PART13
写真を沢山掲載しましたので、開くのに時間が掛かります。




 5月 1日(土) わが家にきてから234日
体重    g(前回測定比    g)


 まもなく放野予定のむー太は、夜、部屋の中を飛びまわっているが、平素はカゴの中の巣箱で寝ている。そのうちにカゴの金網戸を口と前足で開ければ外に出られることを学習した。やむを得ず、安全のために平素は金網戸を洋ラン用に使うビニタイ、ねじって支柱止めにするやつで縛ることにした。しかし今度はそのビニタイを噛み切ればいいことを学習し、そうして脱出するようになった。今は2本使っている。
 台所に食器棚がある。ほんの少し隙間が開いていたときに、好奇心旺盛のむー太は鼻っ柱を隙間に突っ込み、力任せに開けようとしていた。そのうち、側にあるとっ手に前足をかけ、鼻っ柱を押し込むと簡単に開くことを学習してしまった。その後も盛んに開けようとするので、かわいそうだが食器戸棚にはつっかい棒をあてがった。
 ところで、今夜はケージの2本のビニタイを食い破り脱走した。突然出てきて、あっと思う間に台所に……。熱いものはなかったし火もついていなかったので、あせりもせずどっこいしょと腰をあげている間にむー太は思いきりなべのフタに飛び乗り、そしてその拍子にフタがずれて、後ろ足2本がおでんのなべにズボッ!! 大笑い。
 家族はみんな夕食をすませており、あとはまだ帰宅していないダンナだけ……。ハッハッハ……。内緒で出しました、そのまま……。 全部食べた!
 



 5月 2日(日) わが家にきてから235日
体重    g(前回測定比    g)


 放野後のむー太の観察をしてくださる大学生のS.Tさんから首輪を送ってきた。早速取り付ける。かなり苦労して取り付けたが、本人は全く気にしていない様子。やっぱりコイツは相当な大物なのか、それとも単に鈍感なだけか……?それから、放野の際には巣箱を2個設置する予定である。1個はいま使っているもの。それから別なもう一つであるが、これはむー太の匂いをつけるために先に頂いた。カゴの隣りにおいてあるが、これにもときどき入って遊んでいる。もうむー太の匂いもついたことだろう。

S.Tさんの手紙より


発信機の装着について
◎ 放野の前に
  発信機をつける首輪に慣らすため、
 皮ひもで首輪を作り装着する。
  ムササビの首にあわせて輪を2つ
 作り、ビニールテープでまとめて1本
 にする。(強度を増すため。)
   ※ 1本のひもで2重にすると、
    どちらかが引っ掛かった時締
    まってしまう危険がある。
  きつさは、首輪を引っ張っても頭か
 ら抜けないくらいで、間に指が1本入
 るくらい。

  実際は、図の大きさで30g程度の発
 信機をつける。




◎ 放野の日に
  発信機をつける。
  ビニールテープを切り、輪の1本を
 はずして発信機付きの輪ととりかえる。
 再びビニールテープで1本にまとめ、
 それを首まわりの毛に接着剤で止める。



 5月 3日(月) わが家にきてから236日
体重    g(前回測定比    g)



むー太の首につけた首輪。
これは最初に作ったもので、ちょっと大きすぎた。
実際につけたものはこれよりもう1回り小さい。












首輪が装着されたところ。












自分からのけぞって首輪を見せてくれているよう。













               指1本分が入るぐらい。



 5月 3日(月)〜10日(月)  わが家にきてから237日〜244日
体重 860g(前回測定比 +30g)


 いよいよ放野当日( 5月10日)である。朝、センターの職員3人とこれからむー太の観察をしてくださるTさんがわが家にやってきた。むー太は大勢の気配に驚いたのか、それともミルクがあるために連れてこられた2匹の赤ちゃんムササビの臭いに興奮したものか、ひどくナーバスになっている。飛びついて前足でひっかくという攻撃を繰り返す。私ならば大丈夫だろうとタカをくくっていたのは油断であった。何気なく伸ばした手を思いきりひっかかれ、血が噴き出した。でも、この様子にホッとする。人間にベタ慣れになっているようでは困るのだ。このぐらいの警戒心はあったほうがよい。仕方ないので、大好物のヒマワリの種を見せてみる。案の定すぐにそうっと出てきて、ヒマワリの種を受け取った。そうなればもうこちらのもの。ヒマワリでつって自由に操れる。現金なヤツだ!

白い消しゴムほどのものが発信機。
アンテナの先に目だちやすいよう蛍光の赤い旗がついている。


 少し落ち着いたので発信機をとりつけることに。あまり暴れるようだったら麻酔を使う用意もあったが、何とか抑えこんで麻酔は使わずにすんだ。抵抗したので手は傷だらけになったが、体力を消耗する麻酔を使わずにすんだのはよかった。慣らすためにつけていた首輪を一旦はずし、あらためて発信機と目印の赤い旗をつけた皮ひもを首に巻いてとめる。テープを巻くのはただ止めるだけでなく、もう一つ重要な意味があったのだ。それは、蛍光テープであることだ。これを頼りに夜の観察をするのである。取り付けたあとしばらく後ろ足で首回りを掻いたりしていたが、すぐに落ち着いた。こういうところは順応性がある。

むー太を抑えつけて発信機を装着

発信機装着直後。のけぞって後ろ足で首元を掻いている。

暴れたためにこんなに引っ掻き傷が














 一休みしたあと、車で丹沢山系の放野場所まで連れて行く。約2時間半ほどかかったが、疲れを見せる様子もなく、元気である。
むー太を放野した山
巣箱の取りつけ。巣箱は2個取り付けた。

むー太を肩に乗せ巣箱まで導く

 着いてから計測を行い、その間に巣箱をとりつける。ケージから巣箱を出すときに、むー太を出そうとしたが、当然ながらなかなか出てこない。しかし、ヒマワリの種を見せびらかしたらすぐに出てきた。ヒマワリはオールマイティの切り札のようなものだ。
 とりつけた巣箱にどうやって入れるかが問題になったが、結局私が肩に乗せてはしごをのぼり、上まで連れていった。最初は巣箱の上に乗ってしまったが、何とか入ってくれた。その後身を乗り出してあちこち確認。キョトキョト見回すことおよそ15分。その間にも一つぶ、二つぶ、中に入れてやったヒマワリの種をつまむ。口をもぐもぐさせながらあたりを見まわしている。やがて落ち着いて眠りはじめたらしく、出てこなくなった。




肩から巣箱に移った

不安、それとも好奇心  あたりを見回すむー太

 これでムササビむー太と私たちの物語は完了である。野生に返したら、もう野生の子である。あとはむー太の知恵と勇気とそして運に任せるほかはない。がんばって生き延び、伴侶を見つけ、子孫を残してほしいものである。

むー太、貴重な経験をありがとう!




皆様から頂いたメッセージ


 その辺のムササビには負けないと期待してます。でも・・・例えば娘は嫁に出しても「たま」に は連絡してくれると「期待」してるんですけど、むーた君に「もう一度会う」というのは難しい事 なんでしょう・・・か・・・


 むー太ちゃん 旅立ちだったのですか・・・


 とうとう、むー太は自然に帰ったんですね。それが本来の姿でしょうが、ちょっと寂しいのでは?


 HPを通してしか知らない”むー太”君も毎日のように映像で見て身近に感じていたからか私も寂しく思います。


 とうとう放野なんですか。何だか寂しいですね。むー太には森でがんばって生活して欲しいですね。


 むー太くん、お別れなんですね・・・これから、元気でがんばってほしいですね。


 今日、むー太とはさよならなんですね。ちょっと淋しいですね。でも、無事に野に帰れて良かった良かった。


※ムササビむー太の最初のお母さんより
 皆さんありがとう。京子さん&ミツハシさん、今までむー太の世話、ありがとうございました。今日は山奥まで放野の立ち会いにも来ていただいて、遠路本当にお疲れ様でした。
 この放野については、何から何までやってくださったHさんKさん、そしてこれからのむー太を観察してくださるTさん、心よりMany Thanks!!!皆さんのおかげでここまでこれました。感謝してます・・・


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 皆様、ありがとうございました。ムササビむー太に伝えておきます。
                      (しかし、どうやって伝えるのだろう……



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