィルムカメラに収めていたエイブラハム・ザプルーダー、ケネディが搬送されたパークランド病院の担当医、シークレットサービス、FBI捜査官、容疑者とされたオズワルドの家族など、ケネディ暗殺に立ち会った多数の人々を描いた群像劇。
『ジャッキー ファーストレディ最後の使命』(原題:Jackie)……2016年の米国・チリ・フランス合作映画。ケネディ大統領暗殺直後から葬儀までの4日間のジャクリーン夫人を描いた作品。主演はナタリー・ポートマン。
『ボビー』(原題:Bobby)……2006年の米国映画。ロバート・ケネディが暗殺された夜に、事件現場のアンバサダーホテルに居合わせた22人の男女(架空人物)の人間模様を超豪華キャストで描いた群像劇。監督はエミリオ・エステベス。
『パンサー』(原題:Panther)……1995年の米国映画。ビデオ邦題は『パンサー 黒豹の銃弾』(DVD邦題は劇場公開時と同じ)。1960年代後半に結成された急進的黒人政治組織ブラックパンサー党を、架空人物と実在人物で交えて描いた社会派ドラマ映画。監督はマリオ・ヴァン・ピーブルズ。脚本はその父親のメルヴィン・ヴァン・ピーブルズ。
『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(原題:Judas and the Black Messiah)……2021年の米国映画。ブラックパンサー党の指導者フレッド・ハンプトンが1969年に暗殺されるまでを描いた実録サスペンスドラマ映画。
『JIMI:栄光への軌跡』(原題:Jimi: All Is by My Side)……2013年のイギリス映画。伝説的ギタリストのジミ・ヘンドリックスがスターダムに駆けあがるまでの1966~67年の2年間を描いた伝記映画。
『ウッドストック 愛と平和と音楽の三日間』(原題:Woodstock)……1970年の米国のドキュメンタリー映画。1969年8月15日から3日間に渡ってニューヨーク郊外のベセルで開催された野外ロックフェス「ウッドストック・フェスティバル」を記録したドキュメンタリーで、2009年にはパフォーマンス映像を追加した「ディレクターズ・カット版」がBlu-rayとDVDでリリースされています。
『ウッドストックがやってくる!』(原題:Taking Woodstock)……2009年の米国映画。ウッドストック・フェスティバル開催までの裏舞台を、誘致に奔走した青年エリオット・タイバーの回想録を原作として描いた青春映画。監督はアン・リー。これも劇場公開時に観ました。やはりまあまあってところかな。あくまで裏舞台を描いた映画で、演奏シーンの記録映像や再現映像は一切ないんでちょっと拍子抜けでした。
『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』(原題:Summer of Soul (...Or, When the Revolution Could Not Be Televised))……2021年の米国のドキュメンタリー映画。ウッドストックが開催された1969年に行われたもう1つの歴史的な音楽フェスティバル、黒人音楽による「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」のドキュメンタリー。その記録映像は約50年間も地下室に埋もれたままになっていたとのこと。ちょっと興味があったんだけど、去年の劇場公開時になんとなく観逃してしまい、WOWOW放送時もやっぱりなんとなく観逃してしまっています。
>未見映画
『バジラーオとマスターニー』……2015年のインド映画。18世紀のインド中西部のマラーター王国の宰相兼将軍バジラーオとブンデルカンド王の娘マスターニーの恋愛&戦争史劇。
#11185
バラージ 2022/03/01 00:48
今週の鎌倉史 先代からの因縁です
『報道特集』を観てたら、金平茂紀氏がウクライナ入りして現地取材。『筑紫哲也NEWS23』の「世紀末モスクワを行く」とかよく観てたなぁと思ったら、その映像もちょっとだけ出てきました。
今回は『鎌倉殿』ではやっぱり大幅にカットされちゃった秩父氏と三浦氏の話。尺の関係か登場人物を多くしすぎないためか、当初は平家側に付いて頼朝と敵対し、後に降伏した武蔵国の秩父氏の人物が畠山重忠1人しか登場していません。この時代の秩父氏には他にも重忠と同格かそれ以上の武士として河越重頼や江戸重長などがいました。そして実は秩父氏と三浦氏には先代以前からの因縁があるんですよね。今回はそれをご紹介。
話は頼朝の親父義朝の時代にさかのぼります。父為義に冷遇されて嫡子にもなれなかった義朝は、起死回生を狙って地方で勢力を広げようと京から坂東に下向。相模国の三浦義明の娘を娶り、庶長子義平を設けます。さらに平常澄(上総広常の父)や安西朝景(景益の父)と結び、大庭景義(景親の兄)や千葉常重(常胤の父)も服属させて、着々と坂東に勢力を広げていきます。やがて義朝は鳥羽上皇の目に留まり帰京して、低迷する父為義を尻目に出世していくんですが、それと入れ替わるように坂東に下向してきたのが次弟で為義嫡男の義賢。京で不祥事を繰り返して失脚し、義朝同様に坂東で活路を見いだそうとしたわけです。義賢は武蔵国の秩父重隆(河越重頼の祖父)の娘婿となるんですが、この秩父氏がまた伊豆国の伊東氏(工藤氏)並みに内部抗争の激しい一族でして。
秩父一族内の確執は、河越重頼や畠山重忠の曾祖父の秩父重綱が、長子の重弘ではなく次子の重隆に家督と武蔵国留守所総検校職を継がせたことに始まります。これに重弘の子の畠山重能が不満を抱き、重隆が擁する義賢と対立していた義朝・義平父子に接近。やがて義平は重能や三浦義明の支援のもと義賢と重隆を襲撃し、2人を討ち取る大蔵合戦を起こすことになります(1155年。大河ドラマ『平清盛』でもちょこっと描かれてましたね)。重隆の子の葛貫能隆とその子(重隆の孫)の河越重頼は河越に逃れ、こうして重能は秩父氏の本拠・大蔵を占拠しますが、武蔵国留守所総検校職は継承できなかったようで、重頼が同職を継承しています。強引な手段で本拠を奪った重能に一族の支持が集まらなかったのかもしれません。
翌年、保元の乱が勃発。重頼は大蔵合戦後は義朝に服属したようで、義朝方として参戦。しかし重能はなぜか参戦しておらず、平治の乱の頃には平清盛方に転じています(乱自体に参加したかは不明)。重頼も平治の乱には参加しておらず、義朝が討たれた後はやはり平家方に転じたようですが、頼朝の乳母の比企尼とその夫の比企掃部允の娘婿になっており、夫妻の指示で伊豆に配流されてきた頼朝に奉仕しています。そのようなことが可能だったのは乱後も平家が権力を握ったわけではなく、また朝廷も平家もそこまで義朝の遺児たちに厳しい措置を取らなかったためみたい。一方、重能は在京して平家に奉仕したようで、頼朝が挙兵した時にも京で平家に仕えており、そのため17歳の嫡子重忠が兵を率いて頼朝と戦うことになったらしい。
一方、三浦氏は義明の嫡子の義澄が平治の乱で義朝方に参戦するも、義朝敗死後は相模国に逃げ帰ります。その後はやはり平家に仕えるものの、相模国に進出してきた大庭景親に徐々に圧迫されるようになり、そのため三浦氏は頼朝の挙兵計画に早くから参加してたようです。
ドラマでは、畠山軍と三浦軍の和平が成立しかけたところで和田義盛が畠山軍に攻撃をかけ、合戦になだれ込んでいましたが、史実で攻撃をかけたのは義盛の弟の和田義茂。義茂は遅れて到着したため、和平が成立しかけているのを知らなかったらしい。結局、重忠は当時の秩父氏の惣領重頼や一族の江戸重長(重綱の子の江戸重継の子。重頼や重忠の一世代上)に援軍を要請し、秩父軍は三浦氏の衣笠城に攻め寄せ、重頼は祖父の仇義明を討ち果たすのでした。
ところが安房国に逃れた頼朝が上総広常や千葉常胤を従えて、大軍を擁して房総半島を1周し武蔵国に迫ると重頼・重忠・重長は頼朝に帰順。実は秩父氏内部には前記の通り先代からの確執があり、一枚岩ではなかったことを頼朝は知っていて、味方した秩父氏の庶流の葛西清重を使って、なかなか帰順しない重長に揺さぶりをかけたりもしたようです。
頼朝はこの時点ではかなりの融和策を取り、敵対した武士たちも多くは許して帰順を受け入れたんですが、秩父氏に義明を討たれた三浦氏はもちろん遺恨を持っていました。頼朝は「勢力の有る者を取り立てなければ目的は成し遂げられない。憤懣を残してはならない」と三浦一族に言い聞かせ、三浦氏も遺恨は抱かないと納得したそうですが、そう簡単に水に流せるはずもなく、頼朝死後に三浦氏の遺恨は爆発することになります。
なお重忠は父重能が平家都落ちまで平家に親しく仕えてたこともあって、帰順当初の立場はやや微妙だったようですが、重頼はそれ以前の経緯から頼朝に寵愛され、妻(比企尼の次女)は頼朝の嫡男頼家の乳母として最初に乳を含ませる名誉に浴し、娘は義経の妻になるなど、頼朝から重用されました。
あ、そういえば『FLASH』にも呉座氏が編集部のインタビューに答えた『鎌倉殿の13人』の史実と違うところが記事として載ってたなあ。
あと、菅田義経のキャラ、『火の鳥 乱世編』に影響受けてるような……。
>五輪マスコット
オリンピックのマスコットキャラクターとしては久々の大当たりとなったビンドゥンドゥン。ミライトワと人気の差を分けたものは何か?というAERA dot.の記事ではマーケティングの面から分析されてましたが、人気なんてマーケティングだけでどうこうできるもんではなかろう。マスコット自体の魅力とかそういうものがまず根本にあるわけで(笑)。しかし過去の五輪マスコットってさっぱり覚えてないなあ。1980年夏季モスクワのミーシャと、1984年夏季ロサンゼルスのイーグルサムぐらいしか思い出せません。
>観てない歴史映像作品 インド史編の追記
『マニカルニカ 剣をとった王妃』……2019年のインドのテレビドラマ。チャンネル銀河で3月から放送予定。インド大反乱(いわゆるセポイの乱)の指導者の1人である女性ラクシュミー・バーイーの生涯を描いたドラマ。
#11184
バラージ 2022/02/25 23:04
海の向こうで戦争が始まる
いやぁ、始まっちゃいましたねえ……。子供の頃のソ連のアフガニスタン侵攻を思い出しました。それが終わったと思ったらソ連が崩壊したんですが、ロシアになってもチェチェンにクリミア、そしてウクライナと相変わらず。もっとも米国もその間にグレナダ、パナマ、イラク、アフガン、またイラクと、他国のこと言えないんだよな。その合間にニカラグアやエルサルバドルにもちょっかい出して。そう考えると世界は1980年代からあまり変わっていないのか……。
>観てない歴史映像作品 アメリカ合衆国史番外編 ギャング&犯罪映画
またまた歴史映画に入れるか微妙な、有名な実在のギャングや犯罪者が登場する映像作品をまとめて紹介。栄耀映画徒然草に掲載されてる『バグジー』と、以前紹介した『アンタッチャブル』(いずれも観てる)は除きます。
アル・カポネ
『暗黒の大統領カポネ』(原題:Al Capone)……1959年の米国映画。主演はロッド・スタイガー。
『どてっ腹に穴をあけろ』(原題:The Scarface Mob)……1959年の米国のTVムービー。エリオット・ネスの自伝を基にした下記ドラマ『アンタッチャブル』のパイロット版で、日本では劇場公開され、『ザ・アンタッチャブル どてっ腹に穴をあけろ』の邦題でビデオ化もされましたがDVD化はされていません。
『アンタッチャブル』(原題:The Untouchables)……1959~1963年の米国のテレビドラマ。大ヒットし長寿シリーズとなりました。上記の通り一応ネスの自伝を基にした作品ですがほとんどがフィクションで、ネスをFBI特別捜査班のリーダーに設定し、カポネばかりでなく実際には関係のないシュルツやルチアーノとも戦うらしい。こちらはDVD化されています。
『マシンガン・シティ』(原題:The St. Valentine's Day Massacre)……1967年の米国映画。DVD邦題は『聖バレンタインの虐殺 マシンガン・シティ』。監督はロジャー・コーマン。
『ビッグ・ボス』(原題:Capone)……1975年の米国映画。こちらも製作はロジャー・コーマンで、主演はベン・ギャザラ。
『新アンタッチャブル カポネの逆襲』(原題:Capone Behind Bars)……1989年の米国のTVムービー。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。ネスにより逮捕されたカポネの後日談で、これまたほとんどフィクション。主演はキース・キャラダイン。
『カポネ』(原題:Capone)……2020年の米国映画。静かに余生を送るカポネの最晩年を描いた作品で、主演はトム・ハーディ。共演にマット・ディロン、カイル・マクラクランなど。
ダッチ・シュルツ
『ギャングの肖像』(原題:Portrait of a Mobster)……1961年の米国映画。日本でも劇場公開はされましたがソフト化はされていません。主演はヴィック・モロー。
『コットンクラブ』(原題:The Cotton Club)……1985年の米国映画。禁酒法下の1920年代に栄えた黒人街ハーレムにあるナイトスポット“コットンクラブ”を舞台に、組織の中でのし上がっていく若いギャングと、タップ・ダンサーの兄弟を描いた作品。シュルツなど実在の人物や、実在人物をモデルとした人物も多数登場するとのこと。監督はフランシス・フォード・コッポラ。出演はリチャード・ギア、ダイアン・レイン、グレゴリー・ハインズなど。
『ビリー・バスゲイト』(原題:Billy Bathgate)……1991年の米国映画。シュルツに憧れてギャングになる架空の青年を主人公とした作品で、主演はローレン・ディーン。シュルツ役はダスティン・ホフマンで、他にニコール・キッドマンも出演。
ラッキー・ルチアーノ
『バラキ』(原題:Valachi)……1972年のイタリア・米国合作映画。“コーザ・ノストラ”と呼ばれるマフィアの実態を初めて告白したジョゼフ・バラキによる証言を基にした著書の映画化。ルチアーノら実在のギャングが多数登場するとのこと。監督はテレンス・ヤング。主人公のバラキ役はチャールズ・ブロンソン。
『コーザ・ノストラ』(原題:Lucky Luciano)……1973年のイタリア・フランス・米国合作映画。第二次大戦後にイタリアに強制送還されたルチアーノの後半生をドキュメンタリー・タッチで描いた社会派作品。監督はフランチェスコ・ロージ。主演はジャン・マリア・ヴォロンテ。
『モブスターズ 青春の群像』(原題:Mobsters)……1991年の米国映画。ルチアーノ、マイヤー・ランスキー、バグジー・シーゲル、フランク・コステロの4人のギャングの若き日を描いた青春アクションギャング映画。ルチアーノ役はクリスチャン・スレイター、ランスキー役はパトリック・デンプシー、シーゲル役はリチャード・グリエコ、コステロ役はコスタス・マンディロア。
マイヤー・ランスキー
『ランスキー アメリカが最も恐れた男』(原題:Lansky)……1999年の米国映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。Amazonprimeで配信はされているようです。主演はリチャード・ドレイファス。
『ギャング・オブ・アメリカ』(原題:Lansky)……2021年の米国映画。日本では現在公開中。主演はハーヴェイ・カイテル。
ジョン・デリンジャー
『犯罪王ディリンジャー』(原題:Dillinger) ……1945年の米国映画。DVD邦題は『犯罪王デリンジャー』。
『ギャング王デリンジャー』(原題:Young Dillinger)……1965年の米国映画。日本でも劇場公開はされましたがソフト化はされていません。
『デリンジャー』(原題:Dillinger)……1973年の米国映画。ジョン・ミリアス監督のデビュー作で、主演はウォーレン・オーツ。
『パブリック・エネミーズ』(原題:Public Enemies)……2009年の米国映画。監督はマイケル・マン。主演はジョニー・デップ。
ボニーとクライド
『鉛の弾丸(たま)をぶちかませ』(原題:The Bonnie Parker Story)……1958年の米国映画。日本でも劇場公開はされましたがソフト化はされていません。ボニーを主人公にしている一方でなぜかクライドは仮名という映画で、事実どうこうよりも娯楽性を優先したB級アクションのようです。
『俺たちに明日はない』(原題:Bonnie and Clyde)……1967年の米国映画。言うまでもなくアメリカン・ニューシネマの傑作。監督はアーサー・ペン。主演はウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイ。
『ザ・テキサス・レンジャーズ』(原題:The Highwaymen)……2019年の米国映画。Netflixオリジナル作品で配信のみ。ボニーとクライドを追うテキサスレンジャーの2人を描いた作品で、主演はケビン・コスナーとウッディ・ハレルソン。
>観てない歴史映像作品の情報追記
・アフリカ史
『愛と野望のナイル』……DVD化はされていませんが、Amazonprime、Rakten TV、ビデオマーケットで動画配信はされているようです。
・イギリス史
『ロビン・フッド』(1991年のイギリス映画)……DVD化はされていませんが、Amazonprime、U-NEXT、Rakten TVで動画配信はされているようです。
・アメリカ合衆国史編
『タイ・カップ』……DVD化はされていませんが、Amazonprime、U-NEXTで動画配信はされているようです。Amazonprimeでの邦題は『Cobb』。
#11183
2022/02/24 21:18
弔旗でもあげたい気分で
それにしても「弔旗」なんて言葉、日ごろ入力した覚えもないのに、なんでそんな変換いたんだろ?
さてとうとうロシアのウクライナ侵攻が現実になってしまいました。これがまた、古典的な手法の絵にかいたような繰り返しといいますか…2022年なんてSFみたいな年代になってもこういうことはそうそう進歩しません。
奇しくも、その侵攻が開始された小ころ、NHKBSの昼映画は「戦争と平和」(米伊合作版)でありました。主演の一人ヘンリー=フォンダはこの映画に出演したことを後悔し、出演作と認めなかったとかなんとか。
ここまで様子見してた「史点」も書き始めざるをえませんな。
>南北朝ゲーム
そうなんですよねぇ、PCエンジンCD-ROM版「太平記」の新田義貞リプレイ記事がずっとほったらかしなんですよね。いざやるとなると大変で。
ボードゲーム版についてなんとかリプレイが駆けなくはないんですが実行するのはいつになるやら。むかし「シミュレイター」誌上に載ったリプレイ記事が爆笑ものでおすすめなんですけどね。
実はもう一本、パソコンから各機種に移植されている戦国SLG「斬」シリーズに「太平記シナリオ」があるんです。とりあえず所有しているPCエンジンCD-ROM版にあることは確認しています。
#11182
バラージ 2022/02/23 15:55
弔旗放置状態
すいません。あまりにも絶妙な誤字で、一瞬普通に受け入れて読み流してしまいました(笑)。
ゲームコーナーはそもそも数が少ないんで更新ペースがスローなのも仕方がないと思います。あとはボードシミュレーションゲーム『太平記』だけですが、これ1人じゃプレイできないですもんね。概要と武将データは掲載可能でしょうけど。あとPCエンジンCD-ROM『太平記』の「リプレイ(その2)」が空欄になってますね。タイアップは時代的なこともあるかもしれません。ただタイミングが悪いというか、その前年の大河ドラマが西郷と大久保、前々年が春日局、翌年以降も琉球、奥州藤原氏、応仁の乱、吉宗とゲームに向かない題材ばっかりだったんですよね。ゲーム向きだったのは92年の信長と95年の秀吉ぐらいで、信長はもともと『信長の野望』がありましたし、秀吉の時に『太閤立志伝』が出たんだったかな? その翌年が元就ですが、その次が慶喜に忠臣蔵とまたゲームに不向きで、これじゃなあと思った記憶があるんですよ。なぜかというとちょうど僕はその頃、光栄の歴史&ゲーム投稿誌を愛読してまして(#10838参照)、そこに集う歴史ファン(&歴史ゲームファン)に大河がほとんど影響を与えてなかったんですよねえ。それに比べれば学研の「歴史群像シリーズ」はまだ大河と連動したマイナーな題材も扱ってたかな。
阿野廉子って阿野全成の子孫でしたっけ? 武家と公家だから、てっきりたまたま同じ名字なだけかと思ってたんですが、全成の娘が阿野荘の一部を相続して公家の藤原公佐に嫁ぎ、その子孫が代々阿野氏を名乗って、廉子もその子孫の1人なんですね。とはいえ廉子が後醍醐の寵姫になるまでは鎌倉期を通じて木っ端武者ならぬ木っ端公家で、公佐もその妻も何一つその事績が明らかでないため、源平的にはほとんど話題にもならないどころか、僕もそもそも存在すら知りませんでした。だいたい全成からして義経や範頼に比べて全く活躍してない人だからなあ。しかも男系ではなく女系の子孫ですし。ま、男系の武家の阿野氏については個人的にちょっと気になるところもあるんですが、それはまたそのあたりの話になってからということで。子供時代の今若としては義経ものに出てくることの多い全成ですが、大人になってからの阿野全成として出てくるのは『草燃える』以来というくらいの珍しさ。どうやらこの後、弟の乙若が大人になった義円も出てくるとのことで、こちらは大人になった義円としては映像作品初登場のようです。
>観てない歴史映像作品 アメリカ合衆国史編②
今回は20世紀に入ってから第二次世界大戦まで。
『夕陽に向って走れ』(原題:Tell Them Willie Boy Is Here)……1969年の米国映画。これまたアメリカン・ニューシネマの1本です。これは昔ビデオで観たんですが、てっきりフィクションの話だと思ってたら、1909年にインディアン居留区で起こった実話が基になっているとのこと。結婚に反対する恋人の父親を誤って射殺し逃亡する先住民の青年とその恋人、そして彼らを追う白人の保安官を通して、先住民差別という米国の病根を描いた作品です。監督はエイブラハム・ポロンスキー。出演はロバート・ブレイク、キャサリン・ロス、ロバート・レッドフォード。
『ウィルソン』(原題:Wilson)……1944年の米国映画。日本では劇場公開やソフト化はされていませんが、テレビ放送はされたようです。ウィルソン大統領の伝記映画で、国際連盟を設立するまでが描かれてるとのこと。第二次大戦中に作られてるけど、当時すでに戦後を見越してのことだったんだろうか?
『エイトメン・アウト』(原題:Eight Men Out)……1988年の米国映画。1919年の大リーグのワールド・シリーズでシカゴ・ホワイト・ソックスが起こした八百長事件「ブラック・ソックス事件」を題材とした作品。出演はチャーリー・シーン、D・B・スウィーニー、ジョン・キューザック。
『翼よ!あれが巴里の灯だ』(原題:The Spirit of St.Louis)……1957年の米国映画。1927年のリンドバーグによる史上初の大西洋横断無着陸単独飛行を、彼の自伝を基に映画化。監督はビリー・ワイルダー。主演はジェームズ・スチュアート。
『ミセス・パーカー ジャズエイジの華』(原題:Mrs. Parker and the Vicious Circle)……1994年の米国映画。ビデオ&LD化はされましたがDVD化はされていません。1920年代(ジャズ・エイジ)のニューヨークの文学サロン「アルゴルキン・ホテルの円卓」をめぐる人間模様を、詩人・作家・映画脚本家のドロシー・パーカーを中心に群像劇的に描いた作品で、監督はアラン・ルドルフ。主演はジェニファー・ジェイソン・リーで、共演がキャンベル・スコット、マシュー・ブロデリック、ニック・カサヴェテス、リリ・テイラー、ピーター・ギャラガー、ジェニファー・ビールス、アンドリュー・マッカーシー、スティーヴン・ボールドウィン、マーサ・プリンプトン、グウィネス・パルトロウ、キース・キャラダインといったそうそうたる面々。
『夢を生きた男 ザ・ベーブ』(原題:The Babe)……1992年の米国映画。あまりにも有名な野球選手ベーブ・ルースの伝記映画。監督はアーサー・ヒラー。主演はジョン・グッドマン。
『タイ・カップ』(原題:Cobb)……1995年の米国映画。ビデオ&LD化はされましたがDVD化はされていません。こちらも有名な野球選手タイ・カップ(タイ・カッブ)の伝記映画ですが、現役時代ではなく引退後の晩年に自伝をゴーストライターのアル・スタンプが執筆した際の話……なんだけど、映画の原作にもなったその自伝がスタンプによる捏造だらけだったことが後に判明したらしく、ちょっと問題のある作品のようですね。主演はトミー・リー・ジョーンズ。これは観ましたが、純粋に映画として観れば出来はまあまあ。
『打撃王』(原題:The Pride of the Yankees)……1942年の米国映画。これまた有名な野球選手で、若くして難病で世を去ったルー・ゲーリックの伝記映画。原作はポール・ギャリコ、監督はサム・ウッド、主演はゲイリー・クーパー。ゲーリックの同僚だったベーブ・ルースらが本人役で出演しているとのこと。
『グレン・ミラー物語』(原題:The Glenn Miller Story)……1954年の米国映画。スウィング・ジャズのトロンボーン奏者でビッグバンド楽団のバンドリーダーでもあったグレン・ミラーが、第二次大戦中に航空事故死するまでを描いた伝記映画。監督はアンソニー・マン。主演はジェームズ・スチュアート。DVDにはなぜか「・」が抜けた『グレンミラー物語』という邦題になっているものもあり。
『ベニイ・グッドマン物語』(原題:The Benny Goodman Story)……1955年の米国映画。スウィング・ジャズのクラリネット奏者でビッグバンド楽団のバンドリーダーでもあったベニー・グッドマンの前半生を描いた伝記映画。1938年にカーネギー・ホールで最初のジャズ・コンサートを開くまでが描かれ、演奏はグッドマン本人が行っているとのこと。
『自動車王フォード 愛と哀しみのアメリカン・ドリーム』(原題:Ford: The Man and the Machine)……1987年の米国のTVムービー。自動車王ヘンリー・フォードの伝記作品で、ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。かなり昔につぶれたレンタル店で2巻組VHSを見かけた記憶あり。
『ハワード・ヒューズ物語』(原題:The Amazing Howard Hughes)……1977年の米国のTVムービー。億万長者の実業家ハワード・ヒューズの半生を描いた伝記もので、主演はトミー・リー・ジョーンズ。
『アビエイター』(原題:The Aviator)……2004年の米国映画。これまたハワード・ヒューズの半生を描いた伝記映画で、監督はマーティン・スコセッシ。主演はレオナルド・ディカプリオ。ヒューズは映画界にも関わったため、浮き名を流したキャサリン・ヘップバーンやエヴァ・ガードナー、ジーン・ハーロウなどの実在女優も登場人物として出てきます。
『J・エドガー』(原題:J. Edgar)……2011年の米国映画。FBIの初代長官であるジョン・エドガー・フーヴァーの伝記映画で、監督はクリント・イーストウッド。主演はレオナルド・ディカプリオ。正直言ってディカプリオはフーヴァーもヒューズもミスキャストのような……。
『ルーズベルト物語』(原題:Sunrise at Campobello)……1960年の米国映画。日本では劇場公開はされましたが、ソフト化はされていません。後に大統領になるルーズベルトが小児麻痺(ポリオ)を患った1921年から1924年までをルーズベルト夫妻の夫婦愛を交えて描いた伝記映画。
『ルーズベルト 大統領の保養地』(原題:Warm Springs)……2005年の米国のTVムービー。日本ではテレビ放送はされましたが、ソフト化はされていません。上の映画とほとんど同じ話で、主演はケネス・ブラナー。
『私が愛した大統領』(原題:Hyde Park on Hudson)……2012年のイギリス映画。1930年代後半、第二次大戦の足音が迫る時代を舞台に、ルーズベルト大統領と従妹のデイジーの秘められた恋と、ハイドパークにあるルーズベルト邸での英国王ジョージ6世との会談を描いた作品。主演はビル・マーレイ。
『将軍アイク』(原題:Ike: The War Years)……1978年の米国のTVミニシリーズ。ビデオ化はされましたが、DVD化はされていません。かなり昔につぶれたレンタル店で2巻組VHSを見かけた記憶あり。連合軍最高司令官となったアイゼンハワーによる北アフリカ戦線からノルマンディー上陸作戦、そしてドイツへの進撃までを、運転手兼愛人と言われるケイ・サマーズビーとの私生活も交えて描いた作品で、主演はロバート・デュヴァル。んー、これはどっちかっていうと第二次世界大戦の欧州戦線なのかな?
『ノルマンディー 将軍アイゼンハワーの決断』(原題:Ike: Countdown to D-Day)……2004年の米国のTVムービー。ノルマンディー上陸作戦の決断を迫られた連合軍最高司令官アイゼンハワーの苦悩を描いた作品で、主演はトム・セレック。
『アメリカンパスタイム 俺たちの星条旗』(原題:American Pastime)……2007年の米国映画。第二次大戦中の実話を基に、ユタ州にあるトパーズ強制収容所に収監された日系アメリカ人家族が野球を通して苦難に立ち向かい乗り越えていく姿を描いた作品。監督はデズモンド・ナカノ。中村雅俊やジュディ・オングも出演してるようです。
#11181
徹夜城(気がついたら16年もほったらかしたコーナーを更新した管理人) 2022/02/21 23:18
「ゲームで南北朝!」を更新しました。
もう昨日のことになりますが、「ゲームで南北朝!」コーナーにメガドライブ版「NHK大河ドラマ太平記」の紹介、武将データ、リプレイ記事(2コース)をアップしました。
更新時に日付を見たらなんと同コーナー16年ぶりの更新で管理人自らビックリ。そういう弔旗放置状態のコーナーが多すぎますな、このサイトは。それでいて更新計画だけはあれやこれやちゃんとあったりするわけですが。
メガドライブ版「太平記」、詳しくは紹介ページを見ていただくとして、大河ドラマとタイアップしてゲームが発売(それも複数)というのは、意外にもこのときくらいしかないんじゃないかと(光栄が「毛利元就」とか「平家物語」便乗をした例はあるにはあるけど)。逆に言えば南北朝のゲームなんてそういうキッカケでもないと作られないってことで…実際その後もまったくないんですよね。
バラージさんが大河便乗関連歴史本のことをお書きでしたが、「太平記」放送時も南北朝本が山のように出て、僕も結構買ってしまったものです。思い返せば「初の南北朝」ということで気合の入った本も結構ありました。特に学研が二冊大型本で出したのは須吾刀。「歴史群像」でそれ以前に一度だけ南北朝やったんですけど、それを上回る気合の入りようでした。
南北朝といえば、昨日の「鎌倉殿」に頼朝の異母弟として全成が登場しました。いきなり思いきりボケをかましてくれましたが(笑)、僕などは「ああ、この人の子孫に阿野廉子」が出てくるわけね」とそっちにつなげて面白がってました。
#11180
バラージ 2022/02/21 22:49
今週の鎌倉ツッコミ 頼朝の女の好みがよーわからん
ガッキー、小池栄子、江口のりこって何の共通点も一貫性も感じられん(笑)。
今週もツッコミどころだらけだった『鎌倉殿』。上総広常の動向についての最新の研究(広常は頼朝の挙兵当初から味方しており、日和見していたとかあわよくば討とうと考えていたというのは『吾妻鏡』の虚構)については、現代ビジネスの公式サイトでの呉座勇一氏の連載で解説されてます(来週からは隔週連載とのことで残念)。なお呉座氏は触れてませんが、千葉常胤のほうが参陣を迷ってた可能性があるという説もあり、『吾妻鏡』編纂の頃には上総氏が族滅していたのに対して、生き残ってた千葉氏が先祖の功績を主張したとする見方もあるとか(生き残ったもん勝ちかよ!)。でもまあ広常のエピソードは『吾妻鏡』にある有名な話なんで100歩譲って良しとしましょう(三谷氏は「原作は『吾妻鏡』」とか言ってたみたいだし)。義時にいたってはドラマオリジナルの展開で、実際には全くの無関係(遠い甲斐国にいたという説さえある)というのも、史実通りだと主人公が活躍どころか登場すらしないんで仕方がない(ついでに言うと、呉座氏も触れてませんが、梶原景時が広常のもとに訪れてたのも全くのフィクション。まあ後の展開を知ってる者とすれば伏線になるんだろうとわかるけど)。それよりも個人的になんだかなあと思っちゃったのは亀の前の設定でして。
配役が江口のりこさんと聞いた時点で、ええ?と思ったんですが、やはり当て書きも当て書き、完全に江口さんに寄せたキャラクター設定で、史実もへったくれもないほとんどオリジナルの人物になっちゃってます。実際の亀の前は漁村の漁師の妻などという低い身分でもなければ、そもそも人妻ですらありません。良橋太郎入道という人の娘で、この良橋太郎入道がどういう人かは不明ですが、名が残ってるんだから少なくともそれなりの身分の人ではあるでしょう。また亀の前は安房の人でもなく、頼朝の伊豆流人時代から仕えていたとのことで、1182年の春頃から密かに鎌倉に呼び寄せられて寵愛されたんだとか。美しい容貌で性格が柔和なところが頼朝に気に入られたとのことで、ドラマはもう何から何まで史実と正反対だよ!(笑) どうも今後の展開も性格に柔和なところなんててんでないキャラクター設定のようで、史実どうこうを横に措くとしてもそもそも大泉頼朝は江口亀の前のいったいどこに惚れたんだ?と首をひねるばかりです。
>歴史マンガ
中央公論新社の『マンガ日本の古典』シリーズのワイド版というのを本屋で発見。文庫版を持ってるにも関わらず、ついつい『吾妻鏡』を手に取ってパラパラ見てみたら、中巻の「1192年、頼朝征夷大将軍就任」あたりのコマにある「イイクニつくろう鎌倉幕府」という記述に「「なぜイイハコつくろう」ではないかの説明は巻末の付注に」という文庫版にはついてなかった注記があり、その付注で歴史研究の進展による変化について説明されてました(正確には先に巻末の付注を見て、それから本編を見た)。ワイド版は2021年初版のようですが、もう「イイハコ」はそれほど浸透してるのかと思うと同時に、こういうのってなかなか珍しいような。そのうち石ノ森章太郎の『マンガ日本の歴史』も付注だらけにしなきゃならなくなるかも。
>最近読んだ本
金平茂紀『筑紫哲也 『NEWS23』とその時代』(講談社)を読了。去年の年末に買った本ですが、とても面白かったですね。『筑紫哲也 NEWS23』のスタッフの1人として番組にもしばしば出演していた金平茂紀氏(現『報道特集』キャスター)が、筑紫哲也氏と『NEWS23』の時代を回顧した本で、読みながら僕も90~00年代という時代と、あの番組の様々な記憶がイキイキとよみがえってきましたねえ。改めて大きな番組だったと思います。
それからまだ読んでませんが、本多勝一『アムンセンとスコット』(朝日文庫)も購入。昔から存在は知ってましたが未読でして、初の文庫化ってことで購入しました。とはいえ他に優先して読みたい本が結構あるんで読むのはかなり先になりそう。
>追悼・西郷輝彦
西郷さんというと個人的にはTBS版遠山の金さん『江戸を斬る』の主人公・遠山金四郎。僕が物心ついた頃から祖母が観てたので、僕もいっしょに観てました。大河ドラマ『独眼竜政宗』の片倉小十郎役も印象深いですね。ご冥福をお祈りします。
#11179
バラージ 2022/02/18 11:33
またまた、懐かしマンガの思ひ出
髙木美帆選手、平野歩夢選手、金メダルおめでとう!
時房のことを書いた途端に『鎌倉殿』の新たな配役発表ということで、他にも姫の前、実朝、泰時、後鳥羽などの配役が発表。姫の前役は堀田真由ちゃんということで楽しみではあります。まだ発表されてない配役で『草燃える』にも出てこなかった人物だと、姫の前の次に義時の妻となった伊賀の方、頼朝の妾で貞暁を産んだ大進局、越後城氏の女武者・坂額といったあたり。伊賀の方はまず出てくるだろうけど、大進局と坂額はどうだろうなあ? 特に坂額は出ない可能性も高そうなんだよな。
しかし『鎌倉殿』、今のところ『草燃える』とほとんど変わらないペースのようですが、このペースでだいじょうぶなんだろうか? すでに読み終えた高橋直樹氏のも含めて義時主人公小説を3冊買ったんですが、いずれも4分の1ぐらいかそれ以下で頼朝が死んでるんですよね。『草燃える』は5分の3くらいまで頼朝は生きてたんですが、あれは頼朝と政子が主人公だからあのペースだったんであって、義時が主人公ならもうちょっとペースを早めて、早めに義時の活躍するターンにしたほうがいいのでは?
>テレビマガジン、小学○年生、コロコロコミックの思ひ出
またまた懐かしマンガ誌の話。今回は小学生かあるいはそれ以前に読んでた講談社の『テレビマガジン』、小学生の時に読んでた『小学一年生』~『小学六年生』シリーズと、同じ小学館の『月刊コロコロコミック』です。
まずは『テレビマガジン』。正確にはマンガ誌ではなく、テレビの特撮ヒーロー番組の月刊誌でした。僕が読んでたのは小学生以前、幼稚園の頃からだったかもしれません。幼稚園でふと思い出したんですが、同じ講談社の『たのしい幼稚園』てのも読んでたかも。なんとなくうっすらとタイトルを思い出しました。調べると小学館の『幼稚園』というのもあり、僕は『たのしい幼稚園』のほうを読んでたんじゃないかなあ? もう雑誌名以外何も覚えてないけれども。
話を戻して『テレビマガジン』は前記の通り特撮ヒーロー誌ですが、マンガも掲載されてました。別冊付録としてコミックス大の小冊子マンガも付いてたりしましたね。載ってたマンガで覚えてるのは、まず玩具シリーズ『ミクロマン』のマンガ作品。1976年から連載されたようで、あのミニチュア的世界観が好きでした。
また真樹村正の『ジャンジャジャ~ン ボスボロットだい』(1975~1976年)も懐かしい。永井豪の『マジンガーZ』に登場したロボット「ボスボロット」を主人公としたギャグ漫画で、本来は人間の「ボス」が操縦する大型ロボットだったボスボロットを人間大の自律した意識を持つロボットにしています。今になって考えると低年齢児が読むにはちょっと、いやかなりエッチな描写のあるマンガで、その辺は師匠の永井豪ゆずり。俺はそんなマンガを幼稚園の頃から読んでたんだな(笑)。後にボスボロットが殿様風に改造され、『おなり~っ ボロッ殿だい』(1976~1977年)とタイトルも変更しています。
考えてみれば僕のこの雑誌の記憶は永井豪成分がかなり強く、一部で有名な永井の変身ヒーロー漫画『へんちんポコイダー』(笑・1976~1977年)も強烈な印象。これもタイトルからもわかる通り、ちょっとエッチなところのあるマンガでした。今思うとパロディ要素もあり、ソフトな『けっこう仮面』『まぼろしパンティ』といった感じ。また他にも、低年齢が読むには異様に難解で人気がなかったのか途中打ち切りっぽく終わった伝奇もの『ガルラ』(1976~1977年)とか、その反省から娯楽ヒーロー漫画に路線変更したけどやっぱり途中で終わった『電送人バルバー』(1977年)など、永井豪作品ばかりやたら覚えています。こんなマイナー漫画、覚えてる人も少ないだろうけど。その頃、テレビアニメでも『マジンガーZ』『グレートマジンガー』『グレンダイザー』『デビルマン』『キューティーハニー』と永井豪原作アニメをいっぱい観てたんだよなあ。
また永井豪のアシスタント出身で絵柄のそっくりな石川賢が画で、やはり永井のダイナミックプロの高円寺博が原作のヒーロー漫画『快傑シャッフル』(1976年)も面白くて印象に残ってますね。石川は永井の作風のエッチなところだけは似てなかったかな。
次に『小学○年生』シリーズ。一年生から六年生までずっと読んでました。最初に『小学一年生』をなぜ読み始めたのかの記憶は当然ながらありませんが、親が買い与えたのかもしれないし、僕がねだったのかもしれません。僕は小学○年生は当然『小学○年生』を読むものだとなぜか思っていたような記憶がぼんやりとあり、律儀に六年生まで読んでましたね。しかし何が載ってたかの記憶はさっぱりなく、覚えてるのは『ドラえもん』や、それと並ぶ長寿シリーズだった室山まゆみの少女ギャグ漫画『あさりちゃん』、以前書いた『リトル巨人くん』くらい。改めて調べると基本的には一応学習雑誌で、これまたマンガばかり載ってたわけではないらしい。そう言われればマンガ以外の記事もいっぱい載ってたような記憶が。今は『小学一年生』以外は全て休廃刊になったらしいんですが、中学進学以降は全く忘れ去ってたというか、気にも留めてなかったんで全然気づきませんでした。
最後に『コロコロコミック』。読み始めたのは多分小学校中学年あたりだったんじゃないかなあ。きっかけは多分本屋で立ち読みして、面白かったんで買いたくなったとかだったような。『ドラえもん』をメインフラッグにしたマンガ誌で表紙にもでかでかとドラえもんが描かれていたので、当時好きだった『ドラえもん』を読みたかったんだろうと思います。ちょうど『ドラえもん』の劇場アニメ原作の長編シリーズ『のび太の恐竜』(1980年1月~3月)がまもなく始まる頃で、これもすげえハマったなあ。1番面白かったのは第2作『のび太の宇宙開拓史』(1980年9月~81年2月)で、第6作『のび太の宇宙小戦争(リトル・スターウォーズ)』(1984年8月~85年1月)までは読んだ記憶があるんで、中学3年生まではなんだかんだで読んでたようですが、その頃はもう買わずに立ち読みに戻ってたかな? 映画のほうは『宇宙開拓史』までしか観ていません。他にも『お化けのQ太郎』『パーマン』『怪物くん』『忍者ハットリくん』と藤子不二雄づくしのマンガ誌で、一時はほんと夢中になりました。藤子不二雄の2人をモデルにした『藤子不二雄物語 ハムサラダくん』というマンガ(作者は吉田忠という人)も連載されてましたね。
他にも、こちらにも掲載していた『あさりちゃん』『リトル巨人くん』をはじめ、思い出深いマンガが多い。『リトル~』の内山まもるの『ザ・ウルトラマン』も面白かったなあ。主に宇宙を舞台としたオリジナルストーリーで、ウルトラマンたちとオリジナルの悪者宇宙人の戦いを描いたマンガでした。地球人はほぼ出てこず、ウルトラマンたちはずっとウルトラマンの姿のままでお互いに会話したりしてたのが印象的。また改めて調べると、かたおか徹治という人の『ウルトラ兄弟物語』シリーズってのもあったらしく、このあたり結構記憶がごちゃごちゃしています。
山根あおおにの『名たんていカゲマン』は少年探偵カゲマンとその影“シャドーマン”を主人公に、大泥棒・怪人19面相などとの争いを描いたナンセンス・ギャグ漫画。また前回書いた、すがやみつるの『ゲームセンターあらし』は「炎のコマ」の他にも「月面宙返り(ムーンサルト)」「エレクトリックサンダー」「真空ハリケーン撃ち」「スーパーノヴァ」など、なんだかよくわからない必殺技でゲーム対決に勝っちゃうんですが(笑)、でもそういうのが面白かったんですよね。それから、のむらしんぼの『とどろけ!一番』は受験マンガというこれまた斬新な題材でしたが、明らかに『あらし』を意識した必殺技マンガで、「答案二枚返し」という必殺技は結構有名。終盤、かなり無理のある展開で唐突かつ強引にボクシング漫画に路線変更して、読んでるほうはずっこけた記憶も今となっては懐かしいヒトコマです。
>ドキュメンタリー映画『主戦場』訴訟
訴えた右派側が敗訴ってことで、DVD化や配信や放送に向けて1歩前進なのかな。まあ右派側は控訴するらしいから、まだまだなのかもしんないけど。
#11178
バラージ 2022/02/15 11:13
訂正
『鎌倉殿の13人』での牧の方の名前を「るい」と書いてしまいましたが、正しくは「りく」でした。すいません。
#11177
バラージ 2022/02/15 00:12
今週の鎌倉史 お前、どこ中よ?
現代ビジネスの公式サイトで呉座勇一氏が『鎌倉殿の13人』の史実的背景について解説する連載をしています。いろいろあった呉座氏ですが、やはり解説としてはこなれた文章力もあって面白い。この時代は専門外ではあるものの、各研究者の説を併記して解説していくので非常に読みやすいんですよね。今週の放送内容のうち、『吾妻鏡』における北条時政・義時親子の逃走経路の不自然さや、梶原景時が頼朝らを見逃したというエピソードの虚構性については、そちらでくわしく触れられてるので、そっちにおまかせ(笑)。
僕は前回ちょっと説明不足かなと考えて、宗時戦死後に時政の嫡子とされたという説の出ている3人について軽く説明。
・北条政範……時政の四男。牧の方(ドラマでは「るい」)の息子。後に時政の嫡子になったのは確実。ただし宗時戦死時点ではまだ生まれていない。
・北条朝時……義時の次男で嫡男。時政の屋敷の名越邸を継承している。ただし名越邸継承の時期は不明で、やはり宗時戦死時点ではまだ生まれていない。
・北条時房……時政の三男。宗時・政子・義時らの異母弟。宗時戦死時に上記2人は生まれておらず、義時の他には時房しか候補がいないため。
時房は宗時戦死時点で5才くらいですが、『鎌倉殿~』に出てきてましたっけ? 今後出てくるのは確実ですが、現時点ではまだはっきりとは出てきていないような……。そこでふと思ったんですが、三谷幸喜はもしかしたら子役を描くのが苦手かもしくは嫌いなんではないかと。1話時点では実は義時は13歳というツッコミをしましたが、他にも三浦義村、畠山重忠、仁田忠常なんかも同じくらいの歳なんですよね。最初から本役にしたのも、子役を描きたくなかったからなんではないかと。出てきた子役も出番は僅少でほとんど印象に残っていませんし、思い出してみれば『真田丸』も最初から本役で、他の子役の印象もあまりないような……。
てなわけで主な登場人物を調べてみよう。実際よほどの有名人以外は漠然としか意識してなくてよくわかってないんですよね。改めて調べて年齢順に並べてみる(生年不明は除外)と、源頼政(1104年)、平清盛(1118年)、藤原秀衡(1122年?)、三浦義澄(1127年)、後白河法皇(1127年)、武田信義(1128年)、北条時政(1138年)、三善康信(1140年)、梶原景時(1140年?)、源行家(1141~1143年)、源頼朝(1147年)、平宗盛(1147年)、和田義盛(1147年)、工藤祐経(1147年か1154年)、以仁王(1151年)、木曽義仲(1154年)、北条政子(1157年)、源義経(1159年)、北条義時(1163年)、畠山重忠(1164年)、仁田忠常(1167年)、三浦義村(1168年?)といった感じ。
またまたくそ生意気な口をきいていた三浦”山本耕史”義村、実際には中坊かよ! それどころか第1話の段階では小学生のガキじゃねえか! ガキが粋がって生意気な口きいてたってことか?(笑) 義村の史料上の初見は1182年、従軍が確認できるのは1184年に源範頼軍に属して、都落ちした平家追悼に父義澄と共に出陣した時なんだそうです。また今回が初登場となった八嶋智人演じる武田信義。実際には北条時政の10歳年上で後白河法皇の一つ年下なだけだったんすね。マイナーな人だから年齢まで意識したことなかった。
そして台詞説明だけで登場しなかった義村のおじいちゃんの三浦義明。『吾妻鏡』によると衣笠城合戦の時点で89歳だった義明は「我は源氏累代の家人として、老齢にしてその再興に立ち会うことができた。これ程の喜びはない。武衛(頼朝)のために我が老命を奉げて子孫の勲功を募らん。皆は彼の生死を確かめよ」と言って、1人城に残り討死したとされてるんですが、『延慶本 平家物語』によると享年は79または84歳で、三浦氏の軍勢が城を脱出する際に老齢の義明が足手まといになって置き去りにされたんだとか。姥捨て山みたいなひでえ話ですが、そっちの方がリアルな気がする。『吾妻鏡』は三浦氏や頼朝、幕府や御家人をいかにも美化してる感じですもんね。
#11176
バラージ 2022/02/14 00:58
今週の鎌倉史 比企能員はその時どこにいたか?
今回の『鎌倉殿~』の、時政が義時に兄の後を継げみたいなことを言うシーン、覚えてないけど『草燃える』にもそういうシーンがあったみたいなんだよな。まあ、ドラマ的にはそういう展開じゃないと主人公として都合が悪いんだろうけど、近年の研究では当時の義時は分家である江間家の初代で、宗時死後も嫡子とはならなかった可能性が高いとされているようです。死んだ宗時の代わりの嫡子として時政が誰を想定していたかは見解が分かれており、後に時政の嫡子となった牧の方の息子の政範、義時の次子で一時嫡子とされた朝時、義時の異母弟(政憲よりは兄)の時房などの説があります。
今年の大河ドラマが源平合戦~鎌倉初期の時代ということで、その時代を対象とした関連本や歴史本の出版が続出してるのは、この時代のファンとしてうれしい限り(オリンピックや渋沢栄一ではこうはいかないもんな・笑)。時間的にも経済的にも全部はチェックしきれないんですが、歴史学本はいくつかを立ち読みしたり、先日は比較的安価なものを何冊かまとめて購入しました。それらを読んでいて改めて思ったんですが、この時代は各研究者によって様々な事件の見解がずいぶん違うのが面白い。残存史料的な制約もあって推測に頼らざるを得ない部分も多く、研究者によって史料解釈やそこから得られる推論にもかなりの違いがあり、そういうところがシャーロック・ホームズ的に面白かったりします。そのため僕のような素人探偵にも時には口を差し挟むことができちゃったりするのも楽しいところだったりするんですよね。
そんなわけで素人探偵的に、あまり歴史学者の人が触れていないネタを1つ。といっても素人なんで当然ながら全ての研究に目を通しているわけではないから、実はもうとっくに言及してる研究者の方がいたり、あるいは触れるまでもない当たり前のことと認識されてるのかもしれませんが、まあ素人的楽しみとして推理?してみたいと思います。
比企能員は頼朝の乳母の1人である比企尼の甥でその猶子(養子)となり、頼朝の有力な家臣の1人として重用された人物で、頼朝の嫡子である後の2代将軍頼家の乳母父となり、さらに娘の若狭局は頼家の妾となって嫡子の一幡を生んでいます。そんな重要な人物なんですが、実は頼朝が挙兵した時にどこで何をしていたかが全くわかりません。能員の『吾妻鏡』における初見は頼朝挙兵から2年後の1182年8月、能員の館で北条政子が頼家を出産したという記事においてです。それまでどこで何をしていたかは不明で、頼朝挙兵という一大事にどうしたかも全くわからないんですよね。
もともと比企氏は『吾妻鏡』が編纂された頃にはすでに族滅しており、なおかつ北条氏には都合が悪い人たちなので積極的に故事を集めようともしなかったことが推測され、さらにはもともと坂東の出身ではなかったとも思われるため、読み本系『平家物語』や『曽我物語』といった東国で成立した物語類にもあまり記述がありません。そのためよくわからないところの多い一族で、比企掃部允は以前も書いた通り実名もわかっていませんし、系譜も藤原秀郷の子孫とされますがくわしくは不明です。妻の比企尼にいたっては両親も系譜も不明。能員も「比企尼の甥」とされており、掃部允の甥とはされていないことから系譜不明の人物ですが、『愚管抄』では阿波国(現在の徳島県)出身とされているようです。
で、本題の頼朝挙兵時に能員はどこで何をしていたかという問題。まず掃部允はすでに死去しており、『吾妻鏡』治承4年8月9日(1180年8月31日)条に掃部允と北条時政が頼朝を大将に立てて謀反を企てていると平家が警戒しているが、掃部允はそれ以前にすでに死んでいたとの記述があります。おそらく死んだのはそれほどさかのぼらない時期で、だから平家も把握してなかったんでしょう。比企氏の所領は武蔵国(埼玉県)比企郡ですが、頼朝挙兵時の武蔵国は当初平家側に付いた秩父一族(河越氏、畠山氏、江戸氏など)が支配しており、頼朝側に付いた相模国(神奈川県)の三浦氏と合戦に及んでいます。そのような状況下で比企氏の名前が全く出てこないのはなぜか?
まず年齢的に若すぎた、つまり元服前だった可能性。能員の生年は不明ですが、頼家の妾となった娘の若狭局が産んだ一幡の生年が1198年。若狭局が18歳で産んだとすれば、若狭局の生年はまさに頼朝が挙兵した1180年ですから、この時点で能員が元服前だったとは考えにくい。そこでこれは推測ですが、この時点では能員はまだ比企尼の猶子になっておらず、従って頼朝にもまだ仕えていなかったばかりか武蔵国にそもそもいなかったのではないでしょうか。おそらくはまだ四国の阿波国にいたはずで、だから頼朝挙兵時には全く名前が出てこないのだと思われます。比企尼の猶子となって頼朝に仕えたのは頼朝が坂東を制圧した後で、掃部允の死後しばらくは比企尼が所領を継いでおり、しばらくしてから阿波国にいた能員を呼び寄せて猶子とし、比企家を継がせて頼朝に推挙したのだと考えれば辻褄が合います。では、もう1人の比企氏の男子で、掃部允と尼の息子ともされる比企藤内朝宗はどうしていたのか? 朝宗の経歴を見ると、朝廷に仕えて内舎人となり比企藤内と称されたとあり、やはり頼朝挙兵時にはおそらく京にいたと思われます。そのため比企氏には頼朝挙兵時に兵を動かせる男子がおらず、頼朝に味方することが(あるいは逆に平家側に付くことも)できなかったのではないか? もし比企氏の男子が本領にいて軍勢を動かせる状態なら、比企尼との関係から頼朝に味方する可能性が高く、秩父一族は敵と見なして攻め寄せているはず。しかし当主が比企尼なら、秩父一族のトップ河越重頼はその娘婿なので、女性で兵を動かせない姑のもとに兵を向ける可能性はなかったと思われます。
ま、こんなこともうすでに誰かが指摘してることかもしれないし、あるいは史料不足の比企氏では一文献にすることが難しいためたまたま言及されてないだけかもしれませんが、まあこんなことをいろいろ想像できるのがこの時代の面白いところです。
>未見映画
『バトル・オブ・ザ・リバー 金剛川決戦』……2020年の中国映画。朝鮮戦争で中国軍と米軍が激突した金剛川の戦いを描いた戦争映画。
#11175
バラージ 2022/02/09 22:18
炎のコマ!
結局、好みの問題だとは思いますが、三谷幸喜の作風や方向性が僕には合わないんでしょう(逆に『利まつ』なんかは僕は徹夜城さんとは逆にわりと面白く観てました)。今回の『鎌倉殿~』も北条義時が主人公と聞いた時点で何やら不安を感じたし、蓋を開けてみても予想通りで、特に頼朝の描写が全然ダメ。大泉さんは嫌いではないし、むしろ好きなんですが、あの頼朝の人物描写はないなあ。役者より脚本・演出の問題です。それと大泉さんは下手な役者ではないんだけど、ある種の「型」があるタイプのため、悪い言い方をすれば誰を演じても基本同じような人になります。まあ、それも突き詰めれば渥美清のような名優になるんですが(そういや山田洋次監督が大泉のことを“現代の渥美清”みたいな褒め方をしてたと聞いたような)、やはり役を選ぶ俳優という気がしますね。まあ頼朝は半分から3分の2ぐらいで退場するでしょうが、俺の忍耐がそれまで持つかなあ? 視聴率は今のところそれほど悪くないようですが、個人的にはそこは別にどうでも構いません。
『新解釈・三國志』は僕もこないだの地上波放送で初めて多少観ましたが、こちらは僕もまあまあでした。もともと福田雄一監督はわりと好きでして。三谷幸喜と何が違うんだと聞かれると困るんだけど、まあ感覚的なものとでも言いますか。『新解釈~』もいつもの福田監督の作風で、一言で言うと「三国志の映画化」ではなく「三国志をネタにしたパロディギャグ漫画の映画化」みたいな作風。出世作の深夜ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズがドラクエのパロディギャグドラマだったのと同じようなもんです。僕は実はドラクエをやったことがないんですが、そういう人間でも面白いドラマでしたね。ただ、福田監督の映画『女子ーズ』(こちらは戦隊ヒーローの女性版パロディ)を映画館で観た時に、この作風は映画館で2時間ぶっ続けで観るのはしんどいなと感じたんで、やっぱり福田監督はテレビ向きの人なんでしょう。30分~1時間のCMありきで飯食いながら観るのがちょうどいい作風とでも言いますか。『新解釈~』もCMのある地上波テレビでお茶の間で観たからまあまあ楽しめたんであって、映画館で観てたらちょっときつかっただろうなという気がします。
話を戻すと、僕は片山まさゆきの三国志パロディギャグ漫画『SWEET三国志』が好きだったこともあり、この手のパロディには比較的寛容です(ガンダムもののパロディギャグ漫画なんかもたまに読む)。こういうパロディものって基本的に全ての登場人物をおちょくるというかコケにするんで、そういう平等性がいいんですよね。また三国志は超メジャーな題材だから本場中国も含めて数多くの作品があるんで、中にはそういう変化球作品もあってOKってところもあります。日本史でも戦国や幕末ならいいんですが(思い入れの大きさの差というのもあるにせよ)、源平というか頼朝が映像の題材になることなんてそんなに多くありませんからねえ。
ちなみに僕の友人は『新解釈~』も『鎌倉殿~』もどっちもダメだったらしく、『新解釈~』は早送りで観て30分で終えたとのことで、『鎌倉殿~』も脱落寸前のようです。
>懐かしコンピューターゲーム
『ポン』は小学生の時に隣に住んでた2つくらい年下の友達が買って、いっしょに遊んだ記憶がありますね。小学校低学年か中学年くらいだったかなあ? その後、自分は『ブロック崩し』を買ってもらい、遊びまくりました。『スペースインベーダー』は父親に喫茶店に連れてかれた時に卓上ゲームでやりました。ゲームセンターに連れてってもらった時にもやったような気がするし、おもちゃ屋の2階にも単色の海賊版みたいの?があったような。あの頃は大ブームでしたね。『ギャラクシアン』もゲームセンターでやったな。インベーダーとギャラクシアンの間には『ギャラクシーウォーズ』っていうゲームもありました。
それからゲームセンターにあるアーケードゲームで結構好きだったのが、駆逐艦から爆雷を落として、下から機雷を浮かべてくる潜水艦を撃沈するゲーム(要するにインベーダーの上下逆バージョン)。調べるともとは米国のゲームのようで『ディプスチャージ』というゲームのようですが、タイトルはライセンス生産してた日本の各会社で違い、他にも複数あったようです。またコンピューターゲームではないんですが、アーケードゲームで逆に潜水艦の潜望鏡を覗きながら魚雷を射ってミニチュアの軍艦を撃沈するゲームも好きでした。これまた調べると『サブマリン』というゲームだったみたい。エレメカ式アーケードゲームというものだそうです。
それとこの頃のコンピューターゲーム関連作といえば、忘れちゃいけないのが『月刊コロコロコミック』で連載してたコンピューターゲーム漫画『ゲームセンターあらし』。主人公の小学生あらしが対戦相手とゲームで対決を繰り返す必殺技漫画で、書き込みタイトルの「炎のコマ」もあらしの必殺技の1つでした(ものすごい速さで手を動かし、空気との摩擦熱で炎が発生するという技・笑)。
>『VHSテープを巻き戻せ!』
なんか自分の書き込みを読み直したら、えらく真面目なドキュメンタリー映画のようにも読めますね。いや別に不真面目とかふざけてる映画ではないんですが、出てくる人たちがクリエイターもコレクターもえらくマニアックに“濃い”人たちばっかりなんで、「正統派のドキュメンタリー」って感じとはちょっと雰囲気が違うんですよね。あと映像もたぶんVHSで撮ったんじゃないかな? 明らかにそれっぽい画質でしたし、なんかそういうマニアックなこだわりをしてそうな気が。それともデジタルで撮った映像にそういう処理を施したのかな?(そういう風には見えなかったけど)
#11174
徹夜城(ゲームに関してはPS2以後は手を付けてない管理人) 2022/02/08 23:52
こっちも歴史
VHSばなしが出てたので、ついでというか連想というか、つい先日、かの「高橋名人」がハウステンボスのゲームミュージアムを案内する動画をyoutubeで見まして。そこで駆け足ではありますが、高橋名人自身の口からビデオゲームの歴史が実物と共に語られるのが実に興味深かったねすね。その動画じたい数年前のものでしたが…コンピュータゲームもなんだかんだで歴史になってきております。
最初にヒットしたビデオゲーム「ポン」は球を打ち合うだけのテーブルテニスみたいなものでしたが、それを楯にして壊す壁を作ったのが「ブロック崩し」、そのブロックが攻めてくるのが「インベーダー」、それをもっと動かすと「ギャラクシアン」…と、応用を重ねて進化してきた、と説明されるとなるほどなるほど、と。
そのミュージアムでは過去に発売された家庭用ゲーム機が全て展示されていて、それらを高橋名人が説明していったんですが、Pc-Fxについては「あまり語りたくない」とスルーされたのが、残念というかわかるというか。名人、ハドソンの社員でしたからねぇ、あれの失敗のあたりからどんどん社運が傾いていっちゃったわけで、
まぁそういうどマイナーなマシンでも掘り出しものはあるわけで、そういうものの伝道をしていきたいもんだとは思ってるんですが、いまやってるのはメガドライブのソフトだったりする(笑)。
>ろんたさん
石原シンちゃんもとうとう他界されましたな。ずいぶん以前、史点で「世界を敵に回したシンちゃん」と当時のCMネタで書いたのが懐かしい。僕もそこでだいたい同じようなことを書いていた気がします。
この人、あれで結構馬鹿でもなくって、一線を越えない程度にヤンチャして割とあっさり逃げたりするところはあるな、と思ってもいました。とりあえず元都立大院生としましては、彼の生きてるうちに名前がもとに戻ったのは幸いだったと思ってます。
>バラージさん
「鎌倉13」は僕は結構楽しんじゃってるし、濃いめの大河マニアの間ではいまのところ評判は悪くない感じです。視聴率に関しては、信長・秀吉・家康が出てこないと見ない、という層がなんだかんだで結構いるわけで、あまり上がらないかもしれませんが。
まぁ僕も義満とか南北朝ネタでドラマをやられたら、ツッコミまくって素直に楽しめないかもしれません(歴史番組なんかはいつもそうなってますが)。しかしなんといっても南北朝は「太平記」しかやってないし、あれを放送時はあれこれツッコミはしつつも、映像でこの時代が描かれるというだけで感激したもんでした。
研究面でも当時とはまたいろいろ進展がありますので、またいま南北朝をやったらまた違った描かれ方になるでしょうけど。
大泉洋の頼朝については、僕自身のイメージでは「これもあり」な感じです。この人へのアテ書きといえば、先日金曜ロードショーで放送したんでようやく見れた「新解釈・三国志」の劉備役もほぼアテ書きだったそうで。
これ、ふざけすぎと批判もあったみたいですが、僕はこれも結構ありというか、部分的には大ウケしました。さりげなく史実かもしれないネタも混ぜてるあたりは「レッドクリフ」みたいでしたし。
#11173
バラージ 2022/02/08 22:02
これぞ歴史だ!
『VHSテープを巻き戻せ!』という米国のドキュメンタリー映画を観ました。2014年に日本公開されたそうですが、WOWOWで放送されて今頃になって初めて知った次第。原題は『Rewind This!』。
VHSビデオの誕生から現在に到るまでの盛衰の歴史を、クリエイターからコレクターまで多数の人々へのインタビューというか“語り”で綴っていく映画です。β(ベータ)との規格競争の勝利から始まって、ビデオテープ販売、レンタルビデオの登場、テレビの予約録画機能、アダルトビデオの登場、ビデオ映画(Vシネマ)の登場……うわー、懐かしー、の連発で、考えてみれば僕はまさにちょうどVHS世代と言っていいでしょう。登場する饒舌なコレクター(やクリエイター)たちのマニアックな変人ぶりも楽しいし、B級スプラッタ映画が大量に作られたとか、繰り返し巻き戻して再生したところの映像に乱れた筋が入っちゃうとか、とにかく懐かしいネタが満載。日本人インタビュイーも多数登場しており、VHS史に日本が深く関わっていたことがわかります(押井守が何言ってるのか聞き取りづらく、そこにも字幕が欲しかった・笑)。まさにVHSというのは1つの文化であり、その文化史の映画だと言ってもいいでしょう。これぞ「歴史映画」です。
ただ、僕は世代ドンピシャだからすごく懐かしいし面白かったけど、もっと下の世代、今の若者たちにとってはどうなのかなあ? 僕らがテレビとかラジオの歴史を見るようなもんなんでしょうか? この映画でもVHSからDVD(やBlu-ray)へ、さらには物理的媒体を必要としない配信への流れまで押さえてあり、個別の作品を見れるor見れないという生殺与奪の権を配信する側が握る時代になった(購入しても配信が打ち切られると無くなってしまう)ことを嘆き危ぶむインタビュイーが多かったですね。ま、とにかく興味深くて面白い映画でした。
>観てない歴史映像作品 アメリカ合衆国史番外編 西部劇映画
歴史映画と言っていいものか?と迷ってしまうような映画がいくつかあって、実在人物を主人公とした西部劇もその1つ。どうしようかなーと思ったんですが、あまりに数が多すぎたんで、本編からは外して番外編としてまとめて紹介しちゃいます。主人公の映画だけでなく、登場した主な映画を挙げております(なので重複して紹介してるものもあり)。
ワイルド・ビル・ヒコック(1837年~1876年)
『平原児』(1936年、セシル・B・デミル監督、ゲイリー・クーパー)
『ミズーリ大平原』(1953年、ジェリー・ホッパー監督、フォレスト・タッカー)
『カラミティ・ジェーン』(1953年、デヴィッド・バトラー監督、ハワード・キール)
『シャイアン砦』(1966年、デヴィッド・ローウェル・リッチ監督、ドン・マレー)
『ホワイト・バッファロー』(1977年、J・リー・トンプソン監督、チャールズ・ブロンソン)
『ワイルド・ビル』(1995年、ウォルター・ヒル監督、ジェフ・ブリッジス)
バッファロー・ビル(1846年~1917年)
『平原児』(1936年、セシル・B・デミル監督、ジェームズ・エリスン)
『西部の王者』(1944年、ウィリアム・A・ウェルマン監督、ジョエル・マクリー)
『アニーよ銃をとれ』(1950年、ジョージ・シドニー監督、ルイス・カルハーン)
『ミズーリ大平原』(1953年、ジェリー・ホッパー監督、チャールトン・ヘストン)
アニー・オークレイ
『愛の弾丸』(1935年、ジョージ・スティーヴンス監督、バーバラ・スタンウィック)
『アニーよ銃をとれ』(1950年、ジョージ・シドニー監督、ベティ・ハットン)
カラミティ・ジェーン(1856年(または1852年)~1903年)
『平原児』(1936年、セシル・B・デミル監督、ジーン・アーサー)
『カラミティ・ジェーン』(1953年、デヴィッド・バトラー監督、ドリス・デイ)
『ワイルド・ビル』(1995年、ウォルター・ヒル監督、エレン・バーキン)
ジェシー・ジェイムズ(1847年~1882年)
『地獄への道』(1939年、ヘンリー・キング監督、タイロン・パワー)
『無法の王者ジェシイ・ジェイムス』(1957年、ニコラス・レイ監督、ロバート・ワグナー)
『ミネソタ大強盗団』(1972年、フィリップ・カウフマン監督、ロバート・デュヴァル)
『ロング・ライダーズ』(1980年、ウォルター・ヒル監督、演:ジェームズ・キーチ)
『ワイルド・ガンズ』(1994年、ロバート・ボリス監督、ロブ・ロウ)
『アメリカン・アウトロー』(2001年、レス・メイフィールド監督、コリン・ファレル)
『ジェシー・ジェームズの暗殺』(2007年、アンドリュー・ドミニク監督、ブラッド・ピット)
ワイアット・アープ(1848年~1929年)&ドク・ホリデイ(1851年~1887年)
『荒野の決闘』(1946年、ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ、ヴィクター・マチュア)
『OK牧場の決斗』(1957年、ジョン・スタージェス監督、バート・ランカスター、カーク・ダグラス)
『墓石と決闘』(1967年、ジョン・スタージェス監督、ジェームズ・ガーナー、ジェイソン・ロバーズ)
『トゥームストーン』(1993年、ジョージ・P・コスマトス監督、カート・ラッセル、ヴァル・キルマー)
『ワイアット・アープ』(1994年、ローレンス・カスダン監督、ケヴィン・コスナー、デニス・クエイド)
ビリー・ザ・キッド(1859年~1881年)
『最後の無法者』(1941年、デイヴィッド・ミラー監督、ロバート・テイラー)
『ならず者』(1943年、ハワード・ヒューズ監督、ジャック・ビューテル)
『左きゝの拳銃』(1958年、アーサー・ペン監督、ポール・ニューマン)
『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(1973年、サム・ペキンパー監督、クリス・クリストファーソン)
『ヤングガン』(1988年、クリストファー・ケイン監督、エミリオ・エステベス)、『ヤングガン2』(1990年、ジェフ・マーフィー監督)
ブッチ・キャシディ(1866年~1908年)&サンダンス・キッド(1867年~1908年)
『明日に向って撃て!』(1969年、ジョージ・ロイ・ヒル監督、ポール・ニューマン、ロバート・レッドフォード)
『新・明日に向って撃て!』(1979年、リチャード・レスター監督、トム・ベレンジャー、ウィリアム・カット)
#11172
バラージ 2022/02/07 22:06
今週の鎌倉ツッコミ はぁ~っ? 北条の天下ぁ~?
小林陵侑選手、金メダルおめでとう!
>頼朝挙兵の真相
まぁ頼朝が流人だった20年間ずっと平家打倒を考えていたなんてことはないでしょうね。13歳で流されてから33歳までですもんねえ。挙兵に関しても、平家が討とうとしていたのは源頼政の孫で伊豆にいた有綱だったが、三善康信が勘違いして頼朝が狙われていると知らせてしまったという説もあります。有綱は奥州に逃亡しちゃうんですが、康信も頼朝に奥州に逃げろと書いており、奥州にはさすがに平家も手出しはできないと考えられていたようですね。頼朝が坂東を制圧するといつの間にか奥州から戻っていた有綱もその配下となっており、さらに有綱は後に義経の娘婿(妹婿とする説もあり)になるんですが、奥州に逃げた時に義経の知遇を得ていたとする説もあるみたい。
話を戻すと、頼朝は自分が狙われていると勘違いして挙兵しちゃった、あるいはそこまで言わなくとも追いつめられて挙兵したというのが真相でしょう。でもそれだと頼朝が、ひいてはその背後にいる主人公の北条氏がカッコ悪くなっちゃうんで、まぁしょうがないよなあ。それじゃあドラマ(物語)にしにくいだろうし。それよりも今週のお話のほうがいくらなんでも……。
>というわけで今週のお話
いくらなんでも頼朝挙兵の時点で、北条宗時が坂東を坂東武者の天下にして北条がその頂点に立つなんて考えてるとか、これじゃ宗時はほとんど誇大妄想か、でなきゃ未来を知ってる予言者でしょう。さすがにあり得ないよなあ。とはいえ、そうでもしないと主人公の北条氏が頼朝に引きずられていったというかホイホイ付いていっただけの下っ端連中になってしまって、ドラマとしては都合が悪いんでしょうね。だから北条義時を主人公にするのは難しいんだよな。実際、史実に忠実にしちゃうと義時はもちろん北条氏自体が頼朝が死ぬまでほとんど活躍しないわけで、かなり無理矢理話を作らないとどうにもならないところがあります。また北条の天下云々はともかくとして、坂東武者たちが坂東独立のために頼朝を担いで平家を倒そうとしたというストーリー仕立ては一昔前には結構あって、『草燃える』もそうだし、それ以前の頼朝主人公映画『富士に立つ若武者』でもそんな感じのストーリー展開になっているようです。でもそれこそ40年以上も前の古い歴史学認識であって、今そういう学説を主張してる人は極めて少数派。一言で言えばかなり古くさい物語なんですよね。
他にも今週は(今週も?)ツッコミどころ満載で、頼朝の北上を鎌倉に向かうためとしてましたが、史実では豪雨による増水で立ち往生していた頼みの綱の三浦氏と合流するためですし、三浦義村が頼朝についてずっと舐めた口聞いてるのもなんだかなあ。また宗時と工藤茂光が善児なる架空人物に暗殺?されてましたが、史実では普通に討死です。宗時は『草燃える』でも架空人物の伊東祐之(永井路子の原作には登場しない、脚本の中島丈博によるオリジナルキャラ)に殺されてたんで、それを踏襲したんですかねえ? そもそも宗時が頼朝と分かれた理由は、土肥実平(この人出てきましたっけ? 役者が地味だとわからんなあ)が皆で固まって逃げたら目立つから分かれて逃げようと提案したからで、頼朝には地元で地の利が効く実平が同行し、宗時は伊東祐親の軍勢と遭遇してしまって討ち取られただけなんだよなあ(時政と義時も別行動で甲斐に向かった)。茂光も石橋山の合戦で敗れて自害しただけだし(本編に出てこなかった佐奈田義忠は最後の解説で済まされてたな)。
あとねえ、個人的には何より頼朝のキャラクターが……。逃げ込んだ洞窟の中での八つ当たりとか、いくらなんでも描き方がひどくないか? なんかあまりにも頼朝が貶められてるようで、どうにも腹の虫がおさまらん。石橋山で見せたという百発百中の抜群の弓矢もなかったし(まあ、『草燃える』でもなかったけど)。そもそも三谷は当て書きするタイプを自認してるんで、大泉に当て書きした頼朝なんだろうけど、こっちが見たいのは大泉じゃなくて頼朝なんだよ! なんだかほんともうがっかり。後白河の生霊?みたいなのが出てくるシーンが何回も何回も出てくるのもウザいし。
普通ならもう切ってるレベルのドラマですが、題材がなあ。1番待ち望んでた時代だから、こんな調子でツッコミながら1年間も観ていくことになるのか……。やっぱりドラマ(や映画や小説)は題材よりも作品そのものの出来ですねえ。もう気持ちは来年の古沢良太脚本の家康に移っております……。
#11171
ろんた 2022/02/04 18:26
石原慎太郎の話
石原慎太郎が亡くなったとのこと。わたしの印象では、トリックスターなのに政治の場に出て来ちゃった困ったちゃん。で、この人のマチズモ的な言動って、弟・裕次郎のモノマネだと思うんですよね。弟にコンプレックスがあって、それを乗り越えるために裕次郎的な言動をするんだけど、それで余計にこじらせているような。その辺が感じられるのが、原作・脚本の映画「狂った果実」。これ、マッチョでモテモテの兄(石原裕次郎)とウジウジとイカ臭い文学青年の弟(津川雅彦)の話なんだけど、この兄貴ってのが裕次郎そのもので、すなわちイカ臭い弟ってのが兄貴の方の自画像としか思えない。映画は、ヌーベルヴァーグに影響を与えたと言われる名作ですけどね。
で、この"裕次郎しぐさ"から問題行動や問題発言が出てくるんだけど、中でも笑ったのが「三国人発言」。これ、石原慎太郎も差別的だと問題視したマスコミも、「三国人」という言葉の意味を知らなかったんですね。三国人って、
三国人=第三国人=アジア太平洋戦争の非当事国の国民=戦勝国でも戦敗国でもない旧植民地出身者
ということで、戦後処理が進むまで宙ぶらりんな状態に置かれた人々のこと。つまり今で言う朝鮮・韓国人や台湾出身者のことなんだけど、石原が「三国人」と呼んでるのは大陸から不法入国してきた中国人のことなんで、戦勝国民なんですね。だから、ここんところを中国に突っ込まれたらやばかった(笑)。昭和一桁がこの言葉の意味を知らないのも、2000年にこんな言葉を使うセンスも「なんだかなぁ~」です。石原って、驚くほどものを知らないんだよなぁ。「支那」の語源もなんかトンチンカンなこと言ってたし。一方のマスコミの方も、各社の記者に配布されている「記者ハンドブック」(共同通信社)に、戦前から使われている差別語として掲載されていて、明らかに意味を知らずに騒ぎ立てていた。でもこの辺、誰も突っ込まない。Wikiにも変なこと書かれているし。あと、この発言は陸自記念式典で行われていて、三国人が暴れるから治安出動しろ、とあおったらしいけど、その辺も問題にならなかったなぁ。
>「鎌倉殿の十三人」
楽しく見せてもらってますけど、狩野川の川幅がすごくすごくすご~く狭く設定されているのが気になりますね(笑)。バラージさんもおっしゃってますが、普通あの矢は届かないだろう。あと、両岸の北条館と江馬(?)の家で顔が確認できるとか。あんまり川の側に家建てるとすぐ水ついちゃうぞ。川と言えば千鶴丸が"出家"させられたのは、お祭りで能舞台ができたりタライレースやったりしてる松川の上流かな。現在でも伊東市内を流れている。もう一つ、気になったのが、頼朝が初めから平家討伐を考えているところ。八重に手を出したのも政子に手を出したのも平家打倒のため、ってそんなこと義時に言っちゃっていいのか? 温泉で「義弟(おとうと)よ」と呼びかけるのは(こいつ、義経相手にも黄瀬川の対面石に座って同じ事やるな)と面白かった。あの温泉って、お宮の松がある辺りかな(笑)。追っ手が二人乗りに追いつかない件は、追っ手が鎧武者(重い)、乗ってるのが駿馬、とか言い訳はできると思うんだけど、けっこう至近距離なのに矢が当たらないのは板東武者としていかがなものかと思いました。まあ、当たったら第一回が最終回になっちゃうんだけど(笑)。
#11170
バラージ 2022/02/01 21:31
今週の鎌倉史 八重、大活躍の巻
いやいやいやいや……ガッキーがあんなでかい弓を射て、あんな遠い距離まで矢が届くなんてどう考えても無理だろ! 坂額御前じゃねーんだからさ(笑)
『鎌倉殿の13人』、予想はしていたことだけど、八重の出番があまりに多すぎて個人的にはどうにも違和感が……。あと、やっぱ北条宗時に片岡愛之助は歳を取りすぎだよなあ。さすがに20代には見えん(宗時の生年は不明ですが父時政の生年が1138年なので、時政が15歳の時に生まれたとしても1180年に30代というのはあり得ない)。まあ、小栗旬との年齢のバランスがあったんでしょうけどね。それを言い出したら第1話の時点で義時は13歳だし、宮澤エマが演じてるその妹の実衣(阿波局)なんてそれ以下の歳になっちゃうんだけれども(笑)。
今回の『鎌倉殿~』では、頼朝が味方する武士たち1人1人個別に「これはまだ秘密だが私は挙兵する。頼りになるのはお前だけだ」みたいな小芝居をして感激させるというシーンが出てきました。これ自体は史実なんだけど、本人は嫌がったのに義時がやらせたというのは全くのフィクション。また、ずいぶん開けっ広げな部屋で、しかも義時も同席していますが、史実では密室で2人っきりで行われたとあり、義時は全くの無関係。ま、ドラマではそうでもしないと義時が全然活躍しないからなあ(笑)。ちなみにこのエピソードを個々の武士の信頼を勝ち取るための頼朝の人心掌握術とする見方も多いんですが、近年ではこの時頼朝は相当追い詰められていたんだし、そのような計算ではなく心からの懇願だったのではないかとの説も出されています。
それから頼朝の最初の標的にされた山木兼隆。物語が煩雑になるのを嫌ってか特に説明はありませんでしたが、実はこの人も頼朝や文覚と同じ流人仲間。もともとは清盛の妻の弟・平時忠の下官だったんですが、なぜか父親に訴えられて(理由は不明)流罪になった人です。ところが伊豆の知行国主だった源頼政が以仁王の挙兵に与して敗死し、時忠が新たな知行国主になると、かつての仲からか時忠によって伊豆目代に抜擢されたんですが、そのおかげで挙兵した頼朝に血祭りにあげられてしまいました。まさに一寸先は闇。なお、平家への聞こえを恐れ頼朝と政子の結婚に反対だった北条時政が、政子を兼隆と結婚させようとするも、政子は家を脱け出して頼朝のもとに走ったという話が『平家物語』や『曽我物語』にあり、大河『草燃える』でもそのエピソードが採用されてますが、近年では兼隆の配流は1179年で、流人から目代となったのは頼朝の挙兵直前であり、頼朝と政子の長女大姫の誕生はそれ以前と推測されるため、現在では物語上の創作としてほぼ否定されています。ちなみに『草燃える』で兼隆役を演じていたのは長塚京三。長塚さん、その頃はまだそんなショボい役だったんだ。後に『炎立つ』では頼朝役へと大出世を果たしております。
>マイナーな北条氏
今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は源平合戦時代という勃興期の北条氏が主人公ですが、この時代の北条氏でもあまり有名じゃない、というかこの時代のマニアでもないとまず知らない人物に北条時定という人がいます。『吾妻鏡』にもちょこちょこ出てくる人でして、都落ちして逃亡・潜伏した義経の与党で頼朝・義経らの叔父である源行家や、義経の娘婿(妹婿とする説もある)で源頼政の孫の源有綱を討ち取ったりしています。それなのになぜマイナーかというと、その理由の1つに北条家本流である時政との関係性が今一つはっきりしないということがあるのではないかと思われます。時定は時政の甥とも言われますが、系図類の分析で時政の弟もしくは従弟とする説もあるようです。
映像作品では大河『源義経』(なんと演じてたのは大滝秀治だったらしい)と『義経』(役名は平六時定)に登場してるらしく、『義経』は『源義経』の原作&脚本の村上元三から資料提供を受けてるそうなので、それで出てきたのかな? 『源義経』は前回書いた比企朝宗も出てるとのことですし(役名は比企藤内)、妙にマイナーどころを出してますが、村上の嗜好だったんですかね? 一方、『草燃える』には時定は登場していないようで、今回の『鎌倉殿』の登場予定にも入っていません。北条氏なのに(笑)。
>観てない歴史映像作品 ヨーロッパ史その他編の追加
『海運王オナシス 世界で最も富を得た男』(原題:Onassis: The Richiest Man in the World)……1988年の米国のTVムービー。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。かなり昔につぶれたレンタル店で2巻組VHSを見かけた記憶あり。ギリシアの世界的海運王アリストテレス・ソクラテス・オナシスの半生を描いた伝記作品で、欧米を股にかけて活動した人なんで現代ギリシア史ってのもちょっと違うしってことで、ヨーロッパ史その他でご紹介。
『愛はエーゲ海に燃ゆ』(原題:The Greek Tycoon)……1978年の米国映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。海運王オナシスとジャクリーン・ケネディをモデルにしたメロドラマですが、登場人物の名前は全員架空に変えられてます。主演はアンソニー・クインとジャクリーン・ビセット。プロデューサーは最初、ジャクリーン・ケネディ自身に演じてもらおうと200万ドル用意して交渉したけど、OKは得られなかったんだとか。そりゃそうだろ(笑)。
>観てない歴史映像作品 モンゴル史編の訂正情報
『戦神紀 チンギス・ハーン戦記』……#11118でファンタジーテイストと書きましたが、それどころではなく完全にファンタジー映画だったようです。若きテムジンが魔界の冥王復活をたくらむ魔王と戦うファンタジーアクションとのことで、モンゴル統一のお話でもなんでもないらしい。やれやれ。
#11169
バラージ 2022/01/26 22:40
懐かしマンガの思ひ出
徹夜城さんがTwitterで触れてましたが、『鎌倉殿の13人』第3話の文覚が頼朝に父義朝のドクロを見せたところ、僕も手塚治虫の『火の鳥 乱世編』を思い出しちゃいましたねえ。ひょっとしてこれもオマージュなのか?と勘ぐってしまうところ(笑)。この「義朝のドクロ」エピソードは『平家物語』にあるもののようで、『源平盛衰記』にある出家エピソード(映画『地獄門』でも描かれていた)ともども史実とは考えにくい。史実の文覚は頼朝や後白河法皇とは懇意で時には直言もしてたようですが、彼らの死後は幕府とは疎遠になり、朝廷を主導した源通親や後鳥羽上皇ともウマが合わなかったようで、その運命は暗転していきます。
それにしてもオミクロン株はデルタ株に比べて重症化率は低いが感染率は高いということで、芸能人や著名人にも一昨年・昨年以上に大量の感染者および濃厚接触者が出てますね。となるとドラマの現場にも感染者・濃厚接触者が出て撮影が休止になるという一昨年・昨年のような事態も十分に考えられます。なぜか不思議なことに、俳優を含めて芸能人に多くの感染者・濃厚接触者が出ているのに、現在放送中のドラマ出演者には今のところ出ていませんが、まあ時間の問題と言っていいかと。もちろん大河ドラマも例外ではなく、もしそうなると一昨年以来の放送休止という心配もありますね。
>野球マンガ(など)の思ひ出
『野球狂の詩』の“魔球”については夏目房之介『消えた魔球』(1991年、文庫版1994年)でも、「魔球自体より、魔球という言葉(情報)の生むプレッシャー、疑心暗鬼を利用する(中略)かけひき戦略こそが、実は“魔球”であった」「水島新司流魔球こそ、魔球漫画でなく野球漫画なんだという自信の一球」「満を持して投げられた水島新司の魔球終結の一球」と評されてましたね。『ドカベン』についても、「いささか人情くささがもたれるとはいえ、読んでしまえばオモシロイことを否定できない」「『ドカベン』のおもしろさは、まずはじめに岩鬼という常識ドはずれの陽気な男を立て、そのあとでドカベンを対照的に登場させたときに決定したといっていい」と評しています。後に『週刊少年ジャンプ』の黄金期をつくるコンセプト「友情・努力・勝利」がきちんと組み込まれていたという指摘も興味深かったですね。
夏目氏自身は手塚治虫の流れに属する「テレ派」で、梶原一騎マンガのような「本気派」には正直言って生理的違和感があるとも述べており、『巨人の星』などについては(愛ある)ちゃかしやおちょくりが中心となってますが、その一方で『あしたのジョー』や『タッチ』には非常に好意的。またそれと同時に手塚よりも梶原やそれ以前の『イガグリくん』の福井英一などのほうが日本の大衆娯楽としては正統派だったのではないか?との考えも披露しています。ちなみに『ドカベン』序盤の柔道編には『イガグリくん』の主人公とそのライバルが山田の師匠とその宿敵として(たぶん無許可で)登場しているとのこと。
『巨人の星』は僕はアニメを観ただけで原作マンガは全く読んでません。子供の頃に昔のアニメの再放送が頻繁に行われてた時期があって、その時に観てました。他に『あしたのジョー』や『エースをねらえ!』も再放送されており、いずれも観てましたね。それらの再放送が好評を博したことが『新・巨人の星』『あしたのジョー2』『新・エースをねらえ!』といった新作や続編アニメにつながっていったんだよな。ちなみに『エースをねらえ!』も原作は読んでませんが、『あしたのジョー』はコミックスを立ち読みで読破しました。
水島のあだち批判は、手塚の水島批判と同じことなんじゃないかと(笑)。僕は実は『タッチ』はマンガもアニメも観てなくて(犬童一心監督、長澤まさみ主演の実写映画だけは観たが、期待はずれでいまいちの出来だった)、あだちマンガにハマったのは次の『ラフ』でした。あだちマンガには珍しく(?)野球ではなく水泳を題材にした青春恋愛マンガでしたね。『タッチ』で散々野球を描いたんで目先を変えたのかな。僕はちょうど野球マンガに飽きが来てた頃なんで、『タッチ』は読まず、『ラフ』にハマったんでしょう。
野球マンガに話を戻すと、僕が愛読してたのは前回も触れた、ちばあきおの『キャプテン』。確かテレビで単発アニメだかアニメ映画だかが放送されて、それがすごく面白かったんで原作もコミックスで読んだという流れだったかな(調べると単発が1980年、僕が小5の時ですね。映画はテレビの再編集版とのことで81年公開だけどテレビ放送されたのかな?)。しかし今になって考えてみると『キャプテン』は中学野球が舞台とはいえ、『ドカベン』以上に女っ気がなかったなあ(そもそも女性がほとんど登場しない)。実は最初に読んだ時もそこはちょっと不自然には感じたんですよね。高校進学後が舞台の『プレイボール』は未読。中学以後は『週刊少年ジャンプ』にのめり込んだためあまり意識してませんでしたが、ちば氏は1984年に41歳で自ら命を絶ったとのことで……合掌。
もう1つがやはり小学生の時に読んだ内山まもるの『リトル巨人くん』。天才小学生ピッチャーが読売巨人軍に入団して大活躍するというストーリーですが、やはり魔球などが出てこない比較的リアルなマンガでした。『小学○年生』で連載されてて読んだ記憶だったんですが、調べると『コロコロコミック』でも連載されてたようで、僕は『コロコロ』も読んでたんでどっちの記憶だか曖昧です。そういえば2種類の異なるストーリーを読んだような記憶も。『小学○年生』は1977年に『二年生』2月号(その後、4月号から『三年生』に舞台を移す)から連載が開始されたらしく、僕の年齢ドンピシャです。第2期もあったらしく1984年から連載とのことですが、僕はすでに中学生のためそちらは読んでいません(『コロコロ』ももう読んでなかった)。内山氏は2011年に62歳で永眠したとのことで、改めてご冥福をお祈りします。
>週刊少年チャンピオンの思ひ出
いやぁ、懐かしマンガの話になると、ついつい筆が乗ってしまう(笑)。『ドカベン』の話をしてるうちになんだか懐かしくなったんで、昔の『週刊少年チャンピオン』の個人的思い出話を。まあ、これも今となっては歴史の一部だってことで(笑)。
僕がチャンピオン本誌を読んでたのは確か小学生の時(中学~高校はジャンプ一色で、もうチャンピオンは読んでなかった記憶)。何がきっかけでチャンピオンを読み始めたかの記憶は全くありませんが、その頃とにかく面白がって読んでたのは鴨川つばめの伝説的ギャグ漫画『マカロニほうれん荘』。とにかく抱腹絶倒の面白さで、本屋の前で立ち読みしながら腹抱えて笑ってた記憶があります。調べると『マカロニ~』は1977~79年に連載されてたらしいので、僕の小2~小4ということになりますね。もちろんその後コミックスでも読んだんですが、それがいつ頃だったかの記憶は曖昧で、小学生の頃だったかもしれないし、中学か高校の頃だったかもしれません。後に『マカロニ2』も1980年に連載されたそうですが、そちらはほとんど記憶になし。『マカロニ~』は終盤、鴨川があまりの過労(アシスタントを使わなかったらしい)から降板を申し入れ、それを拒否する編集部への当て付けで執筆を手抜きし始めたらしく、質の低下が著しくなっていたとのこと。『マカロニ2』も1年で終わってることから、かつての輝きを取り戻せなかったようです。『マカロニ~』と同じ頃に読んでたマンガとしては、やはりギャグ漫画の『がきデカ』や『らんぽう』の記憶がちょこっとあり。
次に僕が熱心に読んだのが小山田いくの『すくらっぷ・ブック』。中学生たちの青春恋愛群像劇マンガで、調べると1980~82年に連載されており、僕の小5~中1。当時の僕から見てちょっと年上の世界になんとなく憧れのような気持ちを持ちながら読んでたような気がします。こうしてみると僕は小学生の頃からすでに青春ものが好きだったんだなあ。ギャグ要素も結構強い作品で、同時期に連載されてた、とり・みきのギャグ漫画『るんるんカンパニー』(これも一時期よく読んでた)と、お互いの誌面でお互いの作品をちゃかし合う、おちょくり合戦を繰り広げたりしてましたね。小山田氏は2016年に59歳の若さで永眠されたそうで、改めてご冥福をお祈りします。
雑誌連載ではなくコミックスでまとめて読んだチャンピオン漫画としては、『ドカベン』『大甲子園』の他に藤子不二雄Aの『魔太郎がくる!』があります。かなりブラックでちょっと怖い漫画でしたが、なんかクセになって全巻読破しましたね。あとは手塚治虫の『ドン・ドラキュラ』もちょっとだけ読んだかな。それから石井いさみの『750(ナナハン)ライダー』は、僕自身はちょろっとしか読んでませんが、中学時代に友人たちが「永遠のワンパターン」と揶揄してネタにしてた記憶が。それから手塚の『七色いんこ』はなぜか大学時代(もしくは社会人になりたてだったかな?)に読んで、面白くてハードカバーの愛蔵版まで買っちゃったんですが、後に過去のものを大量処分したくなった時に売ってしまいました。いやぁ、懐かしい。
#11168
徹夜城(ただいま南北朝ネタで記事執筆中の管理人) 2022/01/23 22:47
最近は年の早めに多いかな
>再来年大河
ここんとこは年の初めの方で再来年大河が発表されてますが、過去には「花燃ゆ」だったか、えらく発表が遅く、何かあったかと思わされたこともありました。俳優さんのスケジュールをおさえる必要からも前前年くらいには内容も決めておくんでしょうけど。
「太平記」のころは公表されるのが放送前年の春ごろでした。もちろん水面下で話は進んでいてその前の年には決まっていたんでしょうけどね。だから「昭和が終わったからだ」と推測されてるわけで…今回の改元ではそんな動きはないようですが。
一応、以前NHKドラマ部門のおえらいさんが何かで「道長と義満はいずれやらねば」と発言はしてるんですよね。しかしどちらも主人公としてはどうも感情移入しにくいキャラで…僕もこのサイトでやった仮想大河は義満は半分主役にしましたしね。
古代大河ってのもずいぶん前から言われてるし要望は南北朝よりは多いはずですが、やっぱいろいろとやりにくい、ということなんでしょうなぁ。壬申の乱だの持統天皇だのあたりはドラマ的に宝庫なんですが、まぁ婚姻関係とか複雑すぎて。
>水島新司ばなし続き。
水島新司作品、まぁそりゃスポコン要素はある程度残してますし、残さざるを得ない面もあったでしょうね。ただ「巨人の星」を「野球を知らぬ者が書いてる」と批判してましたし、「野球漫画ならオレ」という強い自負を持って新しいスポーツ漫画を作ったとはいえるでしょう。「ドカベン」なんか主人公からして星飛雄馬の逆を全てやったようなもんですし。
「野球狂の詩」はもともとはプロ野球を題材にしたなんでもあり漫画で…人情ばなし路線が多かった。水島漫画って結構べたべたの浪花節的泣かせドラマを好んでやってましたよね。
「野球狂の詩」ではやっぱり女性投手・水原勇気編が一番ポピュラーになっちゃうわけですが、あれは「魔球」の水島的処理でしょう。なんでも女性投手が可能かどうか野村克也に聞いたら「決め球があれば短時間のリリーフでいける」と言われ、それで「魔球」的な設定を持ち込んできた、という流れだったような。
水島先生、あだち充作品には批判的な発言をされていたような。あれはラブコメ要素が強かったし、水島さん明らかにその方面は苦手にしてるんですよね。
手塚治虫に「君は試合だけ書いてればいいから楽だね」と言われ、さすがにムッとしたものの反論せずに流したが、後日になって手塚治虫は「目を付けた」漫画家に嫉妬してそういう嫌味を言う癖があることを知り、むしろ勲章ものかと思った、という逸話もありました。手塚治虫は梶原一騎スポ根を全く理解できなかったそうですが、水島野球漫画は理解できたのかもしれません。
#11167
バラージ 2022/01/23 21:52
あれから5年……
あれ? 『鎌倉殿の13人』第3話、一気に5年くらい話が進んじゃった。てことは河津祐泰の死は描かれないわけか。だったらなんで襲撃シーンをやったんだ? てか、あのシーンで祐泰暗殺もちゃんと描けば良かったのに。よくわからんなあ。
>観てない歴史映像作品 アメリカ合衆国史編①
鎌倉時代にかまけてましたが、忘れてたわけじゃありません。始めたからにはちゃんと最後までやらんとと思っております。
『ポカホンタス』(原題:Pocahontas)……1995年の米国のアニメ映画。17世紀初めに実在したネイティブ・アメリカン=アメリカ先住民(アメリカ・インディアン)の女性ポカホンタスの“伝説”を題材とした有名なディズニー映画で、「史実」ではなく歴史的に創作された「美談」の映画化のため、当のインディアンなどから激しく批判された作品です。1998年に続編のオリジナルビデオアニメ『ポカホンタス II イングランドへの旅立ち』(原題:Pocahontas II: Journey to a New World)も作られました。
『ポカホンタス』(原題:Pocahontas: The Legend)……1995年の米国もしくはカナダの実写映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。ストーリーは多分ディズニー・アニメとほとんどいっしょなんではないかなあ。ま、便乗B級映画でしょうね。
『ニュー・ワールド』(原題:The New World)……2005年の米国映画。これまたポカホンタスの“美談”の実写映画化で、テレンス・マリック監督がなぜか『シン・レッド・ライン』の次に選んだ題材です。感想を散見すると、どうもかなり眠くなる作風みたい。出演はコリン・ファレル、クオリアンカ・キルヒャー、クリスチャン・ベール。
『モヒカン族の最後』(原題:The Last of the Mohicans)……1936年の米国映画。1920年版や1992年の『ラスト・オブ・モヒカン』の他にこちらもDVD化されています。1934年版(邦題『モヒカン族の最後』)と、1964年の西ドイツ・イタリア・スペイン合作版(邦題『夕陽のモヒカン族』)も日本で劇場公開されましたがソフト化はされていません。
『アラモ』(原題:The Alamo)……2004年の米国映画。題名通りアラモの戦いを描いた作品で、1960年の同名映画の実質リメイク版らしいんだけど、一応その後のテキサス共和国独立まで描いてるとのこと。興行的には大コケにコケたらしい。出演はデニス・クエイド、ビリー・ボブ・ソーントン、ジェイソン・パトリックなど。
『栄光の星の下に』(原題:Lone Star)……1951年の米国映画。米墨戦争直前のテキサス共和国を舞台に、米国合併派と独立派の争いを描いたフィクションの西部劇。アンドリュー・ジャクソン大統領も出てくるようです。製作された時代が時代だけに合併派が正義で独立派とメキシコは悪者という映画みたい。出演はクラーク・ゲイブル、エヴァ・ガードナー。
『カンサス騎兵隊』(原題:Santa Fe Trail)……1940年の米国映画。黒人奴隷解放を目的とする武装蜂起を起こした白人ジョン・ブラウンを討伐するカンサス騎兵隊を主人公とした活劇映画で、本来は時代の違うジェブ・スチュアート、ジョージ・カスターら後の将軍たちを全員士官学校の同窓生にしているらしく、そのあたりは娯楽優先みたい。監督はマイケル・カーティス。出演はエロール・フリン、オリヴィア・デ・ハヴィランド。ブラウン役のレイモンド・マッセイが完全に主人公たちを食っちゃう怪演とのこと。カスター役は後の大統領ロナルド・レーガン。
『七匹の無法者』(原題:Seven Angry Men)……1955年の米国映画。こちらはジョン・ブラウンを主人公とした映画で、またまたレイモンド・マッセイがブラウンを演じています。日本では劇場公開はされましたがソフト化はされていません。
『ギャング・オブ・ニューヨーク』(原題:Gangs of New York)……2002年の米国映画。19世紀半ばのニューヨーク市内のスラム街のギャング間抗争を描いた作品で、同名ルポを原案としているものの基本的にはフィクションのお話とのこと。登場人物の一部にはモデルがいるとのことですが、主人公は架空人物らしい。クライマックスは1863年のニューヨーク徴兵暴動。監督はマーティン・スコセッシ。出演はレオナルド・ディカプリオ、キャメロン・ディアス、ダニエル・デイ=ルイス。
『エイブ・リンカーン』(原題:Abe Lincoln in Illinois)……1940年の米国映画。劇場公開邦題を『エイブ・リンカン』とするサイトもあり。ピューリッツアー賞を獲得した舞台劇の映画化で、イリノイ州の片田舎の青年だったリンカーンが大統領になるまでの話とのこと。主演はレイモンド・マッセイ。
『声をかくす人』(原題:The Conspirator)……2010年の米国映画。リンカーン大統領暗殺の罪に問われ、米国政府によって初めて処刑された女性メアリー・サラットの史実を基に、その裁判の過程をできるだけ忠実に再現して描き出した法廷ドラマとのこと。監督はロバート・レッドフォード。主演はロビン・ライト、ジェームズ・マカヴォイ。
『勇者の赤いバッヂ』(原題:The Red Badge of Courage)……1951年の米国映画。南北戦争の北軍の新兵を主人公とした小説をジョン・ヒューストン監督が映画化。主演はオーディ・マーフィ。リアルな戦場を描いた戦争映画とのことで、1時間ちょいの中編映画ですが、製作会社がヒューストン監督に無断で20分以上カットしてしまったためらしい。
『楽園をください』(原題:Ride with the Devil)……1999年の米国映画。DVD邦題は『シビル・ガン 楽園をください』。南北戦争で南軍のゲリラ部隊に身を投じたドイツ移民の若者たちを描いた苦い青春ヒューマンドラマで、彼らが戦場の狂気に陥ってく姿を描いてるとのこと。ローレンスの大虐殺という事件も出てくるそうです。監督はアン・リー。出演はトビー・マグワイア、スキート・ウーリッチ。
『ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男』(原題:Free State of Jones)……2016年の米国映画。南北戦争時代にリンカーン大統領の奴隷解放宣言よりも早くに、白人と黒人が平等に生きる「自由州」を設立した白人男性ニュートン・ナイトを主人公とした作品。主演はマシュー・マコノヒー。
『ソルジャー・ブルー』(原題:Soldier Blue)……1970年の米国映画。1864年に米軍の騎兵隊が先住民(インディアン)を無差別に虐殺した「サンドクリークの大虐殺」を描いた西部劇で、アメリカン・ニューシネマの1本。クライマックスの大虐殺シーンがほとんどスプラッタ映画並みで、トラウマものの凄絶さとのこと。監督はラルフ・ネルソン。主演はキャンディス・バーゲン、ピーター・ストラウス。
『折れた矢』(原題:Broken Arrow)……1950年の米国映画。1870年のアリゾナ地方を舞台に、良識派の白人と先住民アパッチ族の友情と和平への希望を描いた西部劇で、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』が公開された時に(時代的に先住民役も白人が演じ、英語をしゃべってはいるがと前置きした上で)同じテーマの先行作品として紹介されてました。主人公のトム・ジェフォーズ、主要人物として登場するアパッチ族の酋長コチーズ、米軍のハワード将軍などは実在の人物で、ジェロニモもちらっと出てくるようです。主演はジェームズ・スチュアート。
『壮烈第七騎兵隊』(原題:They Died with Their Boots On)……1941年の米国映画。ジョージ・アームストロング・カスターが陸軍士官学校へ入学するところから、南北戦争を経てリトルビッグホーンの戦いで戦死するまでの半生を描いた伝記映画ですが、史実に反してカスターを先住民に同情的な悲劇の将軍として美化した作品のようです。主演はエロール・フリンとオリヴィア・デ・ハヴィランドで、クレージー・ホース役はアンソニー・クイン。グラント大統領もちらっと出てくるようです。
『ララミー砦の決闘』(原題:Chief Crazy Horse)……1955年の米国映画。日本ではテレビ放送のみで、劇場公開もソフト化もされていません。原題通りクレイジー・ホースを主人公としてリトルビッグホーンの戦いまでを描いた映画で、主演はヴィクター・マチュア。
『小さな巨人』(原題:Little Big Man)……1970年の米国映画。これもアメリカン・ニューシネマの1本で、1970年に121歳の老人が語る彼自身の半生を通して19世紀の米国西部暗黒史を描いた作品で、ワイルド・ビル・ヒコックやカスターが登場し、ワシタ川の虐殺やリトルビッグホーンの戦いも描かれるとのこと。この頃からカスターは全くの悪役に転換していきます。監督はアーサー・ペン。主演はダスティン・ホフマン。
『大酋長』(原題:Sitting Bull)……1954年の米国映画。日本では劇場公開はされましたがソフト化はされていません。原題は「シッティング・ブル」ですが、主人公はブルら先住民と白人の融和を図る良識派の白人で、悪徳白人たちと戦う先住民に味方する人物に設定されているようです。
『ビッグ・アメリカン』(原題:Buffalo Bill and the Indians, or Sitting Bull's History Lesson)……1976年の米国映画。西部開拓時代が終わった1885年、バッファロー・ビルが率いるワイルド・ウェスト・ショーの一座を舞台に、ビルの後半生をシニカルに描いたロバート・アルトマン監督の西部劇。基本的にはフィクションのお話ですが(舞台の映画化らしい)、実際に一座にいたネッド・バントライン、アニー・オークレイ、シッティング・ブルなども登場し、第22代大統領(クリーブランド)もちょっとだけ出てくるようです。主演はポール・ニューマンで、他にジェラルディン・チャップリン、バート・ランカスター、ハーヴェイ・カイテルなどが出演。
>歴史映像名画座
『勝海舟』……解説欄の文末の「事実上の「封印」状態が続く作品となった。」は、その下のメディア欄にある通り、今となっては実情に合わない文章になっているので改訂をお願いします。
『春の波涛』……解説欄の文末の「現在に至るまで一切ソフト化されていない。」は、その下のメディア欄にある通り、今となっては実情に合わない文章になっているので改訂をお願いします。
#11166
バラージ 2022/01/20 21:47
次の大河はなんだろな?
一昨年、去年と、1月に翌々年の大河ドラマが発表されてることを考えると、今年もそろそろ再来年の大河発表なんですかね? 何になるのか推理しようと考えてみたんですが、これがさっぱり思いつかない(笑)。来年が戦国だから次は幕末かなぁとも思うんですが、龍馬・長州・薩摩・幕府(慶喜)とここ10数年で2度目のネタもあらかたやり尽くしてネタ切れ状態。井伊直弼や勝海舟をもう1回やるとも思えないしなあ。
戦国連続なら、来年の家康とあまりかぶらない有名どころで上杉謙信の2度目ってのもありますが、『武田信玄』『風林火山』『天地人』でも結構描かれてるんだよな。あと生涯未婚の謙信だと、ヒロインをゼロから創作しなきゃならないのがちょっとめんどくさそう。大河化されたことのない候補者を探すと北条早雲とか。今、ゆうきまさみがマンガ化してるようですが、半分室町ですし『花の乱』以来2度目の応仁の乱が描けるけど……うーん、どうなんだろ?
まだ全然手を付けられてない古代大河ってのもたびたび話題にあがりますが、近親婚が多いってのがなあ。単発ならごまかしも効くけど、1年ドラマでは主人公の夫婦関係や家族関係は必須。百歩譲って従兄弟(従姉妹)同士ならまだしも、異父兄妹や異母兄妹で結婚なんて日曜夜8時代のドラマじゃちょっと、いやかなりきつい。いっそのことそのあたりは史実完全無視のファンタジーって手もありますがね。
流れ的には2度目の南北朝もそう遠くない時期にやる可能性はありそうですが、個人的にはまず時代的に空いてる足利義満をやってほしいなあ。一応、南北朝終盤戦ですし。古代大河でも古代終盤というか平安の藤原道長とか、江戸でも田沼意次や松平定信・水野忠邦なんかの時代も空いてますが、正直ドラマとしてはあんまり面白くなさそうな……。琉球をやったんだからアイヌも、と言いたいところだけど、1年ものだと厳しそうだしなあ。
>正月に観てた番組
そういやすっかり忘れてましたが、正月にNHK(BSだったかな?)でやってた『鎌倉殿サミット2022』という番組を観ました。爆笑問題を司会に、鎌倉時代史を主なフィールドとする歴史学者たちが何人か集まって、いくつかのテーマ(頼朝の死因など)で様々にあーでもないこーでもないと議論する番組です。かなり専門的な問題を議論しながら、爆笑問題が司会だけに堅苦しすぎない番組になってて、なかなか面白かったです。名前は聞いたことあっても顔は知らない先生方が見られて、そこもちょっと面白かった。
>追悼・水島新司
水島さんのマンガというとやはり『ドカベン』ですかね。僕は雑誌連載で読んだ記憶はほとんどなく(『チャンピオン』自体を読んでた時期があまり長くない)、もっぱらコミックスを本屋で立ち読みしました(その前にテレビアニメも多少観てたかな? あまり記憶にありませんが)。とはいえ最初の柔道のあたりはすっ飛ばし、野球に完全シフトして主要キャラが勢ぞろいしたあたりから読んで、最後まで読みきりましたね。『大甲子園』もやはりコミックスを本屋で立ち読みしましたが、準決勝のvs球道くん戦あたりで息切れといいますか、要するに“飽き”がきてしまい、そこで“卒業”。決勝は読んでいません。その後の「プロ野球編」や「スーパースター編」の頃は完全に興味を失ってましたね。それ以外の水島マンガだと『一球さん』のテレビアニメ版を多少観てたってのと、『あぶさん』をごくたま~に読んだことがあるってくらいかな。『男どアホウ甲子園』『球道くん』『野球狂の詩』などは存在はもちろん知ってるものの読んだことはなし。なお『野球狂の詩』シリーズのみは未完というか、明確な最終回は迎えていないようです。
夏目房之助のスポーツ漫画エッセイ『消えた魔球』(新潮文庫)でも『ドカベン』や『野球狂の詩』は取り上げられてましたが、夏目も指摘してる通り『ドカベン』もスポ根の要素が全くないわけではないと思うんです。ただ『巨人の星』の「大リーグボール」みたいな“必殺技合戦”とは異なる、「作戦」という文脈で野球を見せていったのが新しかったんでしょう(僕が夢中になった野球マンガだと、ちばあきおの『キャプテン』(と『プレイボール』)なんかも同じ)。もっとも水島は『野球狂の詩』の女性投手・水原勇気で“魔球”に回帰しちゃうんですが。ちなみに夏目はスポ根要素から完全に脱した野球マンガとして、あだち充の『タッチ』を挙げています。
#11165
徹夜城(大甲子園はリアルタイムで観戦していた管理人) 2022/01/18 22:01
野球漫画の大御所まで
またも大物漫画家の訃報。水島新司さんの訃報が報じられました。「史点」ネタにするかどうかはわかりませんので、とりあえずこちらにちょこちょこっと書いておこうと。
僕はスポーツ好きでも野球好きでもないですし、プレイはもちろん観戦だってそれほど…な人間なんですが、水島野球漫画は一時熱狂的に読んだんですよ。「ドカベン」はアニメ再放送で見たのが中心(あとで漫画も通読したけど)でしたが、その続編にして水島高校野球漫画を集合させた「大甲子園」は連載リアルタイムで読みました。なかでも作者自身が力を入れた「ドカベンVS球道くん」の明訓青田戦は実に楽しく「観戦」したものです。
この人の野球漫画は「スポ根」の次の段階で、野球漫画だけでなくスポーツ漫画全体にいろいろ影響を与えたように思っています。そしてそもそも漫画表現として、野球というテーマの中でこれほど引き出しがあるのか、と驚かされる演出も多々ありました。
最後の最後まで第一線、少年誌に週刊連載を抱え、全て描き終えて引退宣言、それから間もなく逝去、という、絶筆未完作品が多い漫画家のなかで見事な締めくくりになりました。
>鎌倉サーティーン
とりあえず二回目まで、人物紹介が中心になりますけど、僕はけっこう楽しんでます。こうした人物たちがのちのち…という期待感というか不安感というかが錯綜しますね。「草燃える」では序盤ピュアな義時が終盤どんどん闇墜ちしてくのが凄いんですが、こちらはどうするのか。周囲に振り回されっぱなしなところ、ちょっと「草燃える」っぽくもあります。
それにしても北条氏の勃興期と滅亡期がドラマと漫画で同時にやってるって、すごい時代だなぁ。
ホント、そろそろ南北朝大河やりませんかねぇ。
#11164
バラージ 2022/01/17 22:33
今週の鎌倉史 比企家の人々
『鎌倉殿の13人』第2回は初回よりはちょっとマシだったかなあ。それでも温泉のシーンがもろに合成のセット撮影だし、北条宗時があまりにもポジティブバカすぎてどうにもイラつきます。ちなみに宗時が反平家の考えから頼朝を担ごうとするという設定は『草燃える』でも同様ですが、史実的には特にそういう記述はありません。史料にも物語類にも宗時に関する記述は少なく、どういう人物かはくわしくはわからないというのが実態です。
あと、そういえば工藤祐経の襲撃で河津祐泰が死ななかったな。祐泰が死なないことには曽我兄弟が発生しないんですが(まんま河津兄弟になってしまう・笑)、次週にもう1回襲撃するんですかね? それにしてもなんで祐経が自ら太刀を振るって斬りかかっちゃうんだ。話をわかりやすくするためかもしれないけど、実際には祐経は家臣に命令してやらせてるし、そもそもこういう場合は普通弓矢でしょ。現に原典の『曽我物語』でそうなんだし。撮影技術的に無理だったのかもしれないけど、そうだとしたら日本は韓国や中国に水をあけられてく一方ですよ……。
さて、今回は初登場した比企尼(演じてたのは草笛光子)ら比企一族について補足的解説を。といっても以前こちらで確か1回やったんですけどね(#10845)。でもまあ、もう1回やっておこうかな。
比企尼は頼朝の乳母(そういやドラマではちゃんと「めのと」と言ってたけど、字幕解説もなしじゃ、よほど歴史にくわしい人以外はわかんないんじゃ? うちの家族も「めのと」って何?と聞いてきましたし)の1人で、平治の乱で敗れた頼朝が伊豆に流された際に夫の比企掃部允(かもんのじょう。実名不詳で「遠宗」とする系図もあるが信頼性は低い)ともども京から領地の武蔵国比企郡に下り、頼朝が挙兵するまで20年ものあいだ米などを送り続けて支援したという大恩人です。掃部允は頼朝挙兵前に亡くなってたようですが、いつ頃かは不明。『鎌倉殿~』ではすでに死んでる設定のようで、またも映像作品初登場はなりませんでした。一方、比企尼は大河では『新・平家物語』となぜか『義経』に登場したようですが、『草燃える』や『平清盛』にはこれまたなぜか未登場。
また比企尼は3人の娘婿・安達盛長、河越重頼、伊東祐清にも頼朝に奉仕するように命じたとのことで、彼らは頼朝の支援者として活動しています。盛長と祐清は『鎌倉殿~』に登場してますが、重頼は今のところ出てきてませんねえ。NHK公式ガイドブックにも登場予定は出ておらず、ひょっとして出ないのか? 娘が義経の妻になったっていうのに? もしや義経関係の女性は、またもおなじみの静御前オンリーにするつもりなんじゃなかろうな。盛長や祐清が比企尼の娘婿ということにも全く触れられてませんでしたね。ちょっとしか出てきてない盛長はともかく、祐清は比企の館まで行ってるのに何も言及されないって、これもスルーされちゃうのかな?
さて、比企夫妻は男子には恵まれず、尼の甥の比企能員を猶子(養子)にして跡を継がせています。能員役の佐藤二朗はやっぱりいつもの佐藤二朗だなぁ。んー、なんというかもう、今以上にはふざけないでほしい。堀内敬子演じる能員の妻・道は完全に夫を尻に敷いたキャラですが、どうも『草燃える』でもそんな感じだったみたいですね。これもオマージュなのか? 『草燃える』ではなぜか妻が比企尼の実の娘で(名前は比企重子)、能員は娘婿という設定だったらしく、なんでそんな設定になったんだろ? 原作では多分そんな設定にはなっていないはず。史実の能員の妻は渋河兼忠という人の娘で、頼家の乳母の1人になっているというくらいしかわかっていません(名前も不明)。
さらに系譜ははっきりしませんが、比企一族には比企朝宗という人物もいます。系図では比企遠宗(掃部允)と比企尼の子となってますが、だったらなんで彼が夫妻の後を継がず、甥を養子にして後を継がせるんだという疑問が浮かびます。これについては朝宗はすでに高齢で男子もいなかったため後継者として不適格だったのではないかという説も出されてるらしい。この朝宗も能員同様に頼朝に重用されて、『吾妻鏡』にもよく顔を出すんですが、なんといっても有名なのは娘が主人公北条義時の2番目の妻になったこと。しかしやはり登場予定には入っておらず、出ないのか? 主人公の奥さんの父親なのに? まあ、娘は2番目の妻なので出番はだいぶ先ですが……。ちなみにこれまでの大河では最初の源平大河『源義経』にのみ登場してるようです。
比企氏についてはさらに下の世代もいますが、今のところ出てきた世代のあたりの話でいったんおしまい。下の世代についてはまた別の機会に。
>伊東氏(工藤氏)書き忘れ
1人書くのを忘れてました。今後『鎌倉殿の13人』に登場する予定の工藤茂光(狩野茂光とも)は工藤祐隆(伊東祐親の祖父)の四男で、狩野荘を与えられた人物です。茂光は伊豆大島を所領の一部としており、保元の乱で大島に流罪となった源為朝が島民を抑圧し貢納物を略奪したため、1170年に追討しているというのがちょっと有名。でも、これは『保元物語』などにのみある話で、史実かは疑わしいとのこと。
#11163
バラージ 2022/01/15 23:41
今週の鎌倉史 その2 伊東家(工藤家)の人々
『鎌倉殿の13人』の初回を観てて、ドラマとしてはやや登場人物が多くて、この時代にわりとくわしい僕から見ても、ちょっとわかりにくいところがあったかな?と思いまして、今回は伊東家(工藤家)の人々についてちょっと補足的解説を。
話は浅野和之が演じていた伊東祐親(河津祐親とも)の祖父・工藤祐隆(工藤家次・伊東家次とも)にまで遡ります。
嫡男・伊東祐家を早くに失った祐隆は、後妻の連れ子である義理の娘が産んだ工藤祐継を養子として家督を継がせ、所領のうち伊東荘・宇佐美荘を与えることに決定。一方で、祐家の子である嫡孫の祐親も二番目の養子として、こちらには河津荘を与えました。なんで血のつながりもない祐継を後継者にしたかというと、実は祐隆が義理の娘を孕ませて出来ちゃった子だったんですね。さすがに大っぴらにできなかったんでしょうな。
やがて祐隆が死ぬと祐継が後を継ぎますが、祐継もまた若くして病に倒れ、幼い息子の工藤祐経(演じてたのは「我が家」の坪倉由幸)を義理の弟である祐親に託して世を去ります。これを快諾したかに見えた祐親は、実は自らが後継者にされなかったことに内心ずっと不満を抱いており、祐経に娘を娶らせたうえで自らが伴って上洛し平重盛に仕えさせるなど親身になってるふりをしながら、祐経が在京してる間に伊東荘をすべて奪ってしまいます(宇佐美荘は祐経の弟の宇佐美祐茂が相続)。しばらくしてそれに気づいた祐経は慌てて京で訴訟に訴えるも、祐親は要所に入念に根回しをしており、訴訟はすべて祐経の敗北に終わります。祐親は嫡男の河津祐泰(祐通とも。演じてたのは山口祥行)に河津荘を与え、自らは伊東荘を占拠。さらに祐経に嫁がせた娘も連れ戻し、他の武士に嫁がせてしまうという念の入った復讐を行います。祐親に所領も妻も奪われた祐経は深く恨み……というのが第1話に至るまでの状況です。これが後に曽我兄弟の仇討にまでつながっていくわけで、数年前に時代劇専門チャンネルで観た『曽我兄弟 富士の夜襲』にもつながる話なんだよな。
なお、祐親は次男の祐清(祐兼、祐長、祐氏、祐忠とも。演じてたのは竹財輝之助)の妻として比企掃部允と比企尼(頼朝の乳母)の三女を娶るとともに、娘を北条時政(前妻。ドラマにもあったように既に死亡していたと思われる)や三浦義澄にも嫁がせるなど閨閥づくりにも余念がなかったようですが、頼朝に敵対したのが運の尽き。先のことなんてどうなるかわかりませんね。
ちなみに前回書いた中世史学者の保立道久は、頼朝と八重の婚姻は実は祐親の意向だったが、頼朝が祐親の娘婿である時政の娘の政子とも関係を持ったため頼朝を殺そうとしたとする説を唱えているとのこと。
>海部俊樹氏死去
ご長命でしたねえ。僕が大学生となり故郷を離れた年に首相になった方で、リクルート事件と宇野首相の女性スキャンダルで自民党がガタガタになり、社会党の土井さんのマドンナ旋風に押されっぱなしだった時に、少数派の無印だったことを買われて擁立されたんでしたね。いざ首相になってみると妙に調子のいい感じの人で、その妙な憎めなさが意外な人気を集めたんですが、個人的にはちょっと調子が良すぎるというか軽い感じの人に思えましたね。湾岸戦争の時の首相だったと聞くと、湾岸戦争ももはや幾星霜といった感じですが、その頃の米国国内の様子は当時米国に滞在してた村上春樹のエッセイ『やがて哀しき外国語』にくわしい。今となってはあのエッセイも歴史の1証言といっていいでしょう。
#11162
バラージ 2022/01/12 22:48
今週の鎌倉ツッコミ
個人的にはあんまり面白くない『鎌倉殿の13人』ですが、歴史的には好きな時代ということで、ドラマの中で描かれたネタの史実話をちょくちょくしていこうかなと(別に毎週というわけではありません)。
徹夜城さんご指摘の、頼朝が工藤祐経に伊藤祐親の暗殺を指示するシーンは元ネタがあるようでして。祐親に所領と妻(祐親の娘)を奪われた恨みを抱く祐経が、家臣に命じて祐親・河津祐泰父子を襲撃させたことは『曽我物語』に記されてるんですが、これについて中世史学者の保立道久は、祐経同様に祐親に恨みを持つ頼朝が祐経を唆したとする説を唱えているそうです(Wikipediaで知った)。面白い説だとは思うんだけど、後の経緯と上手く合わないような気もするんですよね。あまりネタバレしたくないけど、後に挙兵した頼朝は平家側に付いて捕虜となった祐親を処刑せず、2年ほど三浦氏に預けていた上に恩赦までしようとしています。まぁ昔の恨みも薄れてたとか、『吾妻鏡』の記述のほうが虚偽だとかいう可能性も、全くないとまでは言い切れないんだけど、でもなあ。
なお、祐親の娘の八重が頼朝との間に千鶴丸という息子を産んだという話も『曽我物語』『源平闘争録』に見られるものですが、どこまで事実かは不明。祐親が頼朝を殺そうとし、頼朝が北条氏の元に逃れたことは『吾妻鏡』にも(過去の事実として)記されてますが、その理由ははっきりとはわかりません。
あと、実際の工藤祐経はあそこまで小汚なくはなかったんじゃないかな(笑)。確かに伊豆の所領は祐親に奪われちゃいましたが、京で平重盛に仕えてたはずですし。
あと細かいとこを言うと、千鶴丸がちょっと大きすぎないかなと思いました。『平清盛』の時は赤ん坊だったような……と思って調べると、殺された時には3歳だったとのことで、史実かどうかははっきりしないけど数え年で3歳なら満年齢では1歳ちょっとぐらいなので、やっぱりちょっと大きすぎ。まあ、こういうのは歴史映画&ドラマではあるあるで、目くじら立てるほどではないですけどね。主人公の義時だって、史実ではこの時まだ13歳くらいだし(笑)。
>徹夜城さん
なるほど、馬の2人乗りは前例があったんですね。だとしたら演出や編集のせいなのかな。昔ジャッキー・チェンの映画『ファイナル・プロジェクト』で、スノボで逃げるジャッキーを敵たちがスキーで追うシーンがあったんですが(これ自体『女王陛下の007』あたりのオマージュという気もする)、敵たちを演じてたのはプロのスキーヤーとのことでまともに滑ったらジャッキーを追い抜いてしまうためわざとジグザグに滑ったという話が確かパンフに載ってたんですよ。でも最初に映画を観た時には全くそんな風に感じなかったんで、カット割りと編集で上手く見せてたんだなあと思った記憶があるんですよね。まぁ、馬は演技はできないんでカット割りや編集でなんとかするのも大変なのかもしれないけど、でもそこをなんとかするのが映像なんではないかなあ。
それから『真田丸』の時もなんとなく思ったんですが、三谷幸喜ってどうもオマージュを多用するところがあるような気が。今回の清盛役が『草燃える』で義時役だった松平健で、後白河役が『新・平家物語』で義時役だった西田敏行ってのも多分そうなんでしょう。そういうオマージュ多用も僕はあんまり好きじゃないというか今一つノレないんですよね。
あと、いくら大河ファンでも40年以上も前の『草燃える』を意識したりする人は極めて例外的な少数派なのでは? ほとんどの人が意識するのはせいぜい00年代の『義経』や(三谷脚本という意味で)『新選組!』ぐらいまでかと。少なくとも視聴率には全く影響を与えないでしょう。
#11161
徹夜城(また新たな大河を見ることになる管理人) 2022/01/11 21:34
カマクラ13
第一回でいきなり頼朝が暗殺依頼(笑)。
さて、もう二日も過ぎてしまいましたが、今年の大河「鎌倉殿の13人」。第一回はそれなりに面白く滑り出したな、と思いはしたんですが、これは客を選ぶような、という気もしました。終わってみないと全体の評価はできないんですが、なんか、一部に熱心な支持者を得るけど大勢の支持は…という位置づけになりそうな予感がする。
年季の入った大河庵としてはどうしても「草燃える」のリメイク、あるいはリビルドみたいにとらえるでしょうし、それが原因で評価が割れそうな気も。
とりあえず第一回で自分が「中世鎧好き」なのを再認識しました。
>バラージさん
あの二人乗りの馬が襲い、の場面ですが「太平記」ですでに前例がありまして。おそらく三谷さんも知ったうえでオマージュ的に入れてる気がしました。二人乗りで障害物をジャンプ、ってのもおんなじですし。
「太平記」では高氏役の真田広之が日野俊基役の榎木孝明を後ろに乗せて馬で走り、追っ手を障害物ジャンプでひきはなすんですね。真田さんが見せたアクション場面の一つですが、あれも追手が遅く走ってるようにしか見えませんでした。
#11160
バラージ 2022/01/10 19:34
お笑い源平合戦
『鎌倉殿の13人』、第1話を観ました。うーん、不安的中。やっぱり三谷とは合わんなあ。いやね、三谷脚本だからコメディ色が強いだろうとは思ってましたし、そういうのもありだろうと理解はしてますけど、個人的好みとしてはやっぱりちょっとやりすぎだろうと。あまりに現代口調なのもなあ。個人的にはどうも。いや三谷だけが悪いんじゃなく演出とかのせいもあるんでしょうけれども。まあ、『草燃える』も現代口調だったそうですし、原作者の永井路子の要望で一部喜劇調になったらしいんで(ただ総集編を観てもあんまりそうは感じなかったんだよな。喜劇調の部分は総集編ではカットされたんだろうし、現代口調も僕が観た90~00年代にはスタンダードになってて気にならなかったのかもしれないけど)、三谷流オマージュなのかもしれませんが……。
ストーリーはまだ『平清盛』でも描かれた頃の、重複している部分ですが、こちらの人物設定に一部しっくり来ないところがあるのは、僕がこの時代に思い入れがありすぎるからで、そう考えるとあまり思い入れのない時代のほうがいいのかな?(笑) ただ他にも、一昨年の『麒麟がくる』同様に背景のCGがすげえ不自然とか、人物の名前でいちいちストップモーションになるのがいらっとするとか、長澤まさみのナレーションが聞き取りづらいとか、仁田忠常役のティモンディ高岸がどこまで行ってもティモンディ高岸でしかない(これはキャスティングした人が悪いよなあ。どう見たって演技に向いてないじゃん)とか、文句を言い出したらきりがない。初回でここまで個人的にダメな大河は久々です。まあ、何話か観てるうちに面白くなる可能性もあるんで、好きな時代だしもう少し観続けますけど……うーん。
あと、これは文句じゃないんですが、最後の馬に2人乗りで逃げるところ……馬が遅い(笑)。考えてみれば当たり前の話で、2人乗せてるんだから馬も重い分遅くなるんですよね。マンガや小説ではわりとよくあるシーンだけど、実際にやってみて初めて無理があるとわかるという(笑)。三谷も脚本の段階ではそこまではわからなかったんだろうなあ。
>鎌倉小説
短編集『小説・鎌倉殿の世界』(宝島社文庫)を読了。収録作品は、安部龍太郎「木曽の駒王」「奥州征伐」、山本周五郎「義経の女(むすめ)」、岡本綺堂「修禅寺物語」、火坂雅志「幻の将軍」、永井路子「覇樹」、坂口安吾「安吾史譚 源頼朝」の6編です。んー、ちょっと期待外れだったかな。やっぱり複数の作家の作品を集めた短編集だと作品のトーンもそれぞれ違うし、短編ゆえの物足りなさ(歴史的にではなく小説的に)も感じてしまいます。
お目当てだった「義経の女」は、義経の娘で源有綱の妻となった女性が主人公で、史実と明らかに違うところもあるんですが、そんなことよりも短編というより掌編とかショートショートに近く、これじゃあほとんど話題にのぼらないはずだよなと。巻末解説によると、なんでも山本が戦中の1943年に少女雑誌に書いたものだとか。「覇樹」は今となってはやっぱりちょっと古い(高橋直樹の『北条義時』を読んだ後だとなおさら)。出版された1964年当時としては最新の知見を盛り込んだんでしょうけど、さすがに今となっては歴史学的に古い認識に依っているところが多いんですよね。もちろん岡本綺堂や坂口安吾や山本周五郎はもっと古い作品なんですが、もはや古典と言っていい作品なんで、歴史認識的に古くても逆にあんまり気にならないというか。ま、個人的好みもあるとは思いますが(永井の歴史認識には今一つ同意できない部分が多い)。結局1番面白かったのは「修禅寺物語」かな。岡本が自身の1912年の戯曲を1918年に小説化した作品とのことで、文体はさすがにやや古めですが、難しいとか読みづらいというほどではなく、むしろ流麗な文章でそれが味になってます。架空の人物が大きなウェイトを占めているのも特徴で、それが物語としての面白さにつながってましたね。
>年始ドラマ
『幕末相棒伝』、最初は観るつもりはなかったんですが、ヒロイン役で堀田真由ちゃんが出ると知り、じゃあちょっと観てみるかと裏のウッチャンとさまぁ~ずのバラエティを録画にまわして観てみました。うん、まあ1番の見所はやっぱり堀田真由ちゃんだったかな(笑)。ドラマ自体もまあまあ面白く観ましたけどね。しかし伊東甲子太郎、あそこまで悪者にされちゃうとちょっと気の毒な気も。時代劇だから史実についてうるさく言うつもりはないけれど、伊東は確か暗殺の数日前に龍馬を訪ね、新選組や見廻組が狙ってるから気をつけろと忠告してくれてたはず。逆に龍馬暗殺の張本人見廻組はほんとドラマや映画にさっぱり出てきませんねえ。それはそれでまたちょっと気の毒。ドラマなどで悪役回りが多いといえば、本作とは関係ないけど『青天を衝け』にも出てきた大久保利通もそうで、最近のドラマで大久保を好意的に描いたのは朝ドラの『あさが来た』くらいなんでは。
そういや『青天』は幕末大河には珍しく龍馬が出てきませんでしたね。ちなみに『徳川慶喜』にも龍馬は出てこなかったらしい。龍馬といえば、彼の初恋の女性とも言われる平井加尾は大河ドラマ『龍馬伝』で初登場だったとのこと(演じてたのは高知出身の広末涼子)。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』には登場せず、彼女をモデルとした「お田鶴」という女性がその役割を担ったそうですが、なんでまたそういう創作になったんでしょうね? 子孫から許可が下りなかったとかなんでしょうか? 司馬原作ではない1989年のTBS大型時代劇『坂本龍馬』でも「平岩秋尾」という名前に変えられて登場したそうですし。
#11159
徹夜城(正月は映像作品とゲームで過ごした管理人) 2022/01/03 23:04
あけましておめでとうございます。
もう三日ですが、謹賀新年。今年こそはもっといろいろ更新したいものです。
その一環としてこの年末年始にある作業をしておりまして、それをもとに執筆作業にとりかかろうとしているところ。何が出てくるかはお楽しみ…ですが一月中にアップできれば御の字かな。
「歴史映像名画座」はもう少し作品が集まってからの更新でしょうねぇ。この年末年始でも「倫敦の山本五十六」「幕末相棒伝」と、なかなか見ごたえのある2作を見ました。どちらもNHKですが、今や歴史ドラマはNHKしか作れないってことか。
ついさっき見ていた「幕末相棒伝」ですが、当初話を聞いたときはずっとイロモノを想像していたんですが、実際に見てみたら思いのほかきっちり歴史ドラマ(幕末ドラマ)になっていて、いい意味で裏切られたと言うか。
>バラージさん
「マンドハイ」「チンギスハーン」の完全版、一応全部見ました。「一応」というのはモンゴル語はわからんので何をしてるかわからないところが一部にあるからで。
「マンドハイ」に関しては、ありゃ、日本公開のカット版のカットの仕方が絶妙でした。1時間以上もカットしてることがほとんど分からないくらい細かく巧みにカットしてました。
ただ完全版では(これは未見の方にはわからん話ですが)ダヤン=ハーンの実母の登場場面が多く、これまで見てきたバージョンだとラストのいきなりの再登場がわかりにくいけど、なるほどもっと登場してたんだ、ということはありました。
「チンギスハーン」の方ですが、確かにカットシーンは多く、あら、こんなシーンも、あんなシーンも、というところはあったのですが、完全版全体ではかえってとっちらかった印象になってしまった、というのが正直なところ。脇役たちの細かい史実なども拾ってましたが、本筋ではないのでかっとしたのも無理はないかなぁ、と実際に見てこれまでの批判的姿勢を変えることにもなりそうです。
#11158
バラージ 2022/01/03 19:41
新年
あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
そういえば徹夜城さんはYouTubeにアップされてる『マンドハイ』『チンギス・ハーン』『項羽と劉邦~背水の陣~』の完全版はご覧になられたのでしょうか? YouTubeの動画は突然なくなっちゃう(消されちゃう)こともあるんで、早めにご覧になられた方がよいかと。
さて、新年からいきなりですが歴史映像名画座の修正情報まとめをまたまた投稿させていただきます。更新がいつなのかはわかりませんが、去年の大河も終わったことですし、まあなんとなく切りのいいところで書いとこうかなと思いまして。
『火の鳥』(実写映画)……復刊ドットコムよりBlu-ray化されています。
『母恋ひの記』……「~谷崎潤一郎「少将滋幹の母」より~」というサブタイトルが付いています。
『陰陽師』……主人公は安部清明ではなく安倍晴明です。
『源義経』(日テレ年末大型時代劇)……原作は大河ドラマと同じく村上元三です。
『GOJOE・五条霊戦記』……『五条霊戦記 GOJOE』が正確な邦題のようです。また平忠則役は岸井一徳ではなく岸部一徳です。
『鶴姫伝奇』……「興亡瀬戸内水軍」というサブタイトルが付いています。
『風雲児信長』……オリジナルの『織田信長』は104分で、戦後公開された『風雲児信長』は短縮版だそうです。
『戦国疾風伝 二人の軍師』……「~秀吉に天下を獲らせた男たち~」というサブタイトルが付いています。
『小説吉田学校』……DVDは東宝から発売されています。
『孫子』……DVDはエースデュースエンタテインメントから発売されています。
『大漢風』……DVD邦題は『大漢風 項羽と劉邦』です。
『三国志 諸葛孔明』……DVDもVHS同様に全3巻です。またエースデュースエンタテインメントから発売されています。
『火龍』……DVDはアット・エンタテインメントから発売されています。『西太后(完全版)DVD-BOX』での発売(『西太后 第一部』『西太后 第二部』『続・西太后』との4本セット)で、バラ売りはないようです(レンタルはバラでされている)。
『末代皇帝』……DVDはコニービデオから発売されています。
『孫文の義士団』……李玉堂役はワン=チェシーではなくワン=シュエチーです。
『黄山伐』……映画祭「シネマコリア 2005」で『黄山ヶ原』の邦題で上映されたとのこと。「黄山ヶ原」と書いて「ファンサルボル」と読むらしく、HuluやAmazonprimeでも同邦題で日本語字幕付きで配信されています。
『ジンギスカン』(1965年の米国映画)……劇場公開邦題は「・」の入った『ジンギス・カン』だったようで、VHS化の際に「・」の抜けた『ジンギスカン』という邦題になったようです。
『チンギス・ハーン』……本国公開年はモンゴル語版と英語版のWikipediaによると1990年のようです。
『マンドハイ』……モンゴル語版Wikipediaを見ると、オリジナルの上映時間は273分のようです(日本公開版は、ぴあによると174分)。
『ソドムとゴモラ』(1962年の映画)……株式会社アネックよりBlu-ray&DVD化されています。
『ピラミッド』……脚本のウィリアム=ホークナーは、正しくはウィリアム=フォークナー。あの有名な小説家のフォークナーのようです。
『侵略者』……VHS邦題は『侵略王アッチラ』です。
『ニュールンベルグ裁判』……頭の「ニ」が削除されて「ュールンベルグ裁判」になってしまっています。
『REIGN/クイーン・メアリー 愛と欲望の王宮』……オリジナルは全78話のようです。
『リベレイター』……「南米一の英雄 シモン・ボリバル」というサブタイトルが付いています。
また、中国史作品に出演している以下の中華圏俳優はそれぞれ同一人物ですので記載を統一したほうがいいかと。
『墨攻』のウー=チーロン、『新忠烈図』の呉奇隆、徒然草の『墨攻』のニッキー=ウー。
『墨攻』『始皇帝暗殺』の王志文と、徒然草の『墨攻』のワン=チーウェン。
『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』の王学圻と、『孫文の義士団』のワン=シュエチー(上記の通りワン=チェシーは誤り)。
『水滸伝』(2011年)の張函予と、『孫文の義士団』のチャン=ハンユー。
『岳飛伝 THE LAST HERO』の劉承俊と、『ラスト・ソルジャー』のユ=スンジュン(韓国俳優です)。
『大明劫』『蒼穹の昴』の余少群と、『1911』のユイ=シャオチュン。
『ラストエンペラー』のウー=ジュンメイと、『宋家の三姉妹』のヴィヴィアン=ウー。
#11157
バラージ 2021/12/30 23:05
ドラマはドラマだ
『青天を衝け』終了ということで、僕も一応軽く感想などを。といっても実は後半はほとんど観てなかったんですよね。序盤の子供時代はいまいちでしたが、本役の吉沢亮に変わってからだんだん面白くなってきて、前半の幕末~洋行編はほぼ全話観てました。ただ真ん中を過ぎたあたりで少々飽きが来てしまい、後半の明治編は時々思い出したように観るといった程度で、ほとんど見逃しちゃいましたね。思えばこのペースは『西郷どん』の時と全く同じだな。まぁ、それでも半分くらいは観たので、10年代以降の大河ではかなり観たほうです。最初に題材が渋沢栄一と聞いた時には興味ねえなあと思ったんですが、やっぱりドラマ(や映画)は題材どうこうよりもまずドラマそのものの出来ですね。と言いつつ最終回も裏番組のほうを観てまして……再放送で回収した次第。
徳川家康の解説は僕も最初はちょっと「ん?」と思いましたが、次第に慣れて特になんとも思わなくなりました。視聴者には結構好評だったみたいですね。井伊直弼は珍しい描かれ方でしたが、最新の研究や学説を反映したものらしく、史学関係者からは評価する声が多いようです。ただドラマとしてはどうなのかなあ? なんだか今一つはっきりしないモヤモヤした描写に感じられ、このあたりが史実と物語の関係性の難しさと言えるのかもしれません。なんで登場したのかよくわかんなかった人といえば序盤に出てきた高島秋帆。正直あんまり意味がなかったような。逆に強い印象を残したのが草なぎ剛が演じた徳川慶喜。近年では『篤姫』で平岳大が演じていた悪役っぽい慶喜の印象が強かっただけに、再評価された感じで良かった。慶喜というと本木雅弘のイメージも強かっただけにどうなのかなと思ってたんですが、草なぎ君はなかなかの好演でしたね。そして吉沢亮の渋沢栄一も予想以上に良かった。ま、全体的にはまあまあ良いドラマだったんじゃないでしょうか(って半分しか観てないのにそう言っていいのかとも思うんだけど)。
あとは最終回を観て、大隈重信は『いだてん』の初回にも出てたなとか、関東大震災も『いだてん』で……とか、原敬暗殺や徳川家達が出てくるのは珍しいとか、ワシントン海軍軍縮条約は香取慎吾の山本五十六の前フリか?とか、そんなところですかね。
新札関係では、来春に民放のどこかで広瀬すず主演で津田梅子の単発ドラマをやるらしい。前の(というか今の)新札が出た時には内山理名主演の樋口一葉もの単発ドラマをやってて、まあまあ面白いドラマでした。僕がそのドラマを観たのはもちろん樋口一葉ではなく内山理名目当てです(笑)。
>観てない歴史映像作品 ヨーロッパ史編 最終回
よ~~やく、ヨーロッパ史終了です。長かった~。でも米国史編がまた多分すっげえ多いんだよなあ……。チャチャッと思わらせるつもりで始めたネタが、意外にネタの分量が多くて越年してしまうというのがここ数年のパターンのような……。まあ僕の見通しが甘いってことなんですが。
・スペイン・ポルトガル史
『ノン、あるいは支配の空しい栄光』……1990年のポルトガル・スペイン・フランス合作映画。ポルトガルの詩人ルイス・ド・カモンイスの『ウス・ルジアダス』をベースに、ポルトガルの各時代の栄光と敗北の歴史を描いた作品で、監督は巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ。日本では2010年になってから公開されたようです。1974年のアフリカ植民地戦争に始まって、紀元前2世紀のローマ軍のルシタニア侵攻、ポルトガル王国の成立、15世紀後半のトロの戦いにおける敗北、15世紀末のアフォンソ王子の落馬死によるイベリア半島統一の挫折、ヴァスコ・ダ・ガマのインド航海、16世紀後半のモロッコ遠征におけるアルカセル・キビルでの敗北などが描かれます。カスティーリャのイサベラ王女役で、ジャッキー・チェンの『スパルタンX』『サンダーアーム』に出てたローラ・フォルネルが出演してるみたい。
『炎のアンダルシア』……1997年のエジプト・フランス合作映画。12世紀のムワッヒド朝が支配するアンダルシアの首都コルドバを舞台に、焚書に抵抗する哲学者アベロエス(イブン・ルシュド)とその周囲の人々を描いた娯楽大作とのこと。インド映画のようなミュージカル調のシーンもあるらしい。
『ゴヤ』……1999年のイタリア・スペイン合作映画。18~19世紀スペインの宮廷画家ゴヤの半生を描いた作品で、監督はカルロス・サウラ。前衛的で難解な映画らしい。
『宮廷画家ゴヤは見た』(原題:Goya's Ghosts)……2006年の米国・スペイン合作映画。ゴヤの肖像画のモデルとなった少女と神父が辿る数奇な運命を通して、異端審問がもたらした悲劇をゴヤの目から描いた作品。監督がミロス・フォアマン、主演はハビエル・バルデムとナタリー・ポートマン。それにしてもなんだ、この『家政婦は見た』みたいな邦題は(笑)。
『裸のマハ』……1999年のフランス・スペイン合作映画。ゴヤの代表作「裸のマハ」を巡る女性たちの愛憎劇を、アルバ公爵夫人の謎の死をモチーフに描いた作品。宰相ゴドイの愛人であるペピータ・トゥドーが主人公で、王妃マリア・ルイーサなども登場。監督はビガス・ルナで、主演はペネロペ・クルス。
『大地と自由』(原題:Land and Freedom)……1995年のイギリス・スペイン・ドイツ合作映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。ビデオ邦題は『ランド・アンド・フリーダム 大地と自由』。人民戦線に参加したイギリス人青年を主人公にスペイン内戦を描いた作品で、ファシストとの戦いだけでなく人民戦線内部のスターリン主義者と反スターリン主義者の路線闘争も描いているとのこと。監督はケン・ローチ。
『ロルカ、暗殺の丘』……1997年のスペイン・米国合作映画。スペイン内戦でファシストによって銃殺された詩人・劇作家のフェデリコ・ガルシア・ロルカの死の真相を、18年後の1954年に新聞記者が追うという作品。主演はアンディ・ガルシア。
『天才画家ダリ 愛と激情の青春』(原題:Little Ashes)……2008年のイギリス・スペイン合作映画。画家のダリと劇作家ロルカの同性愛関係を描いた作品で、邦題はダリをメインにしてますが内容はどちらかというとロルカがメインらしい。
『ゲルニカ』……2016年のスペイン映画。有名なゲルニカ爆撃を、米国人ジャーナリストを主人公にしてラブロマンス要素を加えて映画化した作品。
『サルバドールの朝』……2006年のスペイン映画。1970年代初頭のフランコ独裁政権末期に、反政府活動の資金調達のために銀行強盗をくり返し、25歳の若さで死刑に処せられたサルバドール・ブッチ・アンティックの最期の日々を描いた作品。
『リスボンに誘われて』……2012年のドイツ・スイス・ポルトガル合作映画。偶然手にした古本に心を動かされたスイスの大学教授が、作者の素顔を探るべくリスボンを訪れて人生を見つめ直してゆく姿を描いたヒューマンドラマ映画で、古本作者の半生が1933年から1974年にかけてのポルトガルの長期独裁政権エスタド・ノヴォの時代を背景としているとのこと。監督はビレ・アウグスト、主演はジェレミー・アイアンズ。
・ヨーロッパ史その他
『マルコ・ポーロの冒険』(原題:The Adventures of Marco Polo)……1938年の米国映画。元に来たマルコ・ポーロが恋に冒険に活躍する娯楽映画で、当然ながら元の人たちも全員白人が演じてます。クライマックスはカイドゥの乱で、元寇にも言及されてるらしい。主演はゲイリー・クーパー。
『カンフー東方見聞録』(原題:馬哥波羅)……1975年の香港映画。元に来ていたマルコ・ポーロが、皇帝直属のボディーガード三人衆を率いて、フビライ暗殺を狙う反元派四天王と戦うという完全にフィクションのカンフー映画。原題と違って必ずしもマルコ・ポーロが主人公ではなく、反元派四天王らとの群像劇といった感じらしい。監督はチャン・チェ(張徹)。
『コロンブス』(原題:Christopher Columbus: The Discovery)……1992年の米国映画。コロンブスのアメリカ大陸到達500周年記念作として『1492 コロンブス』と競作になった作品で、こちらは大陸に到達するまでに主眼が置かれ、また劇中でコロンブスはスペイン語名のクリストバル・コロンと呼ばれてるとのこと。なお、タイトルに「Columbus」と付ける権利を『1492~』と裁判で争い、本作側が勝ったため『1492~』はタイトルに「Columbus」と付けられなかったらしい。ビデオ&LD化はされましたがDVD化はされていません。
『カストラート』……1994年のフランス・イタリア・ベルギー合作映画。18世紀のヨーロッパで最も有名なカストラート(ボーイソプラノを維持するために去勢された男性歌手)だったファリネッリの生涯を描いた作品。監督は『仮面の中のアリア』(良い映画でした)などのジェラール・コルビオ。
『シークレット・パラダイス』……2003年のフランス映画。フランスからタヒチへと渡った画家ゴーギャンの半生を描いた伝記映画で、主演はなんとキーファー・サザーランド。妻役がナスターシャ・キンスキー。
『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』……2017年のフランス映画。こちらも同様にゴーギャンの半生を描いた伝記映画で、主演はヴァンサン・カッセル。
『タイタニックの最期』(原題:Titanic)……1953年の米国映画。キャメロン監督版が公開&ソフト化された頃に便乗ビデオ化されてた記憶。
『SOSタイタニック 忘れえぬ夜』(原題:A Night to Remember)……1958年のイギリス映画。DVD邦題は『SOSタイタニック』。やはり便乗ビデオ化されてた記憶。
『失われた航海』(原題:S.O.S. Titanic)……1979年のイギリス映画。これもタイタニック沈没映画で、やはり便乗DVD化されてたような。
『ザ・タイタニック』(原題:Titanic)……1996年の米国のTVムービー。DVD邦題は『ザ・タイタニック 運命の航海』というバージョンもあり。これも便乗DVD化されてたような。出演者がピーター・ギャラガー、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ジョージ・C・スコットなど結構豪華です。
『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』……2014年のフランス映画。ハリウッド女優からモナコ公室に嫁いでモナコ公妃となったグレース・ケリーが、1961~62年のフランス・モナコ間の外交危機に立ち向かうというストーリーですが、伝記映画ではなく、かなりフィクションが混ぜられてるみたい。主演はニコール・キッドマン。
#11156
バラージ 2021/12/27 21:31
切りのいいところで
ヨーロッパ史編くらいは何とか今年中に終わらせたい、ってことであまり間を置かずに書き込み。『青天を衝け』の感想は字数の関係で次回回しにさせていただきます。
>観てない歴史映像作品 イタリア史編
『バルバロッサ 帝国の野望』……2009年のイタリア映画。タイトルやDVDパッケージを見るとルトガー・ハウアー演じる“バルバロッサ”ことフリードリヒ1世が主人公みたいですが、そうではなくてバルバロッサの侵攻と戦うロンバルディア同盟側のアルベルト・ダ・ジュッサーノという人が主人公。イタリア映画なのになぜか全編英語らしく、またオリジナルは139分のようですが日本版DVDは124分の短縮版のようです。
『神の道化師、フランチェスコ』……1950年のイタリア映画。アッシジのフランチェスコの逸話集を基に10のエピソードで構成した作品で、監督はネオ・レアリズモの巨匠ロベルト・ロッセリーニ。脚本はフェデリコ・フェリーニとの共同で、出演しているのは実際のフランシスコ会修道士とのこと。
『ブラザー・サン シスター・ムーン』……1972年のイタリア映画。やはりアッシジのフランチェスコを題材とした作品で、上記『神の道化師~』より前の時代を描いているとのこと。フランチェスコとその弟子たちの初期の様子を描いた作品で、宗教臭の薄い青春群像劇的な映画らしい。監督はフランコ・ゼフィレッリ。
『フランチェスコ』……1989年公開のイタリア・西ドイツ合作映画。やはりアッシジのフランチェスコを題材とした作品で、『ブラザー~』と『剣と十字架』の間くらいの時代を扱ってるらしい。監督はリリアーナ・カヴァーニ、主演はミッキー・ロークで、共演がヘレナ・ボナム・カーター。1990年に日本で劇場公開されたんですが、これは映画館で観ました。なんで観に行ったかは全然思い出せないし、映画の内容もほとんど覚えてないけど、退屈な映画だった記憶があります。その時の公開版は135分の英語版だったらしいんですが、それも覚えてないなあ。ビデオ&LDはそちらのバージョンのみ。2008年に157分のイタリア語吹替ノーカット完全版が日本でも公開されたとのことで、DVDはそちらのバージョンのみ。
『ボルジア家 愛と欲望の教皇一族』(原題:The Borgias)……2011年~2013年の米国のテレビドラマ。ローマ教皇アレクサンデル6世でもあるロドリーゴ・ボルジアとその一族を描いた作品で、監督はニール・ジョーダン、主演はジェレミー・アイアンズ。シーズン4で完結する予定が、シーズン3で打ち切りになったとか。
『ボルジア 欲望の系譜』……2011年~2014年のフランス・ドイツ合作のテレビドラマ。上記作品と同様の題材で同時期に製作された作品ですが、これは全くの偶然らしい。こちらはシーズン3で完結したようですが、日本では放送・DVD化ともにシーズン2までで打ち切りになったそうです。
『ボルジア家の毒薬』……1953年のフランス・イタリア合作映画。ルクレチア・ボルジアの半生を、兄チェザーレ・ボルジアの謀略と共に描いた作品。
『カラヴァッジオ』(原題:Caravaggio)……1986年のイギリス映画。16世紀末から17世紀初めの画家カラヴァッジオの生涯を描いた映画ですが、彼の絵画から再構成したような作品らしく、創作もかなり混ぜられてるとのこと。監督は前衛派のデレク・ジャーマンで、電卓やタイプライターやトラックなどが出てくるらしい。
『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』……2007年のイタリア映画。こちらもカラヴァッジオ(カラヴァッジョ)の伝記映画で、本国イタリアでは全2話のテレビ・ミニシリーズとして放送されたそうですが、日本では劇場用映画として1本にまとめられ133分に編集して2010年に公開されたそうです。
『プッチーニの愛人』……2008年のイタリア映画。1909年に起こった、作曲家プッチーニの妻に愛人という疑いをかけられたメイドが自殺した「ドーリア・マンフレーディ事件」の真相を、推測を交えて描いた作品とのこと。
『ムッソリーニ 愛と闘争の日々』(原題:Mussolini: The Untold Story)……1985年の米国のTVミニ・シリーズ。ムッソリーニが政権を握った1922年から、1945年に銃殺されるまでの半生を描いた伝記ドラマで、主演はジョージ・C・スコット。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。
『鉄人長官』……1977年のイタリア映画。ムッソリーニ政権下の1920年代に、シチリア島のパレルモ知事としてマフィアを徹底的に弾圧した政治家チェーザレ・モーリを主人公とした作品。主演はジュリアーノ・ジェンマで、共演がクラウディア・カルディナーレ。
『ムッソリーニと私』……1983年のイタリアのTVミニ・シリーズ。ムッソリーニと彼の娘婿で外相でもあったガレアッツォ・チャーノ伯爵の関係を描いたドラマで、1930年のチャーノとムッソリーニの娘エッダの結婚から、1944年のチャーノの処刑までを描いてるようです。出演はボブ・ホスキンス、アンソニー・ホプキンス、スーザン・サランドン。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。
『ムッソリーニとお茶を』(原題:Tea with Mussolini)……1998年の米国映画。ムッソリーニ政権下の1930~40年代のフィレンツェを舞台として、イタリア人少年とイギリス婦人たちの交流を描いた作品で、フランコ・ゼフィレッリ監督の自伝的作品とのこと。タイトル通りムッソリーニも登場するようです。
『ライフ・イズ・ビューティフル』……1998年のイタリア映画。ムッソリーニによるファシズム政権下の北イタリアに駐留してきたナチス・ドイツによるホロコーストを題材としたヒューマンドラマ映画で、監督・主演はロベルト・ベニーニ。
『ブラック・シャツ 独裁者ムッソリーニを狙え!』……1974年のイタリア映画。第二次大戦末期のパルチザンに追われるムッソリーニの最期の日々を描いた史劇映画で、主演はロッド・スタイガー。ヘンリー・フォンダやフランコ・ネロも出演しています。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。
『クラレッタ・ペタッチの伝説』……1984年のイタリア映画。ムッソリーニ最後の愛人で、彼と共にパルチザンに銃殺されたクラレッタ・ペタッチの伝記映画。主演はクラウディア・カルディナーレ、共演はカトリーヌ・スパーク、ジュリアーノ・ジェンマ。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。
『狂った血の女』……2008年のイタリア・フランス合作映画。ムッソリーニ政権下のイタリアで、ファシストの協力者でありコカインに溺れる生活を送っていた俳優オズワルド・バレンティの愛人だった女優ルイザ・フェリーダを描いた作品。主演はモニカ・ベルッチ。
『シシリーの黒い霧』……1962年のイタリア映画。シチリア島で戦中から戦後にかけて活動した山賊で、シチリア独立運動やマフィアとも関わったサルヴァトーレ・ジュリアーノの1950年の暗殺の謎をセミ・ドキュメンタリータッチで描いた社会派作品。監督はフランチェスコ・ロージ。出演者は2人を除いて全て現地住民とのこと。
『シシリアン』(原題:The Sicilian)……1987年の米国映画。サルヴァトーレ・ジュリアーノの半生を描いた伝記映画で、マリオ・プーゾの原作をシチリア・ロケで映画化。監督はマイケル・チミノ、主演はクリストファー・ランバート。日本で劇場公開されたのは115分の短縮版で、DVDは140分のノーカット版とのこと。
『黒い砂漠』……1972年のイタリア映画。中東などの石油産出権をめぐり米国国際石油資本と真っ向から対立したENI(イタリア国営炭化水素公社)総帥エンリコ・マッテイの、1962年の謎の飛行機事故死からさかのぼって彼の半生を描いていく社会派伝記映画。監督はフランチェスコ・ロージ、主演はジャン・マリア・ヴォロンテ。劇場公開はされましたがソフト化はされていません。
『プロジェクトV(バイオント) 史上最悪のダム災害』……2001年のイタリア・フランス合作映画。1963年にイタリアのバイオント・ダムで起きた、犠牲者2000名以上を出した地すべり・溢水災害を描いた作品。オリジナルは116分のようですが、日本版DVDは99分の短縮版のようです。
『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』……2012年のイタリア映画。1969年にミラノのフォンターナ広場に面した全国農業銀行が爆破され、未解決のままに終わった謎のテロ事件「フォンターナ広場爆破事件」の闇に迫った社会派映画。旅先で入った映画館で予告編を見て、観たいなと思ってたんですが地元では公開されず、レンタルDVDで観ようと思ったらあっという間に撤去。テレビでも放送されず、未だに観ることができていません。
『イヤー・オブ・ザ・ガン』(原題:Year of the Gun)……1991年の米国映画。ビデオ&LD化はされましたがDVD化はされていません。1978年のローマを舞台に、米国人ジャーナリストが極左テロ組織“赤い旅団”に追われる姿を描いたポリティカル・サスペンス。原作小説は元々はノンフィクションだったんだけど脅迫されて小説の形をとったんだとか。監督はジョン・フランケンハイマー、出演はアンドリュー・マッカーシー、シャロン・ストーン、ヴァレリア・ゴリノ。
『夜よ、こんにちは』……2003年のイタリア映画。1978年に起こった“赤い旅団”によるアルド・モロ元首相誘拐暗殺事件を、犯人側の視点から描いた社会派映画。監督はマルコ・ベロッキオ。
『法王の銀行家 ロベルト・カルヴィ暗殺事件』……2002年のイタリア映画。ヴァチカンをめぐる金融スキャンダルの末に、1982年に謎の死を遂げた銀行頭取ロベルト・カルヴィの事件を描いた作品。
『シチリアーノ 裏切りの美学』……2019年のイタリア・フランス・ブラジル・ドイツ合作映画。1980年代に組織を裏切り、司法当局に協力したマフィアの大物トンマーゾ・ブシェッタを描いた実録犯罪映画。監督はマルコ・ベロッキオ。
『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』……2008年のイタリア映画。1970~90年代に7期に渡ってイタリア首相を務める一方、絶大な権力のもと多くの犯罪や汚職に手を染めた政治家ジュリオ・アンドレオッティを主人公とした社会派映画。
>観てない歴史映像作品の追記
・フランス史
『ベルサイユ』……2015~2018年のフランスのテレビドラマ。ルイ14世の若き日を描いた全3シーズンの作品で、Netflixでは『ベルサイユ』(シーズン2まで配信中)、チャンネル銀河では『ヴェルサイユ』という邦題になってます。
・イギリス史
『ホワイト・クイーン 白薔薇の女王』(原題:The White Queen)……2013年のイギリスのテレビドラマ。薔薇戦争を描いた作品で、エリザベス・ウッドヴィルが主人公。
『ホワイト・プリンセス エリザベス・オブ・ヨーク物語』(原題:The White Princess)……2017年の米国のテレビドラマ。上記『ホワイト・クイーン』の続編ですが、なぜか米国で製作されたらしい。主人公はエリザベス・オブ・ヨーク。
#11155
徹夜城(また一つ大河を見終えた管理人) 2021/12/26 23:00
本日は青天も終わり
本日で大河ドラマ「青天を衝け」が終わったということで、僕も完走後の感想など。
渋沢栄一、という経済人が主役、しかも昭和まで入ってしまう近代大河ということで意欲的ではあったろうし、今後の大河ドラマの一つの方向性を試した感がありました(「いだてん」にも通じます)。
ただ、やっぱり渋沢栄一主役というのはドラマを展開しにくいなぁと思ってみていました。特に前半の幕末編は栄一当人とは離れたところでの歴史ドラマ展開が目立ち、栄一ドラマ部分はその狭間に描かれる。実質「徳川慶喜」のリメイクになってるところも多かったです。その中で当時はまるで無名だった一青年の幕末青春というのもあったんだな、とその点では新鮮でもありました。
栄一がフランスに滞在したあたりから栄一自身のドラマ展開が出てきて後半へいよいよ主役になっていくわけなんですが、正直なところ経済人というのは描きづらいようで、いつの間にやら栄一が財界の大物になっていた…ってな印象も受けていました。この辺、放送回数が短くなったことも影響してるんでしょうか。
まぁそうあれこれ言いつつも毎回そこそこ面白く見ていたのは確かで…脇役に有名歴史人物がちょこちょこと出てきますし、ナポレオン三世やらグラントやら孫文やら、世界史有名人の登場がこれまでになく多い大河でもありました。またみんなソックリで。
その一方で栄一、いくらなんでも老けなさすぎ(笑)。最終回の90歳でもあの程度ですもんね。その最終回に特に濃厚に出たと思うのが、「現代」とのリンク。栄一たちが生きていた時代の延長上に我々がいる、ということを明確に意識させましたし、北里柴三郎(あ、そうか、新札仲間だ)を登場させてのマスク着用だの、国際関係の問題など今日と重なるテーマを、いささかわざとらしくもあったけど載せてきたのは趣向として面白かったし、近代大河ならではでしょう。
…まぁ、最大の問題はなんで徳川家康が解説役なのか、ということでしたが。
#11154
HN・カプラン 2021/12/26 19:51
今年の大河ドラマ寸評 (いつまで続くかな? ^_^;)
ご無沙汰しております。HN・カプランでございます。
1.大河ドラマ『青天を衝け』が本日終わりを迎えました。
まことにお疲れ様でございました。
今年の感想はと言いますと…、ストーリー進行が最後まで苦しかったと
いうのが第一印象でした。
もともとタイトな放送日程であった上、主人公の生涯が長く(といいます
か、時代変遷が激しくて)、どのエピソードを取り上げればよいのか取捨選択
に幅がある等々も相俟って、ストーリーの掘り下げ方が中途半端な感じが否
めなく…――事件をこなし、ショートカットしていくように映ってしまった。
(井伊大老のあっさり退場してしまったなあ…。)
作劇に一本「芯」のようなものを貫くものが何かあるかな、と探してみると、
主人公の終生あまり変わらなかった性格でしょうか――「いいや、違う!」と
いう…。ただ、これも見方によっては「あんまり成長しない人だなあ…。」とも
思える…。
何と言いますか、料理に例えると、材料として海の幸あり、山の幸ありでは
あるが、その料理の仕方に苦しんだ――という感じでしょうか。
(最後の方は苦しかった。どうやって花を持たせながら登場人物の退場させるか、
それに腐心していた…、んですが、結局は消化試合的になってしまったか? )
ずいぶんな感想を書いているような気がしますが、最近のドラマの演出って
破綻しているものがめっきり減っているとは感じます。それはこのドラマにも
当てはまると思います。迷走しているとまでは感じませんでした――ただ、
それを安心感があると呼ぶか、事件が起きる割には淡々としていると呼ぶか、
そこは視聴者の判断次第と思いますが。
まあ、そんなところです。
2.ところで話が少し変わりますが、大河ドラマがもっているテイストって、
今更ながら随分変化したなあと思いました。
かつてであると、1年かけて重厚に、スペクタクルを手を変え品を変え
見せるというのが王道という作劇だったと思いますが、今はずいぶん
変わった――少なくとも主流の在り方ではなくなった。むしろ、煙たがられ
さえされるかもしれません。
私のようなものよりも、ドラマの方が時代の先へ行っているのかも
しれません。
かつての私は、自分が感想を書く際、多少なりとも共感を得れれば、と思って
いたのですが、今はなかなかどうして難しい――むしろ、そういうスタンスは
傲慢かな、とさえ思っています。
大河ドラマが時代を経て受け入れられる――もっと言うとサイバブを狙って
いるのであれば、時代に応じた適応が必要です。しかしそれが安易な迎合に
転じてほしくはない。大袈裟ですが、築いてきた伝統を昇華しながら、適応して
いってほしい。私がお目汚ししております感想が、そのための踏み石になるので
あれば、本望であーる(笑)。
まあ、最近はこんなコンセプトでやっていきたいなあと感じております。
来年は、三谷氏の大河ドラマか…。味は保証されているが、なんか食い足りない
ものにならなければよいが ^_^:
こんなところでお暇します。では…。
#11153
バラージ 2021/12/24 22:18
これはなかなか興味深い映画だよ、ワトソン君
>観てない歴史映像作品 イギリス・アイルランド史 後編
『ベル ある伯爵令嬢の恋』(原題:Belle)……2013年のイギリス映画。18世紀に実在した、イギリス海軍士官と黒人女性の間に生まれた褐色の肌を持つ伯爵令嬢ダイド・エリザベス・ベルの半生をフィクションを交えて描いた恋愛伝記映画。
『英国万歳!』(原題:The Madness of King George)……1994年のイギリス・米国合作映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。1788年に国王ジョージ3世が突如乱心して異常な行動を繰り返すようになり、それによってもたらされた王室や政府の大混乱を描いたブラック・コメディ。舞台劇の映画化で、監督は舞台版の演出も務めたニコラス・ハイトナー。
『美女ありき』(原題:Lady Hamilton)……1940年のイギリス映画。エマ・ハミルトン夫人とネルソン提督の不倫の恋を描いた恋愛映画で、実際に不倫の末に再婚したヴィヴィアン・リーとローレンス・オリヴィエが主演。
『ピータールー マンチェスターの悲劇』(原題:Peterloo)……2018年のイギリス映画。平和的なデモに武装した政府軍が突入して多数の死傷者を出した1819年のピータールーの虐殺を描いた映画。監督はマイク・リー。
『進め龍騎兵』(原題:The Charge of the Light Brigade)……1936年の米国映画。ビデオ&DVD邦題は『進め竜騎兵』。クリミア戦争のバラクラヴァの戦いを背景とした戦争映画で、登場人物はほとんどが実在ながらフィクション部分も多いようです。主演はエロール・フリンとオリヴィア・デ・ハヴィランド。
『遥かなる戦場』(原題:The Charge of the Light Brigade)……1968年のイギリス映画。上記作品のリメイクですが、ストーリーを大幅に変えて史実に比較的忠実な作品にしているとのこと。監督はトニー・リチャードソン。
『アメイジング・グレイス』(原題:Amazing Grace)……2006年のイギリス映画。奴隷貿易制度撤廃のために戦った18世紀の政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの生涯を、彼の師であるジョン・ニュートンが作詞した名曲「アメイジング・グレイス」の誕生秘話と共に描いた伝記映画。
『ヴィクトリア女王 最期の秘密』(原題:Victoria and Abdul)……2017年のイギリス・米国合作映画。ヴィクトリア女王晩年のインド人従僕アブドゥル・カリムとの交流を描いた映画で、主演は2度目のヴィクトリア役となったジュディ・デンチと、アリ・ファザル。
『シャーロック・ホームズの冒険』(原題:The Private Life of Sherlock Holmes)……1970年の米国映画。名匠ビリー・ワイルダーが構想に10年かけたオリジナル作品で、4エピソード4時間の大作として製作したものの配給会社からクレームがついたため、編集で2エピソードをカットし1エピソードをプロローグにして事実上1エピソードのみの映画になってしまったとか。しかもそのエピソードが国家機密と関わる話で原題と異なりホームズの私生活を描いたものではない上に、比較的シリアスな話のためワイルダーらしい軽妙な洒脱さにも欠けるという、当初の構想とはだいぶ異なるものになってしまったようです。ネス湖のネッシーが出てくる映画としても有名で、ヴィクトリア女王も出てくるらしい。ちなみにヴィクトリア女王は当時出版されたばかりのホームズを愛読してたそうで、世間を賑わせてた切り裂きジャック事件を解決するためにホームズのように捜査しろとソールズベリー首相やマシューズ内務大臣に指示したりしてたとか。迷惑な素人探偵だなぁ(笑)。
『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』(原題:The Seven-Per-Cent Solution)……1976年の米国・イギリス合作映画。ニコラス・メイヤーが自身の執筆したパスティーシュを自ら脚色し、ハーバート・ロスが監督した作品。出演はニコル・ウィリアムソン、アラン・アーキン、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ロバート・デュヴァル、ローレンス・オリヴィエなど豪華キャスト。これは確か中高生の頃にテレビの吹替放送で観ました。面白かったですね。ホームズものに精神分析学者フロイトを絡めるというアイデアが秀逸でしたし、モリアーティの設定とかも非常によく出来てて、ホームズファンとしても感心しました。
『シャーロック・ホームズの冒険』(原題:The Adventures of Sherlock Holmes)……1984~94年のイギリスのテレビドラマ。日本ではNHKで1985~95年に放送された有名なドラマです。これは面白かったですね~。19世紀末イギリスの雰囲気を再現した風景やセット・美術が素晴らしいし、ホームズ役のジェレミー・ブレット、そしてその吹替の露口茂がまさにホームズそのもの! あのオープニング&エンディングの音楽も思い出深いなあ。途中でワトソン役の俳優が交代した時はちょっとびっくりしたけど。ブレットの死により原作完全ドラマ化がならなかったのは残念です。子供の頃に読んで面白かった『三人の学生』もドラマ化されてないんだな。とはいえ実は全話はたぶん観てないかも。観逃した回も結構あったような。再放送も何度もされているとのことで、実は今もBSで水曜日に放送されてるんですが、裏番組のほうを録画してるもんで……。
『シャーロック・ホームズ』(原題:Sherlock Holmes)、『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』(原題:Sherlock Holmes: A Game of Shadows)……2009年と2011年の米国映画。1作目だけ映画館で観ました。ガイ・リッチー監督によるオリジナル作品で、ホームズ役がロバート・ダウニー・Jr.、ワトソン役がジュード・ロウ。推理映画やミステリー映画というよりほとんどアクション映画で、CGによる特撮も使いまくり。街の風景・背景などもほとんどがCGで、19世紀というよりレトロな近未来といった感じでしたね。正直言ってホームズものである必要性もほとんどないような……。
『フロム・ヘル』(原題:From Hell)……2001年の米国映画。有名な切り裂きジャック事件を題材としたイギリスの大ヒット・コミックの映画化ですが、原作からは大きく改変されており、原作では脇役の人物が主人公になっているとのこと。史実に基づく時代描写のもと、アヘン中毒の警部が仲間を亡くした娼婦の協力を得て事件を追うといった作品のようです。登場人物はほとんどが実在の人物のようですが、お話自体は確信犯的にフィクション。主演はジョニー・デップとヘザー・グラハム。
『戦争と冒険』(原題:Young Winston)……1972年のイギリス映画。後に首相となるチャーチルが政治に目覚めていくまでの青年時代を彼の自伝を基に映画化した作品で、監督はこれまた後に巨匠となるリチャード・アッテンボローの監督2作目。
『未来を花束にして』(原題:Suffragette)……2015年のイギリス映画。1910年代のイギリスで婦人参政権を求めて闘った女性たちの姿を実話をもとに描いた作品で、主演はキャリー・マリガン。共演にヘレナ・ボナム=カーター、メリル・ストリープなど。
『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』(原題:W.E.)……2011年のイギリス映画。エドワード8世とその妻ウォリス・シンプソンの「王冠を賭けた恋」と現代ニューヨークに暮らす1人の女性の物語を交錯させて描いた歌手マドンナの監督作。歴史上の話と現代の架空人物の話を行ったり来たりする構成のようです。
『チャーチル ノルマンディーの決断』(原題:Churchill)……2017年のイギリス映画。ノルマンディー上陸作戦に最後まで反対したチャーチルの、上陸作戦決行までの96時間の苦悩を描いた作品。
『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』(原題:A Royal Night Out)……2015年のイギリス映画。1945年5月、第二次欧州大戦終結を祝うヨーロッパ戦勝記念日に、19歳の王女時代のエリザベス2世が非公式に一夜の外出を許されたという実話を基にしたフィクション作品。
『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years』(原題:The Beatles: Eight Days a Week - The Touring Years)……2016年のイギリスのドキュメンタリー映画。ロン・ハワード監督がビートルズのライブ活動期に焦点を当て、ビートルマニアと呼ばれた社会現象を通して描き出した「ザ・ビートルズ」の公式ドキュメンタリーで、関係者などのインタビューを織り交ぜながら、初期のリバプール時代から1963年に始まった15カ国90都市166公演におよぶツアー、そして観客の前での最後の演奏となった1966年のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パーク公演までのライブ映像を中心に編集されているとのこと。日本公開版は1966年の来日時のエピソードが長めに収めらた特別版で、日本武道館でのライブシーンや来日時のビートルズの撮影を担当したカメラマン浅井慎平のインタビューも盛り込まれているそうです。
『ブラディ・サンデー』(原題:Bloody Sunday)……2002年のイギリス・アイルランド合作映画。1972年に北アイルランドのデリーでデモ隊と軍隊が衝突し13人の死者を出した「血の日曜日事件」をドキュメンタリータッチで描いた作品。
『父の祈りを』(原題:In the Name of the Father)……1993年のイギリス・米国合作映画。1974年のIRAによるものと疑われる爆破テロ容疑で、無実の罪で逮捕された冤罪事件「ギルフォード・フォー事件」の被害者ジェリー・ロンドンの追想記を原作とした社会派作品。監督はジム・シェリダンで、主演はダニエル・デイ・ルイス。
『HUNGER ハンガー』(原題:Hunger)……2008年のイギリス映画。DVD邦題は『HUNGER/ハンガー 静かなる抵抗』。1981年、北アイルランドのメイズ刑務所に収監され、サッチャー政権の弾圧で政治犯としての権利も奪われていたIRAのボビー・サンズらが抗議のためにハンガー・ストライキを実行した実話の映画化。監督はスティーヴ・マックィーンで、主演はマイケル・ファスベンダー。
『ダイアナ』(原題:Diana)……2013年のイギリス映画。ダイアナ元皇太子妃の最後の2年間の映画化。監督はオリバー・ヒルシュビーゲルで、主演はナオミ・ワッツ。
・アイルランド史
『リベンジャー・スクワッド 宿命の荒野』(原題:Black '47)……2018年のアイルランド・ルクセンブルク・ベルギー合作映画。ジャガイモ飢饉下の1847年のイギリス領アイルランドを舞台とした陰惨な復讐劇のアクション映画。
『ヴェロニカ・ゲリン』(原題:Veronica Guerin)……2003年の米国映画。アイルランドのダブリンで麻薬犯罪の実態を追い続け、1996年に凶弾に倒れたサンデー・インディペンデント紙の記者ヴェロニカ・ゲリンの半生の映画化。監督はジョエル・シュマッカーで、主演はケイト・ブランシェット。
>観てない歴史映像作品の追記
・中国前近代史
『武神』(原題:辛棄疾1162)……2020年の中国映画。1162年に金に反乱を起こして南宋に投降した辛棄疾を主人公としたアクション史劇映画。
・フランス史
『ジャッカルの日』(原題:The Day of the Jackal)……1973年のイギリス・フランス合作映画。実際のド・ゴール大統領暗殺未遂事件に着想を得た、ジャッカルという殺し屋と彼を阻止しようとする警察の戦いを描く社会派サスペンス映画。原作はフレデリック・フォーサイスの同名小説で、監督はフレッド・ジンネマン。1997年の米国のリメイク映画『ジャッカル』は設定が大幅に変わっており、歴史要素は全くなし。
・イギリス史?フランス史?
『征服王ウィリアム ソード・コンクエスト』……2015年のフランス映画。後にイギリス王室の開祖となったノルマン朝の初代イングランド王ウィリアム1世の、イギリスに渡る前のノルマンディー公時代を描いた作品。
#11152
バラージ 2021/12/18 22:40
義時小説
いやぁ~、今年の漢字一文字は「金」に決まりましたね。なんだかんだ言って世の中やっぱり「金」だよね~。え?……あれ、「かね」じゃないのお!? などといった誰もが思い付く小ボケはそれくらいにして(ま、漢字だから正確には「かね」でも別に間違いではないんだけど)。森友改竄問題、まさか国があんな手に出るとは。いくらなんでも姑息過ぎやしないか。そういうことをされちゃうと、「国(正確には政府や官公庁などの国家機関)」というものに対する信頼感が著しく損なわれてしまうと思うんですが。
高橋直樹『北条義時 我、鎌倉にて天運を待つ』(潮文庫)を読了。高橋氏の小説は短編集『鎌倉擾乱』、連作短編『霊鬼頼朝』、長編『天皇の刺客』(文庫題:曾我兄弟の密命)と読んできて、いずれも面白かったんですが、10年ほど前の大河便乗っぽい中編『源氏の流儀』がいまいちだったんで、今回の大河便乗小説(なのは明らか)もちょっと不安だったんですよね。でも杞憂でした。今回のは上記3作と同じお得意の時代だからか、しっかりと読みごたえのある小説でした。
すでに何度も小説で描いた時代のためか、あまり有名ではないマイナーな人物にスポットライトが当てられており、佐原義連、榛谷重朝、仁田忠常、加藤景廉、天野遠景などといった、僕のような源平ファンでも「なんか名前を聞いたことがあるな」程度の人々がクローズアップされ、その人物像が生き生きと造形されています。
その一方で肝心の義時の出番が主人公にしては多くなく、また人物造形も今一つはっきりしない。あえて言えば「普通の人」に近く、時折観察眼の鋭さや大局を見通す姿を見せるものの、基本的にはタイトル通り「運のいい人」といった感じ。近年の研究を反映してか必要以上に名政治家や謀略家には描いておらず、それだけに個人的にも非常に納得できる義時像ではあるんですが、小説の主人公としてはどうなのかなと。個人的には普通の人・義時が運の良さと時折見せる頭の良さで勝ち残っていく飄々とした感じがわりと面白かったんですが、さすがにクライマックスの承久の乱で全然出てこなくなっちゃうのはなあ。戦場にいないから仕方がないとはいえ、なんだか戦場で戦う息子の泰時のほうが主人公みたいになっちゃってました。
また、これは紙数の関係かもしれませんが、義時の妻妾が全く登場しません。そもそも女性の登場が少なく、政子はさすがにある程度は登場するものの、あとは継母(時政後妻)の牧の方が多少登場する程度。過去の作品でも印象に残る女性が少ないので、あるいは高橋氏は女性を描くのは苦手なのかも。息子も泰時しか登場しないため妻子絡みのエピソードがほとんどなく、その点は物足りなかったですね。
とはいえそのような欠点もありつつも、基本的には面白い小説でした。政子や実朝の人物像も僕の考えにドンピシャで、たぶん考えが僕に近いというか合ってるんでしょう。唯一、泰時の人物造形にはしっくり来ないところがあったんですが、これも他の妻子が出てこない影響かと。義時の家臣の金窪行親が元は童子(寺院に入った得度前の少年)で殺しを生業としてたという設定は、高橋氏の他の作品に出てくる頼朝の雑色(架空人物)と同類のキャラクターですが、こちらは実在の人物のためやや違和感あり(そういや大河ドラマ『北条時宗』の平頼綱もそんな設定だったっけ・笑)。とはいえ小説としてはその人物造詣が際立ってましたね。
ま、とにかくなかなか面白い小説なんで、興味があればご一読を。潮(うしお)文庫というマイナーレーベルなんで探すのがめんどいかもですけど。
#11151
バラージ 2021/12/15 21:46
愛しのロビン・フッド様(古すぎ)
>観てない歴史映像作品 イギリス・アイルランド史 前編
イギリス・アイルランド史もこれまためちゃ多いんで2回に分けます。アーサー王ものはあまりに多すぎるんでファンタジー色の強そうなものは除外しました。
・イギリス史
『センチュリオン』(原題:Centurion)……2010年のイギリス・フランス合作映画。紀元117年、古代ローマ帝国時代のブリテン島における第9軍団と先住民族ピクト人の戦いが題材なんだけど、話のほとんどが壊滅した第9軍団生き残りの逃走劇らしい。主人公の第9軍団百人隊長役がマイケル・ファスベンダーで、ピクト人の女戦士役にオルガ・キュリレンコ。
『円卓の騎士』(原題:Knights of the Round Table)……1953年の米国映画。トーマス・マロリーの著作を基にしたアーサー王伝説の映画で、ランスロット役がロバート・テイラー、グィネヴィア役がエヴァ・ガードナー、アーサー王役がメル・ファーラー。
『キャメロット』(原題:Camelot)……1967年の米国映画。アーサー王伝説を題材とした同名ブロードウェイ・ミュージカルの映画化で、アーサー王役がリチャード・ハリス、グィネヴィア役がヴァネッサ・レッドグレーヴ、ランスロット役がフランコ・ネロ。
『湖のランスロ』……1974年のフランス・イタリア合作映画。クレティアン・ド・トロワの著作を基にロベール・ブレッソン監督が素人の俳優を起用して描いた聖杯探究伝説の後日譚とのこと。人物名の日本語表記がフランス語発音準拠で、ランスロットがランスロ、グィネヴィアがグニエーヴル、アーサー王がアルテュス王となっているようです。
『聖杯伝説』……1978年のフランス・西ドイツ・イタリア合作映画。やはりトロワの著作を基にペルスヴァル(パーシヴァル)を主人公とした作品で、エリック・ロメール監督作ですが、かなりの異色作とのこと。
『トゥルーナイト』(原題:First Knight)……1995年の米国映画。個人的にリアルタイムだったアーサー王映画はこれ(観てないけど)。監督が『ゴースト ニューヨークの幻』のジェリー・ザッカーだけにラブ・ロマンス要素を強調した作品らしく、アーサー王役がショーン・コネリー、ランスロット役がリチャード・ギア、グィネヴィア役がジュリア・オーモンド。
『キング・アーサー』(原題:King Arthur: Legend of the Sword)……2017年の米国・イギリス・オーストラリア合作映画。今のところ最新版のアーサー王映画ですが、ガイ・リッチー監督が『シャーロック・ホームズ』同様にCG満載で大幅に換骨奪胎しちゃった今風アクション映画のようで、世界中で大コケしたらしく全6部の予定がこの1作目で終わりとなったようです。悪役のヴォーティガン役がジュード・ロウ。
『ロビンフッドの冒険』(原題:The Adventures of Robin Hood)……1938年の米国映画。古典的なロビン・フッド映画のようで、ロビン役がエロール・フリン、マリアン役がオリヴィア・デ・ハヴィランド。
『ロビン・フッド』(原題:Robin Hood Prince of Thieves)……1991年の米国映画。個人的にリアルタイムだったロビン・フッド映画で(でも観てない)、主演はこの頃が絶好調だったケヴィン・コスナー。今になって改めてストーリーを読むと、モーガン・フリーマン演じるムーア人の仲間がいるとか、悪玉がジョン王ではなくてジョージという架空の悪代官とか、話をいろいろといじってるようですね。他にもクリスチャン・スレイター、メアリー・エリザベス・マストラントニオ、アラン・リックマンと豪華な配役というか懐かしいというか。
『ロビン・フッド』(原題:Robin Hood)……1991年のイギリス映画。本家イギリス版で、上記コスナー版と競作になったものの、マリアン役のユマ・サーマン以外は主人公も含めてキャスティングが圧倒的に地味。そのためもあってか米国ではTVムービーになってしまい、日本では劇場公開はされたものの、ビデオ化のみでDVD化はされていません。
『ロビン・フッド キング・オブ・タイツ』(原題:Robin Hood: Men in Tights)……1993年の米国・フランス合作映画。ビデオ&LD化はされたもののDVD化はされていません。ビデオ邦題は『ロビン・フッド 伝説のタイツ男』(LD邦題は劇場公開邦題のまま)。メル・ブルックス監督による上記コスナー版のパロディ映画です。主演はケイリー・エルウェス。
『フッド:ザ・ビギニング』(原題:Robin Hood)……2018年の米国映画。今のところ最新版のロビン・フッド映画なのかな? 邦題通りロビン・フッドのお話の前半戦で、リトル・ジョンを十字軍時代に敵だったムスリムの最強戦士ジョンとしてジェイミー・フォックスに演じさせるなど、やはり大幅な換骨奪胎がなされているようです。
『レジェンド・オブ・アロー ロビンフッドの娘』(原題:Princess of Thieves)……2001年の米国のTVムービー。ロビン・フッドにも娘がいました(笑)。ディズニー製作のオリジナル作品で、キーラ・ナイトレイの初主演作とのこと。
『アイアンクラッド』(原題:Ironclad)、『アイアンクラッド ブラッド・ウォー』(原題:Ironclad: Battle for Blood)……2010年のイギリス・米国・ドイツ合作映画とその続編の2013年のイギリス映画。1作目は1215年の第一次バロン戦争におけるロチェスター城の戦いを舞台としたアクション史劇映画で、ジョン王が悪者。続編『~ブラッド・ウォー』は5年後の1221年が舞台でケルト人との戦いの話。
『キングス・オブ・ブレイブ』(原題:Robert the Bruce)……2019年の米国・オーストラリア・イギリス合作映画。ロバート・ザ・ブルースことスコットランド王ロバート1世を主人公とした作品。主演は『ブレイブ・ハート』でもロバート役を演じたアンガス・マクファーデン。
『エドワードII(セカンド)』(原題:Edward II)……1991年のイギリス・日本合作映画。16世紀イギリスの劇作家クリストファー・マーロウの戯曲『エドワード二世』をデレク・ジャーマン監督が映画化した作品で、エドワード2世と寵臣ガヴェストンの同性愛関係を自らもゲイであるジャーマンが描いているとのこと。ジャーマンらしく前衛的な作品で、中世史劇に現代風の美術や衣装を混入させた映画(ディカプリオの『ロミオ&ジュリエット』みたいな)だそうです。
『ホロウ・クラウン 嘆きの王冠』(原題:The Hollow Crown)……イギリスのTVムービー・シリーズ。シェイクスピア戯曲の映像化で2012年にシーズン1、2016年にシーズン2が放送されました。日本では配信やCS放送の他、2017年に『劇場版 嘆きの王冠 ~ホロウ・クラウン~』の邦題で、『リチャード二世』『ヘンリー四世 Part1』『同 Part2』『ヘンリー五世』『ヘンリー六世 Part1』『同 Part2』『リチャード三世』の全7編が劇場公開されています。
『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』……1966年のスペイン・スイス合作映画。これまたシェークスピアの戯曲を鬼才オーソン・ウェルズが監督・脚本・主演で映画化。『ヘンリー四世』『リチャード三世』『ヘンリー五世』『ウィンザーの陽気な女房たち』などの脇役である無頼漢フォルスタッフを主人公として、後のヘンリー5世である皇太子ハルとの関わりを中心に描いた作品とのこと。
『ヘンリー八世の私生活』(原題:The Private Life of Henry VIII)……1933年のイギリス映画。ヘンリー8世の歴代結婚生活を描いた喜劇映画で、2番目の奥さんアン・ブーリンから最後の6番目の奥さんキャサリン・パーまでが出てきます。主演はチャールズ・ロートン。
『レディ・ジェーン 愛と運命のふたり』(原題:Lady Jane)……1985年の米国映画。王位継承ををめぐる策略の中で9日間だけ女王となったレディ・ジェーン・グレイとその夫の生涯を描いた作品。ヘレナ・ボナム=カーターの映画デビュー作とのことで、共演がケイリー・エルウェスってのも時代を感じるなあ。
『女王エリザベス』(原題:The Private Lives of Elizabeth and Essex)……1939年の米国映画。エリザベス1世晩年の寵臣エセックス伯ロバート・デヴァルーとの関係を描いたラブロマンス史劇。史実改変の著しいメロメロメロドラマのようです。監督はマイケル・カーティスで、主演はベティ・デイヴィスとエロール・フリン。DVDはレンタル専用はあるものの、セル版は「エロール・フリン シグネチャー・コレクション」というBOXセットのみ。
『悲恋の王女エリザベス』(原題:Young Bess)……1953年の米国映画。原題および邦題通り、若き日の王女時代のエリザベス1世とトマス・シーモアの関係を描いた、これまた史実無視のメロメロメロドラマ。
『ヴァージン・クイーン』(原題:The Virgin Queen)……1955年の米国映画。上記2作の間の時代の、エリザベス1世とウォルター・ローリーの関係を描いた史劇映画で、どちらかといえばローリーのほうが主役っぽいらしい。これまた史実無視の冒険活劇&ラブロマンスみたい。主演はまたもベティ・デイヴィス。
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(原題:Mary Queen of Scots)……2018年の米国・イギリス合作映画。スコットランド女王メアリー・ステュアートとイングランド女王エリザベス1世を描いた史劇映画ですが、原題通りどちらかといえばメアリーのほうが主人公のようです。
『もうひとりのシェイクスピア』(原題:Anonymous)……2011年の米国映画。シェイクスピアの作品は別人が執筆していたという「シェイクスピア別人説」を題材とした作品で、シェイクスピアの正体の候補の1人とされるオックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアが主人公。監督はなんとローランド・エメリッヒ。
『シェイクスピアの庭』(原題:All Is True)……2018年のイギリス映画。劇作家から引退したシェイクスピアの故郷での晩年の3年間を描いた作品で、監督・主演はシェイクスピア作品を数多く手がけてきたケネス・ブラナー。
『リバティーン』(原題:The Libertine)……2005年のイギリス映画。17世紀イギリスでチャールズ2世に寵愛された放蕩詩人ロチェスター伯爵ジョン・ウィルモットの半生を描いた伝記映画。主演はジョニー・デップ。舞台版に主演したジョン・マルコビッチが企画・製作し、チャールズ役も演じているとのこと。
『豪族の砦』(原題:Rob Roy,the Highland Rogue)……1953年の米国映画。18世紀初頭のスコットランドに実在したロバート・ロイ・マグレガー(通称ロブ・ロイ)の義賊伝説を描いたディズニープロによる娯楽映画。
『ロブ・ロイ ロマンに生きた男』(原題:Rob Roy)……1995年の米国映画。ビデオ&DVD邦題は『レジェンド・オブ・ヒーロー ロブ・ロイ』。こちらもタイトル通りロブ・ロイを主人公とした娯楽史劇大作で、主演はリーアム・ニーソン。共演にジェシカ・ラング、ジョン・ハート、エリック・ストルツ、ティム・ロスなどといった豪華版です。
>現在公開中の歴史映画
『ジャネット』『ジャンヌ』……2017年と2019年のフランス映画。ブリュノ・デュモン監督がジャンヌ・ダルクを題材として撮った2部作で、19世紀末から20世紀初めのカトリックの詩人・思想家シャルル・ペギーの詩劇が原作。ロケ地周辺で見いだされた、『ジャネット』撮影当時8歳の少女リーズ・ルプラ・プリュドムが主演。『ジャネット』ではジャンヌ・ダルクが神の声のもとに立ち上がるまでの幼年時代をブラックメタルやバロック音楽を使ったミュージカルとして描き、『ジャンヌ』では一転してジャンヌの裁判から処刑までを前衛劇風に描いているとのこと。
#11150
ろんた 2021/12/09 23:00
12/08と関係なく『雪割草』(横溝正史/角川文庫)を読む
生誕120年没後40年の記念復刊を刊行分読み終えたので、しばらく積んどいたのを読みました。探偵小説ではなく、横溝唯一の「家族小説」。草稿からその存在は確認されていたものの、単行本化されておらず、横溝も一切触れていない。その後の調査で「新潟毎日新聞」(のち国策で「新潟新聞」と合併して「新潟日々新聞」)に連載(1941/06/12-12/29)されたことが判明し、新潟県立図書館、国会図書館所蔵のマイクロフィルムや原紙から単行本化された(戎光祥出版)。ただしこれは最終回に欠落があり、浜田知明氏の手により補われたもの。この文庫版では、後に判明した「京都日々新聞」連載分(1940/06/11-12/31)から補った完全版。現在では他に「九州日々新聞」(1940/10/07-1941/07/15)「徳島毎日新聞」(1941/01/11-08/02)での連載も確認されている。
「家族小説」というのは最近聞かないが、パターンとしては"健気な美少女が世の荒波に揉まれながらも最後に幸せをつかむ"というものらしく、小説としては廃れたものの「愛染かつら」「君の名は」や大映ドラマ、韓流ドラマ、そして何より朝ドラに受け継がれていますね。この小説も、
・出生の秘密が明らかになり輿入れの前日に破談
・育ての父憤死(卒中)
・信州から上京し、実父を知るという人物を訪ねるが既に死亡
・頼った義父の知人に現金化していた全財産を盗まれる
・元婚約者に「嫁にはできないが妾にしてやる」と襲われる
・逃げ出したところを車にはねられる
とまるでジェットコースター(笑)。しかし後半、雰囲気が変わってきます。興亜奉公日ということで靖国神社に参拝する人々が描写され、その中には戦死者遺族、傷病兵らもいる。また宮城前には、満蒙開拓移民らしき人々が遙拝している。登場人物たちも人生を切り拓くために満州に渡ったり、何かしないではいられないと北支に渡ったり、出征する人物が出てくる。主人公を陰に日向に助けてくれる洋品店の女主人は、評判の店を閉めて被服廠へ衣類を収める仕事を始める。(従業員は出征兵士の家族や戦争未亡人) そしてラスト。主人公の夫(画家)が芸術への情熱を取り戻すきっかけが、農耕馬”あお”の「出征」だったりする。しかも飼い主の老農夫が、息子三人を兵隊にとられ、うち二人が戦死したりしている。そして、本人も旅順攻略戦の生き残りだったりして。前半ではスキー帰りの若者や洋室でピアノを弾くお嬢様とか出てくるんだけど。おそらく、執筆時と物語の舞台がともに昭和15(1940)年ということで、現実の戦時体制が小説の中に侵入してきているんだと思われます。実は小説は現実を追い越してラストは昭和18年だったりするんですが、もちろん、太平洋戦争は起きてません(笑)。
もう一つ、触れておかなければならないのは、主人公の夫。初登場時の描写によると
たいへん背の高い青年で、逞しい、がっしりとした体付きと、よく光る大きな眼と、吃るような口の利きかたが、有為子にはなんだか恐ろしいように思われる。
くちゃくちゃになったお釜帽の下からはみ出している、長い、もじゃもじゃとした蓬髪、短い釣鐘マントの下から覗いているよれよれの袴──そういう服装も、有為子にはなんだか胡散くさく思われた。
とありますけど、背が高く体付きががっしりしている以外は、金田一耕助ですね。
#11149
バラージ 2021/12/09 22:34
映像作品における清盛と後白河と奥州藤原氏をめぐる女性たち
源平話、今回は平清盛と後白河天皇(上皇・法皇)と藤原秀衡・泰衡をめぐる女性たちの出てくる映像作品の話。
清盛をめぐる女性というと、まず母親が誰かという問題があります。語り本系『平家物語』に記された、白河法皇の寵愛を受けて懐妊した祇園女御が平忠盛に下賜されて清盛が産まれたとする話が有名で、吉川英治の『新・平家物語』もその説を採っており、映画化・大河ドラマ化作品も当然ながら同様になっています(役名はそれぞれ「泰子」「泰子→祇園女御→澪之禅尼」。大河で演じてるのは新珠三千代)。しかし祇園女御説は現在ではほぼ否定されており、同じ『平家物語』でも読み本系の延慶本は、清盛の母は祇園女御に仕えた中﨟女房というように書いているとのこと。また別の史料にある「祇園女御の妹が母で、清盛は祇園女御の猶子となった」という説も一時唱えられましたが、これについても同時代史料ではない上に、記述自体が後世の加筆として疑問視する見解があるようです。結局生母は不明ですが、藤原宗忠の日記『中右記』にある1120年に亡くなった忠盛の最初の妻で元は白河法皇の周辺に仕えた女房である可能性が高いということのようです。大河『平清盛』では元白拍子で白河法皇の愛妾という設定は踏襲しながら、祇園女御やその妹とは異なる架空の女性となってましたね(役名は「舞子」。演じてるのは吹石一恵)。祇園女御は松田聖子が演じ、なおかつ後白河院の今様の師であった乙前となぜか同一人物という設定になってました。また大河『義経』にもなぜか清盛の母が登場したらしく、回想シーンで出てきたのかな?(役名は「鶴羽」)
次に清盛の妻ですが、継室(後妻)の平時子は有名で、清盛が出てくる作品にはほとんど登場してるんで省略。一方、最初の妻である「高階基章の娘」は大河『平清盛』にて初めて登場したのが今のところ唯一の例になっています(役名は「明子」。演じてるのは加藤あい)。また妾も有名な人が全然いないなあと思ったら、そもそも清盛の妾はほぼ不明で、2人の妻以外の所生の子供たちはいずれも生母不明のようです。唯一名前?というか呼称があるのが厳島内侍で、ドラマ『女人平家』、TBS大型時代劇『平清盛』(役名は「あや」。演じてるのは名取裕子)に登場したようです。
また清盛をめぐる女性といえば白拍子の祇王、祇女、仏御前がおり、やはり清盛ものには必ずと言っていいほど登場しますが、『平家物語』にしか出てこない人物のため実在性は薄いと思われます。
お次は後白河天皇(上皇・法皇)の后妃たち。そもそも後白河を主人公とした映像作品がないため、登場する后妃も自ずと限られるんですが、やはり最も有名なのは清盛の妻時子の妹で、高倉天皇を産んだ平滋子(建春門院)でしょう。映像作品では、映画『新・平家物語』(演:中村玉緒)、ドラマ『女人平家』、大河『新・平家物語』、TBS大型時代劇『平清盛』、大河『義経』(演:中江有里) 、『平清盛』(演:成海璃子)に登場しています。
滋子は女御で、高倉の即位により皇太后になったわけですが、それ以前の後白河がまだ親王で皇位継承候補でもなかった時代に妃だったのが源懿子。二条天皇の母ですが若くして死んだようで、当然ながら登場作品はありません。後白河即位後に中宮となったのは藤原忻子(徳大寺忻子)。『今鏡』には美貌だったとあるそうですが、後白河の寵愛は薄く子もなかったとか。他にも后妃は当然ながらたくさんいたようですが、後白河は芸術家肌にありがちな偏愛の強い人だったようで、専ら滋子を寵愛し中宮忻子やもう1人の女御藤原琮子(三条琮子)はほとんど寵愛されなかったようです。よって忻子も琮子も映像作品への登場はないんですが、なぜか三条局というマイナーな妃が大河『草燃える』に登場してるらしい。
滋子の死後に後白河に仕えるようになり、最も寵愛されたのが丹後局(高階栄子)。政治にも介入する女実力者で、後白河の死後は内大臣源通親(土御門通親)と結んで、頼朝ともよしみを通じ、対立する関白九条兼実を失脚させています。登場作品も多く、1955年の映画『笛吹若武者』、大河『源義経』、ドラマ『北条政子』、大河『草燃える』(演:草笛光子)、日テレ大型時代劇『源義経』、大河『炎立つ』、『義経』(演:夏木マリ)に出ており、来年の大河『鎌倉殿の13人』では鈴木京香が演じるようです。ただ、日テレ『源義経』を除いてはいずれも40代後半以上の女優が演じており、さすがに歳を取りすぎなのでは……。後白河が爺さんだから妃もそこまで年齢差はないだろうという連想なんでしょうが、丹後局の生年ははっきりとわかってはいないものの、1181年には後白河の皇女覲子内親王(宣陽門院)を産んでおり、年嵩に見積もってもせいぜいその時点で30代半ばぐらいなんじゃないかと思われます。
最後に藤原秀衡・泰衡親子の妻について。といっても奥州藤原氏については史料が少なく、よくわからないところも多いんですよね。物語類もほぼないし。
秀衡の妻は前陸奥守藤原基成の娘で、嫡子泰衡らを産んだというぐらいしかわかりません。映像作品では、大河『源義経』(役名は「北の方」)、『炎立つ』(役名は「倫子」。演じてるのは真野響子)、『義経』(役名は「桔梗」)に出てきます。また秀衡の庶長子国衡の母は秀衡の妾だったと思われますが、どういう人物なのか全く不明。映像作品では、大河『炎立つ』(役名は「栂の前」。演じてるのは浅利香津代)にのみ登場。
泰衡の妻もどのような人物か全く不明です。映像作品では、大河『源義経』(役名は「しのぶ」。演じてるのは小川真由美)、『炎立つ』(役名は「亜古耶」。演じてるのは中川安奈)に出てきます。『源義経』ではちょっと変わったキャラ設定だったことは以前書きました(#10794)。同じ原作の1956年の映画『続源義経』にも「しのぶ」は出てきたようですが、義経が鎌倉に参陣する以前なのでまだ泰衡の妻にはなっていないようです。
>源平・鎌倉本
来年の大河ドラマ関連&便乗の源平・鎌倉本がちょこちょこと出版され始めてますね。
学術系では、細川重男『頼朝の武士団』が朝日新書から再刊。洋泉社歴史新書yから出てたものが絶版となったそうで、おそらく来年の大河に合わせてか頼朝死後から北条義時の死までの時代について加筆されてるようです。僕は洋泉社版も未読なんですが、ちらっと立ち読みした感じでは文体がやたら砕けてる調子で、そこで好き嫌いが分かれそう。
また、呉座勇一『頼朝と義時』(講談社現代新書)も出版。そういや当初は来年の大河の時代考証の1人だったよなと思ったら、やはりその絡みで執筆されたもののようで、あとがきでその経緯と例の事件についての反省の弁が記されてました。一時は執筆・出版の中止も考えたんだとか。やはりちらっと立ち読みした感じでは、そもそも呉座氏の専門分野ではないため、『陰謀の日本中性史』同様に他人の研究の分析と総ざらいといった感じ。
小説では、嶋津義忠『北条義時』(PHP文庫)、奥山景布子『義時 運命の輪』(集英社文庫)なんて辺りが出てますが、僕は高橋直樹『北条義時』(潮文庫)を購入。高橋氏の源平鎌倉ものは面白いものが多いんですが、ここ10年くらいは大河(&朝ドラ)便乗小説みたいなのしか出してないのが悲しい。売れないんですかねえ。
複数の作家の短編を集めた短編集もいくつか出てて、そっちのほうが短いしいろんな人の小説が読めるんで取っつきやすそう。まずは『小説集 北条義時』(作品社)。収録作品は、海音寺潮五郎「梶原景時」、高橋直樹「悲命に斃る」、岡本綺堂「修禅寺物語」、近松秋江「北条泰時」、永井路子「執念の家譜」「承久の嵐 北条義時の場合」。このうち「悲命に斃る」「執念の家譜」は読んだことあるし、単行本だからちょっと高いんでパス。
文庫本では『鎌倉殿争乱』(光文社文庫)。収録作品は、安西篤子 「壇の浦残花抄」、内村幹子 「摂家将軍」、桜田晋也 「時政失脚」、篠綾子 「鎌倉の鵺」、高橋直樹 「非命に斃る」、新田次郎 「仁田四郎忠常異聞」。「非命に斃る」がかぶってますな。同作が収録されてる高橋氏の短編集『鎌倉擾乱』(文春文庫)は絶版なのかわからんけど、本屋じゃ見かけないしなあ。
続いて『鎌倉燃ゆ』(PHP文芸文庫)。収録作品が、谷津矢車「水草の言い条」、秋山香乃「蝸牛」、滝口康彦「曾我兄弟」、吉川永青「讒訴の忠」、高橋直樹「非命に斃る」、矢野隆「重忠なり」、安部龍太郎「八幡宮雪の石階」。おお、またも「非命に斃る」が。面白い短編なんで評価が高くてうれしい。
最後にもう1つ、『小説・鎌倉殿の世界』(宝島社文庫)。収録作品が、安部龍太郎「木曽の駒王」「奥州征伐」、山本周五郎「義経の女」、岡本綺堂「修禅寺物語」、火坂雅志「幻の将軍」、永井路子「覇樹」、坂口安吾「安吾史譚 源頼朝」。こちらは「覇樹」だけ読んだ記憶あり。山本周五郎が源平もの書いてたんだ、題材も面白そうってのと、「修禅寺物語」が読みたかったんで、これを買いました。
>史点
マルコムXについては、僕はスパイク・リー監督の映画を観る以前に本多勝一氏の著書で名前を見た記憶があります。本多氏は米国の黒人社会を取材した際に知ったそうで、もともとはルポ『アメリカ合州国』で触れてたみたいですが、僕は確か本多氏の他のエッセイか何かでちょこっとだけ触れてるのを読んだんじゃなかったかな。キング牧師と並ぶ黒人活動家という軽~い略歴程度の記述だったような。スパイク・リーも『マルコムX』以前に『ドゥ・ザ・ライト・シング』(日本公開およびビデオ化は1990年。当時住んでた街の映画館には来なかったんで僕はビデオで観ました)ですでにマルコムXをキング牧師と並べて軽くネタしてましたね。あるいはマルコムXの名前を知ったのはこっちが先だったかな?
映画『マルコムX』では、マルコム晩年のCIAによる尾行やFBIによる盗聴も描かれてはいましたが、暗殺そのものはネイション・オブ・イスラムによる犯行として描かれてました。これについては黒人社会内部から批判もあったようですが、リーは綿密な取材の末にそういう結論に達したと反論してましたね。
あ、そういえばちょっと気になってたんですが、史点で冒頭にある記事名の3番目をクリックすると4番目の記事に飛んでしまうという現象がここ4回くらい続いています。何か不具合があるんではないでしょうか? たいしたことではないんですが、やはりちょっと不便なので修正をお願いします。
>観てない歴史映像作品 ドイツ・オーストリア史編の追記
『愛の嵐』……1974年のイタリア映画。1957年のオーストリアを舞台に、第二次大戦時にユダヤ人強制収容所で出会った元ナチス親衛隊員とユダヤ人女性の倒錯した愛とエロスを描いた作品。監督はリリアーナ・カバーニ、主演はダーク・ボガードとシャーロット・ランプリング。
#11148
バラージ 2021/12/03 20:17
超ハイパー三国志
香港・中国・日本合作の実写映画『映画 真・三國無双』を観ました。有名なコーエーの3Dアクションゲームの映画化ですが、僕はゲームのほうは1度もやったことがありません。ゲーム画面を何かで何度か観たことがあるだけで、そこまで興味があるわけではなかったし、映画の評判もいまいち芳しくなかったんですが、三国志好きだしせっかく地元の映画館でやるんだから、ま、ちょっと観てみっか、という感じで観に行ってきました。それにしても日本だけじゃなく本場中国でも映画になるほど人気なんですねえ。
大まかなストーリーは基本的に『三国志演義』ほとんどそのまんまで何のひねりもありません。唯一のオリジナル要素は、不思議の森の女王みたいな人(演じてるのは香港のベテラン女優カリーナ・ラウ)が劉備・関羽・張飛や曹操や呂布に霊力の宿った武器──要するに魔法の武器みたいなの。方天画戟とか青龍偃月刀とか蛇矛とか──をくれるとこぐらい。ただ、それだけに三国志を知ってる人なら取り立てて難しいことを考えず気楽に観ることができるんで、アクション映画としてはそれで正解なんでしょう。
やはり目玉はアクションシーンで、大量にチャイナマネーをかけてCGとワイヤーアクションを使いまくったバトル&合戦シーンがすごすぎて笑っちゃうほどです。ゲームのシーンを忠実に再現してると思われ、もうほとんどあれですね。『ドラゴンボール』とか『北斗の拳』とか『聖闘士星矢』とか『魁!男塾』とか、ああいう世界ですね。曹操や劉備三兄弟の一撃で敵兵100人ぐらいが一辺に吹っ飛ぶとか、呂布が方天画戟を一閃すると稲妻が走って山が半分吹っ飛んじゃうとかもう無茶苦茶。完全にスーパーサイヤ人同士の戦いです(笑)。でも、なんかいい意味で馬鹿馬鹿しくて面白かった。董卓が戦場でばんばか敵兵を切りまくるという三国志ものでは意外にちょっと珍しいシーンも観れますし、劉備が二刀流で呂布と互角に戦うなんてシーンを見るのはマンガ『天地を喰らう』以来なのでは? そして東映特撮ヒーローもの風味もちょっとありました。仮面ライダーとか戦隊ヒーローみたいなやつ。考えてみれば東映ももともと時代劇の会社だったし、時代劇と特撮って表現が近いのかも(円谷のウルトラマンはまたちょっと違うが)。以前DVDで観た『三国志 黄巾の乱』もそんな映画でしたしね。
お話は虎牢関の戦いまでという三国志的には本当に序章って感じなんですが、映画としては無理に話を進めず良いところで話を区切ってる感じ(実際、アクションがすごすぎるんでお腹いっぱいになった)。終盤に出てくる貂蝉(演じてるのは新疆三大美女と呼ばれてるグーリーナーザー)も顔見せって感じで、あわよくば続編狙ってるのかも。まあ期待してなかったわりには結構楽しめました。意外になかなか面白かったです。
>録画で観た歴史映画
『源九郎義経』
1962年の東映映画なんですが、ビデオ化すらされてないんでてっきりフィルムが残ってないのかと思ってました。そしたらなんとつい先日CSの時代劇専門チャンネルで放送されたんで、源平好きだし観とくかってことで録画。
基本的にはオーソドックスな義経物語で、奥州滞在時から兄頼朝のもとに駆けつけ、宇治川・一ノ谷での勝利を経て平家追討のために屋島へ出陣するところまでが描かれてます。なんだか中途半端な映画化ですがオリジナル脚本らしく、たぶん義経物語を90分の映画に切り取る上で1番いい範囲だと考えたんでしょう。あと主演が当時18歳の北大路欣也で彼のアイドル映画といった趣きなので、アイドル欣也を1番引き立たせることができるようなストーリーにということなのかな。
主人公の義経をはじめ登場人物がやたらと泣く映画で、悲憤慷慨しては泣き、感動しては泣き、悔し泣き、嬉し泣き、とにかく泣く。特に義経は劇中で何度も泣いており、ほとんど『巨人の星』の星飛雄馬みたいで、ちょっと情緒不安定(笑)。全体的には義経と家来たちの絆に加えて、序盤が藤原秀衡(演:山形勲)との疑似父子関係、中盤以降は頼朝(演:大友柳太朗)との兄弟愛と、やはり泣かせ要素を映画の中心に据えています。この映画の頼朝は弟思いのいい兄貴で、全く悪役じゃありません。悪役回りなのはまずお馴染みの梶原景時。定番のわかりやすい悪役ですが、意外と出番は多くないんですよね。演じてるのはテレビ版初代水戸黄門の東野英治郎。北大路さんはこの映画の撮影中、東野さんにめちゃくちゃ怒られたと何かのインタビューで言ってたな(笑)。次いで公家の高階泰経。後白河法皇は後ろ姿が1シーンちらっと映るだけで、朝廷代表の悪玉はもっぱら泰経が担ってるんですが、やっぱり出番は多くない。演じてる菅貫太郎という俳優は知らん人ですが、公家風の巧妙な嫌らしさを好演してました。1番の悪役回りになってるのが意外にも大江広元。義経が将来頼朝の覇権と幕府の創立を脅かす存在になることを恐れて、弟を愛する頼朝の心情に反してでも自らが泥をかぶるという、なんともおいしい役どころで、演じているのは月形龍之介でした。
ストーリーでちょっと変わってるのは、京に駐留中に頼朝に無断で朝廷から検非違使に任命されたことで平家追討使を外された義経が、頼朝に直接弁明しようと京から鎌倉へ下るも手前で止められ、そこで頼朝に弁明の手紙を書くという、後の腰越状ほとんどそのまんまのエピソードが挿入されるところ。そこが映画のクライマックスとなっています。あと序盤の平泉では秀衡の娘の「松の君」(演:小林哲子)という架空女性がヒロイン格で義経をひそかに慕うんですが、義経は兄と共に平家を討つことで頭がいっぱいのため彼女の片思いで終わります。後半にはお馴染みの静(演:佐久間良子)が登場しますが、こちらもあまり出番は多くなく、恋愛関係になる手前までしか描かれません。
なんといっても1番の見どころは、今じゃ考えられないような豪華なセットと壮大な野外ロケでしょう。セットの豪華さは当時としては標準的なのかもしれないけど、今となってはなかなか見れない規模ですし、それ以上にすごいのが野外ロケで、いったいどこで撮ったんだ?ってくらいの全景です。当時の日本はまだあんなに自然が残ってたんだなあ。今じゃ絶対どっかに電線・電柱や車や飛行機が映り込んじゃいますもんねえ。あるいは1960年代はテレビの登場で映画は斜陽に入り始めてたから、テレビじゃできないスケールのものを作ってやろうってことでそういう映画を作ったのかもしんないけど。
>観てない歴史映像作品の追記
・鎌倉~室町時代
『笛吹若武者』……1955年の東映映画。平敦盛と玉織姫(架空の女性)が主人公で、主演はこれがデビュー作の大川橋蔵と子役出身の美空ひばりというアイドル恋愛映画ですな。
・安土桃山時代
『大盗賊』……1963年の東宝映画。呂宋助左衛門を主人公とした冒険活劇映画で、主演は三船敏郎。
・中国前近代史(1)
『真・三国志 蜀への道』(原題:趙子龍)……2020年の中国映画。現在公開中でまだDVD化されていません。原題通り趙雲が主人公で一種の邦題詐欺。当然ながら長坂の戦いがクライマックスのようですが、演義で趙雲に討たれて青釭の剣を奪われた架空武将の夏侯恩が因縁の敵キャラになり、公孫サン配下時代の白馬義従の仲間というオリキャラたちとの絆も描かれてるらしい。
『三国志 呂布鬼神伝』(原題:斗破乱世情)……2020年の中国映画。確かに呂布が主人公ではあるみたいなんだけど、大幅にオリジナルなフィクションの映画みたいですね。あらすじ読んだだけで、なんじゃこりゃ?ってなります。
『三国志 関羽 青龍偃月刀 最後の一閃』(原題:青龍偃月刀)……2021年の中国映画。えー、主人公は関羽ではなく息子の関興のようです。関羽は序盤で殺され、関興が親父の敵討ちに夷陵の戦いに出陣するみたいなお話らしい。日本の販売会社のこういうインチキ邦題の付け方が、もうすっかり昔の香港映画風(笑)。
・イスラム圏史
『預言者ムハンマド』……2015年のイラン映画。以前話題になっていたマジッド・マジディ監督によるイスラム教の預言者ムハンマドの伝記映画です。アジアフォーカス福岡国際映画祭2016で上映されたようですが、劇場公開やDVD化はされていません。
#11147
バラージ 2021/11/27 20:16
ノスタルジア
『タクテクス』復刊のニュースに関連して、以前知って驚いたんだけど、ここに書くのをすっかり忘れてた話。
以前こちらに感想を書いた『「天皇機関説」事件』『歴史戦と思想戦』(いずれも集英社新書)の著者で戦史研究家の山崎雅弘氏。『歴史群像』の近現代史関連記事もよく執筆してるそうですが、なんとかつて1989年に最初にデザインしたボード・シミュレーションゲーム『バルバロッサの場合』が、『タクテクス』のオリジナル・ゲーム・コンテストに入賞し、第65号に付録ゲームとして掲載されたことがあるそうで。山崎氏が大学4年か新入社員の頃のようですが、翌1990年の第75号付録ゲーム『キエフ攻防戦』もデザインしてるとのことで、あの頃のボード・シミュレーションゲーム界というか『タクテクス』関係者の中からそんな人が……とちょっとびっくり。と同時になんとも懐かしい気持ちになっちゃいましたね。山崎氏は1991年にはデザインした『ハリコフ大戦車戦』が翔企画から、それ以後は(日本のボード・シミュレーションゲーム市場が壊滅したためか)米国のゲーム会社からデザインしたゲームが次々と発売され、1992年にはチャールズ・ロバーツ賞(ウォーゲーム部門最優秀ゲーム賞)を受賞したそうです。1994年には同志2人とシミュレーション・ゲーム同人誌『シックス・アングルズ』を創刊。1996年からは国際通信社でシミュレーション・ゲーム専門誌『コマンドマガジン日本版』の編集に携わり、米国で発売されたデザインゲームのうち『ツィタデレ作戦』『スターリングラード・ポケット』『奉天会戦』が付録ゲームになったとのこと。ラインナップを見ると第二次大戦独ソ戦が主な守備範囲だったのかな。僕は残念ながら1つもプレイしたことはありません。
>観てない歴史映像作品 フランス史・後編
『ナポレオン/アウステルリッツの戦い』……1959年のフランス・イタリア・ユーゴスラビア・リヒテンシュタイン合作映画。アベル・ガンス監督が『ナポレオン』の続編として撮った映画ですが、日本では劇場未公開でビデオスルー。しかもオリジナルは3時間なのにビデオは123分版で、DVD化もされていません。オーソン・ウェルズやクラウディア・カルディナーレなどが出演。
『ナポレオンの愛人』……2006年のイタリア・スペイン・フランス合作映画。エルバ島に流されてきたナポレオンを憎む青年が、彼の司書兼記録係となったことから暗殺を企むが、接しているうちに徐々に尊敬の念が芽生え……というフィクション・ストーリー。ベストセラーとなった小説の映画化とのことですが、日本では劇場未公開のため男爵夫人役のモニカ・ベルッチをフィーチャーして、こういう邦題になっちゃったみたい。
『レ・ミゼラブル』……ヴィクトル・ユーゴーのあまりにも有名な小説で、『あゝ無情』という邦題でもお馴染みの作品です。歴史小説ではありませんが、ナポレオン没落直後の1815年からルイ18世、シャルル10世の復古王政時代を経て、七月革命後のルイ・フィリップ王の七月王政時代の1833年までを描いており、当時の社会情勢や民衆の生活もくわしく描かれているとのこと。映像化も何度も行われていて、現代などに舞台を移し変えたものやDVD化されていないものを除いてもかなりの数に上ります。映画では1935年の米国映画『噫無情』(フレドリック・マーチ主演。DVD邦題『噫無情 レ・ミゼラブル』)、1952年の米国映画『レ・ミゼラブル』、1957年のイタリア・フランス合作映画『レ・ミゼラブル』(ジャン・ギャバン主演)、1998年の米国映画『レ・ミゼラブル』(ビレ・アウグスト監督、リーアム・ニーソン主演)、2012年のイギリス・米国合作映画『レ・ミゼラブル』(ヒュー・ジャックマン主演)など。テレビドラマも1982年のフランスの『レ・ミゼラブル』(リノ・ヴァンチュラ主演)、2000年のフランスの『レ・ミゼラブル』(ジェラール・ドパルデュー主演)、2018年のイギリス・米国合作『レ・ミゼラブル』などがあります。
『別れの曲』……1934年のドイツ映画。ショパンの伝記映画で、パリに出てくるところから女性作家ジョルジュ・サンドと出会うまでの話。キャストを入れ替えたフランス語版も製作されたとのことで(当時のヨーロッパ映画では外国語吹替ではなく、そういうことがよく行われてたらしい)、戦前に日本で公開されたのはそのフランス語版。オリジナルのドイツ語版は80年代にNHKで放送されたのが日本初公開で、DVDはドイツ語版のみ。
『楽聖ショパン』(原題:A Song to Remember)……1945年の米国映画。ショパンの生涯を描いた伝記映画ですが、かなりの脚色がされているようで、特にポーランド解放運動との関わりが(時代的なせいもあってか)過剰に強調されているようです。
『ソフィー・マルソーの愛人日記』……1991年のフランス映画。ショパンとジョルジュ・サンド、ジョルジュの娘ソランジュの三角関係を描いた映画で、マルソーはソランジュ役。やはり劇場未公開のビデオスルーだったためかこんな邦題に。監督は後にマルソーと結婚する前衛派のアンジェイ・ズラウスキー。ドラクロワやデュマ、ツルゲーネフなども登場するとのこと。
『ショパン 愛と哀しみの旋律』……2002年のポーランド映画。これまたショパンとジョルジュ・サンド、そしてサンドの子供たちとの愛憎劇を描いた映画で、ショパンの故国ポーランドの作品。
『セザンヌと過ごした時間』……2016年のフランス映画。画家セザンヌと小説家ゾラの40年にわたる友情を描いたドラマ映画。
『炎の人ゴッホ』(原題:Lust for Life)……1955年の米国映画。ゴッホの生涯を描いた伝記映画で監督はヴィンセント・ミネリ、主演はカーク・ダグラス、ゴーギャン役はアンソニー・クイン。
『ゴッホ』(原題:Vincent & Theo)……1990年の米国映画。ゴッホと弟テオの交流と兄弟愛を描いた伝記映画。ロバート・アルトマン監督作で主演はティム・ロス。
『永遠の門 ゴッホの見た未来』(原題:At Eternity's Gate)……2018年の米国・イギリス・フランス合作映画。ゴッホの生涯を描いた伝記映画で主演はウィレム・デフォー。
『赤い風車』(原題:Moulin Rouge)……1953年のイギリス映画。画家ロートレックの生涯を描いた伝記映画で監督はジョン・ヒューストン、主演はホセ・ファーラー。かなりフィクションが混ぜられてるようです。
『アルセーヌ・ルパン』(原題:Arsene Lupin)……1932年の米国映画。モーリス・ルブランがフランシス・ドゥ・クロアッセと協力して書き下ろした舞台劇『ルパンの冒険』が原作とのことで監督はジャック・コンウェイ、主演はジョン・バリモア。
『怪盗ルパン』……1957年のフランス映画。オリジナル作品でミステリーというよりおしゃれなフレンチ・コメディといった感じの作品とのこと。監督はジャック・ベッケル、主演はロベール・ラムルー。
『ルノワール 陽だまりの裸婦』……2012年のフランス映画。晩年の画像ルノワールと後に映画界の巨匠となる息子ジャン、そして2人のミューズとなったモデルのアンドレの関係を軸に、ルノワールの最高傑作「浴女たち」誕生に秘められた真実を描いた、ルノワールのひ孫で写真家としても活躍するジャック・ルノワールによる伝記小説が原作とのこと。
『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』……2017年のフランス映画。彫刻家ロダンの半生を描いた伝記映画で、内縁の妻ローズと弟子の彫刻家で愛人でもあったカミーユ・クローデルとの三角関係を描いているようです。監督はジャック・ドワイヨン。
『モンパルナスの灯』……1958年のフランス映画。画家モディリアーニの有名な伝記映画ですが、かなりフィクションが入ってるようです。主演はモディリアーニ同様に早世したジェラール・フィリップ。
『モディリアーニ 真実の愛』……2004年のフランス・イギリス・イタリア合作映画。こちらはほとんどフィクションのお話で、ピカソがなぜか敵役。主演はアンディ・ガルシア。
『サルトルとボーヴォワール 哲学と愛』……2006年のフランス映画。「第二の性」を著した作家ボーヴォワールと哲学者サルトルの契約結婚という形で結ばれた愛と苦悩を描いた伝記映画とのこと。
『薔薇のスタビスキー』……1974年のフランス映画。1933年に起きた巨額詐欺疑獄事件のスタビスキー事件を題材としたアラン・レネ監督作。主演・製作がジャン=ポール・ベルモンドで、共演はシャルル・ボワイエ。
『沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家』(原題:Resistance)……2020年の米国・イギリス・ドイツ合作映画。「パントマイムの神様」と呼ばれたフランスのアーティストのマルセル・マルソーが、第二次世界大戦中にユダヤ人孤児123人を救ったエピソードの映画化。今年公開されたばかりでまだDVD化されていません。
『黄色い星の子供たち』……2010年のフランス・ドイツ・ハンガリー合作映画。1942年にナチス・ドイツ占領下のヴィシー政権フランスで、ユダヤ人約13000人がフランス警察に検挙されドイツの強制収容所に送られたヴェロドローム・ディヴェール大量検挙事件を、生き残った約400人の証言を元に映画化したドラマ映画。同じ事件を背景とした映画に、『パリの灯は遠く』(1976年、フランス・イタリア合作、ジョゼフ・ロージー監督、アラン・ドロン主演)、『サラの鍵』(2010年、フランス、クリスティン・スコット・トーマス主演)があるようです。
『少女ファニーと運命の旅』……2016年のフランス・ベルギー合作映画。ナチス・ドイツ占領下のフランスからスイスへと子どもたちだけで旅を続けたユダヤ人少女の実話の映画化で、実在の女性ファニー・ベン=アミの自伝が原作。
『さよなら子供たち』……1988年のフランス・西ドイツ合作映画。1944年のナチス・ドイツ占領下のフランスのカトリック寄宿舎で生活する少年たちの心の交流を描いたルイ・マル監督の自伝的作品。ユダヤ人迫害がテーマ。
『サバイビング・ピカソ』(原題:Surviving Picasso)……1996年の米国映画。ピカソとその3人目の愛人フランソワーズ・ジローの関係を中心に、ピカソを取り巻く女性たちを描いた伝記映画。監督はジェームズ・アイヴォリーで、主演はアンソニー・ホプキンス。
『ドリーマーズ』(原題:The Dreamers)……2003年のイギリス・フランス・イタリア合作映画。1968年の5月革命前夜のパリを舞台とした、ベルナルド・ベルトルッチ監督による三角関係の青春恋愛映画。
『恋人たちの失われた革命』……2005年のフランス映画。やはり1968年の5月革命を背景に若者たちの情熱や絶望を描いたフィリップ・ガレル監督による青春恋愛映画。
>彭帥(ポン・シュアイ)
いろいろ喧しい問題ですが、それまでテニスのテの字も興味なかったような人たちが、テレビやらなんやらでテニスについてあまりくわしいことを知りそうもないのにいろいろしゃべってることについて、個人的には一テニスファンとして若干の違和感を感じないでもありません。ベテランのテニス・ジャーナリストの以下の記事は中国女子テニス界について要領よくまとめられていて参考になるかと。
https://number.bunshun.jp/articles/-/850777
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/297924
#11146
ろんた 2021/11/25 01:05
不倫? 強要?
彭帥氏の一件、国内メディアは「不倫」と報じたけど、海外メディアは「性的関係の強要」と報道。一部では「メディアは中国に忖度している」とか吹き上がってる向きもあるけど、一斉に「不倫」と報じてるってことは、独自取材をせずに(っていうかできないだろうなぁ)通信社の記事をそのまま使ったからか? 共同か時事か知らないけど。ただし、なぜ「不倫」になったのかは要検証。
チャイナウォッチャー(?)の中には、張高麗元副首相は江沢民派だとして習近平の陰謀と見る向きもあるらしいが、だったらもっと手際よく、自国の信用を落とさない形で処理しそうなもんだけど。信用を落としたといえばIOCのバッハ会長。彭帥氏とオンライン面談して、無事だったと言っているけど誰も信じてない。株を上げたのはWTAのサイモンCEOか。「これはビジネスよりも大きな問題。女性は抑圧されるべきでない」と動いている。まあ、選手からの突き上げが激しいんだろう。こんなんじゃ、中国で開催される大会に参加する選手いなくなっちゃう。
結局は本人が海外で自由に安全を保障されて会見するしかないんだろうけど、意外に気が小さい感じの習近平が思い切れるか? 下手すると冬季五輪が吹っ飛びかねないんだが。
>「流行感冒」
何とまだ見られていない(汗)。レコーダーのHDDが壊れ、メインのレコーダーで録画しようとしたら重複でできず。レコーダー付のテレビで録画できたけど、そこは家人が一日16時間ぐらい韓国ドラを見ているのでダビングすらできず。さらになぜか標準画質に変換されてしまっている。何とか見られたら感想、あげようと思います。
#11145
バラージ 2021/11/21 21:32
マジか!?
連投すいません。
ホビージャパン社が、かつて出版していたボードシミュレーションゲーム&テーブルトークRPG専門誌『タクテクス』を30年ぶりに復刊するとのこと。いったいどういう風の吹き回しだ?(笑)
#11144
バラージ 2021/11/21 18:41
私の愛も私の苦しみも誰もわかってくれない
テニスに興味のない人は今回の件で初めて彭帥(ポン・シュアイ)を知ったでしょうねえ。テニスファンにはまあまあ有名な選手なんですが。中国語発音表記「Peng Shuai」の英語発音で「ペン・シューアイ」と表記されることが多いんですが、大学で中国語をちょっと学んだ身からすると「Peng」は「ポン」に近い発音なんだよな。日本人選手の間でも「ポンちゃん」の愛称で呼ばれてるようです。それにしてもあんなおじいちゃんと一時不倫関係にあったという告白にはちょっとびっくり。性的強要だけなら非常によくわかるんだけど、いくら権力者とはいえ、あんなに歳の離れた見た目の冴えないおじいちゃんに恋愛感情を抱いたりするもんなんだろうか? いや、もちろん人によるものであって、年齢や外見が全てじゃないというのもわからなくはないんだけど……。
中国では女優のヴィッキー・チャオも少し前に突如SNSが全て削除され、検索結果も配信映像も無くなる事態となってますが(百度百科でも表示されない)、こちらは理由が全く不明。いったい何があったんだろうか?
そういや中国の女子テニス選手といえば、四大大会のシングルスで2回優勝した李娜(リー・ナ)の伝記映画がピーター・チャン監督で作られるって話はどうなったんだろ? 生きてるうちに自分の伝記映画が作られちゃうってどんな気持ちなんでしょうね?
>観てない歴史映像作品 フランス史・前編
フランス史はほんとめちゃくちゃ多いんで2回に分けます。
『裁かるるジャンヌ』……1928年のフランス映画。邦題を『裁かるゝジャンヌ』とするものもあり。ジャンヌ・ダルクの異端審問裁判から火刑までを描いたサイレント期の傑作と言われる映画で、監督はデンマークのカール・テオドア・ドライヤー。早い段階で火事によりオリジナルネガが消失したためドライヤー自身が再編集したバージョンが世界中で公開されたそうで、オリジナル版は長らく幻のフィルムとなっていたそうですが、1984年にオリジナル版のポジフィルムが発見され世界中で公開&Blu-ray&DVD化されたそうです。
『ジャンヌ・ダーク』(原題:Joan of Arc)……1948年の米国映画。イングリッド・バーグマンが念願のジャンヌ・ダルクの生涯を演じた映画で、彼女が主演した舞台劇の映画化。監督はヴィクター・フレミング。オリジナルは145分ですが、日本公開版をはじめ現在流通してるのは主に100分の短縮版とのこと。DVDは両方のバージョンともあるようです。
『火刑台上のジャンヌ・ダルク』……1954年のイタリア・フランス合作映画。同名の“劇的オラトリオ”を、ロベルト・ロッセリーニ監督が当時の妻だったイングリッド・バーグマン主演で映画化した70分の中編映画。
『ジャンヌ・ダルク裁判』……1962年のフランス映画。実際の裁判記録を元にジャンヌ・ダルクの裁判から処刑までを描いたロベール・ブレッソン監督による65分の中編映画。やはり非常に評価が高く、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞しています。
『ジャンヌ 愛と自由の天使』『ジャンヌ 薔薇の十字架』……1994年のフランス映画。ジャック・リヴェット監督がジャンヌ・ダルクの生涯を描いた歴史大作で、118分と122分の前後編二部作。主演はサンドリーヌ・ボネール。ビデオ&LD化はされましたがDVD化はされていません。後に338分の完全版も『ジャンヌ・ダルクⅠ 戦闘/Ⅱ 牢獄』の邦題で公開されましたが、そちらはソフト化が全くされていません。
『ノストラダムス』(原題:Nostradamus)……1994年の米国・イギリス・ドイツ合作映画。予言者として有名な16世紀の医師にして占星術師であるノストラダムスの半生を描いた伝記映画で、大予言の映画ではありません(笑)。出演はチェッキー・カリョ、ジュリア・オーモンド、アマンダ・プラマー、F・マーリー・エイブラハム、ルトガー・ハウアーなどなかなかの豪華キャスト。
『三銃士』(原題:The Three Musketeers)……1948年の米国映画。主演がミュージカル・スターのジーン・ケリーで、ダンサーでもある彼のアクションがすごいらしい。ウィンター伯爵夫人(ミレディ)役がラナ・ターナー、リシュリュー役がヴィンセント・プライス。
『ヤング・ブラッド』(原題:The Musketeer)……2001年の米国映画。これも三銃士の映画なんだけど邦題は意味不明。香港のワイヤー・ワークを取り入れたアクション映画とのこと。ダルタニアンや三銃士役の俳優より、悪役のティム・ロスやフランス王妃役のカトリーヌ・ドヌーブのほうが有名のような。
『三銃士 妖婦ミレディの陰謀』……2005年のフランス映画。意外と珍しい本場フランスの三銃士ものですが、これまたダルタニアンや三銃士よりもミレディ役のエマニュエル・ベアールの存在感のほうが大きいとの噂も。実際、俳優陣で1番有名なのはベアールだし、日本版DVDも邦題からして完全にベアール推しだもんなあ。
『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(原題:The Three Musketeers)……2011年のフランス・米国・イギリス・ドイツ合作映画。ポール・W・S・アンダーソン監督による3Dアクション映画で、やっぱりダルタニアンや三銃士役よりもミレディ役のミラ・ジョヴォヴィッチのほうが……。しかし3Dも日本ではいつの間にかすっかり廃れちゃいましたね。
『三銃士 宿命の対決』……2013年のロシア映画。最近、娯楽映画化が進んでるようで調子に乗ってる(?)ロシア映画界も作っちゃった三銃士映画。まあ米国やイギリスも作ってるんだしロシアが作ったって別にいいか。
『ソフィー・マルソーの三銃士』……1994年のフランス映画。主演のソフィー・マルソーがNHKアニメで男装の麗人だったアラミスを演じてるのかと勘違いしそうだけど(というか明らかに配給会社がそれを匂わせてるけど)、原題の直訳は「ダルタニアンの娘」でマルソー演じる主人公は文字通りダルタニアンの娘。ま、男装の麗人ではありますが。老ダルタニアン役はフィリップ・ノワレ、監督はベルトラン・タヴェルニエ。この頃、どの出演映画でも脱ぎまくってたマルソーは、この映画でもちゃんと(必然性もないのに)ヌードを見せてくれているらしい。
『レディ・ダルタニアン 新・三銃士』……2004年のクロアチア・ドイツ・米国合作のTVムービー。これまたダルタニアンの娘が主人公で男装の麗人なんですが、悪役がジェラール・ドパルデューとナスターシャ・キンスキーという大物で、三銃士ものは主人公たちより悪役のほうが大物でないといけない法則でもあるのか?
『モリエール』……1978年のフランス映画。17世紀の喜劇作家モリエールの生涯を描いた大作伝記映画で、製作当時は戦後フランス映画史上最も製作費のかかった作品と言われたとのこと。劇場公開版とテレビ放映版が同時に製作され、劇場公開版は7時間のテレビ・ミニシリーズを235分に再編集したものらしい。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。
『女優マルキーズ』……1997年のフランス映画。17世紀フランス演劇界の女優マルキーズ・デュ・パルクの半生を描いた伝記映画。主演はソフィー・マルソー。
『ポンパドゥール夫人 ルイ15世を支配した女』……2006年のフランスのTVムービー。ルイ15世の公式の愛人だったポンパドゥール夫人の半生を描いた作品。
『マリー・アントワネットの生涯』(原題:Marie Antoinette)……1938年の米国映画。邦題を『マリー・アントアネットの生涯』とするものもあり。ステファン・ツヴァイクの伝記小説が原作で、アントワネットやフランス王室に同情的な作品とのこと。主演のノーマ・シアラーがベネチア国際映画祭で女優賞を受賞しています。フェルセン役はタイロン・パワー。
『王妃マリー・アントワネット』(原題:Marie-Antoinette)……2006年のカナダ・フランス合作のTVムービー。再現ドラマ入りの歴史ドキュメンタリーに近いらしく、ドラマ性とか娯楽要素があまりない作品みたい。
『マリー・アントワネットに別れをつげて』……2012年のフランス・スペイン合作映画。フランスでベストセラーとなった小説が原作で、アントワネットの朗読係を務める架空の少女の視点から、フランス革命時のベルサイユ宮殿で繰り広げられていた歴史の裏側を描いた映画だそうです。主演はレア・セドゥ、アントワネット役はダイアン・クルーガー。
『ベルサイユのばら』……やはりツヴァイクの伝記小説を参考した池田理代子による日本の超有名漫画で、宝塚歌劇化・テレビアニメ化・実写映画化がされています。宝塚歌劇は1974年の初演以来、社会現象となるほどの大ヒットとなり宝塚を代表する作品となりました。テレビアニメは1979~1980年に放送し、これまた大ヒット。ジャック・ドゥミ監督による実写映画はフランス人監督と英米人俳優によるフランス現地ロケをした英語の日本映画で、1979年に公開していますがこちらは大コケだったとのこと。
『ラ・マルセイエーズ』……1938年のフランス映画。巨匠ジャン・ルノワール監督作で、フランス革命のバスティーユ監獄襲撃から8月10日事件までをマルセイユ義勇兵を中心に描いた作品とのこと。
『秘密指令』(原題:Reign of Terror)……1949年の米国映画。『恐怖時代』という別邦題もあり、DVD邦題は『秘密指令 The Black Book』。フランス革命のロベスピエールによる恐怖政治時代を題材としたフィルムノワール的な雰囲気の作品で、ロベスピエールは完全に悪者のようです。監督はアンソニー・マン。
『ソフィー・マルソーの愛、革命に生きて』……1988年のフランス映画。フィリップ・ド・ブロカ監督作で、フランス革命の渦中に巻き込まれていく地方貴族の実子(共和派)と養子(王党派)、その間で揺れ動く養女(ソフィー・マルソー)の三角関係を通して、シュアヌリ(ふくろう党)蜂起を描いていく歴史大作とのこと。群像劇的な映画で必ずしもソフィー・マルソーが主役というわけではないようですが、日本ではビデオスルーということでこういう邦題になっちゃったみたい。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。
『愛と欲望の果てに ドレスの下のフランス革命』……1989年のフランスの連続テレビドラマ。6時間にも及ぶ作品で、NHK-BSで放送され全6巻でビデオ化もされたそうですがDVD化はされていません。エマニュエル・ベアールがマリー・アントワネットを演じているらしい。
>中国ドラマ
『始皇帝 天下統一』(原題:大秦賦)……以前「暴君礼賛」だの「歴史の美化」だのという批判が出てるとニュースになってた『大秦帝国』シリーズ第4部にして完結編。WOWOWで放送開始です。僕は他にもいくつか中華圏ドラマを抱えてるんでパス。
#11143
バラージ 2021/11/15 21:36
恋愛準決勝戦(原題はRoyal Wedding)
史点更新ご苦労様です。ちなみに上記タイトルはフレッド・アステアのミュージカル映画の邦題なんですが観たことはありません。ただ昔からわけわかんないタイトルながらも妙に印象に残っちゃうタイトルでもあり、村上春樹もエッセイでちらっと触れてたことがあります。ま、特に意味はありません(笑)。
僕は眞子さんと小室さんの結婚問題のなんやかんやについては基本的には無関心派。その一方で、もういい加減結婚させてやりゃあいいじゃんという、あえてどっちかというと同情的な容認派(あるいは“うんざり派”)でもありますが、この問題をめぐる諸反応についてはなかなかに複雑な要素が絡み合ってるように思っています。
いわゆる保守層の反発というのももちろんあるんでしょうが、それ自体は諸反発の一部に過ぎず、本流でもなければ根源でもないように思うんですよね。そもそもの発端としての報道は有名人のスキャンダルという一種のイエロー・ジャーナリズムであり(そこには「菊のタブー」だって容赦しないぜという反権威的な姿勢すらそこはかとなく含まれてるような気さえする。それが正しいかはともかくとして)、「美智子さまブーム」「紀子さまブーム」「雅子さまブーム」などご成婚のたびに起こる、主に女性たちによるミーハーなアイドル的玉の輿プリンセス・ブームと表裏一体の性格を持った下世話な感情に負う部分が大きく、それは保守とリベラルとかウヨクとサヨクとかいったイデオロギズム的なものとは別の評価軸で起こっていると考えられます。例えて言うなら、好きな芸能人がろくでもない(と思っている)男(または女)と結婚しようとしていることへの感情的反発とでも言いますか、結婚相手に対しては罵詈雑言を浴びせ、芸能人には「早く目を覚まして!」という(おせっかいで大きなお世話な)ファン心理というようなものが大きいんじゃないかと。保守層の反発はそのような感情論的反発とは別のところから起こっており、結果的にそれと野合したか、もしくは自分たちに都合がいいのでそれに乗っかろうとしているだけに過ぎないんじゃないかと思います。
なぜ、そう思ったかというと身近にそういう反応を見せてくれる人たちがいるからでして。うちの母はミーハーな意味での皇室好きで、特に皇室の女性が出てくるとニュースからワイドショーまでわりと何でも見ています。今は亡き祖母(父方・母方双方)とも、民間から初めて皇室に入った美智子さんはお姑さん(香淳皇后)や皇族の女性たちにいじめられただの、だから自分は紀子さんや雅子さんには優しく接しただのとしゃべってましたっけ。今回の結婚問題についてはもちろん興味はあるけど賛成でも反対でもない野次馬的中立派でもあります。一方、妹は眞子さんや小室さんに批判的。彼女は別に保守的な人間ではなくノンポリ(死語ですな)もしくは問題によってはややリベラルだったりもするんで、やはりそういう軸とは異なる理由で反感を感じているようです。眞子はお嬢様育ちだから考えが甘すぎる!なんて怒ってたなあ。その一方で新聞に広告を出してる保守系週刊誌・月刊誌の過激な皇室批判見出しに嫌悪感を見せたりもするから結構複雑なのです。そして女性週刊誌やワイドショーの主な購読層・視聴者層はそのような女性たちであって、それは右とか左とかいったイデオロギーからは遠いところにいる人たちです。もちろん保守層の反発とも絡み合ってる部分もあり、そのような「ねじれ」が問題をより複雑にしてるとも言えそう。ただ、「旧皇族の男子と現皇室の皇女の結婚」などという主張は、女性たちから見れば(あるいは男たちから見ても)明らかに時代錯誤でグロテスクな気持ち悪い発想であって、国民から猛反発が起こることは間違いありません。なのでそのような主張が実現する可能性はほぼゼロに近いかと思います。
以下、気になったことをいくつか。まず著名人の反応。
評論家の保阪正康氏がTBS『報道特集』でこの問題を扱った時のインタビューで、「私は天皇に一つの聖なる存在という側面があると思いますが(以下略)」ということを言っててちょっとびっくり。保守系とはいえ穏健で常識的な評論家だと思ってたんですが、やっぱり世代なんですかねえ。ちなみに『報道特集』公式サイトには番組のアーカイブがあり、この回もまだ観れます。
一方で漫画家の小林よしのり氏は、ちらっと読んだ最近の『ゴーマニズム宣言』では眞子さん・小室さん支持派でほとんど絶賛に近い感じ。しかし以前にこれまたちらっと見た『ゴー宣』に載ってた天皇・皇后両陛下も含めて、彼らのマンガとしての描き方がそれこそ聖なる存在丸出しというか、ほとんど神のごとき描かれ方になってるのがどうにもちょっと気持ちが悪い。ご当人たちもあんな風に描かれるのはうれしくないのでは……。そのようなウヨク的神聖視とサヨク的擁護論が入り交じってる小林氏の心情は、ある意味この問題の複雑なねじれを象徴しているようにも感じます。
最後に弁護士ドットコムが登録弁護士にこの問題についてのアンケートをしたという興味深い記事を読みました。2人の結婚に対する批判的な声がやまないことについてどう考えるかを尋ねたところ、「おかしい」が47.3%、「ある程度はやむを得ない」が40.8%、「当然だ」が8.5%で評価が割れたという驚きの結果に。ただその個々の理由を読むと納得できる部分も多く、「ある程度はやむを得ない」回答者の1人の「一個人の婚姻の自由が制約され批判を受けるのはグロテスクな事態ではあるが、憲法上の帰結である。天皇制を認めながらこのような事態を批判するのは筋違いである。天皇制を否定する者だけが、このような事態を批判できる」という意見には一理あると思わざるを得ませんでした。他に、小室さんの司法試験不合格が大々的に報じられたことについてどう考えているかは、「おかしい」が44.1%、「やむを得ない」が43.6%、「どちらともいえない」が12.3%。皇族にも「婚姻の自由」はあるべきと考えるかは、「あるべき」が59.7%、「一定の制限はやむを得ない」が34.1%、「どちらともいえない」が6.2%。回答した弁護士にそこまで保守層が多いとは考えられないため、これは純粋に法理論的側面や一般的心情からの回答だと思われます。
イギリス王室でもちょっと前にゴタゴタがあったばかりですし、上記意見などの通り王制・天皇制という前時代的制度が限界に来てるのかも。立憲君主制というのは共和制への一里塚なのかもしれないなとも思ったりしています。
>お姫様とそのお相手が数々の苦難をのりこえ三年越しの愛を貫いた、なんてそれこそおとぎ話みたい
うーん、おとぎ話では「平民の娘が王子様と結婚する」という話(シンデレラ、親指姫)はあっても、「お姫様が平民の男と結婚して自らも平民になる」っていう話はあんまり思いつかないんですよねえ。お姫様はだいたい王子様と結ばれますし(白雪姫、眠り姫)、変わり種だと結婚に興味がなく別世界に帰っていくなんてのもありますが(かぐや姫)。現代のおとぎ話でも王女様は新聞記者と恋に落ちても最後はそれぞれの世界に帰っていくんですよね(ローマの休日・笑)。
>白土三平『赤目』
確か以前も書いたと思いますが、白土三平の『赤目』については臨床心理学者の故・河合隼雄氏が短い評論を書いていて、僕はそれを読んでいたため『赤目』自体は読んでいないにも関わらず大まかなあらすじは知っていたりします。河合氏の著作集『書物との対話』(潮出版社)に収録されてまして、他に長谷川町子『いじわるばあさん』、水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎』、萩尾望都『ポーの一族』、池田理代子『ベルサイユのばら』、竹宮恵子『風と木の詩』、松本零士『銀河鉄道999』、鴨川つばめ『マカロニほうれん荘』、大島弓子『綿の国星』について評論されています。確か70年代後半か80年代初め頃の文章なので『999』あたりはまだ完結してなかったのかな。萩尾・竹宮・大島の女性漫画家3人のマンガが特に高く評価されてましたね。
>ドラマ『流行感冒』
観ました。うーん、まあ、あんなもんですかね。まあ可もなく不可もなくってところで。メインじゃないほうの女中役の松田るかちゃんが、ドラマ『賭ケグルイ』で見てて個人的にちょっとお気に入りでした(笑)。間違いなくコロナ絡みで出てきた企画でしょうが、僕はそういう現実のリアルタイムの災害を歴史上の似たような題材に置き換えて時代劇または史劇として描くって今一つピンと来ないんですよね(これは『八重の桜』の時もそう思った)。
1番最初に劇中でコロナを描いていたドラマは(全ドラマをくまなく観てるわけではないんで自信を持っては言えないけど)多分今年正月の『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類!新春スペシャル!!』だったんではないかと思います。劇中でもコロナが流行した現実世界を舞台とし、ソーシャルディスタンスを意識した撮影がそのまま自然な描写になっていて、さすがに一世を風靡したドラマは違うなあと意識の高さに感心させられました。主演の新垣結衣と星野源はこのスペシャルの撮影をきっかけに交際を始めたとのことで、いろんな意味でスペシャルな作品になったようです。
>追悼
瀬戸内寂聴さんも亡くなられましたね。99歳。まさに大往生かな。ご冥福をお祈りします。
#11142
バラージ 2021/11/10 23:11
ヨーロッパはやっぱり多い
>観てない歴史映像作品 ドイツ・オーストリア史編
予想はしてたことですがヨーロッパ史の映像作品はやっぱり多い。特にドイツ、フランス、イギリスあたりは……。
『最後の谷』(原題:The Last Valley)……1970年の米国映画。三十年戦争末期のドイツのある村に侵入してきた傭兵部隊から村を守ろうとする男が主人公の娯楽アクション。主演はマイケル・ケイン、共演はオマー・シャリフ。
『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』……1968年の西ドイツ・イタリア合作映画。DVD邦題は『アンナ・マクダレーナ・バッハの年代記』。有名な作曲家バッハの2番目の妻アンナ・マグダレーナ・バッハの目から見たバッハの生涯を描いているとのこと。
『ゲーテの恋 君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」』……2010年のドイツ映画。『若きウェルテルの悩み』誕生に秘められた若き日のゲーテの恋を描いた青春恋愛映画。ただし史実からはかなり脚色されているとのこと。
『未完成交響楽』……1933年のドイツ・オーストリア合作映画。『未完成交響曲』を題材としたシューベルトの伝記映画というか恋愛音楽映画ですが、ストーリーは全くのフィクションとのこと。
『カスパー・ハウザーの謎』……1974年の西ドイツ映画。19世紀初頭のドイツに突如現れた、言葉もしゃべれぬ謎の青年カスパー・ハウザーを題材とした作品で、当時ニュー・ジャーマン・シネマの旗手の1人と呼ばれたヴェルナー・ヘルツォークの監督作。
『愛の調べ』(原題:Song of Love)……1947年の米国映画。作曲家シューマンの妻クララを主人公に、夫婦の結婚生活からシューマンの死までを描いてるんだけど、やはりフィクションがかなり含まれてるらしい。主演はキャサリン・ヘップバーン。
『哀愁のトロイメライ』……1981年の西ドイツ・東ドイツ合作映画。DVD邦題は『哀愁のトロイメライ クララ・シューマン物語』。これまたクララを主人公として、シューマンがクララの父フリードリッヒ・ヴィークに弟子入りするところから、2人がフリードリッヒの反対を押しきって結婚するところまでを描いているようです。主演はナスターシャ・キンスキー。
『クララ・シューマン 愛の協奏曲』……2008年のドイツ・フランス・ハンガリー合作映画。またもクララが主人公の作品です。有名な旦那のほうのシューマンを主人公にした映画ってないみたいなんですよねえ。クララとシューマンとブラームスの三角関係という上記『愛の調べ』と同じ筋立てなのにリメイクとは謳っていない作品みたい。
『ルートヴィヒ』……2012年のドイツ映画。第4代バイエルン国王ルートヴィヒ2世の即位から死までを描いた作品とのこと。
『うたかたの恋』……1936年のフランス映画。邦題を『うたかたの戀』とするサイトもあり。1889年に起きたオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件の映画化で、監督はアナトール・リトヴァク、主演はシャルル・ボワイエ。
『マイヤーリング』(原題:Producers' Showcase: Mayerling)……1957年の米国のTVムービー。上記作品と同じ心中事件をリトヴァク監督がリメイクした作品で、主演は当時夫婦だったオードリー・ヘップバーンとメル・ファーラー。当時のテレビドラマは生放送が基本だったため本作でも役者が生で芝居しており、それをそのまま生放送したため長らく幻の作品と言われてきたそうです。しかしブラウン管の映像をフィルムで記録する当時の録画技術で保存されていたマスターをHDで復元して公開されたらしい。テレビ放映時はカラー放送でしたが、録画はモノクロでされたため復元版もモノクロとのこと。
『青い棘』……2004年のドイツ映画。1927年にベルリンで起きた、19歳の青年が知人を殺害し自らも頭に銃弾を撃ち込んで死亡した「シュテークリッツ校の悲劇」の映画化。
『ヒットラー』(原題:Hitler: The Rise of Evil)……2003年のカナダ・米国合作のTVムービー。「第1部:我が闘争」「第2部:独裁者の台頭」の2部構成で、「第1章:覚醒」「第2章:台頭」という別邦題もあり。ヒトラーが権力を握るまでの半生を描いており、第1部は少年時代からミュンヘン一揆まで、第2部はナチス政権誕生から「長いナイフの夜」までを描いているとのこと。
『ヒトラー』……1977年の西ドイツのドキュメンタリー映画。ヒトラー研究家として著名なヨアヒム・C・フェストが監督の1人で、ナチ政党の設立や群集を夢中にさせた独特の演説など、ヒトラーの人物像を中心にその虚像と実像に迫った作品とのこと。
『モレク神』……1999年のロシア映画。1942年の春を舞台に、愛人エヴァ・ブラウンのいるベルヒテスガーデンの別荘にゲッべルス夫妻やボーマンと共にやってきたヒトラーを描いた、アレクサンドル・ソクーロフ監督による『権力者』4部作の1作目。
『ヒンデンブルグ』(原題:The Hindenburg)……1975年の米国映画。1937年に米国で起こったドイツの飛行船ヒンデンブルグ号の爆発事故を題材とした作品で、監督はロバート・ワイズ、出演はジョージ・C・スコット、アン・バンクロフトなどオールスターキャストのパニック映画といった趣きらしい。爆発原因については陰謀説を取っており、乗客たちの人間模様などは全くのフィクションみたいです。
『ヒンデンブルグ 第三帝国の陰謀』……2011年のドイツのTVムービー。日本ではオリジナルの前後編計180分を110分に編集して劇場公開されたそうです。邦題からしてやはり陰謀説で、フィクション満載のサスペンス映画らしい。
『偽りの忠誠 ナチスが愛した女』(原題:The Exception)……2016年のイギリス・米国合作映画。史実ではなく全くのフィクションなんですが、退位したドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム2世が出てくるのが珍しかったんでご紹介。1940年を舞台に、ヴィルヘルム2世の監視のために派遣されたドイツ軍将校が、屋敷で働くユダヤ人メイドと恋に落ちるが、彼女はイギリスのスパイだったというストーリー。主人公のメイド役が『ウィンストン・チャーチル』のリリー・ジェームズ、ヴィルヘルム2世役はクリストファー・プラマー。
『謀議』(原題:Conspiracy)……2001年のアメリカ・イギリス合作のTVムービー。ナチス・ドイツ高官達がユダヤ人絶滅を議論した1942年のヴァンゼー会議を描いています。主演はケネス・ブラナー。
『ナチス第三の男』……2017年のフランス・イギリス・ベルギー合作映画。 ナチス親衛隊でヒムラーに次ぐNo.2となり、占領下のチェコで暗殺されたラインハルト・ハイドリヒの半生を描いた作品。
『暁の7人』(原題:Operation Daybreak)……1975年の米国映画。ハイドリヒ暗殺を実行した暗殺部隊を主人公とした作品。監督はルイス・ギルバート。
『ハイドリヒを撃て! 「ナチの野獣」暗殺作戦』……、2016年のチェコ・イギリス・フランス合作映画。こちらもハイドリヒ暗殺部隊を主人公として描いた作品です。
『死刑執行人もまた死す』(原題:Hangmen Also Die!)……1943年の米国映画。ハイドリヒを暗殺したレジスタンスが追われる姿を描いたフリッツ・ラング監督の反ナチ映画。オリジナルは120分でしたが、134分の完全版が1987年に公開されたそうです。DVDも完全版。
『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』……2005年のドイツ映画。ヒトラー政権下で反ナチスを掲げて抵抗運動を行なった学生グループ“白バラ”の紅一点ゾフィー・ショルが、1943年に21歳の若さで逮捕・処刑された事件を描いた作品。
『誰が祖国を売ったか?』……1955年の西ドイツ映画。1944年のヒトラー暗殺計画に関与したヴィルヘルム・カナリス海軍提督の半生を描いた作品。
『ヒトラー暗殺』……1955年の西ドイツ映画。1944年のヒトラー暗殺計画をセミドキュメンタリー・タッチで描いた作品とのこと。
『暗殺計画7・20』……1955年の西ドイツ映画。DVD邦題は『総統爆破計画』。やはり1944年のヒトラー暗殺計画を描いた作品で、この頃の西ドイツで同じ題材の映画が多数作られたのは、ちょうど戦後10年だったからでしょうか?
『オペレーション・ワルキューレ』……2004年のドイツのTVムービー。これまた1944年のヒトラー暗殺計画を描いた作品。邦題は明らかに『ワルキューレ』の便乗ですな。
『ニュルンベルク軍事裁判』(原題:Nuremberg)……2000年の米国・カナダ合作の前後編のTVムービー。DVD邦題は『ニュールンベルグ軍事裁判 ヒトラー第三帝国最後の審判』。映画版とは違ってゲーリングなど実在の人物たちが次々に登場する作品ですが、史実通りというわけでもなく、脚色もされているようです。出演はアレック・ボールドウィン、クリストファー・プラマー、マックス・フォン・シドー、シャルロット・ゲンズブールなどかなり豪華。
『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』……2015年のドイツ映画。『顔のないヒトラーたち』にも脇役で登場してた西ドイツの検事長フリッツ・バウアーを主人公に、彼がホロコーストの責任者の1人であるナチス戦犯のアイヒマンを逮捕しようとする姿を描いたドラマ映画。
『検事フリッツ・バウアー ナチスを追い詰めた男』……2016年のドイツのTVムービー。こちらも上記映画同様にフリッツ・バウアーを主人公としてナチス戦犯の追及を題材としてますが、東西冷戦の影響や、イスラエルや東ドイツの関与などが描かれているらしく、映画よりもやや政治性の強い作品になっているとのこと。
『トンネル』……2001年のドイツ映画。ベルリンの壁をはさんで西から東へ抜けるトンネルを掘り、そこから人々を脱出させるという1960年代に実際にあったトンネル脱出作戦を題材とした作品。最初に180分のTVミニ・シリーズを作り、そこから映画用に167分に再編集したとのことで、日本で劇場公開&DVD化されたのは映画版のほう。
『バーダー・マインホフ 理想の果てに』……2008年のドイツ・フランス・チェコ合作映画。1960年代後半から70年代の10年間に渡る西ドイツにおけるドイツ赤軍のテロや暴力闘争などの活動を描いた社会派映画。「バーダー・マインホフ」とは組織の創設者である女性ジャーナリストのウルリケ・マインホフと活動家アンドレアス・バーダーの姓を組み合わせた組織名で、やがてドイツ赤軍と改称したとのこと。
『バルーン 奇蹟の脱出飛行』……2018年のドイツ映画。1979年に手作りの熱気球で東ドイツから西ドイツに亡命した家族の実話の映画化。動画配信はされてますが、DVD化はされていません。
『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』……2018年のドイツ映画。1980年代から1990年代にかけて活動した東ドイツのシンガー・ソングライターで、秘密警察にひそかに協力していたゲアハルト・グンダーマンを主人公としたドラマ映画。
『グッバイ、レーニン!』……2003年のドイツ映画。1980年代末の旧東ドイツを舞台に、熱烈な共産主義者の母親が8ヶ月昏睡状態だった間にベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一されてしまったことを、意識を取り戻した母親に必死で隠そうとする主人公の姿を描いたコメディ映画。
#11141
バラージ 2021/11/06 22:31
なぜか文字化け
何か間違えたかな? 映画『王の願い』の主演はソン・ガンホです。
#11140
バラージ 2021/11/06 22:21
室町アニメ
なんと非常に珍しい室町時代を舞台としたアニメ映画が来年の初夏に公開されるようです。タイトルは『犬王』。室町時代にくわしい方ならすぐにピンとくるでしょうが、猿楽師の犬王道阿弥を主人公としたアニメです。犬王と、平家の呪いで盲目になった琵琶法師・友魚(架空人物)という2人の少年の友情を描いた作品で、2人をポップスターにしてエンターテイナーとして描いていくミュージカルアニメーションとのこと。足利義満も出てくるようです。
原作は古川日出男の小説『平家物語 犬王の巻』で、現代語訳『平家物語』を手がけた古川が『平家物語』に連なる物語として描いた小説だとのこと。監督が湯浅政明、キャラクター原案が小説の装画も務めた漫画家の松本大洋、脚本がドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の野木亜紀子、音楽が『あまちゃん』『いだてん』の大友良英、犬王の声役が「女王蜂」のボーカル・アヴちゃん、友魚の声役が俳優の森山未來と、超一流が集結した豪華な布陣で、当然ながら話題は室町がどうこうとかよりももっぱらそっちのほう(そりゃそうだ・笑)。すでに映像特報がYouTubeにあがってますが、いい意味で歴史に縛られない面白い映画っぽい感じです。
なお、古川の現代語訳『平家物語』も来年にテレビアニメ化されるようです(スタッフなどは『犬王』とは全く別)。
>映像作品における源平合戦時代の有名人たち
またまた源平話。今回はその時代の主要人物たちが、過去の大河ドラマやその他の映画・ドラマにどの程度出てきたかという話です。
まずはいよいよ来年の大河ドラマの主人公となる北条義時。過去の源平大河6作品のうち、1番最初の『源義経』を除く5作品に登場と、意外に多くの作品に出ています。とはいえ目立った活躍をしてるのは準主人公クラスだった『草燃える』くらい。『新・平家物語』では若手の頃の西田敏行が演じてたそうですが(なぜか横山相模介という架空人物との2役)、総集編には出てなかったんじゃないかなあ? その後の『炎立つ』『義経』『平清盛』では演じてるのもあまり知らない役者だし、前2作は総集編を、『平清盛』は全話を観たけど、いずれも義時は全然記憶にありません。そもそも義時は源平合戦で全然活躍してない上に、もともと次男で兄宗時が石橋山で討死するまで嫡男でもなかった(厳密に言うと江間家という分家を立てており、その後も父時政を追放するまで嫡男ではなかったようです)ため、鎌倉初期が舞台にならないとあんまり目立ちようがないんですよねえ。歴史映像名画座にある他の源平作品にも登場していません。
歴代大河の主人公で源平大河全6作すべてに登場してるのは、源義経と源頼朝。さすがは時代の主役クラスといったところです。義経はその他の名画座掲載作品でも、映画『新・平家物語 静と義経』、TBS版『源義経』、日テレ版『源義経』はもちろんのこと、映画『虎の尾を踏む男達』『五条霊戦記 GOJOE』、ドラマ『武蔵坊弁慶』にも登場しています。頼朝は『~静と義経』『武蔵坊弁慶』『源義経(TBS&日テレ)』、そしてTBS版『平清盛』に出てきます。
平清盛と北条政子は『炎立つ』を除く5作品に登場。それ以外だと清盛は映画『新・平家物語』、TBS版『平清盛』はもちろん、映画『地獄門』と『五条霊戦記 GOJOE』『武蔵坊弁慶』『源義経(TBS&日テレ)』に出てきます。政子は『~静と義経』『武蔵坊弁慶』『源義経(TBS&日テレ)』に登場。
藤原泰衡は『新・平家物語』と『草燃える』を除く4作品にしか出てきません。その他の名画座作品も出てきたのは『武蔵坊弁慶』と日テレ版『源義経』のみ。親父の秀衡のほうが登場作品が多く、『草燃える』を除く5作品に出てきており、その他にも『武蔵坊弁慶』『源義経(TBS&日テレ)』に登場しています。
大河の主人公以外では、弁慶が『草燃える』を除く5作品に登場。他の作品でも主人公の『虎の尾を踏む男達』『五条霊戦記 GOJOE』『武蔵坊弁慶』の他に『~静と義経』『源義経(TBS&日テレ)』と出てくる作品がかなり多い。静は『源義経』『草燃える』『義経』の3作品にのみ登場と逆に意外に少ない。その他は主人公の『~静と義経』の他、『武蔵坊弁慶』『源義経(TBS&日テレ)』に出てきます。主人公になったことはないし、また今後なることも多分ないだろうけど、この時代の重要人物の1人である後白河天皇(上皇・法皇)は、『源義経』を除く5作品に登場。その他では『源義経(TBS&日テレ)』とTBS版『平清盛』に登場しています。
>最近の未見歴史映画
『王の願い ハングルの始まり』……李氏朝鮮第4代国王・世宗を主人公に、ハングル制定を題材とした映画。主演はソン・ガンㇹ。今年公開された映画で、ついこないだDVD化されました。地元でも公開されたんですが、似たような題材の『世宗大王 星を追う者たち』を観たばっかりだったし、またまた女っ気のなさそうな映画だったのでパス。
>DVD化されたドラマの話
『鳳囚凰~陰謀と裏切りの後宮~』……南朝の宋を舞台とした中国ラブ史劇。#11107で紹介した時にはDVD化されてないと書きましたが、フライングだったようでつい最近DVD化されました。
#11139
ろんた 2021/11/04 18:41
一本忘れていました
>「剣樹抄~光圀公と俺~」(NHK BSP 毎週金曜 20:00-20:45 毎週日曜再放送 18:45-19:30)
若き徳川光圀が隠密組織「拾人衆」を使い明暦の大火を引き起こした火付け一味を追う、というお話で原作は冲方丁。実は火付け一味が討幕組織で、柳生義仙が助太刀したりするらしい。でも演じるのが舘ひろしって、列堂義仙(1635年生まれ)は光圀(1628年生まれ)より年下だし、当時(1657年)まだ二十代前半なんだが。あと剣術使いでもない。柳生"烈堂"(『子連れ狼』参照)のイメージを混ぜてるのか?(笑) それにしても、お爺さんじゃない光圀のドラマって珍しい。ひょっとして、テレ東の12時間ドラマで十二代目団十郎が演じて以来ではなかろうか?
■スタッフ
原作:冲方丁『剣樹抄』/脚本:吉澤智子/音楽:兼松衆/主題歌:PYG「花・太陽・雨」/演出:本木一博,一色隆司/制作統括:佐野元彦(NHKエンタープライズ),落合将(NHK)/
■キャスト
水戸光圀:山本耕史/泰姫:松本穂香/了助:黒川想矢/中山義直:西村まさ彦/錦氷ノ介:加藤シゲアキ/義仙:舘ひろし/吽慶:石坂浩二/勝山:美村里江/
#11138
バラージ 2021/11/03 21:20
そういやカルチャー・クラブってありましたね(特に意味はない)
体育の日がスポーツの日になったんだから、文化の日もカルチャーの日にして月曜日に移しちゃえばいいのに。とか言ったらウヨクの人たちが怒っちゃったりすんるんだろうか?
>観てない歴史映像作品 ヨーロッパ史編④
ヨーロッパ史の第4回。やっぱりヨーロッパ史は多いっすね……。ドイツ史は多いので次回まわしです。
・北欧史
『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』……2012年のデンマーク・スウェーデン・チェコ合作映画。18世紀のデンマークで国王の侍医から摂政となったヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセと、王妃カロリーネ・マティルデ、そして国王クリスチャン7世の三角関係を背景として、18世紀デンマーク政治史を描いた史劇映画。カロリーネ役が『チューリップ・フィーバー』のアリシア・ヴィキャンデルだと今回調べて知りました。
『コールド・アンド・ファイヤー 凍土を覆う戦火』……2014年のデンマーク映画。19世紀にデンマークとプロイセンの間で行われた第二次シュレースヴィヒ=ホルシュタイン戦争を、主人公兄弟の兄弟愛を軸に描いた戦争映画。
『サーミの血』……2016年のスウェーデン・デンマーク・ノルウェー合作映画。1930年代のスウェーデンで、スウェーデン人によって劣等民族として差別を受けていた北部の山間部に居住する少数民族サーミ族の少女が、差別や困難に立ち向かいながら生きる姿を描いたフィクションのドラマ映画。
『ナチスが最も恐れた男』……2008年のノルウェー映画。ナチス・ドイツ占領下のノルウェーでレジスタンス運動のリーダーとして活動したマックス・マヌスを主人公としたアクション・サスペンス映画。
『ソニア ナチスの女スパイ』……2019年のノルウェー映画。ナチス占領下のノルウェーで、スウェーデンとナチスの二重スパイとして活動した実在の女優ソニア・ビーゲットを主人公としたドラマ映画。
『誰がため』……2008年のデンマーク・チェコ・ドイツ合作映画。1944年、ナチス占領下のデンマークで、レジスタンス組織の一員としてナチ協力者を暗殺する任務を遂行していた実在の2人の男の苦悩を描いたドラマ映画。
『ヒトラーの忘れもの』……2015年のデンマーク・ドイツ合作映画。第二次世界大戦終了直後のデンマークを舞台に、地雷撤去を強制される敗残ドイツ軍の少年兵たちを、史実に基づいて描いたドラマ映画。
・オランダ史
『ウォリアー』……2018年のオランダ映画。8世紀のフリースラント王国の王レッドボットを主人公に、フランク王国との戦いを描いた作品。
『提督の艦隊』……2015年のオランダ映画。17世紀に英蘭戦争を戦ったネーデルラント連邦共和国の海軍提督ミヒール・デ・ロイテルを主人公とした作品。
『アンネの日記』(原題:The Diary of Anne Frank)……1959年の米国映画。あまりにも有名なアンネ・フランクの日記は何度か映画化されてますが、これはその最初の映画化。監督はジョージ・スティーヴンス。
『アンネの日記』……1995年の日本のアニメ映画。これは1番新しいバージョン。
>水師提督さん
『人形劇 平家物語』には葵も出てきたんですね。ということは吉川英治の原作にも出てきたのかな?(僕は未読でして) 映画『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』(これも未見)には巴・山吹・冬姫は出てきたけど葵だけは出てこなかったようなんで、たぶん上映時間の都合上エピソードをカットしたんでしょう。大河版『新・平家~』は清盛(と平家)のみを主人公としたためか、出てきたのは巴だけだったようです。
>ドラマ情報
BS12で12月から、明の宣徳帝の孫皇后を主人公としたタン・ウェイ主演のドラマ『大明皇妃 Empress of the Ming』が放送開始されるようです。扱ってる時代は珍しいんですが、ドラマとしての出来はいまいちだったんだよなあ……。
『流行感冒』は最初に放送された時ちょっと気になりつつも、気づいたら観逃がしてたんで、また放送されるなら観てみようかな。
>名画座修正情報
『大漢風』……DVD邦題は『大漢風 項羽と劉邦』です。
『REIGN/クイーン・メアリー 愛と欲望の王宮』……オリジナルは全78話のようです。
#11137
ろんた 2021/11/02 17:11
ちょっと注目のドラマ
連投になってしまいましたが、放送が迫っているものもあるのでどうかご容赦を。なぜか11月第1週に集中。最後の一本は12月のスカパー無料の日の放送。11月はなぜか無料枠がない。<時代劇専門チャンネル
>「塔馬教授の天才推理3 新潟からくり人形の館」(BSフジ 11/03 12:00-13:58)
高橋克彦原作「塔馬教授の天才推理」シリーズの3作目。全国ネットの2時間ドラマ枠が無くなり、期首特番枠でも放送されず、関東ローカル枠で放送された。フジ系ではこういう例が多い気がする。近世庶民文化史が専門なのに、これまで「乾坤通宝」「即身成仏」など、専門外に首を突っ込んでいた塔馬教授だけど、今度は「からくり人形」なので一応専門?
■スタッフ
脚本:扇澤延男/プロデュース:有賀聡(ケイファクトリー)/演出:千葉行利(ケイファクトリー)/原作:高橋克彦『偶人館(からくりかん)の殺人』(PHP文庫)/局系列:FNN/制作:CX/制作著作:ケイファクトリー/
■キャスト
塔馬双太郎:佐々木蔵之介/名掛亜里沙:森口瑤子/長山作治:橋本さとし/山影哲夫:宇梶剛士/上林:渋谷謙人/大友刑事:遠山俊也/高木:佐藤一平/新島夏之:渡辺裕之/新島めぐみ:いしのようこ/杉本栄子:小松みゆき/神楽英良:春海四方/長野里美/ハマカワフミエ/郭智博/江良潤/鉢嶺杏奈/古井榮一/水野智則/久保山知洋/中野剛/仲野元子/キンタカオ/磯崎竜一/ほか
>「流行感冒」(NHK総合 11/06 16:45-17:59)
以前、BSPで放送された志賀直哉原作のドラマ。スペイン風邪が流行する中で書かれたもので、菊池寛にも「マスク」という作品がある(文春文庫)。主人公は小説家。妻・春子と4歳の娘・左枝子、二人の女中とともに暮らしており、大正7(1918)年秋、流行感冒(スペイン風邪)が流行する中、娘の健康に臆病なほど神経質となっていた。ところが、女中の石が村人が大勢集まる旅役者の芝居見物に出かけた疑いが出てきて……という話らしい。
■スタッフ
脚本:長田育恵/制作統括:松川博敬(NHK)/演出:柳川強/原作:志賀直哉/音楽:清水靖晃/
■キャスト
私:本木雅弘/春子:安藤サクラ/左枝子:志水心音/石:古川琴音/きみ:松田るか/寅吉:石橋蓮司/根岸:仲野太賀/池津祥子:石村みか/ほか
>「明治開化 新十郎探偵帖」(NHK総合 毎週土曜 18:05-18:45)
地上波初放送。BSPで放送されていた際に何度か書いているんで詳細は省略。
>「聖徳太子(1)(2)」(NHK BSP 11/06 19:30-21:00,21:00-22:30)
没後1400年ということで20年前のドラマを放送。蘇我-物部の戦いで折り返し。太子は反戦平和主義者で、馬子は後半、改心するらしい。キャストを見ていると、どうしても『日出処の天子』(山岸凉子)のキャラが連想されてしまう(笑)。これで関西局制作の古代史ドラマは全部放送された。
■スタッフ
作:池端俊策/音楽:冨田勲/制作統括:木田幸紀/演出:佐藤幹夫/
■キャスト
厩戸皇子:本木雅弘,浅利陽介(子供時代)/蘇我馬子:緒形拳/物部守屋:宝田明/穴穂部皇子:柄本明/泊瀬部皇子(崇峻天皇):加藤雅也/額田部皇女(推古天皇):松坂慶子/刀自古郎女:中谷美紀,戸田恵梨香(子供時代)/伊真:ソル・ギョング/来目皇子:松尾敏伸,田中啓介(子供時代)/竹田皇子:達山智宏/難波皇子:斉花舟周/春日皇子:妻城洋/河上娘:松永典子/小野妹子:今田耕司/秦河勝:國村隼/大伴連囓:河原さぶ/巨勢臣比良夫:田中弘史/葛城臣烏奈良:亀山忍/三輪君逆:南条好輝/膳臣賀施夫:中山正幻/土師連:和田茂樹/中臣勝海:海部剛史/紀男麻呂:須永克彦/佐伯連丹經手:久賀大雅/忌部氏:旭堂小南陵/迹見赤檮:嶋尾康史/東漢直駒:荒井紀人/呪禁師:漢山/大兄皇子:近藤正臣/語り:長谷川勝彦/
>「影武者織田信長」(時代劇専門チャンネル 12/05 12:00-14:30)
最近、無料放送が無くなった(?)時代劇専門チャンネルですが、これは無料。1996/01/03にテレビ朝日系で放送されたお正月3時間ドラマ。最初「影武者徳川家康」の間違いかと思った。時期的には便乗商法っぽい? ただ、お正月特番なので明朗娯楽大作のよう。あと工藤栄一監督なので面白いんじゃないでしょうか。
時は天正9年。織田信長の天下統一が目前に迫る中、主君の身を案じた羽柴秀吉は影武者を立てようと千利休を動かす。ところが利休が見つけてきたのは、信長にそっくりな、安土城下で瓜を売っていた左平という百姓だった。無学で小心者の左平は、望みのままの褒美を与える、と言っても、そんな大役など務まらない、と繰り返す。秀吉はとうとう、承知しなければ左兵の母と娘を殺す、と言い出して無理矢理影武者にする。礼儀作法を教える寧々、武術を仕込む甲賀忍者・黒蜘蛛の尽力でようやく形になり、信長も左兵のことを気に入る。ところが、信長が法要を抜け出して鷹狩りに行ってしまい、急遽左兵が代理を務めることになったのだが、そこには濃姫が待っていて……。
■スタッフ
脚本:山田信夫/監督:工藤栄一/
■キャスト
織田信長,左平:藤田まこと/濃姫:名取裕子/羽柴秀吉:片岡鶴太郎/黒蜘蛛:根津甚八/寧々:沢田亜矢子/明智光秀:夏八木勲/千利休:米倉斉加年/森蘭丸:正木慎也/徳川家康:西田健/川上夏代/島田順司/栗田よう子/中原果南/金沢碧/松岡由美/笹木俊志/岩尾正隆/石川栄二/峰蘭太郎/河合綾子/大川浩樹/
#11136
ろんた 2021/10/31 00:34
菅野賢治「『命のヴィザ』言説の虚構」(共和国)
新聞の書評欄(著者インタビュー)で見つけた本。記事を引用して内容紹介。
1940年、外交官の杉原千畝がユダヤ人に日本通過を認める「命のビザ」を発給したのは、ナチス・ドイツのホロコーストに関連づけられるものではなく、忍び寄るソ連の全体主義から逃れさせるためだった-。3千点の1次資料を検証し導き出された本書の結論は、国内外でよく知られた通説を覆すものだった。
「1次資料」とは、ニューヨークのユダヤ系機関に保管されていた当時の電報や報告書など。そこからは「一部のユダヤ人難民たちが、ひたすら新しいソヴィエト体制の脅威から逃れようと必死」な姿がうかがえるとのこと。40年当時、リトアニアはソ連に編入途上、ユダヤ人の集団虐殺は41年秋以降というのも根拠としているらしい。
ただ疑問もあります。なぜリトアニアにユダヤ人が溜まっていたのかを考えると、明らかにホロコーストに象徴されるナチスの反ユダヤ政策があったはず。それを無関係と言い切れるのか? 杉原千畝は戦後のインタビューでビザ発給の理由として、「アウシュビッツ」や「ガス室」をあげているというが、そういう文脈ではないのか? ソ連のスターリン主義の問題は、スペイン内戦で左派の一部には知られていたけど(ジョージ・オーウェルとか)、一般的だったろうか? それよりも、独ソ不可侵条約の影響の方が強いのではないか? また「一部のユダヤ人」というのが富裕層ならば、反共的なのは当然じゃないか? (あと、スターリンはトロツキー追い落としの際に反ユダヤ主義を宣伝していたしね)
まあ、興味深いし読みたいとは思うんですが、高いんですよねぇ(汗)。(5720円)
#11135
水師提督 2021/10/30 18:54
義仲の妻たち(人形劇)
ご無沙汰しております。
バラージさんに便乗いたしまして、、、
NHKの『人形劇 平家物語』では、全4部のうち、第3部が実質的に義仲を主人公としており、妻たちも巴・葵・山吹・冬姫の4人が登場していました。
巴が正妻であり、あとは愛人という扱いでした。
出番では、やはり巴が頭抜けていましたが、変わっていたのが葵と山吹の扱いです。
葵が正式(?)な妾で、山吹は侍女だったのですが、酔った義仲が山吹に手をつけたところ、嫉妬に狂った葵が山吹を兵卒に落とし、さらに山吹が倶利伽羅峠合戦のドサクサに紛れ、葵を討って重傷を負わせ、妾の立場も奪い取るというドロドロの展開です。
さらに冬姫の登場で、義仲をめぐる女性関係は破滅的な様相を呈していくのですが、今にして思うと、女性たちを通じて、義仲の盛衰を描こうとしたのでしょうね。
#11134
バラージ 2021/10/29 23:57
映像作品における木曽義仲とその周辺の人々
またまた超久々に源平話。今回は脇役では結構出てくるんだけど、主役にはなかなかならない木曽義仲こと源義仲と、彼に関係する人々の出てくる映像作品の話です。
といっても義仲って脇役として出てくる作品も実はそれほど多くなかったりするんですよね。以前も書いたと思うんですが、NHK大河ドラマ最初の源平作品『源義経』には義仲が登場しません。どうやらこれは村上元三の原作小説からしてそうらしく、大河以前の1956年の映画化作品『続源義経』や、その後の日テレ年末時代劇『源義経』にも義仲は出てこないようです。
義仲が主人公の映像作品は歴史映像名画座にも掲載されている映画『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』が今のところ唯一の例。大河『新・平家物語』にも義仲は出てきたみたいだけど(演:林与一)、総集編にも出てたかなあ? 全く記憶にありません。平家ものだと、1971年のドラマ『女人平家』にもなぜか義仲が出てきたようです。その次の大河ドラマ『草燃える』にも義仲は出てきたようですが、演じた役者さんが全然知らない人だし総集編にも出てこなかったんじゃないかなあ?
そんなわけで手っ取り早く義仲を見れる1番古い映像作品はNHK新大型時代劇『武蔵坊弁慶』。佐藤浩市が義仲を演じてました。富田常雄の原作小説はそれ以前の1965年にも日本テレビでドラマ化されたらしく、また1997年にもテレビ朝日でやはりドラマ化されており、いずれでも義仲は出てきたようです。97年版で義仲を演じたのはなんと五木ひろし。イメージに合わね~。TBS正月時代劇『源義経』にも義仲は出てきましたが、大河に戻って『炎立つ』には未登場。まぁ奥州藤原氏とはあまり関わりがありませんからね。その次の『義経』では出番が結構多かったようですが、そのまた次の『平清盛』では清盛との関わりがほぼないためかやはり未登場。来年の『鎌倉殿の13人』では青木崇高が演じるそうです。
続いて義仲の妻妾たちですが、そもそも義仲の妻(正室)は史料はもちろん、物語類にも登場していません。系図集『尊卑文脈』では嫡子・義高の母が義仲の乳母子・今井兼平の娘とされてますが、年代が合わないので兼平の父で義仲を養育した中原兼遠の娘だろうと推定されているようです。なのでその兼遠の娘が妻という可能性が高いと思われるんですが、『平家物語』にも登場してないんですよね。
現代の創作作品では巴(巴御前)が義仲の妻としてよく登場しますが、巴は義仲の妻ではありません。『平家物語』の異本で最も遅く室町時代に成立したと言われる読み本系の『源平盛衰記』でのみ義仲の妾とされてますが、他の『平家物語』諸本では義仲の便女(身の回りの世話をする女性)で大力の女武者とされてますし、貴族の日記のような同時代史料や『愚管抄』『吾妻鏡』などの史書には名前も出てこないため、そもそも実在したかどうかも不明です。名画座に掲載されてる映像作品では、映画『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』、大河『新・平家物語』、新大型時代劇『武蔵坊弁慶』(演:大地真央)、TBS正月時代劇『源義経』、大河『義経』に、未掲載の作品では1965年版と1997年版の『弁慶』にそれぞれ登場しています(97年版で演じたのは国生さゆり)。来年の大河『鎌倉殿の13人』では秋元才加が演じるとのこと。
義仲に仕えた女武者には、他に山吹と葵という女性もいます。山吹は語り本系の『平家物語』にのみ名前が出てくる人で、巴と共に信濃から義仲が従えてきた便女だが範頼・義経軍との最期の合戦時には病のため京に留まったと紹介され、本人は登場しません。映像作品では映画『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』にのみ登場しています。
葵は『源平盛衰記』にのみ名前が出てくる人で、やはり最期の合戦時に、巴と共に義仲に従う女武者だったが砺波山の合戦(倶利伽羅峠の合戦)で討死したと紹介されるだけで、本人は出てきません(最期の合戦時に紹介されるだけで砺波山合戦そのものでは登場しない)。登場する映像作品もなし。
それから『平家物語』諸本によると、義仲は法住寺合戦で後白河法皇を幽閉し権力を握った際に、後白河に寵愛される甥の近衛基通に摂関の座を奪われていた松殿基房に接近し、その聟(むこ)となったと記されています。なお『平家物語』などには義仲の妻となった基房の娘の名は記されてないんですが、系図類にある基房の娘で婚姻者が不明なのが藤原伊子のみなので、彼女が義仲の妻になったのだろうと推定されているようです。しかし義仲と基房が手を結んだのは事実ですが、基房の聟となったことは貴族の日記や『愚管抄』には見られず(『吾妻鏡』は当該年が欠落)、また『平家物語』諸本で最も古態を留めていると言われる読み本系の「延慶本」にも見られないため、おそらく後世の創作だろうと推測されています。映像作品では、映画『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』(役名は冬姫)と、大河『義経』(役名は任子。「任子」ってのは九条兼実の娘の名前なんですが……)に登場しています。また伊子は後に、鎌倉初期に朝廷の権力を握った源通親(土御門通親)に嫁ぎ、有名な僧の道元を産んだという説があり、映画『禅 ZEN』にも登場してるようですが(演:高橋惠子)、道元の両親については諸説あり、通親と伊子が両親とする説については疑問が呈されているとのこと。結局、系図類に基房の娘として伊子という名前があるという以外は何もわからない人物のようです。
父親の義賢は前にも書いた通り、大河『平清盛』にのみ登場。また義仲の乳母夫で、義賢が討たれた後、赤ん坊の義仲を保護して信濃で育てた中原兼遠は大河『義経』にのみ登場しています。兼遠の息子で、義仲の乳母兄弟である樋口兼光と今井兼平は比較的有名で、映画『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』、大河『新・平家物語』、新大型時代劇『武蔵坊弁慶』、大河『義経』にそれぞれ登場しており、兼光はさらにTBS正月時代劇『源義経』にも登場しているようです。
義賢の嫡子でもある兄の仲家は京にいたと思われ、義賢死後は源頼政に保護されて養子となり、以仁王と頼政が挙兵すると共に戦って討死しています。仲家には仲光という子もいたらしく同様に討死。養父の頼政は源平ものに出てくることが多い人ですが、仲家・仲光は未登場。また義仲には宮菊姫という妹もおり、義仲滅亡後に北条政子の猶子(相続権のない養子)となって領地を与えられています。ただし妹だと政子より年上になってしまい、年齢的に合わないため娘の誤りではないかとする説もあるようです。やはり映像作品への登場はなし。
息子の義高(『吾妻鏡』による。延慶本『平家物語』『尊卑分脈』では義基、長門本『平家物語』では義隆(または義守)、覚一本『平家物語』では義重、『曽我物語』では義衡)は、頼朝の娘・大姫の婿の名目で頼朝の人質となり、義仲滅亡後に殺されています。この義高と大姫の悲劇はわりと有名かつ人気のある話でよく出てくるんですが、説話的要素が混入している可能性が高いとも指摘されています。そんなわけで登場作品も多く、映画『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』、ドラマ『北条政子』『女人平家』、大河『草燃える』、新大型時代劇『武蔵坊弁慶』、大河『義経』に出ているようです。来年の『鎌倉殿の13人』では市川染五郎が演じるとのこと。義仲の子供は他にも何人かが系図類など諸書に記されているようですが、いずれもはるか後世の編纂書のため実在した可能性は低いと思われます。二代将軍源頼家の娘・竹御所の母(つまり頼家の妻妾の1人)が『尊卑分脈』では義仲の娘となっているようですが、いずれも映像作品には未登場です。
>観てない歴史映像作品の追記
・ポーランド史
『ソハの地下水道』……2011年のポーランド・ドイツ・カナダ合作映画。第二次世界大戦時のナチス・ドイツ占領下のポーランドで、ユダヤ人を地下水道にかくまっていたレオポルド・ソハという人物の実話の映画化。
・ハンガリー史
『サウルの息子』……2015年のハンガリー映画。アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所で同胞であるユダヤ人の死体処理を行う特殊部隊ゾンダーコマンドに選抜されたハンガリー系ユダヤ人のサウルが、息子の遺体を見つけユダヤ教の教義に基づき葬ろうとする姿や、大量殺戮が行われていた収容所の実態を描いた映画。
>追悼
確か以前にも書きましたが、僕は白土三平というと子供の頃のテレビアニメ『サスケ』ぐらいしか観てないですねえ(原作は未見)。昔、家にたまたまあったマンガ雑誌(多分親父の)で『カムイ伝』か『カムイ外伝』を1話だけ読んだんですが、残念ながら僕の趣味には全く合わず。正直言いましてその頃にはもう「過去の人」というイメージでしたね。さいとう・たかをももちろん名前は知ってますが、有名な『ゴルゴ13』を含めて作品を読んだことは全くありません。こちらは『こち亀』的に細く長くずっと時代を超えた存在だったかな。また前回書き忘れましたが、米国のパウエル元国務長官も亡くなりましたね。そして女性初の官房長官となった森山眞弓氏も死去。90年代もどんどん過ぎ去っていきますね。皆様ご冥福をお祈りします。
#11133
ろんた 2021/10/27 21:49
「劇画」の話
夏にちょっと忙しくてお久しぶりになってしまいました。いや、その後も細々としたことが色々ありまして……。中国で暴れ回った将校の回想録の話をUPしようと思ったんですが、もう晩秋。しかも個人的に横溝正史ブームが来てしまっております。ということでリハビリ(?)に史点ネタです。(更新お疲れ様です)
「劇画」は辰巳ヨシヒロが最初に使ったということらしいですが、ジャンルとしては、青年層向け(特にブルーカラー)、ストーリー、演出、絵柄がリアリズム志向という特徴を持った作品群といえるかと思います。ただ、アクション、ハードボイルドタッチの作品ばかりでなく、私小説的なものもあったりします。そして「マンガ」が無視できないムーヴメントとなってきた1970年代後半、主要メディアで「劇画」が今日の「マンガ」「コミックス」というニュアンスで使われ始めます。これ、要するによく分かっていなかったってことでしょうか(笑)。手塚マンガで育って劇画に熱中した世代(いわゆる団塊の世代)はまだ30前後で、報道内容を左右する地位にはなく、同時のオヤジたちが<「劇画」=ストーリーのある漫画>と解釈しちゃったとか、ありそうな気がします。
もう一つ考えられるのは、「漫画」と区別する必要があったからでしょうか。この「漫画」は一コマ漫画、四コマ漫画、数ページに渡る大人向け漫画で、簡単に言えば、「文春漫画読本」に掲載されるような、そして旧文春漫画賞の対象となるような作品ですね。そしてこれらの作者はいわば重鎮揃いで、近藤日出造とか「マンガ」を敵視していたらしい。今では滅んだも同然のジャンルですが、当時はメディアで力を持っていたので区別する必要があったのかも。
まあ、80年代後半には、こういう使われ方はしなくなったのですが、その時には大友克洋がちゃぶ台返しして、ストーリーマンガと劇画の相克は吹っ飛んでしまったのであった(笑)。
つったら、白土三平と岡本鉄二の訃報が……。あああああああ。
#11132
徹夜城(またまた偉大な漫画家の訃報に悲しむ管理人) 2021/10/26 22:54
嗚呼、白土三平も…
今日公表されましたが、数々の忍者劇画で一時代を築いた白土三平さんが亡くなりました。先日のさいとう・たかを氏の訃報を聞いた時、もしや次は、とちらついたんですが、現実になってしまいました。お年はお年だったんですけどね。
「史点」ではここ二回連続で漫画家・劇画家の訃報をとりあげましたが、次回も白土三平を語らざるを得なくなりました。日本の漫画史上外せない重要人物ですし、「手塚治虫に匹敵」と評する人だって少なくない。まぁ一番存在感のあった時期というのはある特定の時代を背景にしてしまうのですけど。
ま、とにかく白土三平に関しては個人的にも大変思い入れがありますし、「歴史」として次回史点で書いてみようと思います。
>バラージさん
タルコフスキーの「アンドレイ・ルブリョフ」は一度見たことがありまして、実はかなり初期段階の「歴史映像名画座」にも入れていたことがあるんですが、現在の形にしたときに記憶があいまいになってたこともあって外しちゃったんですよね。
ソ連映画の流れもあるのか、ロシアの歴史もの映画をたまにネット上で見かけることがありますが、字幕なしにしても難解なのが多いような…
#11131
バラージ 2021/10/23 20:04
史点ほか
就任した時には意外に長期政権になる可能性もあるのでは?なんて推測も一部にあった菅政権ですが、終わってみれば順当に(?)短命政権に終わりました。しかしそれに代わった岸田首相もなあ。良くも悪くも地味で印象が薄い、というか良くも悪くも印象がないと言ってもいいような(谷垣さんも昔そう言われてたな)。先週の週プレの、しりあがり寿の四コマ漫画『時事おやじ』で、女の人が岸田首相について「なんだかピンとこない……」「この人が日本の首相だなんて」「なんかサラリーマンぽいし」「ただのフツーの人ってゆーか」「役人ならまだわかるけど」「とにかくピンとこない……」とか言って、さらには「同じようにピンとこない人は多いはず。みんなで声をあげるのよ!」と言い出して、官邸前で大勢の人たちが「ピンとこない! ピンとこない!」とシュプレヒコールをあげるってのがちょっと面白かった(笑)。とはいえ何も印象がない分、これからいくらでもプラスになる可能性はあるとは思うんですが、それも今のところなんか微妙なんだよなあ。
>観てない歴史映像作品 ヨーロッパ史編③
・ロシア史
『VIKING バイキング 誇り高き戦士たち』……2016年のロシア映画。10世紀のノヴゴロド公ウラジーミル1世が兄との争いに勝ち抜き、キエフ大公となってキリスト教に帰依するまでを描いているとのこと。なんでタイトルが「バイキング」(ロシア語原題も同じ)なのかというと、ウラジーミルの祖先がバイキングだからということみたい。
『フューリアス 双剣の戦士』……2017年のロシア映画。13世紀のリャザン公国とモンゴル帝国の戦いを描いた「バトゥのリャザン襲撃の物語」を題材に、バトゥ率いるモンゴル軍と戦った武人エフパーチー・コロブラートを主人公としたアクション史劇映画らしい。
『グラディウス 希望への奪還』……2018年のウクライナ映画。ハールィチ・ヴォルィーニ大公国の公にして初の全ルーシの王となったダヌィーロ・ロマーノヴィチの国内統一の苦難と、バトゥ率いるモンゴル軍との戦いを描いた史劇映画とのこと。しかしまあ、わけのわからん邦題だなぁ。
『アレクサンドル ネヴァ大戦』……2008年のロシア映画。エイゼンシュテイン監督『アレクサンドル・ネフスキー』以前のアレクサンドルの、妻アレクサンドラとの結婚、貴族たちとの暗闘、そして「ネフスキー」と呼ばれるきっかけとなったネヴァ川の戦いまでを描いているとのこと。
『オルド 黄金の国の魔術師』……2012年のロシア映画。14世紀のキプチャク・ハン国が最盛期を過ぎ斜陽に入り始めた時代を舞台に、ティニベク・ハンが弟ジャニベクに暗殺されるところから、ハンになったそのジャニベクもまた息子に殺害されるまでを、モスクワ司教アレクシイの受難を絡めて描いた芸術映画。脚本は『太陽』のユーリー・アラボフで、第34回モスクワ国際映画祭で最優秀監督賞と最優秀女優賞(皇太后タイ・ドゥラ役のローザ・カイルリーナ)を受賞しています。典型的な邦題&パケ写&煽り文句詐欺で、実はあらすじをよく読めば予想できるんですが、アクション要素もファンタジー要素もほぼ皆無。「黄金の国=キプチャク・ハン国」「魔術師=アレクシイ」で、「オルド(原題の発音は“オルダ”)」は光栄ゲーム『蒼き狼と白き牝鹿』のあれですね。かなり陰鬱な芸術映画のようなので観る人を選ぶ作品かも。
『アンドレイ・ルブリョフ』……1969年のソ連映画。15世紀初頭のロシア史上最高のイコン画家アンドレイ・ルブリョフを主人公とした、巨匠アンドレイ・タルコフスキー監督による芸術映画です。共同脚本はアンドレイ・コンチャロフスキー。オリジナル版は205分、公開版(&最終版)は186分、日本公開版(&DVD)は182分。タルコフスキーらしくやや難解な映画のようですが、タルコフスキーはそもそも伝記映画や歴史映画を作るつもりはなかったそうで、ルブリョフの生涯を記録した確かな史料が少なく不明な点も多いため、史実に縛られず自由に描くことができたようです。
『恋のページェント』(原題:Pageant of Lovers)……1934年の米国映画。純真無垢な少女だったエカテリーナ2世が堂々とした女帝へと変貌していく半生を描いた伝記映画。監督はジョゼフ・フォン・スタンバーグ、主演はマレーネ・ディートリッヒ。
『ロイヤル・スキャンダル』(原題:A Royal Scandal)……1945年の米国映画。エカテリーナ2世と彼女を取り巻く(架空の)人々を描いたスクリューボールコメディで、エルンスト・ルビッチ監督が1924年の自作『禁断の楽園』(原題:Forbidden Paradise)をリメイク。しかしルビッチが途中で倒れたため、オットー・プレミンジャーが引き継いで完成させたとのこと。「エルンスト・ルビッチ傑作選 DVD-BOX2」に収録されていてバラ売りはなし。
『チャイコフスキー』……1970年のソ連映画。19世紀後半の世界的作曲家チャイコフスキーの半生を描いた伝記映画。
『マチルダ 禁断の恋』……2017年のロシア映画。ロシア帝国最後の皇帝ニコライ2世が皇太子時代にバレリーナのマチルダ・クシェシンスカヤと許されぬ恋に落ちたスキャンダルを描いた恋愛史劇ドラマ。ロシア本国で大ヒットしたとのこと。
『白夜の陰獣』(原題:Rasputin, The Mad Monk)……1966年のイギリス映画。わけわかんない邦題が付けられてますが、原題を見るとわかるように怪僧ラスプーチンが主人公の映画です。製作当初は史実に近いものになる予定でしたが、関係者がまだ存命で訴えられたらヤバかったため(1932年のラスプーチン映画は訴えられて賠償金を支払ってるとのこと)フィクション色の強いものに変えられてしまったらしい。主演は吸血鬼映画で有名なクリストファー・リー。
『ロマノフ王朝の最期』……1981年のソ連映画。これまた邦題とは違って主人公は怪僧ラスプーチンで、本場ソ連での映画化。ラスプーチンの半生が描かれており、ロマノフ王朝の人々は脇役のようです。監督はエレム・クリモフ。
『追想』(原題:Anastasia)……1956年の米国映画。ロシア革命で殺された皇女アナスタシアが実は生きているという巷間の伝説を題材としたフランスのマルセル・モーレットの戯曲『アナスタシア』の映画化で、両大戦間のフランスが舞台。主演はイングリッド・バーグマンとユル・ブリンナー。バーグマンがこの映画で2度目のアカデミー最優秀主演女優賞を取ったことは知ってましたが、内容は全然知らなかったんで、今回改めて知ってちょっとびっくり。全編創作で歴史映画ではないんですが、ちょっと面白かったんでご紹介。
『アナスタシア』(原題:Anastasia)……1997年の米国のアニメ映画。上記『追想』のリメイク。ちなみにアナスタシアの遺骨は2007年になってようやく確認されたそうです。
『十月』……1928年のソ連映画。セルゲイ・エイゼンシュテイン監督がロシア革命10周年記念映画として製作した作品で、1917年3月から11月までのロシア革命を描いているとのこと。
『牡牛座 レーニンの肖像』……2001年のロシア・日本合作映画。1922年のモスクワ郊外の屋敷で外界から切り離された療養生活を送る52歳のレーニンを描いた、アレクサンドル・ソクーロフ監督の「権力者」4部作の第2作。
『アンナ・パブロワ』……1984年のソ連・イギリス合作映画。邦題を『アンナ・パヴロワ』とするサイトもあり。20世紀初めの不世出のバレリーナ、アンナ・パブロワの生涯を描いた伝記映画で、これは子供の頃にテレビでちょっと観た記憶があります。
『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』……2019年のポーランド・イギリス・ウクライナ合作映画。1930年代、スターリン政権下のソ連で危険な極秘取材を敢行し、ウクライナでの悲劇を探り出したイギリス人記者ガレス・ジョーンズを主人公とした映画。監督はアグニェシュカ・ホランド。
『ガガーリン 世界を変えた108分』……2013年のロシア映画。人類初の有人宇宙飛行をした宇宙飛行士ガガーリンの伝記映画。
『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』……2009年のフランス映画。ソ連崩壊のきっかけの一つともいわれる、1980年代初頭に起きたスパイ事件「フェアウェル事件」の映画化。
『故郷よ』……2011年のフランス・ウクライナ・ポーランド・ドイツ合作映画。1986年のチェルノブイリ原発事故が招いた悲劇を描いたヒューマンドラマ映画。主演はオルガ・キュリレンコ。
『コーカサスの虜』……1996年のカザフスタン映画。トルストイの同名短編小説を、当時進行中だった第一次チェチェン紛争に置き換えて映画化した作品。監督はセルゲイ・ボドロフ。
>名画座情報
『火の鳥』(実写映画)……動画配信はすでに複数のサイトでされてましたが、遂に初のBlu-ray化がされるようです(DVD化はなし)。もはや封印作品ではありませんな。12月発売予定とのこと。
#11130
バラージ 2021/10/17 22:26
♪チン ♪チン ♪チンギス・ハーン!
んー、映像の再生速度の誤差で映画上映時とDVDで時間に数分のズレが生じることはたまにあるみたいですが、さすがに1時間半も差が生じるというのは考えられないですよね。また、YouTubeに非公式にアップされてる動画には、理由はわからないけれどごくまれに再生時間を水増ししてるものがあります。途中で映像が少し前のところに戻って、同じ映像がもう1度流されたりするんですよ。なので最悪そういう可能性も考えられます。
そういや最後まで観れてないと仰られてた、名画座にある中国ドラマ『項羽と劉邦~背水の陣~』もYouTubeを原題で検索したら、全10話がアップされてましたよ。前に検索した時にはなかったのになあ。
>観てない歴史映像作品の追記
・モンゴル史編
『成吉思汗』……1943年の日本映画。蒙古聯合自治政府と内蒙軍の全面協力で現地ロケをした国策映画で、オリジナルは98分らしいんですが現存するのが67分のみで、そのバージョンがビデオ化されてたとのこと。DVD化はされていません。
・オリエント・聖書関係史編
『クイーン・オブ・エジプト』(原題:Solomon & Sheba)……1995年の米国のTVムービー。ソロモンとシバの女王を題材とした作品で、主演はハル・ベリー。
>観てない歴史映像作品 ヨーロッパ史編②
ヨーロッパ史編の第2回。トルコ史からバルカン諸国史までなんですが、ロシア史だけやたら多すぎたので次回に回します。この辺の国の映画もやっぱり21世紀になってからやたら増えましたねえ。
・トルコ史
『ブラック・ウォリアーズ オスマン帝国騎兵団』……2018年のトルコ映画。15世紀、オスマン帝国麾下にありながら残虐の限りを尽くすワラキア公国のヴラド3世を倒すために、オスマン帝国のメフメト2世が“デリラ”と呼ばれる7人の精鋭兵を送り込むというアクション時代劇。ヴラド3世がすげえ悪役のようです。
『オスマン帝国外伝 愛と欲望のハレム』……2011~2014年のトルコのテレビドラマ。スレイマン1世のハレムを舞台とした寵妃ヒュッレムを中心とする女たちの恋や権力争いを描くとともに、ヨーロッパ諸国との戦争なども描いた超長編大河ドラマ。日本版ではシーズン1が48話、シーズン2が79話、シーズン3が92話、シーズン4が93話という気の遠くなるような長さで、チャンネル銀河での放送は終わってますが、BS日テレではシーズン3が放送中。DVD化はシーズン1のみですが、配信は各動画サイトで全シーズンされています。
『新・オスマン帝国外伝 影の女帝キョセム』……2015~2017年のトルコのテレビドラマ。上記『オスマン帝国外伝』の続編的作品で、アフメト1世の妃キョセム・スルタン(アナスタシア)が主人公。こちらはシーズン2まで製作され、現在チャンネル銀河でシーズン1が放送中。
『アララトの聖母』(原題:Ararat)……2002年のカナダ映画。画家アーシル・ゴーキーの絵画をモチーフに、第一次世界大戦下の1915年にオスマン帝国で起きたアルメニア人大虐殺と、現代の親子のエピソードを交錯させて描いたヒューマンドラマ。監督はアルメニア系カナダ人のアトム・エゴヤン。
『THE PROMISE 君への誓い』……2016年のスペイン・米国合作映画。やはり第一次世界大戦下のアルメニア人大虐殺を描いたヒューマンドラマで、事件に翻弄される3人の男女を描いているとのこと。クリスチャン・ベールも出演しています。
・バルト三国史
『バルト・キングダム』(原題:The Pagan King)……2018年のイギリス・ラトビア合作映画。13世紀にバルト海沿岸のゼムガレにドイツの十字軍(リヴォニア帯剣騎士団)が侵攻して起こったザウレの戦いを基に作られた史劇アクションで、主人公のナメイ(ナメイシス)は実在の人物らしいんですが、敵が「ローマ帝国」となってて神聖ローマ帝国のことか?と思いきや、史実では上記の通りドイツ騎士団だったりと、かなり史実をいじったフィクションになってるみたい。主演のスウェーデン人俳優エドヴィン・エンドレは大河ドラマ『いだてん』にも出てたとのこと。
『バルト大攻防戦』……2002年のエストニア・フィンランド合作映画。第一次世界大戦後の1918年に起こったエストニア独立戦争でのソ連軍との戦いを描いた戦争映画。
・カザフスタン史
『レッド・ウォリアー』……2005年のフランス・カザフスタン合作映画。18世紀のカザフとジュンガルの戦争におけるトルキスタン城塞の戦いを描いたアクション映画で、主人公は若き日のアブライ・ハンらしいんですが、史実よりも娯楽性のほうを重視した映画みたいですね。ナザルバエフ大統領肝いりの企画のようで製作費にも国費が投入されており、製作総指揮がミロス・フォアマン、監督がセルゲイ・ボドロフとアイヴァン・パッサー、脇役や敵役でジェイソン・スコット・リーやマーク・ダカスコスも出てるという多国籍体制。どうも最初はパッサーとカザフスタンのタルガット・テメノフが監督だったらしいんですが、大規模映画を作りなれていなかったのか途中降板し製作は中断。その後ボドロフを迎えて完成したらしい。
『ダイダロス 希望の大地』……2012年のカザフスタン映画。やはり18世紀のカザフとジュンガルの戦いの、上記『レッド~』より少し前の時代を題材とした史劇アクションで、アブル=ハイル・ハンに仕えたサルタイ・バティルという人物を主人公とした作品のようです。カザフスタンのソ連からの独立20周年を記念して製作されたそうで、こちらは人材が育ったのか国内向け映画なのかオールカザフ人キャスト&スタッフみたい。やはり製作費に国費が投入されたナザルバエフ大統領肝いりの国策映画のようですが、最後にナザルバエフ大統領を讃えるメッセージが出る以外はさほど気にならないという感想が多いですね。邦題は意味不明。
・チェコ・スロバキア史
『告白』……1970年のフランス・イタリア合作映画。1951年にチェコスロバキアで起きた急進的スターリン主義者による冤罪事件「スランスキー事件」の当事者の一人であるリーズ&アルトゥール・ロンドン夫妻の手記の映画化。監督はコスタ・ガブラス、主演はイヴ・モンタンとシモーヌ・シニョレ。“プラハの春”当時のチェコスロバキアとの合作になる予定でしたが、1968年のソ連の軍事介入“チェコ事件”で断念を余儀なくされ、エピローグとしてソ連の軍事介入への痛烈な批判が付け加えられたとのこと。
『プラハ!』……2001年のチェコ映画。1968年の民主化運動“プラハの春”を背景に、3組の若者たちの恋愛模様が“チェコ事件”で破局を迎えるまでを描いた青春映画。
・ハンガリー史
『太陽の雫』(原題:Sun Shine)……1999年のカナダ・ハンガリー合作映画。オーストリア=ハンガリー帝国時代から1956年のハンガリー動乱までを背景に、あるユダヤ系一族の100年を三世代にわたって描いた大河映画。主演のレイフ・ファインズが三世代の主人公をそれぞれ演じ、共演にはウィリアム・ハート、レイチェル・ワイズなど。
『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』……2006年のハンガリー映画。1956年のハンガリー動乱と同年のメルボルン夏季五輪の水球におけるハンガリー対ソ連戦での“メルボルンの流血戦”を題材とした映画。
・バルカン諸国史
『ドラキュラZERO』(原題:Dracula Untold)……2014年の米国映画。15世紀ルーマニアのワラキア公ヴラド3世が、強大なオスマン帝国のメフメト2世と戦うために古くから伝わる闇の力と契約を結び、強大な力を持つ吸血鬼ドラキュラになるというファンタジー・アクション。歴史映画ではないんですが、面白い着想だったんで紹介してみました。映画館で予告編だけ観ましたが、CGアクションがすごかったですね。こちらではメフメト2世がすげえ悪者みたい。
『略奪の大地』……1988年のブルガリア映画。17世紀後半、オスマン帝国支配下のブルガリアを舞台に、イスラム教改宗を強制する使命を帯びて故郷の村にやってきたイェニチェリによる凄惨な宗教弾圧を描いたドラマ映画。甦える過去の記憶にさいなまれ、使命との葛藤に悩むイェニチェリの将軍が主人公。
#11129
徹夜城(マンドハイは「万度拝」とも書く管理人) 2021/10/17 12:54
見れちゃいましたねぇ。
>バラージさん
僕もほぼ同じ展開で探索してyoutubeで見つけましたよ、「マンドハイ」4時間半版。これからじっくり見てどこがカットされたのか調べてみます。
だけど飛び飛びで見ていても、未見シーンはあんまりないんですよ。あるシーンの前後かちょっとカットされてると分かったり、オープニングの曲が長いとか中盤の年月荊軻を示す音楽シーンが長いとか、そのくらいしか見つからず、1時間半もほんとにカットしてるのか?と思っちゃったほど。刈り込まれそうな大規模戦闘シーンもほぼそのまんまでした。これはやはりカット編集が絶妙だったのかな?
「マンドハイ」は日本公開当時、週刊新潮でとりあげられたりして、ささやかに話題にはなってたんですよね。だいたいモンゴル映画自体の公開が珍しかったのですが、劇中の戦闘シーンや処刑シーンが「これが社会主義国映画?」と思ってしまうような結構スプラッタな描写だったり(まぁ社会主義リアリズムというのもあるんでしょうが)、ヌードつきベッドシーンがあったりと、週刊誌記事でもそっちに注目してた記憶が。だいたい歴史大作とはいえ敵味方はっきりした娯楽作品として作ってるのが目を引いたわけです。史実はほとんどわかんないといっていい主人公なのをいいことに思いっきり話を盛ってますしね。
僕は公開当時その記事を見て興味を持ち、映画館で見てビックリしたんですね。確か公開中に三度見に行って(笑)、その後どこのレンタルビデオ店もおいてくれないのでとうとう自分で注文して買った、という経緯があります。しかしまぁそれから30年もたって完全版を拝めることになろうとは。
この「マンドハイ」とほぼ同じスタッフ、キャストで作った「チンギス・ハーン」も完全版があることは知っていて、探してたんですが、先ほど「マンドハイ」からのつながりで3時間50分バージョンというのをyoutubeで発見。アップされたのはほんの数日前というタイミングのよさで…これも飛び飛びで見るとどこがカットされたシーンなのかまだ分かんないでいます。
久々に見た「チンギス・ハーン」、ついついジャムカ処刑シーンを見ちゃうんですよねぇ。そこそこの数あるチンギスハーン、ジンギスカン映画、いずれも盟友にしてライバルとしてジャムカは印象的に登場しますが、その処刑シーンはまちまちなのが見どころ。伝えられるところではチンギスは彼に敬意を表して「大地に血を流さずに死なす」名誉処刑をしたことになってますが、それがどういう処刑法なのかは分からず、作品によってまちまちになっています。
本場モンゴル版では、二本の棒を使ってジャムカの体を二つ折りにしてゆき、背骨を折って死なすという壮絶なものになっています。
#11128
バラージ 2021/10/16 21:17
モンゴリアン・ムービー
うーん、『マンドハイ』の上映時間については、断定的に書いちゃいましたけど、よくよく考えたら情報源が(モンゴル語版の)Wikipediaですからねえ。執筆者の誤記とか誤認の可能性も十分にあり得ます。あるいは273分は173分の間違いだと考えれば、日本公開版の174分とほぼ同じになるので腑に落ちるような気も。もう少し調べてみる必要があるな……と、日本語版Wikipediaにある「マンドゥフイ・ハトゥン」のモンゴル語表記で検索してみたら! なんと! 一発で某超有名動画サイトにある4時間半版の映画『マンドハイ』のアップロードを発見しちゃいました! いやぁ、動画サイト恐るべし。もちろん日本語字幕などはありませんが、ご覧になられてみてはいかがでしょうか?
かく言う僕は映画『マンドハイ』はいまだに未見でして。日本公開は1990年2月だから僕が大学1年の時。映画誌「ロードショー」の公開情報で知ったんですが、当時住んでた仙台までは来なかったんですよね。モンゴル映画という珍しさに、へぇー、モンゴルにも映画ってあったんだぁ、と思ったのを覚えています。モンゴルって当時はソ連や中国と比べてもほとんど情報がなく、謎の国って感じだったんですよねえ。う~ん、懐かしい。その後、ビデオは当然ながらレンタル店に並んだんですが、結局観ることなく今に至っております。『チンギス・ハーン』のほうは仙台にも来たんですが(そっちは1992年10月日本公開だから大学4年の時)やはり劇場でもレンタルビデオでも観ないまま今に至ります。
なお、『チンギス・ハーン』の本国公開年はモンゴル語版と英語版のWikipediaでは1990年になってますね。日本の映画サイトではどこも1992年になってますが、それだと本国公開から1年も経たないうちに日本で公開されたことになるので、当時のモンゴル映画としてはちょっと考えにくいんだよなあ。米国映画や香港映画ならともかく。
#11127
徹夜城(実は南北朝列伝の作業もやってはいる管理人) 2021/10/15 23:11
気がつけば首相も変わり衆院も解散し
お久しぶりです。気がつけば総理大事の変わってしまい、速攻で衆議院が解散され短期のうちに総選挙というう急展開になってますが「史点」更新はまだです(汗)。岸田首相の似顔絵の練習中…というのは冗談ですが、ここんとこサイト内のあちこち更新を図ってまして。さすがに放置状態が続きすぎるとアクセスが如実に下がります。当伝言板がバラージさんの独走状態になってしまってるのもお客が少ないせいもあるよな、と。
>バラージさん
「マンドハイ」は初見以来大好きな映画でして、知らぬ人には布教のように説いてきた僕でありますが、あれは実は「短縮版」であったと初めて知らされてビックリしてます。3時間ある日本公開、ビデオ版はそれだけで十分長いし、特にカットを感じさせるような不自然な展開はなかったので…あ、前半ちょっと話を急いでるところはあったかなぁ?
オリジナルが4時間半とすると、1時間半も何をやってたんだ?と不思議に思うばかり。同じくらいの長さがあったけど興業のために2時間40分程度にカットされた「チンギスハーン」はカットされまくりなのが良く分かったんですけどね。
「マンドハイ」の公開当時、原作小説本も出ていたのは覚えています。買わないで立ち読みして映画との相違点をチェックしただけですけどね。
映画でも出てくる義賊キャラ、いわば「人民代表」みたいなキャラ(当時のモンゴルは社会主義政権末期)が原作ではもっと出番が多かったような気も。そうすると映画でカットされたのも彼のエピソードなのかな?「チンギスハーン」ともども完全版を見たいものです。
それとサブタイトルの件ですが…「マンドハイ」で第一部、第二部があってそれぞれタイトルつきなのはVHS持ってるんでもちろん承知ですが、そういう作品内の章立てまで情報表示する必要はないんじゃないかと。さらにいえば映画・ドラマのサブタイトルも説明的に過ぎるものは僕は嫌いでして、「名画座」では意図して外してることが多いと思って下さい。ビデオ化などに際してあとからつけられてるケースもありますし。
#11126
バラージ 2021/10/14 16:04
遺体はどこにあった?
仮面ライダーというと、ウルトラマンや○○レンジャーシリーズと並ぶ伝統を誇る大人気ヒーローですが、実は長い歴史の中では敵組織に歴史ネタの怪人が出てきたことがあります。
それは『仮面ライダーX』でして、敵組織GOD(ゴッド)の怪人は、前半はネプチューン、ヘラクレス、メドウサなどという神話怪人というやつだったんですが、後半になると低視聴率のテコ入れか悪人軍団という怪人に変わっています。悪人軍団怪人は「歴史上に実在した独裁者や凶悪犯罪者、英雄、怪物の遺体を発掘し、それに動植物や昆虫、水棲動物の能力を植え付けて怪人化させた」という設定らしく、登場したのは、ジンギスカンコンドル、ガマゴエモン、サソリジェロニモ、コウモリフランケン、カブトムシルパン、ヒトデヒットラー、クモナポレオン、カメレオンファントマ、ヒルドラキュラ、トカゲバイキング、アリカポネ、ムカデヨウキヒ、タイガーネロ、サソリジェロニモJr.といった面々。
僕は、『X』は物心ついた頃に観てたかもしれませんが、変身シーンと、オープニング主題歌のサビの「エックス!エックス!エックスゥ~」というところと、最終回のラスボス巨大ロボット・キングダークの内部に侵入するところをおぼろげに覚えているくらいで、怪人たちについては小学校3~4年生くらいになってから『仮面ライダー怪人大全集』みたいな本で知りました。アリカポネとカブトムシルパンがお気に入りだったなぁ。ただ子供心にもルパンやフランケンシュタインは物語の中の人で実在しないのに遺体なんてどこにあったんだろ?とは思っちゃいましたね(笑)。ファントマだけが調べてもどんな人なのかわからず、そのままなんとなく忘れて、大学時代に別件で行き当たり、これまた創作人物だと知りました。懐かしい思い出です。
>観てない歴史映像作品の追記
改めて調べたらイエス・キリスト関係の映画やテレビドラマがまだいっぱいありましたが、とてもじゃないけど全部書いてられないんでほとんど省略いたします。
・インド史
『KESARI ケサリ 21人の勇者たち』……2019年のインド映画。1897年にサラガリ砦に籠った21人のシク教徒兵が、攻めこんだ1万人のパシュトゥーン人アフガニスタン軍を撃ち破ったというサラガリ砦の戦いを描いた娯楽アクション史劇。なんか愛国バリバリのエンタメ映画っぽいですね。でもほんとに21人で1万人に勝てるもんかなあ?
・オリエント・聖書関係史編
『サムソン 神に選ばれし戦士』(原題:Samson)……2018年の米国・南アフリカ合作映画。旧約聖書のサムソンの話をCG満載で描いたB級映画らしい。関係ないけど個人的には「サムソンとデリラ」というと高校の吹奏楽部時代に聴いたサン=サーンスの歌劇『サムソンとデリラ』の「バッカナール」(名曲!)が思い出深いですね。みんなで「いい!」と絶賛したんだけど、難しそうということで演奏はしなかったんだよな。
『ナザレのイエス』(原題:Jesus of Nazareth)……1977年のイギリス・イタリア合作のTVシリーズ。フランコ・ゼフィレッリが監督で、出演もオリビア・ハッセー、アン・バンクロフト、アーネスト・ボーグナイン、ジェームズ・アール・ジョーンズ、ローレンス・オリビエ、アンソニー・クイン、ロッド・スタイガー、ピーター・ユスチノフなどやたら豪華なんだけど、肝心の主演のイエス役がロバート・パウエルというよく知らない俳優。オリジナルは6時間22分ですが、日本では3時間15分版が劇場公開されたとのこと。DVDはオリジナル完全版。
・イスラム圏史
『カンダハール』……2001年のイラン・フランス合作映画。タリバン政権下の内戦を逃れてカナダへ移住したアフガニスタン人女性ジャーナリストが、地雷で片足を失ったため祖国に残した妹から、3日後の20世紀最後の皆既日食の前に自殺するつもりだという手紙を受け取り、カンダハールの妹を救うためイランからアフガニスタンに入って、タリバン政権下の過酷な現実を知る……というストーリー。公開の4ヶ月後に9.11テロが起きました。監督はモフセン・マフマルバフ。
>観ちゃった歴史映画
『マニカルニカ ジャーンシーの女王』
ちょっと前に紹介したら、ちょうどCSで放送されたんで録画して観てみました。19世紀半ばのインド大反乱(いわゆるセポイの乱)の指導者の1人で、藩王国の王妃にして最も勇敢に戦ったと言われる女傑ラクシュミー・バーイーの伝記映画。昔、歴史雑誌か何かでラクシュミー・バーイーのことを知り、それ以来ちょっと興味を持ってたんですよね。社会派史劇映画みたいのを期待してたんですが、インド映画だということをうっかり忘れておりました(笑)。なんというかコテコテにベタな展開で、東インド会社やイギリス軍があまりにもわかりやすい悪者だし、インド映画らしく歌や躍りもあったりします。CGだらけなのは今風だけど、全体的には1950~60年代ハリウッド史劇×昔の日本の娯楽時代劇みたいなちょっと古臭いノリでした。それでも最後の戦いはなかなか盛り上がるし、2時間半の長さでも飽きることなく観れましたけどね。ちょっと面白かったのは、本編が始まる前に字幕で「史実に基づいてるが脚色が入ってる」だの「どのような宗教や地域や国家も傷つける意図はない」だの「動物虐待は一切していない。虎・象・馬など一部の動物はCGだ」(確かに虎や象はもろにCGだった・笑)だのと延々断り書きが入り、しまいにはなぜか「アルコールの摂取は健康を害します」という表示までされるところ(なぜ?)。その後、多数の映画会社のロゴが次々出てくるという海外の大作映画では今やお馴染みの展開が続き、本編に入るのはようやく3分も過ぎてからでした。やれやれ。
>そういや観てた歴史関連映画
『ユリシーズの瞳』
1995年のフランス・イタリア・ギリシャ合作映画。監督はギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロスで、主演は米国のハーヴェイ・カイテル。故郷のギリシャにやってきた米国の映画監督が、バルカン半島最初の映画作家マナキス兄弟が未現像のまま遺したという幻のフィルムを探して、動乱のバルカン半島を彷徨する姿を、『オデュッセイア』をモチーフに描いた映画です。主人公はギリシャからアルバニア、マケドニア、ブルガリア、ルーマニア、新ユーゴスラビア(セルビア・モンテネグロ)とバルカン半島諸国を旅していくんですが、特に実際のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争下の瓦礫だらけのサラエボの街で撮影したシーンの緊迫感が凄まじい。アンゲロプロスだけあってわかりやすい映画ではなく、やや難解で前衛的な映画のため、人を選ぶ映画かもしれません。また基本的にはあくまで(当時の)現在を舞台とした映画(時空間をも解体するアンゲロプロスだけあって、主人公の夢や記憶によって、舞台が両大戦時代に転換したりもしますが)なので「歴史映画」ではないんですが、ユーゴ紛争当時のリアルな記録を映し出したという意味で「歴史的な映画」として紹介しました。邦題はギリシャ語で『オデュッセウスの瞳』にしてほしかったな。まあ『ユリシーズの瞳』でも十分にかっこいいけど。
>名画座修正情報
『大日本帝国』……「第1部・シンガポールへの道」「第2部・愛は波濤をこえて」というサブタイトルがあるようです。
『マンドハイ』……第1部「蒼き狼の群れ」、第2部「大草原の覇者」というサブタイトルがあったようです。『賢妃マンドハイ』(Sh.ナツァグドルジ著、鯉淵信一 訳、読売新聞社、1989年)という原作小説も邦訳が出版されてたようですね。またモンゴル語版Wikipediaを見ると、オリジナルの上映時間は273分のようです(日本公開版は、ぴあによると174分)。
#11125
バラージ 2021/10/06 00:21
なんか僕の投稿ばっかり続いちゃってすいません。
>観てない歴史映像作品 ヨーロッパ史編①
ついにヨーロッパ史に突入。でも欧米史映画は多分めちゃくちゃ多いんだよなあ……。
・古代ギリシャ史
『トロイ ザ・ウォーズ』(原題:Helen of Troy)……2003年の米国のTVムービー、もしくはTVミニシリーズらしい。3時間近い長さだけあって、おおむね神話に忠実に作られてるようで、ヘラ、アテナ、アフロディーテの3女神の争いも序盤で描かれてるみたい。原題を見てもわかるようにヘレンが一応の主人公で、観た人には演じるシエンナ・ギロリーの美貌を絶賛する声多し。
『300(スリーハンドレッド) 帝国の進撃』(原題:300: Rise of an Empire)……2014年の米国映画。『300(スリーハンドレッド)』の続編で、同時期に起こっていたギリシャ連合軍とペルシャ帝国海軍の海戦が舞台。前作の監督ザック・スナイダーは製作・脚本にまわり、監督はノーム・ムロに交代。
『アレクサンダー戦記』……1999年の日本の連続テレビアニメ。荒俣宏の小説『幻想皇帝 アレクサンドロス戦記』が原作で、監督は兼森義則とりんたろう。ストーリーは概ね史実に沿ってるんだけど、衣装・建築物・兵器などのビジュアルは敢えて当時のものとは懸け離れたデザインにされているとのこと。翌2000年には劇場版も公開されてますが、なぜか全13話のうち10話までの再編集という中途半端なものだそうです。
・古代ローマ史
『ザ・グレイテスト・キング』……2019年のイタリア・ベルギー合作映画。ローマを建国した双子の兄弟ロムルスとレムスの物語。
『スパルタカス』(原題:Spartacus)……2004年の米国のTVムービー。前後編2部構成で、原作は1960年の同名映画と同じくハワード・ファストの同名小説。映画の実質的リメイクらしい。
『スパルタカス』(原題:Spartacus: Blood and Sand)……2010年の米国の連続テレビドラマ。こちらもスパルタクスを主人公としているもののオリジナル作品で、本国で大ヒットし前日譚の『スパルタカス ゴッド・オブ・アリーナ』(DVD邦題『スパルタカス序章 ゴッド・オブ・アリーナ』、原題:Spartacus: Gods of the Arena、2011年)、続編の『スパルタカスII』(原題:Spartacus: Vengeance、2012年)、『スパルタカスIII ザ・ファイナル』(原題:Spartacus: War of the Damned、2013年)まで作られました。続編のクランクイン直前に主演のアンディ・ホイットフィールドの病気が発覚し、彼が治療に専念する間にスパルタクスの登場しない前日譚を製作するも、ホイットフィールドは永眠。主演をリアム・マッキンタイアに交代して続編が作られたそうです。
『シーザーとクレオパトラ』(原題:Caesar and Cleopatra)……1945年のイギリス映画。バーナード・ショーの同名戯曲の映画化で、脚本もショー自身が書いています。クレオパトラ役はヴィヴィアン・リー。
『クレオパトラ』(原題:Cleopatra)……1934年の米国映画。監督はセシル・B・デミルで、主演はクローデット・コルベール。
『ミッション・クレオパトラ』……2002年のフランス映画。フランスで長寿人気のコミックを原作とした、史劇というよりドタバタコメディとのこと。主演はモニカ・ベルッチで、共演にジェラール・ドパルデュー。
『ベン・ハー』(原題:Ben-Hur)……2010年のイギリス・ドイツ・スペイン・カナダ・米国合作のTVムービー。あの1959年版があるのに無謀にもまた作っちゃった映像作品……ですが、感想を散見すると1959年版と比較せず単体で観ればなかなかよく出来た作品らしい。なお、かつてとは時代が変わりヘイズ・コード(1934-1968)がなくなったためイエスは普通に顔出ししています。
『ベン・ハー』(原題:Ben-Hur)……2016年の米国映画。実に5度目の映画化ですが、やはり1959年版と比較せず単体で観ればなかなかよく出来た作品という感想が多い。族長イルデリム役でモーガン・フリーマンが出演しています。
『ベン・ハー 終わりなき伝説』(原題:In The Name Of Ben-Hur)……2016年の米国映画。またベン・ハーかよ!と思いきや、便乗C級作品を乱発してるアサイラム社という会社が、勝手に原作(や1959年版)の10数年後を舞台として作った無許可便乗続編映画らしい。
『カリギュラ』……1980年のイタリア・米国合作映画。ペントハウス誌社長ボブ・グッチョーネが製作した、史劇大作と見せかけたエログロ満載のハードコア・ポルノ映画で、監督がティント・ブラス、脚本がゴア・ヴィダル、主演がマルコム・マクダウェルで、ピーター・オトゥールやヘレン・ミレンも出演という豪華版ながら、グッチョーネが後から無断でポルノシーンを大量に付け足したんで大揉めになったとか。しかしそれが結果的に日本を含む世界中で大ヒットになったんだから、商売人グッチョーネとしては大成功だったのかも。『カリギュラ2(カリギュラⅡ)』(1982年、イタリア)、『カリギュラIII』(1984年、フランス)、『新・カリギュラ』(1982年、イタリア・フランス)などという映画もありますが、いずれも便乗作品に便乗邦題が付けられたもののようです。
『NERO ザ・ダーク・エンペラー』……2004年のイタリア・スペイン・イギリス合作のTVムービー。オリジナルは197分らしいんですが、日本版DVDは112分の編集版のようです。珍しくネロを主人公としてその生涯を描いた作品で、主人公だけにネロにかなり同情的らしく、全然暴君ではないとのこと。
『暴君ネロ』(原題:The Sign of the Cross)……1932年の米国映画。こちらは邦題とは違ってネロが主人公ではなく、ネロに迫害されるキリスト教の話。監督はセシル・B・デミル、主演はフレデリック・マーチ、共演にクローデット・コルベール、ネロ役にチャールズ・ロートンなど。原作はウィルスン・バーレットによる1895年の戯曲『Sign of the Cross(十字架の徴)』ですが、内容が同年のポーランドの小説『クォ・ヴァディス』に酷似しており(結末は異なるらしい)、バーレットはその存在を知らなかったとしているものの、小説を舞台向けに非公式に改作することは当時一般的に行なわれていたと考えられることから、『Sign of the Cross』も『クォ・ヴァディス』の非公式の改作ではないかと疑われているとのこと。なのでこの映画も、後の映画『クォ・ヴァディス』に非常によく似ているそうです。
『クオ・ヴァディス』……2001年のポーランドの連続テレビドラマ。こちらは「オ」が大文字です。監督はイェジー・カヴァレロヴィチ。原作の本場での映像化で、長いドラマだけあって原作にかなり忠実とのこと。
『パウロ 愛と赦しの物語』(原題:Paul, Apostle of Christ)……2018年の米国映画。ネロの時代のローマ帝国を舞台に、新約聖書の使徒パウロの物語を、パウロの言葉を書き記し続けた医者ルカの目を通して描いているとのこと。
『ポンペイ最後の日』……1950年のフランス・イタリア合作映画。何度目かの映像化ですが、日本でもDVD化されています。全部同じタイトルだから何度目の映画のDVDかわかりにくいんだよなあ。
『ボルケーノ in ポンペイ 都市が消えた日』……2007年のイタリアのテレビドラマ。日本版DVDは総集編らしい。
『ポンペイ』(原題:Pompeii)……2014年の米国映画。最新のベスビオ火山噴火もの。剣闘士に恋に噴火と盛りだくさんのスペクタクル娯楽映画みたいですね。
『アポカリプス 黙示録』……2002年のイタリアのTVムービー。『ヨハネの黙示録』の映像化らしいんだけど、皇帝ドミティアヌスによるヨハネやキリスト教徒への迫害も描かれてるらしい。主演のリチャード・ハリスの遺作になったとのこと。
『異教徒の旗印』(原題:Sign of the Pagan)……1954年の米国映画。フン族の王アッティラが東西ローマ帝国と戦ってる時代の話で、主人公は西ローマ帝国の百人隊長ですが、アッティラ役のジャック・パランスのほうが有名な気が。監督はダグラス・サーク。
『覇王伝アッティラ』(原題:Attila)……2001年の米国・リトアニア合作のTVムービー。アッティラが主人公で、主演はジェラード・バトラー。『覇王伝~』はDVD邦題で、テレビ放映邦題には『騎馬大王アッティラ 平原の支配者』『フン軍記 アッティラ大王と騎馬軍団』など。
#11124
バラージ 2021/10/01 21:37
歴史映像名画座
更新ご苦労様です。今回追加された中で僕が観たのは『麒麟がくる』の序盤くらいですかね。『しかたなかったと言うてはいかんのです』は、映画『海と毒薬』のほうを観ちゃってたんでいまいち食指が動かず。『三国志 Three Kingdoms』については、ちょっと前に読んだ『戦乱中国の英雄たち』(佐藤信弥、中公新書ラクレ)でも似たような考察がされてました。『桶狭間 OKEHAZAMA』はソフト化はされていませんが、FODで配信はされてるようですね。
>名画座修正情報(新)
『小説吉田学校』……メディアのDVD発売が消えちゃってますね。東宝からDVD化されています。
『ソドムとゴモラ』(1962年の映画)……株式会社アネックよりBlu-ray&DVD化されました。
>名画座修正情報
『母恋ひの記』……「~谷崎潤一郎「少将滋幹の母」より~」というサブタイトルがあります。
『陰陽師』……主人公は安部清明ではなく安倍晴明です。
『源義経』(日テレ年末大型時代劇)……原作は大河ドラマと同じく村上元三です。
『GOJOE・五条霊戦記』……『五条霊戦記 GOJOE』が正確な邦題のようです。また平忠則役は岸井一徳ではなく岸部一徳です。
『鶴姫伝奇』……「興亡瀬戸内水軍」というサブタイトルがあります。
『風雲児信長』……オリジナルの『織田信長』は104分で、戦後公開された『風雲児信長』は短縮版だそうです。
『戦国疾風伝 二人の軍師』……「~秀吉に天下を獲らせた男たち~」というサブタイトルがあります。
『孫子』……DVDはエースデュースエンタテインメントから発売されています。
『三国志 諸葛孔明』……DVDもVHS同様に全3巻です。またエースデュースエンタテインメントから発売されています。
『火龍』……DVD発売会社はアット・エンタテインメントです。『西太后(完全版)DVD-BOX』での発売(『西太后 第一部』『西太后 第二部』『続・西太后』との4本セット)で、バラ売りはないようです(レンタルはバラでされている)。
『末代皇帝』……DVDはコニービデオから発売されています。
『孫文の義士団』……李玉堂役はワン=チェシーではなくワン=シュエチーです。
『黄山伐』……映画祭「シネマコリア 2005」で『黄山ヶ原』の邦題で上映されたとのこと。「黄山ヶ原」と書いて「ファンサルボル」と読むらしく、HuluやAmazonprimeでも同邦題で日本語字幕付きで配信されています。
『ジンギスカン』(1965年の米国映画)……劇場公開邦題は「・」の入った『ジンギス・カン』だったようで、VHS化の際に「・」の抜けた『ジンギスカン』という邦題になったようです。
『ピラミッド』……脚本のウィリアム=ホークナーは、正しくはウィリアム=フォークナー。あの有名な小説家のフォークナーのようです。
『侵略者』……VHS邦題は『侵略者アッチラ』ではなく『侵略王アッチラ』です。
『ニュールンベルグ裁判』……頭の「ニ」が削除されて「ュールンベルグ裁判」になってしまっています。
『リベレイター』……「南米一の英雄 シモン・ボリバル」というサブタイトルがあります。
また、中国史作品に出演している以下の中華圏俳優はそれぞれ同一人物ですので、同一人物とわかるように記載を統一したほうがいいかと。
『墨攻』のウー=チーロン、『新忠烈図』の呉奇隆、徒然草の『墨攻』のニッキー=ウー。
『墨攻』『始皇帝暗殺』の王志文と、徒然草の『墨攻』のワン=チーウェン。
『ヘブン・アンド・アース 天地英雄』の王学圻と、『孫文の義士団』のワン=シュエチー(上記の通りワン=チェシーは誤り)。
『水滸伝』(2011年)の張函予と、『孫文の義士団』のチャン=ハンユー。
『岳飛伝 THE LAST HERO』の劉承俊と、『ラスト・ソルジャー』のユ=スンジュン(韓国俳優です)。
『大明劫』『蒼穹の昴』の余少群と、『1911』のユイ=シャオチュン。
『ラストエンペラー』のウー=ジュンメイと、『宋家の三姉妹』のヴィヴィアン=ウー。
以下の作品はソフト化されてないか、ビデオ化のみでDVD化はされていませんが、各種動画サイトで配信はされています。
『火の鳥(実写映画)』『徳川家康(映画)』『かぶき者慶次』『江戸城大乱』『竜馬を斬った男』『足尾から来た女』『三国志&三国志II 天翔ける英雄たち』
#11123
バラージ 2021/09/22 22:12
時は流れる
つい先日終わったテニスの全米オープンで、女子シングルスが20年以上ぶりに10代同士の決勝となって大いに盛り上がりました。20年以上前の10代決勝が1999年全米のヒンギスとセリーナ・ウィリアムズでしたから時の流れを感じます。優勝したラドゥカヌと準優勝のフェルナンデス、ともにキュートでフレッシュ、それでいて戦いぶりはパンチ力がありながら落ち着いていたのが印象的。久しぶりに面白い決勝でした。18歳のラドゥカヌと19歳のフェルナンデスはともに9.11の時にはまだ生まれていなかったとのことで、時というものは確実に過ぎ去っていきます。
一方、男子シングルスでは、50年以上ぶり史上3人目(男女通じては6人目)の年間グランドスラム(1年の全豪・全仏・ウィンブルドン・全米すべてで優勝すること)を狙った34歳のジョコビッチが、25歳のメドベージェフに敗れ、偉業達成ならず。39歳のフェデラーと35歳のナダルは怪我でツアーを離脱し、すでに今季終了を宣言しており、やはり時は確実に流れていきます。
>最近ちょっとだけ読んだ本
先日、本屋で坂井孝一氏の新刊『鎌倉殿と執権北条氏 義時はいかに朝廷を乗り越えたか』(NHK出版新書)を見かけ、手に取ってパラパラと立ち読みしてみました。
坂井氏はそれ以前に『源実朝』(講談社選書メチエ)、『承久の乱』(中公新書)、『源氏将軍断絶』(PHP新書)を書いており(僕はいずれもパラパラ立ち読み程度)、この『鎌倉殿と執権北条氏』もほぼ同じ時代を別の視点から扱った本です。まえがきで坂井氏も前記の新書2冊と比較して、重複する部分もあると断りつつ、『承久の乱』は後鳥羽上皇、『源氏将軍断絶』は源氏将軍を主眼としていたのに対して、『鎌倉殿と執権北条氏』は北条氏の時政・政子・義時に主眼を置いていると書いてました。
パラパラ読みで「ん?」と目に止まったところが一点。北条義時の最初の妻?(妾とする説もある)で泰時の母である阿波局が、なんと『曽我物語』に出てくる頼朝の最初の妻で伊東祐親の娘の八重と同一人物だという仰天の説が唱えられてました。来年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では新垣結衣演じる八重が義時の初恋の人という設定になると以前書きましたが、三谷幸喜の創作ではなくこれが元ネタだったのか……。なんでもあとがきによると『鎌倉殿の13人』の製作発表直後にNHK出版より執筆依頼があり、書き上げた後に時代考証の依頼が来たんだとか。八重なんていう序盤で消えるような人にガッキーみたいな大物をぶちこんでくるからおかしいとは思ったんだ。
坂井氏の言う通り頼朝の流人時代や坂東武士たちについては一次史料がほとんどなく、『延慶本 平家物語』や『源平闘争録』『源平盛衰記』『真名本 曽我物語』などに頼らざるを得ません。その上で坂井氏は推測・推論を基にかなり大胆な考察をしてみたとまえがきに書いてるんですが、それにしたってちと度が過ぎてるような。そういえば前に岡田清一氏が『北条義時』(ミネルヴァ日本評伝選)の中でやはり『真名本 曽我物語』を論拠に大胆な仮説を書いてることを紹介しましたが(#10932)、どっちもやっぱりいくらなんでも無理がある説だよなあ。
坂井氏は『源氏将軍断絶』でも、実朝が妾を持たなかったことについて、この時代の人物には珍しく妻との一夫一妻的愛情を強く持っていたという仮説を提示してるんだけど、そのあたりから無理がある説を提唱するなあとは思ってたんですよね。それ以前の『源実朝』では肉体的または精神的な原因による性的不能もしくは性的志向があったという比較的妥当な推測だったんですが……。『源氏将軍断絶』ではあえてそれとは別の説を提示してみると書いてたんだけど、やっぱりちょっとねえ。最初の『曽我物語の史実と虚構』(吉川弘文館)からしてそうだったけど、あえて史料の少ない時代や出来事を、推測・推論を駆使して仮説や考察を提示するっていうのが持ち味なのかなあ。それでも『曽我物語~』や『源実朝』の頃はそれほど突飛な内容は含まれてなかったと思うんですが……。なんかやっぱり来年の大河がちょっと不安になってきました(笑)。
>観てない歴史映像作品 オリエント・聖書関係史編の追記
『女王トミュリス 史上最強の戦士』……2019年のカザフスタン映画。紀元前550年頃の中央アジアの遊牧民マッサゲタイ族(カスピ海の東側にいたと言われる)の女王トミュリスを主人公に、アケメネス朝ペルシアのキュロス2世を破った戦いを描いているとのこと。旧ソ連のカザフスタン映画なんで最初はヨーロッパのカザフスタン史かなぁと思ったんですが、紀元前550年ではカザフスタン史とするのが適切か疑問ですし(現在の地理的にはカザフスタンあたりで、製作側やカザフスタン政府も国威発揚や民族意識高揚を狙った面が間違いなくあるんだろうけど)、かといって中央アジア史というカテゴリーもないし(わざわざこれ1本のために設定するのも……)ということで、敵役がアケメネス朝ペルシアなので一応オリエント史に入れておきます。しかしペルシアって映画では敵役でしか出てこないよなあ。地元イランの映画もないし。イスラム教国のイラン政府が厳しくて、イスラム化以前を肯定的に描けないのかもしれないけど。
#11122
バラージ 2021/09/17 19:47
またまた、マイナーな地域の歴史映画
>観てない歴史映像作品 西アジア・アフリカ史編
今回も(聖書関係を別にすれば)映画製作があんまり盛んじゃなかったり、映画はあっても史劇があまりなかったり、日本で公開されなかったりする地域。ただ戦争映画だけは意外とあって、どうしようか迷いましたが一部だけ選んで紹介いたします。
オリエント・聖書関係史
『ノア 約束の舟』(原題:Noah)……2014年の米国映画。なぜか今頃になってまた作っちゃったノアの方舟映画で、信仰の力なのかラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、エマ・ワトソン、アンソニー・ホプキンスなど出演俳優がやたら豪華。
『プリンセス・オブ・ペルシャ エステル勇戦記』(原題:One Night with the King)……2006年の米国映画。旧約聖書の「エステル記」の映画化なんだけど、邦題はどう考えても『プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂』の便乗だよなあ。助演でピーター・オトゥールやオマー・シャリフが出てるとのこと。
『マリア』(原題:The Nativity Story)……2006年の米国映画。イエスの母マリアがイエスを産むまでの苦難を描いた映画とのこと。
『キング・オブ・キングス』(原題:The King of Kings)……1927年の米国映画。サイレント時代のイエス映画で、監督はセシル・B・デミル。磔刑前の最後の数日間を描いているとのこと。この頃はまだイエスが顔出ししています。
『ゴルゴダの丘』……1935年のフランス映画。イエスのエルサレム入城から磔刑後の復活までを描いているそうで、監督はジュリアン・デュヴィヴィエ。ピラト総督役でジャン・ギャバンが出演しています。やはりイエスは顔出し。
『偉大な生涯の物語』(原題:The Greatest Story Ever Told)……1965年の米国映画。イエスの生涯を描いた大作映画で、主演はこれがハリウッド進出作となったマックス・フォン・シドー。他にもチャールトン・ヘストン、シドニー・ポワチエ、ジョン・ウェイン等々とんでもない超豪華キャストです。オリジナルは260分ですが、DVD化されているのは199分または141分バージョンとのこと。
『ジーザス・クライスト・スーパースター』(原題:Jesus Christ Superstar)……1973年の米国映画。イエスとユダに新解釈を施し、イエス最後の7日間を描いたロック・ミュージカルの映画化で、ティム・ライスが作詞、アンドリュー・ロイド・ウェバーが作曲、映画の監督はノーマン・ジュイソン。舞台・映画ともに凄まじい賛否両論を巻き起こした作品で、舞台は登場人物が現代の衣装を着た現代劇風演劇ですが、映画は普通に史劇映画みたい。
『最後の誘惑』(原題:The Last Temptation of Christ)……1988年の米国映画。処刑されるまでのイエスを、神の使命と自らの欲望の間で苦悩する1人の人間として描いた映画で、監督はマーティン・スコセッシ。主演はウィレム・デフォーで、他にハーヴェイ・カイテルやデヴィッド・ボウイも出演。やはりキリスト教団体などから激しい抗議運動が起こっていた記憶があります。
『パッション』(原題:The Passion of the Christ)……2004年の米国映画。イエスが処刑されるまでの12時間を描いた映画で、監督はメル・ギブソン。セリフはすべてラテン語とアラム語というこだわりぶりで、凄惨なシーンも多いらしく、やはり激しい論争を巻き起こしたとのこと。マグダラのマリア役がモニカ・ベルッチ。
『マグダラのマリア』(原題:Mary Magdalene)……2018年のイギリス・米国・オーストラリア合作映画。マグダラのマリアを主人公とした映画で、イエス役がホアキン・フェニックス。
・古代エジプト史
『太陽の王子ファラオ』……1966年のポーランド映画。『ファラオ 太陽の王子』の邦題でビデオ化されてますがDVD化はされていません。紀元前11世紀のエジプトを舞台としてますが、主人公の王子をはじめ登場人物は実在の人物ではないようなので、厳密には歴史映画ではないみたい。それにしてもなぜ共産主義国ポーランドで古代エジプトの映画が?
・イスラム圏史
『灼熱の魂』(原題:Incendies)……2010年のカナダ・フランス合作映画。レバノン内戦が題材で、レバノン出身のカナダ人劇作家ワジディ・ムアワッドの戯曲を映画化したヒューマンミステリー。レバノンはイスラム圏ではなく、キリスト教が主流の国なんですが他に入れるところがないので……。レバノン内戦にはイスラエルもちょっと関係してるようですが、この映画には関係ないみたいだし……。
『君のためなら千回でも』(原題:The Kite Runner)……2007年の米国映画。アフガニスタン出身の米国在住小説家カーレド・ホッセイニの小説の映画化で、1978年のアフガニスタン、翌年のソ連軍侵攻、そして時を経て2000年のタリバン政権下を舞台としたヒューマンドラマ映画とのこと。
『ロスト・ストレイト』……2018年のイラン映画。イラン・イラク戦争末期を舞台に、イラン軍のある大隊が臨んだ激闘を実話に基づいて再現。ヒロイズムを排除した、ちょっとドキュメント・タッチの戦争映画らしい。
『スリー・キングス』(原題:Three Kings)……1999年の米国映画。湾岸戦争終結直後、イラクが隠した金塊強奪に乗り出した3人の兵士の姿を描いた異色アクションで、湾岸戦争に対して批判的な姿勢で製作されているとのこと。
・現代イスラエル史
『ケドマ 戦禍の起源』……2002年のイスラエル・フランス・イタリア合作映画。第1次中東戦争を舞台とした戦争映画で、ナチスによる迫害を生き延びてパレスチナにやってきたユダヤ人が、現地ユダヤゲリラに参加させられ独立戦争という名のアラブ人との殺し合いで迫害する側になってしまう狂気を、ギリシャのテオ・アンゲロプロス監督のような長回しで描いているとのこと。監督はアモス・ギタイ。
『キプールの記憶』……2000年のイスラエル・フランス・イタリア合作映画。DVD邦題は『キプール 勝者なき戦場』。第4次中東戦争を舞台とした戦争映画で、監督はやはりアモス・ギタイ。ギタイの実体験に基づいた作品で、救急部隊に配属された若者たちを描いた作品とのこと。
・アフリカ史
『チェド』……1976年のセネガル映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。17世紀の西アフリカを舞台として、イスラム教への改宗を拒む非改宗者(チェド)の姿を描いた映画。架空の小国を舞台とした話なので歴史映画ではないんですが、こういう時代が題材になるのは珍しいのでご紹介。
『愛と野望のナイル』(原題:Mountains of the Moon)……1989年の米国映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。19世紀イギリスの探検家リチャード・バートンとジョン・スピークによる、ナイル川源流を突き止めるための探険行を描いているそうです。
『ズールー戦争 野望の大陸』(原題:Zulu Dawn)……1979年の米国・オランダ合作映画。上記の邦題でDVDスルーされた後、『ズールー戦争』に改題されて再発売されました。ズールー戦争が題材ですが名画座にある『ズール戦争』より少し前の戦いを描いてるようです。主演はバート・ランカスターとピーター・オトゥール。
『おじいさんと草原の小学校』(原題:The First Grader)……2010年のイギリス映画。2003年のケニアで子供たちに交じって小学校に通う1人の老人を描いたヒューマンドラマ映画で、基本的に2003年が舞台のようですが、その老人の50年前の独立戦争時の苦しみも描かれるようです。
『アフリカ残酷物語 食人大統領アミン』(原題:Amin The Rise And Fall)……1982年のイギリス映画。『食人大統領アミン』の邦題でビデオ化はされましたがDVD化はされていません。ウガンダの独裁者イディ・アミンを描いた映画で、テレビでショッキングなシーンをのCMが流れてたのを思い出します。邦題からして『食人族』の便乗だったしなあ。でも実際にはそんなシーンは少しだけで、わりと真面目にアミンの独裁者ぶりを描いた映画みたい。
『マンデラ 自由への長い道』(原題:Mandela: Long Walk to Freedom)……2013年の米国・イギリス・南アフリカ合作映画。ネルソン・マンデラの自伝の映画化で、少年時代から大統領になるまでを描いてるようです。
『ホテル・ルワンダ』(原題:Hotel Rwanda)……2004年の南アフリカ・イギリス・イタリア合作映画。1994年に起きたルワンダ虐殺で、高級ホテルに勤めていた1人の男がホテルに1200人もの人々をかくまってその命を守り抜いた実話の映画化。主演はドン・チードルで、ニック・ノルティ、ホアキン・フェニックス、ジャン・レノらが共演。
『ルワンダの涙』(原題:Shooting Dogs)……2005年のイギリス・ドイツ合作映画。同じくルワンダ虐殺を、現地を取材していたBBCの記者デビッド・ベルトンの体験をもとに、現場を目の当たりにした外国人たちの視点で捉えた社会派ドラマ映画とのこと。
#11121
バラージ 2021/09/13 21:04
マイナーな地域の歴史映画
なにやらBS12で10月7日から中国ドラマ『秀麗伝 美しき賢后と帝の紡ぐ愛』が放送開始されるようです。とっくにDVD化もされてる何年か前のちょっと古いドラマなのに、なんでまた?とちょっと不思議。後漢の光武帝劉秀の皇后陰麗華を主人公に新末の動乱を描くという、ちょっと珍しい時代が舞台ですが、僕はドラマとしては今一つ興味が……。
>観てない歴史映像作品 東南アジア史&南アジア史編
今回は国によっては映画製作があんまり盛んじゃなかったり、映画はあっても史劇があまりなかったり、日本で公開されなかったりするためもあって、ちょっと国による偏りが激しい結果に。
・ベトナム史
『ソード・オブ・アサシン』……2012年のベトナム映画。15世紀の後黎朝大越で幼少の3代皇帝仁宗を母の宣慈太后が摂政していた時代を舞台としたアクション時代劇。前皇帝太宗暗殺の罪を着せられて三族処刑された阮ち(グエン・チャイ)の一族でただ1人密かに救われた孫が、濡れ衣の背後にいた太后への復讐のために戦うというストーリーみたい。
『インドシナ』……1992年のフランス映画。1930年代のフランス領インドシナを舞台として、大地主のフランス人女性とそのベトナム人養女、その双方が愛した若いフランス人士官の恋愛劇に、共産主義者による独立運動などを絡めたメロドラマ映画。主演はカトリーヌ・ドヌーブ。
『インドシナ激戦史1954 要塞ディエン・ビエン』……2004年のベトナム映画。インドシナ戦争におけるディエン・ビエン・フーの戦い前後を舞台に、ベトナム兵とベトナム軍に投降したフランス兵、フランス語を話せるベトナム人女性の3人を中心とした戦争映画のようです。
・タイ史
『ラスト・ウォリアー』……2002年のタイ映画。16世紀初めのアユタヤ王朝11代王ラーマティボディ2世の時代を舞台としたタイの古典文学『クンチャーン・クンペーン』の映画化。『クンチャーン・クンペーン』は19世紀にラーマ2世が詩人に命じて分担執筆させ、国王自身も加わり共同制作したものとのこと。
『ソードキング』(原題:The King Maker)……2005年の米国・タイ合作映画。16世紀半ば、船が難破してアユタヤ王朝に流れ着いたポルトガル人傭兵が、王のもとで戦功をあげて出世するも、王位をめぐる陰謀に巻き込まれていくという時代劇。14代王チャイラーチャー、王妃シースダーチャン、その愛人で17代王ウォーラウォンサーなどが登場するらしい。日本人傭兵や忍者も出てくるみたい。
『セマ・ザ・ウォリアー』……2003年のタイ映画。16世紀後半、アユタヤ王朝の21代王ナレースワン治世下で、刀鍛冶から兵士になりアユタヤの伝説的英雄になったセマという人物を主人公とした時代劇。セマという人物が実在なのか伝承上の人物なのか調べてもよくわかりませんでした。
『山田長政 王者の剣』……1959年の日本・タイ合作映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。タイで現地ロケをし、大量のエキストラを動員した合戦シーンもあるそうですが、配役はタイ人役も全て日本人俳優が演じています。主演は長谷川一夫。
『アンナとシャム王』(原題:Anna and The King of Siam)……1946年の米国映画。『王様と私』と同じ原作小説の最初の映画化。DVDパッケージに載ってる王様役のレックス・ハリソンがどう見てもタイ人には見えません(笑)。
『ムアンとリット』……1994年のタイ映画。ソフト化はされていません。19世紀後半のタイで女性の権利を初めて主張したと言われる実在の女性ムアンを描いた映画らしく、当時のタイの人気女優チンタラー・スカパットが主演。監督は巨匠チャート・ソンスィー。タイ映画で初めて日本で一般公開された作品だそうです。
・ミャンマー史
『ラングーンを越えて』(原題:Beyond Rangoon)……1995年のイギリス・米国合作映画。1988年を舞台に、ミャンマーの民主化運動を背景としたローラ・ボーマンの実体験をもとにした映画で、監督はジョン・ブアマン、主演はパトリシア・アークエット。
・インド史
『ポロス 古代インド英雄伝』……2017~18年のインドのテレビドラマ。紀元前350年の古代インドを舞台に、ヒュダスペス河畔の戦いでマケドニアのアレクサンドロスと戦ったポロスを主人公とした、実に299回に及ぶ超大河ドラマです。現在BS日テレで放送中ですが、とにかくやたら長いシリーズで、現在はシリーズ5なのかな? トルコの『オスマン帝国外伝』といい、こういうやたら長いドラマが作れるようになったのは、やはり「配信」の存在が大きいらしい。
『パドマーワト 女神の誕生』……2018年のインド映画。13世紀末の西インドの小国メーワール王国の妃パドマーワティを主人公に、メーワール王ラタン・シンとデリー=スルタン朝のアラーウッディーンの戦いを描いた16世紀の叙事詩『パドマーワト』が原作。劇中の描写をめぐって激しい抗議運動と賛否両論の大論争が巻き起こり、インドの一部の州や一部のイスラム諸国では上映禁止になったとのこと。
『カーマ・スートラ 愛の教科書』(原題:Kama Sutra)……1996年のイギリス・インド合作映画。全く架空の時代劇で、史劇ではないんだけど個人的趣味で紹介してしまおう(笑)。古代インドの愛の聖典『カーマ・スートラ』をモチーフに、16世紀インドの宮廷を舞台に2人の女性の愛の遍歴と苛酷な運命を描いたヒューマンドラマ映画です。監督はミーラー・ナーイル。
『チェスをする人』……1977年のインド映画。ソフト化はされていません。1856年、イギリスの東インド会社によってインド北部が植民地化されていく時代を舞台に、享楽の生活に溺れて英国総督によって退位させられるアウド王国国王ワジドと、国の危機をよそにチェスにふける2人の貴族たちを描いた、巨匠サタジット・レイ監督作です。
『マニカルニカ ジャーンシーの女王』……2019年のインド映画。19世紀のインド大反乱(セポイの乱)の女性指導者ラクシュミー・バーイーことマニカルニカが主人公のスペクタクル史劇。予告編を見ると、CGやワイヤーアクションばりばりの娯楽映画って感じだなあ。
『英国総督 最後の家』(原題:Viceroy's House)……2017年のイギリス・インド合作映画。1947年、独立前夜のインドを舞台に、最後のイギリス領インド総督マウントバッテンと彼を取り巻く人々の群像を描いたヒューマンドラマ映画。パキスタンでは上映禁止になったとのこと。
『女盗賊プーラン』……1994年のインド映画。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。盗賊の女首領から国会議員にまでなったプーラン・デヴィの少女時代から投降までの半生を、本人が生きてるうちに映画化。しかしプーラン本人は事実に基いてないと主張して上映禁止を求め提訴したらしい。
>名画座訂正情報
『大祚栄(テジョヨン)』……『大祚榮(テジョヨン)』が正しい邦題のようです。
#11120
バラージ 2021/09/06 20:16
演義と正史と後漢書と
三国志の派生作品(小説・映画・ドラマ・マンガ・アニメ・ゲームなど)には大きく分けて「演義系」と「正史系(史実系)」があると思います。一昔前は吉川英治や横山光輝に代表されるように演義系が圧倒的に多く、そのまた派生作品も含めると大半が演義系でした。本場中華圏でも事情は同じで、史実系の派生作品は例外的少数だったと言っていいでしょう。
僕自身はどちらかというと史実系、というよりも史実そのものから三国志に入った口なので、そっち系の本や映像作品に触れることのほうが多く、小説なら陳舜臣の『秘本三国志』、ボードゲームでは前回書いた通り『旌旗敝空』という史実系の作品をそれぞれ高校の時に通ってきており、そのような史実系の作品や歴史本などで三国志の知識を得てきたんですが、今回はそんな史実系の作品で「ん?」と思ったことの話。
それはマンガ『蒼天航路』についてなんですが、そこに出てくる董卓配下の徐栄という将軍の描写について、あれ?と思うところがあったんですよね。
徐栄は、反董卓連合軍の曹操による攻撃を撃破し退けた将軍なんですが、『三国志演義』ではその際に夏侯惇に討ち取られて戦死しています。しかし正史『三国志』では戦死はしておらず、それどころか曹操軍を撃ち破りながら、その奮戦ぶりを見て容易には滅ぼせないと考え、深追いを避けるという深慮を見せています。正史でも登場はここだけで(あとは旧知の公孫度を遼東太守に推薦したという記述があるくらい)、その後どうなったかは不明なんですが、実は同じ正史でも『後漢書』のほうにその後の記載があるのです。それによるとその後、南方から侵入した孫堅をも撃ち破っており、最後は董卓を暗殺した王允の配下となって、復讐に攻め寄せた李傕・郭汜と戦いますが味方の裏切りもあって戦死しています。
この顛末を最初に知ったのは前記の小説『秘本三国志』ででして、曹操軍を破ったのが徐栄であることはそれ以前から知ってたんですが(何で知ったかはもう忘れたんだけど、徳間書店の『三国志』シリーズあたりで読んだのかな?)、孫堅を破ったことや最後の戦死の顛末については、その時初めて知りました。小説ではありますが全くの創作という雰囲気でもないように感じたんで、元ネタは何なんだろ?と思ったんですよね(『旌旗敝空』でも非常に高い能力値が付けられていた)。『後漢書』の記述によるものと知ったのも何によってだったかもう記憶にありませんが、光栄のパソコンゲーム『三国志』のハンドブックとかだったのかな?
で、『蒼天航路』なんですが、その徐栄、曹操軍を破るあたりがかなりかっこよく描かれ、結構目立ってたんです。おお、これは『秘本三国志』以来の……と思ったんですが、その後は全く登場せず。あれ?とやや不完全燃焼のまま過ごし、しばらくしてコミックスを読み返してみると、呂布が出陣しようとした時に諫言をして顔を掴まれ握り潰されるという悲惨な最期が小さなコマで描かれておりました。あんなにかっこよかったのに、なんとあっけない。
で、思ったんですが、作者(李學仁(原作・原案)と王欣太(作画))は、正史『三国志』は読んでいても、『後漢書』は読んでいなかったんじゃないかなあ。正史『三国志』は当時から邦訳があったけど、『後漢書』の邦訳は当時はありませんでしたからね。もちろん僕だって『後漢書』は読んでないんですが、前記の通り何かの本で知った知識を確認するために、大学の時に大学図書館にあった『後漢書』の篆刻本を流し読みした思い出があります。漢文なんで正確にはよくわからなかったけど、一応徐栄などの気になる部分は確認できました。
同様の例が李儒です。『演義』では董卓の娘婿で悪の知恵袋ですが、正史『三国志』には登場しません。そのため実在しない架空の人物と思っちゃいそうですが、実は『後漢書』のほうにのみ登場しています。それによると李儒は董卓の家臣ではなく朝廷の官僚で、朝廷を制圧した董卓の命令で弘農王劉弁(董卓に廃された少帝)を毒殺しています。『秘本三国志』でもその通りの描写なんですが(ついでに言うと『旌旗敝空』でもそこそこの文官という能力値で董卓の親族ではない)、『蒼天航路』では『演義』と同じく董卓の家臣であるものの、上洛しようとする董卓を支持するところのみの登場という、史実とも『演義』とも違う描写となっています。これも多分『後漢書』を読んでないからで、『演義』では目立つのに正史『三国志』には出てこないということで、ああいう描写に落ち着いたんではないかと思われます。
それにしても、さすがに陳舜臣は正史『三国志』以外に漢文史料の『後漢書』などにもきちんと目を通していたんでしょうねえ。他にも一般的な三国志ものではめったに出てこない人物なんかも出てきたりして、とても興味深かった思い出があります。
>全面捜索とか掃討とかってできないのか、と。
いやあ、なかなか難しいんじゃないでしょうか。鎌倉初期でも挙兵して敗れた人物が逃げて姿をくらましたという例がいくつかあるんですよ。建仁の乱(1201年)の城資盛、泉親衡の乱(1213年)の泉親衡、和田合戦(1213年)の朝比奈義秀など大規模な兵乱の関係者がいずれも敗戦後に逃亡して、その後2度と見つかりませんでした。正体を隠して天寿を全うしたのか、逃亡中にどっかの山奥で野垂れ死んだのかわかりませんが、ともかくその後の行方は不明です。まさに歴史の波間に消えたってやつでして。承久の乱で後鳥羽上皇の側近だった尊長も敗戦後6年も潜伏してましたし、反頼朝挙兵に失敗した源義経だって関西で姿をくらました後、東北まで逃げ延びてるわけですしね。
現在でも行方不明者は年間数万人とも言われてますし、山で行方不明になった人なんかも大規模な山狩りをして捜索してもなかなか見つからなかったりしますから、昔は写真などもないわけでほとんどの人が顔も知らないわけだし、探すのも大変だったんではないでしょうか。
>観てない歴史映像作品 戦国時代編の追記
『笛吹川』……1960年の映画。木下惠介監督が深沢七郎の同名小説を映画化した作品で、戦国時代の甲斐国を舞台に、笛吹川のほとりに住む貧農の5代にわたる約60余年の物語。
>名画座訂正情報
『The Lady アウンサン・スー・チー 引き裂かれた愛』……「・」のない「The Lady アウンサンスーチー 引き裂かれた愛」が正しい邦題です。ミャンマー人には姓がないらしく、そもそもの正しい表記が「・」のない「アウンサンスーチー」で、「スーチー」と略すのも間違いとのこと。
『ピラミッド』……脚本の「ウィリアム=ホークナー」は、正しくは「ウィリアム=フォークナー」。あの有名な小説家のフォークナーのようです。
#11119
徹夜城(次の首相の似顔の練習にかかるかと考える管理人) 2021/09/03 23:23
首相在任の平均値がちょっと戻るかな
「史点」を久々にアップしたとたんに菅首相の総裁選不出馬、実質的な退陣表明。ネタが飛び込んできたわけですが、次の首相がだれか決まってから取り上げようかな。
一応菅さんは一年は在任したわけです。前任者がやたら長かったので歴代首相の平均在任期間は伸びてたはずですが、これでまた少し戻ると。以前一度計算したことがあるんですが、その時は平均で一年ちょっとだったような。
>韓国歴史映画
バラージさんが挙げていたなかで、「将軍の息子」の一作目は鑑賞したことがあります。といっても韓国版のビデオを大学のゼミのみんなで見たのですが。「セリフの半分は日本語だし、アクションものだから大丈夫」と恩師に言われたもんですがやっぱり話は半分くらいしかわからなかった(笑)。
日本の植民地時代のいわばヤクザ映画で、日本側のヤクザとの抗争も描かれますから半分くらい日本語というのはホント。ただし演者が日本人ではないので発音が思いっきりヘン。昔の映画はそんなもんでしたね。
劇中で登場する柔道だったか剣道だったかの達人の日本人警官がなかなかカッコイイ人に描かれていたのが印象に残ってます。
#11118
バラージ 2021/08/30 22:41
韓国映画も増えました
>観てない歴史映像作品 朝鮮・韓国近現代史&モンゴル史&東アジア史その他編
今回は朝鮮・韓国史の後編と、モンゴル史、東アジア史その他を扱った作品です。朝鮮戦争の映画がやたら多くてどうしようか迷ったんですが、一応一通り紹介しておきます。しかしまあ朝鮮・韓国史の映画がこんなにたくさん紹介できるなんて、20世紀までだったら考えられないことですよね。
・朝鮮・韓国史②
『古山子(コサンジャ) 王朝に背いた男』……2016年の韓国映画。「大東輿地図」を完成させた地理学者の古山子(コサンジャ)こと金正浩(キム・ジョンホ)の半生を描いた伝記映画。
『花、香る歌』……2015年の韓国映画。女人禁制とされた伝統芸能パンソリで女性初の歌い手となった実在の人物・陳彩仙(チン・チェソン)の半生と、彼女を育てた師・申在孝(シン・ジェヒョ)を描いたドラマ映画。
『炎のように 蝶のように』……2009年の韓国映画。26代高宗に嫁ぐ明成皇后(閔妃)と、彼女を愛し守り抜く元刺客の護衛戦士の純愛というフィクションをストーリーに、閔妃暗殺事件の裏側を描いた恋愛アクション映画。
『GABI(ガビ) 国境の愛』……2012年の韓国映画。高宗が日本に反発してロシア公使館へ逃れた露館播遷の時代を舞台に、日本のスパイとして高宗に仕える朝鮮最初のバリスタとなって高宗を暗殺するよう強制された朝鮮人男女を主人公としたサスペンス映画。高宗が露館播遷時代に初めてコーヒーを飲み大のコーヒー党になった史実と、実際に毒入りコーヒーで毒殺されかかった史実をもとに作られたフィクションとのこと。
『桑の葉』……1986年の韓国映画。日本公開は1990年で、コーリアンエロス・ブームを巻き起こした作品です(が、実は日本人から見ればエロス部分は全然たいしたことないらしい)。原作は1920年代の小説家・羅稲香(ナ・ドヒャン)の同名短編小説で、映画は1920年代の日本統治時代の田舎の山村を舞台とした艶笑譚ですが、実は隠された意味が満載の意外に深い映画とのこと。劇中に出てくる「桑の葉を摘みに行こう」という言葉は抗日活動家の符牒だったそうで、主人公女性の夫に日本人憲兵の尾行がついていることで彼が抗日運動に関わっていることが暗示されているそうです。そしてこの映画は日帝時代を描きながら、実は当時の軍事独裁政権への批判もひそかに込められていたらしい。監督はイ・ドゥヨン、主演はイ・ミスク。本国でも大ヒットし、『新・桑の葉』(1988年、DVD邦題『桑の葉2』)、『桑の葉3』(1992年)と続編が作られており、一応お話のつながりはあるんだけど、それぞれが独立した作品みたい。監督はいずれも1作目と同じイ・ドゥヨン。
『密偵』……2016年の韓国映画。日本統治時代の1923年に独立運動組織の義烈団が起こした黄鈺警部事件をモデルとしたサスペンス・アクション映画で、史実をモチーフにしているものの人物の名前は全て架空に変えられてます。主演はソン・ガンホとコン・ユ。
『暗殺』……2015年の韓国映画。日本統治時代の1933年を舞台として、中国の杭州に拠点を置く韓国臨時政府に日本政府と親日派の要人暗殺のために送り込まれた暗殺者たちと、実は日本側に内通している裏切者との虚々実々の駆け引きを描いたサスペンス・アクション映画。基本的にフィクションのようですが、実在の人物も何人か登場するようです。主演はチョン・ジヒョン、イ・ジョンジェ、ハ・ジョンウ。
『将軍の息子』『英雄武闘伝説 将軍の息子II(DVD邦題『将軍の息子2 英雄武闘伝説』)』『将軍の息子3』……それぞれ1990年、1991年、1992年の韓国映画。日帝時代は抗日ヤクザ、解放後の韓国では右翼ヤクザから国会議員にまでなっちゃった金斗漢(キム・ドゥハン)を主人公としたヤクザ映画三部作。1930~40年代の日帝時代を舞台としたフィクション満載の娯楽アクション映画みたいですね。監督は巨匠イム・グォンテク。
『空と風と星の詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯』……2016年の韓国映画。日本統治時代の詩人・尹東柱の伝記映画。日本で治安維持法違反容疑で逮捕され、1945年に27歳の若さで獄中死した尹東柱の青春の日々を、独立運動に身を投じた同い年の従兄弟・宋夢奎(ソン・モンギュ)との交流を軸に描き出しているとのこと。
『玄海灘は知っている』……1961年の韓国映画。太平洋戦争中の1944年を舞台に、日本軍に徴用された朝鮮人青年が非人間的な軍隊生活で痛めつけられる姿と、良心的な日本人女性との恋愛を描いた映画。監督はキム・ギヨン。「金綺泳(キム・ギヨン)傑作選BOX」にBlu-rayのみ収録で、バラ売りもDVDもなし。
『血の海』……1969年の北朝鮮映画。日本軍による朝鮮半島の植民地支配と抗日闘争を描いた映画で、映画祭で上映されたオリジナルは2部構成252分のようですが、DVDは160分の短縮版みたい。「植民地支配は、平凡な母を革命家に変えた!」というキャッチコピーがなんかすごい(笑)。
『太白山脈』……1994年の韓国映画。1948年の麗水順天反乱事件から1950年の朝鮮戦争勃発までという、日本敗戦による独立後の右翼左翼対立の時代を描いた大作映画で、原作は趙廷來(チョ・ジョンレ)の同名歴史大河小説。監督はイム・グォンテク、主演は名優アン・ソンギ。
『ソウル奪還大作戦 大反撃』……1974年の韓国映画。朝鮮戦争の最初の3か月を描いており、『ホワイト・バッジ ファイナル 史上最大の作戦』の邦題でビデオスルーされた後、邦題を変えてLD化され、さらにDVD化もされました。これもイム・グォンテク監督作ですが、こちらは韓国軍全面協力による反共国策映画。
『史上最大の戦場 洛東江大決戦』……1976年の韓国映画。朝鮮戦争初期の洛東江まで後退した韓国軍と北朝鮮軍の戦いを描いた戦争映画で、『新ホワイト・バッジ 地獄への戦場』の邦題でビデオスルーされた後、邦題を変えてLD化され、さらにDVD化もされました。これまたイム・グォンテク監督作。
『アベンコ特殊空挺部隊 奇襲大作戦』……1982年の韓国映画。朝鮮戦争での多国籍軍空挺部隊を描いたフィクションの戦争映画で、『エア・コンバット 多国籍特殊空挺部隊』の邦題でビデオスルーされた後、邦題を変えてLD化され、さらにDVD化もされました。やはりイム・グォンテク監督作。
『南部軍 愛と幻想のパルチザン』……1990年の韓国映画。ソフト化はされていません。朝鮮戦争時に韓国南部の山岳地帯で活動したパルチザン・南部軍が題材で、南部軍に従軍した新聞記者イ・テによる同名手記が原作。監督はチョン・ジヨン、主演はアン・ソンギ。
『銀馬将軍は来なかった』……1991年の韓国映画。『シルバースタリオン 銀馬将軍は来なかった』の邦題でビデオ化されましたがDVD化はされていません。朝鮮戦争において国連軍の米兵にレイプされた農村の女性が、米兵相手の娼婦になりながらもたくましく生きていく姿を、その幼い息子の視点から描いた映画とのこと。
『トンマッコルへようこそ』……2005年の韓国映画。同名舞台の映画化で、朝鮮戦争を舞台に、南北朝鮮軍兵士や国連軍の米兵士が山奥の平和なトンマッコル村で友情を育んでいくが、やがて平和な村にも戦火が……というストーリー。
『戦火の中へ』……2010年の韓国映画。朝鮮戦争の浦項(ポハン)の戦いにおいて、韓国軍の学徒兵が母に送った手紙をもとに製作された戦争映画とのこと。監督はイ・ジェハン。
『小さな池 1950年・ノグンリ虐殺事件』……2010年の韓国映画。朝鮮戦争下の1950年7月、ノグンリの鉄橋下のトンネルに逃げ込んだ村の住民数百人が米軍の無差別射撃で殺害されたノグンリ事件の映画化。
『高地戦』……2011年の韓国映画。1953年、休戦交渉が難航する中での南北の境界線を争う高地での激しい戦闘を描いた戦争映画。監督はチャン・フン。
『戦場のメロディ』……2015年の韓国映画。1952年を舞台に朝鮮戦争で全てを失った子どもたちによる、実在した児童合唱団の実話をもとにして描いたヒューマン映画とのこと。
『オペレーション・クロマイト』……2016年の韓国映画。朝鮮戦争の仁川上陸作戦(クロマイト作戦)を描いた戦争映画。監督はイ・ジェハン。マッカーサー役でリーアム・ニーソンが出演しています。
『長沙里(チャンサリ)9.15』……2019年の韓国映画。朝鮮戦争において仁川上陸作戦を成功させるために陽動作戦として実施された長沙上陸作戦を描いた戦争映画。監督はクァク・キョンテクとキム・テフン。
『月尾島(ウォルミド)』……1982年の北朝鮮映画。朝鮮戦争における国連軍の仁川上陸作戦の際に起こった月尾島(ウォルミド)の戦いを描いた戦争映画。
『5時から5時まで』……1990年の北朝鮮映画。「12時間以内に敵軍の背後に移動する」という朝鮮戦争における実話をもとにした戦争サスペンス映画とのこと。
『ホワイト・バッジ』……1992年の韓国映画。韓国軍も参加したベトナム戦争の後遺症に苦しむ1979年の帰還兵と、彼の回想するベトナムでの戦場とを描いて大ヒットしたベトナム戦争映画。監督はチョン・ジヨン、主演はアン・ソンギ。
『ホワイト・バッジ2 戦場の青き狼たち』……1991年の韓国・タイ合作映画。ビデオ化のみでDVD化されていません。製作年を見てもわかるように『ホワイト・バッジ』より前に作られた作品で、ベトナム戦争を舞台としている以外は全く無関係な映画です。蒼い袖渓谷の戦いを題材としているとのこと。
『ホワイト・バッジ3 戦狼たちの墓標』……1990年の韓国・ベトナム合作映画。ビデオ化のみでDVD化されていません。やはりベトナム戦争を舞台としている以外は上記2作と全く無関係な作品。
『あなたは遠いところに』……2008年の韓国映画。1971年が舞台で、軍に入隊している夫と愛のない結婚をした女性が主人公。夫はなぜか断りもなく志願してベトナム戦争に出征。女性は姑の懇願に負けて、唯一の趣味だった歌を活かし慰問団の歌手になって夫の行方を追いかける……というストーリーのヒューマン映画。
『弁護人』……2013年の韓国映画。軍事政権下の1981年に青年弁護士時代の盧武鉉元大統領が弁護を担当した冤罪事件・釜林事件をモデルとした映画。主演はソン・ガンホ。
『キルソドム』……1986年の韓国映画。ビデオ&DVD邦題は『キルソドム 再会のとき』。1983年を舞台に南北離散家族を題材とした映画。監督はイム・グォンテク。
『南営洞(ナミョンドン)1985 国家暴力、22日間の記録』……2012年の韓国映画。軍事政権下の1985年に起こった国家権力による金槿泰(キム・グンテ)拷問事件の映画化。ただし名前は実在人物とは変えているようです。監督はチョン・ジヨン。
『ザ・キング』……2017年の韓国映画。1980年から2010年の韓国現代史を背景に、歴代の大統領選の裏で金と権力のために動いた検事たちを描いた社会派娯楽映画。実際の歴代大統領(全斗煥、盧泰愚、金泳三、金大中、盧武鉉、李明博)の映像を交えて、大統領選の裏で暗躍する検察や裏社会との癒着など、韓国の政治の裏側が描かれているとのこと。登場人物には実在のモデルがいるそうです。監督はハン・ジェリム、主演はチョ・インソン、チョン・ウソン。
・モンゴル史
『蒼き狼 チンギス・ハーン』(原題:一代天驕成吉思汗)……1998年の中国映画。内モンゴル製作の映画で、監督や俳優もほぼモンゴル族。言語もモンゴル語の映画のようです。チンギス・ハーン映画のご多分に漏れずモンゴル統一で終わっちゃうみたい。
『ライジング・ロード 男たちの戦記』……2009年のロシア・モンゴル・米国合作映画。ついにロシアも作っちゃったチンギス・ハーン映画で、ロシア連邦内のサハ共和国製作らしく、言語はロシア語とヤクート語。ストーリーはやはりモンゴル統一まで。ケイリー=ヒロユキ・タガワもなぜか出演しております。
『戦神紀 チンギス・ハーン戦記』(原題:戦神紀)……2018年の中国映画。つい最近DVD化されました。監督が『胡同(フートン)の理髪師』のハスチョローなので静かな人間ドラマかと思いきや、美男美女だらけでCGやワイヤーばりばりのファンタジーテイストというイマドキ映画みたい。なぜか製作はジャン=ジャック・アノー。やはりモンゴル統一までのお話。
・東アジア史その他
『浮城』(原題:浮城)……2012年の香港映画。第二次大戦後の1940年代末から中国に返還される1997年までの香港を舞台に、貧しい水上生活者の夫婦に売られた中英混血の男児がイギリス企業の幹部となるまでを実話に基づいて描いたヒューマン映画。実在する2人の人物のドラマをひとりの人生として脚色したとのこと。監督はイム・ホー、主演はアーロン・クォック。
『花火降る夏』(原題:去年煙花特別多)……1998年の香港映画。中国返還前後の香港を舞台に、解散した英国軍香港駐屯部隊の退役軍人の中年男が銀行強盗を決行する姿を描いたフルーツ・チャン監督の“香港返還三部作”の第2作。
『リトル・チュン』(原題:細路祥)……1999年の香港・日本合作映画。中国返還前後の香港の裏町でたくましく生きる9歳の少年を描いた、フルーツ・チャン監督の“香港返還三部作”最終作。
#11117
バラージ 2021/08/25 23:03
最近読んだ本
『室町の覇者 足利義満──朝廷と幕府はいかに統一されたか』(桃崎有一郎・著、ちくま新書)をようやく読了。
副題にもあるように、義満が支配した室町前期の朝幕関係を扱った本で、同じテーマの本には90年代前半に一世を風靡した今谷明氏の『室町の王権』(中公新書)がありました。今谷氏の提唱した義満による天皇家乗っ取り=王権簒奪説については現在ではほぼ否定されてるようですが、本書はある意味それをアップデートさせたと言いますか、むしろ義満はそれ以上のことを成し遂げた存在だとでも言うべき論が展開されています。
著者は室町時代の朝廷が専門分野とのことで、以前も書きましたが全12章のうち義満以前の室町幕府初期に1章、以後の義持期に1章、義教期に2章を割いており、いわば室町前期の朝幕関係と、朝廷をも従えた室町殿(および北山殿)権力の通史といった印象。
文章表現にやや砕けすぎな印象の部分もありますが、なかなか面白い本でした。
>『旌旗蔽空』の鄂煥
懐かしくなって、またルールブックを引っ張り出してパラパラ見たら、鄂煥は220年の段階ですでに死亡している設定でした。諸葛亮の南征の時にしか出てこないはずなのに一体なぜ? デザイナーは誰か別人と勘違いでもしたんだろうか? 謎は深まるばかりです。
>新たな中国史ドラマ
『孤城閉 ~仁宗、その愛と大義~』(原題:清平楽)……今度、衛星劇場で放送が開始される、北宋4代仁宗を主人公としたドラマ。またずいぶんとマイナーな題材を……。
>『風雲児たち』
僕も初めて読んだのは高校生の時にコミックスを立ち読みででした。ただ、どこまで読んだかの記憶は曖昧。大学に入ってからは掲載誌のコミックトムを立ち読みし始め、『風雲児たち』も読んでたとは思うんですがそれほど熱心ではなかった。理由は2つありまして、1つはやはり人物の評価とその描写がマンガ特有のオーバーな表現とも相まってやや極端だったこと。もう1つはギャグがね、あまりにコテコテというか吉本新喜劇的というか。僕の好みとはちょっと違っていて、そんなに笑えなかったというのが正直なところです。それでも松平定信のあたりや蛮社の獄、水野忠邦や鳥居耀蔵が失脚するあたりまでは読みましたかね。みなもと太郎さんのご冥福をお祈りします。
#11116
徹夜城(大河歴史ギャグマンガの未完を惜しむ管理人) 2021/08/20 21:35
早すぎる未完
訃報が経報じられましたが、漫画家のみなもと太郎さんが8月7日に亡くなりました。なんといっても代表作は「風雲児たち」であり、僕もかれこれ…えーと、30ウン年以上その進行をリアルタイムで楽しんできた漫画でありました。思えば高校時代に本屋で立ち読みしてついつい爆笑したのが最初の出会いでした。
そのせいもあってその当時描かれていた、大黒屋光太夫のロシアばなしや最上徳内らの北方探検あたりが個人的にいちばんおもしろく読んでました。まぁ本来幕末漫画」として始まったこの作品が、いちばん寄り道してしまった時期でもあります。はじめの第一期が高野長英の死と坂本龍馬の旅立ちで終わり、「コミック乱」に移ってからの「幕末編」はようやく幕末な感じになってきた(やたら血なまぐさくなる)あたりまできて終わってしまいました。そこまででも20年かかっちゃいましたけどね。
長期執筆の大作漫画は未完に終わるケースが多いですが、この漫画も内心覚悟はしてたんですけど、こうも早く現実になるとは…合掌。
>タリバン
いつ更新できるかわかんないですけど次回「史点」で扱う予定。それにしてもこの20年はなんだったんだと。
そのしぶとさに「南朝」が引き合いに出されてましたが(笑)、北朝というか室町幕府が本気になればいつでも攻め込んでつぶせたとは思うんですよね(義詮の時にかなり本格的攻勢をかけてはいますが)。でも幕府としてはあくまで「和睦」という形での終結を考えていたため意図してそれはしなかったんだと。
むしろ僕が驚くのは新田一族とか、いま話題の北条時行とか、何度も敗北してどっかに隠れてはことがおこるとまた軍勢集めて復活するところですね。全面捜索とか掃討とかってできないのか、と。
>五輪映画
挙がっていた中では「クール・ランニング」が傑作でしたね。もちろん史実とはずいぶん離れたところがあるんですけど、その素材をうまいこと「スポーツ映画の王道」な映画に仕立て上げたところが凄い。
#11115
バラージ 2021/08/18 22:48
戦争は終わった?
アフガニスタン、20年経ってまさに元の木阿弥。結局アフガニスタン紛争って何だったんだ。圧倒的な物量を誇った米軍でも険阻な山間部に潜伏するタリバンを掃討しきれないってのは、なんだか吉野の山奥に逃げ込んだ南朝を思わせますな。
>『太陽の子』
去年の8月にNHKで放送されたドラマ『太陽の子』の映画版が公開ってことで、観に行こうかどうしようか迷ってるうちに地元では公開終了。そしたらなんと全米公開が決定とかで、インターナショナル版とやらの予告編も上がってますが、米国って今普通に映画館で映画が観れるんだっけ? しかも外国映画を? 製作者側が配信に切り換えようとして映画館側と対立してるなんて報道もあったから、ひょっとしたら掛ける映画が足りず、それで外国映画でも掛けることになったのかな?
ドラマ版のほうは確か観た記憶があるんだけど、過去ログ見ても感想を書いてないですね。一部しか観なかったのかな? どうも記憶が曖昧です。大日本帝国の原爆開発計画という珍しい題材を扱った意欲作で、架空人物による架空物語ではありますが、主演の柳楽優弥、有村架純、三浦春馬の3人も好演だった記憶があります。
>観てない歴史映像作品 朝鮮・韓国史編①
今回は朝鮮・韓国史編。テレビドラマはあまりにも多すぎるのでパスして映画のみを紹介しますが、それでも多いんで2回に分けます。今回は前近代史まで。ただ、ほとんどが李氏朝鮮以後を舞台としたものばかりで高句麗・百済・新羅・高麗などの映画はほとんどありません。
『安市城 グレート・バトル』……2018年の韓国映画。唐の大宗李世民による高句麗侵攻を安市城で撃退したヤン・マンチュン(楊萬春)を主人公としたスペクタクル史劇。予告編を観ると大予算でド迫力の合戦映画で、弓矢の使い方がちょっと『神弓』を思わせます。
『霜花店(サンファンジョム) 運命、その愛』……2008年の韓国映画。高麗末期を舞台に、同性愛者の国王(恭愍王)、彼が寵愛する近衛部隊長、元から降嫁されたモンゴル人王妃(魯国公主)の三角関係愛憎劇を、大胆な性描写(R18指定)を交えて描いた宮廷心理劇とのこと。恭愍王が名門子弟を集めた親衛隊を編成したという史実をヒントにしたフィクションですが、韓国では大ヒットしたそうです。
『純粋の時代』……2015年の韓国映画。李氏朝鮮の第一次王子の乱をもとに、父・イ・ソンゲ(李成桂)に王世子に冊封されず不満を抱くイ・バンウォン(李芳遠。後の3代国王太宗)、その監視役を命じられた将軍、その放蕩息子、その三者と関係を結ぶが実は胸に復讐を秘めた妓生の四角関係を描いているとのこと。やはりR18指定です。
『私は王である!』……2012年の韓国映画。4代国王世宗が若き日は気弱な王子だったという説と、記録が残されていない即位までの空白の3ヶ月に着想を得て作られたコメディ時代劇で、いわゆる「王子と乞食」パターンの物語みたい。
『王と道化師たち』……2019年の韓国映画。甥を殺して7代国王となった世祖はそのため民の信望を得られず、領議政ハン・ミョンフェ(韓明澮)は“世祖は天意によって選ばれた王である”と民衆に知らしめようと、噂を操るという道化師たちを利用することにする。「世祖実録」に記された奇怪な事件の陰には噂を操る道化師たちがいたという設定のコメディ時代劇。
『王様の事件手帖』……2017年の韓国映画。1468年を舞台に、どんな事件も自分が解決しないと気がすまない8代国王睿宗が、新人史官とコンビを組んで謎の怪奇事件に挑むアドベンチャー・ミステリー映画。もちろん全編フィクション。
『於宇同(オウドン)』……1985年の韓国映画。『哀恋妃』の邦題でビデオ&LD化されましたがDVD化はされていません。9代国王成宗時代の妓生・於宇同の生涯を描いた官能時代劇で、監督は名匠イ・チャンホ。主演はイ・ボミで、名優アン・ソンギも出演しています。
『於于同(オウドン) 朝鮮宮廷スキャンダル』……2014年の韓国映画。これまた於于同(於宇同)の生涯を描いたエロティック・サスペンス時代劇ですが、於于同の生涯にはわからない部分も多いためか物語は前記映画と結構異なるようです。これまたR18指定。
『背徳の王宮』……2015年の韓国映画。10代国王燕山君が国中の美女を王宮に集めた史実をもとに、重臣イム・スンジェ(任崇載)と寵妃チャン・ノクス(張緑水)がそれぞれ見込んだ美女を送り込み、彼女たちが王の寵愛を得ようとする愛憎劇とその裏でうごめく権力闘争を描いた官能時代劇。またもR18指定だけど、こういうの多いなあ。でも、この映画はバイオレンス・シーンもあるらしいんでそっちも理由かも。
『ファン・ジニ 映画版』……2007年の韓国映画。11代国王中宗の時代の有名な妓生ファン・ジニ(黄真伊)の生涯を描いた映画で、主演はソン・ヘギョ。同時期にハ・ジウォン主演のテレビドラマ版『ファン・ジニ』もあったんですが、そっちとは無関係みたい。
『代立軍 ウォリアーズ・オブ・ドーン』……2017年の韓国映画。豊臣秀吉の朝鮮侵攻で明に逃れた14代国王宣祖から後事を押し付けられた息子の光海君が、生活のために他人の軍役を代わりに担う「代立軍」と呼ばれる農民たちと共に戦うというアクション史劇。ぬくぬくと育てられたあまちゃんの光海君が、代立兵との出会いで成長していくという感じのストーリーみたい。
『王になった男』(テレビドラマ版)……2019年の韓国の連続テレビドラマ。同名の映画をドラマ化した作品で、今回唯一紹介するテレビドラマ。
『天命の城』……2017年の韓国映画。16代国王仁祖の時代に親明反清政策をとったことから清の侵入を受けて降伏した丙子の役が舞台。南漢山城に籠城した絶望的な47日間が描かれており、和睦派のチェ・ミョンギル(崔鳴吉)をイ・ビョンホンが、抗戦派のキム・サンホン(金尚憲)をキム・ユンソクがそれぞれ演じています。確かこれは映画館で予告編だけ観たんだけど、とにかく重くて暗くてつらそうな映画だったんでパスした記憶。
『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』……2016年の韓国映画。伝説上の詐欺師キム・ソンダル(金先達)を主人公とした痛快娯楽時代劇といった感じで、17代孝宗の時代が舞台として設定されているようです。金先達はあくまで説話上の人物で実在はしていないようですね。
『逆謀 反乱の時代』……2017年の韓国映画。21代国王英祖が即位してから4年後、反英祖派の重臣イ・インジャ(李麟佐)が反乱を起こすも、敗れて護送されることに。捕らわれたイ・インジャ奪回を図る反乱軍残党たちと、それを阻止しようとする凄腕武官の壮絶な戦いを描いたアクション時代劇とのこと。
『尚衣院 サンイウォン』……2014年の韓国映画。英祖の時代、朝鮮王室の衣装を専門とする部署「尚衣院(サンイウォン)」で新旧の仕立師が美をかけて繰り広げる対決を、王(英祖)に寵愛されない美しい王妃(貞聖王后)を交えて描いていくフィクション時代劇。主演の尚衣院を取り仕切る仕立師役は名優ハン・ソッキュ。
『王の運命(さだめ) 歴史を変えた八日間』……2015年の韓国映画。英祖が息子で王世子の思悼世子を廃するとともに自決を命じ、米櫃の中に閉じこめ飢死させた「壬午士禍」を描いた映画で、英祖役が名優ソン・ガンホ、思悼世子役がユ・アイン。
『風と共に去りぬ!?』……2012年の韓国映画。英祖時代の最晩年、まもなく孫のイ・サン(李[示示]。後の22代国王正祖)が王位を継ごうという時代。悪徳役人の陰謀で陥れられた若者のイ・ドンム(李徳ぼう)が、ペク・トンス(白東脩)らアウトローな仲間たちを集めて復讐計画を決行する痛快娯楽時代劇。李徳ぼう、白東脩は実在の人物ですが、映画は全編フィクションのようです。
『王の涙 イ・サンの決断』……2014年の韓国映画。1777年に起こった正祖暗殺未遂事件「丁酉逆変」を、史実とフィクションを交えて、事件に関わった様々な人々の群像劇として描いているとのこと。主演はヒョンビン。
『美人図』……2008年の韓国映画。正祖時代の謎多き画家シン・ユンボク(申潤福)を男装した女性だったという設定にして、同じく三大画家に数えられるキム・ホンド(金弘道)、架空人物の鏡職人との三角関係を描いたラブロマンス史劇。R15指定。同じ年のテレビドラマ『風の絵師』でもなぜか申潤福は男装の女性に設定されているらしい。
『王の預言書』……2018年の韓国映画。パンソリを経て小説化された李氏朝鮮後期の作者不詳の古典ハングル小説『興夫伝(フンブデン)』をモチーフに、24代国王憲宗の時代に設定して作られた娯楽映画。作者が身の回りの人物をモデルとして創作したところ、それがきっかけで王室を揺るがす陰謀に巻き込まれていくという物語。
『風水師 王の運命を決めた男』……2018年の韓国映画。憲宗の時代に重臣の陰謀に巻き込まれ妻子を殺された主人公の風水師が、同じく重臣に恨みを持つ興宣君(大院君)とともに復讐を計画するが、やがてはさらに巨大な陰謀を知ることになるという、史実とフィクションを交えた映画のようです。
#11114
バラージ 2021/08/12 21:38
五輪映画
オリンピックの男子マラソン、棄権者が30人と聞いて大河ドラマ『いだてん』を思い出しちゃったりして。女子1500mで6位になった田中希実選手が女子中距離では人見絹枝以来の入賞というのも『いだてん』を連想しちゃいました。
>そういや観てたと思い出した歴史関連というか五輪関連映画
『栄光と狂気』
1996年の日本・アメリカ・カナダ合作映画。公開時に映画館で観ました。ビデオ化はされましたがDVD化はされていません。1980年、ソ連のアフガニスタン侵攻を理由に米国はモスクワ五輪をボイコット。オリンピック出場を断念せざるを得なかったボートの米国代表チーム主将が、全盛期を過ぎていたにも関わらず凄まじい執念で4年後のロサンゼルス五輪を目指す姿を描いたドラマ映画。原作はデイヴィッド・ハルバースタムのノンフィクション『栄光と狂気。 オリンピックに憑かれた男たち』。奥山和由がエグゼクティヴ・プロデューサーの“Team Okuyama”作品で、監督は原田眞人。出演俳優は当然ながらほぼ全員が米国&カナダの俳優ですが、1人だけ当時の奥山作品常連だった羽田美智子がちょい役で出演しています(正直ちょっと浮いてた)。まあまあ面白かったですね。マイナーなボート競技の様子や、オリンピックに懸けるスポーツ選手たちの熱情がよく描かれてました。
>オリンピック映画
ついでにその他のオリンピック関連実話映画についてもつらつらと。歴史映像名画座には『東京オリンピック』と『ミュンヘン』が掲載されてますが、他にも結構あるんですよね。僕がこれまでに紹介した映画では、『炎のランナー』(1924年パリ夏季五輪)、『栄光のランナー 1936ベルリン』(1936年ベルリン夏季五輪)、『ミルカ』(1960年ローマ夏季五輪)、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(1992年アルベールビル冬季五輪、1994年リレハンメル冬季五輪)、『ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち』(未見。1998年長野冬季五輪)がオリンピック関連映画です。
他にも、公式記録映画はたくさんあるのでとりあえず措いといて、劇映画のみをご紹介。僕は全部未見です。
『不屈の男 アンブロークン』……2014年の米国映画。1936年ベルリン夏季五輪で米国代表として5000mに出場したルイス・ザンペリーニの伝記映画。ストーリーの中心は、その後に太平洋戦争で日本軍の捕虜となった収容所での虐待の日々のほうで、監督はアンジェリーナ・ジョリー。
『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』……2006年のハンガリー映画。1956年のハンガリー動乱と同年のメルボルン夏季五輪の水球におけるハンガリー対ソ連戦での“メルボルンの流血戦”を題材とした映画とのこと。ただし登場人物は全て架空。
『ミラクル』……2004年の米国映画。1980年レークプラシッド冬季五輪で米国のアイスホッケー代表が金メダルを獲得するまでを描いてるそうです。
『クール・ランニング』……1993年の米国映画。ジャマイカのボブスレー4人乗りチームが、1988年カルガリー冬季五輪に初出場した実話を基にしたコメディ映画。ただしフィクション部分も多いらしく、登場人物は全て架空。
『リチャード・ジュエル』……2019年の米国映画。1996年アトランタ夏季五輪で爆発物を発見して多くの人命を救い、当初は英雄として持ち上げられたにも関わらず、一転してFBIやマスコミから容疑者とされる冤罪を受けた警備員リチャード・ジュエルの映画化。監督はクリント・イーストウッド。
『国家代表!?』……2009年の韓国映画。1998年長野冬季五輪のスキージャンプに出場した韓国代表チームの実話を基にしたコメディ映画。
『私たちの生涯最高の瞬間』……2008年の韓国映画。2004年アテネ夏季五輪の女子ハンドボールで韓国チームが銀メダルを獲得するまでを描いてるとのこと。登場人物は実在の人物をモデルにはしていますが、やはり架空。
>観てない歴史映像作品 鎌倉~室町時代編の追記
『アンゴルモア 元寇合戦記』……2018年のテレビアニメ。たまたまレンタル店でちらっと見かけて、あ~、そういや昔ここの掲示板でもちょっと話題が出てたような、と思い出しました。原作マンガはいまだ連載中とのことですが、アニメは全12話とのことでどうも打ち切りくさい。
>最近の未見歴史映画
『KCIA 南山の部長たち』……今年日本公開された2020年の韓国映画。もうDVD化されてます。朴正煕大統領暗殺を題材とした映画で、暗殺した金載圭が主人公。事実をもとにしてはいるものの登場人物の名前は実在の人物とは変えられており、フィクションの体裁になっているとのこと。主演はイ・ビョンホン。
#11112
バラージ 2021/08/06 22:34
おお! 1つ前の投稿、件数がオール1だ!(笑)↓
オリンピック、なんだかんだで始まったら盛り上がっちゃいますね。僕も連日楽しんじゃっております。
>南北朝
『中先代の乱』で鈴木由美さんと聞いて、あれ?と思ったんですが、おそらく以前書いた『征夷大将軍研究の最前線』(日本史史料研究会・監修、関口崇史・編、洋泉社歴史新書y)の執筆者のお一人ですね。その時にも書いたんですが(#11047)、なかなか説得力のある論考を書いておられました。
>三国志ボードゲーム
エポック社の『三国志演義』は友だちが持ってたんですよね。いやあ、遊びまくりました。ゲームとして非常によく出来てましたね。確か『旌旗蔽空』のデザイナーの批判というかツッコミを受けて、エキスパンションキットで追加ルールやルール訂正がされてた記憶。他の能力値と違って「統治」は1でも非常に役立つというルールだった記憶もありますが、これもルール改定によるものだったかな?
自分が持ってたタクテクス誌付録ゲーム『旌旗蔽空』もこれまた友だちと遊びまくったんですが、こちらも(史実寄りとしての)能力値が非常によく考えられてました。ただ、今になってみると、どちらかというと個々の人物の能力値よりもゲームバランスとか全体的な歴史展開のシミュレートのほうに重きを置いていたと思われ、一部の人物の能力値をあえて低く設定するなど曹操陣営が強くなりすぎないように配慮されてましたね。当時はそこまで三国志に細かくくわしくはなかったんで気づかなかったけど。リライトされたホビージャパンの『英雄三国志』ではゲーム規模がややスケールアップしたためか、能力値が適正なものに修正されてました。
鄂煥については、『三国志演義』と『旌旗蔽空』どちらかだけだったらそこまで気にならなかったと思うんですが、両方そろって別々の理由で「?」となったんで妙に記憶に残っております。
>観てない歴史映像作品 中国近代史編
今回は中国近現代史編です。西太后映画がちょっと多め。なお、中国返還前の香港を舞台にした映画は東アジア史その他に回しました。以前に「観た映画」の中国近現代史で紹介した『メイド・イン・ホンコン』『チャイニーズ・ボックス』も東アジア史その他で紹介するべきだったかな。
『ブラッド・ブラザース 刺馬』(原題:刺馬)……1973年の香港映画。清末四大奇案の1つである馬新貽殺害事件が題材のアクション時代劇で、監督はチャン・チェ(チャン・ツェー、張徹)、主演の張文祥(馬新貽を殺した人)役がデビッド・チャン、共演に馬新貽役のティ・ロン、張文祥の兄貴分(架空人物)役のチェン・カンタイというお馴染みの張徹組の面々。“長髪賊”という呼称で太平天国軍もちょこっと出てくるようです。ストーリー自体は全くのフィクションですが、香港人の心を惹き付けるストーリーなのか、この映画の助監督だったジョン・ウーは後にベトナム戦争を背景とした『ワイルド・ブリット』(1990年。未見)としてリメイクし、さらにそれを1930年代の上海に舞台を置き換えてリメイクされたのが『ブラッド・ブラザーズ 天堂口』(2007年。面白くなかった)。歴史映像名画座に掲載されてる『ウォーロード 男たちの誓い』もこの映画のリメイクですが、登場人物は全て架空の名前に変え、主人公もオリジナルの張文祥に相当する人物から、敵役だった馬新貽に相当する人物に変えられています。
『西太后 第一部』(原題:火焼圓明園)、『西太后 第二部』(原題:垂簾聴政)、『続・西太后』(原題:一代妖后 または 西太后)……『第一部』『第二部』は1984年の中国・香港合作映画。二部で208分あった大作を129分に編集して1本にまとめたバージョンが日本では公開され、ビデオ化もされましたが、DVDはノーカット完全版で発売されました。『西太后(完全版)DVD-BOX』(『続~』『火龍』を含めた4本セット)での発売で、バラ売りはないようです(レンタルはバラでされてる)。『第一部』は西太后が咸豊帝の後宮に入ったところから、アロー戦争で円明園が焼き払われるまで。『第二部』は咸豊帝の死後、西太后が息子の同治帝を即位させて東太后と共同で垂簾聴政を始め、反対勢力をことごとく粛清して権力を握る辛酉政変まで。監督は香港のリー・ハンシャン、主演はリウ・シャオチン(劉暁慶)、咸豊帝役はこれがデビュー作のレオン・カーフェイ。『続~』は1989年の中国・香港合作映画で、監督・主演も同じ。太平天国が鎮圧された頃から、同治帝の死後、光緒帝を即位させるところまで。同治帝役はチェン・ダオミン(陳道明)。デビューしたばかりのコン・リーも脇役で出演しています。いずれも公開時はグロいシーンが話題になったようですが、それは史実ではなく俗説に基づいたもので、呂后や武則天のエピソードも交ぜられてるみたい。
『真説 西太后』(原題:両宮皇太后)……1987年の中国映画。咸豊帝が死んで西太后の息子の同治帝が即位し、東太后と共同で垂簾聴政を始めるあたりから、同治帝が死ぬと光緒帝を即位させるあたりまでの話とのこと。
『ラストエンプレス 西太后』(原題:慈禧秘密生活)……1994年の香港映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。当時の香港で流行りだったⅢ級映画(18禁映画)、要するにソフトポルノなんですが、一応史実というか俗説もちゃんと押さえていて、咸豊帝の後宮に入るところから辛酉政変で反対勢力をことごとく粛清して権力を握るまでを描いているとのこと。監督はアンドリュー・ラウ、主演はチンミー・ヤウ、咸豊帝の弟の恭親王奕訢役がレオン・カーフェイ。
『清朝最後の宦官 李蓮英(リー・リェンイン)』(または『李蓮英(リー・リェンイン) 清朝最後の宦官』)(原題:大太監李蓮英)……1990年の中国映画。『最後の宦官 李蓮英と西太后』の邦題でビデオ化もされてますがDVD化はされていません。晩年の西太后に仕えた宦官の李蓮英を主人公とした映画で、同治帝死後に光緒帝が即位したあたりから、西太后の死後李蓮英が宮中を退き辛亥革命直前に死ぬまでを描いているとのこと。監督はティエン・チュアンチュアン(田壮壮)、主演はチアン・ウェン(姜文)、西太后役はまたもリウ・シャオチン。エンタメ史劇映画ではなく、“宦官という人間”を描いた人間ドラマとしての側面が強い映画になっているとのこと。
『悲劇の皇后 ラストエンプレス』(原題:末代皇后)……1985年の中国・香港合作映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。清朝最後の皇帝にして満州国皇帝にもなった溥儀の皇后婉容が主人公。1922年の2人の婚礼から、2人目の第二夫人譚玉齢の葬儀の最中に3人目の第二夫人李玉琴が来る1942年までが描かれてるとのこと。主演はパン・フォン(パン・ホン、潘虹)、溥儀役はこれがデビュー作のチアン・ウェン。
『流転の王妃』……1960年の日本映画。溥儀の弟・溥傑の妻となった嵯峨浩(愛新覚羅浩)の自伝の映画化ですが、登場する実在人物は全て架空の名前に変えられているようです。監督は田中絹代、主演は京マチ子。
『燃える上海』……1954年の日本映画。DVDタイトルは『燃える上海 男装の麗人・川島芳子』。第一次上海事変を舞台に川島芳子の活躍を描いた映画とのことで、原作は村松梢風の『男装の麗人』。
『秋瑾 競雄女侠』(原題:競雄女侠・秋瑾)……2011年の香港映画。清末の女性革命家で、『1911』の冒頭でも処刑される場面が描かれていた秋瑾の生涯を描いた映画です。ストーリーは基本的に史実に忠実なんだけど、アクションシーンがやたら多く、しかもそれが過剰にカンフー映画調という娯楽映画要素の強い映画みたい。秋瑾を描いた映画には、シェ・チン(謝晋)監督による1983年の中国映画『炎の女・秋瑾』(原題:秋瑾)というのもありますが、ソフト化はされていないようです。
『チェリー・ブラッサム』(原題:郁達夫傳奇)……1988年の香港映画。戦前戦中の中国の作家・郁達夫が主人公で、監督はエディ・フォン。チョウ・ユンファが主演名義ですが、ユンファ演じる中年期の郁達夫が1913年から22年までの日本留学中の青春の日々を回想するという構成のようで、実質的な主演は青年期を演じた霍達華(フォッ・ダッワー、テレンス・フォック)。舞台の大半は日本のようですが、ユンファ演じる晩年の郁達夫が潜伏先のスマトラ島で死ぬところも描かれているようです。
『沈黙の鉄橋』(原題:七七事変)……1995年の中国映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。盧溝橋事件を題材とした史劇的な戦争映画のようです。
『黒い太陽 南京』(原題:黒太陽:南京大屠殺)……1995年の香港映画。南京大虐殺を題材とした映画で、監督は『黒い太陽七三一』1作目のムー・トンフェイ。
『エア・ストライク』(原題:大轟炸)……2018年の中国映画。重慶爆撃が題材なんですが、シリアスな戦争映画というより娯楽的な航空アクション映画のようです。出演していたファン・ビンビンの脱税事件の影響で本国では公開中止となり、121分から96分に短縮した英語吹替バージョンが米国でソフト化&配信され、日本公開&DVD版もそのバージョンとのこと。パッケージにはブルース・ウィリスが主演みたいに1番でかく載ってますが、主演はリウ・イエで、ウィリスは助演。エイドリアン・ブロディもチョイ役のようで、ファン・ビンビンの出番ももちろんほぼカットらしい。
『乳泉村の子』(原題:清涼寺鐘聲)……1991年の中国・香港合作映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。中国残留孤児が題材で、監督はシェ・チン。日本からは栗原小巻が出演しています。
『クンドゥン』(原題:Kundun)……1997年の米国映画。チベットのダライ・ラマ14世の若き日を描いた伝記映画で、1937年にダライ・ラマ13世の生まれ変わりとして発見されるところから、1959年にインドに亡命するまでが描かれているとのこと。監督はマーティン・スコセッシ。
『無言歌』(原題:夾辺溝)……2010年の香港・フランス・ベルギー合作映画。反右派闘争下の1960年、右派のレッテルを貼られた人々が収容されたゴビ砂漠の収容所が舞台で、中国のドキュメンタリー映画監督ワン・ビン(王兵)が撮った初にして今のところ唯一の劇映画とのこと。
『子供たちの王様』(原題:孩子王)……1987年の中国映画。文化大革命で地方の山村に下放され、小さな学校の教師となった若者と、生徒の子供たちの交流を描いた映画。チェン・カイコー監督初期の瑞々しい詩的な1本とのこと。
『犬と女と刑(シン)老人』(原題:老人与狗)……1993年の中国映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。文化大革命を題材とした映画で、1972年の辺境の村が舞台。監督はシェ・チン。
『シュウシュウの季節』(原題:Xiu Xiu: The Sent Down Girl)……1998年の米国映画。文革末期の1975年、辺境に下放された少女のたどる悲劇的結末を描いた映画で、米国で活動する中国女優ジョアン・チェンの初監督作品。原作は米国在住の中国人作家ゲリン・ヤン(厳歌苓)の短編小説『天浴』。中国では上映禁止になったとのこと。
『天安門』(原題:The Gate of Heavenly Peace)……1995年の米国のドキュメンタリー映画。天安門事件に参加した学生運動の指導的学生、労働者、教師、知識人などのインタビューと当時撮影されたビデオをもとに3時間を超える記録としてまとめられた映画とのこと。天安門事件のドキュメンタリー映画には、香港・台湾の映画人にインタビューした『完全版 SUNLESS DAYS ある香港映画人の"天安門"』(原題:没有太陽的日子)という1990年の香港・日本合作映画もあります。監督はシュウ・ケイで、NHKスペシャルで放映されたものに30分の追加シーンを加えた完全版だそうですが、そちらはソフト化されていないようです。
#11111
徹夜城(南北朝列伝にいい加減手を入れないとと思う管理人) 2021/08/01 22:58
中公新書「中先代の乱」
先日出版された、鈴木由美著「中先代の乱」(中公新書)を一通り読み終えました。「逃げ上手」とのタイミングが気になるところですが、企画は昨年7月に出ていたそうで、単なる偶然なんでしょう。ただ、この本の著者さんがあとがきで自分が北条時行に関心を抱いたきっかけを湯口聖子さんの漫画「夢語りシリーズと書いておりまして、漫画との縁はありそうです。
それにしても「中先代の乱ん」というテーマで一冊駆けちゃうのか、というのが最初に思ったことでしたが、「観応の擾乱」もありましたからね。ここんとこ南北朝ネタ一般向け書籍が続いてるのはマニア的にうれしい。
もちろん本書は「中先代の乱」そのものだけを扱うわけではなく(二十日先代って言い方もあるくらいの短期反乱ですし)、鎌倉幕府の成立から説き起こし、鎌倉幕府の滅亡過程、建武政権下での数々の反乱や陰謀、中先代の乱後の時行の南朝方での奮闘…となかなか豊富な内容。実際僕も中先代の乱以外の部分でほうほう、と楽しんでました。最新の学会の研究動向が知れるのもいいです。
>バラージさん
うわぁ、エポック社の「三国志演義」!うちにもありまして、友人で集まってよく遊んでました!ボードゲームならではのワイワイと楽しめる、しかもかなり三国志マニア向けな作りな傑作だったと思います。
武将・文官たちのパラメータが1ケタだけで表現されてるんだけど、これがなかなか考えられてて…ただ諸葛亮とか徐庶とか登用に成功しちゃうとそれだけで圧倒的な強さになっうというところはありました。
鄂煥については、僕もこのゲームで妙に印象に残ってました。三国志マニアなわりにこの人についてはほとんど調べませんでしたが…
#11110
バラージ 2021/07/31 01:23
昔の三国志ボードシミュレーションゲームにおける鄂煥の謎
昔々、僕はボードシミュレーションゲームというものを趣味としていた、という話はかなり前にこちらの板でも書いたんですが、その中の三国志を題材としたゲームについて後々不思議に感じたことがあります。
それは鄂煥という人物(武将)の取り扱いについて。まぁ、よほど三国志にくわしい人でも「そいつ誰だ?」となることでしょうが、鄂煥は『三国志演義』にのみ登場する架空の人物で、諸葛亮の南征(南蛮討伐)の時に高定(こちらは実在)の家臣として登場します。僕もボードシミュレーションゲームをしてた高校生の頃はそこまで三国志にくわしかったわけでもなく、『演義』も吉川英治も横山光輝も読んでなかったため、どんな人物か全く知らなかったんですが、エポック社のボードシミュレーションゲーム『三国志演義』において「武勇」の能力値6という、呂布や関羽・張飛らと並ぶ最高値で登場しており、「この人何者?」となったのでした。
さらにはボードシミュレーションゲーム誌『タクテクス』の付録ゲームコンテストで優勝した『旌旗蔽空』にも鄂煥は登場。能力値的には最低ランクの武将ですが、こちらは史実寄りのゲームで正史『三国志』などの史書に出てくる実在の人物のみが登場してたため、てっきり鄂煥も実在の人物だと思ってました。実際には登場武将で唯一の架空人物だったわけです。後に『旌旗蔽空』は別のプロのデザイナーによってリライト&アップデートされてボードシミュレーションゲーム『英雄三国志』として一般発売されたんですが、そちらにも引き続き鄂煥は登場してましたね。
ここで疑問点が2つ。
原典ではただの雑魚武将に過ぎない鄂煥が、なぜゲーム『三国志演義』においては呂布や関羽に並ぶ武勇最高値になっていたのか? 僕が鄂煥の人物像を知ったのは確か大学時代に『三国志人物事典』(渡辺精一、講談社)を読んでだったんですが、鄂煥がただの雑魚武将と知ってなんとも不思議でした。
第2に、史実寄りのゲームで実在人物しか出てこない『旌旗蔽空』に、なぜ1人だけ架空人物の鄂煥が登場したのか? こちらも大学時代に図書館で正史『三国志』の完訳を読んで、鄂煥が正史に出てこない人物だと知りましたが、もしかしたら同じ正史でも『後漢書』や『晋書』、あるいは野史の『華陽国志』などに出てくるのかもしれないと思って、架空の人物と確定するまでやや時間がかかりました。しかし架空人物とわかってみれば、なぜ鄂煥だけ?とこれまた非常に不思議。明らかに史実重視のゲームに1人だけ架空人物が出てくるのも不思議ですが、なぜよりによって超マイナーな鄂煥なの?というのがさらに謎。
しかし今となってはそれぞれのデザイナーに確かめる術もなく、この謎は歴史の闇に葬り去られるのでした。
ちなみに検索してみると僕と全く同じ疑問を抱いた方を発見。俺だけじゃなかったんだ、とちょっとうれしくなったりなんかしちゃったりして(笑)。
>観てない歴史映像作品 中国前近代史編の書き忘れ
『唐朝エロティック・ストーリー』(原題:唐朝豪放女)……1984年の香港映画。晩唐の女性詩人にして女道士だった魚幼微(魚玄機)が過激なまでに愛に生きる姿を描いた、80年代Ⅲ級映画(18禁映画)の名作とのこと。ショー・ブラザーズ末期の歴史大作で、監督は当時香港ニューウェーブの1人だったエディ・フォン、主演はパット・ハー。
>名画座修正情報
『火龍』……DVD発売会社はアット・エンタテインメントです。『西太后(完全版)DVD-BOX』での発売(『西太后 第一部』『西太后 第二部』『続・西太后』との4本セット)で、バラ売りはないようです(レンタルはバラでされています)。
#11109
バラージ 2021/07/22 15:23
ようやく世界史編に入ります
え~、実は『ハルコロ』はまだ読んでおりません(笑)。雑誌連載の時にちらっと見たかな?というくらいでして、単行本も確か買ってなかったような。石坂啓さんのマンガだと、スピリッツ連載時の『夢みるトマト』『マネームーン』を時々読んだのと、あとは『安穏族』ってのを昔買ったかな? 今回の岩波文庫版『ハルコロ』も、他の本を読むの優先で後回しでいいやと積ん読状態でして、読んだのは巻末の解説だけ。ものすごく大まかなあらすじは、そこに載っていたものです。
現在読んでるのは、佐藤正午の『鳩の撃退法』。9月の映画公開までに読み終えねば。8月公開の『ドライブ・マイ・カー』は、村上春樹の原作のほうは以前読んだけど、どんな話だったかもうすっかり忘れております。でもあえて読み返さず、まっさらな気持ちで映画を観てみようかなと。
>観てない歴史映像作品 中国前近代史編
ようやく世界史編に突入。先史時代は思い浮かぶものがないんで省略し、中国前近代史編からです。テレビドラマも以前あらかた紹介しちゃったので省略して映画のみ紹介。それでも結構多いんだよな。
『大刺客』(原題:大刺客)……1967年の香港映画。戦国時代の刺客・聶政を主人公としたアクション時代劇で、監督はチャン・チェ(張徹)、主演はジミー・ウォング。
『赤壁の戦い -英傑 曹操-』(原題:一代梟雄曹操)……1999年(1996年?)の台湾映画。『三国志 曹操伝』の邦題でビデオスルーされ、『レッドクリフ』公開による三国志ブームの時に邦題を変えてDVD化されました。観た人の感想を探すと、呂布の処刑から曹操の死までを描いてるそうですが、ダイジェスト的な映画で画質がものすごく悪いとのこと。主演&監督のクー・ジュンション(ホー・チョンホン、柯俊雄)は台湾映画界の大立者で、他にウー・マも監督の1人に名を連ね、リュー・チャーフィー(周瑜役)やトニー・リュウ(孔明役)など懐かしき香港映画の面々が出演しているようです。
『赤壁の戦い -軍神 孔明-』(原題:諸葛孔明)……1999年(1996年?)の台湾映画。『真・三国志 天地戦乱』の邦題でビデオスルーされ、やはり『レッドクリフ』が公開された頃に邦題を変えてDVD化されました。上記『-英傑 曹操-』とスタッフ・キャストがほぼ共通しており、同時に撮影した映画を編集で2つに分けたもののようですが、なんでそんな作り方になったのかは不明。ストーリーは赤壁の戦いから孔明の晩年までとのこと。
『蒼天航路』……2009年のテレビアニメ。言うまでもなく『モーニング』で連載されていた曹操が主人公の大ヒット漫画のアニメ化です。しかし結局、官渡の戦いの途中で思いっきり打ち切りという終わり方になっちゃったらしい。
『新解釈・三國志』……2020年の日本映画。福田雄一が監督で、主人公の劉備役が大泉洋。赤壁の戦いまでを一応描いてるようです。福田監督の作風はコメディというよりパロディ、ギャグ、ショートコントの繰り返しといった感じで、深夜の30分ドラマでは面白いんだけど、映画のような大掛かりな作品で2時間観るとちょっとしんどいかも(映画『女子ーズ』を観た時にそう思った。深夜ドラマ『勇者ヨシヒコ』の第1作はほんとに面白かったんだけど)。
『三国志 趙雲無双伝』(原題:趙雲伝之龍鳴長坂坡)……2020年の中国映画。趙雲が公孫サンのもとに身を置いていた呂布滅亡のころから長坂の戦いにいたるまでを描いているとのこと。史実なんて吹っ飛ばせ系若者向け娯楽アクション時代劇映画っぽいけど、最近こういうのばっかりだなあ。
『ムーラン』(原題:Mulan)……2020年の米国映画。いろいろと騒動になったディズニーの実写版映画です。日本ではコロナのためもあって劇場公開は見送られ、ディズニープラスでの配信のみとなりました。魔法などがバンバン出てくるファンタジー色の強いアクション時代劇で、主演のリウ・イーフェイを始め、コン・リー、ドニー・イェン、ジェット・リーとスターをそろえたにも関わらず、本場中国では勘違い中国と感じられたようで大コケ。予告編だけ観ましたが、全員英語をしゃべってる中国時代劇ってやっぱりなんかちょっと変ですよね。
『ムーラン 戦場の花』(原題:無双花木蘭)……2020年の中国映画。あからさまに上記ディズニー実写映画の便乗っぽい本家本元中国のアクション時代劇です。北魏が舞台で、定番の木蘭(ムーラン)話を一通りやってる感じですが、監督も俳優も全然知らん人たち。
『ムーラン 美しき英雄』(原題:木蘭之巾幗英豪)……2020年の中国映画。これまた本家本元中国の便乗アクション時代劇。上記映画とも無関係で、この辺すっかり中国映画も一昔前の香港映画みたくなっちゃったなあ。こちらは北魏を舞台とした定番話の後日譚で、再び柔然との戦いが巻き起こるといったお話。これまた監督も俳優も知らん人たちです。
『ムーラン 最後の戦い』(原題:花木蘭之大漠営救)……2020年の中国映画。またも出た中国の便乗アクション時代劇。やはり北魏を舞台とした定番話の後日譚で、上記映画とも無関係。北涼に嫁ぐ公主を奪った柔然との戦いらしいんですが、やっぱり監督も俳優も知らん人たち。
『英雄十三傑』(原題:十三太保)……1970年の香港映画。唐末の黄巣の乱を背景に、李克用の13人の養子(一部実子)たちの相克の悲劇を描いたチャン・チェ監督作。黄巣の乱は背景に過ぎず、李克用のライバル朱温(後の朱全忠)も出てくるものの主たる悪役ではありません。主人公は13番目の養子(十三太保)李存孝で主演はデビッド・チャン、共演にティ・ロンといういつものチャン・チェ組。なお役名は広東語発音のカタカナ表記になっているようです。
『少林寺秘棍房』(原題:五郎八卦棍)……1983年の香港映画。『楊家将演義』の前半部分を元ネタにしたカンフー映画で、監督はラウ・カーリョン。もともと楊六郎役のアレクサンダー・フー・シェンが主演だったんですが、撮影途中で交通事故死してしまったため、準主演だったリュー・チャーフィー演じる楊五郎を主人公に改変して完成までこぎ着けたんだとか。ちなみに少林寺は出てきません(笑・楊五郎が出家するのは五台山清涼寺)。リュー・チャーフィーの代表作が『少林寺三十六房』なんでDVD販売会社も適当に邦題を付けちゃったんでしょう。
『14アマゾネス 王女の剣』(原題:十四女英豪)……1972年の香港映画。『楊家将演義』の派生作品である京劇『楊門女将』を題材としたアクション時代劇で、『女ドラゴンと怒りの未亡人軍団』はそのリメイク。男たちの仇は女たちがとる!といった感じの作品のようです。そして『魁!男塾』に出てくる「人間橋」の元ネタも多分これ。
『水滸伝 杭州城決戦』(原題:蕩寇誌)……1973年の香港映画。チャン・チェ監督、ティ・ロン、デビッド・チャン主演の1972年版『水滸伝』の続編で、物語後半の方臘討伐戦が題材とのこと。
『水滸伝 男たちの挽歌』(原題:水滸傳之英雄本色)……1993年の香港映画。『水滸伝』の邦題でビデオスルーされ、後に邦題を変えてDVD化されました。主人公は林冲で、主演はレオン・カーフェイ。魯智深との出会いから梁山泊入りまでを描いたワイヤーワークばりばりのアクション映画のようです。林冲の奥さん役が当時人気絶頂だったジョイ・ウォンで、ビデオでは「水滸伝」というタイトルの上に「ジョイ・ウォン作品」と付いてて写真も1番でかでかと載ってたのに、DVD化された時には影も形も無くなってたのが諸行無常の響きあり。
『タイガーハンター 水滸外伝』(原題:伏虎武松)……2020年の中国映画。タイトル通り武松を主人公として景陽岡の虎退治のエピソードを映画化したアクション映画で、通りすがりの武松が、遼と戦う金に味方するという話らしい。CGの人食い虎と戦ったりするシーンもあるとのこと。またも監督・俳優ともに知らない人ばっかり。
『デブゴンの太閤記』(原題:臭頭小子)……1978年の台湾映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。『燃えよデブゴン 出世拳』の邦題でテレビ放送されたこともあるようです。主人公は後に明を建国する朱元璋なんですが、タイトルでわかる通りサモ・ハン・キンポー主演のカンフー映画で、当然ながら日本版ビデオでは主人公は終始“デブゴン”と呼ばれており、陳友諒、郭子興、馬皇后なども出てくるようですが、やはりそれぞれ“チェン”、“カク将軍”、“レイファン”という名前になっているようです。
『少林寺への道2』(原題:雍正大破十八銅人)……1976年の香港映画。DVD邦題は『少林寺への道 十八銅人の逆襲』。清の雍正帝が主人公なんだけど、これまたタイトル通りのカンフー映画。陰謀を巡らし即位したばかりの雍正帝が、お忍びに出た街で女に惚れたのをきっかけに少林寺で修行するという、ものすごいストーリーで、カンフー映画では悪役でおなじみの雍正帝だけに腹黒い主人公という変わり種らしい。ちなみに『少林寺への道』(原題:少林寺十八銅人)とは全く関係ないお話とのこと。
『カンフーエンペラー』(原題:功夫皇帝)……1980年の香港映画。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。これまた雍正帝が主人公のカンフー映画ですが、こちらでは珍しく善玉で、主演はティ・ロン。康熙帝の後継者争い「九王奪嫡」から、皇帝即位後も不平を持つ兄弟たちとの闘いを描いているとのこと。昔レンタル店で見かけたけど、普通にカンフーの帝王みたいな人が主人公だと思ってましたね。まさかほんとの皇帝が主人公とは思わなかった(笑)。
『背徳と貴婦人』(原題:Le portrait interdit/画框里的女人)……2017年のフランス・中国合作映画。監督はフランス人のシャルル・ド・モーで、主演は中国のファン・ビンビン。乾隆帝の2番目の皇后ウラナラ(ドラマ『如懿伝』の主人公と同じ人)と、宮廷画家でフランス人宣教師のジャン=ドニ・アティレの許されざる恋を描いた作品で、いかにもフランス映画といった作風のようです。
#11108
ろんた 2021/07/20 07:20
松井優征『逃げ上手の若君』(1)(ジャンプコミックス)
e-honで『ハルコロ』(1)(2)(本多勝一,石坂啓,萱野茂 岩波現代文庫)、『landreaall』(37)(おがきちか ZERO-SUM COMICS)、『拝む女』(高橋葉介 角川書店)などと一緒に購入。もちろん本屋で手に入らない訳じゃないけど、ついでということで。
さて『逃げ上手の若君』(1)は、鎌倉で兄の仇である小ボス・五大院宗繁を討ち取り、諏訪に腰を落ち着けるまで。そして中ボス・小笠原貞宗登場。弓の名手=目がいいということで、西川きよしみたいに(?)目玉が飛び出ている。監修・記事(「解説上手の若君」巻末収録)を本郷和人氏が担当。そうかぁ、『暗殺教室』の人かぁ。
それにしても北条時行とは凄いところに目をつけたもので、恥ずかしながら中先代の乱の人と気づくまでしばしかかった(汗)。ちなみに作中でも「彼の名は教科書に一度だけ登場するかもしれない/いずれにせよテストが終われば皆忘れる」とか書かれている。「十歳の時に貴方様は…天を揺るがす英雄となられまする」と諏訪頼重が"予言"しているので中先代の乱まではやるのでしょう。そして時行は、青野原の戦いに勝利した北畠顕家を伊勢路に向かわせ、顕家と新田義貞の敗死を招くという話もある(『日本の歴史9 南北朝の動乱』(佐藤進一 中公文庫))。ということで、二度も歴史のキーマンになっちゃってるんだなぁ。
ただ、どうも演出が一本調子で読みにくい。わたしが最近のジャンプ系少年漫画をあまり見ていないってのもあるかもしれないけど。キャラのバストショットや顔面アップのコマが多くて<緩急>じゃなくて<急急>な感じ? ああ、ここは見開きで表現した方がいいのになぁ、と勝手に思ったりしている。まあ、何度か読み返したら慣れましたけど。
笑ったのは北条高時の扱い。闘犬や田楽に夢中の愚物というのが定番だろうけど、もう完全な無能力者扱い。僧形なのは史実通りだろうけど、座っていても上体を真っ直ぐにできず目はうつろ、口からはヨダレが垂れ舌が出ている。例の集団自決も描かれるんだけど、よく腹が切れたな、というレベル。
諏訪頼重には予知能力があり(パーツの欠けたジグソーパズルな感じ?)、足利尊氏が異形の者という演出がされていて、最終的にダーク・ファンタジーっぽくなる気もしている。しかし頼重、中先代の乱の後のことは予知できないのかなぁ? ああ、名前が出て来るのは高師直だけだけど、足利の郎党が揃って悪党面なのも笑える。一人、端整な顔立ちだが無表情でシリアル・キラーっぽいのがいるんだけど、直義かな?
ということで二巻はなんと来月4日発売。
>本多勝一(作),石坂啓(画),萱野茂(監修)『ハルコロ』(1)(2)(岩波現代文庫)
バラージさんの書き込みで気がつき、持っているはずの希望コミックスがどこいったか分からなくなったんで購入。原作(『アイヌ民族』朝日新聞社)も持っているんだけど積ん読(汗)。
内容はバラージさんの紹介があるので省略して、早速感想。「期待される先住民族像」(?)じゃないところが良い。強欲だったり吝嗇だったり、勇敢な者もいれば卑怯な者もいる。総じて人間臭く描かれていて、盗賊団まで出てくる。よくありますよね、純朴とか平和とか自然と調和とか、縄文人や江戸町民に現代的な価値を付与して現代社会批判をしたつもりになってるの。そういうのが最底辺まで転落したのが江戸しぐさってヤツなんだろうなぁ。原作も読んでみなければ。
>「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵 出世階段」
これも忠臣蔵の変化球か? 中村勘九郎主演で12月にBS-P、BS4Kで放送されるドラマ。脚本、演出は「ライジング若冲」の源孝志。「No.5」とあるのは、仮名手本忠臣蔵の五段目のこと。門地のない仲蔵が、弁当幕と呼ばれていた五段目の山賊役(斧定九郎、斧九太夫=大野九郎兵衛の息子)を割り振られるが、まるっきり山賊だったのを白塗りの着流し姿に変更し、見どころの一つに変えるというお話。って、全部、落語の「中村仲蔵」に出て来た話だ。ちなみに中村仲蔵は「淀五郎」という噺にも登場。
しかし、NHKの番組紹介。見出しのサクセスストーリーってのはその通りだと思うけど、中の記事の「下克上」というのは違いやしないかなぁ。
#11107
バラージ 2021/07/17 11:24
いろいろ小ネタ
史点更新、ご苦労様です。ま、あまり無理はなさらずに。
>細川頼之
以前もちょっと触れましたが、今読んでる『室町の覇者 足利義満』(桃崎有一郎、ちくま新書)は、頼之についての記述が少なく、また評価も高くないという、義満を扱った研究書(といっても一般向けの本ですが)としては珍しい本となっています。同書では、尊氏や義詮の統制にさえ従わない有力大名が、自分たちの同輩でさらに足利一族の中でも門地の低い細川氏の頼之に従うはずがないとし、頼之を統率力・リーダーシップ不足、諸大名に伍する器ではないと評価しています。
僕もそこまで厳しくはないものの、名宰相とまでは到底言えないんじゃないかなあと思ってるんですよね。というのも管領としての頼之はあまり成果を上げることができていませんし、むしろ康暦の政変後に義満が幕府の実権を握ってからのほうが明らかに事態は好転しています。義満との交情など人格的な部分はともかく、政治的指導者としては名宰相というのは過大評価なんではないかなあ。
ちなみに『室町の覇者 足利義満』は途中まで読んだまま、他の本を読み始めて放り出したままになっちゃってます。いや、なんか気分的にね。なんかなんとなく他の本に目移りがしちゃいまして。歴史と全く関係ない小説を読んでおります。
>観てない歴史映像作品 明治~敗戦編の書き忘れ
『日本のシンドラー杉原千畝物語 六千人の命のビザ』……2005年の単発ドラマ。主演は反町隆史。DVD化されてたみたいですね。ちらっとしか観てないけど、映画『杉原千畝 スギハラチウネ』よりはマシな出来なんじゃないかなあ。
>忠臣蔵映画 書き忘れ
『47RONIN』……これを紹介するのを忘れてた(笑)。2013年の米国映画で、忠臣蔵をモチーフとしたファンタジー・アクション映画ですね。主人公はキアヌ・リーブス演じる架空人物。なんと続編がNetflix配信で計画されてるそうで、ちょっとびっくり。
忠臣蔵に関しては僕はもともと興味がなく、90年代後半に大河ドラマが『元禄繚乱』に決まった時も、「またかよ。毎年毎年どっかでやってて、もう飽き飽きだよ」と思っちゃったくらいでして。今は亡き父も僕と同じこと言ってたんで、今やお年寄りにも需要はないでしょう。一般的にも忠臣蔵は史劇というより時代劇で、時代劇人気の衰退とともに需要が無くなってきたのも当然と言えば当然なのかなと。
>まさかこんな映画も
『応天門の変』……今年初めに公開されたらしい映画で、歴史映像名画座に掲載されてる『正長の土一揆』の秋原北胤監督の最新作。またもかなり斜め上なストーリーのようです。でも正長の土一揆だの応天門の変だのがまともに映画化されるなんてこともないだろうしなあ。主役の源信役が柳沢慎吾で、敵役の伴義男役が和泉元彌。
>そして未見ドラマ
『鳳囚凰~陰謀と裏切りの後宮~』……南朝の宋を舞台に、暴政を布く皇帝・劉子業暗殺のために、劉子業の姉の劉楚玉に瓜二つの刺客・朱雀が送り込まれ……という中国のラブ史劇。主演はグァン・シャオトン。CS放送か配信のみだったのか、DVD化はされてないようです。
>最近録画で観た歴史映画
『三国志 周瑜と孫策』
最近いろいろとDVDスルーされてる中国の若者向けお手軽娯楽映画っぽい中の1本。原題は『江東戦神少年周瑜』。いくら三国志ファンで周瑜ファンとはいえ、わざわざレンタルして観るほどの映画じゃないよなあと思ってたら、WOWOWで放送されたんで録画して観てみました。
時代は反董卓連合軍が結成されて、孫堅が戦死した直後。なぜか周瑜は袁紹に仕えていて、ただ1人生き残った孫策から漢王朝の玉璽を取り戻せとの命令を受ける。その裏ではある陰謀がうごめいていた……みたいなストーリー。
んー、これはひどい。最初から歴史映画とか三国志映画みたいのは期待してなかったんですが、それ以前の問題で、単純に映画としての出来がダメすぎる。全体的な作風が完全に70年代香港の時代劇カンフー映画って感じで、明らかに低予算映画です。架空人物がやたら多く、設定やストーリーも大幅にオリジナルなのに、全体的に説明不足でよくわからないところが多い。三国志を知っててもわからないし、知らない人はなおさらわからないという困った映画で、脚本・演出・編集すべてがどうしようもないレベルです。役者も知らない人ばかりなのはともかくとして、女優陣も含め誰1人として華のある役者がいないってのもなあ。原題に「少年」とあるのに周瑜はなんだかおじさんっぽいし……。さらにはアクションもすっげえ古臭い。70年代香港の時代劇映画やカンフー映画みたいな殺陣で、まさか今時首筋にチョップして気絶させる描写にお目にかかるとは思いませんでしたよ。ワイヤーやCGを全然使ってないのも単に予算や技術がなかっただけなんじゃねえのかと。84分という短さだけが救いでしたが、それでも長く感じたなあ。
#11106
徹夜城(少しは更新エネルギーを出したい管理人) 2021/07/07 21:32
南北朝武将列伝のこと
どうも、管理人みずからまたもしばしお留守に。伝言板を読んではいるんですが、書き込む話題とタイミングを逸していたといいますか。一昨日に「史点」をやっとこさ更新しましたし(贋作サミットのせいですが)、ついでに近況を含めた話なぞ。
>南北朝武将列伝
南朝編・北朝編無事に発売されてますが、読むのは目の件もあったりしてあまり進んでなかったんですよね。いま北朝編を終わりまで来てるところです。
さて、北朝編では個人的にどうしても「細川清氏」「細川頼之」の項目に注目してしまいました。もちろん、当サイトの「室町太平記」の作者として…です(笑)。
なかでもその清氏と頼之が直接対決した一戦のくだり。人物草書の小川信著「細川頼之」では、『太平記』では頼之がかなり不利な状況にあり母親を人質にしてまで時間稼ぎしたりしたというのは信用できない、としていて頼之は終始優勢だったとしていました。それでも僕は「ムロタイ」では面白さ優先で頼之不利状況および母親人質も「事実」のように描いてみました。
今度の「南北朝武将列伝」北朝編の清氏の項目では、頼之不利状況は事実だったのでは、としてました。確かに淡路の従兄弟とか細川一族内でも清氏についた者がいますし、そもそも伊予の河野氏が頼之の支援をしなかったのは確かなんで。頼之もやはり一か八かの勝負をしたんじゃないかな、ということになるようです。それでも母親人質はないんじゃないか、と書かれてましたけどね。
『太平記』自体、頼之自身が内容に介入してるという説もありますが、それだけにこの一戦の記述が妙に詳しい(というか清氏関連は全体的に詳しい)のも頼之自身がそうさせたかも、と思うんですね。それが史実から離れる、という場合もあるわけですが、僕はむしろ当人だからこそのリアリティを出すことになったかも、と。
「南北朝武将列伝」では清氏の数々の武勇譚(というか負傷がやたら多い)をとりあげて、たたき上げ武人としてなかなか面白く紹介していて、僕もなんだかうれしくなったりして。清氏って今川了俊ともいろいろありますし、ホント面白いやつだと思います。
まぁ僕はどうも歴史人物では「自己破滅型キャラ」がお好みのようでして、南北朝だと細川清氏、後期倭寇世界だと徐海が好きって感じです。
>忠臣蔵関係
下の書き込みで忠臣蔵映像関係の話題がありましたが、思えば最近は忠臣蔵は映画もドラマも全然見なくなりました。時代劇評論家の春日さんも言ってましたが、もうプロデューサーが忠臣蔵の知識がなくて作れないという事情もあるようです。それと定番・様式化した忠臣蔵ものは僕の目でみても今日では観客が受け入れにくいかなぁ…と。
最近作られたものはみんな「変化球」で、「決算忠臣蔵」なんかはなかなか面白くみたんですけどね。「定番」な路線で作ったものではいつだったかの松平健主演のテレビドラマが最後じゃなかったかな?
#11105
バラージ 2021/07/03 19:46
ようやく日本史編終了
>観てない歴史映像作品 明治~現代編
観てない歴史映画&テレビドラマのネタ、明治~現代編です。このネタ、チャチャッと終わらせるつもりだったんですが、意外と作品が多くて……。
『天外者(てんがらもん)』……2020年の映画。五代友厚が主人公で、主演は三浦春馬。
『二百三高地 愛は死にますか』……1981年の連続ドラマ。映画のほうは観てないんですが、こちらのドラマは放送時にチラッと観た記憶あり。
『襤褸の旗』……1974年の映画。田中正造の生涯を描いた作品で、主演は三國連太郎。ビデオ化はされてますがDVD化はされていません。
『あゝ野麦峠』……1979年の映画。女工哀史を扱った同名ノンフィクションの映画化で、監督は山本薩夫、主演は大竹しのぶ。1980年の森下愛子主演による連続ドラマ版もありますが、そちらはソフト化されていません。1982年には三原順子主演の続編映画『あゝ野麦峠 新緑篇』も作られ、山本監督の遺作となりましたが、やはりソフト化はされていません。僕はテレビでどれかをチラッと観た記憶があるんですが、どれだったか覚えていません。
『華の乱』……1988年の映画。与謝野晶子を主人公に、大正デモクラシー時代の文人や芸術家・社会運動家などの群像を描いたフィクション映画。監督は深作欣二で、主演は吉永小百合。フィクション部分が多く、晶子と松田優作演じる有島武郎の不倫描写に有島の遺族がクレームをつけたため、最初に「本作の内容はすべてフィクションです」みたいな断り書きを入れたらしい。深作監督、『柳生一族の陰謀』と同じノリで作っちゃったんじゃ……(原作にもあるエピソードではあるらしいんですが)。
『大虐殺』……1960年の新東宝映画。ギロチン社の古田大次郎をモデルにしたと思われる古川大次郎という架空人物を主人公に、関東大震災後の朝鮮人虐殺と甘粕事件、ギロチン社事件を題材とした映画です。主演は天地茂。つい最近DVD化されたようです。かつてのビデオ題は『暴圧 関東大震災と軍部』。
『日本暗殺秘録』……1969年の映画。幕末から昭和戦前期の暗殺事件をオムニバスで描いた作品で、桜田門外の変、紀尾井坂の変、大隈重信遭難事件、星亨暗殺事件、安田善次郎暗殺事件、ギロチン社事件、血盟団事件、相沢事件、二・二六事件が取り上げられてますが、メインはほとんど血盟団事件とのこと。主人公の小沼正を演じているのは千葉真一。
『重臣と青年将校 陸海軍流血史』……1958年の新東宝映画。張作霖爆殺事件から二・二六事件までの昭和日本軍テロリズム&クーデター&謀略史をまとめて扱った映画で、他にも浜口首相銃撃事件、柳条湖事件、三月事件、十月事件、五・一五事件、相沢事件と事件てんこ盛り。主演は安藤輝三役の宇津井健ですが、群像劇で必ずしも主人公というわけではないようです。かつてのビデオ題は『陸海軍流血史 5.15から2.26へ』。
『わが青春に悔なし』……1946年の映画。黒澤明の戦後第1作で、滝川事件とゾルゲ事件をモデルとした作品。主演は原節子と藤田進。
『従軍慰安婦』……1974年の映画。1937年の華北戦線を舞台に日本人と朝鮮人の慰安婦を描いた作品で、原作は千田夏光のノンフィクション『従軍慰安婦 声なき声 八万人の告発』。脚本は石井輝男、監督は鷹森立一、主演は中島ゆたか。2015年時点では現存するプリントがなく、東映も新たにプリントを起こしたりDVD化する予定がなかったとのこと。2017年に映画館のシネマヴェーラ渋谷が私費でプリントを行い上映したそうです。しかしソフト化は未だなし。
『未完の対局』……1982年の映画。日中戦争を中心に、大正時代から戦後までの日中の囲碁の名棋士の人生の交錯を描いた作品。主人公は実在の棋士・呉清源を一部モデルにしているそうで、日本軍の非道を余すところなく描いているとのこと。日中国交正常化10周年記念映画として製作された戦後初の日中合作映画で、監督は佐藤純弥と段吉順、主演は孫道臨と三國連太郎。呉清源の伝記映画には中日合作による2006年の『呉清源 ~極みの棋譜~』という映画もあります。そちらの監督は田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)、主演はチャン・チェン。
『帝銀事件 死刑囚』……1964年の映画。帝銀事件の実行犯として死刑判決を受けた平沢貞通は冤罪で、真犯人は別にいるという考察で描かれた作品で、熊井啓監督のデビュー作。主演は信欣三。
『松川事件』……1961年の映画。松川事件の被告は冤罪だという立場で、山本薩夫監督が実録風に描いた作品。主演は小沢弘治。
『にっぽん泥棒物語』……1965年の映画。山本薩夫監督が再び松川事件を題材とした映画で、実際に弁護側証人として出廷し、事件当日に事件現場付近で「九人の男と出会った」との目撃談を語った元窃盗犯2名の証言と事件の史実に基づいて構成されたコメディ仕立てのフィクションだそうです。主演は三國連太郎。
『黒部の太陽』……2009年の2夜連続ドラマ版。主演は香取慎吾。このドラマがDVD化された時点では映画版は事実上の封印作品だったので、映像作品で観ようとするとこのドラマしかありませんでした。他に1969年にもドラマ化されているそうです。
『太平洋ひとりぼっち』……1963年の映画。前年に小型ヨットで世界初の単独無寄港太平洋横断に成功した堀江謙一の手記を原作に、市川崑が監督し、石原裕次郎が主演した映画。主人公の名前は「青年」で、あくまで堀江をモデルとした青年とのことです。
『実録三億円事件 時効成立』……1975年の映画。あまりにも有名な三億円事件を、時効成立直前に「時効が成立する」と企画して作った一種のキワモノ映画。犯人像はもちろん推測で、主演は小川真由美と、当時の東映会長岡田茂の息子で後に会長となる岡田裕介。監督は石井輝男。
『初恋』……2006年の映画。三億円事件の実行犯の白バイ男は女子高生だったという設定の中原みすずの小説の映画化で、主演は宮崎あおい。60年代学生運動下の青春恋愛映画といった趣きらしい。中原みすずは本名経歴不詳で、著書もこれ一作だけとのこと。主人公が著者と同姓同名で、自伝的なスタイルの小説だそうです。
『光の雨』……2001年の映画。 連合赤軍による山岳ベース事件(と印旛沼事件)を描いた立松和平の同名小説を映画化するスタッフとキャストたちを描くという劇中劇の形を取った群像劇作品。そのため俳優役の俳優たちは、立松原作の劇中劇の中の役とそれを演じる架空の俳優の2役を演じています(スタッフ役の俳優はその架空のスタッフのみを演じている)。監督は高橋伴明、出演は萩原聖人、裕木奈江、山本太郎など。
『マイ・バック・ページ』……2011年の映画。評論家の川本三郎による1968年~72年の「週刊朝日」「朝日ジャーナル」記者時代の回想録をモデルとして映画化。朝霞自衛官殺害事件が中心となっています。監督は山下敦弘で、主演は妻夫木聡と松山ケンイチ。
『札幌オリンピック』……1972年冬季札幌オリンピックの記録映画。こっちにも記録映画があったんですねえ。全然知らなかった。総監督は篠田正浩。
『幽閉者 テロリスト』……2007年の映画。テルアビブ空港襲撃事件の主犯のひとり岡本公三をモデルとした映画で、自らもパレスチナに渡り日本赤軍に参加し、2000年に強制送還された映画監督足立正生の35年ぶりの監督作とのこと。主演は田口トモロヲ。
『いのち』……1986年のNHK大河ドラマ。1945年の終戦直後から当時の現在である1985年前後までを描いており、農地改革・高度経済成長・集団就職・オイルショック・核家族化などの事象が出てくるそうです。実在の人物が1人も出てこない唯一の大河ドラマで、脚本は橋田壽賀子、主演は三田佳子。
『罪の声』……2020年の映画。グリコ・森永事件をモチーフとした塩田武士のミステリー小説の映画化。主演は小栗旬と星野源。
『コミック雑誌なんかいらない!』……1986年の映画。1985年当時の実際の事件を追うテレビの人気突撃レポーターの姿を通して、ワイドショーに踊らされる世間や大衆への皮肉を描いた作品。主演(兼脚本)の内田裕也が実際に突撃取材するセミドキュメンタリー的(フェイクドキュメンタリー?)な部分もあるとのこと。滝田洋二郎監督の一般映画デビュー作でもあります。劇中に出てくる事件・出来事は、三浦和義ロス疑惑、松田聖子と神田正輝の結婚式、おニャン子クラブ、山口組と一和会の抗争、日航ジャンボ機墜落事故、豊田商事事件と豊田商事会長刺殺事件など。映画自体は観てないんですが、ビートたけしが会長刺殺犯を演じてるシーンは何かで観た記憶。
『クライマーズ・ハイ』……日航ジャンボ機墜落事故を題材とした横山秀夫の小説を原作とした2005年の単発ドラマと2008年の映画。群馬県の架空の地方新聞社を舞台に事故を取材する新聞記者の奮闘を描いた作品で、僕は映画版のほうだけ脇役で出てた女優の野波麻帆さん目当てに観ましたが、内容はあんまり覚えてないなあ。事故そのものというより、あくまでそれを追う記者のドラマでしたね。主演はドラマ版が佐藤浩市、映画版が堤真一で、映画版の監督は原田眞人。
『沈まぬ太陽』……日本航空と同社社員で同社の労働組合役員である人物の体験に基づいて、それをモデルとし脚色・再構成された山崎豊子の小説を原作とした、2009年の映画と2016年の連続ドラマ。原作は日航ジャンボ機墜落事故をモデルとした事象も描かれてるそうですが、それも含めて基本的にはあくまでフィクションのようで、事実と異なるところが多々あるようです。当の日本航空からはかなり強い批判があったとのこと。映画版の監督は若松節朗で、主演は渡辺謙。ドラマ版の主演は上川隆也。
『政治犯・金賢姫/真由美』……1990年の韓国映画。邦題を単に『真由美』とするサイトもあり。大韓航空機爆破テロを題材とした作品で、日本では劇場未公開でビデオスルーでしたが、昔レンタル店で見かけた記憶があります。吹替版のみらしく、時間もオリジナルの110分を93分に短縮したバージョンとのこと。DVD化はされていません。監督は、北朝鮮に拉致され『プルガサリ』などを監督した後、脱出して米国に亡命した申相玉(シン・サンオク)。
『その街のこども 劇場版』……2011年の映画。阪神・淡路大震災から15年が経過した神戸の街でふとしたきっかけで出逢った男女が、お互い持っていた「あの時の記憶」をさらけだす姿を描いた作品で、2010年の単発ドラマ『その街のこども』に映像を追加するなど再編集をした劇場版。主演は実際に震災を経験した森山未來と佐藤江梨子。
>情報訂正
『陰陽師』(2020年テレ朝単発ドラマ)……DVD化はされていませんが、Amazonprimeで配信はされているようです。
『大奥 第一部 最凶の女』『第二部 悲劇の姉妹』……ソフト化も配信もされてないと書きましたが、ひかりTVで配信されているようです。
#11104
バラージ 2021/06/25 22:25
本とか雑誌とかマンガとか
映画を観に行って、始まるまでの時間潰しに本屋にフラッと入ったら、個人的に興味をそそられる本や雑誌やマンガがたまたま何冊か集中的に出ていて散財してしまいました。
『戦乱中国の英雄たち』(佐藤信弥、中公新書ラクレ)という本は、気鋭の若手中国史学者が、最近流行りとなっている中国歴史&時代劇ドラマを「史実」ではなく「創作」の部分に着目して、中国人製作者や視聴者の思考や行動様式を解説している本です。ちょうど僕が去年あたりにこちらで書かせてもらったようなネタを、より専門的かつ詳細に描き出していて、やっぱりそういうことを考えてる人がいたんだなあと面白く読みました。役者などドラマ的な部分にはあまり触れてないんですが、そういうところを扱ったムックは別に山ほどあるんでそういうネタはそちらで読めばいいでしょう。
また『歴史人』という月刊誌では源頼朝特集。来年の大河絡みかな。今まで買ったことのない雑誌でしたが、パラパラッと立ち読みしてみたら源平合戦期(平安後期~鎌倉初期)の気鋭の研究者が執筆陣として名を連ねていて、なかなか面白かったんで買ってしまいました。これ1冊で大まかな時代の流れもわかり、なかなかお買い得かと。ただ誤植や誤記がところどころあるのが残念。
それからアイヌ民族を題材にした石坂啓・画、本多勝一・原作の漫画『ハルコロ』が岩波文庫から復刊してました。和人が進出してくる前の道東アイヌの生活を描いていて、コシャマイン蜂起以前の時代が舞台です。『ゴールデンカムイ』によるアイヌ・ブームの恩恵かな。
最後にドラマネタ。NHKで『いいね!光源氏くん』のパート2が放送中。僕はそんなに興味なかったんですが、家族が第1作から観てたので付き合いで時々観てました。光源氏ら『源氏物語』の中の人たちが現代にやってくるという、タイムスリップというか異世界スリップもので、よくあるネタとはいえドラマとしてはなかなかよく出来ててまあまあ面白いドラマです。
>2年前に観てた映画
『空とぶギロチン』
2年前に観てて、その後すっかり忘れてたけど、ひょんなことから思い出した1975年の香港のアクション時代劇映画。原題は『血滴子』、英語題が『Flying guillotine』で邦題もまんま直訳。「血滴子」とは講談などで清の雍正帝の諜報・暗殺のための秘密組織とも、その組織の暗殺兵器ともされるものなんですが、この映画では暗殺兵器のほうでして、鎖の付いた鉄の帽子みたいのを敵の頭に投げ、被さると内側から刃が飛び出し首をちょん切り、鎖を引っ張って戻ってきたら中に首が!というびっくりどっきり兵器です。お話は、忠臣ばかり暗殺する任務に疑問を感じた主人公が組織を脱走し、雍正帝の命令で裏切り者を抹殺しようとする組織の追っ手とのギロチン合戦が繰り広げられる……というもの。観てるうちに既視感を感じてふと気づいたんですが、完全に日本の忍者時代劇のノリですね。主人公はさしづめ抜け忍。基本的には正統派の時代劇という感じで、まあまあ面白い映画でした。完全にフィクションで、歴史映画では全くないけれど。
ちなみにこの映画、公開当時なかなかヒットしたらしく、『片腕カンフー対空とぶギロチン』『空飛ぶ十字剣』などの便乗映画が多数作られたとか。本家も負けじと(?)続編の『続・空とぶギロチン 〜戦慄のダブル・ギロチン〜』を作ってます。#10556で紹介した『フライング・ギロチン』はそのまた続編的な2012年のリブート映画。
#11102
バラージ 2021/06/18 23:53
新選組も多いなあ
『青天を衝け』、時々見逃しつつも結構面白く観続けております。『平清盛』『いだてん』ほどには夢中になっていませんが、『真田丸』『西郷どん』と同じぐらいには面白いドラマかな。堤真一演じる平岡円四郎の最期のシーンは良かったですねえ。
>観てない歴史映像作品 江戸後期編
観てない歴史映画&テレビドラマのネタ、江戸後期編。忠臣蔵ほどではないにしても新選組も多いですねえ。江戸や幕末って時代劇の延長で作れるから多くなるんだろうな。一番人気とはいえ戦国はそういうわけにはいかないですもんね。
『栄花物語』……1983年の単発ドラマ。田沼意次を主人公とした山本周五郎の小説が原作で、森繁久彌の芸能界生活50周年記念作品とのこと。ソフト化も配信もされていませんが、ひょっとしたらBSとかで放送されることがあるかも。なお原作は1994年にも『大江戸風雲伝』のタイトルで連ドラになっているようです。
『風光る剣 ~八獄党秘聞~』……1997年のNHK正月時代劇で、原作は藤沢周平の『闇の傀儡師』。将軍家治の後継者問題に絡む、田沼意次と松平定信の権力闘争に巻き込まれた浪人を主人公とした時代劇で、主演は中井貴一。これは観たんですが、中井貴一の記憶が全くないんで、部分的にチラッと観たのかな。意次役が津川雅彦、定信役が神田正輝、キングメーカー的黒幕の一橋治済役が中村梅雀。なお1982年にも原作通りのタイトルで単発ドラマ化されているようです。
『陽炎の辻 ~居眠り磐音 江戸双紙~』……2007~2017年にNHKの○曜時代劇などで放送されたシリーズ。原作は佐伯泰英の『居眠り磐音』で、主演は山本耕史。これは時々観てました。基本的にはフィクションの時代劇ですが、原作では田沼意次が悪役として登場するらしく、2017年の完結編では田沼や松平定信が登場してましたね(#10473)。2019年には原作通りのタイトルで映画化もされ、そちらの主演は松坂桃李で、監督は本木克英。そちらにも田沼がチラッと登場するようです。
『のみとり侍』……2018年の映画。原作は小松重男の『蚤とり侍』で、失言で藩主の怒りを買い、女性に性的な奉仕をする裏稼業「猫ののみとり」にされてしまった元侍が主人公の時代劇。監督は鶴橋康夫、主演は阿部寛。これは観ました。なかなか面白かったですね。脇役(というかちょい役)として田沼、定信、平賀源内らが登場しますが、ここまでの観た作品はいずれも史劇というよりは時代劇。でもまあ個人的趣味で紹介しちゃいます(笑)。
『北斎漫画』……1981年の映画。葛飾北斎の生涯を描いてます。新藤兼人監督で、主演は緒形拳。
『眩(くらら) ~北斎の娘~』……2017年の単発ドラマ。北斎の娘の葛飾応為を主人公とした朝井まかての小説『眩』が原作で、主演は宮崎 あおい。
『大奥 第一部 最凶の女』『第二部 悲劇の姉妹』……10年ぶりに作られたフジテレビのシリーズ第5作で、2016年の二夜連続ドラマ。主演は沢尻エリカで、将軍家斉の側室・お美代と架空人物・梅の二役を演じてるんですが、沢尻さんのあれやこれやもあってかソフト化も配信もされていません(事件前には配信はあったかも)。
『かげろう絵図』……1959年の映画。監督は衣笠貞之助で、主演は市川雷蔵。原作は松本清張で、大御所家斉時代晩年の大奥をめぐる権力闘争を描いた時代劇とのこと。主人公は架空人物で、映画は原作完結前に作られたためオリジナルかつ中途半端な終わり方らしく、続編の予定もあったけど作られずに終わったとか。原作は1960年・1983年・2016年にもドラマ化されているようです。
『十一人の侍』……1967年の映画。工藤栄一監督、夏八木勲主演の集団抗争アクション時代劇で、内容はほとんどフィクションですが、水野忠邦が登場するのが珍しいのでご紹介。
『サムライマラソン』……2019年の映画。日本のマラソンの発祥と言われる1855年の「安政遠足(あんせいとおあし)」を題材とした土橋章宏の小説『幕末まらそん侍』を、『不滅の恋 ベートーヴェン』のバーナード・ローズ監督をはじめとする日米のスタッフで映画化した作品。公開当時、観に行こうか迷って、結局今に至るまで観てないんですよね。安政遠足を題材とした映画は1956年にも『まらそん侍』というのが作られてるそうです。
『花の生涯 彦根篇・江戸篇』……1953年の映画。大河ドラマと同じ舟橋聖一の小説が原作で、主演は松本幸四郎。ビデオ化はされてますが、DVD化はされていません。原作は1974年と1988年にもドラマ化されているようです。
『動天』……1991年の日本映画。開国派を支援した横浜の商人の中居屋重兵衛が主人公。原作がなかにし礼、監督が舛田利雄、主演が北大路欣也。えいがじたいはみていませんが、公開当時にテレビでやっていた番宣番組をチラッと見た記憶あり。ビデオ化はされてますが、DVD化はされていません。
『幕末』……1970年の映画。司馬遼太郎が原案なんだけど同名の小説が原作ではなく、坂本竜馬が主人公のためむしろ『竜馬がゆく』に近いとのこと。監督は伊藤大輔、主演は中村錦之助。
『竜馬がゆく』……2004年のテレ東新春ワイド時代劇。主演は市川染五郎。
『天狗党』……1969年の映画。監督は山本薩夫、主演は仲代達矢。
『大奥』……2003年の連続ドラマ。フジテレビのシリーズ第1作目で、このドラマのヒットによりシリーズ化されました。大河ドラマの『篤姫』とか、映画とTBSドラマの男女逆転『大奥』シリーズの映像化なんかも、このドラマの影響なんだろうなあ。前半は篤子(菅野美穂)と瀧山(浅野ゆう子)の対立と融和、後半は和宮(安達祐実)と実成院(野際陽子)の嫁姑バトルが、架空の町人出身の女中まる(池脇千鶴)の目で描かれています。篤子主人公の単発スペシャルも作られ、そちらはチラッと観たかな。
『陽だまりの樹』……2000年の連続テレビアニメ。平助は残念ながらこちらにも登場しないらしい。
『炎の如く 吉田松陰』……1991年の単発ドラマ。主演は風間杜夫。
『獄に咲く花』……2010年の映画。原作は古川薫の『野山獄相聞抄(改題:吉田松陰の恋)』。野山獄に収監されている松陰と女囚・高須久の恋を描く。主演は近衛はな。DVD題は『獄に咲く花 ~吉田松陰の恋~』。
『新選組鬼隊長』……1954年の東映映画。原作が子母沢寛の『新選組始末記』で、主人公は近藤勇。主演は片岡千恵蔵。
『壮烈新選組 幕末の動乱』……1960年の東映映画。今度は白井喬二という人が原作で、主人公はやはり近藤で、主演はまたも片岡千恵蔵。
『維新の篝火』……1961年の東映映画。今度は池波正太郎が原作で、主人公は土方歳三なんだけど、主演はまたも片岡千恵蔵(笑)。
『幕末残酷物語』……1964年の東映映画。東映にもヌーベルバーグの波が押し寄せたか、江波三郎という架空の新選組隊士を主人公にひたすら内部粛清が続く映画らしい。監督は加藤泰で、主演は大川橋蔵。
『新選組血風録』……1965~66年の連続ドラマ。原作は司馬遼太郎の同名小説で、主人公の土方役は栗塚旭。
『沖田総司』……1974年の東宝映画。監督は出目昌伸、主演は草刈正雄。なんかいろんな意味で一気に時代が新しくなった感じですね。
『新選組』……2000年のアニメ映画。アニメというか、黒鉄ヒロシのマンガを原作として、その原画を切り取り人形劇に仕立てるという、かなり実験的なアニメ風実写映画ということらしい。監督は市川崑。
『壬生義士伝 新選組でいちばん強かった男』……2002年のテレ東新世紀ワイド時代劇。主演は渡辺謙。原作は盛岡藩の脱藩浪士である新選組隊士・吉村貫一郎を主人公とした浅田次郎の大ヒット小説なんですが、あくまでフィクションであって史実の吉村とは大きく異なるようです。
『壬生義士伝』……2003年の映画。こちらの主演は中井貴一で、監督は滝田洋二郎。当初は盛岡出身の相米慎二が監督する予定だったけど急逝により交代となったらしい。
『実録 新選組』『実録 新選組 完結編』……2006年のオリジナルビデオ。Vシネ勢総出演みたいな作品で、主人公の近藤役は小沢仁志。
『新選組血風録』……2011年のBS時代劇。主人公の土方役は永井大。
『輪違屋糸里 京女たちの幕末』……2017年の映画。主演は藤野涼子。原作は浅田次郎の『輪違屋糸里』なんですが、今回調べるまで映画化されてるとは知りませんでした。DVDもレンタル店には並んでいなかったような。京都島原の芸妓・糸里が主人公なんですが、原作からして『壬生義士伝』以上にフィクション満載のようです。2007年にも二夜連続ドラマスペシャル『輪違屋糸里 ~女たちの新選組~』としてドラマ化されたとのことですが、そちらはソフト化されていないようです。そっちの主演は上戸彩。
『合葬』……2015年の映画。彰義隊を題材にした杉浦日向子のマンガの映画化。主演は柳楽優弥。
『花の白虎隊』……1954年の映画。白虎隊を題材にした映画なんだけど、そんなことよりも主演の市川雷蔵と勝新太郎のデビュー作ということのほうが重要かも。
『白虎隊』……2007年のテレ朝の二夜連続の新春スペシャルドラマ。主演の山下智久が白虎隊士の酒井峰治と、その子孫である現代のチャラ男(もちろん架空の設定でしょう・笑)の二役を演じているとのこと。
『三姉妹』……1967年のNHK大河ドラマ。架空の旗本の三姉妹を主人公に幕末動乱から明治維新までを描いた作品で、大佛次郎の複数の作品が原作。主演は岡田茉莉子、藤村志保、栗原小巻。映像はごく一部しか残っておらず、つい最近になってようやくDVD化されました。1990年にはTBSでリメイクされているとのこと。
『ええじゃないか』……1981年の映画。ええじゃないか騒動を題材とした作品で、監督は今村昌平、主演は桃井かおり。女たちが尻を向けておしっこするシーンのスポットCMを子供の頃にテレビで観たような記憶あり。
#11101
ろんた 2021/06/13 22:23
挫折してました
>徹夜城さん
お大事に、としか言葉がありません。
そういえば、わたしも目の病気をやったことありました。目頭の結膜が飛び出して眼球に触れ、鬱陶しいことこの上ない。ただ、近所の開業医は「ただの夏バテを慢性膵炎と誤診して手術しようとした」というレベルなので恐くて行けない(笑)。これまた近くにある大学病院で診てもらったのですが、若い医師はすぐに切除しようと言ったのに、主任の医師が慎重で、何回も通わされCTをはじめ色々検査をした挙げ句、「がんセンター」に紹介状を書くから、という話になってビビらされる。良く話を聞けば、そこの眼科の先生が同じ症例を扱ったことがあるとのこと。「がんセンター」の初診時には、予約時間の30分前にカウンセリングがあるから早く来るように、と叱られたりなんかして。まあ、こちらではMRIなどで、切除との結論が出て、全身麻酔>数日入院>抜糸で回復したのでした。
>「コウラン伝」
「挫折」してました。だって毎週毎週毎週、<呂不韋の脱走計画が頓挫、失敗><コウランが殺されかける><呂不韋がツンしてデレる>展開が繰り返されて、いい加減、あきてしまったのです。そのうち「おしい刑事2」とかに興味が移ってしまって、録画するだけに。で、気がつくとエンディングの写真が変わっていたのでした。
>安吾と取手
青空文庫で出てくるのは、「居酒屋の聖人」。どうも実際以上に田舎町として描写しているようで、町に二つあるおわいやが揃って怠け者で、町では糞尿の処理に困っているとか、この二人のおわいやが肥びしゃくを振り回して喧嘩して、町が糞尿の臭いに包まれたとか書いてある(笑)。本筋は居酒屋(酒屋が店の一角を飲酒スペースとしていたもの)で怪気炎を上げる人々について。スランプに陥っていた安吾は、自分の仕事の自慢を始める東京当たりの人々と違って、すぐ天下国家を論じる様に助けられたとか。しかし、そうした手合いは必ず怠け者だと書いてある(笑)。トンカツ屋は出てくるけど蕎麦屋は登場しないので、「食い物屋といえばとんかつ屋と蕎麦屋しかない」というのは別のエッセイでしょうか。
>「女人平家」
吉永さんは同時期に「花と花よめ」にも主演していて殺人的な忙しさだったそうで、こちらも「吉永小百合が芸者役を!」「キスシーンがある!!」「しかも相手は児玉清!!!」というので大変話題になったようですが、VTR制作ということで映像は残っていないようです。ただ「肝っ玉かあさん」「ありがとう」などの石井ふく子作品は残ってる。石井Pが作品を守ったんだろうか。
ビデオとフィルムについては視聴環境の違いというのもあると思います。70年ぐらいだと、テレビのボリューム・ゾーンって16インチぐらいでしょうか。そうなると両者の違いってそんなに意識しなかったかも知れないけど、その後、テレビが大画面化されるとその辺が意識されるようになったとか、あと、時代劇=フィルム、現代劇=ビデオというような先入観というか、慣れというかもあるかも。時代劇ではロケが必須なんだけど(大徳寺とか二条城とか琵琶湖とか)、ビデオではロケができなかったんですよね。大河でも俯瞰の合戦シーンになるとフィルム撮影に切り替わったりして。
>「元禄忠臣蔵」
冒頭、お侍さんたちがバタバタと駆け回る、松の廊下の大きさに圧倒されます。後編は「南部坂雪の別れ」から泉岳寺にワープ(笑)。KINENOTEのレビューには「討ち入りを描くには本当に人殺さなきゃならない」と溝口健二が言い出して撮影が中止されたというが、個人的には眉唾だと思います。そして後編の実質的な主人公は実は磯貝十郎左衛門とおみの(高峰三枝子 )だったりするのでした。この辺、実に溝口健二。
>「大忠臣蔵」
これも確かBS11で放送されたんじゃなかったかな? 以前にも書いたかも知れませんが、事件の原因を塩の製法をめぐるイザコザとしているのは、「峠の群像」はおろか「元禄太平記」より早い。そのくせ、「仮名手本忠臣蔵」のエピソードを取り込んでいて、大野(斧)定九郎、おかる、萱野三平(早野勘平)、赤埴源蔵(赤垣源蔵)、俵星玄蕃などが登場する。
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