シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

EVANGELION:3.0+1.0 THRICE UPON A TIME


title





 企画・原作・脚本・総監督:庵野秀明、制作:スタジオカラー

 監督:鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏







 この映画の感想を述べるコーナーを最後に更新したのが2004年。



 あれから17年も経ってしまった。


 今年、この個人サイトが20周年を迎え地道に更新を続けてきたが、映画についての文章を書くのはトンとご無沙汰であった。

 しかし、この度「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」が遂に終了となり、最初のTVシリーズから26年。

 全てが完結したことを記念して書き記してみたいと思う。

 いわゆる旧劇場版と言われる「新世紀エヴァンゲリオン・シト新生」「新世紀エヴァンゲリオン・Air/まごころを、君に」が公開されたのが1997年3月、7月と連続で公開されたというのも今、考えると驚くべきことであるが(新劇場版の公開間隔を考えると隔世の感がある)あの頃の世間の「エヴァ」の熱狂具合を思うと至極当たり前だったのかもしれない。



 「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」に入る前に、新たな展開点となった前作「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」をまず、振り返ってみたい。




 その あらすじとしては


 2012年に公開された「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」において発動した「ニアサードインパクト」により突如、14年後の世界へとブチこまれた主人公−碇シンジ。

 その世界では、碇ゲンドウが指揮を取る「NERV(ネルフ)」と葛城ミサトと旧NERV職員が結成した反NERV組織「ヴィレ」が相対して戦っており、シンジにとって信じていたものが全て崩れ去り、混沌とした中でひたすら混乱するばかりとなってしまうのだった。
 エヴァに二度と乗り込まないように警告され、発動されると死ぬ「DSSチョーカー」を装着されたシンジは、ヴィレを襲撃したNERVのエヴァMark.09に行方不明となっていた綾波レイの声を聞いたことで、ミサトの声を無視してMark.09と共にNERV本部へ向かうことになる。

 シンジは荒廃したNERV本部で父、碇ゲンドウに会い、綾波レイも居て渚カヲルとも出会い親しくなるが、この14年の間に「サードインパクト」が起こり、地上は真っ赤に染まり荒廃、コア化したこと、レイもコピーであり、シンジが知る本物のレイは未だ初号機の中にいることを知り、絶望するのだった。
 NERVが所有するエヴァンゲリオン第13号機に シンジは乗ることを拒むが、カヲルが「DSSチョーカー」を外し自分の首に移し換えたことで一緒に乗り込む。
 シンジは世界を元に戻すのに必要なロンギヌスとカシウスの2本の槍を手に入れる為、レイが駆るMark.09とともにサードインパクト爆心地であるセントラルドグマ最深部へ下降していく。
 其処には 第2使徒リリスとMark.06が2本の槍で貫かれ磔にされていたが、その槍は2本ともロンギヌスの槍であった。
 それに気付いたカヲルが槍を引き抜こうとしたシンジに待ったをかけたその際、ヴィレから送り込まれたアスカの2号機(改)とマリの8号機が襲撃し、妨害する。

 しかし、世界を元に戻したい一心のシンジは、カヲルの言葉を聞き入れず槍を抜いてしまう。
 その結果、第2使徒リリスの身体は崩れ、Mark.06の中に居た第12使徒が活性化。黒いケーブル状の姿を現して第13号機を包み込んだ。
 第13号機は 第12使徒を取り込んで覚醒したことで、ゲンドウの策略はまんまと成功し「フォースインパクト」が発動しようとしていた。
 13号機の頭上に掲げられた光に吸い寄せられ、地上の街が崩壊していく。「フォースインパクト」の儀式が進行する。
 それを止めようとヴィレが戦艦ヴンダーで特攻を仕掛けるが、Mark.09に制御を奪われ、アスカの2号機(改)も応戦し、最終的にはアスカとレイが脱出した後で自爆し、Mark.09はようやく破壊され活動は止まった。

 「フォースインパクト」を起こしてしまったことに絶望したシンジを、優しく諭すカヲルは、この現象を止める為に「DSSチョーカー」を発動させ自らの命を絶つ。
 13号機はそれによって覚醒を止め、地上へ落下するが、「フォースインパクト」の進行は止まらなかった。
 マリは、それがシンジが原因であると考え、13号機からエントリープラグを強制的に排出させるとフォースインパクトは止まった。
 アスカは エントリープラグからシンジを助け出し、放心しうなだれたシンジと共に赤い大地を歩き始める。その跡に付いてレイも一緒に歩き始めるのだった。



 先日も「シン・エヴァンゲリオン」公開を前に、TVで放送され自分も見てみたが渚カヲルが自爆したこと、最後に赤い大地をシンジ、レイ、アスカがトボトボと歩いていくシーンぐらいしか印象的なものがなく新劇場版の中では一番の問題作。と捉えていた。
 それは、TVシリーズ、旧劇場版から逸脱した内容に頭がついていかなかったことが一番の原因であるが、新たに提示された謎(「サードインパクトはなぜ起こった?」「2本ともロンギヌスの槍だったのはなぜ?」など)が全く解決されなかったことも混迷を深めた原因だったと思う。
 それゆえ「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」への期待度はそれほどではなかった。というのが正直な気持ちであった。
 もちろん、コロナ禍などで相次いだ公開延期騒動もその気持に拍車を掛けたのも否めない。
 ただ2021年3月8日(月曜日)に公開されるやいなや、ネットにあがってきた抽象的でありながらも評価の高さに いくぶんか否定的な気持ちは薄まり、期待度は高まった。




 ということで、長い前置きはこのぐらいにして「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」である。



 この「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」は @『アヴァンタイトル』A『Aパート』B『Bパート』C『Cパート』D『Dパート』に分かれている。

 まず『アヴァンタイトル』では冒頭、「ヴィレ」vs 「NERV」のパリ市街での戦いが描かれた。
 「ヴィレ」の旗艦「AAA ヴンダー」からリツコとマヤ率いる作業員らが降下し「ユーロネルフ第1号封印柱」を復旧しアンチLシステムの起動を目指した。
 そこにNERVの「EVA 44A」群体、「EVA 4444C」と「EVA 44B」群体による編成部隊が襲いかかる。
 大編隊による攻撃で一時は危機的状況に陥るものの、真希波・マリ・イラストリアスが搭乗するエヴァ8号機が撃破し、無事にアンチLシステムが起動。
 コア化から解放されたパリの街は元の姿に戻り、ヴィレは旧ユーロネルフの設備とエヴァシリーズ機体の予備修理パーツを確保することに成功した。

 一方、シンジとアスカ、レイ(コピー)はコア化した真っ赤な大地を歩き続けていた。
 しかし、途中で動けなくなったシンジの前に、一台の車が止まった。
 シンジが次に目を覚ますと、其処にはかっての同級生で、大人に成長した鈴原トウジ、相田ケンスケ、トウジの妻となっていたヒカリがいた。
 3人はニアサードインパクトを生き延びた者たちの避難民村「第3村」で、ヴィレ設立の組織「クレイディト」の支援のもと生活をしていた。
 トウジとヒカリの間にはツバメという娘も生まれ、シンジとアスカ、レイを快く受け入れ歓迎し、アスカとシンジはケンスケの家へ、レイはトウジの家へと預けられた。


 「第3村」でのエピソードが『Aパート』である。

 2021年3月22日にNHKで放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』(4月29日に BS1で拡大版が初回放送)では、庵野監督にシン・エヴァンゲリオン制作の4年間を密着したことで大きな話題となったが、その中でこの『Aパート』を脚本からやり直すという件が出てくる。
 つまり、この『Aパート』こそが「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の根幹であり、最重要パートであったのは容易に想像できる。
 特にレイがツバメの世話や、村のおばさんらとの田植えなどの農作業を通じて”命令”以外の”生きる”という行為に新鮮な感動を覚え、人間らしい感情に目覚め言葉を覚えていく様子は感動的(「おはよう」「おやすみ」「ありがとう」「さようなら」の言葉が象徴する)で、レイが兎に角、可愛い。

 一方、「フォースインパクト」を起こしてしまったことの慚愧の念から声が出なくなってしまったシンジを対比的に描くことで、より際立たせていたのも印象的であった。
 その後、シンジがアスカから辛辣な言葉で口撃されたり、ケンスケが励ましたりとありながらも、村人とは距離を取り、一人、旧ネルフ施設跡の廃墟で暮らすようになるとシンジの心情にも変化が訪れる。
 そのキーマンとなったのは、紛れもなくレイである。
 シンジが落としたS-DATのカセットプレーヤー(参考にしたと思われるA-DATのマルチトラックレコーダーを知っているエヴァ・ファンがどれだけいるだろうか?)を返しに行ったことを皮切りに何度も(アスカが用意した)食事を甲斐甲斐しく届けるレイ。
 そんなレイに対して、シンジは自分が「フォースインパクト」を起こし全てを壊してしまったのに、それでも村の人々は優しく接していることに申し訳なく辛いことを吐露する。
 レイは「皆優しいから」と慰め「仲良くなるお呪い」と言うと、シンジと手を繋ぎ、シンジの心はようやく解放されたのだった。
 かって、シンジが大破した零号機から綾波レイが搭乗しているエントリープラグを回収した時、生存していたレイが「ごめんなさい。 こういうときどんな顔すればいいかわからないの。」と言った時、シンジは「笑えばいいと思うよ」と答えたという名シーンがあったがそれを思い出せるシーンとも言えた。おそらく、相対的に描かれているのではないだろうか。

 ケンスケの家に戻ったシンジは、ケンスケに付き、村周辺の環境調査を手伝いし始める。
 封印柱によって、首なしエヴァを防ぎ、環境を正常化している世界が描かれ、L結界の実験場ではカジとミサトの子供、14歳の加持リョウジを紹介され、ここで加持がサードインパクトを止めるために死んだことを知らされる。
 だが息子の加持リョウジは、自分の親がカジとミサトであることを知らない。
 あえて、親であることを知らせずNERVとの戦いに没入するミサトの苦しみを気付かされるシンジ。
 ミサトのこれまでの態度にようやく合点がいくのだった。
 またケンスケもこの14年の間に事故で父親を亡くしていた。それはニアサードインパクトを生き延びた後の事故という皮肉。
 それだけにケンスケはシンジにもう一度、父親と話せと告げて、対決を促す。この言葉がその後の物語に大きな流れを作っていく。
 だが、この第三村のエピソードで最も衝撃的なのは、人間味が溢れるようになったレイの死であろう。
 プラグスーツの手首の表示が点滅し始めるあたりで観客に、予兆を示し始める為、ある程度、覚悟は出来ていたが...。
 仲良くしてくれたトウジとヒカリ一家に「おやすみ、おはよう、ありがとう、さようなら」と置き手紙をして、再び、廃墟でシンジに会うレイ。
 以前、名無し状態であったコピーのレイが名前を付けて−と言ったことに対し、シンジは「名前を考えたが、綾波は綾波だ」と言い、観客の共感を得た刹那、警告音が鳴り、プラグスーツが黒から白に変わる。
 プラグスーツが黒から白に変化したことが色々、論じられているが パンフに書かれていたというレイを演じる林原めぐみさんの言葉が正解なのだろう。
 シンジから名前を付けられたことで”本物の綾波レイ”(TV版のオリジナルの初代・綾波レイ)になった。
 これは このシン・エヴァンゲリオン、しいてはエヴァンゲリオンシリーズ全体を語る上でヒントになるのではないかと思う。

 「ここじゃ生きられない。けど、ここが好き。好きってわかった うれしい」

 そう言い残して、レイは身体が炸裂しLCLとなってしまう。予想されたとは言え、残酷だ。
 「綾波を返せー」と絶叫するシンジ。
 このショックでまたふさぎ込み、絶望するのかと心配しがらも、そうならなかったことが、シンジの成長を知らしめることになる。
 この姿に「機動戦士ガンダム」の第9話「翔べ!ガンダム」〜 度重なる出撃で心身ともに疲労し、戦闘を拒絶したアムロがブライトの「それだけの才能があれば貴様はシャアを越えられる奴だと思っていた。残念だよ」という捨て台詞で奮起し、ガンダムのブーストを使った空中戦を行う、新たな戦法を繰り出していく姿を重ねてしまったのはガンダムファンだからだろうか。シンジにアムロの影が重なる。
 第三村に寄港したヴンダーに、シンジはレイが返却したS-DATのカセットプレーヤーと共に乗り込む。
 もはや、そこには脆弱で すぐ精神崩壊する碇シンジはいなかった。
 大人へと成長したことを示すエピソードである。


 『Bパート』は衝撃的なシーンから始まる。

 ニアサードインパクトで家族を亡くしたヴンダーのオペレーター、北上ミドリはシンジに怒りを露わにし、トウジの妹 鈴原サクラはシンジに発砲する。
 艦内はシンジにとって針のむしろであったが、覚醒(?)した今、動じない。
 そしてミサトと赤木リツコとの会話から、この戦艦ヴンダーが「人類補完計画」から地球上の動植物を守る「方舟」の役割を担った船であることも明かされた。その為に、カジがNERVから奪ったのだ。

 NERV本部のゲンドウと冬月は リリスの卵である「黒い月」を伴い、再び「フォースインパクト」の遂行を目論んでいた。
 ゲンドウはレイの身体を再生し、セカンドインパクトの爆心地「カルヴァリーベース」に行き「13号機の再起動を始めよう」と宣言した。
 ミサトはそれを察知し、ヴンダーの発進準備に入った。艦内ではそれに合わせ、各人がそれぞれに出撃準備を始めた。
 例えばマリとアスカは、新作のプラグスーツを着用し、オペレーターの高雄コウジは、戦死した隊員のバンダナを腕に巻き、誓いを新たにするのだった。
 監禁中のシンジに会いに来たマリとアスカ。
 アスカは14年ぶりの再会時にシンジを殴ろうとした理由を尋ね「最後だから言っておく。あの頃、シンジを好きだったかも。」と言い残して去っていく。
 二人は新2号機と改8号機のエントリープラグに乗り、ミサトは「これより本艦はフォースインパクト阻止のために、エヴァ13号機を無力化し、ネルフにけりをつける。全艦発進」と命令を下し、「ヤマト作戦」が発動された。


 『Cパート』はこの「ヤマト作戦」での激烈な戦いが描かれた。

 ヴンダーから「方舟」の役割を担う種保管ユニットを射出。大気圏に突入し、旧南極爆心地にあるL結界境界面に向かっていった。
 すると境界面から現れた、冬月が指揮するネルフ戦艦NHGエアレーズングがヴンダーを攻撃し、ヴンダーもそれに応戦した。
 黒い月を盾にしたネルフ本部が姿を現すとヴンダーはそれに向けて全誘導弾を発射。
 それにより、ネルフ本部内の(再起動前の)エヴァ13号機を発見した。
 ネルフは防衛の為に無数のエヴァ・インフィニティ(元・人間)をヴンダーに向けて散開させる。
 アスカのエヴァ新2号機と マリのエヴァ改8号機がそれを迎え撃ち、改8号機に援護された新2号機がネルフ本部に到着し、13号機に「強制停止信号プラグ」を打ち込もうとした。
 しかし、13号機を恐れるがゆえ、新2号機自身のATフィールドに阻まれてしまった。
 セカンドインパクトの爆心地「カルヴァリーベース」では、マイナス宇宙につながる「地獄の門」が再び開いた。
(このあたりのことは、一体、何が起きているのか、劇場で見ているその時は、さっぱり判らなかった。 笑)
 それは ゼーレのシナリオにはない「アナザーインパクト」であった。

 アスカは新2号機の全リミッターを解除し、2号機最後の手段「裏コード999」を展開。
 眼帯を外して左眼の小型封印柱を引き抜き、自らを「使徒化」させることで新2号機のATフィールドの中和を試みた。
 それはこれまで、何となく「Q」以来、違和感のあったアスカの正体が垣間見れた瞬間であったが、同時に「えっ アスカって使徒だったの?」と驚いた瞬間でもあった。
 新2号機のビースト化とアスカの使徒化で新2号機は変貌を遂げ、アスカは再び強制停止信号プラグを第13号機に打ち込もうとした。
 マリは「しまった!ゲンドウ君の狙いは使徒化した姫(アスカ)か」と気付いた。
 エントリープラグ内のアスカの前に「式波シリーズ」のオリジナル・アスカが出現する。対峙するアスカとアスカ
 つまり”使徒化した”アスカはクローンであることがようやく明らかにされたのだった。
 そしてアスカの名字が この新劇場版では「破」の登場以来『式波』であったこと。
 TV版、旧劇場版では『惣流』であったのにナゼ?と思ったものだが、何の説明もなかったことから新劇場版への仕切り直しで名称変更が為されたのかと誰もがそう思ったに違いない。
 だが、そうでなかったことが判明したのである。
 つまり、式波・アスカ・ラングレーはずっとオリジナルである”惣流・アスカ・ラングレー”のクローン、コピーであったのだ。
 なんと驚きの展開である。
 要するに旧劇場版と新劇場版は密接な関係、繋がっていると.....。

(式波)アスカは 自ら「DSSチョーカー」を起動させるが、13号機に取り込まれてしまう。それによって13号機が再起動した。
 NERVの戦艦に激突され身動きが取れなくなったヴンダーに、改装されたエヴァMark.09-Aが取りつき、侵食を行い艦の制御権を強奪する。
 そのヴンダー艦内に、ゲンドウが姿を現し、ミサトらと直接対面する。
 ゲンドウが「葛城大佐。この船は予定通り、我々が使わせてもらう」と言うと、赤木リツコはゲンドウの頭部を拳銃で撃ち抜いた。
 すると破壊されたバイサーの下のゲンドウの顔には穴が空き、かってのゲンドウではなくなっていた。
 リツコがネブカドネザルの鍵を使い、人を捨てたか」と言い捨てると、ゲンドウはこぼれ落ちた自分の脳を拾い集め頭部に戻すのだった。(人を捨てても、まだ人としての執着を示すゲンドウである)
 (「ネブカドネザルの鍵」とは−新劇場版「破」で、加持リョウジがNERVのベタニアスベースから持ち帰り、ゲンドウに渡したアイテムである。TV版では加持は「アダムの胎児」を手渡しており異なっている。)

 ゲンドウは

 『人類の進化と補完。セカンドインパクトによる海の浄化(海から全ての生命を消すこと)、サードインパクトによる大地の浄化(地上から全ての生命を消すこと)、フォースインパクトによる魂の三段階による世界の浄化。浄化され魂と化した生命と、器の肉体としてのエヴァ・インフィティの同化。進化の贄の為に用意された「アヤナミシリーズ」と「シキナミシリーズ」。これがミサトの父が発案した人類補完計画である』
 そして『全ての魂をコアに変える、インフィニティインパクトを発動させる』と語り『ヴンダーの主機に転用されている初号機を返してもらう』

 と要求したのだった。

 そこに監禁から解放されたシンジが現れた。
 ゲンドウに「父さん」と呼びかけるも反応はなく、ゲンドウは自ら第13号機に取り込まれていった。
 13号機は「ガフの扉」(地獄の門)の向こう側−マイナス宇宙の世界へと入っていく。
 しかし、ヴンダーはマイナス宇宙への潜航は不可能な為、これで万事休すと思われたが、シンジはエヴァ初号機に搭乗しゲンドウを止めると告げた。
 それは、シンジが今まで避け続けてきた責任を果たすことの意志の現れであった。
 マリはビースト化し、エヴァ改8号機がヴンダーに取り付いたMark.09-Aを捕食し、艦の制御権を取り戻した。
 シンジは「僕は僕の落とし前を付けたい」と言って、DSSチョーカーを自ら装着するが、彼の“贖罪”に納得できない北上ミドリが現れ、シンジに銃口を向ける。
 だが、その時、実際に発砲したのは鈴原サクラであった。
 その銃弾はシンジから大きく外れ「もうエヴァには乗らんとです。皆を不幸にします」と再び銃弾を何度も打ち込んだ。
 その一発は、シンジをかばったミサトの腹部に当たった。(この時、サクラとミドリの本心、葛藤、復讐心が吐露されますが、人間ドラマとしての見所の一つと言えるでしょう)
 ミサトは「14年前、シンジ君がエヴァに乗らなかったら、私たちは死んでいた。私が責任を取る。シンジ君にすべてを託す」と、初号機搭乗を許可する。
 シンジはミサトに(第三村で出会ったミサトの子、リョウジの話をし)笑顔で送り出されるのだった。


 最後の『Dパート』はマイナス宇宙が舞台となった。

 初号機のシンジは マリが乗る改8号機に運ばれ、第13号機が潜むマイナス宇宙へと突入した。
 覚醒したシンジの初号機とのシンクロ率は「0」に限りなく近い数値「∞(無限)」に至っていた。
 マイナス宇宙で、第13号機に取り込まれたゲンドウ、魂へと変化しながらもシンジとの記憶を保ち、第13号機起動のためのシンクロを担っていたレイと対面するシンジ。
 「ロンギヌスの槍」から変化した「希望のカシウスの槍」を持つ初号機、もう一本の「絶望のロンギヌスの槍」を持つ第13号機による激しい戦闘が始まった。
 シンジは戦闘の中、父を止めるが、ゲンドウは「私にはやるべきことがある」と聞く耳を持たない。
 『現実世界』と『神の世界、すなわち現実世界にとってはあくまでも「虚構」と認識される世界』であるマイナス宇宙をつなぐ「ゴルゴダオブジェクト」の作用により、次々と出現してゆくシンジの記憶から生み出された光景たち。
 第3都市東京、ミサトの部屋、学校の教室、レイの部屋、ネルフ指令部.....。
 現実と虚構の境界が曖昧な世界で二人は、激闘を繰り広げる。
 既に予告編で公開されていた映像でも話題であったが、このシーンが非常に秀逸であった。

 従来どおりの巨大な初号機と第13号機、人間とほぼ変わらない大きさの初号機と第13号機がそれぞれのシーンで戦うこのシーンに、ウルトラセブンやウルトラマンなどの昭和特撮ヒーローの姿が重なったのは言うまでもないだろう。
 ウルトラマンなどが大好きな庵野監督の狙いが最も示された演出であったと思う。(かっての自主映画『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』を彷彿とさせるとも)

 そして シンジが乗る初号機はゲンドウの第13号機に圧倒される。
 ゲンドウは「暴力と恐怖が決着の基準ではない」とシンジを諭す。
 シンジが「父さんは何をしたいの?」と尋ねるとゲンドウは「アディショナル・インパクトだ。依代(よりしろ)の願いに基づく現実・虚構世界の再構築」と答えた。
 「アディショナル・インパクト」−それはゲンドウが望む世界である。
 ATフィールドがなく、全てが等しく単一な人類の心の世界。浄化された魂だけの世界。ユイと再び出会える世界。
 つまり、ゲンドウの望む世界はTVシリーズ、旧劇場版となんら変わらないことが判る。

 一方、マイナス宇宙外のヴィレのメンバーは2本の槍がインパクトを阻止する鍵であるものの、ゲンドウの手により存在そのものを世界から消されかねない可能性に気付いた。
 その為、ミサトはヴンダー機体の脊椎を基に、新たな槍「ヴィレの槍/ガイウスの槍」の製造を試みたのだった。
 初号機と13号機は戦闘を止め、ゲンドウとシンジは、記憶の中にあるセントラルドグマへと行った。
 そこでシンジは、黒いリリスの姿をした「エヴァンゲリオン・イマジナリー」(マイナス宇宙に出現する空想上のエヴァ)を目にする。
 エヴァンゲリオン・イマジナリーの仮面が外れると、レイに似た顔が露わになり「アディショナル・インパクト」が始まった。
(「アディショナル・インパクト」=マイナス宇宙で行われる世界の書き換え)

 マイナス宇宙につながる「ガフの扉」を抜けて、エヴァンゲリオン・イマジナリーが現実世界に姿を現した。
 大量のエヴァ・インフィニティ(白い魂)とエヴァMark.7は続々と、頭部のないレイの胴体に変化していく。
 その様子をNERVの戦艦から見つめる冬月のもとに、マリが現れた。
 冬月はマリを「イスカリオテのマリア」と呼び(マリは「チョー久しぶりに聞いたな」と応え、これによって二人は顔見知りであったことが判る)、彼女が欲しい物であったエヴァMark.10(あるいは8)〜12を譲る。
 冬月は「ユイ君これでいいんだな」と呟くと、高過ぎるL結界密度の影響により、体がLCL化して消滅した。

 ヴンダー機体の脊椎を基にして製作していたヴィレの槍が完成し、ミサトのみ艦橋に残しヴィレ・メンバーが退艦する中、マリが乗る改8号機はエヴァMark.10(あるいは8)〜12を次々と捕食し、エヴァMark.9-Aを含む4体のエヴァを取り込んだ上で、シンジ救出の為にマイナス宇宙への再突入に備えた。
 ミサトのみが乗るヴィレとマリの改8号機は一緒に、進んでいった。
 マイナス宇宙では、自身の願いを叶えるため暴走を続けるゲンドウに、シンジは「もう止めようよ。父さんのことを知りたい」と説得する。
 一度は喪失したはずのATフィールドが生じる息子を無意識に恐れるゲンドウに対し、シンジは元々、父の愛用品だったS-DATのカセットレコーダーを返す。

 そして 始まる碇ゲンドウの少年時代からの回想。

 個人的には この「シン・エヴァンゲリオン」で最も印象的なシーンであり”泣かせたシーン”であったかもしれない。
 私はこのシーンに2001年公開の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』における”野原ひろしの回想シーン”を思い出させた。
 あのシーンも物語では重要なシーケンスだったし泣かせるものだったが、今回はそれを彷彿とさせるものだったと言える。
 両親の愛情を知らずに育ち、シンジ同様に他者と関わることに苦しみ恐れたゲンドウ自身の少年時代。
 学問−勉強だけがゲンドウを唯一、心を癒やした。
 ゲンドウは 優秀な成績で入った大学で、ユイに出会った。ユイだけがありのままのゲンドウを受け入れてくれた。
 だがユイを事故で喪失したことで 孤独の苦しみを初めて知った。と語る。
 「新世紀エヴァンゲリオン」の漫画最終巻の「EXTRA STAGE 夏色のエデン」には、ゲンドウがユイと出会った大学時代の頃が描かれていたが、ゲンドウの少年時代まで遡る事はなかった。
 それだけに新鮮であった。
 ゲンドウは自らの記憶の世界で幾度となくユイの名を呼ぶが、彼女は現れない。
 自身の弱さゆえにユイに会えないと落胆するゲンドウに対して、シンジはゲンドウが自身の弱さを認めていないからだと答えるのだった。

 マイナス宇宙の外では 出現した「エヴァンゲリオン・イマジナリー」にミサトが乗ったヴンダーが激突していった。
 ミサトは「お母さんはこれしかあなたにできなかった。ごめんね、リョウジ」と言い残すと爆風にのまれ、ヴィレの槍がマイナス宇宙へ突入していくのだった。
 マイナス宇宙側でシンジがヴィレの槍を受け取った。それはミサトの意思を受け取った事と同意であった。
 その様子を見て、ゲンドウは「シンジは大人になった」と呟いたのだった。
 母ユイを失くした息子シンジの存在を「父である自らに与えられた罰」と感じ、彼のことを恐れ避けていたゲンドウは、シンジに謝るとその瞬間、シンジの心の中に存在していたユイと再会した。
 全てを悟ったゲンドウはシンジのもとを去っていくのだった。
 この辺の描写は、エヴァンゲリオンでは定番の、電車の中での会話劇で進められているが、このゲンドウの退場が、電車を降りていくという当たり前だが秀逸なシーンとなっていたのが忘れられない。

 一人になったシンジの元に「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」終盤で爆死した渚カヲルが現れる。
 インパクトの犠牲となった全ての人々を助けたいと語るシンジに、カヲルは(シンジが)「イマジナリー(虚構)」でなく「リアリティ(現実)」の中で立ち直ったのだと諭した。

 13号機に取り込まれた「式波」アスカは『シキナミシリーズ』の複製体として生まれた自身の過去を回想する。
 両親を知らず、エヴァに乗るためだけに生きてきた「式波」アスカの心は、愛用の人形と共に、孤独な幼少期に取り残されていた。
 幼いアスカの前に人形の着ぐるみを着たケンスケが現れ、彼女を優しく励ます。
 するとアスカは、自身が赤い海の浜辺に横たわっていたことに気付いた。
 この何処かで見た風景。
 そう「新世紀エヴァンゲリオン・Air/まごころを、君に」のラストで描かれたシーンだ。
 アスカの首を絞めるシンジに「気持ち悪いー」と謎の言葉を投げかけて唐突に「終劇」となるあのシーンである。
 だが、ここに現れたシンジは、アスカに対して ヴンダー艦内で最後に「(自分を)好きだ」と言ってくれた事に感謝する。
 ケンスケへの気遣いの言葉も告げられると、アスカはエントリープラグと共に現実世界へと送り返されたのだった。
 謎でしかなかったあの結末に、ケリをつけるような展開に驚きと共にシビレた。
 シンジとカヲルの対話をなおも続く。そこで語られたのは驚愕の世界であった。

 渚カヲルが

 「君は生命の書に名を連ねているからね。何度でも会うさ。僕は君だ。僕も君と同じなんだ。だから君に惹かれた。幸せにしたかったんだ」
 「僕の存在を消せるのは真空崩壊だけだ。だから僕は、定められた円環の物語の中で、演じることを永遠に繰り返さなければならない」


 と言った。

 しかし、ここで唐突に出てきた『生命の書』というワード。一体、それは何なのか?チンプンカンプンであった。
 ネット上では”永遠に繰り返さなければならない円環の物語が書かれた書物”という空想上の物と書かれているのだが...。
 そして上記のように『生命の書』に名前が書かれているのは渚カヲル。その渚カヲルが書き加えた名前が碇シンジであるということである。
 要するに、以前から噂されていたようにこのエヴァンゲリオン・シリーズは円環=ループしているという物語で、シリーズを通してミステリアスな存在であった渚カヲルはそのループな物語の中での”水先案内人”的なポジションではなかったかと考えられる。
 厳密には、そのループの中で、その繰り返しを認識している唯一(?)の人物であったということだ。
 カヲルは、シンジもループを外から見れる者として選んだ。
 じゃ、なぜ、何度も人生を繰り返しているのかを認識できないか?という問題は正直、これもよく判らなかった。
 ただ、カヲルは生まれながらに不遇で不幸な?シンジに何度も手助けをしてきたが、それは結局、自分自身が幸せになるためにシンジを幸せにしたかったのだという事に気付いた。
 すなわち 誤りであったのだ。
 カヲルは『相補性のある世界』を望むシンジに全てを託すと、なぜかカヲルを「渚司令」と呼ぶ加持リョウジが現れ、一緒に去っていく。という謎の展開を示す。
 おそらく、繰り返しの世界の中で、カヲルがNERVの司令であった世界もあったということなのだろう。いわゆる「渚司令」が存在した世界線というヤツである。
 そしてここに登場するのが謎のワード『相補性のある世界』である。
 「相補性」という言葉はどうやら元々は量子力学の用語らしいが、ここでの意味は「他者が存在して互いに相手を補い合う関係のある世界」ということらしい。
 つまり「新世紀エヴァンゲリオン・Air/まごころを、君に」でも描かれたラストと重なる(同意ではないと思うが)。
 またカヲルが発した『真空崩壊』も、量子力学用語であるそうだ。
 これまた一般人には難解な言葉だが、簡単にいえば「真空崩壊」=「宇宙崩壊」という意味だそうで、カヲルという存在は決して消滅することはない。ということらしい。
 カヲルは 全知全能の神様なのだろうか(笑)

 カヲルが去ると場面は急に転換し、唐突に画面にシャッターが降ろされる。

 すると なんとシンジは撮影スタジオに居た。
 この撮影スタジオは『マイナス宇宙のアディショナルインパクトで、世界を書き換え中』をわかりやすく表現する為に用意されたのだ−と何処かのサイトで読んだが、なるほどと思った。
 そのスタジオでシンジは、初号機に取り込まれていたレイと対峙する。
 そしてシンジは「新しい人間が生きられる世界。エヴァの存在しない世界」を願い、「ネオン・ジェネシス(新世紀=新世界)」を試みることを伝えて、レイを見送った。
 世界を作り変える為に、シンジは初号機に乗る自分を、ヴィレの槍で刺し貫こうとする。
 それは同時にシンジが犠牲となってマイナス宇宙から脱出できなくなるという事を意味する。犠牲的精神。
 このあたりは、庵野監督がとても影響を受けた「宇宙戦艦ヤマト」シリーズのオマージュを感じるというのは単純すぎるか。
 しかし、其処に初号機に取り込まれていた母、碇ユイが現れ、シンジの役目を引き受け、シンジを元の世界へと送り返した。
 初号機は槍で自らを(ユイを)、13号機もゲンドウを残したまま自らを刺し貫いた。
 それによって これまでに登場した全てのエヴァンゲリオンが次々と槍に貫かれ消失していく。
 槍をエヴァ・インフィニティに刺すと、巨大レイの首が飛んで、全ての生命も元の魂の形へと戻っていった。
 ここでシンジが発する言葉が『さよなら、全てのエヴァンゲリオン』である。
 公開前に謎だった言葉の意味がようやく判った瞬間であった。
 (この時までの描写表現が線画だったり、コンテだったりといかにも未完成な演出は、きっとTV版最終回へのオーマージュのだったのだろう。懐かしくて嬉しくなった。)
 元の世界へ送り返されたシンジは気付くと、青い海の浜辺に座っていた。
 其処に改8号機に乗ったマリが現れ、マリが改8号機から海面に飛び降りるとその改8号機は消滅した。
 これにより、全てのエヴァンゲリオンは消え去ったのだった。


 ついにラストシーンである。

 TVシリーズ、旧劇場版共に、衝撃的なラストで物議を醸し、それがこの「エヴァンゲリオン」というアニメーションを伝説化させた一因だと思うが、今回のラストも最大級の驚きを持って迎えられた。

 再び、突然の場面転換で、駅のホームが映し出される。

 ここが、公開直後からエヴァンゲリオンファンの聖地となった宇部新川駅であるが、同時に庵野監督の故郷でもある。
 その宇部新川駅のホームのベンチに、大人へと成長し、スーツに身を包んだシンジが座っている。
 ちなみに声を当てているのは 緒方恵美から、神木隆之介へと変わっている。
 向かい側のホームには、高校生と思しきレイとカヲル、またアスカもいる。(なぜ彼らは大人になっていないのか?)
 いつものように混乱させる演出だが、なんとなく、我々が馴染んできたエヴァ世界とは全く別の世界に時間を飛び越えて来たんだな。と一瞬にして理解させるシーンではある。
 成長したシンジを後ろから、目隠しをする人物が一人。それはマリであった。
 この映画の冒頭、マリは「どこにいても必ず迎えに行くよ、ワンコ君」と言っていたが、その約束をマリは果たしたと言えるだろう。
 マリは「大人の香りになった」とシンジに言うと、シンジは「マリもいつも可愛いよ」と返す。まるで熱々のカップルだ。
 ここに違和感を感じた人も多かったと訊く。

 そしてマリはシンジの首に巻かれたDSSチョーカーを外す。
 『なぜ、エヴァのない世界で、シンジは大人になってもDSSチョーカーを付けていたのか?』
 大いに疑問ではあった。
 だが、DSSチョーカーがエヴァの呪縛を象徴するものであり、それを外すことで完全にエヴァと決別する意味があるという〜どなたかの解釈には納得できるものである。

 シンジはマリの手を取って、駅の階段を駆け上がっていく。
 駅の外へ出るとそこには現実の、山口県宇部市の風景が広がっている。

 空撮で宇部の町並みが上昇して映し出されると画面に「終劇」の文字(旧劇場版に倣ったのだろう)。

 世界が上書きされ、エヴァのいない世界で大人になったシンジ、マリ、アスカ、カヲル、レイはそれそれの道を歩みだしたという幸せなエンディングになった(という解釈で合ってる?)。
 エヴァンゲリオンではかって、実写をアニメーションと組み合わせて表現してきた。有名なのは「Death & Rebirth」編 公開時?の映画館の客席を映し出した「Air/まごころを、君に」でのシーンだろう。
 この描写に『他人との接触を極力に避け、現実から逃げファンタジーやゲーム、アニメに逃げ込むオタクに対し「現実に帰れ」』というメッセージを込めた あからさまなアニオタ批判だったと言われたが、この令和時代にはアニメファンであることは何も恥ずかしい事ではなくアニメファンの地位も向上しライト化したことで、過去のような映像表現はもはや意味を成さなく為ったのではないか。
 そういうバックボーンがあってこその このようなハッピーエンドでもあったのだろうと思う。
 だが、あの頃の本物のオタク達はこれを見て 本当に幸せな気持ちになっただろうか?そんな疑問を感じなくもない。のだが....




 今回、色々、調べながらこの文章をまとめたのだが、何度も「判らなかった」と書くぐらい自分の中では謎が謎のまま終わったことも多かった。

 兎角、判りやすく、簡単に。が求められる令和のエンターテイメント業界。
 その真逆とも言える「エヴァンゲリオンシリーズ」は、そんな時流に反旗を翻した。と言ったら大袈裟だろうが、決して妥協しなかったプロフェッショナル〜庵野秀明が26年も愚直に(もちろん空白期間はあったが)苦しみながら作ってきた結果がこの観客・視聴者には決して”優しくない”作品になったのだろう。

 前述した『プロフェッショナル 仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』で明かされた庵野監督と実父の関係、事故で片足を失い社会を恨んでいたという実父への思い......正にシンジとゲンドウの関係、そのものである。
 現実世界では、決してその過去を変えることが出来なかった庵野監督の願いを「エヴァンゲリオン」という物語の中でループから逸脱(脱出)することで前を向こう、という思いを反映して物語の終着点を示したと考えると とても感慨深く感じたのだった。





pic





pic 84点





button