2003年9月30日(日)
指揮:アレクサンドル・コプィロフ
演出:プティパ、ゴールスキー
改訂版再現:A.ファデェーチェフ
キトリを踊るステパネンコには余裕があり、随所に細かい表情づけがみられる。顔はいかついけれど、性格からしても彼女はこれがはまり役。
たとえば第1幕はじめの方でバジルのキスをかわす場面では、いつもながら「おあずけよ」とばかり両肩を軽くあげたり、第2幕はじめのバジルにジャンプで飛び込んでいき、成功すると2回めにはもっと派手に飛んだり。
いうまでもなく第3幕のグランフェッテでは4回に1回を最後までダブルで通し、テンポを速めにあおるオーケストラにぴったりついていた。
その後の斜めに廻るところではオケがついていけない程。回転系が得意な彼女だが、今晩は特にさえていた。
脇役では何といってもサンチョ・パンサのペトゥホーフとキューピットのカプツォーヴァ。
ペトゥホーフは身体全体が諧謔味にあふれ、動きがあればそのままサンチョ・パンサの表現となってあらわれる。
もちろんそれが彼の地というわけではなく、細かくみるとさまざまな遊びを四六時中くりひろげている。
たとえばキトリの踊りを皆が見ている時に、サンチョ・パンサは舞台の袖でその観客となりつつも、そばにいる娘のおしりをさわって怒られたり、お酒をネコババしようとしたり・・・。
キャラクターにこういう大物がいることによってボリショイの舞台はぐっと盛り上がり、熱くなる。
そしてカプツォーヴァ。彼女はいるだけでキューピットそのもの、と書けばそれですべてを説明できてしまう気がする。
動きのあとで決めのポーズをとるほんのちょっと前に微笑む、ニッコリと軽く口を開く時の歯の現れ方のタイミングや息のつき方。
そこまで計算して踊っているのか、そうしたしぐさが自然に出てくるのか。彼女のキューピットを見ているとドンキホーテならずとも夢心地になってくる。
他の見所としてはマルハシャンツのジプシーの踊り。何かに憑かれたかのように、われを忘れて客席の一点をみつめて踊る彼女の踊りには神々しささえ感じた。
闘牛士と街の踊り子のからみもこのバレエの見せ場だけど、レベルの高いところで標準的な出来。
ステパネンコ、ペトゥホーフ、カプツォーヴァ、マルハシャンツが、ただ歩くだけで劇中人物になってしまうような集中力を見せてくれれば、それが他のメンバーにも伝わらないわけはなく、豪華なドンキホーテを堪能した。
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