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オルガンツアー2003「写真館」 in 「VIVA! BCJ」 (2)

8月5日〜15日にかけて行われたオルガンツアー「The Glory of the South」のレポートが大きなファイルになりましたので、8月10日(第6日)以降の報告については、こちらのファイルにいたします。ご了承ください。
なお、文中の時間の表記はすべてドイツ現地時間。サマータイム期間中のため、日本との時差は7時間です。
*オルガンの仕様は(III/P/65)のようにあらわします。この例では 手鍵盤の数が3/ペダル鍵盤有/ストップ数65を示します。 

2003年 8月
 ・前日まで、・5日(火)、・6日(水)、・7日(木)、・8日(金)、・9日(土)
 ・10日(日)、・11日(月)、・12日(火)、・13日(水)、・14日(木)、・15日(金)


(最新更新:03/08/22)


 

  2003年 8月10日(日) 〜第6日〜



*ルート概要:
バートウィンプフェン:
 ・市教会のエーリッヒ・オルガン(II/P/23)
 *市内観光&参加者コンサート練習
 ・ドミニカ教会のエーリッヒ・オルガン(II/P/34)
 *市教会でクリストフ・ボッセルト氏による
   オルガンデモンストレーション
 *市教会にて参加者コンサート
 ・コルネウス教会のフライターク・オルガン
→《ハイルブロン泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

まず、朝10時から市教会での礼拝に参加。オルガン奏楽はあとで色々お世話になるボッセルト氏でした。その後エーリッヒ・オルガンの演奏台に上がり打ち合わせ。夕方の参加者コンサートで演奏を希望する方以外は市内見学に行くことになりました。一番右の写真の左はじの女性が英語のガイドさんです。
昼食後、もう一つのエーリッヒ・オルガンを見るため、ドミニカ教会へ。こちらの楽器は“現代化”されてしまったままで、調査・研究の上、修復が必要とのことでした。 この日のランチパケットは以上の4品。ぶどうが特においしかったです。
市教会に戻り、14:15からボッサート氏によるオルガンの説明と試奏。その後参加者コンサートの練習と市内自由散策の時間があり、午後5時にコンサートが始まりました。街の中にもチラシが貼ってあり、地元のみなさんもお集まりいただいた上、何とラジオ収録もあったとのこと!日本やアメリカの人がはるばるこの地のオルガンに興味を持ったことがとても重要な意味を持った出来事だったようです。ホテルへの帰りがけにもう一つのコルネウス教会に立ち寄り、シュニットガーの弟子のフライタークが作った小オルガンをボッセルト氏に紹介していただきました(一番右の写真)。

  2003年 8月 11日(月) 〜第7日〜



*ルート概要:
バートウィンプフェン:
 市庁舎にてオルガン文化アカデミーについてのミーティング参加
  or 市教会にてオルガン演奏
ホッフェンハイム:
 ・福音教会のヴァルカー・オルガン(II/P/27)
コルマール(フランス):
 ウンターリンデン博物館見学(イーゼンハイム祭壇画他)
 ・リュッカース作のチェンバロ(1624年)
 *鈴木雅明、チェンバロ・リサイタル
→《ブライザッハ泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

ワインのおいしかったハイルブロンの街を8:30に発ち、再びバートウィンプフェンに向かいました。
まず、昨日、まだ修復が済んでいないエーリッヒ・オルガンのあったドミニカ教会に行き、崩壊の危機に瀕している東欧の1万台ものオルガンを救おうというプロジェクトの説明をうかがいました(左)。続いて、市教会の横の市庁舎2階で、市長さんも参加して、バートウィンプフェンを中心とした「オルガン・古典文化アカデミー」の開設を求めるミーティングに参加しました(中央:9:30〜)。10:50、美しいバートウィンプフェンの街(右)をあとにして、ホッフェンハイムに向かいます。
ホッフェンハイムの福音教会では19世紀に製作された(1846年)ヴァルカー・オルガンを楽しみました。ボストンやブエノスアイレスでも仕事をしたヴァルカーのオリジナルは意外に貴重なもの。バロック的な音の構造を持ちながら、フィスハーモニカという機構などを用いることによりクレッシェンドやデクレッシェンドも自在にできる表現力を、ボッセルト氏による解説と演奏でたっぷり聴かせていただきました(11:30〜13:00)。最後に教会入り口で“ヴァルカー!”と叫びながら集合写真を撮りました!
この日のランチパケットはゆで卵付き。ホッフェンハイムの福音教会入り口で大急ぎのランチタイムとなりました。 13:30にホッフェンハイムを発ち、バスは国境を越え、フランスへ。15:50にコルマールに到着し、さっそくウンターリンデン博物館の見学に向かいます。ここの目玉はグリューネヴァルトの手になる「イーゼンハイム修道院の祭壇画」です。祭壇画の1枚にヴィオラ・ダ・ガンバ(?)を弾く姿もありました!(右)
 
しかし、我々にとっての目玉は、1624年に作られたリュッカース・チェンバロのオリジナルです!2階の「ハープシコード・ルーム」にあるその名器で鈴木雅明さんがスヴェーリンクなどを披露してくださいました(左:17:00〜17:30)。その後ポーター氏、ベロッティ氏も楽器の前に座り、オリジナルのリュッカースの感触を確かめられていました(左)。 18:20にコルマールを発ち、再び国境を越え、この日の宿、ブライザッハへ。川沿いに立つホテルの部屋からライン川が眺められました。

  2003年 8月12日(火) 〜第8日〜



*ルート概要:
エーベルスミュンスター(フランス):
 ・修道院教会のA.ジルバーマン・オルガン(III/P/29)
マルムーティエ(フランス):
 ・修道院教会のA.ジルバーマン・オルガン(III/P/28)
 *参加者コンサート
ストラスブール(フランス)大聖堂見学
→《ブライザッハ泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

本日はアルザスのオルガンを訪ねる「フレンチデー」です!まず国境を越え、近年修復を終えたエーベルスミュンスターの修道院教会にあるA.ジルバーマンのオルガンを訪ねました。A.ジルバーマンがパリで学んだフランスの様式とドイツのオルガンの響きがうまくブレンドされた、魅力的なオルガンでした(9:40〜12:00)。
オルガン上部の天井画にまたまたガンバを弾いているとおぼしき人物が!(左) 奥行きが深いドイツのオルガンに対して、この楽器は、幅が広く奥行きは浅く作られています(右:楽器の右側から側面を見上げた写真です)。 エーベルスミュンスターの教会前でランチパケットをいただいた後、A.ジルバーマンがパリで学んだフランスの様式で作り上げたマルムーティエ修道院教会(右)のオルガンを訪ねます。
ドイツのごつごつした発音と違い、まるでフランス語の発音のようにふくよかな響きが聖堂に響きました。ここでは試奏のレパートリーもフランス物限定です!かつて神戸・松蔭の平島先生がこの楽器の音色を耳にされて「是非このタイプの楽器を松蔭に!」と念願されて現在のガルニエ・オルガンが導入されたとのこと。他にもこの楽器に魅せられた方が多く、「世界に影響を与えた歴史的オルガン20台」に入る楽器とのことでした。
一度に5人までしか上がらないようにと指示のあった演奏台での写真です。鍵盤(左)と楽器の裏面からの眺め(左)です。すべての要素が良くバランスされているので調律が平均律であるということも忘れさせてくれる、魅力的な響きでした。 17:30にマルムティエを発ち、前日と同じ宿へ帰る途中ストラスブールに立ち寄り、大急ぎでカテドラル(左)を見学しました(18:15〜18:45)。右はカテドラル内にあった大きな天文時計です。

  2003年 8月13日(水) 〜第9日〜



*ルート概要:
ムーリ(スイス):修道院教会の5台のオルガン見学
 ・ショット・オルガン(II/P/34)
 ・シュニーダー・オルガン(I/P/8)
 ・ツーベン・オルガン(I/P/16)
 ・エツケス作のレガール(コピー)
 ・エツケス作のコア・オルガン(コピー)
ザンクト・ウルバン(スイス):
 ・修道院教会のボッセルト・オルガン(III/P/40)
→《バートゼッキンゲン泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

この日は「スイス・デー」です。1日で計6台のオルガンを訪ねます。そのうちの5台があるのがこのムーリにある修道院教会。ここにあるオルガンの修復に関わっていらしたエツケス氏にもいらしていただけました(左から3番目の写真)。まずは正面に17世紀後半に作られた2台のオルガンが祭壇を挟んで並んでいます。圧巻です。
まず祭壇左の「福音書オルガン」。1660年から65年にかけてシュニーダーによって建造されたオルガンです。シンプルな造りですが、張りのある素晴らしい響きです(左の2枚)。
祭壇右がツーベンが1697年に左のオルガンに模して造った「エピステル・オルガン」です。こちらの方がストップも多く、多彩で落ち着きをもった響きでした(右の3枚)。この2台のオルガンはエツケス氏により1991年の修復の折り a'=425 のミーントーンに調律され、2台同時に演奏することが可能です。そこで、左にポーター氏、右にベロッティ氏に上っていただき、共通のストップを紹介しながらの即興バトル(!!)を聴かせていただきました。2台の楽器のキャラクターの違いの妙もさることながら、お二人の丁々発止の即興のやりとりも聴きものでした!
 
祭壇から入り口方向を見た右側のバルコニーにエツケス氏が造ったコピーのレガールがあります。そのバルコニーの天井画はオルガンのパイプを運ぶ天使(上)とオルガンの傍らにイエスが描かれた(下)珍しいものでした。 正面の祭壇内陣には、こちらもエツケス氏が造られたコピーのコア・オルガンがありました。 ハウプトオルガンの演奏台への階段を上ると、まず修復に関する資料が展示された部屋がありました。
 
この教会で最も古い、1630年にショットによって建造されたハウプト・オルガンです。聖堂入り口の上、祭壇の真向かいにあるこの楽器は、1743/44年にV.F.ボッサルトによってバロックのスタイルに建て替えられ、20世紀はじめにいったん現代化されました。しかし、その後の2度の修復を経て現在は a'=440、修正ヴェルクマイスターの調律で、バッハを含むバロックのレパートリーまでの演奏が可能です。 聖堂入り口の右のドアを開けると、そこはハプスブルグ家の博物館。この町はハプスブルグ家発祥の地で、その栄華の時期があったからこそのこの豪華なオルガン群が造られたのでした。入ってすぐのところにハプスブルグ家の墓所があり、続いてハプスブルグ家由来の財宝などが展示されていました。
午後はザンクト・ウルバンの修道院教会へJ.ボッセルト作のオルガンを訪ねます。この1716〜21年建造の楽器は分割鍵盤つきで、4分の1コンマの完全なミーントーンに調律された最大の歴史的オルガンです。当地のオルガニストの方が、V.F.ボッセルトによる拡張作業の契約書のオリジナルを見せてくださいました。(左から3番目の写真)
簡単な説明のあと、響きをじっくり味わうためフォーゲル氏がリサイタルを聴かせてくださいました。ケルル、ムルシュハウザー、シェーラーといった17〜18世紀の作曲家の作品をそのオリジナルな響きで堪能させていただきました!大聖堂に長く響く完全な協和音に耳と心が洗われる思い。その後演奏台に上がり説明をうかがいました。
この楽器の見学が終わると、ツアー終了前ですがここでベロッティ氏とはお別れとのこと。最後にトゥラバチェの「ドレッツェ・リガトゥーア」を披露してくださいました。
名残惜しいスイスをあとに、今夜はドイツに戻って、バートゼッキンゲンで宿泊です。

  2003年 8月 14日(木) 〜第10日〜



*ルート概要:
ヴァインガルテン:
 ・修道院教会のガブラー・オルガン(IV/P/63+7)
→《エアディング泊》
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

バートゼッキンゲンの宿のすぐそばには、ライン川上に架かる世界最長の屋根つき橋(左)がありました。写真は朝の散歩の時に撮ったもの。真ん中の写真がドイツ側の入り口。橋の中程にある白線(右)がドイツ-スイスの国境です!
8時に宿を発ち東へ進みます。ぶどう畑とボーデン湖(左)を眺めながら少し北上したところに最後の訪問地、ヴァインガルテンがあります。さっそく大聖堂に入ると、6つの窓に66のストップ、6666本のパイプと「6」の数字のこだわって建造された巨大なガブラー・オルガンが目に入ります。
4段の鍵盤の両側にはこれでもか、と様々なストップが並んでいます。演奏台の奏者のすぐ上にはぶどうの形のグロッケンが3つ下がり、にぎやかな音を出します。その上にはティンパニを叩く天使が!(真ん中の写真) ちなみに、4本の微妙にことなる調律のパイプを同時に鳴らして太鼓の音を模すティンパノというストップもあります。水鳥のさえずりなど、他にもユニークなストップがいっぱい!まるでおもちゃ箱のようでした。当地のオルガニストのハム氏がリュックポジティフの中のパイプも見せてくださいました(右)。
「最後にヴァインガルテンを訪れたのはオルガンの本質を味わっていただきたかったからです。そのオルガンの本質とは“夢”です。このオルガンを造った人々が持った夢があったからこそこのオルガンが出来、ずっと世界の人々の目を集めてきたのです。」とフォーゲル氏がツアー最後の訪問を締めくくられました。
聖堂前の見晴らしのいい広場(右)で昼食をとってからバスに乗り込みます。
午後5時すぎ、途中1回の休憩を挟んだ3時間のドライブ後、ツアーの最初の宿でもあったミュンヘン近郊の街エアディングのカスターニエンホフに到着しました。何か我が家に帰ってきたような気がします。夜のさよならディナーまでの間、街で買い物などを楽しみました。
  
最後の夜は恒例のさよならパーティー。おいしいビュッフェの食事とビールにワイン、そしてデザートのアイス、プリンなどを存分に楽しみながら旅の思い出を語り合いました。最後に全員で記念撮影。みんな満足の表情です。フォーゲルさん、鈴木雅明さん、ポーターさん、ベロッティさんはじめ、スタッフのベスさん、松波さんなどなど、大変お世話になりました。ありがとうございます!

  2003年 8月 15日(金) 〜帰国〜



エアディング発
ミュンヘン空港〜フランクフルト空港
フランクフルト空港〜成田空港(日本時刻、16日朝到着)
  ※鈴木優人さんのこの日の日記はこちら

慣れ親しんだ(?)カスターニエンホフとの別れの朝。空港まで、昨日までもお世話になったバスが我々を送ってくれることになりました。バスの運転手さん(左から2番目の写真)にも本当にお世話になりました。ありがとうございます。
ポーター氏も我々と同じバスで空港へ。鈴木雅明さんと別れを惜しみます(左から3番目の写真)。そしてお見送りをいただきました(右)。
近代的なミュンヘン空港。チェックインをしてから、まだ朝でしたが最後のドイツビールを楽しみました。機上から眺めるドイツの町並みともお別れです。
乗り継ぎのフランクフルトからはジャンボジェット機の旅。10時間余りの飛行は大変順調で、16日朝、雨の成田空港に到着。夢のようなオルガンツアーの終了です。お疲れさまでした!

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