「分権化の方法 2-1」 権限委譲を論理的に、さらに一歩進めると分権化の問題があります。 殆どの企業組織は、高度に集中化された階層組織でスタートしていますから、命令は、全てトップから出されます。そして、命令は目的別のふるいにかけられ、ヒエラルキー形式の命令系統を経て各組織に流れていく仕組みになっています。
しかし、会社の成長と共に、商品開発あるいは、技術革新など、企画あるいは活動計画を、組織の中央から打ち出すことは、管理範囲を大きく超えるため、次第に困難になります。 ですから、組織活動として、現業など第一線にいる人達は、中央が全て、自分達の情況あるいは問題点を把握した後、それからの反応による指示を、頼りにしなければならない訳ですから、自ずとダイナミックな活気ある状況の中で、敏速に業務に即応していくことはできなくなります。 この組織の成長、あるいは、肥大化によって発生するところの、管理やニーズ対応などの、管理能力の、飽和による限界問題を克服するため、分権化‥‥重要な権限を、各経営単位に与え、それぞれ経営単位毎に、独自の意志決定を下させること‥‥が行われています。
経営の方法論として、一部の会社では、この分権化を事業部による独立採算制を導入して、事業部の独立を世の中に広くもたらしています。
さらに、事業部の責任者は、必要なときには親会社に、援助を求めたり、相談したりもしますが、原則として、事業部は独自に計画を立て、独自に組織を発展させ、独自に、活動の命令、調整、統制を行います。 この事業部制などの独立単位は、製品別、得意先別、あるいは地理的要件のように、論理的な分類法に基づいて選択する方法をとっています。
いま行われている集権化にも、分権化の場合のように、利点はあります。
つまり、集権組織の最高経営責任者は、大きな権力を持ちますから、従って威信も持っています。
集権組織のトップに比して、分権組織の企業トップ・マネジメントは、それほど大きな権力は持っていません。 分権化を進めるには、部下を充分に信頼し、部下にも重要な意志決定を、させるくらいでなければなりません。 一方の集権化された会社は政策や実務の統一を図ります。その結果、人間性の持つ創造力を発揮できなくしてしまう傾向が出てきます。 特に変化する状況に応じて、活動の形式を変えて行くとき、いろいろ許可をとることが、障害になるような場合、その傾向が著しく現れます。
集権化のケースにおいては、本社のスタッフ・スペシャリストが重要な役割をはたします。彼らが物理的にも、組織上においても、トップ・マネジメントの近くにいるからです。
スタッフとラインは、企業とヒエラルキーの頂点に立つラインの経営責任者とともに、強力な経営管理チームを形成するようにしているのです。 分権化された組織では、トップ・マネジメントと、そのスタッフの重要性は、低下します。そして、仕事の多くの面に、責任を持つ総括責任者が、各部門に生まれてくるようになります。そこには、将来の総括管理者になる者を訓練できる、企業内教育(0JT)の利点があります。 集権化された経営管理の限界の一つには、専門家の養成に力をいれると、専門化が非常に進みます。その結果、総括管理者が必要になった場合においても、総括管理者になれる者が、不在になってしまうことです。
集権化された会社では、トップ・マネジメントと、組織の下層部との間の、距離があるため、双方が互いに、他方を、実際に意識することは、ほとんどできない状態です。 集権化は統制を強めます。それが非能率的な教務を排除したり、会社の方針からの逸脱を防ぐのには役に立ちます。実際に、集権化によって、機械的な統制を、組織に組み込むことが容易になります。それは、トップ・マネジメントとライン管理者の「接近」が統制をしやすくするからです。
これに対して、分業化された会社は、局部的な状況を、支配できる利点を持っております。ですから、局部的な状況には、迅速に即応することができます。 つまり、新しいアイデアを、一つの経営単位でテストを行い、これが成功すれば、他の経営単位が採用することができます。これはまた、リスクを分散することにもなります。従って、失敗して損害を被るのは、企業内の一単位だけですから、企業内の他の単位に、影響を及ぼすようなことには、ならない訳です。続く
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