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◆今週の記事
◆えーじゃないか、えーじゃないか
幕末史の謎の一つに「ええじゃないか」 という現象がある。幕末も幕末、大詰めとなった慶応3年(1867)8月から京都周辺で始まったとされ、天から神様のお札が降ってきたとして人々が踊り狂って練り歩き、「ええじゃないか、ええじゃないか」とはやしたてる、という謎の流行で、近畿・東海など広い範囲に広がり、12月になって王政復古の大号令が出たあたりでパタリと終息した。この間に江戸幕府は大政奉還に踏み切り、新政治体制の発足が現実になってきており、それを感じ取った大衆が「世直し」を期待して政治的アピールをこめて踊り狂った、と一般には見られている。それにしても不自然な大衆運動でもあり、薩長側が仕掛けた政治的謀略工作とする説もあったりする。
そもそも「ええじゃないか」という言葉が謎である。「世直しをしてもいいじゃないか」という意味らしいのだが、なんで「いいじゃないか」「よいじゃないか」ではなく「ええじゃないか」と妙に訛っているのが変である。この問題について近年、日本の研究者ではなく、英米の言語学の専門家たちから次々と新説が発表され、熱い論争が行われている。
まずイギリスの研究者、フォックスオード大学のアーネスト=カトウ 教授は、「ええじゃないか」は当時の日本の新たな政権の選択肢に大衆が答えたものではないかとの説を唱える。
「幕末当時の日本の政治状況には、イギリスやフランスも深く関わっていましたから、アルファベットを交えた問いかけが行われたと思われます。
例えば、
(A)天皇中心の新政府
(B)旧幕府勢力を中心とする新政府
(C)欧米列強の植民地になる
(D)新選組に全部任せる
…といったように。その問いかけに対し、大衆が「Aじゃないか」 と応じたというのが、あの奇妙な流行の深層ではないでしょうか」 (カトウ教授)
これに対し、アメリカのスソミニアン博物館のアーネスト=ムトウ 研究員は、「ええじゃないか」という言葉自体が日本語ではない、との新説を提示する。
「当時の日本では、それまでのオランダ語では世界的に通用しないと悟り、福沢諭吉などが英語学習を広めています。「ええじゃないか」という奇妙な言葉は実は全部英語による暗号か何かだったと思われます。似た発音の英文を探すと「Age A Night Car」があり、日本語訳すると「夜間走行車を老化させる」 という意味になります。まぁ暗号ですからその意味は私にもわかりませんが」 (ムトウ研究員)
こうした当時の英語の日本への浸透に関しては、より大胆な説も唱えられる。アメリカ・バーハード大学のアーネスト=イトウ 客員教授はこう指摘する。
「『慶応』という当時の元号も、「KO」 に通じていて、決定した朝廷側の幕府打倒の意図がこめられています。「ええじゃないか」騒動のあと間もなく『明治』と改元されますが、これも「May Easy」 (簡単にいくだろう)という新政権の行方に願いを込めたものでしょう。漢字でも「明るく治める」ですから似たようなものかと。これは明らかに文法的に間違っているので日本人が考えたのでしょうが。和製英語というやつですね」 (イトウ客員教授)
日本人が英語と付き合い始めてから160年ばかり。幕末の混乱期に変な形で受容したことが、あれだけ義務教育で英語を習ってもなかなか身につかない原因となっているのかもしれない。
◆平安貴族政治に関する一考察
現在NHKで放送されている大河ドラマ「光る君へ」は紫式部 を主人公に、平安中期の貴族社会を描く意欲作であるが、紫式部と同時代人であり個人的に深い関係にあったとされる藤原道長 ももう一人の主人公といっていい扱いとなっている。NHKの大河ドラマは歴史上の有名人を主人公とするのが通例だが、きわめて重要かつ知名度の高い人物でまだ取り上げられていない人物として「藤原道長 」「足利義満 」の二人については「いつかはやらねば」とNHKドラマ部門の幹部がコメントしたことがあり、「光る君へ」はかねて計画されていた道長ドラマの実現という側面もあるようだ。
1000年も昔の時代ではあるが、ドラマ中にも登場する清少納言 の随筆「枕草子」には現代人とほとんど変わらぬ人々の感情や行動が見受けられる。人間千年やそこらではほとんど変わらないということであり、当時の貴族政治も現代の議会政治も似たようなところは結構ある。現在の与党の政治家には二世、三世それ以上の世襲政治家が多くおり、実質貴族政治となってるとの指摘はかねてからある。
藤原道長はその直筆の日記の一部が現存していて、道長がマメにあれこれ記録をつける人だったこともあって当時の貴族社会の様子が詳しくわかる。日記といっても彼個人の心情などは書かれておらず、日々の行事や他の貴族たちとの交流が中心で、とくに宴会がたびたび開かれ、その際に参加者があれこれと贈り物を権力者である道長に自賛しており、道長は誰が何を届けてきた かマメに記録している。これなどは政治資金パーティーを開いてパー券を各方面に買わせる現代政治と同じようなもの。
こうした権力者への付け届けをするために、中流貴族たちは国司として地方に派遣されると、公的な税以外にあれこれ民衆から絞りとり、その一部を言わば「裏金」 (当時は貨幣は使用されていないので現物だが) として懐に入れてもいた。こうした行為は蹴鞠の技に例えて「蹴り戻し」 などと呼んでいたようである。
道長自身もそうした貴族たちから集めた物品を全部自分の懐に入れていたわけでもない。派閥の領袖(親分)として子分たちに分配してやる必要もあった。政治にはカネがかかるというのも今も昔も同じで、夏には「氷代」 (当時夏にかき氷を食べるは貴族の最大の贅沢である) 、冬には「もち代」 (平安時代から縁起物として正月や儀礼でよくモチを食すようになった) といった名分でバラマキを行っていたらしい。
権力の絶頂を迎えた道長が詠んだ有名な歌がある。
「このよをば わかよとそおもふ もちつきの かけたることも なしとおもへば」
当時は濁点は使わないし、この歌自体は道長自身の日記の当日の記事に記録されてなく、現場にいた藤原実資 が聞き書きしてるだけなので漢字も正確にはどう書くものだったか分からないので、上記のように書いてみた。「このよ」は「この世」と解釈されているが、実は「この夜」だったという説はあり、「この夜は私のための夜のようだ」の意味だった可能性はある。そして「もちつき」も「望月」(満月)と解されているが、これも実は宴会の席で子分たちに分配するための「餅つき」 をしていたのであり、とだえることなく餅つきの音が響く様子が自分の権勢の表れであると道長はこの夜の宴会に至極満足していた、と解釈可能である。
道長の時代には物価が高騰して政府が対応に追われているし、貴族たちに寄進される荘園が広がって彼らは豊かになる一方で貧富の差拡大や税収の不足なども問題となっており、こういうところでも1000年たってもやってることはあんまり変わってないのである。
◆パリは燃えているか?
前回はコロナウイルスのパンデミックにより開催が一年ずれてしまったが、夏季オリンピックは4年に一度、ちょうど4の倍数の年に開催される。今年はパリでの開催で、2028年はロサンゼルス、2032年はブリスベンと先の先まで決まっている。最近は開催地争いも起こらなくなっちゃってるんだよな。
そして夏季オリンピック開催の年は、世界中で重要な選挙が集中する年でもある。これも世界各国の指導者に任期四年が多いためで、中でもアメリカ大統領選挙は同国のみならず世界全体の趨勢に影響を与える一代政治イベントで、オリンピック並みに世界の注目を集める。
せっかく同じ年にやるのだから、五輪と選挙を同時にやってはどうか、という案がIOCとバイデン 大統領の間で持ち上がっている、との報道が4月1日にUSO通信から発せられ、世界を驚かせている。大胆な提案であるが、前回の大統領選挙でトランプ 前大統領とその支持者たちが不正選挙だと騒ぎ、あげくに連邦議会議事堂が襲撃され死者が出るという歴史的異常事態が起こっており、今年の大統領選挙も同じ顔合わせで戦われることがほぼ7確実視されるなか再び混乱が起こることが懸念されている。
どのように選挙をしようと敗れた側が不正だと主張して譲らない可能性があり、それならいっそ、衆人環視のもとで候補者本人同士を競わせ、勝敗を明白につけた方がよいということになり、同じ年に行われる夏季五輪に目を付けたわけである。
計画によれば、大統領選挙に立候補した者(ほとんど注目されないが毎回二大政党以外の候補者は複数いる)は全員、アメリカの五輪代表チームに属してパリでの大会に臨み、全50種目に出場する。それらの種目はアメリカ合衆国の各州の選挙と同じ扱いとなり、例えば大票田のカリフォルニア州はマラソン、そうでもないアラスカ州はアーチェリーといったように州ごとに種目を割り振り、そこで候補者間で争ってより高い記にその州の選挙人が割り振られる。どの候補者も50種目全部出場しなければならず、砲丸投げな槍投げ、走り幅跳び高跳び、ランニング系の陸上各種目から、水泳協議やボート、自転車・馬術や卓球、射撃競技まで幅広く行うトライアスロンも超えるハードな戦いとなるが、全てテレビで生放送し、不正の余地もなく明白に勝負がつくことから前回のような騒ぎは絶対に避けられそうだ。
問題は有力候補者二人がいずれもかなりの高齢であることだが、自信をもって計画を進めたバイデン大統領に対し、トランプ氏もそれなら負けられぬと応じ、話はついている模様。双方ともこれから大会に向けて体力トレーニングに臨み、文字通り老骨に鞭打って戦うことになりそうだ。一部では各地をハードスケジュールで遊説するより楽なのでは、との声もあがっているとか。
もちろん、ドーピングなどの不正が行われる可能性はあるので、競技ごとに尿検査など入念なチェックが行われる。またパリ大会ではセーヌ川で水泳競技が行われるので汚い水との懸念も出ており、その面でも候補者にとっては健康管理に気を付けないといけないだろう。
また、こうした方式なら二大政党以外の候補者、たいていは泡沫扱いされている候補者にも、年齢と体力で勝利を収める可能性も高く、。毎度選挙のたびに問題になる二大政党制や選挙人制度を改革するいい機会にもなるのでは、との声もある。
なお、候補者に万が一という事態もかなりの確率でありうるため、副大統領候補は競技に参加せず、もしもの時のため待機してテレビ観戦する予定とのことである。
◆南朝プロパガンダ漫画!?
「漫画」という言葉は江戸時代の画家・葛飾北斎が、デフォルメの効いたこっけいな絵を集めたものを「北斎漫画」と題して発表したのは最初と言われるが、その後日本がマンガ大国になるルーツは、平安時代以来の絵巻物に求めることができる。平安時代に早くも「源氏物語」などを絵と文章で分かりやすく語る絵巻物が製作され、これを「漫画化」のルーツとみる向きもある。絵柄もかなりデフォルメされ、描くのに邪魔な屋敷の屋根や壁をとっぱらった構図など現在の漫画表現に通ずるところは多い。絵巻物に漫画のような「コマ割」はないものの、同じ画面内に別の時間・空間の場面を描き、それを巻物を手でスクロールさせることでスムーズな場面転換を表現しているところなど、現在のスマホで読む縦スクロール漫画で原点回帰してる気配すらある。
こうした絵巻物はビジュアル的に読者にうったえることから、寺院や神社の由来を説くものや、地獄の凄絶さを説くものなど宗教思想の普及にも利用された。また歴史ものや戦争ものもあり、これらも一定の史観・政治思想を人々に植え付けるのに利用できた。中国でも「連環画」と呼ばれる絵物語が文化大革命の際に庶民向けプロパガンダ素材として利用された例があるし、日本の絵巻物だって同様のことはあっただろう。
さて南北朝時代といえば、天皇家が北朝と南朝に分裂し、天皇が二人いて正統性を争った政治的にとても複雑だった時代である。中国から輸入された朱子学のイデオロギーが後醍醐天皇 ら南朝勢力にはあったとも言われ、軍事的な弱さをそのイデオロギーで補い、なんとか命脈を保ったとも言える。そのイデオロギーを普及させるために南朝勢力が絵巻物を利用していたことが、南朝の拠点であった吉野山中から4月1日に偶然発見された絵巻物により初めて確認された。
その内容は、南朝総帥である後醍醐天皇の生涯を、無学な人でも分かるよう平易かつエンタメに徹して語るものだった。父と別れた母についていって祖父に育てられた少年時代、父の意向で兄の息子に継がせるまでの「一代限り」の約束で皇位継承者となったこと、その皇太子時代に名家のお嬢様を誘拐して既成事実を作ってしまうというスキャンダラスな青年時代、そして天皇となってからは鎌倉幕府打倒の計画をめぐらし、「正中の変」では部下に責任を押し付けて逃げることに成功、「元弘の変」の時にも宮中に逃げ込んできた部下を仮病を使って見殺しにして逃げることに成功、それでも幕府の手が及ぶと宮中から逃げ出して笠置山に立てこもり、そこからも逃げたがさすがにとらえられたものの、島流しにされた隠岐島から逃げ出すことに成功、各地の武士の蜂起もあって幕府打倒・京都凱旋に成功する。
建武の新政についてはいろいろと不都合なのかさらっと流し、足利尊氏 の反乱で建武政権は崩壊、後醍醐はいったんは高氏に幽閉される身となるものの、またまた逃げ出すことに成功、吉野に移って自身が正統な天皇であると宣言する。ここまでの波乱万丈の生涯をカッコよく絵巻物で語り、後醍醐の支持者を集めるという意図で製作されたものだろう。
とにかく何度となく逃亡に成功する天皇であることから、題名は「逃げ上手の大君(おおきみ)」 と付けられていた。話を面白くするために実在人物だけでなく架空キャラも多数登場させ、ラスボス尊氏とその配下の敵将たちと次々戦っていく王道的冒険譚となっており、プロパガンダ作品としても優秀と評する研究者もある。
それだけの作品なので、戦前以来の南朝称揚の復活を企図する一部保守系団体も関心を示しており、今年中にもアニメ化しようとの動きもある。似たタイトルの南北朝ネタアニメの放送も決まっているが、あちらでは後醍醐が顔もまともに描かれないので競合の心配はないという。
「そもそも『逃げ上手』というなら恐らく日本史上最多の逃亡記録を保持する後醍醐帝の方がふさわしい」とアニメ化を進める関係者は語っており、商標登録の問題を回避するため「元祖」とか「類似品にご注意」といった注意書きをつけることも検討しているという。
2024/4/1 の記事
(間違っても本気にしないように!)
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