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 『泉鏡花自筆年譜』 泉鏡花を読む

 明治二十三年十一月二十八日、此の日発程。陸路越前を経て、敦賀より汽車にて上京。予て崇慕渇仰したる葉先生たらむとのみ志ししが、ながく面接の機なく、荏苒一箇年間。巷に迷ひ、下宿を追はれ、半歳に居を移すこと十三四次。盛夏鎌倉にさすらひし事あり、彼処も今は都となりぬ。或時は麻布今井町の寺院より、浅草田原町の裏長屋に移りし事あり。

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