昨年(2000年)に引き続き、第2回の「バッハ・オルガンツアー」が8月21日〜31日に行われました。
このページでは、その模様を、今回初参加のBCJ賛助会員・南部さんのご協力を得てご紹介いたします。お楽しみいただけましたら幸いです。南部さん、ご協力ありがとうございます!
なお、文中の時間の表記はすべてドイツ現地時間。サマータイム期間中のため、日本との時差は7時間です。
*オルガンの仕様は(III/P/65)のようにあらわします。この例では
手鍵盤の数が3/ペダル鍵盤有/ストップ数65を示します。
2001年 8月
・21日(火)、・22日(水)、・23日(木)、・24日(金)、・25日(土)、
・26日(日)、・27日(月)、・28日(火)、・29日(水)、・30日(木)、・31日(金)
(*8/21〜28分を改訂、01/10/15)
(*8/30〜31分を追加、03/07/31)
2001年 8月21日(火) 〜第1日〜 |
Viva! BCJ特派員(?)の南部です。この度オルガンツアーに参加させていただくことになりました。拙文ではありますがツアーの模様を速報させていただきます。よろしくお願いいたします。
私は一足早く18日夜、ライプチィヒへ到着、19日のトーマス教会の日曜礼拝へ参列、翌20日は電車でマイセン、ドレスデンへ行って参りました。21日の朝食の席にはフォーゲルさん、オルガネウムの日本人スタッフの方々もおられました。そこで思いがけずフォーゲルさんから明日訪問予定のレータでの事前練習への同行のお誘いを受けました。同じく先に到着されていたオルガン制作修業中の原一広さん(私のルームメートでもあります)とご一緒させていただきました。ゲオルグ教会のジルバーマン&ヒルデブラントオルガン(ll/P/23)で約2時間近くさまざまなストップの組み合わせで演奏されました。ジルバーマンの素晴らしい音が教会の天井から降り注いでくる至福の時を体験できました。
これから毎日このような体験が待っているかと思うと胸がわくわくしてきます。
マタイを復活上演したメンデルスゾーンが生涯の最後の時期を過ごした場所。 | 「メンデルスゾーン・ハウス」1845-1847と書いてありますね。 | ご存知、 トーマス教会。 |
誰の像でしょう(笑) |
レータ:ゲオルグ教会 | ジルバーマン・オルガンを演奏中のフォーゲルさん |
ライプツィヒ:ルネサンスホテル 食堂に全員集合 19:30
→《ライプツィヒ泊》
全員(参加者、スタッフ総勢56名)が一同に会しハラルド・フォーゲルさん、鈴木雅明さんからのご挨拶、ツアーの説明、資料配布、メンバーの自己紹介などがありました。いよいよツアーの始りです。
ルネサンスホテル 21日から24日までの 活動拠点です。 |
ツアーの説明をされる ハラルド・フォーゲルさんと鈴木雅明さん。 |
フォーゲルさんの息子さんの コーネリアスさんがオルガネウムを代表してご挨拶されました。先週の18日に結婚されたばかりだそうです。 |
2001年 8月22日(水) 〜第2日〜 |
*ルート概要:
レータ:ゲオルク教会(1721)のジルバーマン・オルガン(II/P/23) (9:00〜11:30)
[オルガン紹介] 演奏・解説:ハラルド・フォーゲルさん 「バッハ/パルティータ
BWV768」
レータ:マリア教会(1722)のジルバーマン・オルガン(I/P/11) (11:30〜12:00)
*昼食後、ゲオルグ教会、マリア教会に分かれてオルガン演奏
ライプツィヒ:聖トーマス教会の新バッハオルガン(ジェラール・ヴェール)(IV/P/62)
(18:00〜20:00)
[オルガン紹介] 解説:ハラルド・フォーゲルさん、演奏:ベーメさん,フォーゲルさん,鈴木雅明さん
*市内で夕食 アウエルバッハス・ケラー
→《ライプツィヒ泊》
オルガンツー、最初のオルガンの出会いはレータの二つのジルバーマンオルガン。ジルバーマンの特徴である力強いプリンシパルを堪能いたしました。「オリジナルの調律はミーントーンであったためバッハの演奏には不向きであったが、平均律に調律されたために現代ではバッハに適した楽器になった」というフォーゲルさんの興味深いお話しがありました。
再びライプチッヒに戻り閉館後のトーマス教会で昨年完成した新バッハオルガンのデモンストレーションがありました。トーマス教会オルガニストのベーメさん、フォーゲルさん、鈴木雅明さんが順番に演奏されました。
夕食はゲーテの『ファウスト』の舞台になったといわれる由緒あるレストランで。3人のオルガニストに、新バッハオルガンを制作されたヴェールさん、横田さん、辻宏さんの三人のオルガンビルダー、さらにアメリカからたまたまライプツィヒに来られているバッハ研究の権威クリストフ・ヴォルフさんらが一同に会するというすごい状態になりました。一体どんな話題が飛び交ったのでしょうか?
いざバスに乗って出発! | オルガンの前に集まる参加者 (ゲオルグ教会) |
オルガンの説明に聴きいる。 (ゲオルグ教会) | ||
レータ:マリア教会 | マリア教会の木彫りの祭壇 | マリア像 | オルガン(I/P/11)席から 説明する フォーゲルさん(マリア教会) | |
今日の ランチボックス |
トーマス教会の 新バッハ オルガン |
1894年にヨハネス教会墓地で発見されたバッハの遺骸が1950年からトーマス教会に眠っています。 | ステンドグラス。バッハ以外にルター、メンデルスゾーン、ザクセン選定侯などの肖像が描かれている。 | |
オルガン鑑賞を終えて夕食会場に向かう。 | ||||
*トーマス教会の新バッハオルガン(IV/P/62) 2000年 外観は失われてしまった大学教会にあったオルガンのプロスペクトをもとに、ディスポジションはアイゼナハのゲオルグ教会のオルガニストであったヨハン・クリストフ・バッハの意向に従って造られたオルガンの鑑定書に基づいてWoehl氏が作成した。オルガンの設置場所に苦労したそうです。 |
2001年 8月23日(木) 〜第3日〜 |
*ルート概要:
シュテルムタル:ツァハリアス・ヒルデブラント・オルガン(9:00〜11:00)
[オルガン紹介] 演奏・解説:ハラルド・フォーゲルさん
ライプツィヒ:バッハ博物館見学(11:45〜12:30)
ハレ:ヘンデル・ハウス見学(14:50〜15:50)
マルクト教会:ゲオルグ・ライヘル・オルガン(1664)
[コンサート] 演奏:ハラルド・フォーゲルさん (16:00〜16:30))
大聖堂見学(16:40〜17:10)
シュテルムタル:[参加者によるコンサート] (19:00〜)
→《ライプツィヒ泊》
1723年11月2日、バッハはシュテルムタール教会のオルガンのお披露目演奏とカンタータ194番を上演しました。こじんまりとしたこのオルガンはカンンタータのコンティヌオとして使われ、ソロとしては使われませんでした。BCJのカンタータ全集第16巻へ収録予定の録音を聴きながらシュテルムタールへ・・・ 「聞いたところによると現存するオルガンの中でもミクスチャがオリジナルでさらに整音が昔のまま残されているという大変大変貴重な楽器です。う〜ん、よだれものです、コレ。」とは原さんの談。 | ||
BWV194を聴きながら目的地に向かう一行 | シュテルムタル教会 | アヒルさんが出迎えてくれました。 |
説教台が祭壇の上にある珍しい例。聖餐式ではパンを取り「これは私の体である」と書かれた左の扉をくぐり祭壇の裏を回って「これは私の血である」と書かれた右の扉をでてワインを受け取ったそうです。 | ヒルデブラント作オルガン (I/P/15) (1722-23) |
出演者コンサートでBWV194のテノールアリアを歌う水越啓さん。 伴奏は鈴木優人さん。(雅明さんのご子息) |
シュテルムタール周辺は旧東ドイツ時代炭田地帯にあり、2005年には炭鉱として接収される運命にありました。ところが幸運にも1989年の東西統一による政策の変更により破滅から救われ、その後、教会・オルガンの修復が行われ、私たちはこの貴重な文化遺産にめぐりあえることができたのでした。 フォーゲルさんの「私たちはシュテルムタールを必要としている。シュテルムタールも私たちを必要としている」という言葉は文化財の保護にまつわる政治、経済、社会的な側面を考えさせる胸にしみる一言でした。 | ||
シュテルムタール教会でオルガン練習される方を残して一行はバッハ博物館へ。 | |||
バッハ博物館での出迎えはバッハ・アルヒーフのヴォルフ所長。「バッハ時代のトーマス学校で唯一残っている扉です」(右)。 | 昼食の時間を惜しんで旧市庁舎へバッハ像(左)とライヒャ像(右)を見てきました。 | ||
ヘンデルの生まれた町、ハレにやってきました。ヘンデルハウスを見学、マルクト教会ではフォーゲルさんがスウェーリンク、シャイト、シャイデマンなどの作品を演奏されました。 | |||
ヘンデルの生家 |
*マルクト教会のオルガン マルクト教会はルター派の重要な拠点でありバルコニーの下に初めてドイツ語の文字が彫られた。祭壇上のライヘル作の小型オルガン(I/6)(左側)はヘンデルが若い頃弾いたオルガン。小さいながらも充実した響きです。 反対側の壁の大オルガン(右側)は外面は1716年にバッハが鑑定したコンティウス作のオルガン(III/P/65)ですが中身は1984シュッケ作のモダンオルガンです。バッハはこの教会のオルガニストの採用試験に合格したが(1713)結局ワイマールにとどまった。 | ||
*大聖堂 ドイツにおけるカルヴァン派教会では唯一の司教座教会であった。1702年ハレ大学へ入学した17歳のヘンデルはルター派であったが、不評の前任者のあとを受けてオルガニストに任命された。現在のオルガンは19世紀半ばのヴェルトナーの作である。 |
2001年 8月24日(金) 〜第4日〜 |
*ルート概要:
ブランデンブルク:大聖堂のヨアヒム・ワーグナー・オルガン(1722-23)
(10:50〜12:30)
[オルガン紹介] 演奏・解説:ハラルド・フォーゲルさん、演奏:鈴木雅明さん
ポツダム:・サン・スーシ宮殿と庭園見学(14:00〜)
またはブランデンブルグでオルガン演奏
→《ライプツィヒ泊》
巨大な教会の空間のためのオルガン、全くでかーい、マッチョなオルガンです。残響もなが〜い。雅明さんのリンクのフルート協奏曲が最高でした。(原) | ||
ブランデンブルク大聖堂 | 祭壇(1730頃) | ワーグナー・オルガン (II/P/33) |
演奏台を前に議論する オルガニストとオルガン製作家達。 |
ラッパを吹く天使 | 今日のランチボックス |
午後はポツダムへ。オルガンツアーの中でも数少ない観光旅行。ご存じサンスーシ宮殿に行きました。冬に訪れて有名な葡萄庭園がつまらなかった方も多いようですが、緑が非常にきれいでした。宮殿・庭園は広大で一部しか歩きませんでしたが、中国式宮殿等も鑑賞しました。サンスーシ宮殿内部は豪華絢爛、部屋により、緑、黄色、赤等で統一、調和が図られていました。「調和」はロココの理想とのこと。いたるところに楽器を弾く彫刻があり、フリードリヒ大王の趣味がうかがえました。イタリア系?ガイドさんの説明をききながら散策しましたが、ガイドさんの小話・・大王は女性嫌いだったらしく、女性には楽器を弾かせなかったとのこと、お妃様のお墓も大王のお墓からはるか遠い場所にあるとのこと。音楽好きの啓蒙君主の一面でした。(宮本靖子) | ||
庭園にて | 同左 | 中国式宮殿(お茶室のつもり?)の彫刻と中央右フォーゲル氏、左はガイドさん |
この日19:30からベルリンの北約60キロメートルのアンゲルミュンデの町で鈴木雅明さんのオルガンコンサートが開かれました。会場は以前雅明さがCD(「J.S.バッハ/オルガン作品集」(キング,KICC-193))を録音されたマリア教会で、午前中訪れたブランデンブルグ大聖堂と同じワーグナーオルガンでした。 曲目はブクステフーデのトッカータ・ニ短調、シャイトのマニフィカト、ベームのカプリッチョ・ニ長調、パッヘルベルの4つのマニフィカト、リンクのフルートコンチェルト、J.S.バッハのオルガンコラール「これぞ聖なる十戒」BWV678、プレリュードとフーガ・ロ短調 BWV548。 演奏後は聴衆総立ちで拍手の渦、何度もカーテンコールがありました。この演奏会にはORB放送局(ブランデンブルグ州の放送局)から録音に来ていました。 | ||
ワグナー・オルガン (1742/44) (II/P/30) ブランデンブルグの楽器より 20年後の作品です。 |
ティンパニ・ストップを使うとペダル鍵盤でティンパニをたたくことができます。他にもトランペット・ストップを使うと天使がトランペットを構える仕掛けなど楽しいオルガンです。 | オルガンの内部を調査中の 横田さん |
2001年 8月25日(土) 〜第5日〜 |
*ルート概要:
アルテンブルク:シュロス教会のトロスト・オルガン(1739)
(10:00〜13:30)
[オルガン紹介] 演奏・解説:ハラルド・フォーゲルさん
ポーニッツ:ジルバーマン・オルガン(1737) (14:15〜21:30)
[オルガン紹介] 演奏・解説:ハラルド・フォーゲルさん
[演奏、夕食後、 参加者によるコンサート]
→《シュメルン泊》
アルテンブルグのお城の教会の巨大トローストオルガンを堪能。(仲村啓子) | |||
1739年、バッハは確かにここアルテンブルグ城の教会に来て弾いています。 | ドイツの夏はどうしてこう毎日暑いのでしょうか。 | ここでバッハの弟子クレプスが24年間オルガニストを務めました。 | |
ランチボックス4日め。 もう慣れました。 | |||
素晴らしい装飾に見とれて。 | |||
蜂の攻撃を避けながら素早く食べないと!→ | アルテンブルグよさらば。 | ||
午後からはポーニッツの村の教会でザクセンを代表するジルバーマンオルガンに出会えました。もっとも保存状態がよいこのジルバーマンオルガンで夜は二度目の参加者コンサート(13人)が開催されました。(仲村啓子) | |||
まさに村の教会。 | 祭壇とオルガン(Il/P/27)が 同じ方向 |
夜8時半からの参加者コンサート。少し弾きにくいですが、高さの調節ができないオリジナルのジルバーマンの椅子で弾くことに多数決で決まりました。 | シュメルンの古い教会の前のホテル。やはり暑い日でした。 |
2001年 8月26日(日)[第6日]〜27日(月)[第7日]については、こちら、 2001年 8月28日(火)[第8日]〜31日(木)[第11日]については、こちらをご覧ください! |
VIVA!
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