カンタータ・データ 2000
BCJのコンサートに登場するカンタータについてのデータ
をお届けします!
コンサートに向けての“予習”などにお役立て下さい!
 

 2000年度、バッハ・イヤーのBCJ定期公演にいよいよ教会カンタータ登場です!
 このHPにおいでいただいている皆様の中には、BCJの定期公演で取り上げられるカンタータについて“予習”されている方もいらっしゃることと思います。私も、毎回できるだけ個々のカンタータになじんでから演奏会に伺うようにしています。と申しますのは、何も知らずに初めて聴いてもバッハのカンタータはそれぞれの美しさがあり楽しく聴くことができるのですが、やはり「言葉と音楽の結びつき」が大きな意味を持つカンタータ演奏では、内容への理解の度合いが演奏を通して得られるものの大きさに深く関わっていると思うからです。まして、その「言葉と音楽の結びつき」にこだわって取り組んでいるBCJの演奏ですから、なおさら事前にできるだけ曲の世界に親しんでから実演に接したいものです。鈴木雅明さんから毎回のプログラムの“巻頭言”をお送りいただいている(本当にありがとうございます!)のも、この点を踏まえてのものです。
 そこで、限られた情報ではありますが、今年度のBCJ定期で取り上げられるカンタータに関する基本データを、順次このコーナーで紹介していこうと思います。これらのデータをもとに『聖書』を参照していただく(次回に取り上げられるカンタータのデータから当該聖句へのリンクを設けました!)などしてコンサートを迎え、当日入手できるプログラムと合わせ、より深いBCJ体験を持っていただけましたら幸いです。 
(00/08/18、00/10/29、00/12/18、01/02/13、01/02/15、01/03/16、01/03/25更新) 

・以下の、演奏会ごとに示した曲目のところをクリックするとデータにジャンプします。
・次回に取り上げられるカンタータ・データ中の「礼拝での聖句」欄の書簡、福音書名をクリックすると、
 当該の聖句を読むことができます
カンタータの基礎知識についてはこちら(「カンタータの源を求めて」)をご覧下さい!

*参考文献・・・『バッハ事典』(礒山雅/小林義武/鳴海史生編:東京書籍刊:1996)
          『バッハ全集』第1巻〜5巻(『バッハ全集』編集部:小学館刊:1995〜99)
          『トン・コープマン/バッハ・カンタータ全集CD』解説(C.ヴォルフ[訳:鳴海史生]、野中裕)


【J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズ 〜ライプツィヒ1723年 VIII 〜】にむけて

    9月16日(土) 第138回松蔭チャペルコンサート:神戸松蔭女子学院大学チャペル 15:00 (終了)
    9月22日(金) 第44回東京定期:東京オペラシティ コンサートホール 19:00 (終了)

        曲目 コラール "われらキリストの徒(ともがら)" BWV612 & 710
                  (パイプオルガン独奏 :今井奈緒子)
            《神の子の現われたまいしは》 BWV40
            《怖ろしき終わり汝らを引きさらう》 BWV90
            《おお永遠、そは雷のことば》 BWV60
            《目を覚まして祈れ!祈りて目を覚ましおれ》 BWV70


【J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズ 〜ライプツィヒ1723年 IX 〜】にむけて

   11月11日(土) 第139回松蔭チャペルコンサート:神戸松蔭女子学院大学チャペル 15:00 (終了)
   11月12日(日) 第45回東京定期:東京オペラシティ コンサートホール 14:00 (終了)

        曲目 コラール編曲 "いと高きところでは神にのみ栄光あれ" BWV663
            ピエス・ドルグ(ファンタジー) ト長調 BWV572 (以上、パイプオルガン独奏 :今井奈緒子)
            管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV1068
            《こよなく待ち焦がれし喜びの祝い》 BWV194 


【BCJ特別演奏会/アンドレアス・ショルを迎えて】にむけて   
 
    12月20日(水) 東京:東京オペラシティ コンサートホール 19:00 (終了)

        「J.S. バッハ:アルト独唱のためのカンタータ集」
            ・教会カンタータ第35番 《霊と心は驚き惑う》 BWV35
            ・教会カンタータ第170番 《満ち足れる安息、嬉しき魂の悦びよ》 BWV170 
            ・カンタータ断章 アリア 《われは彼の名を告げん》 BWV200  


2001年21世紀の到来とともに BCJの教会カンタータの旅ライプチィヒ2年目、1724年の作品に突入!
 いわゆる第一年巻の完結をめざします!


【J.S.バッハ/教会カンタータ全曲シリーズ 〜ライプツィヒ1724年 I 〜】にむけて

    3月10日(土) 第140回松蔭チャペルコンサート:神戸松蔭女子学院大学チャペル 15:00(終了)
    3月17日(土) 第46回東京定期:東京オペラシティ コンサートホール 19:00 (終了)

        曲目 コラール編曲 "ああ神よ、天より見給え" BWV741、他 (パイプオルガン独奏 :今井奈緒子)
            《主よ、御心のままに、我が身の上になしたまえ》 BWV73 
            《おのが分を取りて、去り行け》 BWV144 
            《見たまえ、御神、いかに我が敵ども》 BWV153 
            《いと尊きわがイエスは見失われぬ》 BWV154 
            《軽佻浮薄なる精神の者ども》 BWV181 



 《霊と心は驚き惑う》 BWV35  
 
初演 1726年 9月 8日、ライプチッヒ                       
用途 三位一体節後第12日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :第2コリント 3,4-11
福音書:マルコ 7,31-37(耳の聞こえない者の癒し)
歌詞 レームス(1711) 
編成 声楽:ソロ(A)
器楽:オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、オルガン(オブリガード)、
   
ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約27分 (アーノンクール[A:エスウッド]:28分、ヘレヴェッヘ[A:ショル]:25分) 
構成 第I部
 第1曲:シンフォニア(オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、オルガン、弦楽、通奏低音)
 第2曲:アリア(アルト、オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、オルガン、弦楽、通奏低音)
 第3曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
 第4曲:アリア(アルト、オルガン、通奏低音)
第II部
 第5曲:シンフォニア(オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、オルガン、弦楽、通奏低音)
 第6曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
 第7曲:アリア(アルト、オーボエ2、オーボエ・ダ・カッチャ、オルガン、弦楽、通奏低音)    
備考 アルトのための独唱カンタータ。BCJでは第4回定期などで演奏されている。
オルガン・ソロが大活躍。パート譜にオルガンパートが含まれていないので、バッハ自身がスコア
  から弾き振りしたものと考えられる。もちろんBCJでは鈴木雅明さんが妙技を披露してくださいます!
第I部では奇跡を前にしての驚き(第2曲に頻出する休止は驚きに言葉を失うさまの暗示か)を
  語って神の摂理を讃美し、第II部では神の恵みが「私」に与えられることを願う。 


 《神の子の現われたまいしは》 BWV40  
 
初演 1723年12月26日、ライプチッヒ
用途 クリスマス第2日
礼拝での
   聖句
書簡  :テトス 3,4-7 または 行伝 6,8-15/7,54-59(55-60)
福音書:ルカ 2,15-20(羊飼いたちが飼葉桶の幼子イエスを捜しあてる)
     または マタイ 23,34-39
歌詞 作者不詳
(引用:第1ヨハネ 3,8[第1曲]、K.フューガーのコラール[第3曲]、P.ゲールハルトのコラール[第6曲]、
 Ch.カイマンのコラール[第8曲] )
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:ホルン2、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約15分 (レオンハルト:15分、コープマン:14分) 
構成 第1曲:合唱(ホルン2、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第3曲:コラール(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音) 
第4曲:アリア(バス、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第5曲:レチタティーヴォ(アルト、弦楽、通奏低音) 
第6曲:コラール(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第7曲:アリア(テノール、ホルン2、オーボエ2、通奏低音)
第8曲:コラール(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
備考 トーマス・カントル就任後、最初のクリスマスのために書いた作品のひとつ。
3つのコラールの引用が単純な4声体の形で処理され、表面的な華麗さに走らない堅固な手応え
  のカンタータになっている。


 《おお永遠、そは雷のことば》 BWV60  
 
初演 1723年11月 7日、ライプチッヒ
用途 三位一体節後第24日曜日
礼拝での
   聖句
書簡  :コロサイ 1,9-14
福音書:マタイ 9,18-26 (病気および死に対するイエスの権能)
歌詞 作者不詳
(引用:J.リストのコラール[第1曲]、黙示録 14,13[第4曲]、F.J.ブールマイスターのコラール[第5曲])  
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:ホルン、オーボエ・ダモーレヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約16分 (アーノンクール:16分、コープマン:15分) 
構成 第1曲:コラール(アルト)とアリア(テノール)(ホルン、オーボエ・ダモーレ、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(アルト、テノール、通奏低音)
第3曲:二重唱(アルト、テノール、オーボエ・ダモーレ、ヴァイオリン・ソロ、通奏低音) 
第4曲:レチタティーヴォアリオーソ(アルト、バス、通奏低音)
第5曲:コラール(合唱、テノール、ホルン、オーボエ・ダモーレ、弦楽、通奏低音)
備考 *ヴァイマール時代に好まれた対話形式をライプチッヒ第1年度に受け継ぐ作品。
「恐怖と希望の対話」と題され、恐怖を表すアルトがテノールの希望と対話し、やがてバスによる
  キリストの声に出会う。
アルバン・ベルク「ヴァイオリン協奏曲」に終結コラールの旋律を引用したことでも知られる。


《目を覚まして祈れ!祈りて目を覚ましおれ》 BWV70 
 
初演 1723年11月21日、ライプチッヒ  *初稿 1716年12月6日、ヴァイマール
用途 三位一体節後第26日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ペテロ II 3,3-13
福音書:マタイ 25,31-46 (世の裁き)
歌詞 フランク 1717 に基づく(改作者不詳)
(引用:作者不詳のコラール[第7曲]、Ch.カイマンのコラール[第11曲]) 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:トランペット、オーボエ、ファゴット、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音 
演奏時間 約25分 (アーノンクール:22分、コープマン:21分)
構成 第I部
 第1曲:合唱(トランペット、オーボエ、弦楽、通奏低音)
 第2曲:レチタティーヴォ(バス、トランペット、オーボエ、通奏低音)
 第3曲:アリア(アルト、チェロ、通奏低音)
 第4曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
 第5曲:アリア(ソプラノ、弦楽、通奏低音) 
 第6曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
 第7曲:コラール(合唱、トランペット、オーボエ、弦楽、通奏低音)
第II部
 第8曲:アリア(テノール、オーボエ、弦楽、通奏低音)
 第9曲:レチタティーヴォ(バス)とコラール(トランペット)(弦楽、通奏低音)
 第10曲:アリア(バス、トランペット、弦楽、通奏低音)
 第11曲:コラール(合唱、トランペット、オーボエ、弦楽、通奏低音)     
備考 *ヴァイマールにおける待降節第2日曜日のために書かれたBWV70a(全6曲:歌詞のみ現存)をもと
  にライプチッヒ初年度に演奏されたカンタータ。ライプチッヒでクリスマス準備の時期、盛大な音楽の
  演奏が禁じられていたため、内容的に関連のある三位一体節後第26日曜日の礼拝へと転用された。
壮大な響きの合間に青年期の作品らしい抒情が彩りを添えている。
*レチタティーヴォに織り込まれた劇的な「最後の審判」の表象も印象的。


《主よ、御心のままに、我が身の上になしたまえ》 BWV73
 
初演 1724年 1月23日、ライプチッヒ                 
用途 顕現節後第3日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ローマ 12,17-21
福音書:マタイ 8,1-13 (信仰ある者に起こる、イエスの癒しの奇跡)
歌詞 作者不詳 (引用:K.ビーネマンのコラール[第1曲]、L.ヘルムボルトのコラール[第5曲])
編成 声楽:ソロ(STB)、合唱
器楽:ホルン、オブリガード・オルガン、オーボエ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音    
演奏時間 約15分 (レオンハルト:16分、コープマン:13分) 
構成 第1曲:コラール(合唱)とレチタティーヴォ(テノール、バス、ソプラノ)
     (ホルン、オブリガード・オルガン、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(テノール、オーボエ、通奏低音)
第3曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音) 
第4曲:アリア(バス、弦楽、通奏低音)
第5曲:コラール(合唱、ホルン、オーボエ2、弦楽、通奏低音) 
備考 *“御心を信じ、それを素直に受け入れたらい病人がイエスによって癒される”という福音書の内容か
  ら、「御心」とキリスト者との関係を「霊において病めるわれ」の抱く死への恐怖、という観点から
  掘り下げている。
*第4曲のアリアでバスが繰り返す「主よ、御心ならば・・・」の一節が心に残る。このアリアの後半
  では全弦楽器がピチカートで弔鐘を鳴らすが、テキストは死の苦痛をも厭わないと語る。そして最後
  のコラールが御心への思いを歌い上げる。
*このカンタータがBCJのコンサートで取り上げられるのは初めてだが、'96年の3月に同じ主日の
  ためのカンタータ集が演奏された時、レコーディングのみ行われた。残念ながらこの録音は、BCJ
  のカンタータCDの制作コンセプト(作曲年代順に制作)との関係で幻の録音となってしまっている。
*神戸公演では、ホルンのパートはBWV105で使われた「コルノ・ダ・カッチャ」で演奏されていた。
  島田さんに終演後おうかがいしたところ、出てくる音符の音列を検討した結果とのこと。(01/03/16)


《怖ろしき終わり汝らを引きさらう》 BWV90
 
初演 1723年11月14日、ライプチッヒ 
用途 三位一体節後第25日曜日  
礼拝での
   聖句
書簡  :テサロニケI 4,13-18
福音書:マタイ 24,15-28 (世の終わりに起こる誘惑)
歌詞 作者不詳 (引用:M.モラーのコラール[第5曲])
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:トランペットヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約12分 (レオンハルト:12分、コープマン:12分)
構成 第1曲:アリア(テノール、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音) 
第3曲:アリア(バス、トランペット、弦楽、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音) 
第5曲:コラール(合唱、トランペット、弦楽、通奏低音)
備考 *ライプチッヒ初年度、1723年における三位一体節後日曜日用カンタータの最後の作品。      
*規模の小さい曲ながら、主の来臨最後の審判のもたらす災いと幸福を考察する音楽は密度の
  高いもの。
終結コラール「ヨハネ受難曲」でも用いられた「天にましますわれらの父よ」の旋律。


《おのが分を取りて、去り行け》 BWV144
 
初演 1724年 2月 6日、ライプチッヒ                               
用途 復活節前第9日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :第1コリント 9.24-10.5
福音書:マタイ 20,1-16 (ぶどう園の労働者の譬え)
歌詞 作者不詳 (引用:マタイ 20.14[第1曲]、S.ローディガストのコラール[第3曲]、
           ブランデンブルク辺境伯アルブレヒトのコラール[第6曲])
編成 声楽:ソロ(SAT)、合唱
器楽:オーボエ2、オーボエ・ダモーレ、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音            
演奏時間 約16分 (レオンハルト:13分、コープマン:12分)   
構成 第1曲:合唱(オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第2曲:アリア(アルト、弦楽、通奏低音)
第3曲:コラール(合唱、オーボエ2、弦楽、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第5曲:アリア(ソプラノ、オーボエ・ダモーレ、通奏低音) 
第6曲:コラール(合唱、オーボエ2、弦楽、通奏低音) 
備考 *当日の福音書聖句の「ぶどう園の労働者たち」の譬えに基づき、「おのがもの」すなわち神の与え
  たもうたもので満足すべしという教えを、信仰上の課題として提起する。
*バッハの音楽はこの時期の作としては異例なほど簡素なもので偽作説も唱えられているが、残され
  ている自筆総譜は真作であることを示している。
*第2曲のアルト・アリアではダ・カーポ形式によって「不平」と「満足」が対比され、第5曲のソプラノ・
  アリアでは、キーワードである「慎みを知る心」を写し出す音楽となっている。 
*神戸公演では、第2曲のアルト・アリアゆったりと流れるようなテンポで演奏されていたことが
  印象的でした。(01/03/16)


《見たまえ、御神、いかに我が敵ども》 BWV153
 
初演 1724年 1月 2日、ライプチッヒ                             
用途 新年後の日曜日  
礼拝での
   聖句
書簡  :第1ペテロ 4.12-19
福音書:マタイ 2.13-23 (エジプト逃避行とヘロデの幼児殺害)
歌詞 作者不詳 (引用:D.デーニケのコラール[第1曲]、エレミヤ 41.10[第3曲]、
            P.ゲールハルトのコラール[第5曲]、M.モラーのコラール[第9曲])          
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音             
演奏時間 約15分 (アーノンクール:15分、コープマン:13分)    
構成 第1曲:コラール(合唱、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音)
第3曲:アリオーソ(バス、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第5曲:コラール(合唱、弦楽、通奏低音) 
第6曲:アリア(テノール、弦楽、通奏低音)
第7曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
第8曲:アリア(アルト、弦楽、通奏低音)
第9曲:コラール(合唱、弦楽、通奏低音) 
備考 1723年のクリスマス期の創作から生まれた1曲。新作の連続の疲れをいたわるためか、編成と
  構想はごく簡潔である。
単純な4声体のコラールで開始するカンタータはこの曲のみ。しかし、このコラールにはその和声
  により、艱難にさいなまれるキリスト者の苦悩が込められている。
第5曲のコラール「マタイ」でもおなじみのもの。
第6曲テノール・アリアドラマティックなもので、「荒れ狂え、ひたすら荒れ狂え苦難の嵐よ」
  の語句を目にも鮮やかに描き出している。
簡素美しい3拍子終結コラールでは、イエスに従って信仰の道を歩む決意とその道を貫くこと
  への守りを願う。 
*神戸公演では通奏低音にチェンバロが加り厚みのある表現になっていて、第6曲のテノールによる
  嵐のアリアなどで劇的な効果をあげていました。チェンバロが用いられたのは第2,4,6,7曲で、
  鈴木雅明さんが弾かれました。(01/03/16)


《いと尊きわがイエスは見失われぬ》 BWB154
 
初演 1724年 1月 9日、ライプチッヒ                                
用途 顕現節後第1日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :ローマ 12.1-6
福音書:ルカ 2.41-52 (12歳のイエスがエルサレムに宮詣でする)     
歌詞 作者不詳 (引用:M.ヤーンのコラール[第3曲]、ルカ 2.49[第5曲]、Ch.カイマンのコラール[第8曲])  
編成 声楽:ソロ(ATB)、合唱
器楽:オーボエ・ダモーレ2、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音 
演奏時間 約16分 (アーノンクール:16分、コープマン:15分)  
構成 第1曲:アリア(テノール、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第3曲:コラール(合唱、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)
第4曲:アリア(アルト、弦楽、通奏低音[チェンバロ])
第5曲:アリオーソ(バス、通奏低音) 
第6曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
第7曲:二重唱(アルト、テノール、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)
第8曲:コラール(合唱、オーボエ・ダモーレ2、弦楽、通奏低音)  
備考 *福音書章句の語るイエスを見失った両親の不安を、罪を自覚したキリスト者の不安に置き換え、
  失意の探索から発見の喜びまでを描く。
簡素な編成だが、3つのアリアはそれぞれ明確な個性を打ちだしている。
*「不安」の感情を表現した第1曲では、中間部で16分音符による雷鳴の描写も聞こえる。
第3曲のコラールはBWV147のコラールでよく知られたもの。
第4曲のアルト・アリアではオルガンと低音弦楽器が省略される「バセットヒェン」の形で“雲のない
  空”を表現している。この曲にはヴァイマール時代の用紙にバッハ自身が記したチェンバロ・パート
  が残されていて、ヴァイマール時代の作品の転用を示唆する資料である。
終結コラールのバスの8分音符の歩みは「永遠に彼らの傍らに歩む」ことの象徴と思われる。
*何と神戸公演ではこの曲にはチェンバロが使われませんでした! 第4曲のバッハ自筆のチェン
  バロ・パート譜はホフマン氏の解説によると後になって追加されたものとのことで、今回はこの曲の
  バセットヒェン(チェロ、コントラバス、オルガン等の通奏低音がない編成)のアイディアを生かす方針
  がとられた。しかしレコーディングをしながらもう一度吟味するとのことなので、東京公演でどのような
  編成で演奏されるか注目される。
*この曲では第5曲バスのアリオーソが非常に重要な意味を持っているとのことで、この曲と次の
  テノールのレチタティーボは鈴木雅明さんご自身が今井奈緒子さんに代わってオルガンを弾いて
  いらっしゃったことが印象的だった。 (01/03/16)

神戸公演ではチェンバロなしで演奏された第4曲のアリアですが、録音を通して検討の結果、
  チェンバロを加えて録音されたとのことです。東京公演でもチェンバロを入れて演奏されました。
  詳しい状況についてはこちら(「Q&A」)をご参照下さい (01/03/25)


《満ち足れる安息、嬉しき魂の悦びよ》 BWV170
 
初演 1726年 7月28日、ライプチッヒ                               
用途 三位一体節後第6日曜日  
礼拝での
   聖句
書簡  :ローマ 6,3-11
福音書:マタイ 5,20-26 (山上の垂訓より:おのれを義とする者への警告)
歌詞 レームス(1711)    
編成 声楽:ソロ(A)
器楽:オーボエ・ダ・モーレ、オルガン(オブリガード)、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約24分 (レオンハルト[A:エスウッド]:23分、ヘレヴェッヘ[A:ショル]:21分)  
構成 第1曲:アリア(アルト、オーボエ・ダ・モーレ、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音) 
第3曲:アリア(アルト、オルガン、弦楽、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(アルト、弦楽、通奏低音) 
第5曲:アリア(アルト、オーボエ・ダ・モーレ、弦楽、通奏低音)  
備考 アルトのための独唱カンタータ。BCJでは94年4月の特別演奏会で演奏されている。
*BWV35と同じくオブリガード・オルガンが活躍。第5曲のオブリガードは晩年の再演の際にフルート
  に替えられた。
*自由詩のみで綴られたテキストは、天上の安らぎ罪のはびこる現世の省察をもとに、神のもとで
  生きることへの憧れを語っている。


《軽佻浮薄なる精神の者ども》 BWV181
 
初演 1724年 2月13日、ライプツィヒ                               
用途 復活節前第8日曜日 
礼拝での
   聖句
書簡  :第2コリント 11.19-12.9
福音書:ルカ 8.4-15 (種まく人の譬え)
歌詞 作者不詳 
編成 声楽:ソロ(SATB)、合唱
器楽:トランペット、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ、ヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音   
    (トランペット、フラウト・トラヴェルソとオーボエは再演時に追加されたもの)
演奏時間 約17分 (レオンハルト:14分、コープマン:14分)   
構成 第1曲:アリア(バス、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ、弦楽、通奏低音)
第2曲:レチタティーヴォ(アルト、通奏低音) 
第3曲:アリア(テノール、[消失したオブリガード・パート]、通奏低音)
第4曲:レチタティーヴォ(ソプラノ、通奏低音) 
第5曲:合唱(トランペット、フラウト・トラヴェルソ、オーボエ、弦楽、通奏低音)   
備考 *福音書章句の「種まく人」の譬えをふまえつつ、軽薄を戒め高貴な種である御言葉をとり逃がす
  ことのないよう警告する。
*合唱を用いているが終結コラールを含まない構成。代わりの終結合唱は失われた世俗カンタータ
  からのパロディと考えられている。
*今回のBCJの演奏で、後年の再演時に追加された木管楽器などを入れるかどうかが注目点!
  →今回の演奏ではトランペット及び木管楽器も入れた編成での演奏になるとのことです。
第3曲オブリガード・パートは消失してしまったため、レオンハルトはオルガンの右手で、コープ
  マンはオーボエのパートを補作して演奏している。初演時の編成からオブリガードはヴァイオリン
  ではないかと考えられている。今回のBCJの演奏では鈴木雅明さんによるオブリガード・パート
  が聴けることが楽しみ!→この補作については、昨年秋のメルボルン公演で演奏済で、オブリガード
  パートはヴァイオリンとのことです。 
(01/02/27補足)

*神戸公演ではチェンバロが用いられ、劇的な効果をあげていた。チェンバロが用いられたのは第1,2,
  3,4曲で、最後の合唱曲ではオルガンのみでした。
*第3曲のヴァイオリンのオブリガードは16分音符の動きを中心にした技巧的なもの。お楽しみに!
 (01/03/16)


《こよなく待ち焦がれし喜びの祝い》 BWV194
 
初演 1723年11月2日 シュテルムタール(ライプツィヒ近郊)
用途 献堂式(教会及び教会オルガン)、三位一体節
礼拝での
   聖句
書簡  :ローマ 11.33-36
福音書:ヨハネ 3.1-15   *いずれも三位一体節用としての聖句です。
歌詞 作者不詳 (引用:J.ヘールマンのコラール[第6曲]、P.ゲールハルトのコラール[第12曲])
       (聖句からの趣旨引用:列王記上8.29[第4曲]イザヤ6.6-7[第5曲]
編成 声楽:ソロ(STB)合唱
器楽:オーボエ3ファゴットヴァイオリンI,II、ヴィオラ、通奏低音
演奏時間 約45分 (アーノンクール:39分、コープマン:36分) 
構成 第I部
 第1曲:合唱(オーボエ3、ファゴット、弦楽、通奏低音)
 第2曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
 第3曲:アリア(バス、オーボエ、弦楽、通奏低音)
 第4曲:レチタティーヴォ(ソプラノ、通奏低音)
 第5曲:アリア(ソプラノ、弦楽、通奏低音) 
 第6曲:コラール(合唱、オーボエ3、弦楽、通奏低音)
第II部
 第7曲:レチタティーヴォ(テノール、通奏低音)
 第8曲:アリア(テノール、通奏低音)
 第9曲:二重レチタティーヴォ(ソプラノ、バス、通奏低音)
 第10曲:二重唱(ソプラノ、バス、オーボエ2、通奏低音)
 第11曲:レチタティーヴォ(バス、通奏低音)
 第12曲:コラール(合唱、オーボエ3、弦楽、通奏低音)     
備考 *器楽パートの一部のみが伝わる世俗カンタータBWV194aのパロディ。1723年の三位一体節に
  宗教稿が用意されたと考えられるが、実際の上演はライプツィヒ近郊のシュテルムタール教会
  及び教会オルガンの献堂式
に持ち越された。三位一体節用のカンタータとしての上演は1724年
  以降の再演においてである。
雄大な構想喜ばしい気分にあふれ、原曲に由来する舞曲のリズムが随所にあらわれている。
コープマンは当時のシュテルムタールの事情に応じて“低いカンマートーン”(a =390Hz)で録音
  している。


《われは彼の名を告げん》 BWV200
 
初演 1742-43年頃、ライプツィヒ                                  
用途 不明(マリアの潔めの祝日?) 
歌詞 作者不詳(「シメオンの頌歌」[ルカ 2,29-32:下記参照]のパラフレーズ) 
ルカによる福音書 [新共同訳]
2:29 「主よ、今こそあなたは、お言葉どおり/この僕を安らかに去らせてくださいます。
2:30 わたしはこの目であなたの救いを見たからです。
2:31 これは万民のために整えてくださった救いで、
2:32 異邦人を照らす啓示の光、/あなたの民イスラエルの誉れです。」
編成 声楽:ソロ(A)
器楽:ヴァイオリン・オブリガード2、通奏低音
演奏時間 約3分 (BCJ[A:ブレイズ]:4分) 
構成 アリア(アルト、ヴァイオリン2、通奏低音)
備考 *失われたカンタータの断章か、何らかの宗教曲への追加曲か、多くの謎に包まれた美しい作品。
  残された一葉の自筆譜の紙の透かしから1742-43頃の後期の作品ということがわかる。
*編成の記載がないが、音域と音型からオブリガードの2声部はともにヴァイオリンであると推測
  できる。

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