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□ターミナス(Terminus)
 銀河系の周縁にある惑星、およびそこにある都市。日本で最初の全訳である厚木淳「銀河帝国の興亡」では「テルミナス」と表記されていた。
 「銀河の渦巻きの最外縁」に存在する孤立した恒星の唯一の惑星である。 トランター銀河帝国の後期、銀河紀元11500ごろに発見され、人類の居住条件も備えていたが資源が乏しいために入植は行われなかった。銀河帝国末期に 「セルダン・プロジェクト」が帝国の公安委員会の摘発を受けた際、追放同然の形でこの惑星にハリ=セルダンと銀河百科事典編纂スタッフが送り込まれた。た だしその「追放」すらもセルダンらの予想のうちであり、この惑星は最初からセルダンの意中であったとされる。彼らにより「第一ファウンデーション」がここ に設置され、以後「第一ファウンデーション」の首都惑星として機能する。「ターミナス市」はターミナスに存在する唯一の都市とみられる。
  およそ10万人の事典編纂者とその家族で発足した「第一ファウンデーション」だったが半世紀のうちにその人口は100万人にふくれあがり、百科事典編纂と は無関係の市民も増加した。このため市政府が作られその初代市長にサルヴァー=ハーディンが選出された。当初皇帝権力を背景にファウンデーションの管理権限を握っていた百科事典委員会 理事会と市政府の衝突も起こるようになり、ハーディンは最終的にクーデターという手段で百科事典委員会から 権力を奪取した。
 サルヴァー=ハーディンの時代にはターミナスはその高い科学技術に「宗教」の衣をまとわせて周辺諸国を支配下においていったため、ターミナスは宗教の聖地の役割も担っていた。その後は活発な経済活動の中心地ともなっている。

□ターミナス市長(Mayer of Terminus City)
  「第一ファウンデーション」の首都となるターミナス市の首長。第一ファウンデーションが最初に設立された時期には銀河百科事典編纂スタッフとその家族の計 10万人ほどの小集団だったが、半世紀もすると人口は100万人に膨れ上がり、百科事典編纂とは無関係の人も増えたこともあって自治政府の機構を整えた。 その初代市長に選出されたのがサルヴァー=ハーディンである。
 ハーディンが百科事典委員会から権力を奪取したことでターミナス市長はそのまま 「第一ファウンデーション」の最高権力者を意味することになった。科学力を宗教的に用いることで周辺を征服したハーディン、経済力によりさらに勢力を拡大 した商人出身のホバー=マロウなどがファウンデーション草創期の名市長である。
 第一ファウンデーションが拡張を続けて安定期に入ったファウンデーション紀元4世紀初頭には民主主義が形骸化し、インドバー家が3代にわたり市長を世襲したこともある。

□ターミナス・シティ新聞(The Terminus City Journal)
ターミナス市で発行されている新聞。表向き一般の民間新聞だが市長であるサルヴァー=ハーディンが影響力をもっており、その意図から情報を流したり扇動をおこなうことがある。

□第一次水星探険隊のロボット
2005 年に実施された人類初の水星開拓で使用されたロボット。会話は可能だが無線コントロールはできず、人間が直接乗って命令を下さなければならない(このため グレゴリィ=パウエルは彼らを「ロボット馬」と呼んでいる)。また当時の反ロボット感情を考慮して非常に卑屈な話し方をするように設計されている。エネル ギー源は原子力で直径2インチほどの球体を体に差し込むことで動作する。
□第一条(The First Low)
「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また危険を看過することによって人間に危害を及ぼしてはならない」と規定したロボット工学三原則の第一条。「ロビイ」において初めてこの条項についての言及がある。「迷子のロボット」に登場するNS2モデル(ネスター)の一部は、仕事上の都合から第一条を完全には刻みつけられていなかった。ロボット開発史のごく初期だから可能だったのだろうか。これの除去は数学的には「陽電子場の方程式に実数の解がなくなる」と「迷子のロボット」でボガート博士は解説している。

□第一ファウンデーション(First Foundation)
 ハリ=セルダンにより銀河系の周縁の惑星ターミナスに設置された「ファウンデーション」の一つ。資源は乏しいが高い科学技術力をもったこの「ファウンデーション」は幾度もの危機をセルダンの予知通りにくぐりぬけて、1000年後に第二銀河帝国を築く礎となった。
 初 めは「銀河百科事典」編纂のための組織として発足したが(そのころは「百科事典第一財団(Encyclopedia Foundation Number One)」の呼称もあった)、50年後の最初の「セルダン危機」の時にそれが口実に過ぎなかったことがセルダン本人の言葉で明 かされた。トランター銀河帝国衰退のなかで周辺に独立王国が成立してファウンデーションをおびやかしたが、市長サルヴァー=ハーディンの指導により高い技 術力を「宗教」として用いて征服した。さらにその技術力を生かして周辺地域に商業活動を行い、ホバー=マロウが市長をつとめた時代には経済力を武器に強敵 を打ち破ってその勢力を拡大した。
 建国から200年が経ったころ、クレオン2世のもとで勢力を一時取り戻していたトランター銀河帝国と衝突、将軍ベル=リオーズ率いる帝国軍の侵攻をうけたが、この危機もセルダンの予測通りに切り抜けた。
 そ の後建国より300年が経過市長職がエンドバー家によって世襲され、第一ファウンデーション支配下にあった諸世界の反発を招いた。これもセルダンの予知す るところだったが、心理歴史学では予測不可能な突然変異体「ミュール」が出現して銀河系の大半を征服、第一ファウンデーションもミュールに征服されること になってしまった。ミュールの死後、その後継たらんとしたカルガン太守も打ち破り、その後は順調な成長を取り戻したらしい。

□ダイヴァート家(Diverts)
トランター銀河帝国の有力貴族。帝国末期にはチェン家と共に公安委員会を支配下において帝国を牛耳った。

□太守管区(province)
銀河帝国の行政単位。厚木淳訳では「星州」と訳されている。日本語では「県」に相当するが、銀河帝国がヒントにしたローマ帝国では「属州」のことである。下位の行政単位に「属領(Prefecet)」、上位の行政単位に「星区(Sector)」がある。
□耐熱服(insosuit)
「堂々めぐり」に おいて登場。太陽の強烈な熱を浴びる水星上で人間が活動するために製作された作業服。素材は耐熱性のてプラスチックと化学的に処理されたコルクからなり、 内部の空気を乾燥させる装置もついている。太陽の直射にも20分間は耐えられ、さらに5分から10分ほど中の人間の生命を維持できる。

□第二ファウンデーション(Second Foundation)
ハ リ=セルダンにより銀河系の端「星界の果て」に設置されたもう一つのファウンデーション。科学技術力を発達させた「第一ファウンデーション」に対して、ご く少人数の心理歴史学の専門家で固められて心理歴史学および人間の精神感応力をさらに発達させ、人類の歴史の矯正を任務とした。そのためその所在は注意深 く隠されている。
突然変異体「ミュール」の出現とその銀河系征服によりセルダンの計画は大きく狂ったが、そのような事態のために用意されたのが 「第二ファウンデーション」であり、実際に彼らの介入によりミュールの野望はくじかれた。だがそのことで第一ファウンデーションの人々に「第二」の存在を 意識させ、警戒心を呼ぶ危険も招いた。
ごく少数の精神感応能力をもつ人々で構成され、そのリーダーは「第一発言者」と呼ばれる。
□タイムズ(Times)
「ロビイ」中で父親のジョージが読んでいる新聞。実在するものと同じと思われる。
□ダイヤフラム(diaphragm)
振動盤。初期ロボットでは、ロボットが音声を発する際に使用されている。「堂々めぐり」で言及あり。

□タバコ(tobacco)
  人類の黎明期からの嗜好品。未来世界では喫煙は再び寛容に扱われるようになったらしく、銀河帝国時代もファウンデーションでも人々によってたしなまれてい る。ヴェガはタバコの名産地とされているし、ファウンデーションの設立者ハリ=セルダンもヘリコンのタバコ栽培業者の子だったという伝説がある。そのせい かどうか、「時間霊廟」に現れるセルダンの映像は「吸いたい方はご自由に」と挨拶している。
  第一ファウンデーション初期の指導者サルヴァー=ハーディンも若いころ「ヴェガタバコ」を愛用していたし、老後に自身は喫煙をやめていても訪問客には自然 にタバコを勧めている。銀河帝国の財務大臣ドーウィンも嗅ぎタバコを吸っている。だが百科事典編纂者ルイス=ピレンヌのように嫌煙家も存在することも明ら かである。

□ダリバウ(Daribow)
「百科事典編纂者」で言及される星区。ターミナスの近くの銀河系周縁部にあるらしく、アナクレオンやスミルノ同様に早期に帝国から離脱して王国を形成した。

□短針銃(needle gun)
小型の針を放つ銃。武器というより狩猟の道具と見られ、アナクレオンでは「ニャック鳥狩り」で使われている。

□チェン家(Chens)
トランター銀河帝国の有力貴族。帝国末期にはダイヴァート家と共に公安委員会を支配下において帝国を牛耳った。
□地球連邦
2044年に地球上 の全世界の諸国家を統合する形で成立した連邦国家。全世界を東方・熱帯・ヨーロッパ・北方の四つの地区に分け、それぞれにロボットである「マシン」が配置 されて実際の政策が立案・実行されている。本部はニューヨークにあり、全人口は33億人である。初代統監にはスティーブン=バイアリィが就任した。
□超原子モーター(hyperatomic motor)
詳細は不明。「うそつき」においてロボット「ハービィ」がこれに関する本を読んでいる。
□超原子力エンジン(Hyperatomic Drive)
太陽系内で利用される原子力エンジンに対して、恒星間飛行を可能にする動力。2020年代に小惑星上のハイパー基地で研究が開始されている。スペース・ワープ・エンジンの項も参照。
□「超原子理論」("Theory of Hyperatomics")
「うそつき」中でロボット「ハービィ」が読んでいる本。キャルヴィン博士がハービィに読ませた超原子力モーターに関する三冊の本の一冊。
□チン=ソウリン(Chin Hso-lin)
「災厄のとき」に 登場する、地球連邦東方地区副統監。旧中国の淅江省出身。曾祖父は日中戦争で日本軍に殺され、祖父は1940年代後半の国共内戦の際に殺害されている。中 国の伝統意識に従って祖先の地に並々ならぬ愛着をもちオフィスの壁に掲げられた二枚の地図には祖先の地が明確に示されている。

□帝室図書館(The Imperial Librery)
銀河帝国の首都惑星トランターにある最大の図書館。銀河全域の資料が集積されているとみられる。
□ディトネイター(ditonator)
「野うさぎを追って」で登場する火器。
□デイブ(Dave)
小惑星での鉱石採掘のために開発されたマルチロボット・「DV5号」の愛称。身長7フィート、重量半トンのロボッ ト本体と、6体のサブ・ロボット(「指」とも呼ばれる)により構成されている。ロボット本体は1500のコンデンサ、2万の電気回路、500の真空小胞、 1000のリレーを内蔵している。またその陽電子頭脳は重量10ポンドで千の六乗の陽電子で構成され、サブ・ロボットへの命令は陽電子場を通じて伝達され る。性能の良いダイヤフラムが組み込まれ倍音が加えられているため、音声は金属的でなくなめらかである。「野うさぎを追って」に登場。

□テオ=アポラット(Theo Aporat)
市長」 に登場するアナクレオン最高位の司祭の一人で、ファウンデーション紀元80年には首席従軍司祭となってアナクレオン宇宙艦隊旗艦ウェニス号に搭乗してい た。第一ファウンデーションで宗教教育を受けており、アナクレオンがファウンデーション征服を試みた時にはそれを阻止するべく活躍した。
□デカルト(Descartes)
17世紀フランスの思想家・数学者。「われ思う、ゆえにわれあり」の名セリフで知られる。「われ思う、ゆえに…」に登場するロボット「キューティー」は彼と同様の結論に達し、パウエルに「ロボット・デカルト」と呼ばれた。

□テレヴァイザー(televisor)
TV電話のようなものと思われる通信機器。「市長」では受信機能のみにされて登場している。
□テンシンの水耕農場(Hydroponics plant at Tientsin)
21世紀の世界連邦の東部地区・テンシン(天津)に存在する。「農場」とは言うものの実際は食用の酵母を生産する工場であり、そのために多くの化学薬品を使用している。「災厄のとき」ではここの多くの労働者が一時的に解雇されていた。

□ドーウィン(Dorwin)
ト ランター銀河帝国末期の財務大臣。「百科事典編纂者」でターミナスを訪問する描写がある。人工の綿毛の頬髭を生やし、すべての「r」発音を省いて話す(例 えば原文では「アナクレオン」は「アナクウェオン」、「ピレンヌ」は「ピエンヌ」と発音している)。考古学を趣味とし、人類発祥地を探す「起源問題」の研 究をしているが、過去の研究者の書籍を読むだけで自分で実地調査をしようなどとは思わない。

□トーマス=サット(Tomaz Sutt)
百科事典編纂者」に登場する百科事典委員会理事。自然科学者。
□東方地区(The Eastan Region)
21世紀の地球連邦の一地区で、東アジア・南アジア・東南アジアの諸地方をその領域とし、面積は750平方マイ ル、人口は17億5000万人で連邦中最大。全陸地面積の15%に全人類の半分が居住している。首都はシャンハイに置かれている。テンシンをはじめ各地に 水耕農場があり、酵母を素材とする食糧を製造し全世界に供給している。「災厄のとき」ではチン=ソウリンが地区副統監をつとめている。

□ドコー=ウォルト(Dokor Walto)
サーマックの「行動党」の一員の政治家。「市長」に登場。
□ドノバン(Donovan)
マイケル=ドノバンを見よ。
□トランター(Trantor)
 銀河系の中心の限りなく近くにある惑星。第一銀河帝国の首都惑星である。
 帝 国の最盛期にして末期、第13千年紀にその人口・都市化の密度は最高潮に達し、惑星上の陸地7500万平方マイル(=約1億9425万平方km。ちなみに 地球の陸地表面積は約1億4889万平方km)が全て都市化され、厚い金属層に覆われた単一の巨大都市となった。ほぼ全て金属化された地表に自然はほとん どなく、唯一皇帝の宮殿周辺のみ緑地帯化されていた。
 都市機能の大半は地下に建設され地上部分はごくわずかであり、住民もほとんど空を見ずに生活 していて実質昼と夜の区別がない。一生の大半を地下建造物の中で過ごすことになり戸外への対応力がなくなる恐れがあるため、住民は5歳以上になると年に一 回は地上の展望台に出ることを義務付けられていた。
 都市の需要をまかなうエネルギーはその初期には原子力を利用していたが、地下都市が広大化するに従い、地上と地下の温度差を利用して作り出していた。
 絶 頂期には総人口は400億人にも達し、その多くは巨大な帝国を管理する官僚で占められていた。帝国の情報を集積した帝室図書館、トランター大学など教育研 究機関も多く存在している。その代わり惑星上に農業など生産機能はほとんどなく、食糧や生活必需品は数十の農業惑星からの補給に頼っていた。このことが帝 国衰退期にトランターの致命的弱点となり、結果的に「兵糧攻め」による滅亡を招いたらしい。
 帝国末期には「大略奪」を受けて破壊され、帝国首都の機能は放棄された。その後ここの住民たちは大量にある金属を周辺惑星の食料などと交易して生活していた。
 なお、映画「スター・ウォーズ」シリーズの銀河共和国・帝国の首都惑星「コルサント」は明らかにトランターのイメージの影響を受けたと推測される。

□トランター銀河帝国(Trantorian Galactic Empire)
 銀河系の中心に限りなく近い惑星、トランターを首都とし、1万年を超える長期間をかけて銀河系全体を統一するにいたった大帝国。帝国の紋章は「宇宙船と太陽」。
 は じめは共和制、貴族制であったが広大な強国になるにつれ世襲の皇帝をいただく帝政に移行した。しかし皇帝は初めから最後まで単一の家系による世襲だったわ けではなく、いくつかの家系による王朝交代はあったようである。皇帝は絶大な権限をもつ独裁者ではあったが、議会は存在しており一定の民主主義システムは 機能していたと思われる。
 エンタン朝最後の皇帝クレオン1世の時代がほぼ最盛期とみられ、その時期には2500万個以上の惑星を版図に収め、その 総人口は百京(1000000000000000000)人にも及んだが、その絶頂期も最後の50年ほどしかなかった。クレオン1世の暗殺後は貴族が台頭 して帝権もゆらぎ、やがて周縁部から帝国に対する分離独立が始まり、急速に衰退していった。最後の強力な皇帝クレオン2世の時代に一時盛り返し、第一ファ ウンデーションを追い詰めるほどの力も見せたが、その後は衰退に歯止めがかからず、ファウンデーション紀元300年ごろには首都トランターが大略奪を受け て皇帝もトランターを放棄せざるを得なくなった。ファウンデーション紀元350年ごろまでには完全に滅亡したとみられる。

□トランター大学(The University of Trantor)
惑星トランターにある総合大学。トランターの居住地域は大半が地下にあり、地表も金属で覆われて日光を浴びない環境にあるが、この大学は地上に建設され、透明なドームで覆われているためまぶしい太陽の光を浴びている。