第23回定期
  J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズ Vol.12
   〜ライプツィヒ時代・公現後第3主日のためのカンタータ 〜


1996/ 3/4,5  19:00 東京:カザルスホール

*同一プロダクション(定期公演と曲目は異なる:下記参照)
   1996/ 3/ 2 19:00 三鷹:三鷹市芸術文化センター・風のホール
   1996/ 3/ 3 14:00 佐倉:佐倉市民音楽ホール
   1996/ 3/ 9      神戸・松蔭女子学院大学チャペル


J.S.バッハ/教会カンタータ 〔ライプツィヒ時代・公現後第3主日のためのカンタータ 〕
        《わが神の欲したもうこと、つねに起こらん》 BWV111
        《わが片足は墓穴にありて》 BWV156
        《すべてはただ神の御心のままに》 BWV72
 *BWV72の前に ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 BWV1041が演奏された。         

※三鷹公演、佐倉公演ではBWV72、BWV156、BWV1041のあと、
         《目覚めよ、とわれらに呼ばわる物見らの声》 BWV140 が演奏された。
         三鷹公演ではBWV111の第1曲がアンコールとして演奏された。
※神戸公演ではBWV72と《主よ、御心のままに、わが身の上になしたまえ》 BWV73が演奏された。
         (特別演奏会「阪神大震災チャリティ公演」として開催)

(05/03/06)


《出演メンバー》  

指揮鈴木雅明

ソロ
  ソプラノ :平松英子
  アルト  :太刀川 昭、米良美一(CT)
  テノール:ゲルト・テュルク
  バス   :シュテファン・シュレッケンベルガー
  ヴァイオリン:寺神戸 亮

コーラス

  ソプラノ :小池久美子、栗栖由美子、緋田芳江、星 民子、柳沢亜紀
  アルト  :穴澤ゆう子、Claudia Schmitz、鈴木 環、太刀川 昭、Kelly Baxter、米良美一
  テノール:大西孝徳、片野耕喜、桜田 亮、滝沢 映、Gerd Tuerk
  バス   :浦野智行、小笠原美敬、萩原 潤、吉川誠二、Stephan Schreckenberger

オーケストラ
  オーボエ:北里孝浩、三宮正満、尾崎温子(BWV140)
  ヴァイオリン I :寺神戸 亮(リーダー)、赤津眞言、小野萬里
  ヴァイオリン II:高田あずみ、若松夏美、渡邊慶子
  ヴィオラ:森田 芳子、渡部安見子

 〔通奏低音〕
  チェロ:鈴木 秀美、諸岡範澄  コントラバス:桜井 茂  ファゴット:堂阪清高
  チェンバロ:辰巳美納子  オルガン:今井奈緒子


第23回定期演奏会 巻頭言 

 今年度のカンタータシリーズでは、ミュールハウゼンのカンタータを取り上げてきましたが、結成5年目にあたる今年度最後のコンサートにあたっては、久しぶりにライプツィヒ時代のカンタータに戻ることにいたしました。バッハの足跡に従ってカンタータを聞いていくと音楽語法の変化がよくわかり、誠に興味のつきないところです。ミュールハウゼン時代、つまり作者が22才当時の作品にも、既に人生の奥義に触れるような驚くべき洞察が秘められていることを今年度は目の当たりにしてきました。しかしその後でライプツィヒのカンタータに再び耳を傾けると、彼の後半生、その精神世界が如何に雄々しく充実していったか、という感慨にひとしお強く打たれます。

 今回取り上げた作品は、いずれも顕現節後第3主日のカンタータで、楽器編成の点からも曲想の面からも非常によくまとまったひとつのかたまりを成しています。この主日のテーマは、マタイによる福音書第8章冒頭、有名ならい病人癒しのエピソードですが、そのらい病人が発した言葉『主よ、みこころならば』 Herr, wie du willt という一点が、3曲のカンタータに共通のキーワードとなっています。「主の御心」とは、私たちつたない僕の思いを遙かに越えた、大きくまた深遠なものでありましょう。その御心の成就を願うことは我々の祈りの中心であって、だからこそ「主の祈り」の中でも「御心の天になるごとく地にも成させたまえ」と祈るのです。

 カンタータBWV72番とBWV111番に共通に用いられているコラール「わが神のみこころのままに」は、マタイ受難曲第25曲めにも登場するコラールです。これはイエスが十字架という苦杯を目前にして、「しかし、私の思いのままにではなく、御心のままに。」とゲッセマネで悲しみもだえながら祈る場面です。主のみこころは、必ずしも私達の目に良く映ることばかりではありません。しかし、鯨の腹に呑まれたヨナの如く、神の御心から逃れようとあがいても決して逃れることは出来ない(BWV111第3曲)のですから、「生きるときにも、死ぬときにも、主よ、御心のままに」(BWV156第6曲)と祈るほうが遙かにすばらしいことです。らい病人のように「主よ、もし御心ならば Herr, wie du willt」と呼びかけるならば、主イエスは必ず「そうしてあげよう Ich wills tun!(BWV72第4曲)」と言って、手を差し伸べてくださるのです。

 今年も一年間バッハ・コレギウム・ジャパンを応援して頂き、心より御礼申し上げます。来年度はいよいよヴァイマールのカンタータが始まります。どうぞご期待ください。

バッハ・コレギウム・ジャパン
音楽監督 鈴木雅明


【コメント】

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