「職務分析」 組織は、個人の学習のみを通して学びます。学習する個人が組織の中にいても、それは、組織が学習することにはなりませんが、学習する個人がいない限り学習する組織などはあり得ないでしょう。
研究開発、企業経営、あるいはビジネスの、どのような時点であっても、それを動かすのは、人間です。いかなる面であれ、大多数の会社は組織内の各職務を評価する職務分析によって、職務を構成する義務や責任などの諸要因をきめています。 職務分析の続きは、第2部に予定している職務資格明細書です。これには職務を遂行する上で必要な、技能や適性が詳細に記載するつもりです。その内容は、必要な肉体的、精神的、心理学的特性を始め、教育程度、過去に受けた訓練や、経験などになります。この面の職務資格分析は、管理者やスタッフを選ぶ際に、経営層が必要とするものです。 職務資格明細書が、当該職務において、成果が挙げられる必要条件を、的確に記述したものであれば、職務配置の候補者をふるい落とす際に、大いに利用することが出来ます。ところが、多くの職務資格明細書は、実情に添いかねています。長年ファイルされたままになっている場合が多く、現在の職位の軽重とは殆ど関係のない状態になっています。 職務は、そこにつく人によって変わったり、技術の変化に伴っても変わります。さらに、様々な時期に直面する問題によっても変わる性質を持っています。職務明細書は、作成された時点で、すでに現実離れしていることが多いのですが、それは、実際の条件からかけ離れて、職務を理想化してしまうからです。 職務は、全て、定期的に再評価しなければなりません。長い間、同じ人がついていたあと、空席になった職務の再評価は、特に重要になります。職務には、そこについていた人の匂いが必ず残るものです。ですから、長期在職者を交替させる場合には、その人の持っていたイメージを、考慮に入れる必要がでてきます。 これは、職務そのものからみれば、大変な誤ちを犯し易いことになりますが、逆に、交替が成功する可能性もあります。職務についての新しい研究によって、前任者の個性に、影響されることなく、正確で、新しい職務資格明細書が、作られることになるとかんがえられます。 職務資格明細書の、主要な情報源を、きまぐれ、偏見、個人的感情などにより、職務を色眼鏡でみる例が実に多いからです。職務資格明細書を企画設計する担当者の欲望にも、公平な配慮が必要ですが、基本的には、常に正しい見通しにたって、これを見る必要があります。 職務資格明細書作成の指標となるものには、職務の観察、当該職務と、これに対応する社内の、他の職務との関係研究、他社の関連職務についての知識なとがあります。この場合、職務の本質的な特徴を、主要な判定基準とすべきです。 新しい管理者を選ぶ場合、経営者は、とかく、自分自身を鏡に写したような人、乃至は、前もって考えた特定のからだつき、人柄、ときには、地縁、学縁、のパターンにあった人を求めがちです。 これは、素晴らしい能力を秘めた、スタッフ・メンバーを、排除する恐れがあるばかりでなく、近視眼的見方によって、往々にしていままでの創造力を封じ込めます。その結果として、「イェスマン」的雰囲気を助長する「組織人間」的傾向を生み出す嫌いがあります。 管理職の椅子を、外部に解放することは、また、新しいアイデアに対して、門戸を開放することになります。しかも、新鮮な活力を会社にもたらすかも知れません。何時もやっていることを、ただ、漫然と続ける代わりに、好機を逃さず利用するようにします。
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