☆ゲームで南北朝!!☆

PCエンジンCD-ROM版
「太平記」

(1991年、発売元:インテック)


◎概要(その2)◎

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 概要(その2)では、ゲーム内容の紹介をしていきます。

◎足利VS新田、その他大勢の独立勢力

 このゲームは日本全国を舞台にしていますが、多くの勢力から1つを選んで天下統一を目指す戦国時代ものとは異なり、足利VS新田の二大勢力のどちらか一方しかプレイヤーは選択できません。足利尊氏を選択した場合は北朝(ゲーム画面では青)、新田義貞を選択した場合は南朝(ゲーム画面では赤) の擁立者となり、全国を自分の陣営の色で染め上げてしまうことがゲームクリア条件となっています。ゲーム開始時点は中先代の乱の直後、鎌倉にいる足利尊氏に対する追討の勅命を新田義貞が受けた1335年10月です。従ってゲーム開始時に尊氏は相模に、義貞は京にいることになります。
 プレイヤーは尊氏もしくは義貞を選択すると、全国に散らばるそれぞれの一族や直属の家臣が国主(守護と思えばいい)をつとめている国(直轄地)にだけ指令を出せるようになっています。ゲーム開始時点での足利・新田両勢力の配置は次のとおり。

★足利軍
★新田軍
国(国番号)
国主(守護?)
国(国番号)
国主(守護?)
武蔵(09)
高師直
越後(07)
新田義顕
加越(10)
斯波高経
上野(08)
江田行義
相模伊豆(11)
足利尊氏
越前(18)
堀口貞満
紀伊(25)
畠山国清
若狭丹後(22)
船田義昌
備前美作(30)
高師泰
山城(23)
新田義貞
讃岐阿波(33)
細川頼春
土佐(35)
土居通増

つまり、足利・新田ともに全国各地にある6カ国にだけ直接の指令を出せるわけです。
では、それ以外の国々はどうなってるのかといいますと…全てあくまで第三者、独立勢力なのです。独立勢力たちはそれぞれの思惑で南朝・北朝に味方して自身の勢力拡大を狙っており、たとえ同じ朝廷を奉じていようと直接には指令が出せない、というのがこのゲームの大きな特徴となっています。
ゲーム開始時点での独立勢力は以下のとおり。

国(国番号)
主君
ゲーム開始時の旗幟
陸奥(01)出羽(02)陸前(03)
北畠顕家
南朝
常陸(04)
佐竹義篤
北朝
下野(05)
結城親光
南朝
房総(06)
千葉貞胤
南朝
甲斐(12)
武田信武
北朝
駿河(13)
今川範国
北朝
信濃(14)
小笠原貞宗
北朝
美濃飛騨(15)
土岐頼康
北朝
三河(16)
井伊道政
南朝
伊勢志摩(17)
北畠親房
南朝
尾張(19)
吉良貞義
北朝
近江(20)石見安芸(31)
佐々木道誉
北朝
伊賀大和(21)摂津河内(24)
楠木正成
南朝
丹波(26)
千種忠顕
南朝
播磨(27)
赤松円心
北朝
因幡但馬(28)
山名時氏
北朝
出雲伯耆(29)
名和長年
南朝
周防長門(32)
小田治久
南朝
伊予(34)
四条隆資
南朝
豊後(36)
少弐頼尚
北朝
肥前(37)
大友貞範
北朝
肥後(38)
菊池武敏
南朝
日向(39)
阿蘇惟時
南朝
薩摩大隅(40)
島津貞久
北朝

 足利直属のはずなのに独立扱いになっている人、この時点の南朝・北朝の旗幟が違う人や、まったく違う場所にいる人など、いろいろと疑問も多い配置ではあります。しかしどうやら作者は史実との異同は百も承知で、バランスを考えて配置しているようです。はっきり言ってしまえば、史実に忠実にやると南朝方不利が否めないからです。
 このゲームの怖いところ、そして実にリアルなところは、これら独立勢力があくまで彼ら自身の思惑でしか動かない、という点です。例えば尊氏からすれば佐々木道誉は有力な味方ですが勝手に動きまわってこちらの戦略の邪魔になることも多く、義貞からすれば東北を押さえる有力な南朝方・北畠顕家はこちらの期待通りに南下してくれるとは限らない(史実でも両者の行き違いが命取りになりました)。独立勢力に対しては味方といえども出陣催促や援軍を求めることができない。あまつさえ彼らは敵側の調略にかかって、あっさり敵にまわったりもします。逆に言えばいちいち合戦をして打倒しなくても調略しだいで味方につけることもできるわけ。

 こうした独立勢力の主君には「天朝度」というパラメータがあり、南朝方・北朝方に対する忠誠度を示しています。尊氏もしくは義貞が各独立勢力のこの数字を説得・篭絡・金品などを使って減らしてゆき、0にしてしまうとその独立勢力はアッサリ旗色を変えてしまいます。もちろんこういう節操のないやつとあるやつがいるわけで、その辺はその武将の性格を良く見て交渉する必要があります。その性格を現すパラメータが各武将に設定されている「婆沙羅」という数値です。本来の「婆沙羅」の意味からするとちょっと外れている気もしますが、このゲームにおいては「節操の無いやつ度」と言っちゃっていい扱いになっています。
 右の図は南北朝随一のミスター婆沙羅大名・佐々木道誉さんと交渉している場面(一部有名キャラはこのように大画面アップになり台詞もしゃべる)。この画面では道誉さん、カッコイイ台詞を言っておりますが、信用しちゃあいけません。ほんとにコロコロと寝返ってくれる人である上に、領国・武将ともに有力なので、南朝・北朝どちらにとっても要注意の人物です(笑)。
 このゲーム、主君クラスに限らず全武将に一応の性格が設定されていまして、これは「婆沙羅」の数値からだけではわかりません。カネや贈り物で転ぶやつ、正統派の説得に応じやすい真面目タイプ、言葉巧みな篭絡に迷わされるタイプ…といろいろあって、これは「挨拶」などの会話を交わすことで読み取れます。これがゲームの宣伝文句に「登場人物との出会いにAVG(アドベンチャーゲーム)の要素をとりいれた」と謳われている理由です。もちろんいかなる説得にも応じにくいカタブツタイプもおり(お察しがつくでしょうが、南朝忠臣連中はほとんどそう)、それに対しては軍事力で勝負をつけざるを得ないでしょう。
 
 こうした独立勢力の君主に対して直接交渉ができるのは両陣営のリーダー格の尊氏と義貞だけ。このゲームでは合戦はなるべく避けて味方を増やすのが先決なので、尊氏と義貞はもっぱら独立勢力相手の外交交渉にあけくれることになると思います。この点、配下に有能な武将を多く抱える尊氏は外交に専念できて楽なのですが、自身の軍事能力ぐらいしかアテにならない義貞は外交の時間をとるのに苦労するかと思われます。この辺も史実を髣髴とさせるところです。

 また、独立勢力相手の交渉の道具の一つに「綸旨(りんじ)」、すなわち天皇あるいは上皇の命令書が存在します。天皇の命令書だけに味方を集めるのに効果はバツグン。史実でも尊氏・義貞双方はこうした綸旨を武器に味方を集めており、南北朝ゲームならではのアイテムだと言えましょう。綸旨は当然、後醍醐天皇あるいは光厳上皇(このゲームではバランスをとるためか「光厳帝」と表記されますが) が出すもので、尊氏・義貞にだけ認められている天皇相手の「交渉」を行うと、左画面のようにご尊顔を拝することができ、献上品などを贈ってご機嫌をとり、うまくすると綸旨をもらうことができます。絶対にもえらえるわけではないところがリアルかつヤキモキさせられるところですが(笑)。
 なお、尊氏なら光厳と、義貞なら後醍醐と、京都にいようといまいと、全国どこでもいつでも拝謁することが可能となっています。まさに神出鬼没の天皇陛下というわけです(笑)。またゲーム説明書によると両天皇は独自の情報網を持っていることになっていて、なぜかゲーム攻略のヒントを教えてくれる時があります(笑)。

 この手の日本史シミュレーションゲームでは天皇の扱いが難しいのですが、さすがは南北朝ゲーム、うまくゲーム内に取り込んだものだと思います。ただ南北朝ファンとしては、とくに後醍醐天皇あたりについては「武将」としてデータをつくり、活躍させてみたかったという気もします。


◎いちいちアニメが出る各種コマンド

 さてここまではこのゲームの肝である「交渉」コマンドを中心に話を進めてきましたが、歴史シミュレーションだけに他にも多くのコマンドがあり、プレイヤーはあれやこれやと忙しいです。コマンドを出せる「国主(守護?)」たちはそれぞれ「行動力」という数値を持っており、これを消費しながらコマンドを出していく方式です。コマンドをあまり出さなければ行動力は温存され、回復するという仕組みです。これは歴史ゲームではよくある方式なのでなじみのある方も多いでしょう。
 ただし、本作はコーエー流の三国志・戦国ゲームとは異なり、外交交渉以外の政治要素は全てバッサリ削除しています。実際「建武の乱」のシミュレートなら領国経営なんぞしているヒマがないのです。徴兵も至極簡単、税収もほとんど気にすることはなく、産業振興・富国強兵といった経営要素はまるっきりありません。コーエー流の領国経営ゲームに慣れた人には戸惑うところでしょうが、この政治要素バッサリカットは南北朝らしさを出すことに貢献していると言っていいでしょう。このため武将データに政治パラメータが存在せず、足利直義のような有能政治家の見せ場が少なくなった点は残念ですが…。

 では、以下に各コマンドの紹介・説明をしていきましょう。ところでこのゲーム、「概要(その1)」の冒頭で述べたようにCD-ROM初期作品ということで「CD-ROMならではの演出」を入れようとあれこれやっていまして、各コマンドを実行すると画面左上のウインドウ内でいちいち肉声入りアニメが展開するという凝った演出があります。最初は面白いんだけど毎度毎度見せられるといい加減うっとうしくなるので、RUNボタンで飛ばしたり表示そのものをオフにすることもできます。

 まず歴史SLGといえば基本は「情報」です。自国領・他国領を問わず「国」そのものの情報やそこに在籍している武将について調べることができます。面白いことにこのゲームでは情報は「タダ」でして、行動力をまったく消費せず自国だろうと敵国だろうと情報が見たい放題(笑)。基本的には敵国の兵力や在国武将のデータを確認することになります。敵となるCPU側もしっかりこちらの情勢を調査しまくっているので、油断はできません。
 このコマンドのアニメは家臣が「との、お耳をお貸し下さりませ」と耳打ちをするものです。誰でもオープンに見られる情報のくせに、いちいち人払いをして耳打ち(笑)

 次に「徴兵」。これも歴史SLGのお約束コマンドですが、このゲームでは金さえあれば、ほぼ無尽蔵に徴兵が可能です。といって、実際の合戦では武将ごとに率いられる兵士の最大人数は決まっているので兵隊ばかり多くても意味がないということになるんですが。集められた兵士は訓練の必要もまったくなく、即座に実戦投入ができます。南北朝時代となると、悪党とかあやしげな実戦部隊がうじゃうじゃ参加していそうな気がします(笑)。
 徴兵コマンドのアニメは割と派手。高らかな音楽とともに、立札に群がる人々が「兵を集めよとのおふれじゃ〜!」と騒ぐなか、立札にズームインしていきます。

 ユニークなのが「捜索」というコマンドです。やることがなく、ヒマになったらこればっかやっちゃうんじゃないでしょうか(笑)。要するに家臣に命じて国内になにかめぼしいものはないか探させる、というだけのコマンドです。運がいいと何かが見つかります。多くの場合、金(きん)がみつかって収入になりますので、税収コマンドの変形と考えればいいかと。
 それにしても問題なのがこの「捜索」コマンドのアニメです。ご覧のとおり、捜索を命じられた家臣が領内を遠目にウロウロと見渡して(ちゃんとあちこち向くんです)捜索活動を行っています。こんなアバウトな捜索でときどき大発見をするんだから、もしかするとこの捜索係、エスパーなのかもしれません(笑)。
 また、この捜索コマンドの結果のアニメも面白いのです。一覧をご覧に入れましょう。


領内から金を発見したとき。「との〜!!金が出ました〜!!」とホントに大喜びの声を上げてくれます(笑)。しかしそれは砂金なのか、金山なのか、はたまたどっからか盗んできたのか(笑)。

領内から「名刀」を発見することがあります。「太平記」の伝える「鬼切・鬼丸」あたりが元ネタなんでしょう。めったに見つかりませんが、名刀は家臣に下げ渡して忠誠心を上げたり、外交交渉で相手に贈ったりと使い道は広いです。

これもホントにまれなんですが、浪人の人材を発掘することがあります(どっかの合戦で敗れて下野してる武将の場合もある)「人材が世に埋もれておりました!」と家臣が紹介してくれるんですが、あんな捜索で見つかる人材って、ホントにその辺に「埋まってた」んじゃないかと想像して楽しい(笑)。もちろん採用するしないはプレイヤーの自由です。

で、これが何も見つからなかった時。ブルーな背景、ドヨーンというBGMとともに、ガックリと肩を落とす捜索係(笑)。この落ち込みようはハンパではなく、「ま、次回がんばってよ、ね!」と力づけてあげたくなること必至(笑)

 この健気な捜索係くんの活躍には、思わずファンになる方も多かったかと思います(笑)。

 他のコマンドとしては「指示」という人材面を扱うものがあり、家臣を解任する、あるいは国主を交代する、さらにはその国の行動の一切を委任してしまう、といったコマンドが実行できます。とくに「委任」は全国制覇が進んだゲーム中盤以降で面倒を省くのに役立ちます。

 そしてそれ以外のコマンドは…そう、もちろん軍事関係のコマンドです。軍隊を移動させる「派兵」や国主ともども軍隊を移動させる「行軍」の区別があります。軍隊移動に際しては同じ陣営に属する独立勢力の領国を通過することが可能ですが、その場合陣営のリーダーである尊氏か義貞が軍勢を率いていなければいけない、というルールがあります。このためリーダーである尊氏・義貞自らの出馬の必要が生じるわけで、これも史実の南北朝動乱の状況の再現となっています。
 そして、敵方の陣営の領国に軍隊を進めた場合は――そう、合戦となるのです。


◎合戦は武士の華!?

 さあ歴史SLGの魅力の一つである合戦モードです。この合戦に関しては特にこれといった特徴はなく、ゲームではよくあるHEX戦というやつが展開されます。

 当たり前ですが敵国に侵攻する際には兵士を連れて行かなければなりません。登場する全武将には「統率力」というパラメータがあり、これがそのまま率いることの出来る兵力の最大数を示しています。例えば足利尊氏の統率力は「95」ですので、最大で9500名の兵士を率いることができます。これに対し名将と言われる楠木正成は統率力は「68」で、6800名しか率いることができません。勘のいい方はお気づきでしょう。この「統率力」とはこの時代に人々を集められるカリスマ、はっきり言っちゃえば「身分」のことなんですね。説明書には「指揮能力」と書いてあるんですが、どうも身分と考えたほうがしっくりきます。大軍を率いるにはこの「統率力」が高い、大名クラスを戦場に出す必要があるわけです。なお、兵士には騎馬だの弓だの足軽だのといった区別はいっさいありません。

 それと同時に無視できないのがその武将個人の戦闘能力を示す「戦闘力」パラメータ。統率力ではイマイチの正成の戦闘力は本ゲーム全武将中最強の「99」です。足利軍で最強レベルなのが実質吉川英治の創作キャラである一色右馬介で戦闘力「95」、ただしこいつは統率力が「32」しかなく、大軍を率いることができない…といった具合にキャラクターが設定されているわけです。兵士の数も重要ですが、実際の戦闘では戦闘力がかなりものを言う。この「統率力」と「戦闘力」のバランスを考えて陣容を整えるあたりが面白さでもあります。

 陣容を全て整えて、いざ出陣。出陣にあたっては「いくぞ〜!」「おお〜〜!!」と兵士たちが雄叫びをあげるアニメ(右図)が出て、いざ戦場へおもむくことになります。

 この時期、光栄の「信長の野望」とか「三国志」もそうだったんですが、この「太平記」でも戦場マップは「国」全域が舞台となっていました。むちゃくちゃ広い戦場で不自然きわまるのですが(笑)。例えば左の戦場マップは足利軍が新田氏の拠点である上野(現・群馬県)に攻め込んだ場面ですが、全体に山岳地帯が広がり、真ん中に利根川と思しき大河が流れています。画面写真ではわかりませんが、実は川には流れを表現するアニメ処理が加わっており、当時はかなり斬新に見えたものです。マップによっては海もあり、やはり波をアニメ処理で表現しています。

 この手のゲームとしては当然ですが、マップのヘックスごとに地形効果の設定があります。山や森、川や海(船は必要ありません) 、城壁といった地形にはそれぞれ移動に必要な機動力が設定されており、単純な話平地以外の地形は進軍の足止めとなります。また敵軍と接触したとき、自分と相手のいる地形の違いが戦闘の有利・不利につながる、すなわち「地の利」を読みつつ戦闘を進める必要があるわけです。ふつうに考えれば分かるように、水辺での戦いは自軍に不利、なるべく相手より高いところで戦ったほうが有利といった戦略が練れます。マップ内に1〜2個存在する「城」は防衛の拠点として使えます。
 こういう説明を読むと、「もしかして千早・赤坂城や白旗城の攻防戦の再現があるのでは…」と期待する南北朝マニアも多いでしょう。そう、やっぱり存在するんですね。楠木氏が支配する摂津河内地方に攻め込みますと、ムチャクチャ難攻不落の山岳城砦戦を体験させてもらえます。もっともこのゲームでは正成個人に指示を出すことができない(同じ南朝であろうと、義貞とはあくまで別勢力のため)ので、敵として攻略し、苦しめられる立場を体験する機会が多いように思います。そうそう、他にも湊川の戦いや鎌倉攻防戦を再現できるマップも存在しますので、探してみると面白いかと。

 あと、これもこの手のゲームのお約束なのですが、「包囲効果」というのも存在します。早い話が、敵部隊ひとつを味方の数部隊で取り囲むようにすると、味方は勢いづき、敵はパニックになり、通常の戦闘より絶大な打撃を相手に与えることができるわけです。包囲効果はパーセント計算になっていて、相手を前後で挟む包囲効果80%以上になると、戦闘力・統率力の高い武将の部隊であろうとあれよあれよというまに兵士の数が減ってゆきます。
 つまり合戦の基本戦法は相手より多い部隊で敵一部隊を取り囲んでタコ殴りにする、それをくり返す、これに尽きます(笑)。敵側も同じ戦略思考ルーチンを持っているようですが、正直なところ人間から見ると原則に徹しすぎた、おバカな動きを見せることが多く、ほぼ同数の兵力での合戦になった場合、まずプレイヤーが負けることはないと思います。もちろん占領後の問題もあるので相手よりずっと多い軍勢で侵攻するのが基本ですが。

 ちょっと残念だったのは本ゲームでは一騎打ちが存在しないこと。まぁ「平家物語」はすでに昔話、「太平記」の時代は集団戦法花盛りになっていたわけですが、「太平記」でもチョコチョコと一騎打ち話はあるので「華」として入れて欲しかった要素ではあります。
 その代わり(?)といいますか、南北朝ならではの裏切りドラマが戦場で展開されることがあります。忠誠心の低い武将が、戦況の様子を見て(ちゃんと見てるらしいところが面白い)、合戦の最中に突然旗色を変える(ユニットは北朝なら青、南朝なら赤となっています)ことがあるのです。何千人も率いている一部隊がコロッと寝返ってしまって戦局がガラリと変わっちゃうことも…まぁ大勢力がそっくり戦場で寝返るのは珍しいんですが、大河ドラマで陣内孝則演じる佐々木道誉が箱根・竹之下の合戦で「佐々木判官、思うところあり。寝返りごめん!」と新田軍に襲い掛かる名シーンを思い出してニヤニヤする南北朝ファンもいそうですね。この戦場での裏切りドラマが見たければ、事前に敵国の忠誠心の低そうな武将に「交渉」で声を掛けておくのも忘れずに。

 合戦の勝利条件は敵部隊を全滅させるか総退却させる、あるいは敵の総大将を捕らえるかです。防御側には「20日間防ぎきる」という勝利条件もあります(攻撃側の兵糧が尽きるということなんでしょう)。部隊が全滅した武将は問答無用で勝者に捕らえられ(そのため厳密な意味での「戦死」は起こりません)、まだ部隊が残っていた武将はなんとか国外への退却に成功するか、あるいは捕らえられてしまう場合があります。
 合戦が自軍の勝利に終わると捕らえた武将の処理を決定する事になります(敵が勝利した場合はCPUが全て処理します)。処理とは「首を斬る」「逃がす」「召し抱える」の三つ。相手が敵方の独立勢力の主君クラスの場合は「斬首」しか選べません。「逃がす」は殺すには惜しいと思った武将を野に放つもので、この時逃がされた武将はそのまま敵陣営に走ることはなく浪人となり、その後ひょっこり「人材発掘」で登用できたりします。
 「召し抱える」はもちろん投降を勧めて自分の家臣にしちゃうものですが、これは武将個人の性格に左右されます。どうせなら手持ちの武将は多いほうがいいので全員召し抱えたいものですが、多くの武将は「お前になど仕える気はない」と拒絶します。2度、3度と勧めるとコロッと仕えてくれるのもいますが(笑)、「降伏などするぐらいなら潔く…!」と自害しちゃう武将もわりといるので注意が必要です。まぁ2度勧めてダメだったらひとまず逃がすことでしょう。頭を冷やしてから家臣になってくれる場合もありますので。


◎なんだそりゃ!?な突発イベント

 歴史シミュレーションゲームにはたいてい予測不可能な突発イベントが仕掛けられているものですが、この「太平記」も例外ではありません。
 しかしよくある「天災」のたぐいは全くありません。いずれも妙なものばかりで…(笑)。

<高時の怨霊>
 オープニングビジュアルで出てきた北条高時、ゲーム中に出番はないかと思ったらさにあらず、時々全国あちこちで怨霊となって出現します(汗)。高時の怨霊が出現するとパニックになった兵士たちが数千人程度逃亡してしちゃいます(笑)。

<ましらの岩>
 おいおい、とツッコミたくなるネーミング。大河ドラマオリジナルキャラで柳葉敏郎さんが演じていた庶民キャラ「ましらの石」のパロディです。設定によるとこの「岩」は旧幕府の御家人で、盗賊になったんだとか。ランダムに出現してどこかの国の金を盗んでいきます。

<藤夜叉&勾当内侍
 尊氏なら藤夜叉、義貞なら勾当内侍が突然登場し(声付き)、「少しはお休み下さい」とか言って、尊氏OR義貞の行動力を減らしちゃいます(笑)。

<挑戦状>
 まったく意味のないイベント。敵陣営の武将から「戦場にて見参!」とか手紙が送られてくるんですね。ただそれだけで、特に効果などはないようです。

<逐電>
 忠誠心の低い家臣が、唐突に逃げ出し、他家に移籍してしまうことがあります。

<献金>
 天下統一が進んでいる終盤になると起こる現象。味方となっている大名から政治献金が相次ぎます。なにやら気分は与党政治家です(笑)。


◎総評

 …とまぁ、こんなふうに合戦を繰り返し、あるいは外交交渉で味方を増やし、最終的に全国を北朝か南朝の色で統一してしまえばゲームクリアです。クリアすると尊氏・義貞それぞれのエンディングビジュアルシーンが出て、映画みたいになかなか凝ったスタッフロール画面へと進んでゲーム終了です。

 評価ですが、異様に気合の入りまくったオープニング&ゲーム中のアニメシーン、全国40カ国、登場武将235名というスケール、単純なようで妙に凝っているシステムなど、見るべき点は多いです。とくに南北朝時代のシミュレーションという点では、南北朝マニアをうならせるリアリティが各所に見られ、もっとも本格的・最高峰の南北朝シミュレーションゲームという地位は動かないでしょう。今後もっと凄いのが出ない限りは…ってもう15年も経ってるわけですがこれに続く企画じたいがありませんね(涙)。
 ただし合戦の甘さなどから難度はかなり低く、歴史SLGとしては物足りなさも感じる作品といわざるをえないでしょう。お手軽に遊べるという点は評価していいのでしょうが。それと史実に沿うことでもあるんですが、義貞を選択して南朝方で戦うと北朝方選択時に比べてかなり厳しいです。まずは尊氏でプレイして慣れ、それから義貞でプレイして歴史の「イフ」を実現してみるというのが正統な遊び方かと思います。

 入手関係についてもちょこっと。
 すでに15年前のゲームですから、よほどそろえのいい中古ゲーム店でもないと入手は難しいでしょう。そもそもPCエンジンCD-ROMシステム専用なので、ハードのほうも持っていないとプレイできません。ハードはPCエンジンCD-ROMソフトを全て遊べる「DUO」シリーズを入手するのがお奨めです。これも現在稼動しているやつを探すのはなかなか大変なのですが…まぁネットオークションでも結構探せるかもしれません。ゲーム自体はそこそこ品数も出たうえに人気はあまりないので(笑)、数百円程度で売られていると思います。この辺も南北朝ゲームの物悲しさだなぁ。


概要その1を見る /武将データ(あ〜こ)を見る /武将データ(さ〜)を見る /リプレイその1を見る /リプレイその2を見る

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