1001次 自強号
ホテルで目覚めると頭が痛い。どうも風邪を引いたようだ。幸い、症状は軽いようだったので迷わず台北駅に向かう。今日の天気は曇り模様である。
地下1階の改札ではさみを入れて貰い、ホームへ向かう。自強号が発車する第2月台(ユニタイ)に向かう。月台は、プラットホームそのものを指し、日本で言う×番線とは意味が違い、第×ホームの事をさす。
だから、ホームのどちら側から列車が発車するのか迷うのだが、台北駅の場合"A"、"B"と名付け「2月台A」、「2月台B」と言う風に使い分けていた。他の駅ではこのような区別は無かったので、何度か迷う場面があった。
台湾最大の駅「台北車站」
自強号の乗車券
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台北駅を挟む前後約4kmの区間は1989年に地下化され、現在、全列車地下から発車している。地上部分は廃止されて8年近くたつが、一部駐車場になっている他は現在建設中のTRTCの工事基地になっているようである。
台北駅のホームは4面あり、各ホームを特急用、普通用の上下に使い分けている。この地下ホーム、電車から気動車、客車、旧型客車、貨物が出入りするので眺めていると面白い。ちなみに、日本の「入場券」に当たるのが、「月台票」で値段は6元(約24円)である。普通列車の最低区間料金が11元(44円)なので、記念に買うのは良いかもしれないが、幹線系の駅では切符の発券はコンピューター化されているので、軟券である。
7:41 、蘇澳から来た自強号が到着。車内はほぼ満席であったが、かなりの乗客が下車し、回送状態で樹林へ向けて発車していった。
そのあと7:48ごろ、高雄行き自強号が入線して来た。最近、勢力を広げているTGV形式のプッシュプル1000系を期待したが、英国製の100系であった。しかも、ドアは手動で空きぱなしで入線、しかも乗客が顔を出している。自動ドアに乗り慣れた身からするとちょっと怖い。
しかし、日本に当てはめると全車グリーン車の特急列車に当たるだけあって、リクライニングシートの座り心地はすこぶる良かった。
7:55、満席で立ち客もいる状態で定刻に台北駅を発車。しばらくトンネルの中を走行し次の萬華駅手前で地上に出る。台湾鐵路局の列車の通行区分は日本と同じ左側通行である。昨夜乗車したTRTCは右側通行だったので、鉄道には2種類の通行区分が存在する。この現象は、フランスと同じである。
昨日、陥没事故があった萬華−板橋間の現場を徐行しながら通過する。上下線とも復旧はしていたが、作業員が多数出動しており、本格的な復旧作業はこれからのようである。
徐行区間の影響に加え、桃園、中[土歴]駅で乗降に手間取り、新竹(シンツー)を発車する頃には10分遅れていた。竹南から「自強号」は通称”山線”に入る。この線は日本占領時代に造られた線で山岳地帯を走る。道中は結構険しい。
ネックとなっているこの区間には、現在複線化工事とあわせ新線建設が行われおり、年内にも完成する計画だそうである。車窓からも、時折真新しいコンクリートの高架橋が見えたが、現在線が廃止されるのは少し残念である。
途中、徐行したわけでもないのだが列車はどんどん遅れ、台中(タイチュン)に到着したときには30分遅れになっていた。こんな調子では嘉義(ジャーイー)に着く時には、どのくらい遅れている事やらとも思ったが、「自強号」は踏ん張り、嘉義には30分遅れを保ったままにホームに滑り込んだ。
嘉義(ジャーイー)駅
嘉義(ジャーイー)駅からは、森林鐵路阿里山線が分岐している。森林鐵路阿里山線は、標高差2,000mもある世界有数の登山鉄道で、日本の大井川鉄道と姉妹鉄道の関係を結んでいる。
台湾に来てまず嘉義へ足を運んだのは、この森林鐵路阿里山線の乗車券を入手するためである。宮脇俊三さんの「台湾鉄路千公里(角川書店/文庫)」を読んで以来、是非乗りに行きたくてしょうがなかった路線なのである。
しかし、この鉄道1日1往復しか定期列車がないうえ、人気も凄く夏期の週末は乗車券の入手が困難であるとの話を聞いている。この路線のチケットを入手できるかどうかで、台湾の鉄道旅行の印象もがらりと変わる。
台湾の乗車指定券は3日前から一斉発売であり、森林鐵路阿里山線の乗車券は現地駅での発売分のみである。台北市内にある一部の旅行代理店でも購入できるらしいが、出来るならば、自分で入手したい。
今回の旅行に当たって、何通りかの行程案を作成し、もしダメだったらダフ屋からの購入も視野に入れていた。
早速、森林鐵路の窓口を探すが駅構内には見あたらず、台湾鐵路局の窓口に「森林鐵路阿里山線」の文字を見つけた。台湾鐵路局で販売代行をしているらしい。
ノートに「8月11日、嘉義→阿里山、13:30、5次」と書き、1名であることを指で示す。駅員は台帳を開き、空き席の確認を始めた。
台帳を覗き込むと11日はがら空きであった。今日(10日)も空きがある。この状態ならば、当日でも入手できたであろう。
取りあえず、森林鐵路線に乗れることが確定しホッとする。昨年夏の台風では、阿里山への交通網はずたずたにやられたそうなのでまだ、観光客が戻ってきていないのであろうか?。
駅前の雑貨屋で食料を手に入れ、待合室でしばし休息する。
212次 普通列車
121次普通列車(二水駅にて)
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駅で食事をしている間に雨が降ってきた。スコールらしく、ものすごい土砂降りである。第2月台に12:35 発の212普通列車が停車中であったので、早速乗り込む。この列車の編成は、日本では見かけなくなった旧型客車と雰囲気が似ている。
正確には「TP32200系」と呼ばれる形式である。車内は、デッキ無しのセミクロスシート車とロングシート車がある。セミクロスシートは、背もたれが前後にスライドする転換式である。ロングシートより転換シートの方が好きなので、もちろんセミクロス車に乗車する。しかし、古い車両だけあって汽車の雰囲気がした。
雨が少し弱くなった 12:35 定刻に発車。一路、北へ向かう。
この車両一応、自動ドアなのだがうまく閉まらないドアもある。それでも、列車は構わず走る。
車掌が廻ってきて、閉まらないドアと格闘していたが、駄目だったので準備されている鎖を取り出し、開きっぱなしのドアに鎖を張って、故障していることを示す。デッキ無しの車両でドアが開いたまま走行するのは非常にスリルがある。日本でこれをやったら大問題になりそう・・・。
いつの間にか雨も上がり、嘉義を出発後1時間ほどたった 13:33、二水(アルスェイ)に到着した。
集集線/二水−車[土呈]
集集線普通列車(二水駅)
DR2300系
台湾の車内補充券
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二水で下車したのは集集線に乗るためである。次の集集線は13:39発で乗り継ぎ時間はわずかである。時刻表を見ると13:35に集集線の折り返しが到着するのだが、5分ほど遅れた13:40頃到着した。車両はDR2300系と呼ばれる気動車である。編成は3両で、先ほどの客車と同じ背もたれを前後に動かす転換クロスシートであった。日本のキハ66,67と似た感じである。
ローカル線ながら乗客は多いため乗降に手間取り、約10分遅れて、車[土呈](ツォーツン)へ向けて発車した。この列車はドアを全開にして走行する。というより、台湾にいる間、気動車でドアを閉じて走っている列車は一度も見たことがなかった(苦笑)。
開きっぱなしのドアの横で、柱に捕まりながら、前方風景を楽しむ人も多数いる。気動車は時速60キロほどで飛ばすので、台湾では鉄ちゃんも命懸けである(^^;;
列車はしばらく田園風景の中を走る。この辺一帯は2毛作らしく、田植えが終わり、生育の最中と言った感じであった。真夏なのだが、5月下旬のような感覚になる。濁水(スォースェー)を過ぎると緑が多くなり時々、川に沿って走る。平行する道路からの見物客も多い。集集線沿線は行楽地としてかなり賑わっている様子である。車[土呈]は、景勝地・日月潭の入口にもなっているので、その利用者もいるのかもしれない。
ローカル線では駅に到着する度に、乗客の数は減るのが一般的であるが、集集(チイチイ)、水里と停車するに従って、乗客が増えてくる。随分と不思議な傾向である。結局、満員で終着駅の車[土呈]に14:32頃、到着した。
さて、時刻表によると車[土呈](ツォーツン)には14:22着、14:25発なので3分しか折り返し時間がないが、すでに10分遅れている。たぶん、運転士と車掌の入れ替え後、すぐに発車するであろうが、帰りの乗車券を持っていない。急いで、ホームに飛び降りたが、他の乗客のほとんどはそのまま座っていた。
まさか全員、集集線の乗車に来たのではないだろうなあ〜。
冗談はさておき、折り返しの列車の座席確保が目的だろうと推測できるが、いったいどのような乗車券の買い方をしているのか?
台湾の乗車券のルールがどうなっているのかわかならいので何とも言えないが、きちんと乗車券を買っているようには見えなかった。
一端改札を出るが、改札付近に売店があるだけの無人駅であった。すぐに車内に戻り、発車を待つ。14:35頃、10分遅れを保ったまま、下車しなかった満員の乗客を乗せて二水へ向けて出発した。
次第に乗客が増えてきて、立ち客も増えてきたが相変わらず、ドアは開いたままである。
乗車券は車掌にメモを見せて二水まで購入する。台湾の車補は面白く、発駅・着駅を手記入するが、車補の左下が値段に合わせて、短冊のようにちぎられているのが面白い。 結局、列車は10分遅れを保ったまま、二水に到着した。
電車:2466次/二水−彰化
通勤型電車500系
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これから、電車で彰化に出て、自強号で新竹に向かうが、彰化での待ち時間が短いのであらかじめ、メモに「二水→彰化→新竹」と記入し、彰化−新竹間は「自強号」と記入し窓口に出す。
職員は、端末をたたいて調べていたが、「自強号」は「無座(座席がない)」と言う。日本で言う「立席券」は、「自願無座」と言うと知っていたので、メモに書いて提示したが、駅員は首を振るのみで、彰化までの電車の乗車券しか買えなかった。仕方がないので、彰化までの乗車券でホームに入り、後で精算することにする。
乗車した電車は4連1編成のオールロングシート車である。韓国の大宇社製の500系と呼ばれる形式である。日本でよく見慣れた一般通勤型で、701系と同様に長距離運用もあるためトイレが付いている。冷房車であると言う理由で「復興号」運賃(急行料金みたいなもの)が適用されたのであるが、一般通勤型電車に別途料金を適用するのは、日本の感覚からすると理解に苦しむ。
が、乗ってしまえば真夏の台湾だけあって、涼しくて気持ちよい。風邪気味で熱もあったからかもしれないが・・。足も普通客車と比較して断然速いので、ロングシートも短距離ならば気にならないが、長距離乗車はやはり辛いだろうな〜。16:05彰化(ツァンファー)に到着。
自強号:1018次/彰化−新竹(海線経由)
電車は彰化駅の第3月台に到着する。交通の要所だけあって大きな駅である。竹南で海線、山線に分かれた西部縦貫線は彰化で合流する。午前中に乗車した「自強号」は台中を通る山線を経由したので、台湾の鉄道を完乗するためには海線に乗車しなければならない。幸い、次の自強号は海線を通る数少ない自強号である。
16:13発の自強号は10分ほど遅れて到着。車内はすでに立ち客で混雑していた。運用についていた車両は100系だったので、車番を調べたら朝乗った編成と同じであった。こちらが、集集線に乗車している間に高雄まで往復してきたのである。
さて、彰化を出発した自強号は海線に入るのだが、この列車は変な走り方をする。まず、彰化駅を出てしばらくの間は、海線、山線とも同一の線路を走るのだが、分岐地点まで右側を走行する。台湾の鉄道は日本と同じく左側通行で、海線も左側にあるにも関わらずである。
山線と分岐し、海線に入ってもどうもおかしい。海線の一部区間は複線化されているのであるが、「1018次自強号」は複線区間では、左側の線路を走ったかと思えば、右側の線路を走ったりと忙しい。途中、走行中に列車を追い抜いたので、複線区間は下り/上りの明確な区別はなく単線並列で使用しているようである。日本では湖西線が単線並列として使用可能であるが、現実には運用していない。
当然、対向列車とのすれ違いもあるので、「よく事故が起きないものだ」と感心する。どのように運行管理しているのだろうか?。
運行の様子を観察するのは面白いが、風邪が悪化したらしく頭が痛く立っているのも辛かった。15分ほど遅れて竹南に到着。山線経由の「復興号」と同時進入する。時刻表を見ると112次/基隆行きか、132次/松山行きらしい。竹南では自強号が先に発車し17:55頃新竹(シンツー)に到着。
精算所窓口に行き、二水から彰化までの電車の乗車券を見せる。窓口に座っていたのは年輩の駅員で乗車券の「彰化」の駅名を指さし、「自強号(ツーチャンハオ)」と言う。 年輩の駅員さんだけあって、日本語が理解できるのか、「どこから来たの?」と日本語で尋ねられる。「東京」と答えると、「東京から・・、ありがとうね。」と答えが返ってきた。
新竹
体調が最悪なのでさっさとホテルに入りたい。駅前を見回すと「東賓大旅社」の文字が目に入る。台湾ではホテルのことを「飯店」または「旅社」と呼ぶ。
「大飯店」が台湾観光協会に所属しているホテル、「旅社」が属していない小さなホテルと大別される。他に「大飯店」の看板も目に入ったが、風邪が悪化しており、さっさと休みたかったので、迷わず「東賓大旅社」に直行する。
しかし、歩道はスクータでいっぱい停車していて歩くスペースが無く、やむをえず車道を歩くが交通量も多く歩きにくい。日本では放置自転車が目立つが、台湾では放置スクータが駅前あふれているのである。
ホテルのフロントに立つと、親父さんに「・・・」と言われる。わからずにいると、「日本人か?」と聞かれるのでうなずく。「ちょっと、待って。呼んでくるから」と奥からおばあさんを呼んできた。
おばあさんと宿泊の交渉をし、600元(約2,400円)で話がまとまる。しかし、台湾で日本語がこんなに役立つとは思いも寄らなかったなあ。この旅行全体を通して台湾では英語より日本語の方が通じ易かった。
少し横になって体調もよくなったあと町に出かけて食事をとる。帰り道に迷子になりながらも(^^;何とかホテルに戻り体調回復を願いつつ早めに就寝とする。
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