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一桁>経営組織論?>『部下の問題処理』

<矯正手続き>

「矯正手続き」
 仕事上の過ちや失敗などを矯正する際の、適正な処置について、管理者が用いる処置の方法について考えてみます。
1「配置転換」
 配置転換とは、ある同じ階層レベルの職務から、別の職務に当該社員を移すことです。この場合、昇給の停止とか、職位の変更を伴わないのが普通です。
 特定の職務に必要な技術や経歴を持っていないけれども、基本的には仕事を充分にやれる社員なり管理者には、もっと適した職務に移動できる機会を与えるべきです。

 このやり方は会社のためになります。同じ階層レベルで、少しでも成功する可能性の多い職位にあって、自分の要求を満たす機会を該当する彼に与えることにもなります。

2「昇進」
 自分の能力以下の職位についていながら、うまくいかない社員の例はたくさんあり ます。
 高い潜在能力と、昇進し業績を上げたいという意欲を持った社員は、その能力を充 分に発揮できる職務に昇進させることによって立ち直らせることができます。

3「格下げ」
 自分の能力以上の職位についている社員は、もっと能力を発揮できる職務に格下げ することも良い結果を生みます。
 格下げは、その対象となった社員の怨みをかい、協力が得られなくなる恐れがある と考えられるところから、滅多に行われない方法です。しかし、前の職務では好成績 を収めながら、まだ準備が出来ていない内に、高い職務に昇格させて仕舞うようなこ とは往々にしてあります。新しい職務でうまくやっていけないとなったら、前の職務 ないしは、それに似た職務に戻ったほうが、本人のためにも会社のためにも良い結果 を招きます。

 この格下げを行うときには、適切なカウンセリングと並行して、関係者全員に良い 印象を与えることができます。

4「処罰」
 どのような労使関係においても、仕事上で失敗を犯したときには、何らかの処罰を 受けることになるといった恐れや脅しが暗黙のうちに認められています。こういった 消極的な処罰はしばしば乱用されております。そのため結果として、士気の低下を招 いています。このような方法をとると、状況を改善するどころか、逆に悪化させるだ けになります。積極的な措置によって状況を改善することが出来れば、処罰の効果は いっそう高まるに違いありません。

 処罰の恐怖は‥‥とくに、無法な処罰を行ったときは‥‥社員の生産性を向上させ るではなく、むしろ、低下させて仕舞うことがあります。ですから管理者は、生産性 低下の理由をよく調査分析する必要に迫られます。もし、生産性低下の原因が仮病で あるような場合は、処罰で脅すルールが効果的かもしれません。しかし、生産性低下 の原因が他にある場合は、処罰より低下の原因を矯正するほうが理にかなっています 。

 脅しと処罰を利用した最も良く使われる方法はインフォーマルなものです。監督者 は関係社員(出来ればグループ全体)に呼びかけて態度を改めるように要求する場合、 要求が満たされないときは、然るべき措置を取ると言って、今後の管理上の処置を匂 わすことです。

 個人(またはグループ)が態度を改めない場合は、管理者は何らかの措置を取らな ければならないでしょう。けれども、脅かせば良いというものではありません。社員 に手のうちを読まれてしまったら、処罰による脅しは効き目がなくなるものです。

5「正規の規律上の処分」
 多くの会社に於いて規律上の処分に関する明確な方針が、労務マニアルなり労働組 合定款なりに明記されています。この処分の執行は常に苦情処理手続きによって(労 働組合がある場合は特に)行われ、不公平な申し立てに対して裁定が下されます。

 正規の規律上の処分で最も軽いものは役員訓戒です。これは正当な理由のない欠勤、 無断で職場を離れること、怠業などの初犯に適用されています。訓戒は文章化されて ますから、社員は知っていなければなりません。

 次に、厳しい規律は停職です。これは職務管理上の混乱、安全違反等の規律違反な どの規律違反、及び訓戒を受けた者の重犯に課せられます。しかし、ほとんどの会社 は原則として停職一週間以内としています。
 最も重い処罰は解雇です。これは窃盗や不服従などの重大事犯、他の規律違反で度々役員訓戒や停職処分 を受けた場合にのみ適用される性質のものです。

 ところで、この種の規律はどの程度の効果があるものでしょうか。
 矯正を要する問題を、処罰によって実際に矯正できるかどうかについては、盛んな 論議が行われている。
 調査によると、訓戒処分や停職処分を受けた社員は、規律違反を重ねることが多く なっています。裁決者によって処罰が取り消された社員が、しばしば同じ規律違反を 再び繰り返しているのです。
 しかし、他の調査では反対の結果が出ています。この問題を調べた人の大多数は、 処罰は、ある種の社員や規律違反には効果がありますが、そのほかの社員や規律違反 には、効果がないというだけで、曖昧な結論を下しているのです。

6「心理カウンセリング」
 一部の会社は、援助を必要とする社員を助ける心理カウンセリング計画を実施して います。深刻な感情問題は、外部の精神療法家に任せており、会社側の心理学者は専 ら社員の短期的な情緒障害の克服に協力しています。欧米の会社と違い国内の多くの会社では、心理学の専門家を自社のスタッフとして、使う政策を取っていないようです。それは社員のプライバシーを侵害すると考えがちであるからで、カウンセリングや治療は、会社の仕事ではないとしています。

 近年になって、酒や、薬の問題を抱える社員を、救おうとしている会社が多くなっ ています。普通そのような人は雇わないのですが、それが事前に明らかになるとは限 りませんし、就職後に明らかになることもあります。会社としてはその社員を退職さ せるか、更正させるかを決めなければなりません。優秀な社員ならアルコール中毒や、 麻薬中毒から立ち直れると信じている会社もあります。病院・診療所などの諸団体に よって、アルコールや麻薬中毒の社員の更正を試みているところもあります。

 一般社員と準管理者は(個人的問題と同様に)仕事上の問題を解決するに当たって 直接の上司や人事のスペシャリストから充分な助力が得られます。管理者と部下との 腹を割った話し合いは、仕事上の問題を解決し、両者の関係を改善するときに重要に なります。  つづく