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オルガンツアー2003「写真館」 in 「VIVA! BCJ」

2000年、2001年に続き、3回目となるオルガンツアー「The Glory of the South」8月5日〜15日にかけて行われました。このページでは、その模様を、2000年に引き続き参加させていただいている管理人が現地からお伝えしようと試みたものです。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです。
なお、文中の時間の表記はすべてドイツ現地時間。サマータイム期間中のため、日本との時差は7時間です。
*オルガンの仕様は(III/P/65)のようにあらわします。この例では 手鍵盤の数が3/ペダル鍵盤有/ストップ数65を示します。 

2003年 8月
 ・前日まで、・5日(火)、・6日(水)、・7日(木)、・8日(金)、・9日(土)
 ・10日(日)、・11日(月)、・12日(火)、・13日(水)、・14日(木)、・15日(金)


(最新更新:03/08/22)


 〜2003年 8月4日(月) 〜前日まで〜




今回のオルガネウムのツアーは8月5日、17:00にミュンヘン近郊の街、エアディングのホテル・KASTANIENHOFに現地集合となっています。そこで、ツアーに参加する仲間で少々早めに行き、2日間を自由に楽しむことにしました。

今年の6月に新装になったばかりのミュンヘン空港に、ドイツ時間で8月3日(日)の午後5時すぎに到着しました。 ツアーの始まるエアディングのホテル・KASTANIENHOF。少々早めの到着です。ミュンヘンSバーン(近郊鉄道)6号線の終着駅のすぐそばです。 到着の晩、まずは地元の白ビール「エアディンガー」で乾杯!

 

翌 8月4日(月)、ミュンヘン経由で列車を乗り継ぐこと約2時間半、バイエルンの古都・レーゲンスブルクに向かいました。写真は空高くそびえる大聖堂(ドーム)の尖塔です。 大聖堂(聖ペーター教会)の内部。美しいステンドグラスが各所にちりばめられています。合唱隊も有名です。 12世紀にはすでに架かっていたとされる石橋から、遠く大聖堂の尖塔を望みました。 樽から直接売るワイン屋さんを発見!小さなボトルを購入して新酒のワインを入れてもらいました!

 

  2003年 8月 5日(火) 〜第1日〜



*ルート概要:
ミュンヘン近郊・エアディング:カスターニエンホフに全員集合 17:00 
→《エアディング泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

本格的なツアーの開始に先立ち、本日はミュンヘン市街に繰り出し、まず今年100周年を迎える「ドイツ博物館」に行きました。 「ドイツ博物館」の中の「楽器展示室」。10:30から様々な鍵盤楽器のデモンストレーションが行われました。これ以外にも、管楽器・弦楽器・打楽器の部屋や電子楽器の部屋などがあります。 1995年にこの展示室にしつらえられた、あのカザルスホールのオルガンと同じビルダー、アーレント作のオルガンの演奏も楽しめました。
ミュンヘン観光スポット1
マリエン広場・新市庁舎の仕掛け時計。今日も多くの人でにぎわっていました。
ミュンヘン観光スポット2
聖母教会・大聖堂(ドーム)。丸い屋根をもった尖塔が特徴。筆者は約20年前にこの地を訪れた時、ドーム向かいの楽器屋でアルトリコーダーを買いました!
ミュンヘン・フィルの本拠地、ガスタイクのフィルハーモニー。同施設内の図書館には、珍しいオルガン楽譜が多数あるとのことです。
午後5時、エアディング・カスターニエンホフのレストランに参加者が集合し、主宰のハラルド・フォーゲル氏よりツアーの概要の説明などがありました(左)。
午後6時すぎ、鈴木雅明氏が到着。主役が揃いました!(中央)
訪れるオルガンの仕様など情報満載のファイルに加え、ドイツ南部の詳しい地図が配られました(右)。
19:30からオープニング・ディナーで舌鼓を打ち、本日は終了。明日はインスブルックを中心としたルネサンス・デーです!!

  2003年 8月 6日(水) 〜第2日〜



*ルート概要:
インスブルック:ルネサンス・オルガンの鑑賞
 ・ジルベル・カペレ(銀の礼拝堂)のイタリア様式オルガン(I/P/8)
 ・宮廷礼拝堂のJ.エバート・オルガン(II/P/15)
*アルプス観光
→《エアディング泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

    
ホテルからバスで約2時間半、オーストリア・チロル地方の美しい街、インスブルックにやって参りました。右は旧市街にある有名な「金の屋根」です。 11:30、宮廷教会に入り、まず「銀の礼拝堂」(右)へ。左は「銀の礼拝堂」へ上がる階段からの教会内の眺め。奥の方があとで鑑賞するエバート・オルガンのある祭壇です。
普段は鉄の格子で閉ざされている「銀の礼拝堂」の中に入ると、左に大きな仏壇のような黒塗りの箱がありました(左)。これが木のパイプのみでできている珍しい「イタリア様式のオルガン」。さっそくフォーゲル氏の解説、試奏です(右)。調律はミーントーン。半音階の色合いが良く表現できます。 木製にもかかわらず、ケースをはじめほとんどのパイプがオリジナルのまま残っている貴重なこの楽器を、今回のツアーに同行してくださっているポーター氏が様々な様式の即興で試奏してくださいました。16世紀の終わりに作られ、2度の修復で整えられた音は大変美しいものでした。
次に宮廷教会の聖堂に戻り、皇帝マクシミリアン一世のためにJ.エバートが作った(1558-61)美しい楽器を鑑賞します(12:50〜14:00)。こちらも普段は鉄の格子で閉ざされている内陣に入ると、正面の祭壇の右の壁にオリジナルの美しいケースに収まったオルガンがありました(右)。反対側の左の壁には皇帝の臨席のための小部屋が作られていますが、楽器の音が大きかったため(大きな音が鳴り響くことが皇帝の好みだったそうです)か、創建当時からガラスの窓が取り付けられていたとのことです。
フォーゲル氏による解説と試奏のあと、フォーゲル、鈴木雅明両氏によってハスラーの作品が演奏されました。先ほどの楽器と同じミーントーンの調律(原則として3度の音程を純正にするように整える方式)による響きが、ルネサンス時代を思い起こさせてくれます。
その後、スペースが狭いため4人ずつ演奏台(中央の写真)に上がり、鍵盤やストップを見ました。左は演奏台の裏の部屋の「ふいご」です。
オルガンツアー恒例の「ランチパケット」。時間を有効に使って楽器に触れる時間を作ろうとの配慮です。ゆで卵入りは初めて?! イン川のほとりの街「インスブルック」。オルガン鑑賞のあと、引き続きオルガンを弾く方は聖堂に残り、メンバーの多くは川沿いに進んで、アルプスに連なる山上に上るケーブルカーの駅に向かいました。
     約30分、2回の乗り換えの後にたどり着いた頂からはインスブルック街が一望できます(左)。高度は2000m以上。頂の向こう側には切り立った峰々が続き(中央)、ひんやりした空気が心地よいものでした。右は下山後に上った頂を見上げた写真。アルプスの雄大な眺めとともに初日の「ルネサンス・デー」は幕を閉じました。

  2003年 8月 7日(木) 〜第3日〜



*ルート概要:
マイヒンゲン:
 ・修道院教会のバウマイスター・オルガン(II/P/22)
*ノェルトリンゲンにて昼食
ネレスハイム:
 ・修道院教会のホルツハイ・オルガン(III/P/48)
→《アーレン泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

8:30にエアディングを出発後北西に進路を進め、マイヒンゲンという、我々がツアーのスタートにあたっていただいた詳細な南ドイツの地図にも出ていない街にやってきました。 この、バウマイスターが1734〜37年にかけて建造した楽器は、何と、その調律までがオリジナルな状態で残されている貴重な楽器です。 オルガンの右脇の部屋に、ふいご踏みの踏み場がありました。実際に使えるものか、土曜日に再訪したときに確かめたいと思います。 オルガン正面に並ぶペダルの管は木製です。近づくとこの写真のように木目がわかります。建造当時はすずが表面に塗られていたとのことでした。楽器の説明と試奏で10:50からの2時間がまたたく間にすぎました。
残されているオリジナルな調律はミーントーンが基調ですが、様々な教会旋法のキャラクターの差をよりよく出せるように工夫されたもの。そのためこの楽器では転調が多いバッハなどの作品は演奏ができないとのことでした。土曜日の再訪時にふさわしいレパートリーを存分に楽しみたいと思います。鍵盤は当然分割鍵盤です。 近くのノェルトリンゲンに出向いてレストランで昼食。街を囲む城壁が残っていて、ぐるりと回れるそうです。ここにも土曜日、再び参りますので、散策してみたいと思います。右はノェルトリンゲンのレストランの一押し料理、サーモンフィレのバターライス添え、サラダ付きです。お値段は9ユーロ10セント。このほかに、くるみのアイスクリームなどもありました。
午後は、ノェルトリンゲンの少し南の街、ネレスハイムに、こちらも修道院教会を訪ねました。 この礼拝堂にあるホルツハイ作(1792〜97)のオルガンはなかなかユニークなものでした。南ドイツ・シュヴァーベンの様式の中に、フランスの様式が取り入れられている響きも、とても長い残響と相まって印象的でしたが、まるで聖堂の柱と一体になったかのようなデザインが特徴です。調律はキルンベルガーの第IIIでした。
楽器中央上部のパイプ群。上に天井画が見えますが、楽器本体はモノトーンで統一されています。 3段、ペダル付き、48ストップの大きな機構を操るコンソール。一番左の方はこの教会の神父さん。 ペダルの一番左に、独立した形で「パウケン(ティンパニ!)」というキーがありましたので、私も踏ませていただきました! はじめに神父さんからのお話、そしてフォーゲル氏の説明と試奏、ポーター氏による演奏に続いて我々も演奏台に上がり、間近に鍵盤を眺めることができました。(16:30〜17:55)
楽器正面向かって左の2つのタワーの間のスペースに、このオルガンの構造を説明する模型がありました(左)。実際にアクションが動くところもあり、大変わかりやすいものでした。演奏台の周りは結構広い空間です。 最後に、礼拝堂の入り口に皆で下がり、午後6時に始まった夕べの礼拝の様子を少し拝見してから教会を後にしました。本日はアーレンに宿泊です。

  2003年 8月 8日(金) 〜第4日〜



*ルート概要:
オットーボイレン:
 修道院教会
 ・リープ作の三位一体オルガン(IV/P/49)
 ・リープ作の聖霊オルガン(II/P/27)
 *ハラルド・フォーゲル、リサイタル
イルゼー:
 ・修道院教会のフライヴィス・オルガン(II/P/29)
→《アーレン泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

毎日我々を乗せてくれているこのバス、何とできたてほやほやの新車だそうです。この日の朝も、アーレンからオットーボイレンまでの1時間半余り、快適なドライブでした。 オーストリアとの国境近くまで南下したオットーボイレンには、前日に訪れたネレスハイムよりもさらに大規模な修道院があります。到着後、昼食のランチパケット(中央)をいただき、まず売店に立ち寄りました。この地の2重オルガン(新しいものも含めれば3重!)は名高く、たくさんのCDがあります。多くの参加者がCDを買い求めました(右)。
10:30、いよいよオルガンと対面です。この日はあとでフォーゲル氏がリサイタルをしてくださるので、まず大きな方の「三位一体オルガン」の演奏台に上ります。1756〜66年にK.J.リープによって建造されたこの2つのオルガンは、オリジナルのパイプを多く残していますが、1914年のシュタインマイヤーによる現代化の修復もあり、平均律で調律されています。本格的なオリジナルの状態への復元にはまだ研究が必要とのことでした。説明と試奏の最中、ベロッティ氏が到着。講師陣の役者が揃いました!(右) 12:00からの礼拝(我々はランチタイムでした)後、フォーゲル氏によるお話に続いて13:00よりミニ・リサイタルが開かれました。
 
まず、祭壇の左に位置する女人禁制(!)の「聖霊オルガン」(II/P/27)(左)でシャイデマン、スヴェーリンク、シャイト、ブクステフーデの作品、続いて午前中に試奏した「三位一体オルガン」(IV/P/49)(右)でパッヘルベルの作品が演奏されました。礼拝堂の大きな空間にのびる残響豊かな響きが印象的です。フランス風なストップに南ドイツ的な色合い(ストリング系など)が加えられている2つのオルガンを堪能しました。 14:00すぎから修道院内の博物館の見学です。左の写真は、入り口付近にある修道院の歴史を刻んだパネルを見ているところ。修道院の創立は764年(日本では奈良時代!)で、1964年には創立1200年祭が行われたとのこと。他に、多くの貴重な古書のおさめられた図書館や美しい装飾が施された広間なども見学して、この美しい祭壇(右)を持つ大聖堂に別れを告げました。
  
16:00すぎ、次の目的地イルゼーに着くと、先日のBCJの世俗カンタータ公演でも活躍されたテノールの櫻田さんご夫妻が何とイタリアから合流してくださいました(左)。そして、見学後に食事をとる、この修道院で醸造されているビールを楽しめるすぐそばのレストランでの注文を決めてから修道院(右)の中へ入りました。 まずこちらの修道院の案内の女性から装飾のことや、この修道院が規模は小さいものの、音楽をはじめとした様々なジャンルで重要な役割を果たしてきたことをうかがいました(左)。続いて光と影でデコーレーションされた聖なる劇場というコンセプトのもと1752〜54年にフライヴィスによって建造されたオルガン(II/P/29)の説明と、ポーター、ベロッティの両氏による試奏を聴きました。
「楽器の真ん中に窓があり、西から日が入る」ことが建造の条件だったそうです。演奏台は前日訪れたネレスハイムのオルガン同様、祭壇の方に向いて設置されています。この2枚の写真は、演奏者とオルガン本体の間にある席からとったもの。奏者も礼拝の進行を目の前にしながら演奏できます。 ということで、本体のパイプとリュックポジティフの間が結構離れています。調律はキルンベルガーの第IIIでした。楽器のまわりは“天使のオーケストラ”が配置されています。右の写真は楽器本体右上にある像ですが、手にしているのは木管楽器のようです。
  
参加者による試奏の最後に今井奈緒子さんがクレプスのコラール編曲「イエスはわが喜び」を弾いてくださいました。18:00、礼拝堂をあとにしました。 夕食は近くのレストランで。見学に入る前に注文した料理がくるまでの間、当地特製のビールを楽しみます。とてもおいしくいただきました!9時過ぎまで歓談が続き、バスでのアーレンへの帰還が午後11時近くになってしまいましたが、実に楽しいひとときでした。こうして修道院巡りの2日間が終わりました。明日はマイヒンゲンでの鑑賞と参加者コンサートです!

  2003年 8月 9日(土) 〜第5日〜



*ルート概要:
マイヒンゲン:
 ・修道院教会のバウマイスター・オルガン(II/P/22)
 *ケレマン、フローベルガー・リサイタル
 (ノェルトリンゲン観光 or コンサート準備)
 *参加者コンサート

→《アーレン泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

3泊お世話になったアーレンのホテルの前の小道です。 9:30すぎ、再びマイヒンゲンの修道院教会に参りました。 オルガンの方から祭壇正面を望みます。 美しい祭壇画でした。
当地のオルガニスト、ケレマン氏によるフローベルガー・リサイタルを楽しみました。左の写真は、演奏前にディスポジションや聴きどころを説明してくださっているところです。
リサイタルの後、今度はベロッティ氏がイタリアのオルガンとイタリアの様式についてお話くださいました(右)。
午後の参加者コンサートで演奏するメンバーはマイヒンゲンに残り練習。他のメンバーは近くの古都、ノェルトリンゲンに再び行きました。
左は市の中心にあるゲオルグ教会。右はその教会内にある古いオルガンです。残念ながらケースのみオリジナルで中身は残っていません。
教会から出ると、この日の晩に近くでコンサートを開く、フライブルクの合唱隊がミニコンサートをしていました。 ノェルトリンゲンは街を囲む城壁がすべて残っていて、一周2.6キロの道のりを歩けるそうです。そんな城壁にある塔の一つ(左)に博物館があったので入ってみました。塔からの眺め(中央)と街と城壁の模型です(右)。
お昼は2日前と同じ店で。写真は当地のパスタ、ケーゼ・シュペッツレの豚肉のせです。たっぷりありました。 その後マイヒンゲンに戻りました。この奇跡的に手つかずのオリジナル状態が保たれた楽器のまわりには、天使のオーケストラが配置されています。
リュックポジティフの上のティンパニ(左)、楽器中央上部のトランペット部隊(中央)、左のタワーにはコルネット奏者でしょうか(左)。楽器を守ってくれていたんですね!
楽器の裏には聖人のための座席がありました。背もたれの上には数々の聖人の木彫が飾られています。 参加者コンサートです(3:25〜4:30)。曲目、奏者、ディスポジションなどは演奏台の上からベロッティ氏やポーター氏が紹介してくださいます。楽器に触発され、みなさん素晴らしい演奏でした。
このマイヒンゲンの修道院が18世紀はじめに政治的理由から閉じられたことが、この貴重な楽器の伝承につながりました。写真はオルガンの鍵盤のふたですが、鍵の前のところに楽器を封印した証拠のろうのあと(赤い小さなかたまり)があります。 たくさんのことを教わったマイヒンゲンをあとにして、夕方6時にアーレンの宿に戻ってきました。7時からのディナーのあと、コーヒーやアイス、そしてもちろんビール&ワインで盛り上がりました。
写真はディナーで食べた当地名物のヌードルと、大変おいしかったこちらもご当地シュヴァーベン地方のワイン、「フライナー・ゾンネンバーグ」です。珍しい黒リースリングのワインです。

2003年 8月10日(日)[第6日]15日(金)[第11日]については、別ページにまとめます。
 



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